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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F25D
管理番号 1354406
審判番号 不服2018-12205  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-11 
確定日 2019-08-15 
事件の表示 特願2017- 59022号「冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月 6日出願公開、特開2017-120177号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成25年5月31日(優先日平成24年10月12日、平成25年3月12日)の出願である特願2013-115459号の一部を平成29年3月24日に新たな特許出願としたものであって、平成30年1月31日付けの拒絶理由通知に対して、平成30年4月5日に意見書及び手続補正書の提出がなされ、平成30年6月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成30年9月11日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成30年9月11日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
(1) 本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線は補正箇所を示す。)。
「貯蔵室と、前記貯蔵室の前面開口部を開閉する扉とを備えた冷蔵庫において、
前記扉の前面に設けられ、携帯情報端末を着脱可能に取り付ける端末取り付け部と、
前記端末取り付け部に前記携帯情報端末を取り付けた状態で、前記携帯情報端末に給電する端末給電部とを備え、
前記扉の内部には断熱材が充填され、
前記断熱材の扉前面側には凹部が設けられ、
前記凹部内に前記携帯情報端末が着脱可能に設けられるように構成され、
前記扉の内部の断熱材は、発泡断熱材と真空断熱パネルの2層構造で構成され、
前記真空断熱パネルは、前記凹部の大きさよりも大きくなるように構成された冷蔵庫。」
(2) 本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成30年4月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「貯蔵室と、前記貯蔵室の前面開口部を開閉する扉とを備えた冷蔵庫において、
前記扉の前面に設けられ、携帯情報端末を着脱可能に取り付ける端末取り付け部と、
前記端末取り付け部に前記携帯情報端末を取り付けた状態で、前記携帯情報端末に給電する端末給電部とを備え、
前記扉の内部には断熱材が充填され、
前記断熱材の扉前面側には凹部が設けられ、
前記凹部内に前記携帯情報端末が着脱可能に設けられるように構成された冷蔵庫。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するための事項である「断熱材」について、「前記扉の内部の断熱材は、発泡断熱材と真空断熱パネルの2層構造で構成され、前記真空断熱パネルは、前記凹部の大きさよりも大きくなるように構成され」ていることの限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2) 引用文献の記載事項及び記載された発明
ア 引用文献1
(ア) 原査定の拒絶の理由で引用された本願優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2004-271174号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で参考のために付したものである。)。
「【請求項1】
外観をなす本体と、
前記本体に着脱可能に提供され、冷蔵庫を制御する端末機と、
前記本体の一方に提供され、外部から電源の供給を受けて所定の充電電源に変換し、前記端末機側に供給する電源供給装置と、
前記電源供給装置と前記端末機とを電気的に連結する電気連結部とを含む冷蔵庫。」
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷蔵庫に関し、特に着脱型端末機を有する冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に冷蔵庫は、飲食物の新鮮度を長時間維持し、かつユーザーに水などの飲料を冷たい状態で提供したり、氷を提供する装置である。
前記冷蔵庫の内部には冷凍サイクルの一部を構成する圧縮機が備えられており、その圧縮機の駆動によって前記冷蔵庫の内部は常に所定の温度以下に維持される。
【0003】
一方、最近の冷蔵庫は、冷蔵及び冷凍機能をユーザーが単純に手動で操作するのでなく、冷蔵庫自体にネットワークが可能な装置が備えられ、インターネットを通じて情報を提供されたり、ホームネットワークシステムの主制御機器によって作動するように所定のコンピュータが内蔵され、冷蔵庫自体が電子的に制御される。
【0004】
そして、前記冷蔵庫の外部に前記コンピュータが内蔵された端末機画面が提供され、ユーザーは一種のタッチスクリーンのような方式で冷蔵庫の運転に必要な命令を入力できるようになる。」

「【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明による冷蔵庫は、外観をなす本体と、前記本体に着脱可能に提供され、冷蔵庫を制御する端末機と、前記本体の一方に提供され、外部から電源の供給を受けて所定の充電電源に変換し、前記端末機側に供給する電源供給装置と、前記電源供給装置と前記端末機とを電気的に連結する電気連結部とを含むことを特徴とする。
【0015】
前記本体は、前記端末機を収容し、前記端末機の着脱のために開閉可能に提供されるケースと、前記ケースが挿入連結されるケース挿入溝とを含む。
【0016】
前記ケースは、前記端末機が挿入されるように開放された上部と、前記端末機の前面が露出するように、所定の大きさの窓を有する前面部と、前記端末機の下面を支持する底面部と、前記端末機の両側面を支持して案内する側面部と、前記端末機の背面を支持する背面部とを含む。
【0017】
前記ケースの側面部は、前記端末機の挿入/引出が容易なように、前記端末機の両側面より低く形成される。
【0018】
前記ケースの背面部は、前記端末機の挿入/引出が容易なように、前記端末機の背面より低く形成される。
【0019】
前記本体は、前記ケースが回転によって開閉されるように、前記ケースと、前記ケースの挿入溝とを連結する回転装置をさらに含む。
【0020】
前記回転装置は、前記ケースの側面部と、前記挿入溝の両側面に提供されるヒンジ部を含む。
【0021】
前記ヒンジ部は、前記ケースの下部の両側面にそれぞれ形成され、前記ケースの回転中心となる突起部と、前記突起部に対応するように前記挿入溝の両側面に形成される溝部とを含む。
【0022】
前記電源供給装置は、外部電源の供給を受けるACアダプタと、前記ACアダプタから電源の供給を受け、所定の充電電源に変換する充電レギュレータと、前記電気連結部を介して前記端末機に供給される充電電源を調節するように、前記充電レギュレータを制御して供給される充電電源を調節するマイクロコンピュータとを含む。
【0023】
前記電気連結部は、前記端末機の内部に収容される充電バッテリと、前記電源供給装置とを電気的に連結する接続端子部と、前記接続端子部と、前記電源供給装置とを電気的に連結する電気配線とを含む。
【0024】
前記接続端子部は、前記充電バッテリに電気的に連結されるように、前記端末機の一方に提供される第1接続端子と、前記端末機の装着時に前記第1接続端子に対応するように前記ケースに提供される第2接続端子と、を含む。
【0025】
前記接続端子部は、前記充電バッテリに電気的に連結されるように、前記端末機の一方に提供される第1接続端子と、前記端末機の前面が前方を向くように装着される場合、前記第1接続端子に対応するように前記ケースに提供される第2接続端子と、前記端末機の前面が後方を向くように装着される場合、前記第1接続端子に対応するように、前記ケースに提供される補助接続端子とを含む。
【0026】
前記第1接続端子は、前記端末機の下面の一方に提供される。
【0027】
前記第2接続端子と前記補助接続端子は、前記ケースの底面部に相互に対称になるように備えられる。
【0028】
前記第2接続端子と前記補助接続端子は、前記端末機側に突出するように提供される。
【0029】
前記端末機は、その下面に前記第1接続端子と対称になるように形成され、前記端末機が傾いたり、第2接続端子、または前記補助接続端子が損傷したりしないように、前記第2接続端子、または前記補助接続端子を収容する端子溝を含む。
【0030】
一方、前記端末機は、前記本体の前面にあるドアの前面に着脱される。
【0031】
そして、前記端末機は、前面に冷蔵庫の運転情報を表示する画面を有し、タッチスクリーン方式で命令を入力する。」
「【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明による冷蔵庫の好ましい実施形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0037】
まず、本発明による冷蔵庫の機能について説明する。
【0038】
前記冷蔵庫は、冷凍サイクルによって飲食物や飲料を新鮮な状態で保管及び維持する冷蔵機能、水を氷らせて氷状態で提供する製氷機能、及び飲食物を冷凍させ保管する冷凍機能を行うように構成される装置である。
【0039】
このために、前記冷蔵庫には冷凍サイクルを構成する圧縮機と、熱交換装置などが備えられ、冷蔵庫の外観をなす本体の内部には飲食物を収容する冷蔵室と、冷凍室とがその使用目的に従って適当な大きさで形成される。
【0040】
前記冷蔵室と冷凍室とで構成される内部空間は、前記冷蔵庫の本体の前面を構成するドアによって開閉され、前記ドアの前面には冷蔵庫を制御する小型コンピュータが内蔵された端末機が装着される。前記端末機によって、前記冷蔵庫は、ネットワークを介してインターネット上の情報を提供されたり、ホームネットワークシステムの主制御機器によって電子的に制御されうるし、ユーザーに情報を表示したり、ユーザーからの運転命令を入力する。」
「【0042】
図2は、本発明による冷蔵庫の上部に着脱型端末機が備えられた状態を示す斜視図である。
図2を参照すると、本発明による冷蔵庫1は、外観をなす冷蔵庫本体10と、前記本体の一方に設置される電源供給装置40と、前記本体に提供される端末機70と、及び前記電源供給装置40と前記端末機70とを電気的に連結する電気連結部とを備えている。」
「【0044】
前記ドア20の前面には内側に形成された所定の空間を有する挿入溝50と、前記挿入溝50内に設置され、この挿入溝50の両側壁52、53に回転可能に連結されるケース60とが備えられている。そして、前記ケース60には前記端末機70が着脱可能に装着される。
【0045】
図3を参照すると、前記ケース60は、前記着脱型端末機70の挿入/引出ができるように開放された上部(図示せず)と、前記端末機70の前面をなす画面表示部71が露出するように所定の大きさの窓61を有する前面部62と、前記端末機の両側面を支持して案内し、前記挿入溝50の両側壁52、53に対応する側面部64、65と、前記端末機70の背面を支持する背面部66と、前記端末機の下面を支持する底面部68とで構成されている。
【0046】
前記ケース60は、前記前面部62、前記側面部64、65、前記背面部66、及び底面部68によって形成される内部空間に前記着脱型端末機70が挿入、または分離されうるように、前記端末機70の収容に適した所定の大きさを有する。」
「【0052】
図2乃至図5を参照すると、前記電源供給装置40は、前記端末機70と別に前記冷蔵庫本体10の一方、特に前記本体の上部に設置される。
図5を参照すると、冷蔵庫の外部から印加された電源は、前記電源供給装置40によって前記電気連結部を介して前記着脱型端末機70の充電用バッテリ74に供給される。
ここで、前記電源供給装置40は、外部の電源を入力されるACアダプタ42と、前記ACアダプタ42から電源の供給を受け、所定の大きさの充電電源を供給する充電レギュレータ44、及び前記充電レギュレータ44を制御して供給される充電電源を調節するマイクロコンピュータ46とで構成される。
【0053】
そして、前記電気連結部は、前記着脱型端末機70の内部に収容される充電バッテリ74に電気的に連結されるように前記端末機70の一方に提供される第1接続端子72と、前記端末機70の装着時に前記第1接続端子に対応するように前記ケースの底面部に提供される第2接続端子58と、及び前記第2接続端子58と前記電源供給装置40とを電気的に連結する電気配線22とを備えている。
【0054】
前記第2接続端子58は、前記端末機70の装着方向が変わった場合、例えば、前記端末機70の画面表示部71が後方に向かうように装着された場合にも、前記第1接続端子72と接続できるように構成されることが好ましい。このために、前記第1接続端子72は、前記端末機70の下面の中央に構成され、前記第2接続端子58も前記ケース底面部68の中央に設置されるように構成(図示せず)されうる。
【0055】
上記構成とは異なり、前記第1接続端子72が前記端末機の下面の一方、特に前部に提供され、前記第2接続端子58は、前記ケース底面部68の前部に提供され、前記端末機の画面表示部71が前方に向かうように装着された場合にのみ前記第1接続端子に接続するように構成されることもある。ここで、前記電気連結部は、前記端末機の画面表示部71が後方に向かうように装着された場合、前記第1接続端子72に対応するように、前記ケースの底面部に提供される補助接続端子59をさらに含む。より詳細に説明すると、前記第2接続端子と、前記補助接続端子は、前記ケース底面部68に相互に対称になるように構成される。
【0056】
前記端末機70側の第1接続端子72と、前記ケース側の第2接続端子58は、少なくともある一方が突出するように構成されることが好ましい。これは、前記着脱型端末機70が前記ケース60内に挿着される時、両側端子72、58の接続不良を防止して電源供給が円滑に行われるようにするためである。
【0057】
本実施形態においては、前記第2接続端子58が突出するように構成されており、これに対応して、前記補助接続端子59も突出するように構成される。
前記接続端子部が提供される位置は、前記ケース60の底面部および前記着脱型端末機70の下面以外の位置にも提供されうることは勿論である。
【0058】
また、前記着脱型端末機70の下面には、前記第1接続端子58と対称になる位置に端子溝73がさらに形成されることが好ましい。
【0059】
前記端子溝73は、前記着脱型端末機70が前記ケースに挿着された場合、前記補助接続端子、または第2接続端子を収容して前記端末機の傾きを防止し、前記補助接続端子、または第2接続端子の損傷を防止する。
【0060】
前記第1接続端子72、第2接続端子58、及び前記補助接続端子59は、前記電気連結部の接続端子部を構成する。本発明において、前記接続端子部は、前記端末機の装着方向が変わった場合、特に、前記画面表示部の方向が後方に向かうように装着された場合にも、前記端末機の充電バッテリ74が前記電源供給装置40との電気的な連結を維持できるように構成されるし、前記接続端子部の構成は、上述したものに限定されず、多様に行われうることが分かる。即ち、前記補助接続端子が前記端末機のコンピューターに連結されるように端末機側に形成され、前記端子溝が前記ケースの底面部に形成されるように、本発明とは逆の構成を有することもある。」
「【符号の説明】
【0072】
1…冷蔵庫
10…冷蔵庫本体
20…冷蔵庫ドア
22…電気配線
24…ドア用ヒンジ
40…電源供給装置
42…ACアダプタ
44…充電レギュレータ
46…マイクロコンピュータ
50…挿入溝
60…端末機用ケース
70…冷蔵庫用端末機
74…充電用バッテリ」




(イ) 上記(ア)の事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「冷蔵庫の外観をなす本体の内部には飲食物を収容する冷蔵室と、冷凍室とが形成され、
前記冷蔵室と冷凍室とで構成される内部空間は、前記冷蔵庫の本体の前面を構成するドアによって開閉され、
前記ドアの前面には内側に形成された所定の空間を有する挿入溝と、前記挿入溝内に設置され、この挿入溝の両側壁に回転可能に連結されるケースとが備えられ、前記ケースには前記冷蔵庫を制御する小型コンピュータが内蔵された端末機が着脱可能に装着され、
前記本体の一方に設置される電源供給装置と、前記電源供給装置と前記端末機とを電気的に連結する電気連結部とを備え、
前記冷蔵庫の外部から印加された電源は、前記電源供給装置によって前記電気連結部を介して前記端末機の充電用バッテリに供給される、
冷蔵庫。」

(3)引用発明との対比・判断
本件補正発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能又は作用からみて、引用発明の「冷蔵庫」、「冷蔵室」及び「冷凍室」、「ドア」、「前面」、「着脱可能」並びに「電気連結部」は、それぞれ本件補正発明の「冷蔵庫」、「貯蔵室」、「扉」、「前面」、「着脱可能」及び「端末給電部」に相当する。
また、引用発明の「冷蔵庫」は、開口部を備えることは明らかであるから、引用発明の「前記冷蔵室と冷凍室とで構成される内部空間は、前記冷蔵庫の本体の前面を構成するドアによって開閉され」ることは、本件補正発明の「前記貯蔵室の前面開口部を開閉する扉とを備えた」ことに相当する。
本件補正発明の「携帯情報端末」について、本願明細書の「情報管理のためのタブレットPCやスマートフォン等の携帯情報端末」(【0002】)との記載事項を参酌すれば、携帯可能な情報を管理する端末を広く意味すると解せるので、引用発明の「着脱可能に装着され」る「前記冷蔵庫を制御する小型コンピュータが内蔵された端末機」は、本件補正発明の「着脱可能に取り付け」られる「携帯情報端末」に相当する。
さらに、引用発明の「前記ドアの前面には内側に形成された所定の空間を有する挿入溝と、前記挿入溝内に設置され、この挿入溝の両側壁に回転可能に連結されるケースとが備えられ、前記ケースには前記冷蔵庫を制御する小型コンピュータが内蔵された端末機が着脱可能に装着され」る態様は、扉の前面に、端末機を着脱可能に取り付ける取り付け部を備えているといえるので、本件補正発明の「前記扉の前面に設けられ、携帯情報端末を着脱可能に取り付ける端末取り付け部」を備えた態様に相当する。
引用発明の「前記本体の一方に設置される電源供給装置と、前記電源供給装置と前記端末機とを電気的に連結する電気連結部とを備え、前記冷蔵庫の外部から印加された電源は、前記電源供給装置によって前記電気連結部を介して前記端末機の充電用バッテリに供給される」ことは、端末機が、ケースに取り付けた状態で給電されることは明らかであり、本件補正発明の「前記端末取り付け部に前記携帯情報端末を取り付けた状態で、前記携帯情報端末に給電する端末給電部とを備え」た態様に相当する。

したがって、本件補正発明は、引用発明と以下の一致点で一致し、相違点で相違する。
(一致点)
「貯蔵室と、前記貯蔵室の前面開口部を開閉する扉とを備えた冷蔵庫において、
前記扉の前面に設けられ、携帯情報端末を着脱可能に取り付ける端末取り付け部と、
前記端末取り付け部に前記携帯情報端末を取り付けた状態で、前記携帯情報端末に給電する端末給電部とを備えた、
冷蔵庫。」

(相違点)
冷蔵庫の扉について、本件補正発明は、「前記扉の内部には断熱材が充填され、前記断熱材の扉前面側には凹部が設けられ、前記凹部内に前記携帯情報端末が着脱可能に設けられるように構成され、前記扉の内部の断熱材は、発泡断熱材と真空断熱パネルの2層構造で構成され、前記真空断熱パネルは、前記凹部の大きさよりも大きくなるように構成され」ているのに対して、引用発明は、ドアの詳細については、不明である点。

そこで、上記相違点について検討する。

(相違点の判断)
一般に、冷蔵庫の扉の内部構造として、発泡断熱材と真空断熱パネルの2層構造で構成したものは、本願優先日前に周知の事項である(例えば、特開2011-38713号公報【0041】、【0042】、図4、国際公開第03/089859号FIG.2、特開2011-69559号公報図2等参照。)。
そして、引用発明の冷蔵庫のドアにおいて、冷蔵庫の断熱性を高めるために、上記本願優先日前に周知の事項である、発泡断熱材と真空断熱パネルの2層構造を採用することは、当業者が容易に採用し得ることである。
また、引用発明のドアの内部構造として、発泡断熱材と真空断熱パネルの2層構造を採用する際に、引用発明が「前記ドアの前面には内側に形成された所定の空間を有する挿入溝」を有し、引用文献1の図2、3も併せてみると、ドアが内部に向かって凹部を成す構造となることから、ドア内部における発泡断熱材は、凹部をなすことは明らかであり、また、当該凹部は、ドアの一部に設けられるものであるから、発泡断熱材とともに2層構造をなす真空断熱パネルが、当該凹部の大きさより、大きくなるものと認められる。仮に、そうでないとしても、冷蔵庫の扉の断熱性を考慮すれば、引用発明において、挿入溝の形状に応じて凹部を設けた発泡断熱材を充填するとともに、真空断熱材を扉全面に配置して、上記相違点に係る本件補正発明の特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

なお、請求人は、「しかし、引用文献1は、ドア20の内部構造が不明であるため、引用文献1からは、本願発明1の技術的思想、即ち、携帯情報端末を扉に取り付け易くするために、扉の断熱材に設けた凹部によって、扉の断熱材の断熱厚さを薄くなってしまいますが、本願発明1では、扉の内部の断熱材を、発泡断熱材と真空断熱パネルの2層構造で構成し、熱伝導率が低い真空断熱パネルを、上記凹部の大きさよりも大きくするように構成することにより、断熱厚さの薄さを補うことができるという技術的思想を、全く読み取ることができません。
また、引用文献3には、回転式扉23の内部を硬質ウレタンフォーム41と真空断熱材51の2層構造で構成することが開示されていますが、この引用文献3からも、上記した本願発明1の技術的思想を、全く読み取ることができません。
よって、引用文献1に引用文献3を適用したとしても、本願発明1に容易に到達することはできません。」(平成31年1月7日付け上申書「3.本願が特許させるべき理由」の項参照。)と主張している。
しかしながら、上記周知の事項において、発泡断熱材と真空断熱パネルの2層構造とすることで断熱性を高めるとの技術思想が把握されるのであって、上記相違点に係る本件補正発明の特定事項は、上述のとおり、引用発明及び本願優先日前に周知の事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるから、上記請求人の主張は採用できない。

よって、本件補正発明は、引用発明及び本願優先日前に周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4) 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成30年4月5日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「第2 1 補正の内容 (2) 本件補正前の特許請求の範囲」請求項1参照。)により特定されるとおりのものと認める。

2 原査定の拒絶の理由
請求項1に係る原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2004-271174号公報

3 引用文献
原査定の拒絶理由に引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は、前記「第2 2 補正の適否(2)引用文献の記載事項及び記載された発明」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明から、「前記扉の内部の断熱材は、発泡断熱材と真空断熱パネルの2層構造で構成され、前記真空断熱パネルは、前記凹部の大きさよりも大きくなるように構成され」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含むものに相当する本件補正発明が、前記「第2 2 (3)引用発明との対比・判断」に記載したとおり、引用発明及び本願優先日前に周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明及び本願優先日前に周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び本願優先日前に周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-06-17 
結審通知日 2019-06-18 
審決日 2019-07-02 
出願番号 特願2017-59022(P2017-59022)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F25D)
P 1 8・ 575- Z (F25D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金丸 治之久島 弘太郎  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 山崎 勝司
大屋 静男
発明の名称 冷蔵庫  
代理人 特許業務法人 サトー国際特許事務所  

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