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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1354500
審判番号 不服2018-11407  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-23 
確定日 2019-09-03 
事件の表示 特願2016-553600「拡張フレーム間スペースを回避すること」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月27日国際公開、WO2015/127367、平成29年 5月18日国内公表、特表2017-512413、請求項の数(20)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2015年(平成27年)2月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年2月24日 米国、2015年2月13日 米国)を国際出願日とする特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 1月 9日 手続補正書の提出
平成30年 1月24日付け 拒絶理由通知書
平成30年 4月13日 意見書、手続補正書の提出
平成30年 5月22日付け 拒絶査定
平成30年 8月23日 拒絶査定不服審判の請求

第2 原査定の概要

原査定(平成30年 5月22日付け 拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 1-20
・引用文献等 1

<引用文献等一覧>
1.特表2009-523352号公報

第3 本願発明

本願の請求項1-20に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明20」という。)は、平成30年4月13日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-20に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「 送信機会(TXOP)の始めに第1のメッセージを送信することと、ここにおいて、前記第1のメッセージが、前記TXOP内の終了メッセージの終わりまで拡張する持続時間を示し、第1のデータレートで送信される第1の部分と、前記第1のデータレートよりも高い第2のデータレートで送信される第2の部分とを備える、
前記第1のデータレートで前記終了メッセージを送信することと、ここにおいて、前記終了メッセージが、送信可(CTS)メッセージ、またはさらなる肯定応答(ACK)が送られないであろうことを示すメッセージを備え、前記終了メッセージは、他の局が拡張フレーム間スペース(EIFS)期間の間待つことなしにバックオフカウントを開始できるという前記他の局へのインジケータである、
を備えるワイヤレス通信の方法。」

本願発明2-20の概要は、以下のとおりである。

本願発明2-9は、本願発明1を減縮した発明である。

本願発明10は、本願発明1に対応する装置の発明であり、カテゴリ表現が異なるだけの発明である。
本願発明11-14は、本願発明10を減縮した発明である。

本願発明15は、本願発明1に対応する送信機を備える装置の発明であり、カテゴリ表現が異なるだけの発明である。
本願発明16、17は、本願発明15を減縮した発明である。

本願発明18は、本願発明1に対応するコンピュータ可読記憶媒体の発明であり、カテゴリ表現が異なるだけの発明である。
本願発明19、20は、本願発明18を減縮した発明である。

第4 引用例1の記載事項及び引用発明

原査定の拒絶の理由で引用された、特表2009-523352号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審において付与したものである。)

1.「【0001】
本発明は、無線LAN(Wireless LAN:WLAN)に係り、さらに詳細には、HT(High Throughput)ステーションとIEEE 802.11レガシーステーションとが共存するWLANでのCSMA/CA(Carrier Sensing Multiple Access with Collision Avoidance)方法に関する。
(中略)
【0004】
図1Aに示したように、一般的なIEEE 802.11WLANで伝送されるデータフレームのMACヘッダには、データフレームが伝送された後、それに対する受信確認フレームであるACK(Acknowledgement)フレームが受信されるまでの時間である<duration>情報が含まれ、このようなフレームを受信したステーションは、MACヘッダを解釈して、<duration>時間には媒体接近を試みずに衝突が起きない。無線媒体の特性上、たとえ伝送されたフレームが特定ステーションに送られるものであっても、WLAN内の全てのステーションは、そのフレームを感知し、<duration>情報を認知できるためである。
【0005】
このように、仮想キャリアセンシングは、MPDU/PSDU(MAC Protocol Data Unit/PHY Service Data Unit)がエラーなしに正常的に解釈されてはじめて、正確なCSMA/CAメカニズムが可能である。すなわち、媒体を使用しようとするステーションがデータフレームのMACヘッダ値を正常的に読み込んではじめて、仮想キャリアセンシングが可能になる。
【0006】
しかし、発信側ステーションが高速の伝送データ率(Tx Rate)を使用してフレームを伝送した時やチャンネル状態が不安でエラーが発生した時、または受信側ステーションで該当データ速度を処理できない場合には、受信されたMPDU/PSDUを解釈できないので、仮想キャリアセンシングが不可能であるので、CSMA/CA方式が非効率的に動作するという問題が発生する。したがって、WLAN内にIEEE 802.11a、b、g規格によるレガシーステーションやMIMO(Multi Input Multi Output)ステーションやチャンネルボンディング技術を使用するステーションのように、既存のレガシーステーションより向上したデータ伝送能を有するHTステーションが共存する場合、HTステーションによってHTフォーマットのフレームが伝送されれば、これを受信したレガシーステーションは、HTフォーマットのフレームを解釈できないので、仮想キャリアセンシングを正確に行われないという問題が発生する。
【0007】
一方、図1Bでは、IEEE 802.11aで使われるデータフレームの構造を示したが、図1Bに示したように、物理階層ヘッダのSIGNAL Fieldには、RATEとLENGTHとの情報が含まれているので、これを解釈すれば、Duration情報を予測できて媒体使用に対する衝突を防止しうる。
【0008】
現在標準化が進行中であるIEEE 802.11nでは、図2に示したように、WLANにHTステーションとレガシーステーションとが共存する場合、レガシーステーションが理解できるようにHTフォーマットのデータフレームにレガシーフォーマットの物理階層(PHY)ヘッダ(L-Preamble,L-SIG)を付加し、L-SIGフィールドにL-SIGフィールド以後からACKフレームを受信完了するまでの時間を記録する方法が提案された。
【0009】
すなわち、レガシーステーションがHTフォーマットのフレームを受信した場合、レガシーフォーマットのPHYヘッダに含まれたRATEフィールド値とLENGTHフィールド値とを認知できるので、HTフォーマットのMACヘッダを解釈できなくても、<duration>に該当する期間に媒体が使用中であると判断できて衝突を防止しうる。以下では、このように、HTフォーマットのデータフレームに付加されたレガシーフォーマットのL-SIGフィールドのうち、RATEフィールド値とLENGTHフィールド値とによって特定される時間区間をLTPP(L-SIG Tx Opportunity Protection Period)と称す。
【0010】
一方、LTPPメカニズムを使用する場合、媒体使用に対する衝突は防止できるが、媒体使用権限を得るための競争において、ステーション間の不公平が発生するが、これを、図3を参照して説明する。
【0011】
図3に示したように、LTPPメカニズムを使用する場合、レガシーステーションは、PHYヘッダを解釈できても、それ以後、すなわち、HTフォーマットのデータフレームに該当する部分は解釈できないため、エラーが発生し、PHY(Baseband)レイヤは、MACレイヤにエラーが発生したことを知らせる。
【0012】
エラーが発生したことを知らせる時点は、LTPPが終わる時点であるが、この時からレガシーステーションは、HTステーションより長い時間を待機した後に、媒体使用権限を得るための競争に参与する。レガシーステーションがHTフォーマットのフレームを解釈できなくてエラーが発生した場合、レガシーステーションは、HTステーションと異なり、DIFS(DCF Inter FrameSpace、IEEE 802.11aの場合、34us)ではないEIFS(Extended Inter Frame Space、IEEE 802.11aの場合、94us)の時間ほど休み、バックオフを開始するためである。したがって、結局、レガシーステーションは、媒体使用権限を得るための競争において、他のHTステーションに比べて不利になる問題が発生する。」

2.「【0022】
図4は、LTPPメカニズムを使用する場合、ステーションが媒体を使用するために公平に競争可能にする方法を説明するための図である。
【0023】
CF-Endフレームは、データフレームの伝送に必要な時間であるTxOP(Transmission Opportunity)をRTS/CTSフレーム交換を通じて確保した送信ステーションが、TxOPがまだ残っているにも拘わらず、それ以上伝送するフレームがない時に残りのTxOPを返還するためのメッセージであって、CF-Endを受信したステーションは、媒体が使用可能になったということを知ることとなる。図4に示したように、送信ステーションは、HTフォーマットのデータフレームに対するACKフレームを受信した後、SIFS(Short Interframe Space)が経過すれば、レガシーフォーマットのCF-Endフレームをブロードキャストする。
【0024】
前述したように、CF-Endフレームは、媒体が使用可能であることを表すメッセージであるので、CF-Endフレームを受信したHTステーション及びレガシーステーションは、何れも同一に自身のNAV(Network Allocation Vector)タイマーをリセットして、媒体使用権限を得るための競争に公平に参与する。
【0025】
一方、HTステーションがチャンネルボンディング技術を使用してHTフォーマットのデータフレームを伝送する場合、CF-Endフレームは、単一チャンネルのそれぞれを通じてブロードキャストされねばならないが、図5に、これを示した。
【0026】
一般的に、IEEE 802.11レガシーステーションは、20MHzの帯域幅を有するチャンネルを通じてデータを送受信するが、チャンネルボンディング技術を使用するHTステーションは、隣接した二つの単一チャンネルをボンディングして40Hmzの帯域幅でデータを伝送しうる。図5に示したように、HTステーションがそれぞれ20MHzの帯域幅を有する1番チャンネル及び2番チャンネルをボンディングして40MHz帯域幅を通じてデータフレームを伝送し、それに対する受信確認(ACK)フレームを受信してフレーム交換シーケンスが完了した場合、送信ステーションのHTステーションは、チャンネルボンディングに使用した1番チャンネル及び2番チャンネルのそれぞれを通じてレガシーフォーマットのCF-Endフレームをブロードキャストせねばならない。WLANには、1番チャンネルを通じて通信するレガシーステーション及び2番チャンネルを通じて通信するレガシーステーションが何れも存在できるためである。
【0027】
すなわち、もし、送信ステーションがチャンネルボンディングを使用してCF-Endフレームを伝送すれば、両チャンネルに存在するレガシーステーションは、そのCF-Endフレームを解釈できなくなり、もし、何れか一側チャンネルにのみCF-Endフレームを伝送すれば、他の一側チャンネルを使用するレガシーステーションは、媒体が使用可能になったにも拘わらず、NAVタイマーをリセットできないためである。」

3.

上記記載及び当業者の技術常識からみて、

(1)上記2の段落23には、送信ステーションはTxOPを確保していることが記載されていることから、送信ステーションは、「TxOP内」に送信するといえる。
また、送信ステーションが送信するデータフレームについては、上記1の段落8-9及び上記3の図4によれば、レガシーステーションが理解できるようにHTフォーマットのデータフレームにレガシーフォーマットの物理階層(PHY)ヘッダ(L-Preamble,L-SIG)を付加すること、及び、L-SIGフィールドにより、ACKフレームを受信完了するまでの時間を記録すること、そして、L-SIGフィールドのうち、RATEフィールド値とLENGTHフィールド値とによって特定される時間区間をLTPP(L-SIG Tx Opportunity Protection Period)とすることが記載されている。また、上記3の図4によれば、LTPP内にACKフレームを受信完了するまでが含まれていることが読み取れる。よって、「送信ステーションは、レガシーフォーマットのPHYヘッダとHTフォーマットからなるデータフレームを送信する」こと及び「データフレームは、LTPP内のACKフレームを受信完了するまでの時間を示」していることは明らかである。
そして、上記1の段落9によればPHYヘッダはレガシーフォーマットである。また、HTフォーマットの伝送速度がレガシーフォーマットの伝送速度より高速であることは技術常識である。よって、送信ステーションが送信するデータフレームは、「レガシーフォーマットのPHYヘッダ」と「レガシーフォーマットより高いレートで送信されるHTフォーマット」からなるといえる。
したがって、「送信ステーションは、TxOP内に、レガシーフォーマットのPHYヘッダとHTフォーマットからなるデータフレームを送信することと、ここにおいて、前記データフレームは、LTPP内のACKフレームを受信完了するまでの時間を示し、レガシーフォーマットのPHYヘッダと、レガシーフォーマットより高いレートで送信されるHTフォーマットとを備え」ることが記載されている。

(2)上記2の段落24及び段落26によれば、媒体が使用可能であることを表すために「送信ステーションは、フレーム交換シーケンスが完了した場合にレガシーフォーマットでCF-Endフレームを送信する」こと及び「CF-Endフレームを受信したステーションは、媒体使用権限を得るための競争に公平に参与する」ことが記載されている。

(3)上記1の段落1によれば無線LANが前提であるから、「ワイヤレス通信の方法」が記載されている。

以上を総合すると、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「 送信ステーションは、TxOP内に、レガシーフォーマットのPHYヘッダとHTフォーマットからなるデータフレームを送信することと、ここにおいて、前記データフレームは、LTPP内のACKフレームを受信完了するまでの時間を示し、前記レガシーフォーマットのPHYヘッダと、前記レガシーフォーマットより高いレートで送信される前記HTフォーマットとを備え、
前記送信ステーションは、フレーム交換シーケンスが完了した場合に前記レガシーフォーマットでCF-Endフレームを送信することと、
前記CF-Endフレームを受信したステーションは、媒体使用権限を得るための競争に公平に参与することと、
を備えるワイヤレス通信の方法。」

第5 対比・判断

1.本願発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明とを対比する。

ア.引用発明の「TxOP」は、本願発明1の「送信機会(TXOP)」に相当し、引用発明の「レガシーフォーマットのPHYヘッダとHTフォーマットからなるデータフレーム」を「第1のメッセージ」と称することは任意である。また、引用発明ではTxOP内にデータフレームを送信することから、TxOPの始めにデータフレームを送信することは明らかである。よって、引用発明の「TxOP内に、レガシーフォーマットのPHYヘッダとHTフォーマットからなるデータフレームを送信すること」は本願発明1の「送信機会(TXOP)の始めに第1のメッセージを送信すること」と一致する。
本願発明1の「TXOP内の終了メッセージの終わりまで拡張する持続時間」も引用発明の「LTPP内のACKフレームを受信完了するまでの時間」も「送信期間内の時間」といえる。
また、引用発明のHTフォーマットはレガシーフォーマットより高いレートで送信されることから、引用発明の「レガシーフォーマットのPHYヘッダ」と「レガシーフォーマットより高いレートで送信されるHTフォーマット」は、それぞれ本願発明1の「第1のデータレートで送信される第1の部分」、「第1のデータレートよりも高い第2のデータレートで送信される第2の部分」に相当する。
したがって、引用発明の「送信ステーションは、TxOP内に、レガシーフォーマットのPHYヘッダとHTフォーマットからなるデータフレームを送信することと、ここにおいて、前記データフレームは、LTPP内のACKフレームを受信完了するまでの時間を示し、前記レガシーフォーマットのPHYヘッダと、前記レガシーフォーマットより高いレートで送信される前記HTフォーマットとを備え、」と、本願発明1の「送信機会(TXOP)の始めに第1のメッセージを送信することと、ここにおいて、前記第1のメッセージが、前記TXOP内の終了メッセージの終わりまで拡張する持続時間を示し、第1のデータレートで送信される第1の部分と、前記第1のデータレートよりも高い第2のデータレートで送信される第2の部分とを備える、」とは、「送信機会(TXOP)の始めに第1のメッセージを送信することと、ここにおいて、前記第1のメッセージが、送信機会内の時間を示し、第1のデータレートで送信される第1の部分と、前記第1のデータレートよりも高い第2のデータレートで送信される第2の部分とを備える、」点で共通する。

イ.引用発明のフレーム交換シーケンスが完了した場合に送信される「CF-Endフレーム」は、フレーム交換シーケンスの終了を示していることから、本願発明1の「終了メッセージ」に相当し、引用発明のCF-Endフレームは、第1のデータレートであるレガシーフォーマットで送信されることから、引用発明の「フレーム交換シーケンスが完了した場合にレガシーフォーマットでCF-Endフレームを送信する」ことは、本願発明1の「第1のデータレートで終了メッセージを送信する」ことに相当する。
ここで、引用発明では「フレーム交換シーケンスが完了した場合に前記レガシーフォーマットでCF-Endフレームを送信」することから、CF-Endフレームは、送信ステーションから送信可(CTS)メッセージ、又はさらなる肯定応答(ACK)というデータフレームが送信されないことを示しているといえる。よって、引用発明の「CF-Endフレーム」は、本願発明1の「終了メッセージが、送信可(CTS)メッセージ、またはさらなる肯定応答(ACK)が送られないであろうことを示すメッセージ」と一致する。
また、引用発明では「CF-Endフレームを受信したステーションは、媒体使用権限を得るための競争に公平に参与する」ことから、CF-Endフレームは他のステーションが拡張フレーム間スペース(EIFS)期間の間待つことなしにバックオフカウントを開始できるという他のステーションへのインジケータであるといえることから、引用発明の「CF-Endフレーム」は、本願発明1の「終了メッセージは、他の局が拡張フレーム間スペース(EIFS)期間の間待つことなしにバックオフカウントを開始できるという前記他の局へのインジケータである」と一致する。
よって、引用発明の「送信ステーションは、フレーム交換シーケンスが完了した場合にレガシーフォーマットでCF-Endフレームを送信することと、CF-Endフレームを受信したステーションは、媒体使用権限を得るための競争に公平に参与することと、」は本願発明1の「前記第1のデータレートで終了メッセージを送信することと、ここにおいて、前記終了メッセージが、送信可(CTS)メッセージ、またはさらなる肯定応答(ACK)が送られないであろうことを示すメッセージを備え、前記終了メッセージは、他の局が拡張フレーム間スペース(EIFS)期間の間待つことなしにバックオフカウントを開始できるという前記他の局へのインジケータである、」と一致する。

したがって、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。

[一致点]
「 送信機会(TXOP)の始めに第1のメッセージを送信することと、ここにおいて、前記第1のメッセージが、送信機会内の時間を示し、第1のデータレートで送信される第1の部分と、前記第1のデータレートよりも高い第2のデータレートで送信される第2の部分とを備える、
前記第1のデータレートで終了メッセージを送信することと、ここにおいて、前記終了メッセージが、送信可(CTS)メッセージ、またはさらなる肯定応答(ACK)が送られないであろうことを示すメッセージを備え、前記終了メッセージは、他の局が拡張フレーム間スペース(EIFS)期間の間待つことなしにバックオフカウントを開始できるという前記他の局へのインジケータである、
を備えるワイヤレス通信の方法。」


[相違点]
一致点の第1のメッセージが示す「送信機会内の時間」に関し、本願発明1は、「TXOP内の終了メッセージの終わりまで拡張する持続時間」を示すのに対して、引用発明は、「LTPP内のACKフレームを受信完了するまでの時間」を示す点。

(2)判断
相違点について検討する。本願発明の第1のメッセージが備える送信機会(TXOP)内の持続時間は、「TXOP内の終了メッセージの終わりまで拡張する」ものである。
一方、引用発明のレガシーフォーマットのPHYヘッダとHTフォーマットからなるデータフレームが示す「LTPP内のACKフレームを受信完了するまでの時間」は、図4に明示されるように、「ACKフレームを受信完了するまでの時間」であり、「ACKフレームを受信完了するまでの時間」を終了メッセージ(CF-Endフレーム)の終わりまで拡張することは、記載されておらず、また時間を拡張させる動機付けも見出せない。

よって、相違点は、当業者が容易に想到できたものとすることはできない。

したがって、本願発明1は、引用発明に基づいて、当業者が容易に想到できたとはいえない。

2.本願発明2-9について

本願発明2-9は、本願発明1を減縮したものであるから、上記1.(2)と同様の理由によって、引用発明に基づいて、当業者が容易に想到できたものとはいえない。

3.本願発明10-14について

本願発明10は、本願発明1に対応する装置の発明であり、本願発明1の上記相違点に係る構成を備えるものである。また、本願発明11-14は、本願発明10を減縮したものである。よって、上記1.(2)と同様の理由によって、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4.本願発明15-17について

本願発明15は、本願発明1に対応する装置の発明であり、本願発明1の上記相違点に係る構成を備えるものである。また、本願発明16、17は、本願発明15を減縮したものである。よって、上記1.(2)と同様の理由によって、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

5.本願発明18-20について

本願発明18は、本願発明1に対応するコンピュータ可読記憶媒体の発明であり、本願発明1の上記相違点に係る構成を備えるものである。また、本願発明19、20は、本願発明18を減縮したものである。よって、上記1.(2)と同様の理由によって、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

なお、拒絶査定の備考にあげられた引用文献2(特開2005-198214号)、引用文献3(国際公開第2013/032584号)についても上記相違点に係る構成は記載されておらず、上記1.(2)と同様の理由によって、容易に発明できたものとは言えない。

第6 むすび

以上のとおり、本願発明1-20は当業者が容易に発明することができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-08-20 
出願番号 特願2016-553600(P2016-553600)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲高▼橋 真之相澤 祐介  
特許庁審判長 中木 努
特許庁審判官 井上 弘亘
脇岡 剛
発明の名称 拡張フレーム間スペースを回避すること  
代理人 岡田 貴志  
代理人 福原 淑弘  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 井関 守三  
代理人 中丸 慶洋  

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