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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G01B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01B
管理番号 1354647
審判番号 不服2018-13204  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-03 
確定日 2019-09-17 
事件の表示 特願2018-32009「電子機器、制御方法およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔請求項の数(17)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
この審判事件に関する出願(本願)は、平成30年2月26日にされた特許出願である。そして、同年5月30日に特許請求の範囲についての補正がされたが、同年6月20日付けで拒絶査定(原査定)がされ、同年7月3日に査定の謄本が送達された。
これに対して、同年10月3日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に特許請求の範囲についての補正がされた。
その後、当合議体は、令和元年5月31日付けの決定をもってこの補正を却下し、同日付けで拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)を通知した。請求人は、同年7月1日に特許請求の範囲についての補正(以下、「本件補正」という。)をするとともに、意見書を提出した。
なお、本件補正前(平成30年5月30日にされた補正の後をいう。以下同じ。)の請求項の数は25であり、本件補正により本件補正前の請求項2ないし請求項7、請求項24及び請求項25が削除されたので、本件補正後の請求項の数は17である。

第2 本願に係る発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項17に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明17」という。)は、本願の本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項17に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
カメラと、第1センサと、当該第1センサとは異なる第2センサと、ディスプレイと、コントローラとを備え、
前記コントローラは、
前記カメラが撮像した撮像画像および前記第1センサの検出結果に基づく特定の被写体までの距離を示す距離情報に基づいて当該撮像画像に含まれる特定の被写体の少なくとも一部分に関するサイズ情報を測定し、
前記サイズ情報および前記第1センサとは異なる第2センサの検出結果に基づくセンサ情報の双方を前記撮像画像にオーバーレイしたオーバーレイ画像を前記ディスプレイに表示し、
前記第2センサは、自機そのものの状態に関する情報を検出するセンサであり、
前記センサ情報は、自機の連続的な位置の変化を示す情報を含む
電子機器。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記オーバーレイ画像に特定の被写体の名称情報および前記特定の被写体の個別の大きさの情報の少なくとも1つを含める、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
ストレージをさらに備え、
前記コントローラは、
ストレージに記憶された前記オーバーレイ画像を前記ディスプレイに表示する、請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
ストレージをさらに備え、
前記コントローラは、
前記オーバーレイ画像を前記ディスプレイに表示させた後に、第1操作が行われると、前記ストレージに前記オーバーレイ画像を記憶する、請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項5】
前記コントローラは、
第2操作が行われると、前記オーバーレイ画像を前記ディスプレイに表示し、
前記オーバーレイ画像を前記ディスプレイに表示させた後に、前記第1操作が行われると、前記ストレージに前記オーバーレイ画像を記憶する、請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記第2操作が行われると、所定の時間の間のみ前記オーバーレイ画像を前記ディスプレイに表示する、請求項5に記載の電子機器。
【請求項7】
前記オーバーレイ画像において、さらに前記サイズ情報に関連する画像が前記撮像画像にオーバーレイされている、請求項5または6に記載の電子機器。
【請求項8】
前記コントローラは、
第3操作が行われると、前記サイズ情報を、前記撮像画像にオーバーレイする、請求項7に記載の電子機器。
【請求項9】
前記コントローラは、
前記第3操作として、一定の撮像範囲が撮像された前記撮像画像内で測定範囲を規定する操作が行われると、前記サイズ情報を、前記撮像画像にオーバーレイする、請求項8に記載の電子機器。
【請求項10】
前記コントローラは、
前記サイズ情報を前記撮像画像にオーバーレイさせた後に、前記第1操作が行われると、前記ストレージに前記オーバーレイ画像を記憶する、請求項8または9に記載の電子機器。
【請求項11】
フォーカス処理およびサイズ情報の検出処理を開始させるタッチセンサをさらに備え、
前記コントローラは、
前記撮像画像が表示されている間、所定の操作が行われると、フォーカス処理が可能な第1モードとサイズ情報の検出処理の開始が可能な第2モードとを切り替える、請求項1から10のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項12】
前記コントローラは、
前記特定の被写体を含む前記撮像画像に、前記サイズ情報を示すオブジェクトをオーバーレイしたオーバーレイ画像を前記ディスプレイに表示する、請求項1から11のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項13】
前記コントローラは、
前記特定の被写体の全体に関するサイズ情報を測定し、
前記特定の被写体の全体を含む前記撮像画像に、前記サイズ情報を示すオブジェクトをオーバーレイしたオーバーレイ画像を前記ディスプレイに表示する、請求項1から11のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項14】
前記オブジェクトは所定の長さを有する線分を含む、請求項12または13に記載の電子機器。
【請求項15】
前記オーバーレイ画像には、前記オブジェクトとは異なる態様で前記サイズ情報がさらに表示される、請求項12から14のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項16】
カメラと、第1センサと、当該第1センサとは異なる第2センサと、ディスプレイと、コントローラとを備える電子機器の制御方法であって、
前記コントローラが、
前記カメラが撮像した撮像画像および前記第1センサの検出結果に基づく特定の被写体までの距離を示す距離情報に基づいて当該撮像画像に含まれる特定の被写体の少なくとも一部分に関するサイズ情報を測定するステップと、
前記サイズ情報および前記第1センサとは異なる第2センサの検出結果に基づくセンサ情報の双方を前記撮像画像にオーバーレイしたオーバーレイ画像を前記ディスプレイに表示するステップと、
を含み、
前記第2センサは、自機そのものの状態に関する情報を検出するセンサであり、
前記センサ情報は、自機の連続的な位置の変化を示す情報を含む、制御方法。
【請求項17】
カメラと、第1センサと、当該第1センサとは異なる第2センサと、ディスプレイと、コントローラとを備える電子機器を制御するプログラムであって、
前記コントローラに、
前記カメラが撮像した撮像画像および前記第1センサの検出結果に基づく特定の被写体までの距離を示す距離情報に基づいて当該撮像画像に含まれる特定の被写体の少なくとも一部分に関するサイズ情報を測定するステップと、
前記サイズ情報および前記第1センサとは異なる第2センサの検出結果に基づくセンサ情報の双方を前記撮像画像にオーバーレイしたオーバーレイ画像を前記ディスプレイに表示するステップと、
を実行させ、
前記第2センサは、自機そのものの状態に関する情報を検出するセンサであり、
前記センサ情報は、自機の連続的な位置の変化を示す情報を含む、プログラム。」

なお、本願発明2ないし本願発明15は、本願発明1の構成を全て含む。
また、本願発明16は、本願発明1に係る「電子機器」を制御する方法の発明であり、本願発明17は、本願発明16に係る方法の発明を「電子機器」の「コントローラ」に実行させるプログラムの発明であり、いずれも、本願発明1とカテゴリー表現が異なるだけの発明である。

第3 原査定の理由の概要
1 理由1(新規性)
本件補正前の請求項1、請求項3、請求項8ないし請求項11、請求項14ないし請求項16及び請求項18ないし請求項23に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第2項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2 理由2(進歩性)
本件補正前の請求項1、請求項3、請求項8ないし請求項23に係る発明は、引用文献1ないし引用文献4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2005-142938号公報
引用文献2:特開2006-251347号公報
引用文献3:特開平5-297445号公報
引用文献4:特開2016-122990号公報

第4 当審拒絶理由の概要
1 理由1(明確性)
本件補正前の請求項8に記載された「特定の被写体に共通する情報」は、何を指しているのか分からない。
本件補正前の請求項10ないし請求項13の記載からは、各請求項に係る発明の「コントローラ」の動作を理解することができない。
本願の本件補正前の請求項20の「所定の幅を有する線分」という記載は、「線分」の「幅」が何を指すのか理解できないので、意味が分からない。
したがって、本件補正前の請求項8、請求項10ないし請求項13及び請求項20に係る発明は、明確でない。これらの請求項を直接又は間接的に引用して記載された本件補正前の請求項に係る発明も、同様である。

2 理由2(進歩性)
本件補正前の請求項1ないし請求項25に係る発明は、引用文献1ないし引用文献7に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2005-142938号公報(再掲)
引用文献2:特開2006-251347号公報(再掲)
引用文献3:特開平5-297445号公報(再掲)
引用文献4:特開2016-122990号公報(再掲)
引用文献5:国際公開第2013/099271号
引用文献6:特開平10-115861号公報
引用文献7:特開2004-48577号公報

第5 当審拒絶理由について
1 理由1(明確性)
本件補正により、本件補正前の請求項8に記載された「特定の被写体に共通する情報」は、本件補正後の請求項2に記載された「特定の被写体の名称情報」に変更され、その結果、何を指しているのかが明らかになった。
本件補正により、本件補正前の請求項10ないし請求項13(本件補正後の請求項4ないし請求項7)に記載された事項が変更された結果、これらの請求項に係る発明の「コントローラ」の動作を理解することができるようになった。
本件補正により、本件補正前の請求項20に記載された「所定の幅を有する線分」は、本件補正後の請求項14に記載された「所定の長さを有する線分」に変更され、その結果、意味が分かるようになった。
したがって、本件補正後の請求項2、請求項4ないし請求項7及び請求項14に係る発明(本願発明2、本願発明4ないし本願発明7及び本願発明14)は、明確である。これらの請求項の記載を直接又は間接的に引用して記載された本件補正後の請求項に係る発明も、同様である。

2 理由2(進歩性)について
(1) 引用文献に記載された発明等
ア 引用文献1
(ア)引用文献1には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。

「【0045】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態における電子カメラ1の回路システム構成を示すブロック図である。
【0046】
電子カメラ1には、カメラ全体を制御する主制御回路10が設けられている。主制御回路10は、各部を制御することで、画像の撮影や表示、記録、外部機器との通信等を実現することができる。本実施形態の電子カメラ1では、撮影された画像中の被写体の大きさ(長さ)を算出して画像に付加して表示させると共に、画像と共に関連付けて記録する機能が設けられている。」

「【0051】
レンズ光学系を通じて入る被写体から光は、タイミング発生部32及びドライバ30による走査駆動制御に従いCCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子28によって光電変換され、サンプルホールド(S&H)回路34、オートゲインコントローラ(AGC)36、A/D回路37を通じてデジタルデータ化されて入力される。
【0052】
主制御回路10には、画像処理部40、距離演算部41、移動速度演算部42、記憶部43、表示選択部44、及び被写体識別部45が設けられている。
【0053】
画像処理部40は、A/D回路37を通じて入力されるデジタルデータに対して、データ圧縮等の処理を施す。画像処理部40による画像処理が施された画像データは、メモリ(半導体メモリ)50に記録される。また、画像処理部40は、撮像系(シャッタ19?A/D回路37)を通じて入力される画像データを、表示選択部44を通じて表示制御部46の表示メモリ(図示せず)に記録させることで、LCDファインダとして表示部48に撮像(スルー)画像を表示させる。また、画像処理部40は、撮像画像から被写体を抽出するための画像処理を実行するもので、例えば濃度分布、輝度分布やコントラスト、あるいは彩度分布などから被写体に相当する領域(被写体の輪郭)抽出する。
【0054】
距離演算部41は、距離速度検出部39(詳細な構成については後述する(図3、図4))によって高精度に測定される被写体までの距離のデータをもとにして、合焦した被写体までの距離での光軸と垂直な平面(または等距離の曲面)の縦または横方向の実寸(実際の物理的な長さ)に換算した長さのスケール(目盛りと長さ、単位)を生成して、長さ・距離データ43bとして記憶部43に記憶させる。この長さ・距離データ43bをもとにして、表示部48(LCDファインダ)の画面中の下や横、あるいは被写体の位置に合わせて画像と同時にスケールを表示させることができる。レンズ・撮像系制御回路12の制御によるフォーカス位置やズーム拡大率の変更に従って、距離や長さの目盛りも更新表示される。また、距離演算部41は、焦点ロックされると、被写体に相当する画像から複数点をマーキングし、平面(または曲面)の2点間、または原点と他点との長さを計測し、実寸に換算して、長さ・距離データ43bとして記憶部43に記憶させる。長さ・距離データ43bをもとにして、被写体に対して指定される2点の位置の間を表す図形と実寸の長さを表す数字を画像中に表示させることができる。複数点のマーキングは、操作部55(カーソルキー)の操作により入力回路54を介して入力された指示に応じて行う、あるいは画像処理部40の画像処理によって抽出された被写体に相当する領域の画像をもとに例えば端部を検出して行う。」

「【0060】
表示制御部46は、表示メモリに記憶される画像データ46aに基づいて、表示部48(LCDモニタ))に電子ファインダとして撮像(スルー)画像をリアルタイムに表示させる、あるいはメモリ50や外部メモリ52に記憶された画像データをもとに撮影済みの画像を表示させる。また、被写体識別部45により記憶される情報処理データ46bをもとに被写体の種別名(名称)やその他の各種情報を被写体の画像と共に表示部48において表示させる。」

「【0103】
図10(a)には、撮影画像中の被写体である魚に焦点を合わせて、フォーカスロックされた状態の表示例を示している。図10(a)では、測長用スケールと共に魚までの距離(3.2M)が表示されている。」

「【0107】
主制御回路10は、表示選択部44を通じて、測定された長さと寸法線の長さ・距離データ43bを表示制御部46に提供して、撮影画像と共に表示させる(ステップB7)。」

「【0111】
ここで、撮影画像を記録保存する指示が操作部55から入力された場合(ステップB11、Yes)、主制御回路10は、撮影画像と共に記録する情報の入力を受け付ける。例えば、表示部48においてソフトウェアキーボード(文字一覧)を表示させ、カーソルキーの操作や座標入力部(タッチパネル)の操作によって任意の文字を選択させることで文字を入力する。入力された文字(文字列)に対しては、例えばかな漢字変換処理などを施して、漢字混じりの文字列などに変換することができる。従って、ユーザは、例えば魚を釣った場所(地名)や魚種名、その他の任意の情報を文字列によって入力することができる。
【0112】
主制御回路10は、入力された文字列を撮影画像中の所定の位置、例えば画面の上部において表示させる。図10(d)には、入力された文字列が表示された画面の一例を示している。図10(d)では、魚を釣った場所と魚種名を表す「神越渓谷 虹鱒」の文字列が入力された状態を示している。」

(イ)引用文献1の前記(ア)の記載をまとめると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「カメラ全体を制御する主制御回路10が設けられ、撮影された画像中の被写体の大きさ(長さ)を算出して画像に付加して表示させる電子カメラ1であって、
レンズ光学系を通じて入る被写体からの光を光電変換する撮像素子28と、
光電変換された被写体からの光をデジタルデータ化するサンプルホールド回路34、オートゲインコントローラ36及びA/D回路37と、
A/D回路37を通じて入力されるデジタルデータに対してデータ圧縮等の処理を施す画像処理部40と、
画像処理が施された画像データが記録されるメモリ50と、
被写体までの距離を高精度に測定する距離速度検出部39と、
被写体までの距離のデータをもとにして、合焦した被写体までの距離での光軸に垂直な平面の縦または横方向の実寸に換算した長さのスケールを生成して、長さ・距離データ43bとして記憶部43に記憶させる距離演算部41であって、焦点ロックされると、被写体に相当する画像から複数点をマーキングし、平面の2点間の長さを計測し、実寸に換算して、長さ・距離データ43bとして記憶部43に記憶させる距離演算部41と、
電子ファインダとして撮像画像をリアルタイムに表示したり、メモリ50に記憶された画像データをもとに撮影済みの画像を表示したりする表示部48とを備え、
主制御回路10には、画像処理部40と距離演算部41と記憶部43とが設けられ、
主制御回路10は、長さ・距離データ43bを撮影画像と共に表示させ、
ユーザは、被写体である魚を釣った場所を文字列によって入力することができ、
主制御回路10は、入力された文字列を撮影画像中の所定の位置において表示させる
電子カメラ1。」

イ 引用文献2
引用文献2(【0001】、【0047】ないし【0058】及び図9)には、銀塩カメラやデジタルスチルカメラ等の撮影装置において、所定の時間が経過したらフォーカスロックを解除することが記載されている。

ウ 引用文献3
引用文献3(【0008】)には、モード切り替えスイッチの操作により、通常のカメラとして動作する通常カメラモードと、被写体までの距離の測定、記録を行う距離モード及び被写体の寸法を測定、記録する寸法モードとを切り替えることができるカメラが記載されている。

エ 引用文献4
引用文献4(【0095】ないし【0100】、図9及び図10)には、モード切り替えスイッチをタッチセンサで実現することが記載されている

オ 引用文献5
(ア)引用文献5には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。

「[0001] 本発明は、デジタルカメラ、携帯電話、携帯端末等のカメラ付き電子機器、およびこれらカメラ付き電子機器用のアプリケーションプログラムに関するものである。」

「[0020] (第1実施形態)
<動作例1>
ユーザはまず、釣り上げた魚1を所定のマーカー2と一緒にデジタルカメラ10で撮影する(図1(a))。ここでは、マーカー2の平面形状は円形としている。これは、平面形状が円形であると、画像認識が容易であるとともに、マーカー2の向きにかかわらず画像上の寸法が直径すなわち一定となるからである。デジタルカメラ10は、マーカー2の実寸法(ここでは直径)を予め認識しているものとする。
[0021] デジタルカメラ10は、例えば撮影後に、あるいはユーザの操作を受けて、魚1とマーカー2が共に映った撮影画像P1をディスプレイ11に表示する(図1(b))。撮影画像P1は被写体画像としての魚画像1Aとマーカー画像2Aとを含んでいる。そしてデジタルカメラ10は、撮影画像P1においてマーカー画像2Aを認識し、このマーカー画像2Aのサイズを検出する。なお、マーカー画像2Aが認識できたことが分かるように、画面上に確認表示を出力してもよい。図1(b)では確認表示の一例として、マーカー画像2Aの輪郭を強調表示している。」

「[0023] 次に、デジタルカメラ10は、撮影画像P1において魚画像1Aを認識し、この魚画像1Aのサイズを検出する(図1(c))。検出するのは魚画像1Aの頭の先から尾の先までのサイズである。ここでは、撮像画像P1上にカーソルa1を表示し、ユーザがカーソルa1の位置を動かして魚画像1Aを指定するものとする。デジタルカメラ10はこのユーザの操作を受けて、魚画像1Aの位置を特定し認識する。またこの場合も、魚画像1Aが認識できたことが分かるように、画面上に確認表示を出力してもよい。図1(c)では確認表示の一例として、魚画像1Aの輪郭を強調表示している。」

「[0026] そして、デジタルカメラ10は、マーカー2の実寸法と、検出したマーカー画像2Aのサイズと、検出した魚画像1Aのサイズとを基にして、魚1の実寸法を算出する。算出するのは魚1の頭の先から尾の先までの実寸法である。この算出は簡単な比率計算によって行うことができる。すなわち、マーカー2の直径をAcm、検出したマーカー画像2Aの直径の画素数をBピクセル、魚画像1Aの頭の先から尾の先までのサイズをCピクセルとすると、魚1の実寸法Xcmは、
X=A・C/B
で求められる。例えば、A=3(cm)、B=50(ピクセル)、C=750(ピクセル)とすると、X=45(cm)となる。そしてデジタルカメラ10は、算出した実寸法a2をディスプレイ11に表示する(図1(d))。これにより、ユーザは撮影した魚1の実寸法を知ることができる。」

「[0050] あるいは、画像マッチング処理を用いて、魚の種類の自動判定を行ってもよい。すなわち、撮影画像には撮影日時が併せて記録されているので、この撮影日時から撮影した季節や時間帯が分かる。また、電子機器がGPS機能を有している場合には、撮影画像と併せて撮影位置を記録することができるので、この撮影位置から撮影した場所が分かる。もちろん、ユーザが撮影日時や撮影位置を入力してもかまわない。そして、撮影日時と撮影位置、および、算出した魚の実寸法と、撮影画像における魚画像とを用いて、例えば、魚の特徴の情報を集約したデータベースをインターネット経由でアクセスすることによって、魚の種類を判定することができる。魚画像の特徴としては、例えば外形形状や模様等を用いることができる。また、判定の結果、該当する可能性の高い魚の種類の候補をディスプレイに表示して、ユーザに最終的に選択させるようにしてもよい。」

(イ)引用文献5の前記(ア)の記載をまとめると、引用文献5には、以下の事項が記載されている。

「ユーザが、釣り上げた魚1を所定のマーカー2と一緒に撮影すると、魚1とマーカー2が共に映った撮影画像P1をディスプレイ11に表示し、撮影画像P1において魚画像1Aを認識し、この魚画像1Aのサイズを検出し、マーカー2の実寸法と、検出したマーカー画像2Aのサイズと、検出した魚画像1Aのサイズとを基にして、魚1の実寸法を算出し、算出した実寸法a2をディスプレイ11に表示するデジタルカメラ10において、
デジタルカメラ10がGPS機能を有している場合には、撮影画像と併せて撮影位置を記録することができるので、この撮影位置から撮影した場所が分かるし、ユーザが撮影位置を入力してもかまわない。」

カ 引用文献6
引用文献6(【0006】、【0009】、【0012】ないし【0017】、図1及び図4)には、電子カメラ(CCD撮像素子を用いた電子撮影方式のカメラ)に温度センサ8及び気圧センサ9を設け、環境温度、気圧、水圧、高度、水深などの撮影環境情報を撮影画像とともに記録できるようにすることが記載されている。

キ 引用文献7
引用文献7(【0012】ないし【0015】及び図1)には、電子カメラ(電子スチルカメラ)に気温センサ及び気圧センサにより構成された天気情報検知手段7を設け、気温データ及び気圧データを撮影画像とともに記憶することが記載されている。

(2)本願発明1について
ア 対比
(ア)引用発明の「電子カメラ1」のうち、「レンズ光学系を通じて入る被写体からの光を光電変換する撮像素子28」と「光電変換された被写体からの光をデジタルデータ化するサンプルホールド回路34、オートゲインコントローラ36及びA/D回路37」と「A/D回路37を通じて入力されるデジタルデータに対してデータ圧縮等の処理を施す画像処理部40」と「画像処理が施された画像データが記録されるメモリ50」とを合わせたものは、全体として、レンズ光学系を通じて入る被写体からの光を光電変換し、デジタルデータ化し、データ圧縮等の処理を施した画像データとして記録するというカメラの機能を果たすから、本願発明1の「カメラ」に相当する。

(イ)本願発明1の「第1センサ」は、その「検出結果に基づく特定の被写体までの距離を示す距離情報」が提供されるものであるから、「特定の被写体までの距離」を測定するものであるということができる。
そうすると、引用発明の「被写体までの距離を高精度に測定する距離速度検出部39」は、本願発明1の「第1センサ」に相当する。

(ウ)引用発明の「表示部48」は、本願発明1の「ディスプレイ」に相当する。

(エ)引用発明の「カメラ全体を制御する主制御回路10」は、本願発明1の「コントローラ」に相当する。

(オ)前記(ア)ないし(エ)を踏まえると、引用発明の「電子カメラ1」は、本願発明1の「電子機器」に相当する。

(カ)引用発明の「被写体までの距離のデータ」は、前記(イ)を踏まえると、本願発明1の「第1センサの検出結果に基づく特定の被写体までの距離を示す距離情報」に相当する。
また、引用発明の「被写体に相当する画像から複数点をマーキングし、平面の2点間の長さを計測し、実寸に換算」した「長さ・距離データ43b」は、本願発明1の「撮影画像に含まれる特定の被写体の少なくとも一部分に関するサイズ情報」に相当する。
そうすると、引用発明の「主制御回路10」に「設けられ」た「距離演算部41」が「被写体までの距離のデータをもとにして、合焦した被写体までの距離での光軸に垂直な平面の縦または横方向の実寸に換算した長さのスケールを生成して、長さ・距離データ43bとして記憶部43に記憶させる」とともに、「焦点ロックされると、被写体に相当する画像から複数点をマーキングし、平面の2点間の長さを計測し、実寸に換算して、長さ・距離データ43bとして記憶部43に記憶させる」ことは、前記(エ)を踏まえると、本願発明1の「コントローラ」が「前記カメラが撮像した撮像画像および前記第1センサの検出結果に基づく特定の被写体までの距離を示す距離情報に基づいて当該撮像画像に含まれる特定の被写体の少なくとも一部分に関するサイズ情報を測定」することに相当する。

(キ)引用発明において「ユーザ」が「文字列によって入力する」「被写体である魚を釣った場所」と、本願発明1の「自機そのものの状態に関する情報を検出するセンサ」である「第1センサとは異なる第2センサの検出結果に基づくセンサ情報」であって「自機の連続的な位置の変化を示す位置情報を含む」「センサ情報」とは、「位置を示す位置情報を含む情報」である点で共通する。

(ク)前記(ウ)、(エ)、(カ)及び(キ)を踏まえると、引用発明の「主制御回路10」が「長さ・距離データ43bを撮影画像と共に表示させ、」「入力された文字列を撮影画像中の所定の位置において表示させる」ことと、本願発明1の「コントローラ」が「前記サイズ情報および前記第1センサとは異なる第2センサの検出結果に基づくセンサ情報の双方を前記撮像画像にオーバーレイしたオーバーレイ画像を前記ディスプレイに表示」することとは、「コントローラが」が「サイズ情報および位置を示す位置情報を含む情報の双方を撮像画像にオーバーレイしたオーバーレイ画像を前記ディスプレイに表示」することである点で共通する。

イ 一致点及び相違点
前記アの対比の結果をまとめると、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(ア)一致点
「カメラと、第1センサと、ディスプレイと、コントローラとを備え、
前記コントローラは、
前記カメラが撮像した撮像画像および前記第1センサの検出結果に基づく特定の被写体までの距離を示す距離情報に基づいて当該撮像画像に含まれる特定の被写体の少なくとも一部分に関するサイズ情報を測定し、
前記サイズ情報および位置を示す位置情報を含む情報の双方を前記撮像画像にオーバーレイしたオーバーレイ画像を前記ディスプレイに表示する
電子機器。」

(イ)相違点
本願発明1は、「自機そのものの状態に関する情報を検出するセンサ」である「第1センサとは異なる第2センサ」を備え、「位置を示す位置情報を含む情報」が「第2センサの検出結果に基づく」「自機の連続的な位置の変化を示す位置情報を含む」「センサ情報」であるのに対し、
引用発明は、本願発明1の「第2のセンサ」に相当するものを備えず、「位置を示す位置情報を含む情報」が「ユーザ」が「文字列によって入力する」「被写体である魚を釣った場所」である点。

ウ 相違点についての判断
引用発明に係る「電子カメラ1」と引用文献5に記載された事項(前記(1)オ(イ))における「デジタルカメラ10」とは、被写体である魚を撮影すると、その被写体の実寸をその被写体の撮影画像とともに表示する電子カメラである点で共通する。
そして、引用文献5に記載された事項によれば、そのような電子カメラがGPS機能を有していれば、撮影画像と併せて撮影位置を記録することができるし、ユーザが撮影位置を入力してもかまわないというのであるから、引用文献5に記載された事項は、電子カメラにGPS機能を追加し、撮影画像と併せて撮影位置を記録できるようにすることを示唆しているということができる。すなわち、引用発明に係る「電子カメラ1」にGPS機能を追加し、撮影画像と併せて撮影位置を記録できるようにすることは、引用文献5に記載された事項に基づいて当業者が容易に思い付くことである。
しかし、その結果として、引用発明に係る「電子カメラ1」は、「被写体までの距離を高精度に測定する距離速度検出部39」(本件補正発明の「第1のセンサ」に相当する。)とは別にGPSセンサ(本願発明1の「自機そのものの状態に関する情報を検出するセンサ」である「第1センサとは異なる第2センサ」に相当する。)を備えることになるものの、そのGPSセンサの検出結果に基づく情報(本願発明1の「第2センサの検出結果に基づくセンサ情報」に相当する。)は、撮影位置(すなわち、自機の位置)を示すものにとどまる。すなわち、引用発明に係る「電子カメラ1」にGPS機能を追加し、撮影画像と併せて撮影位置を記録できるようにしたものにおいて、「第2センサの検出結果に基づくセンサ情報」に相当する情報は、本願発明1とは異なり、「自機の連続的な位置の変化を示す位置情報を含む」ものではない。
また、電子カメラにおいて、「自機の連続的な位置の変化を示す位置情報を含む」「センサ情報」を記録できるようにすることは、引用文献1ないし引用文献4、引用文献6及び引用文献7のいずれにも記載されていないし、示唆されてもいない。
さらに、引用発明に係る「電子カメラ1」は、釣った魚を被写体とし、その魚を釣った場所としての撮影位置(すなわち、自機の位置)を記録するものであり、そのような「電子カメラ1」において、撮影位置に代えて、又は撮影位置に加えて、「自機の連続的な位置の変化を示す位置情報を含む」「センサ情報」を取得しなければならない事情は見当たらないから、このことが当業者にとって自明であると認めることもできない。
したがって、相違点に係る本願発明1の構成は、引用発明と引用文献1ないし引用文献7に記載された事項とに基づいて、当業者が容易に思い付くことであるということはできない。

エ 本願発明1についてのまとめ
以上のとおりであるから、本願発明1は、引用文献1ないし引用文献7に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(3)本願発明2ないし本願発明15について
本願発明2ないし本願発明15は、いずれも本願発明1の構成を全て含むから、少なくとも本願発明1と引用発明との相違点(前記(2)イ(イ))で引用発明と相違する。そして、前記(2)ウのとおり、相違点に係る本願発明1の構成は、引用発明と引用文献1ないし引用文献7に記載された事項とに基づいて当業者が容易に思い付くことであるということはできないから、相違点に係る本願発明2ないし本願発明15の構成も同様である。
したがって、本願発明2ないし本願発明15は、引用文献1ないし引用文献7に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(4)本願発明16及び本願発明17について
本願発明16は、本願発明1に係る「電子機器」を制御する方法の発明であり、本願発明17は、本願発明16に係る方法の発明を「電子機器」の「コントローラ」に実行させるプログラムの発明であり、いずれも、本願発明1とカテゴリー表現が異なるだけの発明であるから、相違点に係る本願発明1の構成に対応する構成を備えるものである。
そして、前記(2)ウのとおり、相違点に係る本願発明1の構成は、引用発明と引用文献1ないし引用文献7に記載された事項とに基づいて当業者が容易に思い付くことであるということはできないから、これに対応する本願発明16及び本願発明17の構成も同様である。
したがって、本願発明16及び本願発明17は、引用文献1ないし引用文献7に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

第6 原査定の理由について
1 理由1(新規性)
前記第5の2で述べたとおり、本願発明1ないし本願発明15は、少なくとも本願発明1と引用発明との相違点(前記(2)イ(イ))で引用発明と相違するし、本願発明16及び本願発明17は、相違点に係る本願発明1の構成に対応する構成を備えるから、本願発明1ないし本願発明17は、引用文献1に記載された発明であるということはできない。
したがって、原査定の理由1は、維持することができない。

2 理由2(進歩性)
前記第5の2で述べたとおり、本願発明1ないし本願発明17は、引用文献1ないし引用文献7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないから、引用文献1ないし引用文献4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。
したがって、原査定の理由2は、維持することができない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願は拒絶をするべきものであるということはできない。
また、他に、本願は拒絶をするべきものであるとする理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-09-02 
出願番号 特願2018-32009(P2018-32009)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G01B)
P 1 8・ 121- WY (G01B)
P 1 8・ 113- WY (G01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 河内 悠清水 靖記  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 小林 紀史
櫻井 健太
発明の名称 電子機器、制御方法およびプログラム  
代理人 杉村 憲司  
代理人 河合 隆慶  

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