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審決分類 審判 査定不服 特39条先願 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1354677
審判番号 不服2018-16501  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-11 
確定日 2019-09-13 
事件の表示 特願2016-216732号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 1月26日出願公開、特開2017- 18832号、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年4月8日に出願した特願2011-86699号(以下、「原出願」という。)の一部を平成27年4月8日に新たな特許出願(特願2015-79605号)とし、さらにその一部を平成28年11月4日に新たな特許出願(特願2016-216732号)としたものであって、同年12月13日に手続補正書が提出され、平成29年10月4日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年11月2日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成30年3月16日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、指定した期間内に応答がなかったため、同年9月20日付け(送達日:同年9月25日)で拒絶をすべき旨の査定(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対して、同年12月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、その後、当審において、令和1年5月27日付けで拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、これに対して、同年7月26日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

(先願)この出願の請求項1に係る発明は、原出願の出願日前に出願された下記の出願1ないし4の請求項1に係る発明と同一であるから、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができない。

先願出願一覧
1.特願2016-152959号(特許第6188889号公報参照)
2.特願2016-95776号(特許第6157685号公報参照)
3.特願2016-175550号(特開2016-198676号公報参照)
4.特願2016-179728号(特開2016-203024号公報参照)

なお、周知技術を示す文献として、下記の文献5ないし7を提示した。
5.特開2008-142273号公報
6.特開2004-174012号公報
7.特開2009-78093号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

(先願)この出願の請求項1に係る発明は、原出願の出願日前に出願された特願2016-16899号(特許第6278986号)の請求項1に係る発明と同一であるから、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができない。

第4 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和1年7月26日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(AないしUは、本願発明を分説するために当審で付した)。

「【請求項1】
A 所定条件の成立に基づいて抽選を行う抽選手段と、
B 該抽選手段による前記抽選の結果に応じて遊技の進行を制御する遊技制御手段と、
C 前記遊技が行われる遊技領域を有する遊技盤と、
D 該遊技領域を遊技者側から視認可能にする遊技窓部を備えた枠体と、
E を備える遊技機であって、
D 前記枠体は、
F 前記遊技窓部の外縁に略沿って当該遊技窓部の外側に配置され、前記遊技の進行に伴って実行される遊技演出に関連して発光可能な周発光手段と、
G 前記遊技窓部から離れる方向に所定の幅を有して前記周発光手段の前側を被覆すると共に透光性を有する周装飾部と、
H 前記周発光手段を複数の周発光部に分割するように当該複数の周発光部の周方向の間に配置され、前記遊技演出に関連して発光可能な複数の分割発光手段と、
I 前記遊技窓部から離れる方向に所定の幅を有して前記分割発光手段の前側を被覆すると共に少なくとも一部に透光性を有する分割装飾部と、を具備し、
J 前記周発光手段と前記分割発光手段とは、前記遊技演出に関連して互いに異なる発光色に制御可能とされ、
K 前記周発光手段の複数の周発光部は、それぞれ別の系統に分けられており、前記周発光部ごとに発光制御可能とされ、
L 前記複数の分割発光手段は、それぞれ別の系統に分けられており、前記分割発光手段ごとに発光制御可能とされ、
M それぞれ別の系統に分けられる前記複数の周発光部のうち二以上の前記周発光部を同一基板上に設け、
N 前記遊技盤には、盤側発光手段を備え、
O 前記周発光手段は、前記盤側発光手段と協調して発光制御され得、
R それぞれ別の系統に分けられる少なくとも1つの前記周発光部と少なくとも1つの前記分割発光手段とを同一基板上に設け、
S 前記周装飾部の前記遊技者側への突出量が場所によって異なり、前記遊技窓部の側方の前記周装飾部よりも前記遊技窓部の上方の前記周装飾部の突出量の方が多く、
U さらに、それぞれ別の系統に分けられている前記複数の周発光部および前記複数の分割発光手段を同時に発光させて前記遊技窓部の外周を略均一に発光させる特別発光制御を実行する特別発光制御実行手段を具備する
E ことを特徴とする遊技機。」

第5 先願発明
本願と同一人により、本願の出願遡及日(平成23年4月8日)より前の平成23年3月31日に出願された特願2011-80528号の一部を新たな特許出願とした特願2016-16899号(以下「先願」という。)の請求項1に係る発明(以下「先願発明」という。)は、その特許6278986号公報の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(なお、記号A1ないしM1、T1、P1ないしR1は、先願発明を分説するために当審で付した)。

「【請求項1】
A1 所定条件の成立に基づいて抽選を行う抽選手段と、
B1 該抽選手段による前記抽選の結果に応じて遊技の進行を制御する遊技制御手段と、
C1 前記遊技が行われる遊技領域と、
D1 該遊技領域を遊技者側から視認可能にする遊技窓部を備えた枠体と、
E1 を備える遊技機であって、
D1 前記枠体は、
F1 前記遊技窓部の外縁に略沿って当該遊技窓部の外側に配置され、前記遊技の進行に伴って実行される遊技演出に関連して発光可能な周発光手段と、
G1 前記遊技窓部から離れる方向に所定の幅を有して前記周発光手段の前側を被覆すると共に透光性を有する周装飾部と、
H1 前記周発光手段を複数の周発光部に分割するように当該複数の周発光部の周方向の間に該複数の周発光部の配置形態とは異なる形態で配置され、前記遊技演出に関連して発光可能な分割発光手段と、
I1 前記遊技窓部から離れる方向に所定の幅を有して前記分割発光手段の前側を被覆すると共に少なくとも一部に透光性を有する分割装飾部と、を具備し、
J1 前記周発光手段と前記分割発光手段とは、前記遊技演出に関連して互いに異なる発光色に制御可能とされ、
K1 前記周発光手段の複数の周発光部は、それぞれ別の系統に分けられており、前記複数の周発光部ごとに発光制御可能とされ、
L1 前記複数の分割発光手段は、それぞれ別の系統に分けられており、前記分割発光手段ごとに発光制御可能とされ、
M1 それぞれ別の系統に分けられる前記複数の周発光部のうち二以上の前記周発光部を同一基板上に設け、
T1 前記分割発光手段の周方向の長さよりも前記周発光部の周方向の長さを長く設定し、
P1 前記複数の分割発光手段は、少なくとも発光手段を所定個数備える第1分割発光手段と、
Q1 備えられている前記発光手段の個数が前記第1分割発光手段とは異なる第2分割発光手段と、を含み、
R1 それぞれ別の系統に分けられる少なくとも1つの前記周発光部と少なくとも1つの前記分割発光手段とを同一基板上に設けた
E1 ことを特徴とする遊技機。」

第6 対比・判断
本願発明と先願発明とを対比する。
先願発明の構成A、B、D、E、F、G、I、J、L、M、Rと、先願発明の構成A1、B1、D1、E1、F1、G1、I1、J1、L1、M1、R1は文言において一致し、以下の点で一応相違する。

[相違点1](構成C)
本願発明は、「遊技が行われる遊技領域を有する遊技盤」(構成C)を備えるのに対し、先願発明は、「遊技が行われる遊技領域」(構成C1)を備える点。

[相違点2](構成H)
本願発明は、「前記周発光手段を複数の周発光部に分割するように当該複数の周発光部の周方向の間に配置され」る「複数の分割発光手段」(構成H)を具備するのに対し、先願発明は、「前記周発光手段を複数の周発光部に分割するように当該複数の周発光部の周方向の間に・・・配置され」る「分割発光手段」(構成H1)を具備するものの、「分割発光手段」は複数であるか否かが定かでなく、また、先願発明の「分割発光手段」は、「該複数の周発光部の配置形態とは異なる形態で配置され」るという発明特定事項を更に有する点。

[相違点3](構成K)
「周発光部」について、本願発明は、「周発光部ごとに発光制御可能とされ」る(構成K)のに対し、先願発明は、「複数の周発光部ごとに発光制御可能とされ」る(構成K1)点。

[相違点4](構成N、O)
本願発明は、「遊技盤には、盤側発光手段を備え、前記周発光手段は、前記盤側発光手段と協調して発光制御され得」る(構成N、O)のに対し、先願発明は、そのような発明特定事項を有していない点。

[相違点5]
先願発明は、「前記分割発光手段の周方向の長さよりも前記周発光部の周方向の長さを長く設定」する(構成T1)のに対し、本願発明は、そのような発明特定事項を有していない点。

[相違点6]
先願発明は、「前記複数の分割発光手段は、少なくとも発光手段を所定個数備える第1分割発光手段と、備えられている前記発光手段の個数が前記第1分割発光手段とは異なる第2分割発光手段と、を含」む(構成P1、Q1)のに対し、本願発明は、そのような発明特定事項を有していない点。

[相違点7](構成S)
本願発明は、「周装飾部の遊技者側への突出量が場所によって異なり、前記遊技窓部の側方の前記周装飾部よりも前記遊技窓部の上方の周装飾部の突出量の方が多い」(構成S)のに対し、先願発明は、そのような発明特定事項を有していない点。

[相違点8](構成U)
本願発明は、「さらに、それぞれ別の系統に分けられている前記複数の周発光部および前記複数の分割発光手段を同時に発光させて前記遊技窓部の外周を略均一に発光させる特別発光制御を実行する特別発光制御実行手段を具備する」(構成U)のに対し、先願発明は、そのような発明特定事項を有していない点。

上記相違点1ないし8について、以下に検討する。

[相違点1](構成C)について
遊技機に遊技盤を備え、その遊技盤に遊技領域が設けられることは、文献を例示するまでもなく、遊技機の技術分野における技術常識であるから、先願発明においても、遊技領域を有する遊技盤を備えることは、当業者にとって自明のことである。
したがって、上記相違点1は、実質的な相違点とはいえない。

[相違点2](構成H)について
先願発明において、上記構成L1及びP1に、「複数の分割発光手段」という特定を有することや、上記構成P1及びQ1から、「分割発光手段」が少なくとも「第1分割発光手段」と「第2分割発光手段」とを含むことから、先願発明が「分割発光手段」も「複数」であるということができる。
そして、「分割発光手段」の「配置」に関する差異について、本願発明は、先願発明における「該複数の周発光部の配置形態とは異なる形態で配置され」という発明特定事項を削除したことで、「分割発光手段」の「配置」の「形態」を「該複数の周発光部の配置形態とは異なる形態」に限らないものとするものであるから、当該「形態」を特定した「下位概念」で表現した先願発明と、それを明確にしない上位概念で表現した本願発明とは、当該相違点2について、実質的には同一のものである。

[相違点3](構成K)について
本願発明は、先願発明における「複数の」という発明特定事項を削除したことで、「発光制御可能とされ」る「周発光部」を「複数」に限らないものとするものであるから、当該「複数」であることを特定した「下位概念」で表現した先願発明と、それを明確にしない上位概念で表現した本願発明とは、当該相違点3について、実質的には同一のものである。

[相違点4](構成N、O)について
遊技機の技術分野において、遊技盤に設けられた発光手段と枠体に設けられた発光手段とが協調する演出を行うことは、原出願の出願前に周知(以下「周知技術1」という。例えば、特開2008-142273号公報(【0204】、【0273】ないし【0278】、図4ないし5、図39ないし40)、特開2004-174012号公報(【0061】、図18)を参照。)である。
そうすると、上記相違点4は、先願発明に周知技術1を付加したものであって、新たな効果を奏するものではない、すなわち、課題解決のための具体化手段における微差といえるから、上記相違点4は、実質的な相違点とはいえない。

[相違点5]について
本願発明は、先願発明における「前記分割発光手段の周方向の長さよりも前記周発光部の周方向の長さを長く設定」するという発明特定事項を削除したことで、「周発光部の周方向の長さ」が「分割発光手段の周方向の長さよりも」「長く設定」したものに限らないものとするものであるから、当該「長さ」を特定した「下位概念」で表現した先願発明と、それを明確にしない上位概念で表現した本願発明とは、当該相違点5について、実質的には同一のものである。

[相違点6]について
本願発明は、先願発明における「前記複数の分割発光手段は、少なくとも発光手段を所定個数備える第1分割発光手段と、備えられている前記発光手段の個数が前記第1分割発光手段とは異なる第2分割発光手段と、を含」むという発明特定事項を削除したことで、「複数の分割発光手段」が「発光手段を所定個数備える第1分割発光手段と、備えられている前記発光手段の個数が前記第1分割発光手段とは異なる第2分割発光手段と、を含」むものに限らないものとするものであるから、当該「第1分割発光手段」及び「第2分割発光手段」を特定した「下位概念」で表現した先願発明と、それを明確にしない上位概念で表現した本願発明とは、当該相違点6について、実質的には同一のものである。

[相違点7](構成S)について
遊技機の技術分野において、枠体の上側の突出量が、側方の突出量よりも多いことは、原出願の出願前に周知(以下「周知技術2」という。例えば、特開2009-78093号公報(【0042】、図2)を参照。)である。
そうすると、上記相違点6は、先願発明に周知技術2を付加したものであって、新たな効果を奏するものではない、すなわち、課題解決のための具体化手段における微差といえるから、上記相違点7は、実質的な相違点とはいえない。

[相違点8](構成U)について
遊技機の技術分野において、それぞれ別の系統に分けられている複数の周発光部および複数の分割発光手段を同時に発光させて遊技窓部の外周を略均一に発光させる特別発光制御を実行する特別発光制御実行手段を具備することは、原出願の出願前において周知技術、慣用技術であるとする事情は見当たらない。
ちなみに、特開2000-5384号公報には、「弾球遊技機」(【0001】)において、「各前枠発光手段43?45は1個又は複数個を1単位として、各枠部25?27の長手方向に複数個の表示ブロックに分割され、その各表示ブロック毎にその1個又は複数個の発光ランプ47が所定の点滅周期で点滅発光するように前枠発光制御手段49に接続されて」(【0024】)おり、「前枠発光制御手段49は、…遊技盤6側の遊技状態の変化に応じて各前枠発光手段43?45の全部…を所定周期で点滅するように、各前枠発光手段43?45の発光ランプ47を点滅制御すべく構成されて」(【0025】)いるものであって、かつ、「第2図柄表示手段16の変動後の停止図柄が大当たり図柄となった時に、各表示ブロックの発光ランプ47を同時に点滅発光させるようになっている」(【0026】)ものであることが記載されており、さらに、図1からは、「遊技盤6」の外周に「各前枠発光手段43?45」を配置することが看取でき、図8からは、「複数個の表示ブロック」がそれぞれ別の系統に分けられていることが看取できる。しかしながら、当該「複数個の表示ブロック」は、同種の発光部を制御単位ごとに分割したものの集合体に過ぎず、本願発明の「周発光部」及び「分割発光手段」のように、異種の発光部から構成されるものではない。
そして、本願発明は、「それぞれ別の系統に分けられている前記複数の周発光部および前記複数の分割発光手段を同時に発光させて前記遊技窓部の外周を略均一に発光させる特別発光制御を実行する特別発光制御実行手段を具備する」(構成U)ことにより、「周発光部」及び「分割発光手段」を備えつつも、環状の発光装飾に対してアクセントを付与するとの効果をもたらすものである(本願明細書の【0288】参照)。
してみると、上記相違点8は、周知技術、慣用技術の付加であって、新たな効果を奏するものではないということはできない、すなわち、課題解決のための具体化手段における微差とはいえないから、当該相違点8において、本願発明と先願発明とは相違する。

以上のとおり、本願発明と先願発明とは、実質的な相違点(上記相違点8)を有するから、両者は同一(実質同一)ではない。

第7 原査定についての判断
本願発明は、平成30年12月11日付けの補正により、上記構成M(「それぞれ別の系統に分けられる前記複数の周発光部のうち二以上の前記周発光部を同一基板上に設け」という技術的事項)を有し、さらに、令和1年7月26日付けの補正により、上記構成U(「さらに、それぞれ別の系統に分けられている前記複数の周発光部および前記複数の分割発光手段を同時に発光させて前記遊技窓部の外周を略均一に発光させる特別発光制御を実行する特別発光制御実行手段を具備する」という技術的事項)を有するものとなった。
原査定における先願出願1ないし4の請求項1に係る発明は、いずれも、上記構成M及び構成Uを有しておらず、さらに、それらの構成は、いずれも、原出願の出願前における周知技術でもないので、本願発明は、原査定における先願出願1ないし4に係る発明と同一(実質同一)ではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、本願については、原査定の理由及び当審拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-09-03 
出願番号 特願2016-216732(P2016-216732)
審決分類 P 1 8・ 4- WY (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 齋藤 智也  
特許庁審判長 石井 哲
特許庁審判官 ▲高▼橋 祐介
島田 英昭
発明の名称 遊技機  

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