• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01R
管理番号 1354721
審判番号 不服2018-2105  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-15 
確定日 2019-08-30 
事件の表示 特願2014- 13011号「コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月 3日出願公開、特開2015-141778号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成26年1月28日の出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。
平成29年 6月12日付け 拒絶理由通知
同年 7月12日 意見書及び手続補正書の提出
同年11月29日付け 拒絶査定
平成30年 2月15日 審判請求書及び手続補正書の提出
平成31年 3月 6日付け 拒絶理由通知
同年 4月19日 意見書の提出

2.本願発明
本願の請求項1?6に係る発明は、平成30年2月15日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
後端を有するコネクタであって、前後方向に沿って前記後端側から挿入された基板と接続するコネクタにおいて、
複数のコンタクトと、前記コンタクトを保持する保持部材とを備えており、
前記保持部材は、前記前後方向と直交するピッチ方向において互いに離間して設けられた第1ガイド部と第2ガイド部とを有しており、
前記第1ガイド部及び前記第2ガイド部の夫々は、前記前後方向及び前記ピッチ方向の双方と直交する上下方向と夫々交差する上部及び下部を有しており、
前記上部及び前記下部の少なくとも一方には、前記上下方向の内側に向かって突出し、前記コネクタに前記基板が挿入された際に変形して前記基板を保持する突出部が設けられており、
前記第1ガイド部及び前記第2ガイド部の夫々は、前記ピッチ方向と交差する側部を更に有しており、
前記側部には、前記ピッチ方向の内側に面している側面が設けられており、
前記突出部は、前記側面から離れている
コネクタ。」

3.拒絶の理由
平成31年3月6日付けで当審が通知した拒絶の理由は、概略次のとおりである。

【理由】
この出願の請求項1?6に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:実願平1-140896(実開平3-79179号)のマイクロフィルム
引用文献2:特開2001-126790号公報

4.引用文献
(1)引用文献1に記載された事項及び引用発明
引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
なお、下線は当審で付したものである。以下同様。

「〔考案が解決しようとする課題〕
表面接続端子を有するコネクタをプリント板に実装する場合には、プリント板の接続パッドに対して端子を正しく位置決めした状態でリフロー半田付けを行う。そして端子密度が高くなるとこの位置決めの重要性は増加する。従来のコネクタで取付けねじを用いない場合は、プリント板とコネクタを位置合わせした後、リフロー半田付け処理を行うまでは、端子部で挟持するだけなのでコンタクトが微細化して端子部の挟持力が弱い場合は搬送等の取扱時に位置ずれが生じ易い。またねじを用いる場合は、部品点数が増加すると共にねじ締め作業が厄介であるという問題点がある。さらに装置の使用時の相手側コネクタの挿抜の際にはコネクタが挿抜力を受けるが、ねじ固定等でプリント板に固定されていない場合、挿抜方向の力はプリント板の端面で受けるが、斜めや挿抜方向に直角方向のコジリ力に対して弱く端子の半田接続部がこの力を受けることになり、接続信頼性が劣化するという問題がある。
本考案は上記問題点に鑑み創出されたもので、プリント板へ搭載する際の仮止め保持力が大きく、かつ使用時にコネクタに印加される挿抜力に対する支持力が大きい表面実装用のコネクタを提供することを目的とする。」(明細書5頁1行?6頁5行)

「〔作用〕
コネクタをプリント板に装着して端子部をパッドにリフロー半田付けを行うまでの間の仮止めに関しては、2列の端子間で挟持するのみでなく、両端の取付け耳部にもプリント板が圧入されて微小幅の凸条が潰れて適度な強さでプリント板を挟持するので、厚さ方向にガタツキがなく正規の位置に保持される。また挟持力が大きいので装着時に治具等で正しく位置決めされるとリフロー半田付け工程が完了する迄その状態が維持され、途中の取扱等で接続パッドと端子との位置関係のずれが生じない。そしてリフロー半田付け後の、実際の使用時においてコネクタ挿抜時に加わる挿入方向の力はプリント板の端縁で支承し、取付け耳部が或る程度の長さにわたってプリント板を挟持しているのでコジリ方向(プリント板の板厚方向の力)に対しての支持力も大きくなり端子接続部にかかる無理な力が減少すると共に、取付けねじ等を必要としないのでコストの低減を図ることができる。」(7頁2行?8頁2行)

「〔実施例〕
以下添付図により本考案の実施例を説明する。第1図は本考案のコネクタを示す斜視図である。なお全図を通じて同一符号は同一対象物を表す。
図はコネクタをプリント板への取付け側から見た状態を示しており、絶縁体2に複数のコンタクト1が2列に植設されてなっている。
3はコネクタが搭載されるプリント板で、コネクタを取付ける部分のみを図示してあり、端縁の両面には半田付け接続用のパッド31が所定のピッチで形成されている。
コンタクト1には、一端に相手側コネクタのコンタクトに挿入接続される例えば板状の雄接触子部11が、また他端には装着されるプリント板3のパッド31にリフロー半田付け等で表面接続されるばね弾性を有する端子部12が形成されている。
絶縁体2は、モールド成形品にてなり、前面(図では裏側)にコンタクト1の雄接触子部11を突出させ後面からは端子部12がプリント板の板厚より若干小さい対向間隔で突出するようににコンタクト1を2列に配列保持している。そして後面の両端には、後方へ突出する一対の取付け耳部21が形成されて上面視略コ字形状をなしている。そして一対の取付け耳部21には搭載されるプリント板3の板厚より若干大きい幅を有する取付け溝22が取付け耳部21の全面積にわたって形成されており、この取付け溝22の隙間の中心面が対向する2列の端子部12の列中心となっている。そして取付け溝22内壁の対向面にはプリント板3の装着方向に沿って微小高さの凸条22aが形成されている。この凸条22aの対向間隔gは挿着されるプリント板の板厚tcより微小に小さくなっており、プリント板3が嵌入されるとこの凸条22aが若干潰れて、プリント板の板厚のバラツキを吸収してコネクタを挟持するようになっている。従ってプリント板にコネクタを装着する際に、図示せぬ位置出し治具等で各端子部12と対応するパッド31とを正しく位置決めすれば、この挟持力によってリフロー半田付け工程で端子部が接続パッドに永久接続されるまでの期間中、両者の位置関係は正確に維持され、取扱中にずれが生じることはない。なお取付け溝の先端部はプリント板の端縁が挿入し易いように入り勝手のためのテーパ部22bが形成されている。
このように実装されたコネクタは取付け耳部22の奥行き方向にわたって深い取付け溝に嵌入しているので矢印Aで示すプリント板面と垂直な方向の外力に対する固着力が増加し、相手コネクタの挿抜時に挿抜方向と直角な力が加わっても、この取付け溝嵌入部で力を受けるので、半田接続部に無理な力が加わることがなく接続信頼性を劣化させることがない。」(8頁3行?10頁14行)

第1図として次の図面が記載されている。


上記ウの「・・・後面の両端には、後方へ突出する一対の取付け耳部21が形成され・・・」との記載について第1図を合わせみれば、一対の取付け耳部21は、前後方向と直交するピッチ方向において互いに離間して設けられていることが理解できる。
また、上記ウの「・・・一対の取付け耳部21には搭載されるプリント板3の板厚より若干大きい幅を有する取付け溝22が取付け耳部21の全面積にわたって形成されており・・・取付け溝22内壁の対向面にはプリント板3の装着方向に沿って微小高さの凸条22aが形成されている。」との記載について第1図を合わせみれば、一対の取付け耳部21の夫々は、前後方向及びピッチ方向の双方と直交する上下方向と夫々交差する上部及び下部を有していること、当該上部及び下部には、上下方向の内側に向かって突出する凸条22が設けられていることが理解できる。

以上の記載事項、認定事項及び第1図の図示内容からみて、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
〔引用発明〕
「後面を有するコネクタであって、前後方向に沿って前記後面側から嵌入されたプリント板3と接続するコネクタにおいて、
複数の端子部12と、前記端子部12が後面から突出する絶縁体2とを備えており、
前記絶縁体2は、前記前後方向と直交するピッチ方向において互いに離間して設けられた一対の取付け耳部21とを有しており、
前記一対の取付け耳部21の夫々は、前記前後方向及び前記ピッチ方向の双方と直交する上下方向と夫々交差する上部及び下部を有しており、
前記上部及び前記下部には、前記上下方向の内側に向かって突出し、前記コネクタに前記プリント板3が嵌入されると潰れて前記プリント板3を挟持する凸条22aが設けられている、
コネクタ。」

(2)引用文献2に記載された事項
引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、端縁部を多数のコンタクトを有する基板が安定して保持されるようにしたエッジ形の電気コネクタに関するものである。
・・・
【0011】
【発明の実施の形態】図1?図4は、本発明に係る電気コネクタの一実施例を示したもので、図中、300は本発明の電気コネクタ、310はそのコネクタ本体、400はコネクタ本体310に装着される基板で、その端縁部410には多数の金属箔層や半田層などからなるパターン接点部が配列されてなる。
【0012】上記コネクタ本体310は、通常合成樹脂製などの絶縁材料からなり、その一端側310aを概略コ字形状に形成する共に、このコ字形状の両端の立設部320,320の対向する内側にスロット溝330,330を設け、かつ、このコ字形状の底面側(図1中手前側)には多数の金属ピン(金属小片も可)からなる多数の基板用コンタクト340を配列してある。
・・・
【0014】また、上記スロット溝330内の適宜箇所には、図4に示すように、挿入されてきた基板400を弾性的に押圧する半球形状(山形のスロープ形状なども可)のクッション用突起331,332が設けてある。これらのうち、クッション用突起331は基板400の上下面(図4では下面)を押圧して上下方向への浮き上がりを規制するものであり、クッション用突起332は基板400の縁部端面(図4では右側端面)を押圧してこの幅方向へ動きを規制するものである。
・・・
【0017】このように構成される本発明の電気コネクタ300では、当然コネクタ本体310の両立設部320,320の対向するスロット溝330,330間の幅を、丁度基板400の端縁部410における両縁部側411,411の幅に合わせてあるため、これらのスロット溝330,330間に基板400の端縁部410を差し込み、圧入すれば、自動的に位置決めされて、基板400はコネクタ本体310に簡単に装着される。もちろん、この装着によって、コネクタ本体310の基板用コンタクト340と基板400のパターン接点部420とは、位置ずれすることなく、自動的にかつ安定して電気的に接続される。」

【図1】として次の図面が記載されている。


5.対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
後者の「後面」は、前者の「後端」に相当し、同様に、「プリント板3」は「挿入された基板」に、「コネクタ」は「コネクタ」に相当する。
後者の「端子部12」は、前者の「コンタクト」に相当し、後者の「端子部12が後面から突出する絶縁体2」は、前者の「コンタクトを保持する保持部材」に相当する。
後者の「一対の取付け耳部21」は、前者の「第1ガイド部と第2ガイド部」に相当する。
後者の、一対の取付け耳部21の夫々の「上部及び下部」に「上下方向の内側に向かって突出し」て設けられている「凸条22a」は、前者の、第1ガイド部及び第2ガイド部の「上部及び下部の少なくとも一方に」「上下方向の内側に向かって突出し」て設けられている「突出部」に相当し、後者の「凸条22a」が「コネクタにプリント板3が嵌入されると潰れてプリント板3を挟持する」ことは、前者の「突出部」が「コネクタに基板が挿入された際に変形して基板を保持する」ことに相当する。
そうすると、両者は、
「後端を有するコネクタであって、前後方向に沿って前記後端側から挿入された基板と接続するコネクタにおいて、
複数のコンタクトと、前記コンタクトを保持する保持部材とを備えており、
前記保持部材は、前記前後方向と直交するピッチ方向において互いに離間して設けられた第1ガイド部と第2ガイド部とを有しており、
前記第1ガイド部及び前記第2ガイド部の夫々は、前記前後方向及び前記ピッチ方向の双方と直交する上下方向と夫々交差する上部及び下部を有しており、
前記上部及び前記下部の少なくとも一方には、前記上下方向の内側に向かって突出し、前記コネクタに前記基板が挿入された際に変形して前記基板を保持する突出部が設けられている、
コネクタ。」
である点で一致し、次の点で相違する。
〔相違点〕
本願発明は、「前記第1ガイド部及び前記第2ガイド部の夫々は、前記ピッチ方向と交差する側部を更に有しており、前記側部には、前記ピッチ方向の内側に面している側面が設けられており、前記突出部は、前記側面から離れている」ものであるのに対して、引用発明においては、一対の取付け耳部21がピッチ方向と交差する側部を有しているとはいえない点。

(2)判断
上記相違点について以下検討する。
引用文献2には、端縁部を多数のコンタクトを有する基板が安定して保持されるようにしたエッジ形の電気コネクタに関し、コネクタ本体310の一端側310aを概略コ字形状に形成すると共に、このコ字形状の両端の立設部320、320の対向する内側に基板400を差し込むスロット溝330、330を設けることが記載されているところ(上記4.(2)ア、イを参照)、当該立設部320、320のそれぞれは、ピッチ方向と交差する側部を有し、当該側部には、ピッチ方向の内側に面している側面が設けられているものと認められる(上記4.(2)イを参照)。
また、当該立設部320、320の形状、及び、立設部320、320間に基板を保持する構造は、エッジ形の電気コネクタで一般的に用いられている基板を保持する部材の形状及び構造といえる。
引用発明の一対の耳部21と、引用文献2に記載された電気コネクタの立設部320、320とは、端縁部に多数のパッドないしパターン接続部を備える基板が挿入され保持する機能を有する点で共通するものであることに鑑みれば、引用発明の一対の耳部21の形状に、引用文献2に記載された電気コネクタの立設部320、320の形状(基板の端縁部における幅に対する立設部320、320のスロット溝330、330間の幅を含む)を適用し、一対の耳部21の間で基板を保持するように構成することは、当業者が容易に想到し得たことといえ、その結果、凸条22aを側面から離れて配置することは、凸条22aの機能を考慮して当業者が適宜になし得る設計的事項にすぎないといえる。
よって、引用発明を、相違点に係る本願発明の構成とすることは、引用文献2に記載の事項から当業者が容易に想到し得たといえる。

ここで、審判請求人の平成31年4月19日の意見書における主張について検討する。

審判請求人は、
「本願発明の(第1及び第2)ガイド部と引用発明の取付け耳部21とを比較しますと、本願発明のガイド部が『側部』を有しているのに対して、引用発明の取付け耳部21は、『側部』を有しておりません。この点、拒絶理由通知書においても〔相違点〕と認められています。そして、側部を有していない引用発明の取付け耳部21は、上部と下部とが夫々片持ち梁状となっています。
引用発明において、取付け耳部21の片持ち梁状の上部と下部との間、即ち取付け溝22に、凸条22aの対向間隔gよりも大きい板厚tcを持つプリント板を挿入すると、取付け耳部21の片持ち梁状の上部及び下部の夫々が全体的に弾性変形してしまう可能性があります。即ち、凸条22aの対向間隔gが取付け溝22の挿入口側に向かって広がり、取付け溝21の上部の凸条22aと下部の凸条22aとが平行ではなくなるおそれがあります。このように、取付け耳部21の上部と下部とが全体的に弾性変形してしまうと、基板を挿入しても凸条22aは変形せず、基板の適切な位置決めができなくなります。
以上のことから、本願発明と引用発明とは、その構成及び作用効果の点で全く異なるものです。」(2.(1)の第5段落?第7段落)
と主張している。
しかしながら、引用文献1には、「プリント板3が嵌入されるとこの凸条22aが若干潰れて、プリント板の板厚のバラツキを吸収してコネクタを挟持するようになっている。従ってプリント板にコネクタを装着する際に、図示せぬ位置出し治具等で各端子部12と対応するパッド31とを正しく位置決めすれば、この挟持力によってリフロー半田付け工程で端子部が接続パッドに永久接続されるまでの期間中、両者の位置関係は正確に維持され、取扱中にずれが生じることはない。」(上記4.(1)ウを参照)と記載されている。
当該記載によれば、プリント板の板厚のバラツキは、専ら、凸条22aが潰れることにより吸収され、各端子部12と対応するパッド31との位置関係が維持されると理解するのが自然であり、審判請求人の主張するように「凸条22aの対向間隔gが取付け溝22の挿入口側に向かって広が」るようであれば、引用文献1の上記記載中の「両者の位置関係は正確に維持され」ることが困難となることは明らかである。
以上の点から、審判請求人の「取付け耳部21の片持ち梁状の上部及び下部の夫々が全体的に弾性変形してしまう可能性があります。」との解釈に基づく上記主張を採用することはできない。

審判請求人は、
「ここで、引用文献2の段落【0017】には、『コネクタ本体310の両立設部320,320の対向するスロット溝330,330間の幅を、丁度基板400の端縁部410における両縁部側411,411の幅に合わせてあるため、これらのスロット溝330,330間に基板400の端縁部410を差し込み、圧入すれば、自動的に位置決めされ』との記載があります。この記載から明らかでありますように、引用文献2の『側部』に相当する部分は、基板400に対して位置決めを行い、その位置ずれを防止するものです。つまり、引用文献2の『側部』に相当する部分は、引用文献1の凸条22aとその目的が同じです。このように、引用文献1の凸条22aと引用文献2の『側部』に相当する部分とは、同じ目的を異なる手段によって達成しようとするものです。しかも、引用発明は、コネクタよりも大きな幅を持つプリント板にコネクタを実装しようとするものであり、側部を設けることができないとの前提の下でなされたものと思量いたします。したがって、引用発明に引用文献2の立設部320の構成をわざわざ組み合わせる動機付けがありません。」(2.(1)の第9段落)
と主張している。
しかしながら、たとえ「同じ目的を異なる手段によって達成しようとするもの」にあったとしても、「異なる手段」を組み合わせることを阻害する特段の要因がない限り、「同じ目的」の達成により近づくために「異なる手段」を組み合わせることは、一般的に行っていることといえる。
また、上述のとおり、引用文献2に記載された立設部320、320の形状、及び、立設部320、320間に基板を保持する構造は、エッジ形の電気コネクタで一般的に用いられている形状及び構造といえ、そのような形状の基板を保持する部材の溝部に基板を弾性支持する支持部を設けることは、周知の事項ともいえ(必要であれば、引用文献2の「クッション用突起331」や、特開2007-5142号公報の「固定部材18」における「第1弾性片35」を参照)、引用発明の、プリント板3を保持する一対の耳部21に凸条22aを設けることと、引用文献2に記載された、基板400を保持する立設部320、320に側部を設けることとが、組み合わせられないという特段の理由はないといえる。
むしろ、前説示の、引用発明の一対の耳部21と引用文献2に記載された一対の立設部320、320との機能の共通性に照らせば、引用発明に引用文献2に記載の事項を適用する動機付けは十分にあるというべきである。
よって、審判請求人の上記主張を採用することはできない。

審判請求人は、
「詳しくは、引用文献2のクッション用突起は、段落【0016】の・・・(省略)・・・、弾性変形による復元力によって基板を押圧しているに過ぎないものです。これに対して、本願発明の突出部は、本願明細書の段落【0015】に記載しましたように、基板のサイズ(厚み)に合わせて変形し且つ変形した部分が隙間に移動するものであり、この突出部の部分移動、即ち塑性変形によって(基板の厚みに関する)製造公差を吸収して基板を保持するものです。このように、引用文献2のクッション用突起331,332は、本願発明の突出部とは異なります。
よって、本願発明と引用文献2に記載された発明は、その構成及び作用効果の点で全く異なるものであり、たとえ当業者といえども、引用文献2に基づいて本発明に容易に想到することは不可能です。」(2.(2)第2段落?第3段落)
と主張している。
しかしながら、本項(2)にて説示のとおり、引用発明に適用する引用文献2記載の事項としては、立設部320、320の形状を引用するものであり、クッション用突起331まで引用するものではない。
よって、審判請求人の上記主張を採用することはできない。

そして、本願発明の奏する作用及び効果を検討しても、引用発明及び引用文献2に記載された事項から予測できる程度のものであって格別のものではない。
よって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-06-28 
結審通知日 2019-07-03 
審決日 2019-07-17 
出願番号 特願2014-13011(P2014-13011)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 板澤 敏明  
特許庁審判長 大町 真義
特許庁審判官 藤田 和英
平田 信勝
発明の名称 コネクタ  
代理人 山崎 拓哉  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ