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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B62B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B62B |
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管理番号 | 1354643 |
審判番号 | 不服2019-5161 |
総通号数 | 238 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-10-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-04-18 |
確定日 | 2019-08-22 |
事件の表示 | 特願2018- 28990号「運搬用台車」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成30年2月21日を出願日とする特許出願であって、その後の手続の概要は、以下の通りである。 平成30年 7月24日付け:拒絶理由通知 平成30年11月14日 :意見書、手続補正書の提出 平成31年 1月29日付け:拒絶査定 平成31年 4月18日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2.平成31年4月18日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成31年4月18日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「【請求項1】 運搬用台車であって、 一対の側枠と、前記一対の側枠を互いに連結する連結部材とを有する台車本体と、 前記側枠の外側に固定された側面断熱パネルと、を備え、 前記側面断熱パネルは、真空断熱材を含むとともに剛性をもつ板状の部材である、運搬用台車。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載 本件補正前の、平成30年11月14日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 運搬用台車であって、 一対の側枠と、前記一対の側枠を互いに連結する連結部材とを有する台車本体と、 前記側枠の外側に固定された側面パネルと、を備え、 前記側面パネルは、剛性をもつ板状の部材である、運搬用台車。 2.補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「側面パネル」について、「側面断熱パネル」であること及び「真空断熱材を含む」ことの限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1.(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項等 ア.引用文献1 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された実願昭55-75003号(実開昭56-175268号)のマイクロフィルム(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審で付した。)。 (1a)(明細書1頁 2、実用新案登録請求の範囲1.) 「1. 断熱性のある折曲可能なシート状物により、側枠付台車の上面を覆える天部(11)を真中にしてその前後に台車前面を覆える前部(12)と台車後面を覆える後部(13)とを連設するとともに、後部(13)の両側に台車両側面を覆える左右側部(16)(17)を連設して、全体を展開できるように構成してなり、後部(13)および左右側部(16)(17)の上端部内側には側枠の上端部を包被できる袋部構成片(20)(21)(22)を設け、また天部(11)には左右側端部に左右側部(16)(17)の上端部外面に重合止定できる垂下片(24)(25)を連設し、さらに前部(12)の両側には左右側部(16)(17)の前側端部に重合止定できる補助側片(27)(30)を連設してなることを特徴とする側枠付台車用カバー。」 (1b)(明細書2頁 2、実用新案登録請求の範囲3.) 「3. シート状物が合成樹脂発泡シート等の断熱材(34)を中間層としてその表裏に防水加工を施した生地(35)(36)を重合して縫着したものからなる実用新案登録請求の範囲第1項または第2項記載の側枠付台車用カバー。」 (1c)(明細書2頁 11?16行) 「本考案は主として冷凍食品を側伜付台車で運搬する場合に保冷のために覆装使用する側枠付台車用のカバーに関し、装着容易で安定よく確実に覆装できかつ密閉性良好で保冷(保温)効果に優れるとともに、展開して折畳み可能なものを提供せんとして考案したものである。」 (1d)(明細書3頁15?18行) 「図において、(1)は荷受台(2)の周辺部のうち後部および両側に側枠(3)を立設した所謂側枠付台車、(10)は前記側枠付台車(1)を覆い得る本考案に係るカバーを示す。」 (1e)(明細書7頁14行?8頁11行) 「なお、本考案における断熱性のあるシート状物としては、ポリエチレン等の軟質合成樹脂発泡シートその他の可撓性シート単独のものであつてもよいか、図示するように合成樹脂発泡シート等の断熱材(34)を真中にしてその表裏に織物等の生地(35)(36)を重合して縫着したものが強度上望ましく、特に生地(35)(36)が防水加工を施したものであると、結露しても問題がなく、また水洗いすることも可能となる。もちろん断熱材(34)の表裏に合成樹脂シートを重合したものを用いることもできる。何れにしてもカバー(10)の構成各部の境界部で折目に相当する個所は縫着線等により折曲容易にすることが望ましい。さらに袋部構成片(20)(21)(22)、垂下片(24)(25)(26)および補助側片(29)(30)は他の部分とは別に断熱性を有さないシート状物で形成することができる。」 (1f)(明細書8頁12?14行) 「図の(37)(38)は左右側部(16)(17)の前側端部を側枠(3)の前部支柱に連結止定すべく設けた紐等の止定部材を示す。」 (1g)(明細書14?15頁 4、図面の簡単な説明) 「第1図は本考案カバーを使用する側枠付台車の一例を示す斜視図、第2図は本考案の実施例を示す展開した内面側の平面図、第3図は同上の外面側の平面図、第4図は前図A-A線における一部の拡大断面図、第5図?第7図は装着状態を示す斜視図、第8図および第9図はそれぞれ第7図B-B線およびC-C線における断面図である。 (1)…側枠付台車、(3)…側枠、(10)…カバー、(11)…天部、(12)…前部、(13)…後部、(16)(17)…左右側部、(20)(21)(22)…袋部構成片、(24)(25)(26)…垂下片、(29)(30)…補助側片。」 (1h)次の図面が示されている (イ)上記(ア)における記載及び図面から、引用文献1には、次の事項が認定できる。 a.引用文献1に記載された技術は、「側枠付台車用のカバー」及び当該「側枠付台車用のカバー」が覆う「側枠付台車」に関するものであり(摘記(1a))、装着容易で安定よく確実に覆装できかつ密閉性良好で保冷(保温)効果に優れるとともに、展開して折畳み可能なものを提供することを課題としたものである(摘記(1c))。 b.側枠付台車用カバーは、断熱性のある折曲可能なシート状物により、側枠付台車の上面を覆える天部(11)を真中にしてその前後に台車前面を覆える前部(12)と台車後面を覆える後部(13)とを連設するとともに、後部(13)の両側に台車両側面を覆える左右側部(16)(17)を連設して、全体を展開できるように構成してなる(摘記(1a))。 c.摘記(1a)の「側枠付台車」について、摘記(1d)、摘記(1g)と、上記(1h)に示す第5図とを踏まえると、以下の事項が認定できる。 「側枠付台車は、後部及び両側の側枠(3)と、前記側枠(3)を互いに連結する荷受台(2)とを有する。」 d.摘記(1a)の「シート状物」、「カバー」について、摘記(1b)、(1e)から以下のことが認定できる。 「シート状物が合成樹脂発泡シート等の断熱材(34)を中間層としてその表裏に防水加工を施した生地(35)(36)を重合して縫着したものからなり、 合成樹脂発泡シート等の断熱材(34)を真中にしてその表裏に織物等の生地(35)(36)を重合して縫着したものが強度上望ましい。」 「カバーの構成各部の境界部で折目に相当する個所は縫着線等により折曲容易にすることが望ましい。」 e.上記摘記(1a)の「左右側部(16)(17)」は、上記摘記(1a)(1f)と、上記(1h)に示す第5図とを踏まえると、以下の事項が認定できる。 「左右側部(16)(17)は、側枠(3)の外側において、紐等の止定部材(37)(38)により、当該左右側部(16)(17)の前側端部を当該側枠(3)の前部支柱に連結止定され、上端部内側には側枠(3)の上端部を包被できる袋部構成片(21)(22)を設ける。」 (ウ)上記(ア)、(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「側枠付台車用のカバー及び当該側枠付台車用のカバーが覆う側枠付台車であって、 側枠付台車は、後部及び両側の側枠(3)と、前記側枠(3)を互いに連結する荷受台(2)とを有するものであり、 側枠付台車用カバーは、断熱性のある折曲可能なシート状物により、側枠付台車の上面を覆える天部(11)を真中にしてその前後に台車前面を覆える前部(12)と台車後面を覆える後部(13)とを連設するとともに、後部(13)の両側に台車両側面を覆える左右側部(16)(17)を連設して、全体を展開できるように構成してなるとともに、 シート状物が合成樹脂発泡シート等の断熱材(34)を中間層としてその表裏に防水加工を施した生地(35)(36)を重合して縫着したものからなり、 左右側部(16)(17)は、側枠(3)の外側において、紐等の止定部材(37)(38)により、当該左右側部(16)(17)の前側端部を当該側枠(3)の前部支柱に連結止定され、上端部内側には側枠(3)の上端部を包被できる袋部構成片(21)(22)を設けた、 側枠付台車用のカバー及び当該側枠付台車用のカバーが覆う側枠付台車。」 イ.引用文献2 (ア)同じく原査定に引用され、本願の出願前に頒布された特開平11-139317号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 (2a)「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、運搬用の台車に内装するカバーであって、積載物の保温・保冷の為の保冷カバー、及びこの保冷カバーを内装した保冷カバー付きの運搬用台車に関する。」 (2b)「【0003】 【発明が解決しようとする課題】一般に台車では、保管状態では保管スペースを省く為に、底パネルを外し又は折り畳み、側面パネル及び背面パネルを重ねて折畳み可能に形成してあった。この場合、保冷カバーを取付けた従来の台車で、保管時には保冷カバーを取り外して別途保管して、台車を折畳み、運搬時に再度台車に保冷カバーを装着していた為に、取扱が煩雑となる問題点があった。 【0004】また、保冷カバーを内装したまま台車を折畳む為には、保冷カバーのシートが厚い為に一定に折畳むことができなかった。従って、保冷カバーの厚さを考慮した、特殊構造の折畳み可能の運搬用台車を形成しなければならない問題点があった。 【0005】【課題を解決するための手段】然るにこの発明は、開閉自在の開口面を形成した保冷カバーに開口面と隣接する両側面に折畳み手段を形成したので、前記問題点を解決した。」 (2c)「【0008】前記における折畳み線とは、柔軟な断熱材シートを柔軟な材質の表裏シートで挟んで形成した保冷カバーでは、表裏シートに縫い目を形成して構成する。また板状の断熱板を使用した保冷カバーでは、折り畳み線に沿って側面の断熱板を分割して形成する。」 (2d)「【0013】 【実施例1】図1、2に基づきこの発明の実施例を説明する。 【0014】運搬台車に内装できる箱型で、前記運搬用台車の積み降ろし口に対応して開口面2を有するカバー本体1を形成する。前記カバー本体1は、開口面2に対向する面を背面3、開口面2の上側に隣接する面を天井面4、下側に隣接する面を床面5とする。また、開口面2に隣接する他の面を側面6、6とする。 ・・・ 【0015】前記カバー本体1は、断熱材(例えば、発泡ポリエチレンシート、グラスウール等)をアルミ蒸着シートからなる表裏シートで挟んでなる柔軟な材質に形成されている。 ・・・ 【0019】前記実施例において、カバー本体1は全体を柔軟材質としたが、覆い片16(開口面2)が柔軟材質ででれば、背面3、天井面4、床面5及び側面片7a7b、7cは硬質の板状とし、各面の辺及び第一第二折り予定線20、21に沿って屈曲して折り畳み可能な構造とすることもできる(図示していない)。 ・・・ 【0026】続いて、保管時には、保冷カバー24の覆い片16のファスナー17及び面ファスナー18を開き(図1(b))、覆い片16を天井面4の上面又は下面に重ねて、側面6、6を折り予定線20、21を谷折りとして、側面片6aと側面片6b、側面片6bと側面片6cとが外面で重ねるように折り畳む(図1(c)、図2(a)(c))。保冷カバー24の側面6、6が折り込まれた状態で、床面5と天井面4とが夫々背面3に重ねられる(図1(d)、図2(b)。この際、保冷カバー24の側面6、6は必ず、折り予定線20、21で折畳まれるので、折畳み状態で背面3から突出せず、嵩張ることがない。」 なお、上記摘記(2d)の【0019】の「側面片7a7b、7cは硬質の板状とし」なる記載は、同摘記(2d)の【0026】の「側面片」に関する「側面片6aと側面片6b、側面片6bと側面片6c」との記載及び図1の図示内容を勘案すると、「側面片6a、6b、6c」の誤記と認められるから、以下、当該記載箇所は、側面片7a7b、7c(側面片6a、6b、6c)として表記する。 (2e)「【0031】 【発明の効果】この発明は、カバー本体の開口面と隣接する両側面に折畳み手段を形成したので、折畳み手段により側面を厚さ方向に嵩張らず折り畳むことができ、保冷カバーを、ネスティング状態の運搬用台車の側面パネルと背面パネルとの間に位置させることができる効果がある。従って、従来の運搬用台車を特殊加工することなく保冷カバーを内装することができると共に、従来の運搬用台車に保冷カバーを内装した場合であっても、保冷カバーを内装したまま運搬用台車を折畳むことができ、折畳み状態を保持できる効果がある。」 (イ)上記記載から、引用文献2には、次の技術が記載されていると認められる。 「運搬台車に内装できる箱型で、前記運搬用台車の積み降ろし口に対応して開口面2を有するカバー本体1を形成し、前記カバー本体1は開口面2に対向する面を背面3、開口面2の上側に隣接する面を天井面4、下側に隣接する面を床面5とし、開口面2に隣接する他の面を側面6、6としたものにおいて、 カバー本体1を、覆い片16(開口面2)が柔軟材質であるとともに、背面3、天井面4、床面5及び側面片7a7b、7c(側面片6a、6b、6c)は硬質の板状とし、 板状の断熱板を使用し、折り畳み線に沿って側面の断熱板を分割して形成され、 各面の辺及び第一第二折り予定線20、21に沿って屈曲して折り畳み可能な構造とする、技術。」(以下「引用文献2に記載された技術」という。) ウ.周知の技術的事項について (ア)本願の出願前に頒布された特開2017-81646号公報には、図面とともに、次の記載がある。 「【0013】 ここで、箱部110を構成する各板部材(111?117)は、所望の断熱特性を有する断熱部材を使用することができる。本実施形態では、箱部110を構成する各板部材(111?117)には、上述したように断熱パネル120が用いられている。以下に断熱パネル120の詳細について説明する。 図3は、箱部110に使用される各部材111?117に用いられる断熱パネル120の詳細を説明する図である。図3は、断熱パネル120の厚み方向に平行な断面である。 【0014】 断熱パネル120は、図3に示すように、保護基材121、保護基材121により覆われる断熱材122、保護基材121及び断熱材122を接着する接着層123から構成されている。 保護基材121は、断熱パネル120に設けられる断熱材122を保護するとともに、箱部110を構成する部材として十分な剛性を持たせるために設けられている。保護基材121は、所望の剛性を得ることができる部材であれば特に制限されるものでなく、例えば、合板や、鉄板、発泡剤、樹脂板、エンボス樹脂シート、板紙等を用いることができる。保護基材121は、断熱パネル120の重量や、体積を低減させる観点から、樹脂板(例えば、プラスチックダンボールや、養生材等)を使用することが望ましい。 【0015】 断熱材122は、所望の断熱特性を得られるものであれば、公知の材料を使用することができ、例えば、グラスウール、ロックウール、セルロースファイバー、インシュレーションボード等の繊維系断熱材、羊毛、炭化コルク等の天然素材系断熱材、押出法発泡ポリスチレン、ビーズ法ポリスチレン、硬質ウレタンフォーム、高発泡ポリエチレン、フェノールフォーム等の発泡プラスチック系断熱材、真空断熱材等を使用することができる。本実施形態では、特に薄い形状で高い断熱特性を発揮することができる真空断熱材により構成されている。そのため、高い断熱特性を有するとともに、収容物の収容容積が大きい保冷保温箱100を実現することができる。」 「【0054】 (第2実施形態) 次に、第2実施形態の保冷保温箱200について説明する。 図9は、第2実施形態の搬送用かご250に配置された保冷保温箱200を説明する図である。図9(a)は、搬送用かご250に配置された保冷保温箱200の斜視図であり、図9(b)は、保冷保温箱200から外装部材201を取り除いた箱部210を説明する図である。 なお、以下の説明及び図面において、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾(下2桁)に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。 【0055】 本実施形態の保冷保温箱200(折り畳み式保冷保温箱、組み立て式保冷保温箱)は、図9に示すように、前板部が省略され、前側の面の全体が扉部217により形成されている点と、搬送用かご250に配置されている点と、組み立て手順が相違する点で、上述の第1実施形態の保冷保温箱100と相違する。 本実施形態の保冷保温箱200は、図9(a)に示すように、搬送用かご250上に配置されており、複数の収容物を収容した保冷保温箱200を自在に搬送することができる。 搬送用かご250は、保冷保温箱200を載置する台車部251、保冷保温箱200の右側面及び左側面を保持する柵部252等から構成されている。この台車部251の各角部には、床上を自在に移動することができる車輪251aが配置されている。 【0056】 保冷保温箱200は、その前側(+X側)に1枚の扉が設けられた箱であり、箱部210と、箱部210の外周を覆うようにして設けられる外装部材201とから構成されている。保冷保温箱200は、収容物を収容していない場合において、箱の保管空間を減らす観点から、折り畳み可能であって組み立て可能に形成されている。 箱部210は、保冷保温箱200の箱形状を形成する直方体状の基礎部分であり、本実施形態では、図9(b)に示すように、底板部211、天板部212、右側板部213、左側板部214、背板部215、扉部217から構成されている。 底板部211、天板部212、右側板部213、左側板部214、背板部215、扉部217は、それぞれ断熱特性を有する断熱パネル(図3参照)により形成されている。 背板部215は、後述するように保冷保温箱200が組み立てられる場合に、右側板部213、天板部212、左側板部214、底板部211に囲まれる領域に嵌め込まれて配置される。そのため、背板部215の前後方向(X方向)から見た形状は、上記板部材の厚み分だけ、箱部210の外形形状よりも小さく形成されている。 扉部217は、箱部210の前面を形成する矩形状の板部材であり、箱部210に対して開閉可能に配置されている。本実施形態の扉部217は、右側板部213に不図示の開閉部材により開閉可能に配置されている。」 次の図面が示されている。 以上の記載及び図面から、次の技術が記載されていると認められる。 「保冷保温箱200を載置する台車部251、保冷保温箱200の右側面及び左側面を保持する柵部252等から構成されている搬送用かご250に配置され、折り畳み可能に形成されている保冷保温箱200を、前側に1枚の扉が設けられた箱としたものにおいて、右側板部213、左側板部214、背板部215、扉部217を断熱特性を有する断熱パネルにより形成し、断熱パネル120を構成する断熱材122は真空断熱材により構成し、高い断熱特性を有するとともに、収容物の収容容積が大きくした、技術。」 (イ)本願の出願前に頒布された特開2017-141053号公報には、図面とともに、次の記載がある。 「【0014】 ここで、箱部110を構成する各板部材(111?117)は、所望の断熱特性を有する断熱部材を使用することができる。本実施形態では、箱部110を構成する各板部材(111?117)には、上述したように断熱パネル120が用いられている。以下に断熱パネル120の詳細について説明する。 図3は、箱部110に使用される各部材111?117に用いられる断熱パネル120の詳細を説明する図である。図3は、断熱パネル120の厚み方向に平行な断面である。 【0015】 断熱パネル120は、図3に示すように、保護基材121、保護基材121により覆われる断熱材122、保護基材121及び断熱材122を接着する接着層123から構成されている。 保護基材121は、断熱パネル120に設けられる断熱材122を保護するとともに、箱部110を構成する部材として十分な剛性を持たせるために設けられている。保護基材121は、所望の剛性を得ることができる部材であれば特に制限されるものでなく、例えば、合板や、鉄板、発泡剤、樹脂板、エンボス樹脂シート、板紙等を用いることができる。保護基材121は、断熱パネル120の重量や、体積を低減させる観点から、樹脂板(例えば、プラスチックダンボールや、養生材等)を使用することが望ましい。 【0016】 断熱材122は、所望の断熱特性を得られるものであれば、公知の材料を使用することができ、例えば、グラスウール、ロックウール、セルロースファイバー、インシュレーションボード等の繊維系断熱材、羊毛、炭化コルク等の天然素材系断熱材、押出法発泡ポリスチレン、ビーズ法ポリスチレン、硬質ウレタンフォーム、高発泡ポリエチレン、フェノールフォーム等の発泡プラスチック系断熱材、真空断熱材等を使用することができる。本実施形態では、特に薄い形状で高い断熱特性を発揮することができる真空断熱材により構成されている。そのため、高い断熱特性を有するとともに、収容物の収容容積が大きい保冷保温箱100を実現することができる。」 「【0055】 (第2実施形態) 次に、第2実施形態の保冷保温箱200について説明する。 図9は、第2実施形態の搬送用かご250に配置された保冷保温箱200を説明する図である。図9(a)は、搬送用かご250に配置された保冷保温箱200の斜視図であり、図9(b)は、保冷保温箱200から外装部材201を取り除いた箱部210を説明する図である。 なお、以下の説明及び図面において、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾(下2桁)に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。 【0056】 本実施形態の保冷保温箱200は、図9に示すように、前板部が省略され、前側の面の全体が扉部217により形成されている点と、搬送用かご250に配置されている点と、組み立て手順が相違する点で、上述の第1実施形態の保冷保温箱100と相違する。 本実施形態の保冷保温箱200は、図9(a)に示すように、搬送用かご250上に配置されており、複数の収容物を収容した保冷保温箱200を自在に搬送することができる。 搬送用かご250は、保冷保温箱200を載置する台車部251、保冷保温箱200の右側面及び左側面を保持する柵部252等から構成されている。この台車部251の各角部には、床上を自在に移動することができる車輪251aが配置されている。 【0057】 保冷保温箱200は、その前側(+X側)に1枚の扉が設けられた箱であり、箱部210と、箱部210の外周を覆うようにして設けられる外装部材201とから構成されている。保冷保温箱200は、収容物を収容していない場合において、箱の保管空間を減らす観点から、折り畳み可能に形成されている。 箱部210は、保冷保温箱200の箱形状を形成する直方体状の基礎部分であり、本実施形態では、図9(b)に示すように、底板部211、天板部212、右側板部213、左側板部214、背板部215、扉部217から構成されている。 底板部211、天板部212、右側板部213、左側板部214、背板部215、扉部217は、それぞれ断熱特性を有する断熱パネル(図3参照)により形成されている。 背板部215は、後述するように保冷保温箱200が組み立てられる場合に、右側板部213、天板部212、左側板部214、底板部211に囲まれる領域に嵌め込まれて配置される。そのため、背板部215の前後方向(X方向)から見た形状は、上記板部材の厚み分だけ、箱部210の外形形状よりも小さく形成されている。 扉部217は、箱部210の前面を形成する矩形状の板部材であり、箱部210に対して開閉可能に配置されている。本実施形態の扉部217は、右側板部213に不図示の接続部材により開閉可能に配置されている。」 次の図面が示されている。 以上の記載及び図面から、次の技術が記載されていると認められる。 「保冷保温箱200を載置する台車部251、保冷保温箱200の右側面及び左側面を保持する柵部252等から構成されている搬送用かご250に配置され、折り畳み可能に形成されている保冷保温箱200を、前側に1枚の扉が設けられた箱としたものにおいて、右側板部213、左側板部214、背板部215、扉部217を断熱特性を有する断熱パネルにより形成し、断熱パネル120を構成する断熱材122は真空断熱材により構成し、高い断熱特性を有するとともに、収容物の収容容積が大きくした、技術。」 (ウ)上記(ア)及び(イ)を踏まえると、台車本体に配置される側面断熱パネルを真空断熱材を含むものとすることは、周知の技術的事項(以下「周知の技術的事項」という。)といえる。 (3)引用発明との対比 ア.本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「側枠付台車用のカバー及び当該側枠付台車用のカバーが覆う側枠付台車」は本件補正発明の「運搬用台車」に相当する。 (イ)引用発明の「両側の側枠(3)」は本件補正発明の「一対の側枠」に相当する。 また、引用発明の「荷受台(2)」は、「前記側枠(3)」を互いに連結するものであるから、本件補正発明の「一対の側枠を互いに連結する連結部材」に相当する。 (ウ)引用発明の「左右側部(16)(17)」は、「断熱性のある折曲可能なシート状物によ」り構成してなる「側枠付台車用カバー」を構成するものであって、本件補正発明の「側面断熱パネル」と、「側面断熱部材」の構成の限度で共通する。 引用発明の「側枠(3)の外側において、紐等の止定部材(37)(38)により、当該左右側部(16)(17)の前側端部を当該側枠(3)の前部支柱に連結止定され、上端部内側には側枠(3)の上端部を包被できる袋部構成片(21)(22)を設けた」ことは、本件補正発明の「前記側枠の外側に固定され」たことに相当する。 引用発明において「シート状物が合成樹脂発泡シート等の断熱材(34)を中間層としてその表裏に防水加工を施した生地(35)(36)を重合して縫着したものからな」ることは、本願補正発明の「真空断熱材を含む」ことと、「断熱材を含む」限度で共通する。 イ.以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「運搬用台車であって、 一対の側枠と、前記一対の側枠を互いに連結する連結部材とを有する台車本体と、 前記側枠の外側に固定された側面断熱部材と、を備え、 前記側面断熱部材は、断熱材を含む、運搬用台車。」 <相違点> 「側面断熱部材」に関し、 本件補正発明は、「側面断熱パネル」であって、「剛性をもつ板状の部材であ」り、「断熱材」に「真空断熱材」を含むのに対して、引用発明は、「断熱性のある折曲可能なシート状物」であり、「断熱材」が「合成樹脂発泡シート等」である点。 (4)判断 以下、相違点について検討する。 ア.「側面断熱パネル」であって、「剛性をもつ板状の部材である」構成について (ア)引用文献2には、上記(2)イ.(イ)のとおり、 「運搬台車に内装できる箱型で、前記運搬用台車の積み降ろし口に対応して開口面2を有するカバー本体1を形成し、前記カバー本体1は開口面2に対向する面を背面3、開口面2の上側に隣接する面を天井面4、下側に隣接する面を床面5とし、開口面2に隣接する他の面を側面6、6としたものにおいて、 カバー本体1を、覆い片16(開口面2)が柔軟材質であるとともに、背面3、天井面4、床面5及び側面片7a7b、7c(側面片6a、6b、6c)は硬質の板状とし、 板状の断熱板を使用し、折り畳み線に沿って側面の断熱板を分割して形成され、 各面の辺及び第一第二折り予定線20、21に沿って屈曲して折り畳み可能な構造とする、技術。」が記載されている。 そして、本件明細書【0040】の「パネル11?16は、全体として台車本体50に対して展開および折り畳み自在に設けられており、・・・」なる記載及び本件明細書【0041】の「各パネル11?16は、それぞれ剛性をもつ板状の部材からなり」なる記載を踏まえると、引用文献2に記載された技術における「カバー本体1」の「側面片7a7b、7c(側面片6a、6b、6c)」は、「硬質の板状とし、板状の断熱板を使用し、折り畳み線に沿って側面の断熱板を分割して形成され」たものであり、屈曲して折り畳み可能な構造であるので、上記相違点に係る本件補正発明1の「側面断熱パネル」に相当する。 そして、引用文献2に記載された技術の「カバー本体1」の「側面片7a7b、7c(側面片6a、6b、6c)は硬質の板状とし」た部材であることは、上記相違点に係る本件補正発明1の「側面断熱パネル」が「剛性をもつ板状の部材である」ことに相当し、硬質であるから強度を有することは技術的に明らかである。 (イ)引用発明の左右側部(16)(17)と、引用文献2に記載された技術の側面片とは、台車に設けられた断熱部材に関する技術である点、及び、折り畳み可能なものを提供するとの課題で共通している。 また、引用発明の「シート状物」は、上記(2)ア.(ア)の摘記(1e)に「合成樹脂発泡シート等の断熱材(34)を真中にしてその表裏に織物等の生地(35)(36)を重合して縫着したものが、強度上望ましく」、と記載されているように、強度を有することが望ましいことの知見が示されているから、引用発明の「シート状物」を、引用文献2に記載された技術の「剛性をもつ板状の部材である」「側面断熱パネル」を参考にして、「硬質の板状とし」た部材に変更することは当業者が適宜なし得ることである。 イ.「断熱材」が、「真空断熱材」である構成について (ア)台車本体に配置される側面断熱パネルを真空断熱材を含むものとすることは、上記(2)ウ.に示すとおり、例えば特開2017-81646号公報、特開2017-141053号公報に記載される周知の技術的事項である。 (イ)引用発明、上記引用文献2に記載された技術、上記周知の技術的事項はいずれも、台車に設けられた左右に具備された断熱部材に関する技術である点で共通している。 (ウ)そして、引用発明に上記引用文献2に記載された技術を適用するとともに、当該周知の技術的事項1を参考として断熱材を真空断熱材を含むものとすることは、当業者が適宜になし得ることである。 ウ.上記ア.及びイ.を踏まえると、引用発明において、上記相違点に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 エ.そして、相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献2に記載された技術及び上記周知の技術的事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 オ.したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術及び上記周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成31年4月18日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?11に係る発明は、平成30年11月14日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2.[理由]1.(2)に記載のとおりのものである。 2.原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、以下のとおりである。 (1)この出願の請求項1-6に係る発明は、本願の出願前に頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 (2)この出願の請求項7-11に係る発明は、本願の出願前に頒布された下記の引用文献1?7に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:実願昭55-75003号(実開昭56-175268号)のマイクロフィルム 引用文献2:特開平11-139317号公報 引用文献3:特開平11-48981号公報 引用文献4:特開2017-95164号公報 引用文献5:登録実用新案第3133472号公報 引用文献6:特開2009-90704号公報 引用文献7:実願昭58-31876号(実開昭59-137867号)のマイクロフィルム 3.引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1?2及びその記載事項は、前記第2.[理由]2.(2)に記載したとおりである。 4.対比・判断 本願発明は、前記第2.[理由]2.において検討した本件補正発明から、「真空断熱材を含む」「側面パネル」に係る限定事項を省くものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2.[理由]2.(3)、(4)に記載したとおり、引用発明、引用文献2に記載された技術及び周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるところ、その周知の技術的事項は上記限定事項の容易性の判断のために必要となったものであるので、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4.むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-06-27 |
結審通知日 | 2019-06-28 |
審決日 | 2019-07-10 |
出願番号 | 特願2018-28990(P2018-28990) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B62B)
P 1 8・ 575- Z (B62B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 林 政道 |
特許庁審判長 |
島田 信一 |
特許庁審判官 |
中川 真一 岡▲さき▼ 潤 |
発明の名称 | 運搬用台車 |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 朝倉 悟 |
代理人 | 堀田 幸裕 |
代理人 | 村田 卓久 |
代理人 | 永井 浩之 |