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審決分類 審判 全部申し立て 1項1号公知  C09J
審判 全部申し立て 1項2号公然実施  C09J
審判 全部申し立て 2項進歩性  C09J
管理番号 1354100
異議申立番号 異議2018-700611  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-09-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-07-24 
確定日 2019-07-29 
異議申立件数
事件の表示 特許第6266941号発明「眼瞼下垂防止用テープ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6266941号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6266941号の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成25年10月7日に出願され、平成30年1月5日にその特許権の設定登録がされ、同年1月24日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、同年7月24日に特許異議申立人株式会社アーツブレインズ(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 9月28日付け:取消理由通知
同年12月28日 :意見書の提出(特許権者)
平成31年 3月14日付け:審尋(申立人宛)
令和 元年 5月20日 :回答書の提出(申立人)

2.本件発明について
(1)特許請求の範囲の記載について
本件の特許請求の範囲の請求項1?3には、以下の事項が記載されている。
「[請求項1]
ポリエチレンにより形成した細いテープ状部材上に、粘着剤層が設けられており、
前記テープ状部材を延伸させると共に塑性変形させ、
重瞼よりも高い位置に貼付して皮膚に食い込むように押し込んで使用する、ことを特徴とする眼瞼下垂防止用テープ。
[請求項2]
前記テープの幅が、0.4?3mmである、請求項1記載の眼瞼下垂防止用テープ。
[請求項3]
前記テープ状部材の厚さが、0.01?5mmである、請求項1又は2記載の眼瞼下垂防止用テープ。」
本件の特許請求の範囲の請求項1?3に係る発明を、以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明3」という。まとめて、「本件発明」ということもある。

(2)本件発明1の要旨について
ア 請求項1の記載について
下記3.「取消理由通知に記載した取消理由の概要」で述べるように、取消理由通知は、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものであり、下記5.「取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由について」で述べるように、取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由は、本件発明は、特許法第29条第1項第1号及び第2号に該当し、特許を受けることができないというものであって、特許法第29条第1項及び第2項所定の特許要件、すなわち特許出願に係る発明の新規性及び進歩性について審理するに当たっては、この発明を同条第1項各号所定の発明と対比する前提として、特許出願に係る発明の要旨が認定されなければならないところ、この要旨認定は、特段の事情のない限り特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきであり、特許請求の範囲の記載の技術的意義を一義的に明確に理解することができないとか、一見してその記載が明らかであるなどの特段の事情がある場合に限って、明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することが許されるにすぎない(リパーゼ事件判決)とされている。
本件において、本件発明1の「ポリエチレンにより形成した細いテープ状部材上に、粘着剤層が設けられて」いるテープが、「前記テープ状部材を延伸させると共に塑性変形させ」ることができるものであることは、請求項1の記載から明らかであるが、「眼瞼下垂防止用テープ」である本件発明1において、上記「延伸させると共に塑性変形させ」ることができるという性質を有することがいかなる技術的意義を有するのかについては、必ずしも特定することはできない。すなわち、本件発明1におけるテープ状部材が「延伸」及び「塑性変形」させることができることが、「眼瞼下垂防止」に関係するのかしないのか、いかなる形で関係するのかといった点は、本件発明1の請求項の記載から一義的に明確に理解することはできない。そうすると、本件発明1の構成の技術的意義の理解に当たり、本件明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することは許されるというべきである。

イ 本件明細書の記載について
そこで、本件発明1の要旨の認定に当たり、本件明細書の発明の詳細な説明を参酌するに、本件明細書には以下の記載がある。
「[技術分野]
[0001]
本発明は、瞼の上部に貼付することにより、皮膚のたわみを抑え、眼瞼下垂を防止することが可能な眼瞼下垂防止用テープに関する。
[背景技術]
[0002]
人の瞼の周辺は、上眼瞼挙筋、重瞼溝、瞼板、眼縁等からなり(図1)、開瞼や閉瞼の機能において、上眼瞼挙筋及び瞼板が重要な役割を果たす。加齢等により上眼瞼挙筋の筋力が衰えたり、コンタクトレンズの装着や眼をこすること等により上眼瞼挙筋や瞼板周辺の組織が傷つけられると、上眼瞼(上瞼)を挙上する能力を失う。その結果、上眼瞼が垂れ下がった状態、即ち、眼瞼下垂となる(図2及び図3)。眼瞼下垂が引き起こされると、上眼瞼によって視界が妨げられるのみならず、視界確保のために後屈姿勢を取ることが多くなり、肩こりや頭痛などが併発し得る(図4)。また、上眼瞼を持ち上げる力を前頭筋(眉毛下の筋力)によって補おうとし、額の皺の原因になる(図5)。更に、眼瞼下垂によって上眼瞼が下がった状態となるため、まつ毛が下向きとなり易く眼を小さく見せてしまう(図6)、目元付近に老けた印象を与える(図7)、といったように、人の外観にも影響を与える。このような眼瞼下垂は、形成外科手術により治療可能であるが、眼の周囲を切開することへの忌避感や費用等の面から、外科手術等を行わずとも眼瞼下垂を簡易に防止可能な手段が求められている。
[0003]
眼瞼下垂を防止する手段として、例えば特許文献1には、瞼引き上げ介助具が開示されている。当該介助具は、通常の眼鏡に別途取り付ける器具であり、薄板状の弾性体を撓めた状態で瞼に押しつけることで、当該弾性体の弾性力及び瞼との摩擦力により、瞼を引き上げることを可能とする介助具である。また、特許文献2には、基材層と粘着剤層を有し、基材層は、特定のポリウレタンエラストマーを主成分とする層であり、粘着剤層は、特定のアクリル粘着剤を主成分とする層からなる貼付材が開示されている。その用途として、当該貼付材を略三角形状に形成し瞼に貼付することによって、眼瞼下垂が防止できることが例示されている。
[先行技術文献]
・・・
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]
[0005]
しかしながら、特許文献1に係る発明では、容易に上眼瞼を引き上げることが可能であるが、瞼をバネ等により強制的に押し広げるため目元が不自然となり、更には対象者の瞼に負担がかかる等の問題があった。また、特許文献2に係る発明では、パッチ自体が多いために外観上目立ち易いことに加え、単にパッチを瞼に貼付するのみであるため、大きな動きが生じる瞼に対して追従性を有せず、装着感が良好ではなかった。
[0006]
そこで本発明は、簡単に適用可能でありながら、装着感が良好であり、外観上も目立ち難い眼瞼下垂防止用テープを提供することを課題とする。
[課題を解決するための手段]
[0007]
本発明者らは、特定の性質を有する材質及び形状の基材上に粘着剤を塗着することにより、優れた眼瞼下垂防止を発揮するテープとなることを見出し、本発明を完成させた。」

「[0022]
基材120の厚さに関しては、0.01?5mmであれば実用的と考えられるが、適用方法や適用対象等に合わせて選択可能であり、本形態に係る眼瞼下垂防止用テープにおいては、眼瞼下垂の症状(眼瞼下垂初期?後期の何れかか)によって、必要とされる上眼瞼拳上力が異なるものとなる(これらに関しては後述する)。例えば、眼瞼下垂初期?中期といった、上眼瞼の垂れ下がり部分が少ない場合には、好適には0.05?0.1mmであり、更に好適には0.05?0.09mmであり、特に好適には0.07?0.08mmである。また、眼瞼下垂後期のような、上眼瞼の垂れ下がり部分が多い場合には、基材の厚さをより厚くすることが好適である。このように基材を厚くすることにより、基材自体の強度が増すと共に、より強く皮膚への食い込むため、上眼瞼をより多く拳上することが可能となる。従って、この場合の基材120の厚さは、好適には0.1?0.2mmであり、更に好適には0.1?0.18mmであり、特に好適には0.14?0.16mmである。
[0023]
(両面粘着テープ/構成要素/粘着成分)
・材質、物性
粘着成分110a及び110bの種類としては特に限定されるものではなく、生体用として使用可能な粘着成分であればよいが、例えば下記の性質を備えることが好適である。一点目は、使用時(両面粘着テープ領域形成段階、両面粘着テープ領域については後述)を想定した、基材に引張力が印加される際に求められる性質である。具体的には、基材が引っ張られた際に追従して適度に伸びる粘弾性を有する必要がある。二点目は、適度に高められた粘着性を有することである。三点目は、使用時(上眼瞼への適用段階)を想定した、上眼瞼への付着適合性と、油脂、汗及び涙等への耐付着低減性(持続性)である(適用性)。更に、眼瞼下垂防止用テープの適用者として特に高齢者を対象とする眼瞼下垂防止用テープにおいては、加齢によって皮膚の水分量や油分量が低下していると考えられるため、上記3点の性質(粘弾性、適合性、持続性)以外にも、肌に負担や刺激が少ない(低刺激性)材料であることが好適である。」

「[0034]
(両面粘着テープ/幅)
両面粘着テープの幅も、前述した三点の性質に大きく影響を与える。特に、幅が広すぎると眼瞼下垂防止用を瞼に貼付しにくくなり、幅が狭すぎると眼瞼下垂防止用の粘着面が十分に確保されない。また、眼瞼下垂防止用である本発明においては、上眼瞼を拳上するために十分な粘着性が必要となる{特に、瞼の眼裂高(これに関しては後述する。)が高くなり、上眼瞼拳筋の筋力が弱まるため、より強い眼瞼拳上力(又はより強い粘着性)が必要となり、テープ幅を広くする必要がある}。従って、両面粘着テープの幅は、好適には0.4?3mmであり、より好適には0.4?2mmであり、特に好適には1?2mmである。
[0035]
(両面粘着テープ/長さ)
両面粘着テープの長さは、何ら限定されるものではないが、長すぎると瞼に眼瞼下垂防止用テープを貼付しにくくなり、短すぎると眼瞼下垂防止効果が不十分となる。そのため
、両面粘着テープの長さは、20mm?100mmであり、好適には25?30mmであり、より好適には26?29.5mmであり、特に好適には27?29mmである。」

「[0047]
≪用途≫
本実施形態に係る眼瞼下垂防止用テープAの具体的な用途(適用方法及び適用対象)に関する説明に先立ち、年齢に伴う眼瞼下垂の症状の進行や、適用対象としての東洋人と西洋人との相違点、を説明すると共に、本発明の技術的な意義に関して説明する。
[0048]
表3及び表4は、眼裂高及び眼裂幅の、年代別の変化を示した表である。尚、眼裂とは目を開いた状態での上眼瞼縁と下眼瞼縁の高さを示し、眼裂幅とは、目尻縁と目頭縁の幅(横)を示す(図16)。表3の通り、眼裂高は、30代をピークに徐々に低くなる(即ち、上眼瞼が下垂してくる)ことが分かる。合わせて、眼裂幅も30代をピークに小さくなることがわかる。また、表5は、眼瞼挙筋機能の年代別変化を示す。眼瞼挙筋機能計測方法としては、下方視の上眼瞼縁の位置を0とし、上方視させたとき上眼瞼縁が挙上した距離(mm)を測定したものである。表5に示されるように、20代をピークに上眼瞼を持ち上げる力(眼瞼挙筋)が衰えることがわかる(参考文献:臨床報告 日本人の眼瞼の形態及び上眼瞼挙筋機能)。
・・・
[0052]
ここで、東洋人の眼瞼周辺と、西洋人の眼瞼周辺と、をより詳細に比較すると、西洋人は目の上の脂肪が少なく、瞼を拳上するための斜めの繊維が多い(図17a)のに対して、東洋人は上眼瞼の眼窩脂肪が瞼板上縁より下の瞼板前部分にまで垂れ下がっている。また、皮下脂肪、脂肪、瞼板前脂肪も全て西洋人に比較して多く厚く、脂肪だけでなく眼輪筋(眼窩周囲にかけての筋肉の一部)や上眼瞼の皮下組織も西洋人より厚く多い(図17b)。また、東洋人は瞼を拳上するための斜めの繊維が少ない(特に東洋人に特有の一重瞼においては、図17cのように、このような繊維がほとんどない)。
[0053]
また、同図に見られるように、二重の瞼は一重の瞼にはない上眼瞼溝(二重の線)が存在する。この上眼瞼溝は皮膚表面にある溝のひとつであり、皮膚の折れ目となる。この折れ目は上眼瞼縁からほぼ6?7mm程の所にあり、この折れ目の裏側から、繊維性の薄い膜構造が目を開く時に用いる上眼瞼挙筋と結合している。この上眼瞼挙筋は上瞼を眼球に沿って、上方(むしろ上後方)に瞼を引き上げる作用を持っている。従って、目を開く動作を行うと、この折れ目よりも下部の瞼が上部にある瞼の後方へ引き上げられる(この際に、二重瞼等が形成される)。元来が一重瞼の場合は、この上眼瞼溝(二重の線)あるいは折れ目から上眼瞼挙筋の動きを伝える薄い膜構造のようなものが欠損している状態であり、上眼瞼挙筋と折れ目の連続性を有しない。
[0054]
以上説明したように、加齢による眼瞼拳筋の低下のみならず、東洋人は基本的に、上眼瞼を拳上するための力が弱いが、西洋人は、もともとの眼瞼を拳上する力(瞼の引き込み力)が強い。従って、例えば、西洋人に対しては、あまり眼瞼下垂が進行していない場合、シート状等の幅広いパッチ等を瞼に貼付した場合においても、自然と瞼が目の後ろに引き込まれ、パッチ貼付箇所が折りたたまれることにより、眼瞼下垂が防止されることとなる。他方、東洋人の場合には、眼瞼下垂がある程度進行してしまうと、このようなパッチ形状を配するのみでは、上眼瞼が上方に引き込まれることがないため、上眼瞼は垂れ下がったままとなり眼瞼下垂に対する防止能があまり得られない。
[0055]
そこで、本発明においては、このような幅広いパッチ状等ではなく、テープ状とすることで、能動的にテープを皮膚に強く食い込ませ適当な皮膚の折り目を形成し、瞼が持ち上げられる際に上眼瞼が巻き込みながら引き上げられるようにすることで、眼瞼下垂を防止することを可能としたものである。このように、本発明は、元来上眼瞼を拳上する能力が弱い東洋人等に対しても効果的な、強い眼瞼防止効果を有するものである。
[0056]
<一般的な適用方法>
図18及び図19を用いて、眼瞼下垂防止用テープAの瞼への一般的な使用方法(貼付方法)を詳述する。図18に示すように、粘着面保護シート210及び220を摘み、眼瞼下垂防止用テープA全体を左右に延伸させる。この際、粘着面保護シートは把持部へと分離し、両面粘着テープのみからなる箇所すなわち両面粘着テープ領域300と、把持部410及び420と、が形成される。次に、図19aに示すように、当該両面粘着テープ領域300を、眼瞼下垂箇所に配し固定した後、図19bのように、把持部を切除する。この際、眼瞼下垂防止用テープAの適用箇所としては、重瞼よりも高い位置(通常、眼縁から7mm以上の箇所)となる(図20参照)。この点が、類似品でありながら目的が相違する二重瞼形成用テープと大きく相違する(二重瞼形成用テープの適用箇所は重瞼の位置)。即ち、眼瞼下垂防止用テープの場合には、適用対象者は、上眼瞼が下垂し、上眼瞼挙筋が筋力低下しているため、二重用の折り目を造る場合等と比較し、瞼を上に引き上げる力がより必要となることから、眼縁からある程度高い位置(重瞼よりも高い位置)に貼付する必要があるのである。」

ウ 本件発明1の課題、解決手段及び作用効果について
上記2.(2)イ「本件明細書の記載について」で認定した本件明細書の各記載に基づいて検討する。
[0002]には、「加齢等により上眼瞼挙筋の筋力が衰えたり、コンタクトレンズの装着や眼をこすること等により上眼瞼挙筋や瞼板周辺の組織が傷つけられると、上眼瞼(上瞼)を挙上する能力を失う。その結果、上眼瞼が垂れ下がった状態、即ち、眼瞼下垂となる」ことが記載され、「眼瞼下垂が引き起こされると、上眼瞼によって視界が妨げられる・・・、肩こりや頭痛などが併発し得る・・・、額の皺の原因になる・・・、まつ毛が下向きとなり易く眼を小さく見せてしまう・・・、目元付近に老けた印象を与える・・・、といったように、人の外観にも影響を与える」こと、及び「このような眼瞼下垂は、形成外科手術により治療可能であるが、眼の周囲を切開することへの忌避感や費用等の面から、外科手術等を行わずとも眼瞼下垂を簡易に防止可能な手段が求められている」ことが記載されている。そして、[0003]?[0005]には、眼瞼下垂を防止する従来の手段として「瞼引き上げ介助具」及び「貼付材」があったが、「目元が不自然となり、更には対象者の瞼に負担がかかる」、「外観上目立ち易いことに加え、・・・瞼に対して追従性を有せず、装着感が良好ではなかった」等の問題があったことが記載されている。
そうすると、本件発明1の課題は、[0006]に記載されているように「簡単に適用可能でありながら、装着感が良好であり、外観上も目立ち難い眼瞼下垂防止用テープを提供すること」にあるものと認められる。
また、[0007]には、本件発明1の課題解決手段について、「特定の性質を有する材質及び形状の基材上に粘着剤を塗着することにより、優れた眼瞼下垂防止を発揮するテープとなることを見出し」たものであることが記載され、より詳しくは、[0022]には、基材の厚さに関して「眼瞼下垂の症状(眼瞼下垂初期?後期の何れかか)によって、必要とされる上眼瞼拳上力が異なるものとなる」ことから、「眼瞼下垂後期のような、上眼瞼の垂れ下がり部分が多い場合には、基材の厚さをより厚くすることが好適である」ことが記載され、[0023]には、粘着成分について「眼瞼下垂防止用テープの適用者として特に高齢者を対象とする眼瞼下垂防止用テープにおいては、加齢によって皮膚の水分量や油分量が低下していると考えられるため、上記3点の性質(粘弾性、適合性、持続性)以外にも、肌に負担や刺激が少ない(低刺激性)材料であることが好適である」ことが記載され、[0034]には、両面粘着テープの幅について、「眼瞼下垂防止用である本発明においては、上眼瞼を拳上するために十分な粘着性が必要となる{特に、瞼の眼裂高(これに関しては後述する。)が高くなり、上眼瞼拳筋の筋力が弱まるため、より強い眼瞼拳上力(又はより強い粘着性)が必要となり、テープ幅を広くする必要がある}」ことが記載されており、[0035]には、両面粘着テープの長さについて「長すぎると瞼に眼瞼下垂防止用テープを貼付しにくくなり、短すぎると眼瞼下垂防止効果が不十分となる」ことが記載されている。
さらに、[0047]?[0055]には、「年齢に伴う眼瞼下垂の症状の進行や、適用対象としての東洋人と西洋人との相違点」に基づいて、本件発明1の技術的な意義に関して、「幅広いパッチ状等ではなく、テープ状とすることで、能動的にテープを皮膚に強く食い込ませ適当な皮膚の折り目を形成し、瞼が持ち上げられる際に上眼瞼が巻き込みながら引き上げられるようにすることで、眼瞼下垂を防止することを可能としたものである。このように、本発明は、元来上眼瞼を拳上する能力が弱い東洋人等に対しても効果的な、強い眼瞼防止効果を有するものである」ことが記載されており、[0056]には、その一般的な適用方法について、「眼瞼下垂防止用テープの場合には、適用対象者は、上眼瞼が下垂し、上眼瞼挙筋が筋力低下しているため、二重用の折り目を造る場合等と比較し、瞼を上に引き上げる力がより必要となることから、眼縁からある程度高い位置(重瞼よりも高い位置)に貼付する必要があ」り、「この点が、類似品でありながら目的が相違する二重瞼形成用テープと大きく相違する」ことが記載されている。

エ 本件発明1の要旨について
上記のような本件発明1の課題、解決手段及び作用効果によれば、本件発明1は、請求項1に記載された発明特定事項を備え、「重瞼よりも高い位置に貼付して皮膚に食い込むように押し込んで使用する」ことにより眼瞼下垂を防止することができ、上記「簡単に適用可能でありながら、装着感が良好であり、外観上も目立ち難い眼瞼下垂防止用テープを提供する」という課題を解決する発明であり、本件発明1の「ポリエチレンにより形成した細いテープ状部材上に、粘着剤層が設けられて」いるテープは、そのような使用方法により課題を解決し得るように、すなわち、眼瞼下垂の防止が図れるようにするための「前記テープ状部材を延伸させると共に塑性変形させ」ることができ、重瞼よりも高い位置に貼付して皮膚に食い込むように押し込んで使用する構成を備えたものであると解するのが相当である。

(3)本件発明2、3の要旨について
本件発明2及び3は、いずれも本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるところ、本件発明2、3の要旨は、本件発明1の要旨をそれぞれ請求項2、3に記載されたとおりの発明特定事項によりさらに限定したものと認められる。

3.取消理由通知に記載した取消理由の概要
本件の請求項1?3に係る特許に対して平成30年9月28日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。
なお、引用文献は、下記4.(1)「引用文献及びその記載事項」に記載したとおりである。
理由I(進歩性) 本件特許の請求項1?3に係る発明は、下記引用文献1に記載された発明及び周知の技術的事項(引用文献2?7)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

4.取消理由通知に記載した取消理由(理由I(進歩性))についての判断
(1)引用文献及びその記載事項
<引用文献等一覧>
1.特許第3277180号公報(甲第5号証の1)
2.Isoomama, "デカ目メイクでモテ顔に変身する方法", YouTubeJP, [online], 2010年11月30日, [検索日 不明], <URL:https://www.youtube.com/watch?v=LdppF__yCeU>(甲第10号証、甲第11号証の1?甲第11号証の11)
3."盛れる!! JELLY", vol.2, 別冊・夏の大人ビューティー!, ぶんか社ムック328号, 株式会社ぶんか社, 平成23年7月1日, p.82?83(甲第12号証)
4."SCawaii!(エス カワイイ!)", 2009年3月号, 株式会社主婦の友社, 平成21年3月1日, p.102(甲第13号証)
5.よっぴ, "眼瞼下垂手術当日!", ブログ「眼瞼下垂という恐ろしい病気について語る!」, [online], 2012年12月12日, [検索日 2018年7月14日], <URL:https://ameblo.jp/reoreo4271019/entry-11425623501.html>(甲第2号証の1)
6.タナママ, "眼瞼下垂[応急措置]手術まではアイテープで瞼を持ち上げれば楽。", ブログ「30代女子。悩みのあれこれ。」, [online], 2013年8月19日, [検索日 2018年7月9日], <URL:http://ttnnrrmm.blog.fc2.com/blog-entry-8.html>(甲第2号証の2)
7.スリーエム ヘルスケア株式会社 医療用製品事業部, "皮膚貼付用テープ製品 診断/分析機器用材料 2010-2011総合カタログ", 2010年(甲第8号証)

(i)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、以下の事項が記載されている。
(1-1)「[請求項1]延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材に、粘着剤を塗着することにより構成した、
ことを特徴とする二重瞼形成用テープ。」

(1-2)「[0008]上記構成を有する二重瞼形成用テープによって二重瞼を形成するには、テープ状部材の両端を把持して弾性的に延びた状態になるように引っ張り、その状態でテープ状部材の粘着剤を塗着した部分を瞼におけるひだを形成したい位置に押し当てて、該粘着剤によりテープ状部材をそこに貼り付け、そのまま両端の把持部を離す。これにより、引っ張った状態にあるテープ状部材が弾性的に縮むが、本来、瞼はその両側に比して中央部が眼球に沿って前方に突出しているので、弾性的に縮んだテープ状部材がそれを貼り付けた瞼にくい込む状態になって、二重瞼のひだが形成される。両端の不要な部分はその後に切除すればよい。
[0009]このようにして、上記テープ状部材は瞼に直接二重にするためのひだを形成するので、前記従来の方法のように、皮膚につれを生じさせたり皮膜の跡を残したりすることはなく、自然な二重瞼を形成することができ、しかも、テープ状部材の両端を持って引っ張った状態でそれを瞼のひだを形成したい位置に押し付ければよいので、簡単にきれいな二重瞼を形成することができる。また、上記従来の方法では、瞼の皮膚を接着したり、瞼に片面粘着テープ等を貼り付けたりするとき、自分の操作でひだを作るためにプッシャー等を用いる必要があるが、本発明の二重瞼形成用テープは、それ自身の収縮によって二重瞼を形成するので、上記プッシャー等を用いる必要がなく、二重瞼形成を安全かつ容易に行うことができる。
[0010]
[発明の実施の形態]図1は本発明の二重瞼形成用テープの一実施例を示している。この二重瞼形成用テープは、基本的には、弾性的に伸縮する細いテープ状部材1の表裏に粘着剤2を塗着することにより構成することができるものである。上記テープ状部材1としては、両端を持って引っ張ったときに伸長し、しかも、弾性的に復帰しようとする収縮力が作用するものであればよいが、特に、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有するポリエチレン等の合成樹脂により形成するのが望ましい。このテープ状部材1は、一般的には幅が1?3mm程度の細い帯状に形成されるが、幅が必ずしもその範囲内である必要はなく、また明確な帯状を形成していなくても差し支えない。更に、上記粘着剤2としては、皮膚用に用いられる各種粘着剤を利用することができる。」

(1-3)「[0016]次に、上記構成を有する二重瞼形成用テープによって二重瞼を形成する方法について説明する。図3は、テープ状部材1を、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂によって構成し、その両端の把持部3を指先で持って引っ張ることにより伸長させた状態、即ち、そのテープ状部材1を瞼に貼り付ける準備状態を示している。この状態では、テープ状部材1が弾性的に復帰しようとする収縮力を持っている。
[0017]次に、このテープ状部材1は、両端を把持して引っ張ったままの状態で、図4に示すように、粘着剤2を塗着した部分を、瞼7におけるひだを形成したい位置に押し当てて、該粘着剤2によりテープ状部材1をそこに貼り付け、そのまま両端の把持部3を離す。これにより、引っ張った状態にあるテープ状部材1が弾性的に縮むが、本来、瞼はその両側に比して中央部が眼球に沿って前方に突出しているので、弾性的に縮んだテープ状部材1がそれを貼り付けた瞼7にくい込む状態になって、二重瞼のひだが形成される。両端の把持部3はひだの形成後に切除する。
[0018]このようにして、上記テープ状部材1は瞼7に直接二重にするためのひだを形成するので、前記従来の方法のように、皮膚につれを生じさせたり皮膜の跡を残したりすることはなく、自然な二重瞼を形成することができ、しかも、テープ状部材1の両端を持って引っ張った状態でそれを瞼7のひだを形成したい位置に押し付ければよいので、簡単にきれいな二重瞼を形成することができる。また、上記従来の方法では、瞼の皮膚を接着したり、瞼に片面粘着テープ等を貼り付けたりするとき、自分の手でひだを作るためにプッシャー等を用いる必要があるが、上記二重瞼形成用テープでは、それ自身の収縮によって二重瞼を形成するので、上記プッシャー等を用いる必要がなく、二重瞼形成を安全かつ容易に行うことができる。」

(1-4)「[図4]



(1-5)「[0001]
[発明の属する技術分野]本発明は、簡単かつ容易にきれいな二重瞼を形成できるようにした二重瞼形成用テープまたは糸、及びその製造方法に関するものである。
[0002]
[従来の技術]二重瞼を形成するために、従来から、水性ラテックスエマルジョンやポリマーエマルジョンなどを用いて瞼の皮膚を接着し、二重のひだを形成する方法、あるいは、瞼に片面粘着テープを貼り付けたり硬化型ポリマーを塗着することにより皮膜を形成し、それによって二重の折り込みひだを形成する方法などが知られている。しかしながら、これらの方法は、いずれも非常に細かい作業を行う必要があって、ある程度慣れないときれいな仕上がりを得ることができず、また、前者の接着による場合には接着により皮膚のつれが生じたり、後者の皮膜形成では皮膜の跡が残るなどの問題もあった。
[0003]
[発明が解決しようとする課題]本発明は、このような問題を解決し、皮膚につれを生じさせたり皮膜の跡を残したりすることなく、簡単にきれいな二重瞼を形成できるようにした二重瞼形成用テープまたは糸を提供することにある。本発明の他の課題は、瞼に直接二重にするためのひだを形成し、自然な二重を形成できるようにした二重瞼形成用テープまたは糸を提供することにある。本発明の他の課題は、二重瞼形成のための操作が安全かつ容易な二重瞼形成用テープまたは糸を提供することにある。本発明の他の課題は、上記二重瞼形成用テープをきわめて容易に製造する方法を提供することにある。」

(ii)引用文献7に記載された事項
引用文献7には、以下の事項が記載されている。
(7-1)「

」(「3M^(TM)皮膚貼付用 両面テープ」の項)

(2)引用文献1に記載された発明
引用文献1の請求項1(摘記1-1)には、「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材に、粘着剤を塗着することにより構成した、ことを特徴とする二重瞼形成用テープ。」が記載されており、上記テープ状部材は、「特に、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有するポリエチレン等の合成樹脂により形成するのが望ましい」こと(摘記1-2)、及び「一般的には幅が1?3mm程度の細い帯状に形成される」こと(摘記1-2)が記載されている。また、上記二重瞼形成用テープによって二重瞼を形成する方法については、「テープ状部材1を、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂によって構成し、その両端の把持部3を指先で持って引っ張ることにより伸長させた状態」とし、「両端を把持して引っ張ったままの状態で、図4(当審注:摘記1-4)に示すように、粘着剤2を塗着した部分を、瞼7におけるひだを形成したい位置に押し当てて、該粘着剤2によりテープ状部材1をそこに貼り付け、そのまま両端の把持部3を離す」ことにより、「本来、瞼はその両側に比して中央部が眼球に沿って前方に突出しているので、弾性的に縮んだテープ状部材1がそれを貼り付けた瞼7にくい込む状態になって、二重瞼のひだが形成される」こと(摘記1-3)が記載されている。
そうすると、引用文献1には次の発明が記載されている。
「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有するポリエチレン等の合成樹脂により形成した幅が1?3mm程度の細いテープ状部材に、粘着剤が塗着されており、上記テープ状部材の両端の把持部を指先で持って引っ張ることにより伸長させた状態とし、粘着剤を塗着した部分を、瞼におけるひだを形成したい位置に押し当てて、該粘着剤によりテープ状部材をそこに貼り付け、そのまま両端の把持部を離すことにより、弾性的に縮んだテープ状部材がそれを貼り付けた瞼にくい込む状態になるように使用される、二重瞼形成用テープ。」(以下、「引用発明」という。)

(3)本件発明1について
ア 本件発明1と引用発明との対比
本件発明1の要旨は、上記2.(2)エ「本件発明1の要旨について」に記載したとおりのものと認められる。
本件発明1と引用発明とを対比すると、後者における「ポリエチレン」、「細いテープ状部材」、「粘着剤が塗着」及び「テープ」は、それぞれ前者における「ポリエチレン」、「細いテープ状部材」、「粘着剤層が設けられ」及び「テープ」に相当する。また、後者における「テープ状部材の両端の把持部を指先で持って引っ張ることにより伸長」は、「テープ状部材」が「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」ものであることを参酌すると、前者における「テープ状部材を延伸させると共に塑性変形」することに相当する。さらに、後者において、テープ状部材を、瞼におけるひだを形成したい位置に「押し当てて」貼り付ける点、及びそれにより、テープ状部材がそれを貼り付けた「瞼にくい込む状態」になる点は、前者における「皮膚に食い込むように押し込」むことに相当する。加えて、後者の貼付位置である「瞼におけるひだを形成したい位置」と前者の貼付位置である「重瞼よりも高い位置」とは、「瞼」である点で共通する。
そうすると、両者は、
「ポリエチレンにより形成した細いテープ状部材上に、粘着剤層が設けられており、
前記テープ状部材を延伸させると共に塑性変形させ、
瞼に貼付して皮膚に食い込むように押し込んで使用する、テープ。」
の点で一致し、

相違点1:テープの貼付位置が、本件発明1においては「重瞼よりも高い位置」であるのに対し、引用発明においては「瞼におけるひだを形成したい位置」である点
相違点2:テープの用途が、本件発明1においては「眼瞼下垂防止用」であるのに対し、引用発明においては「二重瞼形成用」である点
で相違する。そこで、上記相違点について検討する。

イ 相違点2について
事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。
引用発明は、引用文献1の[0001]?[0003](摘記1-5)等の記載からみて、「皮膚につれを生じさせたり皮膜の跡を残したりすることなく、簡単にきれいな二重瞼を形成できるようにした二重瞼形成用テープ・・・を提供すること」、「瞼に直接二重にするためのひだを形成し、自然な二重を形成できるようにした二重瞼形成用テープ・・・を提供すること」及び「二重瞼形成のための操作が安全かつ容易な二重瞼形成用テープ・・・を提供すること」を課題とするものと認められ、引用発明は、当該課題を解決するために、「ポリエチレン等の合成樹脂により形成した幅が1?3mm程度の細いテープ状部材に、粘着剤が塗着され」たものを、「延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する」という性質を備えたものとするとともに、「テープ状部材の両端の把持部を指先で持って引っ張ることにより伸長させた状態とし、粘着剤を塗着した部分を、瞼におけるひだを形成したい位置に押し当てて、該粘着剤によりテープ状部材をそこに貼り付け、そのまま両端の把持部を離すことにより、弾性的に縮んだテープ状部材がそれを貼り付けた瞼にくい込む状態になるように使用」することにより二重瞼を形成し、上記課題を解決するものと解することができる。
ここで、一般に、眼瞼下垂とは、「上眼瞼microblepharonが下垂し,開瞼幅が縮小した状態」(「南山堂 医学大辞典」, 19版2刷, 株式会社南山堂, 2006年5月10日, p.449)を指すものであり、二重瞼とは、「瞼の皮にひだがあって二重になっているもの。ふたかわめ。重瞼。」(新村出編, 「広辞苑 第五版」, 第五版第一刷, 株式会社岩波書店, 1998年11月11日, p.2337)を指すものであることは技術常識である。
そのため、二重瞼の者が眼瞼下垂の状態になったとしても二重瞼が直ちになくなることはなく、二重瞼ではない眼瞼下垂の者が眼瞼下垂ではない状態になったとしても直ちに二重瞼になるということもない。
そうすると、二重瞼ではない瞼(一重瞼)を二重瞼とすることと、眼瞼下垂を防止することとには、直接的な関連を見出すことはできない。
また、引用文献1には、二重瞼の形成により「眼瞼下垂防止」が可能となることは、直接的に記載されていないし、示唆もされていない。さらに、引用文献1には、引用発明の課題とする「きれいな二重」や「自然な二重」を形成することを可能にするテープ状部材の性質、形状、粘着成分について、「特に、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有するポリエチレン等の合成樹脂により形成するのが望ましい。このテープ状部材1は、一般的には幅が1?3mm程度の細い帯状に形成されるが、幅が必ずしもその範囲内である必要はなく、また明確な帯状を形成していなくても差し支えない。更に、上記粘着剤2としては、皮膚用に用いられる各種粘着剤を利用することができる」([0010])と記載されているが、これらの記載は、きれいな二重瞼や自然な二重瞼を形成することに関するものであって、引用発明のテープ状部材は、上記2.(2)エ「本件発明1の要旨について」に記載したように、眼瞼下垂の防止が図れるようにするためのテープである本件発明の要旨として把握されるテープ状部材とは、その延伸の程度や塑性変形の大きさにおいて異なるといえる。
加えて、引用文献2?7(摘記2-1?7-1)にも、二重瞼の形成が眼瞼下垂を防止することと直接的な関係があることは記載されておらず、引用発明と本件発明1とは課題が異なるものということができるから、「二重瞼形成用」のテープである引用発明のテープ状部材の延伸の程度や塑性変形の大きさを、本件発明の要旨として把握される眼瞼下垂の症状に合わせて設定されたテープ状部材のものに変更することは、当業者が動機付けられることとはいえない。
そうすると、相違点2に係る本件発明1の構成は、引用発明及び引用文献1?7に記載された事項から当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

ウ 申立人の主張について
申立人は、令和元年5月20日に提出した回答書(第6?7頁)において、上記相違点2に関して、「引用発明1においても、引用文献1の[0008]及び[0017]並びに図4に記載されているように、テープを瞼に押し当てている。
しかも、本件特許の出願前に、眼瞼下垂の防止を目的とし、二重瞼を形成することにより、瞼の開きを良くして黒目の露出割合をより大きくすることは周知(引用文献5及び6)の事項であり、また、目元の美容を目的とし、延伸させたテープを、重瞼よりも高い位置に押し当てて二重瞼を形成することにより、瞼の開きを良くして黒目の露出割合をより大きくすることも周知(引用文献2?4)の事項であった。」と主張している。
しかし、引用文献5には眼瞼下垂を治療する手術について記載されているが、二重瞼形成用のテープにより眼瞼下垂を防止できることは記載されていない。また、引用文献6には、眼瞼下垂手術までの応急措置としてアイテープで瞼を持ち上げることが記載されているが、時間が経つと粘着力が落ちてくるため、リキッドタイプのアイプチで補強をしたこと等が記載されているから、アイテープは眼瞼下垂を防止するという用途に用いても満足できる防止効果は得られないものであると解される。さらに、引用文献2?4にも、目元の美容を目的とした二重瞼形成用のテープを眼瞼下垂の防止という用途にも用いることができることは記載されていない。
よって、請求人の主張を採用することはできない。

エ 本件発明1についてのまとめ
以上のとおり、相違点2に係る本件発明1の構成は、引用発明及び引用文献1?7に記載された事項から当業者が容易に想到し得たこととはいえないから、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は引用発明及び引用文献1?7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

(4)本件発明2、3について
本件発明2及び3は、いずれも本件発明1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項をさらに限定したものである。
そうすると、本件発明2及び3は、本件発明1と同じ理由により、いずれも引用発明及び引用文献1?7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

(5)理由I(進歩性)についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1?3は、いずれも引用発明及び引用文献1?7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、上記取消理由通知に記載した取消理由により、本件請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。

5.取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許異議申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書において、取消理由通知で採用した理由(取消理由3:進歩性)に加え、以下の取消理由により本件発明に係る特許は取り消すべきものである旨を申し立てている。
取消理由1(新規性)
本件発明1?3は、下記甲第9号証の1?5(周知の技術的事項として甲第1号証、甲第2号証の1及び2、甲第3号証、甲第4号証の1?3、甲第5号証の1?3、甲第6号証、甲第7号証、甲第8号証、甲第10号証、甲第11号証の1?11、甲第12号証及び甲第13号証を参酌する。)に照らせば、本件特許に係る出願の出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明であって、特許法第29条第1項第1号に該当し特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

取消理由2(新規性)
本件発明1?3は、下記甲第9号証の1?5(周知の技術的事項として甲第1号証、甲第2号証の1及び2、甲第3号証、甲第4号証の1?3、甲第5号証の1?3、甲第6号証、甲第7号証、甲第8号証、甲第10号証、甲第11号証の1?11、甲第12号証及び甲第13号証を参酌する。)に照らせば、本件特許に係る出願の出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であって、特許法第29条第1項第2号に該当し特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

<引用文献等一覧>
甲第1号証:高須クリニック, "眼瞼下垂(がんけんかすい):二重まぶた(二重瞼)・目もと(目元)", [online], [検索日 2018年7月4日], <URL:https://www.takasu.co.jp/operation/eye/ganken.html>
甲第2号証の1:よっぴ, "眼瞼下垂手術当日!", ブログ「眼瞼下垂という恐ろしい病気について語る!」, [online], 2012年12月12日, [検索日 2018年7月14日], <URL:https://ameblo.jp/reoreo4271019/entry-11425623501.html>(引用文献5)
甲第2号証の2:タナママ, "眼瞼下垂[応急措置]手術まではアイテープで瞼を持ち上げれば楽。", ブログ「30代女子。悩みのあれこれ。」, [online], 2013年8月19日, [検索日 2018年7月9日], <URL:http://ttnnrrmm.blog.fc2.com/blog-entry-8.html>(引用文献6)
甲第3号証:株式会社フィートジャパンの登記簿謄本, 平成30年7月10日発行
甲第4号証の1?3:株式会社フィートジャパンが販売する製品の外袋の表裏及び内容物の写真, 印刷日 平成30年7月23日
甲第5号証の1:特許第3277180号公報(引用文献1)
甲第5号証の2:特許第3277180号公報の登録原簿, 発行日 平成30年2月9日
甲第5号証の3:株式会社アーツブレインズの登記簿謄本, 発行日 平成30年7月19日
甲第6号証:無効審判(無効2011-800133号)の審決に対する審決取消請求事件(平成24年(行ケ)第10059号)において、野尻英行が乙第6号証として提出した陳述書, 平成24年10月30日
甲第7号証:無効審判(無効2011-800133号)の審決に対する審決取消請求事件(平成24年(行ケ)第10059号)において、松浦賢が甲第1号証として提出した陳述書, 平成23年7月1日
甲第8号証:スリーエム ヘルスケア株式会社 医療用製品事業部, "皮膚貼付用テープ製品 診断/分析機器用材料 2010-2011総合カタログ", 2010年(引用文献7)
甲第9号証の1:株式会社アーツブレインズの製品の写真(表面)
甲第9号証の2:株式会社アーツブレインズの製品の写真(裏面)
甲第9号証の3:株式会社アーツブレインズの製品の写真(側面)
甲第9号証の4:株式会社アーツブレインズの製品の写真(取扱説明書)
甲第9号証の5:株式会社アーツブレインズの製品の写真(中身)
甲第10号証:Isoomama, "デカ目メイクでモテ顔に変身する方法", YouTubeJP, [online], 2010年11月30日, [検索日 不明], <URL:https://www.youtube.com/watch?v=LdppF__yCeU>というタイトルの動画を収録したDVD(引用文献2)
甲第11号証の1:甲第10号証の動画を取得したURLのキャプチャ画面, 2010年11月30日(引用文献2)
甲第11号証の2?11:甲第10号証の動画のキャプチャ画像, 2010年11月30日
甲第12号証:"盛れる!! JELLY", vol.2, 別冊・夏の大人ビューティー!, ぶんか社ムック328号, 株式会社ぶんか社, 平成23年7月1日, p.82?83(引用文献3)
甲第13号証:"SCawaii!(エス カワイイ!)", 2009年3月号, 株式会社主婦の友社, 平成21年3月1日, p.102(引用文献4)
以下、甲第1号証?甲第13号証を「甲1」?「甲13」等といい、まとめて「甲号証」ともいう。

(2)取消理由1及び2(新規性)について
ア 甲号証の記載事項
(i)甲9の1?甲9の5に記載された事項
甲9の1には、以下の事項が記載されている。
(甲9の1-1)「ストレッチファイバー MEZAIK アーツブレインズ」(箱中央上部)
甲9の2には、以下の事項が記載されている。
(甲9の2-1)「ストレッチファイバー PAT [特許第3277180号](当審注:特許番号は四角囲みされている。)」(箱上部)
(甲9の2-2)「ストレッチファイバーは伸縮性のある粘着性極細繊維で、できています。まぶたの表面を接着したりテープで硬くする方法ではなく、ファイバーの持つ伸縮性を利用してふたえの深いクビレをつくります。
・・・ストレッチファイバーでつくる深いクビレのふたえはお肌への負担を少なくし、本物のように自然でクッキリとした『ふたえのライン』を実現しました。」(箱中央部)
甲9の3には、以下の事項が記載されている。
(甲9の3-1)「[本体材料]シリコンゴム、ポリエチレン、皮膚用アクリル粘着剤」(箱側面上部)
(甲9の3-2)「[製造販売元]株式会社アーツブレインズ 東京都新宿区西新宿4-32-12」(箱中央上部)
(甲9の3-3)「(商品コードMENN2201)」(箱中央下部)
甲9の4には、以下の事項が記載されている。
(甲9の4-1)「STEP2
付属スティックの先を軽く押しあて最適な『ふたえのライン』を探します。
[ヒント](当審注:「ヒント」の文字は丸囲みされている。)見つけたライン上にストレッチファイバーを使用してください。
STEP3
ストレッチファイバーの両はしをつまむようにして持ち、ピンと張ります。
・・・
STEP4
ストレッチファイバーをピンと引っ張ったまま、まぶたに強く押しあてます。
[コツ](当審注:「コツ」の文字は丸囲みされている。)普通に貼り付けるのではなく『ふたえのクビレ』ができるようにピンと引っ張った状態で貼りつけてください。ストレッチファイバーが深くまぶたにくい込むようにします。」(取扱説明書中央部)
甲9の5には、以下の事項が記載されている。
(甲9の5-1)甲9の5には、延伸前後のストレッチファイバーと定規を一緒に写した画像が記載されており、延伸前のストレッチファイバーの幅は1?4mmの範囲にあることが看取される。

(ii)甲5の3に記載された事項
甲5の3には、以下の事項が記載されている。
(甲5の3-1)「商号 株式会社アーツブレインズ
本店 東京都渋谷区千駄ヶ谷五丁目23番15号
・・・
役員に関する事項 取締役 野尻英行
・・・
登記記録に関する事項 平成22年9月1日東京都新宿区西新宿四丁目32番12号から本店移転 平成22年 9月 3日登記」(第1?3頁)

イ 甲9の1?甲9の5に開示された発明
甲9の1?甲9の5(摘記甲9の1?甲9の5-1)には、「MEZAIK ストレッチファイバー」という製品の写真が記載されており、甲9の1(表面)及び甲9の3(側面)には、当該製品の製造販売元が株式会社アーツブレインズであること、甲9の3(側面)には、株式会社アーツブレインズの所在地が東京都新宿区西新宿4-32-12であることが記載されている。
また、甲9の2(裏面)には、当該製品が特許第3277180号の実施品であること、甲9の3(側面)には、製品の本体材料がシリコンゴム、ポリエチレン及び皮膚用アクリル粘着剤であることが記載され、甲9の4(取扱説明書)には、「STEP3 ストレッチファイバーの両はしをつまむようにして持ち、ピンと張ります」、「STEP4 ストレッチファイバーをピンと引っ張ったまま、まぶたに強く押しあてます。 コツ 普通に貼り付けるのではなく「ふたえのクビレ」ができるようにピンと引っ張った状態で貼りつけてください。ストレッチファイバーが深くまぶたにくい込むようにします」と記載されている。
ここで、甲9の2(裏面)に記載された「特許第3277180号」(摘記甲9の2-1)は、甲5の1(引用文献1)である特許第3277180号公報に記載された発明であると解されるところ、引用文献1には、上記4.(2)「引用文献1に記載された発明」に記載したとおりの「二重瞼形成用テープ」に関する「引用発明」が記載されており、また、当該特許の特許権者及び発明者が「野尻英行」であることも記載されている。さらに、甲5の3(第2頁)には、「野尻英行」が株式会社アーツブレインズの取締役の一人であることが記載されている(摘記甲5の3-1)ことから、甲9の1(表面)及び甲9の3(側面)に記載された製造販売元である株式会社アーツブレインズ(摘記甲9の1-1、甲9の3-3)は、引用発明の特許権者及び発明者が取締役の一人である会社法人であることが理解できる。加えて、甲9の3(側面)に記載された本体材料(摘記甲9の3-1)、甲9の2(裏面)に記載された「ふたえ」の形成の機序(摘記甲9の2-2)、甲9の4(取扱説明書)に記載された使用方法(摘記甲9の4-1)、及び甲9の5(中身)に記載された延伸前後のストレッチファイバーの幅(摘記甲9の5-1)を合わせて参酌すると、甲9の1?甲9の5に開示された製品は、特許第3277180号公報(引用文献1)に記載された発明(引用発明)の実施品であると解することができる。
そして、甲9の1?甲9の5に開示された製品は、商品コードが付され(摘記甲9の3-3)日本国内において一般に販売されたものと解されるが、製品(側面)に記載された製造販売元の所在地(摘記甲9の3-2)は、甲5の3(摘記甲5の3-1)に記載された本店所在地の移転の記録からみて、平成22年8月31日以前の所在地であるから、当該製品は本件特許に係る出願の出願前に日本国内において一般に販売されたものと理解することができる。
なお、甲9の1?甲9の5には、上記製品が「眼瞼下垂防止用」に用いることができることは記載されていない。

そうすると、甲9の1?甲9の5には、実質的に、上記4.(2)「引用文献1に記載された発明」に記載したとおりの「二重瞼形成用テープ」に関する「引用発明」が開示されているものといえ、当該発明は本件特許に係る出願の出願前に日本国内において公然知られた発明であり、また、公然実施された発明であるといえる。

ウ 本件発明1について
(ア)本件発明1と引用発明との対比
本件発明1と引用発明とを対比すると、両者は上記4.(3)ア「本件発明1と引用発明との対比」に記載したとおりの点で一致し、上記相違点1及び2の点で相違するものと認められる。
そこで、上記相違点について検討する。

(イ)相違点2について
事案に鑑み、まず相違点2について検討する。
(イ-1)甲1について
申立人は、特許異議申立書の第6?7頁において甲1を引用し、「美容目的で瞼を開いたときの黒目の露出割合をより大きくする(所謂『デカ目』にする)ことと、瞼による病的な視野の狭窄(眼瞼下垂)を解消するために、瞼を開いたときの黒目の露出割合をより大きくすることとは、瞼を上げて瞼の開きを良くするという点において全く同じことを意味しており、両者の相違は、単に『病的な眼瞼下垂の瞼を対象とする治療目的のものか、そうではない瞼を対象とする美容目的のものか』の違いにすぎない。」と主張している。
しかし、甲1には、眼瞼下垂を手術により治療することは記載されているが、眼瞼下垂を「テープ」により治療することは記載されておらず、まして、「二重瞼形成用テープ」という美容目的のテープを用いて眼瞼下垂の治療を行うことができることは記載も示唆もされていない。また、眼瞼下垂の治療によって、必然的に二重瞼が形成されることも示されていない。そうすると、甲1の記載を参酌しても、相違点2が実質的な相違点ではないと解することはできない。

(イ-2)甲2の1及び2、甲3、甲10、甲11の1?11、甲12及び甲13について
申立人は、特許異議申立書の第7?11頁において上記の甲号証を引用し、「このように、瞼を上げて瞼の開きを良くし、瞼を開けたときの黒目の露出割合をより大きくする瞼の開きの改善が、二重瞼の形成によって実現できることは、本件出願前に既に技術常識にすぎなかったといえる。」(第11頁)と主張している。
ここで、上記甲号証のうち、甲3以外の甲号証は、平成30年9月28日付け取消理由通知で引用した引用文献5(甲2の1)、引用文献6(甲2の2)、引用文献2(甲10、甲11の1?11)、引用文献3(甲12)及び引用文献4(甲13)に相当するところ、上記4.(3)イ「相違点2について」?同ウ「申立人の主張について」に記載したとおり、これらの甲号証には、二重瞼形成用のテープを眼瞼下垂の防止という用途にも用いることができることは記載されていない。また、二重瞼形成によって、眼瞼下垂が防止されることも示されていない。
さらに、甲3は、株式会社フィートジャパンの登記簿謄本であるところ、甲3にも二重瞼形成用のテープを眼瞼下垂の防止という用途にも用いることができることは記載されていない。
よって、上記甲号証の記載を参酌しても、相違点2が実質的な相違点ではないと解することはできない。

(イ-3)「メザイク」について(甲9の1?5、甲5の1及び甲5の3について)
申立人は、特許異議申立書の第11?12頁において、甲9の1?5、甲5の1及び甲5の3を引用し、「上記甲第10号証、甲第11号証の1?11、甲第12号証、及び甲第13号証において使用されている二重瞼形成用テープ『メザイク』とは、甲第9号証の1?5に示す『MEZAIK ストレッチファイバー』のことであり、甲第9号証の3に示すように、申立人である株式会社アーツブレインズの製品である。・・・すなわち、この甲第9号証の1?5のパッケージの『メザイク』は、本件出願時に既に公知となっていた。」と主張している。
当該主張については、上記5.(2)イ「甲9の1?甲9の5に開示された発明」において検討したとおりであるところ、これらの甲号証には、二重瞼形成用のテープを眼瞼下垂の防止という用途にも用いることができることは記載されていない。
よって、上記甲号証の記載を参酌しても、相違点2が実質的な相違点ではないと解することはできない。

(イ-4)甲2の2、甲3、甲4の1?3について
申立人は、特許異議申立書の第12?13頁において、甲2の2、甲3、甲4の1?3を引用し、「したがって・・・瞼を上げて瞼の開きを良くし、瞼を開けた時の黒目の露出割合をより大きくする瞼の開きの改善が、二重瞼の形成によって実現できるという技術常識の下で、これらの事項を考慮すると、本件発明の『眼瞼下垂防止用テープ』が、実質的には『二重瞼形成用テープ』であることは明らかである。」と主張している。
しかし、上記の甲号証には、二重瞼形成用のテープを眼瞼下垂の防止という用途にも用いることができることは記載されていない。
よって、上記甲号証の記載を参酌しても、相違点2が実質的な相違点ではないと解することはできない。

(イ-5)その他の甲号証について
請求人が提示したその他の甲号証(甲4、甲5の2、甲6、甲7及び甲8)には、二重瞼形成用のテープを眼瞼下垂の防止という用途にも用いることができることは記載されていない。
よって、上記甲号証の記載を参酌しても、相違点2が実質的な相違点ではないと解することはできない。

(イ-6)相違点2についてのまとめ
以上のとおり、申立人が提示したすべての甲号証の記載を参酌しても、相違点2が実質的な相違点ではないと解することはできない。

(ウ)本件発明1についてのまとめ
そうすると、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は引用発明であるとはいえないから、本件発明1が本件特許に係る出願の出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明であるということはできず、また、本件発明1が本件特許に係る出願の出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であるということもできない。
よって、本件発明1は特許法第29条第1項第1号及び第2号のいずれにも該当せず、特許を受けることができないものとすることはできない。

エ 本件発明2、3について
本件発明2及び3は、いずれも本件発明1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項をさらに限定したものである。
そうすると、本件発明2及び3は、本件発明1と同じ理由により、いずれも引用発明であるとはいえないから、本件発明2、3が本件特許に係る出願の出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明であるということはできず、また、本件発明2、3が本件特許に係る出願の出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であるということもできない。
よって、本件発明2、3は、いずれも特許法第29条第1項第1号及び第2号のいずれにも該当せず、特許を受けることができないものとすることはできない。

オ 取消理由1(新規性)及び取消理由2(新規性)のまとめ
以上のとおり、本件発明1?3は、いずれも特許法第29条第1項第1号及び同第2号には該当せず、特許を受けることができないものではない。
よって、特許異議申立書に記載された取消理由1(新規性)及び取消理由2(新規性)により、本件請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。

6.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由のいずれによっても、本件請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-07-18 
出願番号 特願2013-210613(P2013-210613)
審決分類 P 1 651・ 111- Y (C09J)
P 1 651・ 121- Y (C09J)
P 1 651・ 112- Y (C09J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐藤 貴浩  
特許庁審判長 川端 修
特許庁審判官 日比野 隆治
天野 宏樹
登録日 2018-01-05 
登録番号 特許第6266941号(P6266941)
権利者 ワールド ワイド パートナーズ リミテッド 小林 正則
発明の名称 眼瞼下垂防止用テープ  
代理人 伊藤 温  
代理人 林 直生樹  
代理人 伊藤 温  
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