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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B29C
審判 全部申し立て 2項進歩性  B29C
審判 全部申し立て 特123条1項5号  B29C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B29C
管理番号 1354091
異議申立番号 異議2016-700688  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-09-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-08-05 
確定日 2019-07-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5854504号「直接法による複合材料部品の製造のための一定の幅を有する新規の中間材」の特許異議申立事件についてされた平成29年11月1日付け異議の決定について,知的財産高等裁判所において当該決定を取り消す旨の判決[平成30年(行ケ)第10032号,平成31年3月26日判決言渡]がされ,当該判決が確定したので,さらに審理の上,次のとおり決定する。 
結論 特許第5854504号の特許請求の範囲を,平成29年7月3日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正請求後の請求項[1-16],[17-20],[21]について訂正することを認める。 特許第5854504号の請求項1,3-6,8-11,14-19,21に係る特許を維持する。 特許第5854504号の請求項2,7,12,13,20に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第5854504号の請求項1-20に係る特許についての出願は,2009年(平成21年)11月23日に国際出願され(優先権主張フランス,2008年11月28日),平成27年12月18日にその特許権が設定登録され,平成28年2月9日に特許掲載公報が発行された。その後,本件特許に対して特許異議の申立てがあり,平成29年11月1日付け特許異議の決定まで,次のとおりに手続が行われた。

平成28年 8月 5日 :特許異議申立人朝日奈特許事務所による請求 項1-20に係る特許に対する異議申立
平成28年10月13日付け:取消理由通知
平成29年 1月13日 :特許権者による意見書の提出および訂正請求
平成29年 1月25日付け:訂正拒絶理由通知
平成29年 3月16日 :特許権者による意見書,上申書の提出および 訂正請求取下
平成29年 3月31日付け:取消理由通知(決定の予告)
平成29年 7月 3日 :特許権者による意見書,上申書の提出および 訂正請求
平成29年 7月11日付け:訂正拒絶理由通知
平成29年 8月31日 :特許権者による意見書の提出
平成29年10月 5日 :特許異議申立人による意見書の提出
平成29年11月 1日付け:特許異議の決定

特許権者は,平成30年3月6日に,特許異議の決定を不服として知的財産高等裁判所に訴えを提起した(平成30年(行ケ)第10032号)。同裁判所は平成31年3月26日,「特許庁が異議2016-700688号事件について平成29年11月1日にした決定を取り消す」旨の判決を言渡し,この判決(以下,「取消判決」という。)は確定した。


第2 取消判決の拘束力について

審決を取り消す旨の判決の拘束力は,判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたる(最三小平成4年4月28日判決,民集46巻4号245頁)。
したがって,当審の審理は,取消判決の認定・判断,特に以下のとおり判示するところに拘束されるものである。

1 「本件明細書には,「本発明」の実施の形態として,1つのストランド(長繊維の集合体)又は複数のストランド(各々が長繊維の集合体)から成る「リボン」を作製するに当たり,1つ又は複数のストランドを,拡幅バーにより幅を拡幅し,次いで,拡幅したストランドを所与の幅の開口部を規定する寸法取り器(ローラーに切れ込む平底の溝を有する寸法取り器,寸法取りコーム,又は2個の歯を有する寸法取り器)上を通過させることによって,所望の幅を有する一方向層が得られること,これにより一方向層の幅は,材料中のいかなる間隔又は重なり部分をも最小にし,さらに回避することによって調整することができ,その結果,層の内側のストランド間に緩い空間が存在しないことの開示があることが認められる。
そして,複数のストランドの集合体(各々が長繊維の集合体)は,「接近して配置され,間隔又は重なり部分をも最小にし,さらに回避する」とは,「間隔が存在しない」ことと同義であると解されるから,「複数のストランド又は長繊維間に間隔が存在しない」ようにして,「複数のストランド又は長繊維」を所望の幅に作製しているものと理解することができる。
そうすると,訂正事項2に係る訂正は,本件明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものではないものと認められるから,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものというべきである。」(取消判決第53頁第26行?第54頁第20行)

2 「(本件明細書には,)ポリマー接着剤と「一方向リボン」(一方向層)の間の接着は,ポリマー接着剤の高温で粘着性である性質を利用して加熱し,その後冷却することにより達成されるものであり,ポリマー接着剤としては,「布又は不織布,特に熱可塑性材料の場合」があること,「寸法取りされた一方向層」は,「例えばローラーで駆動するコンベヤーベルト上」で,「熱可塑性布又は不織布」と結合すること,冷却後にストランド又は長繊維とのこれらの接着を可能にするためには,「不織布」をリボンとの結合に先立って加熱段階にかけて,ポリマーを軟化及びさらに融解させること,熱圧着の段階で,加熱及び圧力条件を,「不織布」を構成する材料及び厚さに適合させることにより,結合の前後で,「不織布」に関して圧縮比を1から10に達成することができることの開示があることが認められる。
上記開示事項によれば,「不織布」に関して,「結合の前後で,圧縮比を1から10に達成することができるのは,熱可塑性材料のポリマー接着剤である「不織布」における加熱段階にかけてのポリマーの軟化及び融解という性質に基づくものと理解できるから,ポリマー接着剤が「熱可塑性布」である場合においても,これと同様に,加熱段階にかけて,ポリマーを軟化及び融解させ,圧縮比を1から10に達成することができるものと理解できる。
そうすると,訂正事項3に係る訂正は,本件明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものではないものと認められるから,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものというべきである。」(取消判決第58頁第6行?第59頁第2行)

3 「(本件明細書の記載から,)「1本の炭素ストランド」で作製される「一方向シート」の両側に結合される「不織材料」の面密度の和は「3g/m^(2)×2=6g/m^(2)」となること,この面密度の和と「1本の炭素ストランド」(「AS7J 12K」)の面密度(「126g/m^(2)」)とを加算すると,「132g/m^(2)」となること,圧縮比1で(圧力を加えずに)「不織材料」を「1本の炭素ストランド」(「AS7J 12K」)に結合させて「リボン」(中間材)を作製した場合には,「不織布の総重量(1m^(2)あたり)」の「中間材の総重量(1m^(2)あたり)に対する百分率は「6/132×100%」となることを理解できる。
そして,<○1>(「○の中に1」の記号を示す。以下,数字が2?5の場合も含めて同様)炭素ストランドと結合される前に,加熱によりポリマーが軟化及び融解され,艶出し器により圧縮された不織材料は,面方向へと拡張され,不織材料の総重量(1m^(2)あたり)は,圧縮比1の場合よりも減少し,「6g/m^(2)」よりも小さくなることは自明であること,<○2>一方,炭素ストランドは,不織材料と異なり,軟化及び融解される工程を経るものではなく,得られた「リボン」(中間材)の平均幅(「6.21mm」。表2の「AS7J 12K」)と同じであって,一方向層と不織布との結合の前後を通じて,炭素ストランドの面密度に変動はないことから,図5に示すような機械を使用して得られた「平均幅 6.21mm 785テックス AS7J 12K」の「1本の炭素ストランド」で作製された「一方向シート」とその両側に「不織材料」を結合させた「リボン」(中間材)においては,「不織布の総重量(1m^(2)あたり)」に対する百分率は「6/132×100%未満」になることを理解できる。
もっとも,切断機により,リボンの端部に沿って位置する不織材料の一部が切断されるが,これは,不織材料のはみ出し部分を切断するものであるから(【0035】),これによって,「1本の炭素ストランド」で作製された「一方向シート」の両面に圧縮適用された不織材料の面密度(1m^(2)あたり)が影響を受けるものではないことを理解できる。
また,【0062】の実施例は,炭素面密度が「126g/m^(2)」の1本の炭素ストランドから中間材を作製する方法に関するものであるが,炭素面密度が「126g/m^(2)」の複数の炭素ストランドから1本の中間材を作製する場合にも,複数の炭素ストランドの炭素面密度が「126g/m^(2)」となることは自明であるから,図5に示すような機械を使用して,「炭素面密度(g/m^(2))」が「126g/m^(2)」の「平均幅 6.21mm 785テックス AS7J 12K」の複数の「炭素ストランド」を素材として作製された「一方向シート」とその両側に「不織材料」を結合させた「リボン」(中間材)においては,「不織布の総重量(1m^(2)あたり)」に対する百分率は「6/132×100%未満」になることを理解できる。
そうすると,訂正事項4に係る訂正は,本件明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものではないものと認められるから,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものというべきである。」(取消判決第61頁第25行?第63頁第16行)


第3 訂正の適否についての当審の判断

1 本件訂正請求
特許権者は,願書に添付した明細書および特許請求の範囲の訂正を以下のとおり2回請求しているところ,1回目の訂正請求については,平成29年3月16日付け訂正請求取下書により訂正請求を取り下げている。
1回目:平成29年 1月13日付け訂正請求
2回目:平成29年 7月 3日付け訂正請求

以下,2回目の平成29年 7月 3日付け訂正請求(以下,「本件訂正請求」という。)について検討する。

2 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は,以下の(1)?(28)の訂正事項1?28のとおりである。(下線は,訂正箇所について合議体が付したものである。)

(1)訂正事項1
請求項1に「中間材を製造するための方法」とあるのを,「熱硬化性マトリックスを含有する複合材料部品を直接法で製造するための材料である中間材を製造するための方法」に訂正する。

(2)訂正事項2
請求項1に「a)リボンの幅がその全長にわたり本質的に一定であるような端部を有するリボンを提供する工程」とあるのを,「a)拡幅バーを有する拡幅器,次いで複数のストランド又は長繊維に寸法取りをする開口部を規定する寸法取りコームの寸法取り器に,複数のストランド又は長繊維を通過させることによって,複数のストランド又は長繊維間に間隔が存在しないようにし,リボンの幅がその全長にわたり本質的に一定であるような端部を有するリボンを提供する工程」に訂正する。

(3)訂正事項3
請求項1に「b)リボンの各面に不織布又は布材料を適用する工程であって,不織布又は布材料の幅はリボンの幅より広く,その結果,不織布又は布材料はリボンの端部を超えて外側に伸びて,リボンの両側にて各端部に沿って不織布又は布材料がはみ出している工程」とあるのを,「b)リボンの各面に,加熱により軟化して粘着性を有し,加熱後に冷却されるときリボンの均一な密着を確実にする不織布又は布材料を,予備加熱後に1超から10の圧縮比で適用する工程であって,加熱及び圧縮された不織布又は布材料の幅はリボンの幅より広く,その結果,不織布又は布材料はリボンの端部を超えて外側に伸びて,リボンの両側にて各端部に沿って不織布又は布材料がはみ出している工程」に訂正する。

(4)訂正事項4
請求項1に「d)端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分を切断し,リボンの端部に切断を及ぼすことなく,はみ出し部分の一部分を除去することで,リボンの幅をその全長にわたり本質的に一定であるように維持する工程であって,不織布又は布材料の総重量が中間材の総重量の15%未満であり,はみ出し部分の切断済み端部が中間材の端部を構成する工程」とあるのを,「d)工程c)と同時に,端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分を加熱された切断器で切断し,リボンの端部に切断を及ぼすことなく,はみ出し部分の一部分を除去することで,リボンの幅をその全長にわたり本質的に一定であるように維持する工程であって,不織布又は布材料の総重量(1m^(2)あたり)が中間材の総重量(1m^(2)あたり)の(6/132)×100%未満であり,はみ出し部分の切断済み端部が中間材の端部を構成する工程」に訂正する。

(5)訂正事項5
請求項2を削除する。

(6)訂正事項6
請求項2を削除する訂正を行うことに伴い,請求項3が「請求項1又は2」を引用しているところを,「請求項1」を引用するように訂正する。加えて,請求項1の引用を含むので,請求項3についても,請求項1に係る上記訂正事項1?4に説明されたとおりの訂正の対象とする。

(7)訂正事項7
請求項2を削除する訂正を行うことに伴い,請求項4が「請求項1から3までの何れか一項」を引用しているところを,「請求項1又は3」を引用するように訂正する。加えて,請求項1,3の引用を含むので,請求項4についても,請求項1,3に係る上記訂正事項1?4,6に説明されたとおりの訂正の対象とする。

(8)訂正事項8
請求項5に「その全長にわたるリボンの幅の標準偏差が,0.22mm未満であることを特徴とする,請求項4に記載の方法。」とあり,(直接又は間接に)請求項1,3及び4の引用を含むので,請求項5についても,請求項1,3及び4に係る上記訂正事項1?4,6及び7に説明されたとおりの訂正の対象とする。

(9)訂正事項9
請求項6に「その全長にわたるリボンの幅の標準偏差が,0.20mm未満であることを特徴とする,請求項5に記載の方法。」とあり,(直接又は間接に)請求項1,3,4及び5の引用を含むので,請求項6についても,請求項1,3,4及び5に係る上記訂正事項1?4及び6?8に説明されたとおりの訂正の対象とする。

(10)訂正事項10
請求項7を削除する。

(11)訂正事項11
請求項8に「リボンが複数のストランドから作製されることを特徴とする,請求項1に記載の方法。」とあり,請求項1の引用を含むので,請求項8についても,請求項1に係る上記訂正事項1?4に説明されたとおりの訂正の対象とする。

(12)訂正事項12
請求項2及び7を削除する訂正を行うことに伴い,また,請求項4及び8の引用関係を解消することで,請求項9が「請求項1から8までのいずれか1項」を引用しているところ,「請求項1,3,5及び6のいずれか1項」を引用するように訂正する。加えて,請求項1,3,5及び6の引用を含むので,請求項9についても,請求項1,3,5及び6に係る上記訂正事項1?4及び6?9に説明されたとおりの訂正の対象とする。

(13)訂正事項13
請求項2及び7を削除する訂正を行うことに伴い,請求項10が「請求項1から9までのいずれか1項」を引用しているところ,「請求項1,3,4,5,6,8及び9までのいずれか1項」を引用するように訂正する。加えて,請求項1,3,5,6,8及び9の引用を含むので,請求項10についても,請求項1,3,5,6,8及び9に係る上記訂正事項1?4,6?9,11及び12に説明されたとおりの訂正の対象とする。

(14)訂正事項14
請求項2及び7を削除する訂正を行うことに伴い,また,請求項4,8及び9の引用関係を解消することで,請求項11が「請求項1から10までのいずれか1項」を引用しているところ,「請求項1,3,5,6及び10のいずれか1項」を引用するように訂正する。加えて,(直接又は間接に)請求項1,3,5,6及び8?10の引用を含むので,請求項11についても,請求項1,3,5,6及び8?10に係る上記訂正事項1?4,6?9及び11?13に説明されたとおりの訂正の対象とする。


(15)訂正事項15
請求項12を削除する。

(16)訂正事項16
請求項13を削除する。

(17)訂正事項17
請求項12,13を削除する訂正を行うことに伴い,請求項14が「請求項11から13までのいずれか1項」を引用しているところを,「請求項11」を引用するように訂正する。加えて,(直接又は間接に)請求項1,3,5,6及び8?11の引用を含むので,請求項14についても,請求項1,3,5,6及び8?11に係る上記訂正事項1?4,6?9及び11?14に説明されたとおりの訂正の対象とする。

(18)訂正事項18
請求項2,7,12及び13を削除する訂正を行うことに伴い,請求項15が「請求項1から14までのいずれか1項」を引用しているところを,「請求項1,3,4,5,6,8,9,10,11及び14までのいずれか1項」を引用するように訂正する。加えて,請求項1,3?6,8?11及び14の引用を含むので,請求項15についても,請求項1,3?6,8?11及び14に係る上記訂正事項1?4,6?9,11?14及び17に説明されたとおりの訂正の対象とする。

(19)訂正事項19
請求項16に「熱可塑性繊維のベールが,ポリアミド繊維,コポリアミド繊維,又はそれらの組み合わせを含む,請求項15に記載の方法。」とあり,(直接又は間接に)請求項1,3?6,8?11,14及び15の引用を含むので,請求項16についても,請求項1,3?6,8?11,14及び15に係る上記訂正事項1?4,6?9,11?14,17及び18に説明されたとおりの訂正の対象とする。

(20)訂正事項20
請求項1,4,8及び9を引用する請求項11に係る発明を独立項として書き下し,さらに請求項1に係る上記訂正事項1?4と同じ減縮訂正を行うことで,請求項21として,以下のとおり記載する訂正を行う。
「両端部を有すると共に,
両側に面を有し,端部間にてリボンの幅を確定する二つの端部を有する前記リボンを含む,熱硬化性マトリックスを含有する複合材料部品を直接法で製造するための材料である中間材を製造するための方法であって,
前記リボンは,リボンの長さに平行な方向に伸長する強化ストランドを含み,その全長にわたり本質的に一定であり,標準偏差が0.25mm未満である所与の幅を有し,
a)拡幅バーを有する拡幅器,次いで複数のストランドに寸法取りをする開口部を規定する寸法取りコームの寸法取り器に,複数のストランドを通過させることによって,複数のストランド間に間隔が存在しないようにし,リボンの幅がその全長にわたり本質的に一定であり,標準偏差が0.25mm未満であるよう端部を有するリボンを提供する工程であって,少なくとも2つのリボンが不織布又は布材料の適用のために同時に提供される工程;
b)リボンの各面に,加熱により軟化して粘着性を有し,加熱後に冷却されるときリボンの均一な密着を確実にする不織布又は布材料を,予備加熱後に1超から10の圧縮比で適用する工程であって,加熱及び圧着された不織布又は布材料の幅はリボンの幅より広く,その結果,不織布又は布材料はリボンの端部を超えて外側に伸びて,リボンの両側にて各端部に沿って不織布又は布材料がはみ出している工程,
c)リボンの各端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分に沿って,リボンを封入するように不織布又は布材料を共に接着する工程,及び
d)工程c)と同時に,端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分を加熱された切断器で切断し,リボンの端部に切断を及ぼすことなく,はみ出し部分の一部分を除去することで,リボンの幅をその全長にわたり本質的に一定であり,標準偏差が0.25mm未満であるように維持する工程であって,不織布又は布材料の総重量(1m^(2)あたり)が中間材の総重量(1m^(2)あたり)の(6/132)×100%未満であり,はみ出し部分の切断済み端部が中間材の端部を構成する工程を含み,
不織布又は布材料が,熱可塑性繊維を含む,上記方法。」

(21)訂正事項21
請求項17に「中間材」とあるのを,「熱硬化性マトリックスを含有する複合材料部品を直接法で製造するための材料である中間材」に訂正する。

(22)訂正事項22
請求項17に「前記リボンは,ストランド又は長繊維が,リボンの長さに平行な方向に伸長する,その各面上で不織布又は布材料と結合した強化ストランド又は長繊維のリボンであって」とあるのを,「前記リボンは,ストランド又は長繊維が,リボンの長さに平行な方向に伸長する,その各面上で,加熱により軟化して粘着性を有し,加熱後に冷却されるときリボンの均一な密着を確実にする不織布又は布材料と結合した強化ストランド又は長繊維のリボンであって」に訂正する。

(23)訂正事項23
請求項17に「リボンの所与の幅がその全長にわたり本質的に一定であり,標準偏差が0.25mm未満であり」とあるのを,「複数のストランド又は長繊維間に間隙が存在しないリボンの所与の幅がその全長にわたり本質的に一定であり,標準偏差が0.25mm未満であり」に訂正する。

(24)訂正事項24
請求項17に「不織布又は布材料の総重量が,中間材の総重量の15%未満であり」とあるのを,「1超から10の圧縮比で圧縮済みである不織布又は布材料の総重量(1m^(2)あたり)が,中間材の総重量(1m^(2)あたり)の(6/132)×100%未満であり」に訂正する。

(25)訂正事項25
請求項17において,中間材について,「中間材はその長手方向の端部に沿って切断された繊維を有しない」ことを規定する訂正を行う。

(26)訂正事項26
請求項18に「リボンの所与の幅の標準偏差が0.22mm未満であることを特徴とする,請求項17に記載の中間材。」とあり,請求項17の引用を含むので,請求項18についても,請求項17に係る上記訂正事項21?25に説明されたとおりの訂正の対象とする。

(27)訂正事項27
請求項19に「リボンの所与の幅の標準偏差が0.20mm未満であることを特徴とする,請求項18に記載の中間材。」とあり,(直接又は間接に)請求項17?18の引用を含むので,請求項19についても,請求項17?18に係る上記訂正事項21?26に説明されたとおりの訂正の対象とする。

(28)訂正事項28
請求項20を削除する。

本件訂正請求は,一群の請求項[1-16,21]及び[17-20]に対して請求されたものである。
ただし,訂正後の請求項21に係る訂正について,特許権者は、当該訂正が認められるときには,請求項[1-16]とは別の訂正単位として扱われることを求めている。

3 訂正の目的の適否,新規事項の有無,及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)請求項1に係る訂正(訂正事項1?4)について

ア 訂正事項1について
請求項1に係る訂正のうち,訂正事項1は,中間材について,「熱硬化性マトリックスを含有する複合材料部品を直接法で製造するための材料である」との用途を特定し,さらに限定するものであり,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,明細書の【0002】には,背景技術として,「複合材料部品又は物品,すなわち一方では1つ又は複数の強化材又は繊維層を含有し,他方で,熱可塑性樹脂を含めることができる主として熱硬化性マトリックス(「樹脂」)を含有するこれらの部品又は物品の作製は,例えば,「直接的」又は「LCM」(英語では「Liquid Composite Moulding(液体複合材成形)」)と呼ばれる方法により達成することができる」旨記載されており,さらに段落【0010】には,「本発明は,材料の損失を限定しながら,1つ又は複数のストランドから複合材料部品を製造する直接法に適合し,一貫性の高い所与の幅を有する一方向層を達成する方法を提供することを目的とする」と記載されていることから,願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないと認められる。

イ 訂正事項2について
請求項1に係る訂正のうち,訂正事項2は,リボンの幅がその全長にわたり本質的に一定であるような端部を有するリボンを提供する工程について,「拡幅バーを有する拡幅器,次いで複数のストランド又は長繊維に寸法取りをする開口部を規定する寸法取りコームの寸法取り器に,複数のストランド又は長繊維を通過させることによって,複数のストランド又は長繊維間に間隔が存在しない」ようにすることを特定するものであり,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,「第2 1」で記載したとおり,上記取消判決の拘束力から,願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないことも明らかである。

ウ 訂正事項3について
請求項1に係る訂正のうち,訂正事項3は,不織布又は布材料が,「加熱により軟化して粘着性を有し,加熱後に冷却されるときリボンの均一な密着を確実にする」ためのものであって,「予備加熱後に1超から10の圧縮比」で適用する工程を経て,「加熱及び圧縮された」不織布又は布材料となることを特定するものであり,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,「第2 2」で記載したとおり,上記取消判決の拘束力から,願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないことも明らかである。

エ 訂正事項4について
請求項1に係る訂正のうち,訂正事項4は,d)の工程を「工程c)と同時に」行うこと,切断を「加熱された切断器」で行うこと,不織布又は布材料,あるいは中間材の総重量が「1m^(2)あたり」のものであり,かつ,不織布又は布材料の総重量が中間材の総重量の「(6/132)×100%未満」であることを特定するものであり,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,「第2 3」で記載したとおり,上記取消判決の拘束力から,願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないことも明らかである。

オ 以上ア?エのとおり,請求項1に係る訂正は,何れも特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないことも明らかである。

(2)請求項2,7,12及び13に係る訂正(訂正事項5,10,15及び16)について

請求項2,7,12及び13に係る訂正(訂正事項5,10,15及び16)はいずれも,請求項を削除するものであり,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また,願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないことも明らかである。

(3)請求項3,4に係る訂正(訂正事項6,7)について

請求項3,4に係る訂正(訂正事項6,7)は,請求項2が削除されたことに伴い,引用請求項の関係を整理するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるか,あるいは,明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また,願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないことも明らかである。

(4)請求項9,10及び11に係る訂正(訂正事項12,13及び14)について

請求項9,10及び11に係る訂正(訂正事項12,13及び14)は,請求項2,7が削除されたことに伴い,引用請求項の関係を整理するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるか,あるいは,明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また,願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないことも明らかである。

(5)請求項14,15に係る訂正(訂正事項17,18)について

請求項14,15に係る訂正(訂正事項17,18)は,請求項2,7,12及び13が削除されたことに伴い,引用請求項の関係を整理するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるか,あるいは,明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また,願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないことも明らかである。

(6)請求項5,6,8及び16に係る訂正(訂正事項8,9,11及び19)について

請求項5,6,8及び16に係る訂正(訂正事項8,9,11及び19)は,引用先の請求項が訂正されたことに伴い実質的に訂正されたものであり,いずれも引用先の請求項における訂正の判断と同じである。

(7)請求項21に係る訂正(訂正事項20)について

請求項21に係る訂正(訂正事項20)は,従属項から独立項への書き換えに関するものであって,訂正前の請求項1を引用する請求項4を引用する請求項8を引用する請求項9を引用する請求項11において,さらに,訂正事項1,2,3及び4と同趣旨の訂正を行うものであり,特許請求の範囲を減縮するものであることは明らかである。
さらに,「第2 4」で記載したとおり,上記取消判決の拘束力から,願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないことも明らかである。

(8)請求項17に係る訂正(訂正事項21?25)について

請求項17に係る訂正のうち,訂正事項21?24は,訂正事項1?4と同趣旨のものであり,上記(1)ア?エで検討したとおりである。

請求項17に係る訂正のうち,訂正事項25は,中間材が「その長手方向の端部に沿って切断された繊維を有しない」ことを特定するものであり,これは,訂正前の請求項20における特定事項を組み込むものであって,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないことも明らかである。

(9)請求項18,19に係る訂正(訂正事項26,27)について

請求項18,19に係る訂正(訂正事項26,27)は,引用先の請求項が訂正されたことに伴い実質的に訂正されたものであり,いずれも引用先の請求項における訂正の判断と同じである。

(10)請求項20に係る訂正(訂正事項28)について

請求項20に係る訂正(訂正事項28)は,請求項を削除するものであり,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また,願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないことも明らかである。

(11)小活

以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号,第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって,特許請求の範囲を,訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項[1-16],[17-20],[21]について訂正することを認める。


第4 訂正後の本件発明

本件訂正請求により訂正された請求項1,3-6,8-11,14-19及び21に係る発明(以下「本件発明1,3-6,8-11,14-19及び21」という。)は,訂正特許請求の範囲の請求項1,3-6,8-11,14-19及び21に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(訂正により削除された請求項2,7,12,13,20もあわせて示す。)

「【請求項1】
両端部を有すると共に,
両側に面を有し,端部間にてリボンの幅を確定する二つの端部を有する前記リボンを含む,熱硬化性マトリックスを含有する複合材料部品を直接法で製造するための材料である中間材を製造するための方法であって,
前記リボンは,リボンの長さに平行な方向に伸長する強化ストランド又は長繊維を含み,その全長にわたり本質的に一定な所与の幅を有し,
a)拡幅バーを有する拡幅器,次いで複数のストランド又は長繊維に寸法取りをする開口部を規定する寸法取りコームの寸法取り器に,複数のストランド又は長繊維を通過させることによって,複数のストランド又は長繊維間に間隔が存在しないようにし,リボンの幅がその全長にわたり本質的に一定であるような端部を有するリボンを提供する工程;
b)リボンの各面に,加熱により軟化して粘着性を有し,加熱後に冷却されるときリボンの均一な密着を確実にする不織布又は布材料を,予備加熱後に1超から10の圧縮比で適用する工程であって,加熱及び圧着された不織布又は布材料の幅はリボンの幅より広く,その結果,不織布又は布材料はリボンの端部を超えて外側に伸びて,リボンの両側にて各端部に沿って不織布又は布材料がはみ出している工程,
c)リボンの各端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分に沿って,リボンを封入するように不織布又は布材料を共に接着する工程,及び
d)工程c)と同時に,端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分を加熱された切断器で切断し,リボンの端部に切断を及ぼすことなく,はみ出し部分の一部分を除去することで,リボンの幅をその全長にわたり本質的に一定であるように維持する工程であって,不織布又は布材料の総重量(1m^(2)あたり)が中間材の総重量(1m^(2)あたり)の(6/132)×100%未満であり,はみ出し部分の切断済み端部が中間材の端部を構成する工程を含む,上記方法。
【請求項2】 (削除)
【請求項3】
はみ出し部分の一部分が,フィードローラー又は吸引によって除去される,請求項1に記載の方法。
【請求項4】
その全長にわたるリボンの幅の標準偏差が,0.25mm未満であることを特徴とする,請求項1又は3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
その全長にわたるリボンの幅の標準偏差が,0.22mm未満であることを特徴とする,請求項4に記載の方法。
【請求項6】
その全長にわたるリボンの幅の標準偏差が,0.20mm未満であることを特徴とする,請求項5に記載の方法。
【請求項7】 (削除)
【請求項8】
リボンが複数のストランドから作製されることを特徴とする,請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも2つのリボンが,不織布又は布材料の適用のために同時に提供される,請求項1,3,5及び6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ストランド又は長繊維の材料が,次の材料,すなわち,炭素,ガラス,アラミド,シリカ,セラミック及びこれらの混合物の中から選択されることを特徴とする,請求項1,3,4,5,6,8及び9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
不織布又は布材料が熱可塑性繊維を含む,請求項1,3,4,5,6及び10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】 (削除)
【請求項13】 (削除)
【請求項14】
不織布又は布材料が,ポリアミド繊維,コポリアミド繊維,又はそれらの組み合わせを含む,請求項11に記載の方法。
【請求項15】
不織布材料が熱可塑性繊維のベールである,請求項1,3,4,5,6,8,9,10,11及び14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
熱可塑性繊維のベールが,ポリアミド繊維,コポリアミド繊維,又はそれらの組み合わせを含む,請求項15に記載の方法。
【請求項17】
両端部を有すると共に,
両側に面を有し,端部間にてリボンの幅を確定する二つの端部を有する前記リボンを含む,熱硬化性マトリックスを含有する複合材料部品を直接法で製造するための材料である中間材であって,
前記リボンは,ストランド又は長繊維が,リボンの長さに平行な方向に伸長する,その各面上で,加熱により軟化して粘着性を有し,加熱後に冷却されるときリボンの均一な密着を確実にする不織布又は布材料と結合した強化ストランド又は長繊維のリボンであって,複数のストランド又は長繊維間に間隔が存在しないリボンの所与の幅がその全長にわたり本質的に一定であり,標準偏差が0.25mm未満であり,1超から10の圧縮比で圧縮済みである不織布又は布材料の総重量(1m^(2)あたり)が,中間材の総重量(1m^(2)あたり)の(6/132)×100%未満であり,
リボンの各端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分の切断端部が中間材の端部を構成し,中間材はその長手方向の端部に沿って切断された繊維を有しないことを特徴とする,上記中間材。
【請求項18】
リボンの所与の幅の標準偏差が0.22mm未満であることを特徴とする,請求項17に記載の中間材。
【請求項19】
リボンの所与の幅の標準偏差が0.20mm未満であることを特徴とする,請求項18に記載の中間材。
【請求項20】 (削除)
【請求項21】
両端部を有すると共に,
両側に面を有し,端部間にてリボンの幅を確定する二つの端部を有する前記リボンを含む,熱硬化性マトリックスを含有する複合材料部品を直接法で製造するための材料である中間材を製造するための方法であって,
前記リボンは,リボンの長さに平行な方向に伸長する強化ストランドを含み,その全長にわたり本質的に一定であり,標準偏差が0.25mm未満である所与の幅を有し,
a)拡幅バーを有する拡幅器,次いで複数のストランドに寸法取りをする開口部を規定する寸法取りコームの寸法取り器に,複数のストランドを通過させることによって,複数のストランド間に間隔が存在しないようにし,リボンの幅がその全長にわたり本質的に一定であり,標準偏差が0.25mm未満であるよう端部を有するリボンを提供する工程であって,少なくとも2つのリボンが不織布又は布材料の適用のために同時に提供される工程;
b)リボンの各面に,加熱により軟化して粘着性を有し,加熱後に冷却されるときリボンの均一な密着を確実にする不織布又は布材料を,予備加熱後に1超から10の圧縮比で適用する工程であって,加熱及び圧着された不織布又は布材料の幅はリボンの幅より広く,その結果,不織布又は布材料はリボンの端部を超えて外側に伸びて,リボンの両側にて各端部に沿って不織布又は布材料がはみ出している工程,
c)リボンの各端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分に沿って,リボンを封入するように不織布又は布材料を共に接着する工程,及び
d)工程c)と同時に,端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分を加熱された切断器で切断し,リボンの端部に切断を及ぼすことなく,はみ出し部分の一部分を除去することで,リボンの幅をその全長にわたり本質的に一定であり,標準偏差が0.25mm未満であるように維持する工程であって,不織布又は布材料の総重量(1m^(2)あたり)が中間材の総重量(1m^(2)あたり)の(6/132)×100%未満であり,はみ出し部分の切断済み端部が中間材の端部を構成する工程を含み,
不織布又は布材料が,熱可塑性繊維を含む,上記方法。」


第5 平成29年11月1日付け特許異議の決定で判断された取消理由について

1 取消理由の概要

訂正前の請求項1-20に係る特許に対して,平成29年11月1日付け特許異議の決定(原決定)で判断された取消理由の要旨は,次のとおりである。

(1)〔取消理由1〕
本件特許の請求項1?20に係る発明は,下記(イ)の点で外国語書面出願に係る特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項が外国語書面に記載した事項の範囲内にない。(決定注:なお,原決定にある「外国語書面出願」は「外国語特許出願」の,「外国語書面」は「国際出願の明細書,特許請求の範囲又は図面」の誤りとそれぞれ解される。以下同じ。)
(イ)本件特許の請求項1に記載された「前記リボンを含む,中間材を製造するための方法であって,…不織布又は布材料の総重量が中間材の総重量の15%未満であり」という事項,及び同請求項17の「前記リボンを含む,中間材であって,…不織布又は布材料の総重量が,中間材の総重量の15%未満であり」という事項について,本件特許の外国語書面に記載した事項は「リボン」の総重量を基準としてバインダー(liant)の重量の重量百分率を特定していたのに対して,本件特許の請求項1及び17に係る発明並びに当該請求項1若しくは17を直接又は間接に引用する従属形式で記載された請求項2?16及び18?20に係る発明は「中間材」の総重量を基準として「不織布又は布材料」の総重量の重量百分率を特定しているという点において,外国語書面に記載した事項の範囲内にない。
よって,本件特許の請求項1?20に係る発明の特許は,同法第113条第5号の規定により取り消されるべきものである。

(2)〔取消理由2〕
本件特許の請求項1?20に係る発明は,特許請求の範囲の記載が下記(ロ)の点で不備のため,特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
(ロ)本件特許の請求項1に記載された「前記リボンを含む,中間材を製造するための方法であって,…不織布又は布材料の総重量が中間材の総重量の15%未満であり」という事項,及び同請求項17の「前記リボンを含む,中間材であって,…不織布又は布材料の総重量が,中間材の総重量の15%未満であり」という事項について,本件特許明細書の段落0012には「接着剤の総重量が得られるリボンの総重量の15%未満となるステップ」との記載がなされ,同段落0044には「ポリマー接着剤の重量は,リボンの総重量の15%未満であり」との記載がなされている。すなわち,当該「リボン」を基準にした重量百分率は,本件特許の請求項1及び17に規定される「中間材」を基準にした重量百分率と整合するものではない。してみると,本件特許の請求項1及び17並びにその従属項の記載は,特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえない。
よって,本件特許の請求項1?20に係る発明の特許は,同法第36条第6項の規定を満たさない特許出願に対してされたものであり,同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

(3)〔取消理由3〕
本件特許の請求項1?20に係る発明は,特許請求の範囲の記載が下記(ハ)の点で不備のため,特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。
(ハ)本件特許の請求項1に記載された「前記リボンを含む,中間材を製造するための方法であって,…不織布又は布材料の総重量が中間材の総重量の15%未満であり」という事項,及び同請求項17の「前記リボンを含む,中間材であって,…不織布又は布材料の総重量が,中間材の総重量の15%未満であり」という事項について,本件特許明細書の段落0001には「熱硬化性樹脂の後続の射出又は注入による複合材料部品の作製のための新規の中間材」との記載があるものの,それ以外に「中間材」という用語についての記載がない。このため,上記「前記リボンを含む,中間材」とは具体的にどのような「中間材」を意味するのか明確ではなく,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を総合的に参酌しても,上記「不織布又は布材料の総重量が,中間材の総重量の15%未満であり」という重量百分率の算出方法を明確に把握することができない。してみると,本件特許の請求項1及び17並びにその従属項の記載は,特許を受けようとする発明が明確であるとはいえない。
よって,本件特許の請求項1?20に係る発明の特許は,同法第36条第6項の規定を満たさない特許出願に対してされたものであり,同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

(4)〔取消理由4〕
本件特許の請求項1?20に係る発明は,本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物1?3に記載された発明に基いて,本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:特開2004-256961号公報(甲第1号証)
刊行物2:特開平3-243309号公報(甲第4号証)
刊行物3:米国特許第6503856号明細書(甲第2号証)

よって,本件特許の請求項1?20に係る発明の特許は,同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり,同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

2 取消理由1について

(決定注:国際出願日における国際出願の明細書等(以下,「国際出願明細書等」という。)に記載した事項は,その逐次訳である特表2012-510385号公報のとおりであると認められるので,以下,決定の便宜上,国際出願明細書等の記載については,上記特表2012-510385号公報の記載を援用する。)

国際出願明細書等には,「本発明による方法」の実施例として,「炭素面密度(g/m^(2))」(表2)が「126g/m^(2)」の「平均幅 6.21mm 785テックス AS7J 12K」の「1本の炭素ストランド」を素材として,図5に示すような機械を使用して,「一方向シート」とその両側に「不織材料」を結合させた「リボン」が得られたこと(【0055】ないし【0057】,【0062】,表2,表3),実施例に使用される「不織材料」の素材は,面密度が「3g/m^(2)」の「コアポリアミドの不織材料1R8D03」であること(【0052】),図5の機械(装置)を使用してリボンを作成する場合,不織材料は,炭素ストランドと接触する前に予備加熱され,空隙が制御された二つの加熱バーで炭素ストランドにラミネート加工され,次に,冷却可能な艶出し機が,両側に不織材料を有する炭素ストランドの一方向層に圧力を加え,この層が,次に切断機へ誘導されること(【0037】,【0038】),ホットカット器及び特に加熱したナイフを用いて,長手方向の端部に沿って位置する不織材料が切断されることにより得られたリボンは,切断された長繊維の断片のない非常にきれいな端部を有していること(【0035】,【0039】),一方向層と不織布との結合の前後で,不織布に関して圧縮比を1から10に達成することができること(【0033】)が記載されている。
上記記載から,「1本の炭素ストランド」で作製される「一方向シート」の両側に結合される「不織材料」の面密度の和は「3g/m^(2)×2=6g/m^(2)」となること,この面密度の和と「1本の炭素ストランド」(「AS7J 12K」)の面密度(「126g/m^(2)」)とを加算すると,「132g/m^(2)」となること,圧縮比1で(圧力を加えずに)「不織材料」を「1本の炭素ストランド」(「AS7J 12K」)に結合させて「リボン」(中間材)を作製した場合には,「不織布の総重量(1m^(2)あたり)」の「中間材の総重量(1m^(2)あたり)に対する百分率は「6/132×100%」となることを理解できる。
そして,炭素ストランドと結合される前に,加熱によりポリマーが軟化及び融解され,艶出し器により圧縮された不織材料は,面方向へと拡張され,不織材料の総重量(1m^(2)あたり)は,圧縮比1の場合よりも減少し,「6g/m^(2)」よりも小さくなることは自明であること,一方,炭素ストランドは,不織材料と異なり,軟化及び融解される工程を経るものではなく,得られた「リボン」(中間材)の平均幅(「6.21mm」。表2の「AS7J 12K」)と同じであって,一方向層と不織布との結合の前後を通じて,炭素ストランドの面密度に変動はないことから,図5に示すような機械を使用して得られた「平均幅 6.21mm 785テックス AS7J 12K」の「1本の炭素ストランド」で作製された「一方向シート」とその両側に「不織材料」を結合させた「リボン」(中間材)においては,「不織布の総重量(1m^(2)あたり)」に対する百分率は「6/132×100%未満」になることを理解できる。
もっとも,切断機により,リボンの端部に沿って位置する不織材料の一部が切断されるが,これは,不織材料のはみ出し部分を切断するものであるから(【0035】),これによって,「1本の炭素ストランド」で作製された「一方向シート」の両面に圧縮適用された不織材料の面密度(1m^(2)あたり)が影響を受けるものではないことを理解できる。
また,【0062】の実施例は,炭素面密度が「126g/m^(2)」の1本の炭素ストランドから中間材を作製する方法に関するものであるが,炭素面密度が「126g/m^(2)」の複数の炭素ストランドから1本の中間材を作製する場合にも,複数の炭素ストランドの炭素面密度が「126g/m^(2)」となることは自明であるから,図5に示すような機械を使用して,「炭素面密度(g/m^(2))」が「126g/m^(2)」の「平均幅 6.21mm 785テックス AS7J 12K」の複数の「炭素ストランド」を素材として作製された「一方向シート」とその両側に「不織材料」を結合させた「リボン」(中間材)においては,「不織布の総重量(1m^(2)あたり)」に対する百分率は「6/132×100%未満」になることを理解できる。
以上の検討から,「炭素ストランド」を素材として作製された「一方向シート」とその両側に「不織材料」を結合させた「リボン」(中間材)の関係は明らかであり,「中間材」の総重量を基準として「不織布又は布材料」の総重量の重量百分率を特定しているという点についても,国際出願明細書等に記載した事項の範囲内であるといえる。
よって,取消理由1は理由がない。

3 取消理由2について

上記2で検討したとおり,国際出願明細書等の記載からは,炭素ストランドと結合される前に,加熱によりポリマーが軟化及び融解され,艶出し器により圧縮された不織材料は,面方向へと拡張され,不織材料の総重量(1m^(2)あたり)は,圧縮比1の場合よりも減少し,「6g/m^(2)」よりも小さくなることは自明であること,一方,炭素ストランドは,不織材料と異なり,軟化及び融解される工程を経るものではなく,得られた「リボン」(中間材)の平均幅(「6.21mm」。表2の「AS7J 12K」)と同じであって,一方向層と不織布との結合の前後を通じて,炭素ストランドの面密度に変動はないことから,図5に示すような機械を使用して得られた「平均幅 6.21mm 785テックス AS7J 12K」の「1本の炭素ストランド」で作製された「一方向シート」とその両側に「不織材料」を結合させた「リボン」(中間材)においては,「不織布の総重量(1m^(2)あたり)」に対する百分率は「6/132×100%未満」になることを理解できる。
そして,国際出願明細書等と同じ内容のものが,本件特許の明細書にも記載されている。
してみれば,請求項1,17,21及びこれらの従属項において特定されている「不織布又は布材料の総重量(1m^(2)あたり)が中間材の総重量(1m^(2)あたり)の(6/132)×100%未満」であることは,本件特許の明細書に記載されているといえる。
よって,取消理由2は理由がない。

4 取消理由3について

上記2で検討したとおり,「炭素ストランド」を素材として作製された「一方向シート」とその両側に「不織材料」を結合させた「リボン」(中間材)の関係は明らかであり,「中間材」の総重量を基準として「不織布又は布材料」の総重量の重量百分率を算出できる点についても,国際出願明細書等の記載から理解できる。
そして,国際出願明細書等と同じ内容のものが,本件特許の明細書にも記載されている。
よって,取消理由3は理由がない。

5 取消理由4について

(1)刊行物1に記載された事項及び刊行物1に記載された発明

本件特許の優先権主張日前に,日本国内又は外国において,頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である刊行物1には,次の記載(以下,総称して「刊行物1に記載された事項」という。)がある。なお,下線は当審で付したものであり,以下同様である。

「【請求項1】
少なくとも一方向に平行に配列した強化繊維糸条から構成される強化繊維基材の製造方法であって,次の(A)?(C)の工程を経ることを特徴とする強化繊維基材の製造方法。
(A)元糸幅Woの強化繊維糸条を引き出す引出工程。
(B)糸条幅を,元糸幅Woの20%を超え85%未満の規制幅Wnに狭める狭幅工程。
(C)糸条幅を,規制幅Wnの110%を超え元糸幅Wo未満の目標幅Wtに広げる拡幅工程。」

「【請求項5】
(C)の拡幅工程と同時またはそれ以降に,次の(D)の工程を含むことを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の強化繊維基材の製造方法。
(D)強化繊維基材100重量%に対して0.1?20重量%の樹脂材料を接着して,強化繊維糸条の幅を固定する固定工程。」

「【請求項12】
強化繊維基材の強化繊維糸条の隙間が0.1?1mmであり,かつ,強化繊維糸条の糸条幅の変動率が0?10%であることを特徴とする請求項1?11のいずれかに記載の強化繊維基材の製造方法。」

「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,樹脂の含浸が良好で,力学特性(特に圧縮強度)に優れる複合材料を生産性良く得られるだけでなく,その品質安定性にも優れた強化繊維基材の製造方法およびその強化繊維基材を用いる複合材料の製造方法に関する。」

「【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は,マトリックス樹脂の含浸が良好で,力学特性(特に圧縮強度)に優れる複合材料を生産性良く得られるだけでなく,その品質安定性にも優れた強化繊維基材の製造方法および強化繊維基材にマトリックス樹脂を含浸してなる複合材料の製造方法を提供する。」

「【0034】
(D)固定工程(図1中4)
本発明の製造方法は,ここで説明する固定工程をさらに経れば,より優れた効果を得ることができる。すなわち,ここでの固定工程は,樹脂材料を接着して,強化繊維糸条の幅を固定する。かかる樹脂材料は,強化繊維基材100重量%に対して0.1?20重量%であるのが好ましい。0.1重量%未満では強化繊維基材を取扱う際の基材の形態安定性に劣る。20重量%を超えると複合材料を得る際にマトリックス樹脂の含浸を妨げる場合がある。
【0035】
かかる樹脂材料は,強化繊維基材の表面(片面,両面のいずれでもよい)に接着してもよいし,強化繊維基材の全面にわたって被覆して接着してもよい。
【0036】
強化繊維基材の表面に樹脂材料を接着する場合,好ましい手段としては,例えば次の(d1),(d2)の方法が挙げられる。
【0037】
(d1)固体状の樹脂材料を塗布または貼り合わせた後,樹脂材料を溶融させて,強化繊維糸条に接着する。この場合,樹脂材料として不織布,織物,編物,繊維,粒子等を用いることができる。樹脂材料として,不織布を用いると,樹脂材料の量を簡易に制御することができるため好ましい。一方,粒子を用いると,微視的に均一な分散が可能になるため好ましい。粒子の塗布装置としては,帯電スプレー,流動床,接触ロール(キスロール,ドットロール等),非接触ロール(掻き落としロール等)等,均一に塗布できるものなら任意のものを使用することができる。図2は,(d1)の方法で粒子状の樹脂材料をノン
クリンプ構造の一方向織物に接着した,本発明の製造方法で製造された強化繊維基材の一実施態様の平面図である。強化繊維基材21の上に樹脂材料24が不連続に点状に分散している。
【0038】
(d2)溶融している樹脂材料を塗布して強化繊維糸条に接着する。この場合,例えばメルトブロー法を用いると,強化繊維基材の表面に直接かつ同時に,不織布を形成,接着することができ,効率的な工程とすることができる。」

「【0048】
本発明によると,目標幅Wtが正確に規制されたものが得られる結果,強化繊維糸条の隙間,強化繊維糸条の糸条幅の変動率,カバーファクター等を正確かつ安定に制御して製造することができる。かかる観点から,本発明の製造方法により製造される強化繊維基材は,強化繊維糸条の隙間が0.1?1mmに制御されたものであるのが好ましい。より好ましくは0.2?0.7mm,更に好ましくは0.3?0.6mmである。0.1mm未満であるとマトリックス樹脂の含浸性に劣ることを意味し,1mmを越えると隙間が大きくなりすぎ,複合材料にした場合に樹脂リッチ部分を多く形成することによる力学特性の低下,サーマルクラックの発生等が起こるため好ましくない。かかる強化繊維糸条の隙間は,平面状にした強化繊維基材をその垂線方向から見て,基材中の強化繊維糸条の隙間を指し,本発明においては前述の補助繊維糸条,たて補助繊維糸条,ステッチ糸等は存在しないものとして扱い,強化繊維基材の全幅方向にわたり,均等間隔に選択した50本の平均値を用いた。」

「【0051】本発明で使用する強化繊維糸条としては,例えば炭素繊維,黒鉛繊維,ガラス繊維,有機繊維(アラミド,パラフェニレンベンゾビスオキサゾール,ポリビニルアルコール,高強度ポリエチレン,ポリイミド等),これらを2種類以上併用したものを使用することができる。中でも炭素繊維は比強度・比弾性率に優れるので,航空機用途の強化繊維として好ましく用いられる。
・・・
【0054】本発明で使用する樹脂材料は,強化繊維基材の形態安定性を向上させ,複合材料の力学特性を損なわない,または向上させるものであればとくに限定されず,熱硬化性樹脂および/または熱可塑性樹脂を使用することができる。
・・・
【0056】熱可塑性樹脂としては,例えば,ポリエステル,ポリオレフィン,ポリアミド,ポリウレタン,ポリカーボネート,ポリフェニレンスルフィド,ポリフェニレンエーテル,ポリエーテルイミド,ポリスルホン,ポリアリレート,ポリエーテルスルホン,ポリエーテルエーテルスルホン,ポリケトン,ポリエーテルケトン,ポリエーテルエーテルケトン,ポリエーテルケトン,ポリエーテルニトリル,フェノール(ノボラック型),フェノキシ樹脂,スチレン系樹脂,アクリル系樹脂,フッ素系樹脂等や,これらの共重合体,変性体および2種類以上ブレンドした樹脂も使用することができる。」

「【0066】
【実施例】
(実施例1)
図3は,本発明の製造方法の好ましい実施態様を説明する模式図で,織機31を用いて,強化繊維基材を製造している様子を示している。次に詳細に各工程を説明する。
【0067】
(A)引出工程:183本のたて糸32および183本の補助たて糸(図示せず)を平行かつ交互に配列し,1m幅になるように各ボビンから直接引き出した。強化繊維糸条のボビン上の糸条幅(元糸幅Wo)は6.6mmであった。
【0068】
なお,たて糸32として,強化繊維糸条であるPAN系炭素繊維糸条(24,000フィラメント,繊度1,035tex,引張強度5,900MPa,引張弾性率294GPa)を用いた。また,補助たて糸として,たて補助繊維糸条であるガラス繊維糸条(ECE225 1/0 1.0Z,繊度22.5tex,バインダータイプDP,日東紡製)を用いた。」

「【0081】
(実施例4)
(A)引出工程:実施例1と同様にたて糸を引き出した。
【0082】
(B)狭幅工程:たて糸は櫛形ガイドであるコーム(糸条が通過する箇所の内寸は3mm)を通過させることにより糸条幅を規制幅Wnの3mm(元糸幅Woの45%)に狭めた。
【0083】
(C)拡幅工程および(D)固定工程3:不織布状の樹脂材料を,引き揃えた強化繊維糸条の両面に貼り合わせたものを離型紙に挟み,180℃,線圧0.2MPaでプレスロールを通過させ,糸条幅を目標幅Wtの5.2mm(規制幅Wnの173%,元糸幅Woの78%)に拡幅すると同時に,樹脂材料を表面に接着して強化繊維糸条の幅を固定した。
【0084】
なお,不織布状の樹脂材料として,実施例2で用いた熱可塑性樹脂をメルトブローにて不織布化したもの(13g/m^(2))を用いた。
【0085】
得られた強化繊維基材は,樹脂材料によって形態安定性が格段に向上し,取扱が容易であった。また,強化繊維糸条は真直性に優れた。また,その糸条幅は,長手方向および幅方向に安定しており,品質安定性に優れたものであった。強化繊維糸条の目付は190g/m^(2),強化繊維糸条の隙間は0.3mm,糸条幅の変動率は5%,カバーファクター94%であった。」

以上の記載,特に「実施例4」の記載からみて,刊行物1には,
「(A)引出工程:糸条幅6.6mmのたて糸を引き出し,(B)狭幅工程:たて糸は糸条幅を3mmに狭め,(C)拡幅工程:熱可塑性樹脂をメルトブローにて不織布化した13g/m^(2)の樹脂材料を,引き揃えた強化繊維糸条の両面に貼り合わせたものを離型紙に挟み,プレスロールを通過させ,糸条幅を5.2mmに拡幅すると同時に,(D)固定工程:樹脂材料を表面に接着して強化繊維糸条の幅を固定する,強化繊維糸条の目付が190g/m^(2),強化繊維糸条の隙間は0.3mm,糸条幅の変動率が5%の強化繊維基材の製造方法。」についての発明(以下,「刊行物1発明」という。)が記載されているといえる。

(2)対比・判断

ア 本件発明1について

本件発明1と刊行物1発明とを対比する。
刊行物1発明の「(A)引出工程」及び「(B)狭幅工程」は,たて糸を特定の糸条幅としたかたちで,次工程に供給するものであるから,本件発明1の工程a)における「リボンを提供する工程」に相当する。また,刊行物1発明の「(C)拡幅工程」及び「(D)固定工程」は,熱可塑性樹脂の不織布を,引き揃えた強化繊維糸条の両面に貼り合わせたものを離型紙に挟み,プレスロールを通過させ,糸条幅を5.2mmに拡幅すると同時に,樹脂材料を表面に接着して強化繊維糸条の幅を固定するものであるから,本件発明1の工程b)において,「リボンの各面に,加熱により軟化して粘着性を有し,加熱後に冷却されるときリボンの均一な密着を確実にする不織布又は布材料を特定の圧縮比で適用する工程」に相当する。さらに,刊行物1発明で得られる強化繊維基材は,両端部を有するとともに両側に面をもつものであって,端部間にて幅が確定される形状であることは明らかであるから,本件発明1の「両端部を有すると共に,両側に面を有し,端部間にてリボンの幅を確定する二つの端部を有する前記リボンを含む,中間材」に相当する。また,刊行物1発明の繊維強化基材は,熱可塑性樹脂の不織布を,引き揃えた強化繊維糸条の両面に貼り合わせたものであるから,繊維強化基材の長さに平行な方向に伸長する長繊維,つまり,本件発明1の「リボンの長さに平行な方向に伸長する強化ストランド又は長繊維」に相当する強化繊維糸条を有していることも明らかである。

してみると,本件発明と刊行物1発明は,
「両端部を有すると共に,
両側に面を有し,端部間にてリボンの幅を確定する二つの端部を有する前記リボンを含む,中間材を製造するための方法であって,
前記リボンは,リボンの長さに平行な方向に伸長する強化ストランド又は長繊維を含み,
a)リボンを提供する工程;
b)リボンの各面に,加熱により軟化して粘着性を有し,加熱後に冷却されるときリボンの均一な密着を確実にする不織布又は布材料を,(特定の)圧縮比で適用する工程を含む,上記方法。」
との点で一致し,次の点で相違する。

・相違点1
本件発明1は,工程a)において,リボンを提供する工程が,「拡幅バーを有する拡幅器,次いで複数のストランド又は長繊維に寸法取りをする開口部を規定する寸法取りコームの寸法取り器に,複数のストランド又は長繊維を通過させることによって,複数のストランド又は長繊維間に間隔が存在しないようにし,リボンの幅がその全長にわたり本質的に一定であるような端部を有する」ものであるのに対し,刊行物1発明にはそのような特定がない点。

・相違点2
本件発明1は,工程b)において,「予備加熱後に1超から10の圧縮比で適用する」工程であって,当該工程を経ることで「不織布又は布材料はリボンの端部を超えて外側に伸びて,リボンの両側にて各端部に沿って不織布又は布材料がはみ出」すものであるのに対し,刊行物1発明にはそのような特定がない点。

・相違点3
本件発明1は,「c)リボンの各端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分に沿って,リボンを封入するように不織布又は布材料を共に接着する工程」及び「 d)工程c)と同時に,端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分を加熱された切断器で切断し,リボンの端部に切断を及ぼすことなく,はみ出し部分の一部分を除去することで,リボンの幅をその全長にわたり本質的に一定であるように維持する工程」を有するものであるのに対し,刊行物1発明にはそのような特定がない点。

・相違点4
本件発明1は,中間材が,「全長にわたり本質的に一定な所与の幅を有」するものであるとともに,「不織布又は布材料の総重量(1m^(2)あたり)が中間材の総重量(1m^(2)あたり)の(6/132)×100%未満であり,はみ出し部分の切断済み端部が中間材の端部を構成する」ものであるのに対し,刊行物1発明にはそのような特定がない点。

・相違点5
本件発明1は,中間材が「熱硬化性マトリックスを含有する複合材料部品を直接法で製造するための材料」であるのに対して,刊行物1発明にはそのような特定がない点。

まず,相違点1について検討する。
刊行物1発明は,「強化繊維糸条の隙間は0.3mm」である。この点に関し,刊行物1の段落【0048】には,「本発明の製造方法により製造される強化繊維基材は,強化繊維糸条の隙間が0.1?1mmに制御されたものであるのが好ましい。より好ましくは0.2?0.7mm,更に好ましくは0.3?0.6mmである。0.1mm未満であるとマトリックス樹脂の含浸性に劣ることを意味し,1mmを越えると隙間が大きくなりすぎ,複合材料にした場合に樹脂リッチ部分を多く形成することによる力学特性の低下,サーマルクラックの発生等が起こるため好ましくない。」と,マトリックス樹脂の含浸性の観点から強化繊維糸条の隙間が所定の間隔で存在する旨記載されている。
してみると,刊行物1発明において,強化繊維糸条の隙間がないものとすること,つまり,本件発明1における「複数のストランド又は長繊維間に間隔が存在しない」ようにすることには,阻害事由があるものといわざるを得ない。
したがって,他の相違点や刊行物2,3の記載について検討するまでもなく,本件発明1は,主引用発明である刊行物1発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本件発明3?6,8?11,14?16及び21について
本件発明3?6,8?11,14?16は,本件発明1を引用するかたちで記載されたもの(いわゆる従属項)であり,上記アで検討した事項を含むものであるから,上記アと同じ理由により,刊行物1発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また,本件発明21は,独立形式で記載されているものの,少なくとも上記アの相違点1を含むものであるから,上記アと同じ理由により,刊行物1発明及び刊行物2,3の記載事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 本件発明17?19について
本件発明17は,中間材に関する発明であるが,本件発明1と同様に,「複数のストランド又は長繊維間に間隔が存在しない」との特定事項を有するものである。そして,「複数のストランド又は長繊維間に間隔が存在しない」との特定事項については,上記アで検討したとおりであるから,上記アと同じ理由により,刊行物1発明及び刊行物2,3の記載事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
本件発明17を引用するかたちで記載された本件発明18,19も同様である。

(3)小括

以上の検討のとおり,本件発明1,3?6,8?11,14?19,21は,刊行物1発明及び刊行物2,3の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって,取消理由4は理由がない。


第6 取消理由で採用しなかった異議申立理由について

特許異議申立人は,異議申立書において,「本件特許の請求項1?20に係る発明の特許は,同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり,同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。」とする理由として,以下の刊行物1?8を証拠とし,刊行物3を主引用例とした場合の理由についても主張しているので,ここで検討する。

刊行物3:米国特許第6503856号明細書(甲第2号証)
刊行物1:特開2004-256961号公報(甲第1号証)
刊行物2:特開平3-243309号公報(甲第4号証)
刊行物4:特開平7-124944号公報(甲第3号証)
刊行物5:特開平7-300763号公報(甲第5号証)
刊行物6:特開2005-224471号公報(甲第6号証)
刊行物7:特開平11-293556号公報(甲第7号証)
刊行物8:特開2008-34295号公報(甲第8号証)

1 刊行物3に記載された事項及び刊行物3に記載された発明

本件特許の優先権主張日前に,日本国内又は外国において,頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である刊行物3には,次の記載(以下,総称して「刊行物3に記載された事項」という。)がある。(当審仮訳をあわせて示す。)

(1)The carbon fiber sheets of the invention include a network formed of a plurality of carbon fibers or filaments,arranged substantially parallel relative to one another.
本発明の炭素繊維シートは炭素繊維または炭素フィラメントの,互いに実質的に平行に配置されて形成されたネットワークを含む。(第2欄第19?21行)

(2)In one advantageous embodiment of the invention, the carbon fiber network is formed from one or more tows or bundles of carbon fibers.
本発明の1つの有利な実施形態では,炭素繊維のネットワークは,1つまたは2つ以上のトウまたは束の炭素繊維から形成されている。(第2欄第56?58行)

(3)In one particularly advantageous embodiment of the invention, the carbon fiber assemblies have porous or permeable adhesive layers, preferably in the form of melt blown webs, on opposing surfaces of the carbon fiber sheet.
本発明の1つの特に有利な実施形態では,炭素繊維アセンブリは,多孔質または透過性の接着層,好ましくはメルトブローウェブの形状の接着層を,炭素繊維シートの反対側に有する。(第3欄第47?50行)

(4)A portion of the adhesive layers extending beyond the edge of the carbon fibers can be treated under conditions sufficient, for example by application of heat and optionally pressure, to form a bond or selvage edge to the assembly. This in turn can provide a "bag" encapsulating the carbon fibers, thus further improving dimensional stability and ease of handling.
炭素繊維のエッジを超えて伸びる接着剤層の部分は,例えば,熱や加圧の処理によって接着又は耳の端部を形成するのに充分な条件で処理され得る。これにより,次には炭素繊維を封入する「バッグ」が提供され得る。かくして,取り扱いの寸法安定性と容易性を向上させることができる。(第3欄第53?58行)

(5)The present invention not only provides an integral carbon fiber electrode/insulator material but also can provide a more stable, durable electrode structure.
本発明は,完全な炭素繊維電極/断熱材材料を提供するだけでなく,より安定で,丈夫な電極構造をも提供する。(第5欄第31?33行)

(6)In addition,the carbon fiber network can have a substan-tially uniform thickness in the Z-direction or axis across the width and length dimensions thereof.
加えて,炭素繊維ネットワークは,z方向か,幅及び長さの側面を通過する軸において実質的に均一な厚みを有する。(第6欄第54?56行)

(7)Turning again to FIGS. 1A. 1 B. 1 C and 1 D. in addition to the carbon fiber network, the carbon fiber sheet materials of the invention also include an adhesive layer on a surface of the carbon fibers, illustrated in FIGS. 1A-C as melt blown polymer web 50 .
再度図1A,1B,1C,1Dに戻ると,炭素繊維ネットワークに加えて,本発明の炭素繊維シート材料はまた,図1A-1Cに示すように,メルトブローポリマーウェブ50として,炭素繊維の表面上に接着層も含む。(第9欄第21?24行)

(8)However, the adhesive layer can be pre-formed using known techniques and subsequently adhered to the surface of the carbon fibers, for example, under conditions of heat and pressure sufficient to soften the adhesive layer and adhere it to the carbon fibers.
しかしながら,接着層は,公知技術によって前もって作製され,次いで,例えば接着層を軟化し,炭素繊維に接着させるために十分な加熱および加圧条件下で,炭素繊維の表面に接着される。(第9欄第49?53行)

(9)The polymer web 50 is preferably composed of a plurality of randomly oriented melt blown polymer fibers.
ポリマーウェブ50は,好ましくは複数の任意に配向したメルトブローポリマー繊維から構成されている。(第10欄第7?8行)

(10)Such materials include polyolefins such as polypropylene, polyethylene and amorphous poly((#-olefins); ethylene copolymers such as ethylene vinyl acetate or ethylene methacrylate copolymers, polyesters such as polyethylene terephthalate; polyamides; polyacrylates; polystyrene; styrene block copolymers; thermoplastic elastomers; mixtures thereof; and other known fiber forming thermoplastic materials.
かかる材料は,ポリプロピレン,ポリエチレンおよびアモルファスポリ(αーオレフィン)などのポリオレフィン;エチレンビニルアセテートまたはエチレンメタクリレートコポリマーなどのエチレンコポリマー;ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル;ポリアミド;ポリアクリレート;ポリスチレン;スチレンブロックコポリマー;熱可塑性エラストマー;これらの混合物;および熱可塑性材料を形成する他の公知の繊維などを含む。(第10欄第17?24行)

(11)Width of the carbon fibers can also be controlled using conventional apparatus.
炭素繊維の幅はまた,従来の装置を用いて制御され得る。(第12欄第51?53行)

(12) For example, the carbon fiber assemblies can be cut into the desired shapes and dimensions for a particular end use and stacked.
たとえば,炭素繊維アセンブリは,最終用途や所望の形状および側面に切断され,重ねられ得る。(第15欄第2?4行)

(13)That which is claimed:
1. A carbon fiber sheet material comprising: a network comprising a plurality of substantially parallel carbon fibers; a first adhesive melt blown web adhered to at least one surface of said carbon fiber network; and a second adhesive melt blown web releasably adhered to a surface of said first melt blown web.
請求項1
ほぼ平行な複数の炭素繊維を含むネットワークと,
前記炭素繊維ネットワークの少なくとも1つの表面に接着された,第1の接着性メルトブローウェブと,および
前記第1のメルトブローウェブの表面に剥離可能に接着された第2の接着性メルトブローウェブと
を含む炭素繊維シート材料。(請求項1)

以上の記載,特に「請求項1」の記載からみて,刊行物3には,

「ほぼ平行な複数の炭素繊維を含むネットワークと,
前記炭素繊維ネットワークの少なくとも1つの表面に接着された,第1の接着性メルトブローウェブと,および
前記第1のメルトブローウェブの表面に剥離可能に接着された第2の接着性メルトブローウェブと
を含む炭素繊維シート材料の製造方法。」についての発明(以下,「刊行物3方法発明」という。),

「ほぼ平行な複数の炭素繊維を含むネットワークと,
前記炭素繊維ネットワークの少なくとも1つの表面に接着された,第1の接着性メルトブローウェブと,および
前記第1のメルトブローウェブの表面に剥離可能に接着された第2の接着性メルトブローウェブと
を含む炭素繊維シート材料。」についての発明(以下,「刊行物3材料発明」という。),

がそれぞれ記載されているといえる。

2 対比・判断

(1)本件発明1について

本件発明1と刊行物3方法発明とを対比する。
刊行物3方法発明の炭素繊維シートにおける,「ほぼ平行な複数の炭素繊維を含むネットワーク」は,本件発明1の,「リボンの長さに平行な方向に伸長する強化ストランド又は長繊維」を含む「リボン」に相当する。また,刊行物3方法発明の「第1の接着メルトブローウェブ」は,本件発明1の「加熱により軟化して粘着性を有し,加熱後に冷却されるときリボンの均一な密着を確実にする不織布又は布材料」に相当する。
そして,刊行物3方法発明の「炭素繊維シート」は,「炭素繊維ネットワーク」の少なくとも1つの表面に「第1の接着性メルトブローウェブ」が接着されているものであるから,本件発明1の「中間材」に相当するものといえる。
さらに,刊行物3方法発明の「炭素繊維シート」が両端部を有すると共に,両側に面を有し,端部間にて幅を確定する二つの端部を有する形状であることは明らかであるから,刊行物3方法発明の「炭素繊維シート」は,本件発明1の「両端部を有すると共に,両側に面を有し,端部間にてリボンの幅を確定する二つの端部を有する前記リボンを含む,中間材」に相当する。

してみると,本件発明1と刊行物3方法発明は,
「両端部を有すると共に,
両側に面を有し,端部間にてリボンの幅を確定する二つの端部を有する前記リボンを含む,中間材を製造するための方法であって,
前記リボンは,リボンの長さに平行な方向に伸長する強化ストランド又は長繊維を含み,
a)リボンを提供する工程;
b)リボンの各面に,加熱により軟化して粘着性を有し,加熱後に冷却されるときリボンの均一な密着を確実にする不織布又は布材料を適用する工程を含む,上記方法。」
との点で一致し,次の点で相違する。

・相違点1
本件発明1は,工程a)において,リボンを提供する工程が,「拡幅バーを有する拡幅器,次いで複数のストランド又は長繊維に寸法取りをする開口部を規定する寸法取りコームの寸法取り器に,複数のストランド又は長繊維を通過させることによって,複数のストランド又は長繊維間に間隔が存在しないようにし,リボンの幅がその全長にわたり本質的に一定であるような端部を有する」ものであるのに対し,刊行物3方法発明にはそのような特定がない点。

・相違点2
本件発明1は,工程b)において,「予備加熱後に1超から10の圧縮比で適用する」工程であって,当該工程を経ることで「不織布又は布材料はリボンの端部を超えて外側に伸びて,リボンの両側にて各端部に沿って不織布又は布材料がはみ出」すものであるのに対し,刊行物3方法発明にはそのような特定がない点。

・相違点3
本件発明1は,「c)リボンの各端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分に沿って,リボンを封入するように不織布又は布材料を共に接着する工程」及び「 d)工程c)と同時に,端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分を加熱された切断器で切断し,リボンの端部に切断を及ぼすことなく,はみ出し部分の一部分を除去することで,リボンの幅をその全長にわたり本質的に一定であるように維持する工程」を有するものであるのに対し,刊行物3方法発明にはそのような特定がない点。

・相違点4
本件発明1は,中間材が,「全長にわたり本質的に一定な所与の幅を有」するものであるとともに,「不織布又は布材料の総重量(1m^(2)あたり)が中間材の総重量(1m^(2)あたり)の(6/132)×100%未満であり,はみ出し部分の切断済み端部が中間材の端部を構成する」ものであるのに対し,刊行物3方法発明にはそのような特定がない点。

・相違点5
本件発明1は,中間材が「熱硬化性マトリックスを含有する複合材料部品を直接法で製造するための材料」であるのに対して,刊行物3方法発明にはそのような特定がない点。

まず,相違点1について検討する。
刊行物3方法発明は,炭素繊維ネットワークに含まれる「ほぼ平行な複数の炭素繊維」について,拡幅する工程を有するものではなく,ましてや炭素繊維間の間隔について何ら特定するものではない。また,刊行物1,2及び4?8のいずれの記載を見ても,炭素繊維間の間隔が存在しないものとすること,及びそのために「拡幅バーを有する拡幅器」や「寸法取り器」を用いることについては,何ら記載されていない。
してみれば,刊行物3方法発明において,炭素繊維間の間隔に着目して,何らかの方向性を有するものとすることの必然性はなく,ましてや,炭素繊維間の間隔が存在しないようにするために,「拡幅バーを有する拡幅器」や「寸法取り器」を用いるものとすることは,当業者にとって容易になし得るものであるということはできない。
したがって,他の相違点や刊行物1,2及び4?8の記載について検討するまでもなく,本件発明1は,刊行物3方法発明及び刊行物1,2及び4?8の記載事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明3?6,8?11,14?16及び21について
本件発明3?6,8?11,14?16は,本件発明1を引用するかたちで記載されたもの(いわゆる従属項)であり,上記(1)で検討した事項を含むものであるから,上記(1)と同じ理由により,刊行物3方法発明及び刊行物1,2及び4?8の記載事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また,本件発明21は,独立形式で記載されているものの,上記アの相違点1を含むものであるから,上記アと同じ理由により,刊行物3方法発明及び刊行物1,2及び4?8の記載事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件発明17?19について

本件発明17と刊行物3材料発明とを対比する。
刊行物3材料発明の炭素繊維シートにおける,「ほぼ平行な複数の炭素繊維を含むネットワーク」は,本件発明17の,「リボンの長さに平行な方向に伸長する強化ストランド又は長繊維」の「リボン」に相当する。また,刊行物3材料発明の「第1の接着メルトブローウェブ」は,本件発明1の「加熱により軟化して粘着性を有し,加熱後に冷却されるときリボンの均一な密着を確実にする不織布又は布材料」に相当する。
そして,刊行物3材料発明の「炭素繊維シート」は,「炭素繊維ネットワーク」の少なくとも1つの表面に「第1の接着性メルトブローウェブ」が接着されているものであるから,本件発明17の「中間材」に相当するものといえる。
さらに,刊行物3材料発明の「炭素繊維シート」が両端部を有すると共に,両側に面を有し,端部間にて幅を確定する二つの端部を有する形状であることは明らかであるから,刊行物3方法発明の「炭素繊維シート」は,本件発明17の「両端部を有すると共に,両側に面を有し,端部間にてリボンの幅を確定する二つの端部を有する前記リボンを含む,中間材」に相当する。

してみると,本件発明17と刊行物3材料発明は,
「両端部を有すると共に,
両側に面を有し,端部間にてリボンの幅を確定する二つの端部を有する前記リボンを含む,中間材であって,
前記リボンは,ストランド又は長繊維が,リボンの長さに平行な方向に伸長する,その各面上で,加熱により軟化して粘着性を有し,加熱後に冷却されるときリボンの均一な密着を確実にする不織布又は布材料と結合した強化ストランド又は長繊維のリボンである,上記中間材。」
との点で一致し,次の点で相違する。

・相違点1
本件発明17は,リボンが,「複数のストランド又は長繊維間に間隔が存在しないリボンの所与の幅がその全長にわたり本質的に一定であり,標準偏差が0.25mm未満」であるのに対し,刊行物3材料発明にはそのような特定がない点。

・相違点2
本件発明17は,中間材を構成する不織布について,「1超から10の圧縮比で圧縮済みである不織布又は布材料の総重量(1m^(2)あたり)が,中間材の総重量(1m^(2)あたり)の(6/132)×100%未満」であるのに対し,刊行物3材料発明にはそのような特定がない点。

・相違点3
本件発明17は,中間材が,「リボンの各端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分の切断端部が中間材の端部を構成し,中間材はその長手方向の端部に沿って切断された繊維を有しない」ものであるのに対して,刊行物3材料発明にはそのような特定がない点。

・相違点4
本件発明17は,中間材が「熱硬化性マトリックスを含有する複合材料部品を直接法で製造するための材料」であるのに対して,刊行物3材料発明にはそのような特定がない点。

まず,相違点1について検討する。
刊行物3材料発明は,炭素繊維ネットワークに含まれる「ほぼ平行な複数の炭素繊維」について,炭素繊維間の間隔について何ら特定するものではない。また,刊行物1,2及び4?8のいずれの記載を見ても,炭素繊維間の間隔が存在しないものとすることについて,何ら記載されていない。
さらに,刊行物3材料発明では,リボンの所与の幅に関し,一定の幅の度合いとして,「標準偏差が0.25mm未満」とすることについても何ら特定されておらず,また,刊行物1,2及び4?8のいずれの記載を見ても,リボンの幅を「標準偏差が0.25mm未満」に制御することについて,何ら記載されていない。
してみれば,刊行物3材料発明において,炭素繊維間の間隔に着目して,何らかの方向性を有するものとすることの必然性はなく,炭素繊維間の間隔が存在しないようにすること,かつ,リボンの幅について,「標準偏差が0.25mm未満」とすることは,当業者にとって容易になし得るものであるということはできない。

したがって,他の相違点や刊行物1,2及び4?8の記載について検討するまでもなく,本件発明1は,刊行物3材料発明及び刊行物1,2及び4?8の記載事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

本件発明17を引用するかたちで記載された本件発明18,19も同様である。

3 小括

以上の検討のとおり,本件発明1,3?6,8?11,14?19,21は,刊行物3発明及び刊行物1,2及び4?8の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。


第7 平成29年10月5日付けの特許異議申立人の意見書における主張について

異議申立人は,平成29年7月3日に特許権者が行った訂正請求に対して,平成29年10月5日付けで意見書を提出し,訂正後の本件発明に対して取消理由がある旨主張しているので,ここで検討する。

1 平成29年10月5日に特許異議申立人より提出された意見書における主張の概要

平成29年10月5日に特許異議申立人より提出された意見書(以下,単に「意見書」という。)における主張の概要は,次のとおりである。

(1)意見書における主張1
本件特許の請求項1,3?6,8?11,14?16,21に係る発明の特許は,特許法第36条第4項第1号の規定を満たさない特許出願に対してされたものであり,同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

(2)意見書における主張2
本件特許の請求項1,3?6,8?11,14?19,21に係る発明の特許は,特許法第36条第6項第1号の規定を満たさない特許出願に対してされたものであり,同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

(3)意見書における主張3
本件特許の請求項1,3?6,8?11,14?19,21に係る発明の特許は,特許法第36条第6項第2号の規定を満たさない特許出願に対してされたものであり,同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

2 意見書における主張1について

(1)意見書における主張1の具体的理由

意見書における主張1の具体的理由は概ね次のとおりである。

本件発明1には,「拡幅器及び寸法取り器に,複数のストランド又は長繊維を通過させること」によって,「リボンの幅がその全長にわたり本質的に一定であるような端部を有するリボンを提供する」ことを規定するが,拡幅器や寸法取り器は,図5や関連する記載を見ても,具体的な構造が一切不明である。そのため,いかにして「リボンの幅がその全長にわたり本質的に一定であるような端部を有するリボンを提供する」ことができるのか,理解することができない。

(2)判断
本件明細書には,「本発明」の実施の形態として,1つのストランド(長繊維の集合体)又は複数のストランド(各々が長繊維の集合体)から成る「リボン」を作製するに当たり,1つ又は複数のストランドを,拡幅バーにより幅を拡幅し,次いで,拡幅したストランドを所与の幅の開口部を規定する寸法取り器(ローラーに切れ込む平底の溝を有する寸法取り器,寸法取りコーム,又は2個の歯を有する寸法取り器)上を通過させることによって,所望の幅を有する一方向層が得られること,これにより一方向層の幅は,材料中のいかなる間隔又は重なり部分をも最小にし,さらに回避することによって調整することができ,その結果,層の内側のストランド間に緩い空間が存在しないことの開示があることが認められる。
そして,複数のストランドの集合体(各々が長繊維の集合体)が,「接近して配置され,間隔又は重なり部分をも最小にし,さらに回避する」とは,「間隔が存在しない」ことと同義であると解されるから,「複数のストランド又は長繊維間に間隔が存在しない」ようにして,「複数のストランド又は長繊維」を所望の幅に作製しているものと理解することができる。
以上のとおりであるから,いかにして「リボンの幅がその全長にわたり本質的に一定であるような端部を有するリボンを提供する」ことができるのかは,明細書の記載から理解することができるものであるといえるので,意見書における主張1は理由がない。

3 意見書における主張2,3の具体的な理由

(1)意見書における主張2,3の具体的理由は概ね次のとおりである。

ア 「圧縮比」が何に対する圧縮比であり,どのようにして算出するのか,不明である。その結果,定義が曖昧になり,解釈によっては,本件発明1は課題を解決し得ない範囲をも含むものとなる。

イ 明細書の記載を参酌すると,「中間材の総重量(1m^(2)あたり)」は,「炭素ストランドの面密度」と「圧縮前の不織材料の面密度」の単純な合計であるとはいえないから,いかにして,「不織布又は布材料の総重量(1m^(2)あたり)」の「中間材の総重量(1m^(2)あたり)」に対する割合を算出するのか,不明である。その結果,定義が曖昧になり,解釈によっては,本件発明1は課題を解決し得ない範囲をも含むものとなる。

(2)判断

アの点について
本件明細書には,「ポリマー接着剤と一方向リボンの間の接着は,ポリマー接着剤の高温で粘着性である性質を利用して加熱し,その後冷却することにより達成される」(【0045】),「ポリマー接着剤が布又は不織布,特に熱可塑性材料の場合,寸法取り器の出口において得られた寸法取りされた一方向層は,例えばローラーで駆動するコンベヤーベルト上で,この各面上で熱可塑性布又は不織布と結合する。寸法取り器の出口と,層をポリマー接着剤に結合する機器(図示した例におけるコンベヤーベルト)の間の距離は,得られた寸法取りを保持するために,およそ数ミリメートルの非常に短い距離となることが好ましい。冷却後にストランド又は長繊維とのこれらの接着を可能にするためには,不織布をリボンとの結合に先立って加熱段階にかけて,ポリマーを軟化及びさらに融解させる。不織布の幅は,一方向層の両側を超えて広がるように選択される。加熱及び圧力条件を,不織布を構成する材料及びこの厚さに適合させる。ほとんどの場合,熱圧着の段階は,T_(f nonwoven)-15℃からT_(f nonwoven)+60℃の範囲の温度(T_(f nonwoven)は,不織材料の融解温度を表す)及び0.1から0.6MPaの圧力下で行われる。したがって,結合の前後で,不織布に関して圧縮比を1から10に達成することができる」(【0033】)との記載がある。
これらの記載事項から,ポリマー接着剤と「一方向リボン」(一方向層)の間の接着は,ポリマー接着剤の高温で粘着性である性質を利用して加熱し,その後冷却することにより達成されるものであり,ポリマー接着剤としては,「布又は不織布,特に熱可塑性材料の場合」があること,「寸法取りされた一方向層」は,「例えばローラーで駆動するコンベヤーベルト上」で,「熱可塑性布又は不織布」と結合すること,冷却後にストランド又は長繊維とのこれらの接着を可能にするためには,「不織布」をリボンとの結合に先立って加熱段階にかけて,ポリマーを軟化及びさらに融解させること,熱圧着の段階で,加熱及び圧力条件を,「不織布」を構成する材料及び厚さに適合させることにより,結合の前後で,「不織布」に関して圧縮比を1から10に達成することができることの開示があることが認められる。
してみれば,「圧縮比」は不織布に関し,結合の前後におけるものであることが明らかである。

イの点について
イの主張は,結局のところ,「中間材の総重量(1m^(2)あたり)」が明らかではないからは,「不織布又は布材料の総重量(1m^(2)あたり)」の「中間材の総重量(1m^(2)あたり)」に対する割合をどのように算出するのか,不明であるとするものといえる。
しかしながら,上記「第5 2」,「第5 4」で検討したとおり,「不織布又は布材料の総重量(1m^(2)あたり)」の「中間材の総重量(1m^(2)あたり)」に対する割合を算出する方法は明らかであるといえる。

以上のとおりであるから,意見書における主張2,3は理由がない。


第8 結論
以上のとおりであるから,異議の決定に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては,本件特許の請求項1,3-6,8-11,14-19及び21に係る特許を取り消すことはできない。
そして,他に本件特許の請求項1,3-6,8-11,14-19及び21に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また,本件特許の請求項2,7,12,13,20に係る特許は,上記「第4」のとおり,訂正により削除された。これにより,特許異議申立人による特許異議の申し立てについて,請求項2,7,12,13,20に係る申立ては,申立ての対象が存在しないものとなったため,特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部を有すると共に、
両側に面を有し、端部間にてリボンの幅を確定する二つの端部を有する前記リボンを含む、熱硬化性マトリックスを含有する複合材料部品を直接法で製造するための材料である中間材を製造するための方法であって、
前記リボンは、リボンの長さに平行な方向に伸長する強化ストランド又は長繊維を含み、その全長にわたり本質的に一定な所与の幅を有し、
a)拡幅バーを有する拡幅器、次いで複数のストランド又は長繊維に寸法取りをする開口部を規定する寸法取りコームの寸法取り器に、複数のストランド又は長繊維を通過させることによって、複数のストランド又は長繊維間に間隔が存在しないようにし、リボンの幅がその全長にわたり本質的に一定であるような端部を有するリボンを提供する工程;
b)リボンの各面に、加熱により軟化して粘着性を有し、加熱後に冷却されるときリボンの均一な密着を確実にする不織布又は布材料を、予備加熱後に1超から10の圧縮比で適用する工程であって、加熱及び圧縮された不織布又は布材料の幅はリボンの幅より広く、その結果、不織布又は布材料はリボンの端部を超えて外側に伸びて、リボンの両側にて各端部に沿って不織布又は布材料がはみ出している工程、
c)リボンの各端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分に沿って、リボンを封入するように不織布又は布材料を共に接着する工程、及び
d)工程c)と同時に、端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分を加熱された切断器で切断し、リボンの端部に切断を及ぼすことなく、はみ出し部分の一部分を除去することで、リボンの幅をその全長にわたり本質的に一定であるように維持する工程であって、不織布又は布材料の総重量(1m^(2)あたり)が中間材の総重量(1m^(2)あたり)の(6/132)×100%未満であり、はみ出し部分の切断済み端部が中間材の端部を構成する工程を含む、上記方法。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
はみ出し部分の一部分が、フィードローラー又は吸引によって除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
その全長にわたるリボンの幅の標準偏差が、0.25mm未満であることを特徴とする、請求項1又は3に記載の方法。
【請求項5】
その全長にわたるリボンの幅の標準偏差が、0.22mm未満であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
その全長にわたるリボンの幅の標準偏差が、0.20mm未満であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】(削除)
【請求項8】
リボンが複数のストランドから作製されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも2つのリボンが、不織布又は布材料の適用のために同時に提供される、請求項1、3、5及び6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ストランド又は長繊維の材料が、次の材料、すなわち、炭素、ガラス、アラミド、シリカ、セラミック及びこれらの混合物の中から選択されることを特徴とする、請求項1、3、4、5、6、8及び9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
不織布又は布材料が熱可塑性繊維を含む、請求項1、3、5、6及び10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】(削除)
【請求項13】(削除)
【請求項14】
不織布又は布材料が、ポリアミド繊維、コポリアミド繊維、又はそれらの組み合わせを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
不織布材料が熱可塑性繊維のベールである、請求項1、3、4、5、6、8、9、10、11及び14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
熱可塑性繊維のベールが、ポリアミド繊維、コポリアミド繊維、又はそれらの組み合わせを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
両端部を有すると共に、
両側に面を有し、端部間にてリボンの幅を確定する二つの端部を有する前記リボンを含む、熱硬化性マトリックスを含有する複合材料部品を直接法で製造するための材料である中間材であって、
前記リボンは、ストランド又は長繊維が、リボンの長さに平行な方向に伸長する、その各面上で、加熱により軟化して粘着性を有し、加熱後に冷却されるときリボンの均一な密着を確実にする不織布又は布材料と結合した強化ストランド又は長繊維のリボンであって、複数のストランド又は長繊維間に間隔が存在しないリボンの所与の幅がその全長にわたり本質的に一定であり、標準偏差が0.25mm未満であり、1超から10の圧縮比で圧縮済みである不織布又は布材料の総重量(1m^(2)あたり)が、中間材の総重量(1m^(2)あたり)の(6/132)×100%未満であり、リボンの各端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分の切断端部が中間材の端部を構成し、中間材はその長手方向の端部に沿って切断された繊維を有しないことを特徴とする、上記中間材。
【請求項18】
リボンの所与の幅の標準偏差が0.22mm未満であることを特徴とする、請求項17に記載の中間材。
【請求項19】
リボンの所与の幅の標準偏差が0.20mm未満であることを特徴とする、請求項18に記載の中間材。
【請求項20】(削除)
【請求項21】
両端部を有すると共に、
両側に面を有し、端部間にてリボンの幅を確定する二つの端部を有する前記リボンを含む、熱硬化性マトリックスを含有する複合材料部品を直接法で製造するための材料である中間材を製造するための方法であって、
前記リボンは、リボンの長さに平行な方向に伸長する強化ストランドを含み、その全長にわたり本質的に一定であり、標準偏差が0.25mm未満である所与の幅を有し、
a)拡幅バーを有する拡幅器、次いで複数のストランドに寸法取りをする開口部を規定する寸法取りコームの寸法取り器に、複数のストランドを通過させることによって、複数のストランド間に間隔が存在しないようにし、リボンの幅がその全長にわたり本質的に一定であり、標準偏差が0.25mm未満であるような端部を有するリボンを提供する工程であって、少なくとも2つのリボンが不織布又は布材料の適用のために同時に提供される工程;
b)リボンの各面に、加熱により軟化して粘着性を有し、加熱後に冷却されるときリボンの均一な密着を確実にする不織布又は布材料を、予備加熱後に1超から10の圧縮比で適用する工程であって、加熱及び圧縮された不織布又は布材料の幅はリボンの幅より広く、その結果、不織布又は布材料はリボンの端部を超えて外側に伸びて、リボンの両側にて各端部に沿って不織布又は布材料がはみ出している工程、
c)リボンの各端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分に沿って、リボンを封入するように不織布又は布材料を共に接着する工程、及び
d)工程c)と同時に、端部に沿って位置する不織布又は布材料のはみ出し部分を加熱された切断器で切断し、リボンの端部に切断を及ぼすことなく、はみ出し部分の一部分を除去することで、リボンの幅をその全長にわたり本質的に一定であり、標準偏差が0.25mm未満であるように維持する工程であって、不織布又は布材料の総重量(1m^(2)あたり)が中間材の総重量(1m^(2)あたり)の(6/132)×100%未満であり、はみ出し部分の切断済み端部が中間材の端部を構成する工程を含み、
不織布又は布材料が、熱可塑性繊維を含む、上記方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-06-28 
出願番号 特願2011-538026(P2011-538026)
審決分類 P 1 651・ 54- YAA (B29C)
P 1 651・ 537- YAA (B29C)
P 1 651・ 121- YAA (B29C)
P 1 651・ 536- YAA (B29C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 増田 亮子粟野 正明  
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 植前 充司
渕野 留香
登録日 2015-12-18 
登録番号 特許第5854504号(P5854504)
権利者 ヘクセル ランフォルセマン
発明の名称 直接法による複合材料部品の製造のための一定の幅を有する新規の中間材  
代理人 特許業務法人浅村特許事務所  
代理人 特許業務法人浅村特許事務所  

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