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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
管理番号 1354094
異議申立番号 異議2018-700996  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-09-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-12-06 
確定日 2019-07-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6346231号発明「具材入り液状調味料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6346231号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔3、4〕について訂正することを認める。 特許第6346231号の請求項1、2、4に係る特許を維持する。 特許第6346231号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6346231号(以下「本件特許」という。)の手続の経緯は、以下のとおりである。
平成28年 9月16日 出願
平成30年 6月 1日 設定登録
同年 6月20日 特許掲載公報発行
同年12月 6日 特許異議申立人板谷健太郎(以下「申立人」という。)より特許異議の申立て
平成31年 3月25日付け 取消理由通知
令和 元年 5月27日 訂正請求書、意見書(特許権者)の提出

第2 訂正について
1 訂正の内容
令和元年5月27日付け訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3及び4について訂正することを求めるものであり、具体的な訂正事項は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
請求項3を削除する。
(2)訂正事項2
請求項4の「請求項1?3のいずれか1項記載の具材入り液状調味料」を、「請求項1又は2記載の具材入り液状調味料」に訂正する。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1は、請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2は、請求項3を削除したことに伴い、引用する請求項から請求項3を除くものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(3)したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第9項で準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔3、4〕について訂正を認める。

第3 本件発明
本件特許の請求項1、2及び4に係る発明(以下、各発明を「本件発明1」、「本件発明2」及び「本件発明4」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、上記訂正された特許請求の範囲の請求項1、2及び4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
【請求項1】
次の成分(a)?(c):
(a)乾燥野菜を含む具材
(b)食酢
(c)果汁、香味オイル、乳化型フレーバー、油溶性フレーバー及び香辛料抽出物から選ばれる一種以上
を含有する調味料であって、1)?3)を満たしアスペクト比が1.8?5である乾燥野菜を膨潤後の合計で調味料全体の10?60質量%含有することを特徴とする具材入り液状調味料。
1)膨潤後の大きさが0.5mm以上3mm未満である乾燥野菜 調味料全体中の含有量が5?30質量%
2)膨潤後の大きさが3mm以上8mm未満である乾燥野菜 調味料全体中の含有量が5?50質量%
3)膨潤後の大きさが8mm以上20mm未満である乾燥野菜 調味料全体中の含有量が0?30質量%
【請求項2】
次の成分(a)?(c):
(a)乾燥野菜を含む具材
(b)食酢
(c)果汁、香味オイル、乳化型フレーバー、油溶性フレーバー及び香辛料抽出物から選ばれる一種以上
を含有する調味料であって、1)?3)を満たしアスペクト比が1.8?5である乾燥野菜を膨潤後の合計で調味料全体の10?60質量%含有することを特徴とする具材入り液状調味料。
1)膨潤後の大きさが0.5mm以上3mm未満である乾燥野菜 調味料全体中の含有量が0?30質量%
2)膨潤後の大きさが3mm以上8mm未満である乾燥野菜 調味料全体中の含有量が5?50質量%
3)膨潤後の大きさが8mm以上20mm未満である乾燥野菜 調味料全体中の含有量が5?30質量%
【請求項4】
前記乾燥野菜が、タマネギ、キャベツ、白菜、ニンジン、ネギ、セロリ及びパプリカから選ばれる一種以上の乾燥野菜である請求項1又は2記載の具材入り液状調味料。

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1?4に係る特許に対して、当審が平成31年3月25日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
<理由1>(特許法第36条第4項第1号)及び<理由3>(特許法第36条第6項第2号)
本件特許に係る出願は、発明の詳細な説明の記載が安息角を測定するための条件が記載されていないため、その発明の属する技術分野における通常の知識を有するものが請求項3に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではなく、請求項3に係る安息角が明確ではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件及び同法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
<理由2>(特許法第36条第6項第1号)
本件特許に係る出願は、請求項1?4について、乾燥野菜の膨潤後の大きさの範囲毎の調味料全体中の含有量を実施例で確認した以外の範囲にまで拡張ないし一般化できず、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

2 判断
(1)<理由1>及び<理由3>について
本件訂正により請求項3は削除されたため、請求項3に係る特許についての<理由1>及び<理由3>は解消された。
(2)<理由2>について
本件発明が解決しようとする課題は、「食酢や香味成分と野菜とを含有する調味料であって、加熱調理しても、食酢や香味成分の揮散を防止し、加熱料理に良好な風味付けができる具材入り液状調味料を提供すること」(【0005】)である。
実施例においては、上記課題を解決することについて、「レモン風味の強さ」(表1、表2)、「加熱後の香り」(表3、表4)、「レモンの香り」(表5)についての官能評価結果により確認しているものと認められる。
そして、発明の詳細な説明には、
「具材である野菜を乾燥状態で配合して調味料中で膨潤させ、かつ膨潤後の野菜の大きさを一定の範囲に調節することによって、食酢や香味成分を野菜中に保持し、焼く、炒めるといった加熱調理を行った際においても、上記香味成分の揮散を抑え、加熱料理に良好な風味付けが可能となる具材入り液状調味料が得られることを見出し、本発明を完成した。」(【0006】)
「乾燥野菜片の形状は、薄片状や針状に比べて粒状である場合に、特に加熱調理後の食酢や香味成分の保持の点で好ましい。」(【0014】)
「乾燥野菜片は、前記1)?3)を満たし、かつ膨潤後の合計で調味料全体の5?60質量%含有することが、加熱調理後も食酢や香味成分を保持するうえで重要である。」(【0018】)
「乾燥野菜片の合計含有量が5質量%未満の場合には、加熱調理後の香りたちが弱く、風味の保持が十分でない。また60質量%を超えると、野菜原料の風味が強くなり、風味のバランスが十分でなく、液体調味料の流動性が悪く取り出しにくい。」(【0019】)
と記載されている。
これらの記載によれば、本件発明が課題を解決する原理は、食酢や香味成分を野菜中に保持することであり、加熱調理後も食酢や香味成分を保持するとの観点から、乾燥野菜片の形状や、乾燥野菜片の大きさ毎の含有量及び合計含有量を決定したことや、野菜原料の風味が強くなりすぎることや流動性を考慮して、合計含有量の上限を60質量%としたことが理解できる。
そして、乾燥野菜片の大きさ毎の含有量の下限について検討すると、例えば、【表1】、【表2】に示される官能評価結果によれば、1)0.5?3mm、2)3?8mm、3)8?20mmの各具材含量が、1)0質量%、2)0質量%、3)0質量%である比較例4?6は、レモン風味の強さが1(残っていない)であるのに対し、1)1質量%、2)5質量%、3)0質量%である実施例1、1)5質量%、2)0質量%、3)0質量%である実施例4、1)0質量%、2)1質量%、3)5質量%である実施例6は、いずれもレモン風味の強さが3(少し残っている)である。
このことから、上記1)0.5?3mm、2)3?8mm、3)8?20mmの各具材のいずれかを5質量%含有する場合、加熱調理後も食酢や香味成分を保持し得るといえる。
また、上限については、1)0.5?3mm、2)3?8mm、3)8?20mmの各具材含量が、1)8質量%、2)50質量%、3)2質量%である実施例3は、レモン風味の強さが5(とてもよく残っている)であり、1)27質量%、2)5質量%、3)0質量%である実施例5は、レモン風味の強さが3(少し残っている)であり、1)0質量%、2)5質量%、3)25質量%である実施例7、1)60質量%、2)0質量%、3)0質量%である比較例7、1)0質量%、2)0質量%、3)60質量%である比較例8は、いずれもレモン風味の強さが4(よく残っている)である。
このことから、上記2)3?8mmの具材を50質量%、上記1)0.5?3mm、3)8?20mmの各具材を30質量%含有する場合、加熱調理後も食酢や香味成分を保持し得るといえる。
以上によれば、本件発明1の「1)膨潤後の大きさが0.5mm以上3mm未満である乾燥野菜 調味料全体中の含有量が5?30質量%」、「2)膨潤後の大きさが3mm以上8mm未満である乾燥野菜 調味料全体中の含有量が5?50質量%」、「3)膨潤後の大きさが8mm以上20mm未満である乾燥野菜 調味料全体中の含有量が0?30質量%」、及び、本件発明2の「1)膨潤後の大きさが0.5mm以上3mm未満である乾燥野菜 調味料全体中の含有量が0?30質量%」、「2)膨潤後の大きさが3mm以上8mm未満である乾燥野菜 調味料全体中の含有量が5?50質量%」、「3)膨潤後の大きさが8mm以上20mm未満である乾燥野菜 調味料全体中の含有量が5?30質量%」の範囲において、本件発明の課題を解決できると認められる。
(3)小括
したがって、本件発明1、2及び4は、特許法第36条第6項第1号の規定により特許を受けることができないものとはいえない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立人が主張する特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
本件発明1、2及び4は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<甲号証>
甲第1号証:特開2012-170353号公報
甲第2号証:特開2009-189324号公報

2 当審の判断
(1)甲第1号証の記載
甲第1号証には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、焼肉等の食品に用いる調味料であって、調味対象の食品の上に戴置しても液だれを起こすことなく、かつ野菜のシャキシャキとした食感を感じることが可能な調味料、及びその製造方法に関する。」
「【0009】
前記第一の課題を解決すべく、本発明は以下の構成を有する。
(1)乾燥野菜と、増粘剤 とを含む調味料であって、乾燥野菜の分量が、給水前状態の全重量対比で6%?19%であり、かつ調整後の具材部が全重量対比で60%?98%であることを特徴とする調味料(請求項1)。」
「【0014】
なお、乾燥野菜の粒径としては、2mm?10mm、より好ましくは4mm?6mmである(請求項2、請求項3)。2mmよりも小さいと喫食時に十分なシャキシャキとした食感を奏することができない。粒径の上限として、10mmを超えると製造工程における適切な均一撹拌を行うにあたって支障が生じることがあったり、食感が悪くなる。また飽くまで調味料であり本調味料自体が喫食対象ではないことから著しく大きな粒径である場合、調味料の域を超えてしまうことから6mm程度までが好ましい。」
「【0028】
表1(配合例1ないし配合例5)は乾燥野菜の配合比率について変更を加えたものであり、具材量の比率がこれに応じて変わっている。なお検討段階において乾燥野菜の配合比率を25%とした配合例の試作を行ったが、具材のまとまりを保つことができずボロボロと零れ落ちが発生した。一方表2(配合例6ないし配合例10)は加工澱粉(増粘剤)の配合比率について変更を加えたものである。また配合例3と配合例8とは同一の配合比率である。」




上記記載によれば、【表1】の配合例2に注目すると、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「砂糖20.0g、水17.0g、醤油15.0g、りんごピューレ12.0g、乾燥玉ねぎ5.7g、冷凍玉ねぎ9.0g、胡麻7.0g、りんご酢5.0g、食塩2.0g、加工でん粉1.0gが配合され、乾燥玉ねぎの粒径が2mm?10mmであり、具材量が60%である調味料。」

(2)甲第2号証の記載
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、ネギ科野菜加工品を含む液体調味料に関する。」
「【0008】
またネギ科野菜は、チップ状とするのが良好な食感・外観を有する点、風味及び旨味の増強効果の点から好ましい。ここでチップ状のネギ科野菜としては、好ましくは長辺及び短辺が1?15mmからなる野菜、より好ましくは長辺及び短辺が3?15mmからなる野菜、更に好ましくは長辺及び短辺が3?10mmからなる野菜が挙げられる。このようなチップ状ネギ科野菜を液状調味料に配合することにより、ネギ科野菜含有液状調味料中でネギ科野菜が良好な食感及び外観を呈し、かつネギ科野菜の特有の風味、旨味が得られる点から好ましい。長辺及び短辺が1mm未満の野菜又は粉末状のネギ科野菜はチップ状に比べて旨味、風味が液状調味料中に浸透しやすいが、良好な食感・外観を有する点からは長辺及び短辺が1mm以上であることが好ましい。また、液状調味料中のネギ科野菜の旨味、風味を充分発現させる点から長辺及び短辺が15mm以下であることが好ましい。
【0009】
本発明においては、これらのネギ科野菜を生のまま配合するのではなく、加熱処理したものを配合することによって、ネギ科野菜の風味と旨味が増強される。本発明における加熱処理としては、ネギ科野菜を50℃以上の温度で1秒以上加熱処理するなど、一般的な方法を用いてよく、好ましくは50?80℃に1?60分の加熱処理を行うのがよい。また、乾燥ネギ科野菜の場合は50?80℃で5?10時間の加熱処理を行ってもよい。」
「【0029】
実施例1?3及び比較例1?3
表1に示した原材料を用い、次に示す製造法に従って液体調味料を製造した。
〔液体調味料の調製1〕
水、増粘剤、グルタミン酸ナトリウム、香辛料、ごま、醸造酢(酸度10%)、食塩、還元水飴、砂糖、ネギチップまたはタマネギチップ(加熱品または加熱乾燥品)を、表1に示した量配合し、撹拌混合して溶解し、調味液(水相部)を調製した。次に、常温から加熱して80℃に到達してから4分間保持することにより殺菌処理を行った後、冷却し、常温とした後に容器に充填し、次いでDAG高含有油脂又はサラダ油を充填することにより液体調味料を調製した。使用したDAG高含有油脂は、TAG:19.3%、DAG:80%、MAG:0.7%、サラダ油は、TAG:94.3%、DAG:1.5%、MAG:0.2%を含有するものであった(ここで、DAGとはジアシルグリセロール、TAGとはトリアシルグリセロール、MAGとはモノアシルグリセロールのことをいう。)なお、ネギ科野菜の加熱条件は、「加熱品」については、ネギを刻み、70?80℃で10分間加熱、「加熱乾燥品」については、ネギを刻み、60?70℃で7時間加熱乾燥させたものである。」
「【0031】
【表1】


上記記載によれば、【表1】の実施例2に注目すると、甲第2号証には、次の事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「水426.5g、増粘剤0.5g、グルタミン酸ナトリウム6g、香辛料20g、ネギチップ15g(加熱乾燥品、長辺及び短辺が3mm-5mm)、ごま23g、醸造酢(酸度10%)113g、食塩56g、還元水飴150g、砂糖40g、DAG高含有油脂150gを配合した調味液。」
(3)対比・判断
ア 本件発明1について
本件発明1と甲1発明を対比すると、両者は、
「次の成分(a)?(c):
(a)乾燥野菜を含む具材
(b)食酢
(c)果汁、香味オイル、乳化型フレーバー、油溶性フレーバー及び香辛料抽出物から選ばれる一種以上を含有する調味料であって、具材を合計で調味料全体の60質量%含有する具材入り調味料。」
で一致し、次の点で相違する。
相違点1
本件発明1は「アスペクト比が1.8?5である乾燥野菜を膨潤後の合計で調味料全体の10?60質量%含有」し、「1)膨潤後の大きさが0.5mm以上3mm未満である乾燥野菜 調味料全体中の含有量が5?30質量%
2)膨潤後の大きさが3mm以上8mm未満である乾燥野菜 調味料全体中の含有量が5?50質量%
3)膨潤後の大きさが8mm以上20mm未満である乾燥野菜 調味料全体中の含有量が0?30質量%」を満たすのに対して、甲1発明の「乾燥玉ねぎ」は、そのような条件を満たすか不明な点(以下「相違点1」という。)。
上記、相違点1について検討すると、甲2にも、上記相違点1に係る本件発明1の構成は記載も示唆もされていない。
申立人は、甲1の請求項2の記載より、アスペクト比1.8?5であると主張するが(特許異議申立書15ページ)、同記載は粒径の範囲を示すものであって、アスペクト比を示すものではないから、当該主張は採用できない。また、甲1に示される一配合例である甲1発明に対し、甲2に示される他の配合を適用する動機付けも認められない。
そして、本件発明1は、加熱調理しても、食酢や香味成分の揮散を防止しするために上記相違点1に係る構成を採用したところ、甲1には加熱調理の際の食酢や香味成分の揮散を示唆するところがないから、甲1発明において、相違点1係る構成とすることが設計事項であるともいえない。
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本件発明2について
本件発明2と甲1発明を対比すると、両者は、
「次の成分(a)?(c):
(a)乾燥野菜を含む具材
(b)食酢
(c)果汁、香味オイル、乳化型フレーバー、油溶性フレーバー及び香辛料抽出物から選ばれる一種以上を含有する調味料であって、乾燥野菜を膨潤後の合計で調味料全体の60質量%含有する具材入り調味料。」
で一致し、次の点で相違する。
相違点2
本件発明2は「アスペクト比が1.8?5である乾燥野菜を膨潤後の合計で調味料全体の10?60質量%含有」し、「1)膨潤後の大きさが0.5mm以上3mm未満である乾燥野菜 調味料全体中の含有量が0?30質量% 2)膨潤後の大きさが3mm以上8mm未満である乾燥野菜 調味料全体中の含有量が5?50質量%
3)膨潤後の大きさが8mm以上20mm未満である乾燥野菜 調味料全体中の含有量が5?30質量%」を満たすのに対して、甲1発明の「乾燥玉ねぎ」は、そのような条件を満たすか不明な点(以下「相違点2」という。)。
上記、相違点2についての判断は、上記相違点1についての判断と同様である。
したがって、本件発明2は、甲1発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 本件発明4について
本件発明4は、本件発明1又は本件発明2の発明特定事項の全てを含み、さらに技術的に限定したものであるから、上記述べたことと同様に、甲1発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない

エ 小括
本件発明1、2及び4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1、2及び4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1、2及び4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項3についての特許異議の申立ては、訂正により請求項3が削除され、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)?(c):
(a)乾燥野菜を含む具材
(b)食酢
(c)果汁、香味オイル、乳化型フレーバー、油溶性フレーバー及び香辛料抽出物から選ばれる一種以上
を含有する調味料であって、1)?3)を満たしアスペクト比が1.8?5である乾燥野菜を膨潤後の合計で調味料全体の10?60質量%含有することを特徴とする具材入り液状調味料。
1)膨潤後の大きさが0.5mm以上3mm未満である乾燥野菜 調味料全体中の含有量が5?30質量%
2)膨潤後の大きさが3mm以上8mm未満である乾燥野菜 調味料全体中の含有量が5?50質量%
3)膨潤後の大きさが8mm以上20mm未満である乾燥野菜 調味料全体中の含有量が0?30質量%
【請求項2】
次の成分(a)?(c):
(a)乾燥野菜を含む具材
(b)食酢
(c)果汁、香味オイル、乳化型フレーバー、油溶性フレーバー及び香辛料抽出物から選ばれる一種以上
を含有する調味料であって、1)?3)を満たしアスペクト比が1.8?5である乾燥野菜を膨潤後の合計で調味料全体の10?60質量%含有することを特徴とする具材入り液状調味料。
1)膨潤後の大きさが0.5mm以上3mm未満である乾燥野菜 調味料全体中の含有量が0?30質量%
2)膨潤後の大きさが3mm以上8mm未満である乾燥野菜 調味料全体中の含有量が5?50質量%
3)膨潤後の大きさが8mm以上20mm未満である乾燥野菜 調味料全体中の含有量が5?30質量%
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
前記乾燥野菜が、タマネギ、キャベツ、白菜、ニンジン、ネギ、セロリ及びパプリカから選ばれる一種以上の乾燥野菜である請求項1又は2記載の具材入り液状調味料。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-07-04 
出願番号 特願2016-181188(P2016-181188)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (A23L)
P 1 651・ 121- YAA (A23L)
P 1 651・ 537- YAA (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 川合 理恵  
特許庁審判長 藤原 直欣
特許庁審判官 紀本 孝
莊司 英史
登録日 2018-06-01 
登録番号 特許第6346231号(P6346231)
権利者 株式会社Mizkan Holdings 株式会社Mizkan
発明の名称 具材入り液状調味料  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  

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