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審決分類 審判 査定不服 特39条先願 取り消して特許、登録 G03G
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G03G
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G03G
管理番号 1354564
審判番号 不服2018-8407  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-19 
確定日 2019-09-17 
事件の表示 特願2016-249779「粉砕トナーの製造方法、二成分現像剤の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月20日出願公開、特開2017- 76145、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成24年3月15日に出願した特願2012-59402号の一部を平成28年12月22日に新たな特許出願としたものであって、平成29年9月11日に拒絶理由が通知され、同年11月20日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、平成30年4月26日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し同年6月19日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。
その後、令和元年5月15日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年7月11日に意見書が提出された。


2 原査定の概要
原査定の拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

理由1(サポート要件)
この出願は、本件補正により補正される前の特許請求の範囲の請求項1及び請求項3の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

理由2(新規性)
この出願の、本件補正により補正される前の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である特開2003-162090号公報に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由3(進歩性)
この出願の、本件補正により補正される前の請求項1?3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である特開2003-162090号公報に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は、この出願の請求項1及び請求項2に係る発明は、同日出願された特願2012-59402号(特許第6067981号)の請求項2に係る発明及び請求項2の記載を引用する請求項3に係る発明と同一と認められ、かつ、特願2012-59402号に係る発明は特許されており協議を行うことができないから、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。


4 本件発明
本願請求項1及び請求項2に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された事項により特定される、次のとおりの発明(以下、それぞれ、「本件発明1」及び「本件発明2」という。)である。
「 【請求項1】
少なくとも樹脂、着色剤、離型剤、及び帯電制御剤を含有する粉砕トナーの製造方法であって、
トナーが、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による分子量分布から求めた重量平均分子量Mwが、30000≦Mw≦95263であり、テトラヒドロフランに不溶なゲル成分の重量比率が5%未満であり、かつ、分子量が500?1500である成分の、上記GPCの分子量分布図における面積占有率が4?10%となるように、前記樹脂としての重量平均分子量が異なる複数の樹脂と、前記着色剤と、前記離型剤と、前記帯電制御剤とを選択し混合する混合工程と、
前記混合工程で混合された混合物を溶融混練する溶融混練工程と、
前記溶融混練工程で溶融混練された溶融混練物を粉砕する粉砕工程と、を含み、
前記複数の樹脂は、ポリエステル樹脂およびスチレン系樹脂を含み、
前記スチレン系樹脂は、前記ポリエステル樹脂と比較して重量平均分子量が小さいことを特徴とする粉砕トナーの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の粉砕トナーの製造方法に、さらに磁性キャリアを添加し混合する工程を含むことを特徴とする二成分現像剤の製造方法。」


5 引用文献の記載事項及び引用発明
(1)引用文献に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前の平成15年6月6日に頒布された刊行物である特開2003-162090号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、以下の記載事項がある。

ア 「【請求項4】 少なくとも結着樹脂、着色剤、定着助剤とを含むトナー母体材料を混合処理する工程、その後異方向に回転し、ギャップを設けて対向する温度差と回転速度差を設けた2本のロール間で混練処理を施す工程、その後機械的衝撃力により球形化粉砕処理する工程、必要に応じて分級処理する工程、その後外添処理する工程を含むことを特徴とするトナーの製造方法。」

イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は複写機、レーザプリンタ、普通紙FAX、カラーPPC、カラーレーザプリンタやカラーFAXに用いられるトナー、トナーの製造方法及び画像形成装置に関するものである。

(中略)

【0009】さらに後述する定着時にオイルを使用しないオイルレス定着を可能とするため、シャープメルト樹脂中にワックス等の離型剤を添加するトナー組成では帯電保持性が強く、またトナーの凝集性が強い特質を有するため、トナー像乱れ、転写不良の傾向がより顕著に生じ、転写と定着の両立が困難となる。またポリエステル樹脂中での分散性を高めるために極性基を持たせたワックスを添加したトナーでは、より凝集性が強くなり、オイルレス定着と転写性の両立が極めて困難でなる。

(中略)

【0031】
【発明が解決しようとする課題】このようにトナーは、上記した課題に対し、総合的に満足するものでなければならならず、定着ローラにオイルを使用しないオイルレス定着トナーにおいては定着部材に使用したオイル機能をトナー自身に持たせるため、トナー中にワックス等の離型剤を使用してオイルレス定着を実現し、かつタンデム方式のカラープロセスにおいても転写性を維持させ、さらにはクリーナーレスプロセスをも満足させることが必要である。
【0032】本発明は上記問題点に鑑み、均一な帯電分布を有し、画像の長期安定化を図れるトナー、トナーの製造方法及び画像形成方法を提供することを目的とする。
【0033】一成分現像法に使用しても現像ローラに縦筋が生じず、連続使用しても層規制ブレードや現像ローラにトナーの熱融着や凝集を生じず、帯電量の低下を抑え、また樹脂特性を劣化させることなく添加剤の分散性を向上させ安定した現像性を維持出来るトナー、トナーの製造方法及び画像形成方法を提供することを目的とする。

(中略)

【0039】
【課題を解決するための手段】上記課題に鑑み本発明に係る構成は、少なくとも結着樹脂、着色剤、定着助剤とを含むトナー母体材料を混合処理した後、異方向に回転し、ギャップを設けて対向する温度差と回転速度差を設けた2本のロール間で混練処理を施し、微細化処理されたトナー粒子を熱風により表面改質処理を施すトナーである。

(中略)

【0042】また、本発明に係る構成は、少なくとも結着樹脂、着色剤、定着助剤とを含むトナー母体材料を混合処理する工程、その後異方向に回転し、ギャップを設けて対向する温度差と回転速度差を設けた2本のロール間で混練処理を施す工程、その後機械的衝撃力により球形化粉砕処理する工程、必要に応じて分級処理する工程、その後外添処理する工程を含むトナーの製造方法である。」

ウ 「【0049】
【発明の実施の形態】デジタル高画質化、高精細色再現性カラー化、定着ローラにオフセット防止用のオイルを使用しないで高透光性と耐オフセット性の両立を図ることができ、さらには現像一成分におけるローラ傷やブレード融着による縦筋の発生の防止や、クリーナーレスプロセス、タンデムカラープロセスでの安定した転写性の両立実現を可能とするものである。
【0050】(ワックス)本形態のトナーに添加するワックスとしては、ヨウ素価が25以下、けん化価が30?300からなる構成のワックスを、酸価1?70mgKOH/gである結着樹脂100重量部に対して1?20重量部添加することにより、トナー多層転写時にトナーの電荷作用による反発が緩和され、転写効率の低下、転写時の文字の中抜け、画像乱れを抑えることができる。

(中略)

【0101】(結着樹脂)本形態の結着樹脂としてGPCにおける分子量分布で、2×10^(3)?3×10^(4)の領域に少なくとも一つの分子量極大ピークを有し、かつ、高分子量領域に存在する成分として3×10^(4)以上の分子量成分を結着樹脂全体に対し5%以上有し、重量平均分子量が1万?30万、Z平均分子量が2万?50万、重量重量平均分子量と数平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)が3?100、Z平均分子量と数平均分子量の比(Z平均分子量/数平均分子量)が10?2000、高化式フローテスタによる1/2法による溶融温度(以下軟化点)が80?150℃、流出開始温度は80?120℃、樹脂のガラス転移点が45?68℃の範囲であるポリエステル樹脂を成分とすることが好ましい。

(中略)

【0131】また結着樹脂はTHF不溶成分が5重量%以下、好ましくはTHF不溶成分を有しないことである。THF不溶成分が5重量%より多いとカラー画像の透光性を悪化させる要因となり、画質を劣化させてしまう。
【0132】本形態に好適に使用される結着樹脂は、アルコール成分とカルボン酸、カルボン酸エステル及びカルボン酸無水物等のカルボン酸成分との重縮合によって得られるポリエステル樹脂が好適に使用される。

(中略)

【0140】樹脂、ワックス及びトナーの分子量は、数種の単分散ポリスチレンを標準サンプルとするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定された値である。

(中略)

【0145】本形態に好適に使用される結着樹脂は、各種ビニル系モノマーによる単独重合体または共重合体も好適に使用できる。例えば、スチレン、O-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p?エチルスチレン、2,4-ジメチルアスチレン、p-nブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、P-クロルスチレンなどのスチレンのおよびその誘導体があげられ、とくにスチレンが好ましい。
【0146】またアクリル単量体としては、下記一般式(化2)の式中R^(1)は、水素原子または低級アルキル基、R^(2)は水素原子、炭素数12までの炭化水素基、ヒドロキシルアルキル基、ビニルエステル基またはアミノアクリル基である。そのアクリル単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、β-ヒドロキシアクリル酸エチル、γ-ヒドロキシアクリル酸プロピルα-ヒドロキシアクリル酸ブチル、β-ヒドロキシメタクリル酸エチル、γ-アミノアクリル酸プロピル、γ-N,N-ジエチルアミノアクリル酸プロピル、エチレングリコールジメタクリル酸エステル、テトラエチレングリコールジメタクリル酸エステル等を挙げることができる。本発明の目的に好適なスチレンーアクリル系共重合体としては、スチレン/ブチルアクリレート共重合体であり、特にスチレンを75?85重量%、ブチルアクリレートを15?25重量%含有するものが好適に使用される。
【0147】
【化2】

【0148】さらに本発明に好適に使用される結着樹脂としては、スチレン系、(メタ)アクリル酸系単量体とともに(化3)に示す長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸系の単量体を共重合させたものが好適に使用される。これによりワックス等の離型剤の分散性が著しく向上し、定着性、耐オフセット性が良化するとともに、帯電の安定性、高温低湿下の帯電上昇や、高湿下での二成分現像におけるキャリアとトナーとの混合比率のを一定化するトナー濃度制御不良等の環境課題が抑制される効果がある。結着樹脂100重量部に対して、0.01?8重量部添加される。少ないと効果が得られず、多すぎると樹脂の耐久性が低下する。
【0149】
【化3】

【0150】さらに本発明にかかる結着樹脂としては、スチレン系、(メタ)アクリル酸系単量体とともに(化4)に示すアミノ基を有する(メタ)アクリル酸系の単量体を共重合させたものが好適に使用される。例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基を有するビニル系単量体である。これによりこれによりワックス等の離型剤の分散性が著しく向上し、高温低湿下での過帯電を抑制し、帯電の安定化を図り、画質の安定性が得られる。結着樹脂100重量部に対して、0.01?5重量部添加される。少ないと効果が得られず、多すぎると耐湿性が低下する。
【0151】
【化4】


(中略)

【0153】(電荷制御剤)本形態ではトナーの電荷制御の目的、及びオイルレス定着をより強固なものとするために、結着樹脂に前記した定着助剤と電荷制御剤を併用配合する。

(中略)

【0159】(外添剤)また本形態では外添剤として、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ジルコニア、マグネシア、フェライト、マグネタイト等の金属酸化物微粉末、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム等のチタン酸塩、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸ストロンチウム等のジルコン酸塩あるいはこれらの混合物が用いられる。外添剤は必要に応じて疎水化処理される。

(中略)

【0173】(顔料)また、本形態に使用される顔料としては、カーボンブラック、鉄黒、グラファイト、ニグロシン、アゾ染料の金属錯体、、C.I.ピグメント・イエロー1,3,74,97,98等のアセト酢酸アリールアミド系モノアゾ黄色顔料、C.I.ピグメント・イエロー12,13,14,17等のアセト酢酸アリールアミド系ジスアゾ黄色顔料、C.I.ソルベントイエロー19,77,79、C.I.ディスパース・イエロー164、C.I.ピグメント・レッド48,49:1,53:1,57,57:1,81,122,5等の赤色顔料、C.I.ソルベント・レッド49,52,58,8等の赤色染料、C.I.ピグネント・ブルー15:3等のフタロシアニン及びその誘導体の青色染顔料が1種又は2種類以上で配合される。添加量は結着樹脂100重量部に対し、3?8重量部が好ましい。」

エ 「【0183】(混練工法)高せん断力さらには高圧縮せん断力による混練により、添加するワックスをより微細分散化できる。そのロールの温度設定及び温度勾配、回転数及び負荷電流の混練条件と結着樹脂の軟化点、ガラス転移点を最適な条件で処理させることにより高分散化処理を可能とできる。高せん断力とは狭い間隙で対向させたロールを高速で回転させることにより結着樹脂等のトナー材料に作用する混練力をいい、狭い間隙に挟まれた時に生じる力と、回転速度差を有する回転ロールから受けるせん断力をいう。従来の二軸押出し機では発揮できない混練力を有する。これにより結着樹脂の高分子量成分を低分子量化することが可能となる。

(中略)

【0190】高せん断力による混練により、より定着性現像性耐久性等の特性が向上する。
【0191】また、結着樹脂が溶融してローラに巻付いた状態のトナー溶融膜の表面温度とローラの加熱表面温度の差が5℃以上で50℃以下とすることが好ましい。50℃よりも高くなるとトナーの溶融膜がローラ表面から離脱し、最悪落下する場合がある。よって充分な混練性が得られず、カブリの増大、透光性の低下に繋がる。5℃よりも小さくなると結着樹脂への混練時のせん断力が弱まり分散性が向上せず、光透過性が悪化する。
【0192】さらに加熱されたロール表面にトナーの溶融膜が形成された後、ロールの加熱温度を下げることで、混練のストレスが溶融された状態でより強固なものとなる。この時の低下させる温度幅は大きすぎるとロール上でトナーの溶融層が剥離し、欠けが飛散するようになる。よって10℃から樹脂のガラス転移点の温度までの範囲が適当である。
【0193】さらに、2本のロールに原料を投入するのであるが、投入に材料が飛散し舞上る現象が避けられない。特に比重の軽い電荷制御剤が特に舞上りやすい。この舞上った材料は局所集塵等で集塵しないと周辺の機器を汚染し、トナーのコンタミを生じてしまう。そのためこの原料投入に工夫が必要となる。本構成では、トナー構成材料を原料供給フィーダから2本のロール間に投入する際、原料フィーダを冷却側のロール(RL2)側から挿入し、投入箇所を加熱側のロール(RL1)と前記ロール(RL2)の最近接点から前記ロール(RL1)の回転方向と逆方向の20度から80度までの範囲内でロール(RL1)の表面上に落下させることにした。舞上りはローラ間の熱による対流の影響があり、このローラ間から生じる熱の対流の上昇箇所にフィーダの裏面を置くことで、上昇気流を和らげることが可能となり、これにより材料の舞上りが抑えられる。さらに、原料供給フィーダの投入開口部に対し、面積比で1.2?2倍のカバーを開口部上方に設けることでより舞上りを抑えることができる。
【0194】さらには原料供給フィーダからトナー原料を落下させる際の開口部を一定以上の幅の長さとすることで舞上りを抑える効果がある。その開口部をロール(RL1)軸方向の長さが、ロール(RL1)の直径の1/2以上、2倍以下とすることである。開口部を短くすると落下箇所が点状になり、原料が溶融されないまま落下する量が増大する。それを長くすることで、ローラ上に面状に落下し溶融がスムーズに生じ落下する量を減少できる。逆に長すぎると投入時に原料の均一性が失われ、場所により配合比の濃度が変化する。

(中略)

【0214】図6に示した本形態のトナーの球形化装置の1実施例について説明する。
【0215】混練物を粗粉砕した原料503は定量供給機508から投入され、冷却器509によって供給される冷却エアー511により、球形化処理部500に送られる。原料503は入口504から投入され、高速に回転し表面に凹凸部506を有する回転体501と、この回転体501と狭ギャップの間隙で位置している表面に凹凸部507を有する固定体502との空間に運ばれ、高速に回転する回転体と固定体の間に発生する高速気流の流動に伴って、原料粒子相互が強力な衝突により粉砕されながら球形化される。球形化された粒子510は排出口505から出て、粗粉分級機513に送られ、粗い粒子は再度エアー511により、入口504に送られる。製品はサイクロン515に送られ、補集容器411に回収される。
【0216】本実施例では、(○1)(合議体注:丸囲みの「1」をこのように表記した。以下同様。)回転体の周速:130m/s、回転体と固定体の間隙:1.5mm、原料供給量:5kg/h、冷却空気温度:0℃、排出部温度:45℃、(○2)回転体の周速:120m/s、回転体と固定体の間隙:1mm、原料供給量:5kg/h、冷却空気温度:0℃、排出部温度:40℃で行った。」
なお、図6は以下のとおりである。


オ 「【0228】二成分現像として使用使用する時のキャリアとしては、フェライト粒子表面に樹脂被覆層を設けることにより作成される。フェライトはFe_(2)O_(3)を主原料に、NiO、CuO、CoO,MgO、ZnO,MnCO_(3)、BaCO_(3)、SrCO_(3)を混合して原料に用いる。フェライト粒子は、湿式法、乾式法で作成されるが、乾式法が好ましい。乾式法では、原料を混合後仮焼成し、水中にてボールミル等で微粉砕化し、さらに結着剤としてポリビニルアルコール、消泡剤、分散剤を加え造粒用スリラーとする。このスリラーを噴霧乾燥機で加熱乾燥しながら造粒し顆粒とし、本焼成する。本焼成は900?1400℃で10?30時間行い、その後解砕、分級してフェライト粒子を得る。」

カ 「【0239】次に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。ただし本発明はこれに限定されるものではない。
【0240】(表1)に実施例で使用する結着樹脂の特性を示す。樹脂はビスフェノールAプロピルオキシド付加物、テレフタル酸、トリメリット酸、コハク酸、フマル酸を主成分としたポリエステル樹脂を使用し、配合比、重合条件により熱特性を変えた樹脂を使用した。
【0241】
【表1】

【0242】Mnfは結着樹脂の数平均分子量、Mwfは結着樹脂の重量平均分子量、Mzfは結着樹脂のZ平均分子量、Wmfは重量平均分子量Mwfと数平均分子量Mnfとの比Mwf/Mnf、Wzfは結着樹脂のZ平均分子量Mzfと数平均分子量Mnfの比Mzf/Mnf、AVは樹脂酸価を示す。
【0243】(表2)(表3)(表4)(表5)に本実施例で使用するワックス及びその物性値を示す。Mnrはワックスの数平均分子量、Mwrはワックスの重量平均分子量、MzrはワックスのZ平均分子量を示す。Tw(℃)はDSC法による融点、Ct(%)は融点+10℃での容積増加率(%)、Ck(wt%)は220℃の加熱減量を示す。
【0244】
【表2】

【0245】
【表3】

【0246】
【表4】

【0247】
【表5】

【0248】(表6)に本実施例で使用する顔料を示す。
【0249】
【表6】

【0250】(表7)に本実施例で使用する電荷制御剤を示す。
【0251】サリチル酸誘導体の金属塩として、炭素数1?10のアルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。金属Yとしては亜鉛、ニッケル、コバルト、銅、クロムが挙げられ、亜鉛、クロムが好ましい。ベンジル酸誘導体の金属塩としては、R^(1)?R^(4)がベンゼン環、アルカリ金属Xとしてはリチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、カリウムが好ましい。
【0252】
【表7】

【0253】(表8)に本実施例で使用する外添剤を示す。その帯電量はノンコートのフェライトキャリアとの摩擦帯電のブローオフ法により測定したものである。25℃45%RHの環境下で、100mlのポリエチレン容器にキャリア50gとシリカ等0.1gを混合し、縦回転にて100min^(-1)の速度で5分、30分間攪拌した後、0.3g採取し、窒素ガス1.96×10^(4)(Pa)で1分間ブローした。
【0254】正帯電性では5分間攪拌後の5分値が+100?+800μC/gで、30分間攪拌後の30分の値が+50?+400μC/gであることが好ましい。30分値での帯電量が5分値での帯電量の40%以上を維持しているシリカが好ましい。低下率が大きいと長期連続使用中での帯電量の変化が大きく、一定の画像を維持できなくなる。
【0255】負帯電性では5分値が-100?-800μC/gで、30分の値が-50?-600μC/gであることが好ましい。高い帯電量のシリカでは少量の添加量で機能を発揮できる。
【0256】
【表8】

【0257】本実施例での混練条件を(表9)に示す。Trj1(℃)はロール(RL1)の前半部の加熱温度、Trk1(℃)はロール(RL1)の後半部の加熱温度、Tr2(℃)ロール(RL2)の加熱温度、Rw1はロール(RL1)の回転数、Rw2はロール(RL2)の回転数、ロール(RL1)の回転時の負荷電流値をDr1、ロール(RL2)の負荷電流値をDr2と示している。原料投入量は15kg/h、ロール(RL1)(RL2)の直径は140mm、長さは800mmで行った。
【0258】
【表9】

【0259】(表10)(表11)に本実施例に本実施例で使用したトナー材料組成、物性値を示す。
【0260】
【表10】

【0261】
【表11】

【0262】それぞれのトナーの重量平均粒径はTM1?3は平均粒径で8μm、TM4,5は平均粒径で6μmとした。Y、C、BKトナーとも同様とした。体積粒径分布の変動係数が20?25%、個数粒径分布の変動係数が25?30%となるように試作した。TM1,2,5は機械式衝撃力による球形化、TM3,4は熱風による球形化処理とした。Y、C、BKトナーとも同様とした。混練のPCM30は従来の二軸押出機で、混練温度110℃回転数200min^(-1)、供給量5kg/hで処理した。
【0263】顔料、電荷制御剤、ワックスの配合量比は結着樹脂100重量部に対する配合量(重量部)比を括弧内に示す。外添剤はトナー母体100重量部に対する配合量(重量部)を示している。外添処理はFM20Bにおいて、攪拌羽根Z0S0型、回転数2000min^(-1)、処理時間5min、投入量1kgで行った。
【0264】(表12)(表13)に本実施例で混練処理を施した後のトナーの分子量特性を示す。トナーはマゼンタトナーのTM1から3トナーで比較評価した。イエロー、シアン、ブラックトナーでも同様な結果になる。Mnvはトナーの数平均分子量、Mwvはトナーの重量平均分子量、Wmvはトナーの重量平均分子量Mwvと数平均分子量Mnvの比Mwv/Mnv、WzvはトナーのZ平均分子量Mzvと数平均分子量Mnvの比Mzv/Mnvを示す。
【0265】MLは分子量分布において低分子量側の分子量極大ピークを示す分子量値、MHは高分子量側の分子量極大ピークを示す分子量値、SmはHb/Ha、SK1はM10/M90、SK2は(M10-M90)/M90を示す。
【0266】
【表12】

【0267】
【表13】

【0268】また図7?13に分子量分布特性を示す。」
なお、図7及び図8は、以下のとおりである。


(2)引用文献に記載された発明
上記記載事項カにおいて、表10には、トナー「TM1」において使用したトナー材料組成が、結着樹脂として「PES1」、電荷制御剤として「CCA2」が結着樹脂100質量部に対して3質量部、顔料として「CM」が結着樹脂100質量部に対して5質量部、ワックスとして「WA1」が結着樹脂100質量部に対して8質量部、外添剤として「SN1」がトナー母体100質量部に対して1.2質量部であること、混練条件が「Q-1」であることが記載されている。また、段落【0240】及び【0241】には、結着樹脂「PES1」が、ビスフェノールAプロピルオキシド付加物、テレフタル酸、トリメリット酸、コハク酸、フマル酸を主成分とした「ポリエステル樹脂」を使用し、配合比、重合条件により熱特性を変えた樹脂であること、表7には電荷制御剤「CCA2」が「サリチル酸誘導体のCr金属塩」であること、表6には顔料「CM」が「マゼンタ顔料:ピグメント・レッド57:1」であること、表2には、ワックス「WA-1」が「水添ホホバ油」であること、表8には外添剤「SN1」が「ジメチルシリコーンオイルで処理したシリカ」であることが記載されている。そして、表12には、トナー「TM1」の「重量平均分子量Mwvが3.01×10^(4)」であることが記載されており、記載事項ウの段落【0140】の記載に基づけば、「ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定された値」である。さらに、段落【0257】及び【0258】には「混練条件Q-1」が、「ロール(RL1)の前半部の加熱温度が131℃、後半部の加熱温度が61℃、ロール(RL2)の加熱温度が20℃」であること、段落【0262】には、「TM1」は「機械式衝撃力による球形化処理」としたことが記載されている。
上記記載事項に基づけば、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「以下のトナー材料組成を使用し、ロール(RL1)の前半部の加熱温度が131℃、後半部の加熱温度が61℃、ロール(RL2)の加熱温度が20℃である混練条件Q-1で混練し、機械的衝撃力による球形化処理を行う、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定された重量平均分子量Mwvが3.01×10^(4)であるトナーTM1の製造方法。
・ポリエステル樹脂である結着樹脂PES1
・サリチル酸誘導体のCr金属塩である電荷制御剤CCA2
結着樹脂100質量部に対して3質量部
・マゼンタ顔料:ピグメント・レッド57:1である顔料CM
結着樹脂100質量部に対して5質量部
・水添ホホバ油であるワックスWA-1
結着樹脂100質量部に対して8質量部
・ジメチルシリコーンオイルで処理したシリカである外添剤SN1
トナー母体100質量部に対して1.2質量部」


6 対比・判断
(1)本件発明1
ア 対比
本件発明1と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「結着樹脂PES1」は、技術的にみて、本件発明1の「樹脂」に相当する。また、引用発明の「結着樹脂PES1」は、「ポリエステル樹脂」である。そうすると、引用発明の「結着樹脂PES1」と本件発明1の「樹脂」とは、「ポリエステル樹脂」を含む点で共通する。

(イ)引用発明の「顔料CM」は、技術的にみて、本件発明1の「着色剤」に相当する。

(ウ)引用発明の「ワックスWA-1」は、技術的にみて、本件発明1の「離型剤」に相当する。このことは、引用文献の記載事項イにおける「ワックス等の離型剤」(段落【0009】)との記載からも裏付けられる。

(エ)引用発明の「電荷制御剤CCA2」は、技術的にみて、本件発明1の「帯電制御剤」に相当する。

(オ)引用発明の「トナー材料組成を使用し、ロール(RL1)の前半部の加熱温度が131℃、後半部の加熱温度が61℃、ロール(RL2)の加熱温度が20℃である混練条件Q-1で混練」する工程は、「加熱温度が131℃」のロールを用いて混練するものであり、トナー材料は溶融された上で混練されるといえる。そうすると、引用発明は、「溶融混練工程」を含んでいるといえる。
また、引用発明の「混練」工程は、特定の結着樹脂、電荷制御剤、顔料、ワックスを使用して混練するものであるから、これらのトナー材料を選択し混合する「混合物を溶融混練する混合工程」を含んでいるといえる。
そして、引用発明において得られるトナー「TM1」は、「ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定された重量平均分子量Mwvが3.01×10^(4)」であるから、上記「混合工程」において、「ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による分子量分布から求めた重量平均分子量Mwが、30000≦Mw≦95263」となるように、トナー材料を「選択して混合」し、「混合物」を得ているといえる。

(カ)引用文献の記載事項エには、「トナーの球形化装置」について、「混練物を粗粉砕した原料503は・・・球形化処理部500に送られ」、「原料503は・・・高速に回転する回転体と固定体の間に発生する高速気流の流動に伴って、原料粒子相互が強力な衝突により粉砕されながら球形化される」(段落【0215】)と記載されている。そうすると、引用発明の「機械的衝撃力による球形化処理を行う」工程は、「原料粒子相互が強力な衝突により粉砕されながら球形化される」工程である。一方、本件発明1でいう「粉砕工程」も、本願明細書の段落【0068】の記載からみて、粗粉砕された溶融混練物を「微粉砕」する工程であるといえる。
したがって、引用発明の「機械的衝撃力による球形化処理を行う」工程は、本件発明1の「前記溶融混練工程で溶融混練された溶融混練物を粉砕する粉砕工程」に相当する。そして、引用発明の「トナーTM1の製造方法」は、「粉砕トナーの製造方法」であるといえる。

(キ)以上より、本件発明1と引用発明とは、
「 少なくとも樹脂、着色剤、離型剤、及び帯電制御剤を含有する粉砕トナーの製造方法であって、
トナーが、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による分子量分布から求めた重量平均分子量Mwが、30000≦Mw≦95263となるように、前記樹脂と、前記着色剤と、前記離型剤と、前記帯電制御剤とを選択し混合する混合工程と、
前記混合工程で混合された混合物を溶融混練する溶融混練工程と、
前記溶融混練工程で溶融混練された溶融混練物を粉砕する粉砕工程と、を含み、
前記樹脂は、ポリエステル樹脂を含む粉砕トナーの製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]混合工程について、本件発明1では、「テトラヒドロフランに不溶なゲル成分の重量比率が5%未満」であり、「分子量が500?1500である成分の、上記GPCの分子量分布図における面積占有率が4?10%」となるように、樹脂と、着色剤と、離型剤と、帯電制御剤とを選択し混合しているのに対し、引用発明では、テトラヒドロフランに不要なゲル成分の重量比率が明らかとされておらず、分子量が500?1500である成分の、GPCの分子量分布図における面積占有率も一応明らかでない点。

[相違点2]樹脂について、本件発明1では、「複数」の樹脂であって、ポリエステル樹脂および「スチレン系樹脂」を含み、「前記スチレン系樹脂は、前記ポリエステル樹脂と比較して重量平均分子量が小さい」のに対し、引用発明では、結着樹脂が「スチレン系樹脂」を含む「複数」の樹脂とされておらず、スチレン系樹脂は、ポリエステル樹脂と比較して重量平均分子量が小さいとされていない点。

イ 判断
事案に鑑みて上記[相違点2]について検討する。引用文献の記載事項ウには、好適に使用される結着樹脂として、「各種ビニル系モノマーによる単独重合体または共重合体も好適に使用できる。例えば、スチレン、O-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p?エチルスチレン、2,4-ジメチルアスチレン、p-nブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、P-クロルスチレンなどのスチレンのおよびその誘導体があげられ、とくにスチレンが好ましい。」(段落【0145】)と記載されている。また、引用文献の記載事項ウ「本発明の目的に好適なスチレンーアクリル系共重合体としては、スチレン/ブチルアクリレート共重合体であり、特にスチレンを75?85重量%、ブチルアクリレートを15?25重量%含有するものが好適に使用される。」(段落【0146】)、「さらに本発明に好適に使用される結着樹脂としては、スチレン系、(メタ)アクリル酸系単量体とともに(化3)に示す長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸系の単量体を共重合させたものが好適に使用される。」(段落【0148】)、「さらに本発明にかかる結着樹脂としては、スチレン系、(メタ)アクリル酸系単量体とともに(化4)に示すアミノ基を有する(メタ)アクリル酸系の単量体を共重合させたものが好適に使用される。」(段落【0150】)と記載されている。
上記記載に基づけば、引用文献には、結着樹脂として、スチレン及びその誘導体からなる樹脂も使用できることが示唆されているといえる。しかしながら、引用文献には、ポリエステル樹脂及びスチレン系樹脂の両方を用いること、スチレン系樹脂を、ポリエステル樹脂と比較して重量平均分子量が小さいものとすることについては記載されていない。そして、トナー材料組成に含まれる結着樹脂として、ポリエステル樹脂及びスチレン系樹脂の両方を用いること、スチレン系樹脂を、ポリエステル樹脂と比較して重量平均分子量が小さいものとすることが、本願出願前において当業者において周知技術であったということもできない。
そして、本件補正により、本件発明1は「前記スチレン系樹脂は、前記ポリエステル樹脂と比較して重量平均分子量が小さい」という構成を具備するものとなったところ、審判請求人は、その補正の根拠として、本願の明細書段落【0029】を挙げている(審判請求書「3.」「3-1.」(1)」参照。)。また、この構成に関して、審判請求人は、「本願発明は、トナーの重量平均分子量をベルト定着においても優れた剥離性を有する範囲としながらも、ポリエステル樹脂、およびポリエステル樹脂と比較して重量平均分子量が小さいスチレン系樹脂を含み、かつ重量平均分子量が異なる複数の樹脂を用いて分子量分布を調整することで、粉砕性の向上を図って生産性を高めるといった技術思想を有するものです。」(審判請求書「3.」「3-2.」(2)(2-1)参照。)とも主張する。
そこで、本願の明細書段落【0029】を参照すると、そこには、「ここで、分子量が500?1500であるような比較的低分子量成分は、スチレン系樹脂で調整がし易く、また、それ以外の主樹脂(結着樹脂)はポリエステル樹脂が適している。また、ポリエステル樹脂とスチレン系樹脂の樹脂は互いに相溶性が低いので、添加樹脂であるスチレン系樹脂が粉砕起点となり易い。よって、粉砕性向上効果を高めることができる。」と記載されている。そうすると、ポリエステル樹脂及びスチレン系樹脂の両方を用い、スチレン系樹脂を、ポリエステル樹脂と比較して重量平均分子量が小さいものとすることによって、当業者が予測し得ない効果を奏するといえる。
したがって、引用発明において、上記[相違点2]に係る本件発明1の構成とすることは、当業者であっても、容易になし得たということはできない。

ウ むすび
以上のとおりであるから、[相違点1]について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

(2)本件発明2
本件発明2は、本件発明1の「複数」の樹脂であって、ポリエステル樹脂および「スチレン系樹脂」を含み、「前記スチレン系樹脂は、前記ポリエステル樹脂と比較して重量平均分子量が小さい」とする要件を有している。
そうすると、本件発明2も、本件発明1と同じ理由によって、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。


7 原査定についての判断
本件補正により、原査定の拒絶理由の理由1(サポート要件)の対象とされた請求項は存在しないこととなった。したがって、原査定の拒絶理由の理由1(サポート要件)は、解消した。
また、上記6(1)に記載したとおり、本件発明1及び本件発明2と引用発明とは、少なくとも[相違点2]において相違しており、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえないものである。そうすると、原査定の拒絶理由の理由2(新規性)及び理由3(進歩性)も解消したといえる。


8 当審拒絶理由についての判断
当審拒絶理由において引用された特願2012-59402号は、特許(特許第6067981号)された後、訂正審判(訂正2019-390059)が請求され、令和元年6月25日付けで「特許第6067981号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔2,3〕について訂正することを認める。」とする審決がなされ、同年7月9日に確定登録されている。そして、訂正により特許請求の範囲の請求項2は削除され、請求項3は請求項2の記載を引用しないものとなった。
以上より、本件発明1と同一とされた特願2012-59402号(特許第6067981号)の請求項2に係る発明、本件発明2と同一とされた特願2012-59402号(特許第6067981号)の請求項2の記載を引用する請求項3に係る発明は、いずれも存在しないこととなった。
したがって、当審拒絶理由は解消された。


9 むすび
以上のとおり、本件発明1及び本件発明2は、引用発明ではなく、当業者が、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。また、本件補正後の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件も満たしている。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-09-02 
出願番号 特願2016-249779(P2016-249779)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G03G)
P 1 8・ 4- WY (G03G)
P 1 8・ 121- WY (G03G)
P 1 8・ 113- WY (G03G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 本田 博幸  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 高松 大
宮澤 浩
発明の名称 粉砕トナーの製造方法、二成分現像剤の製造方法  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  

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