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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A24D
管理番号 1354796
審判番号 不服2018-13976  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-22 
確定日 2019-09-24 
事件の表示 特願2015-545790「透明なラッパーを備えた喫煙物品」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月12日国際公開、WO2014/086802、平成27年12月21日国内公表、特表2015-536154、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年12月3日(優先権主張外国庁受理2012年12月4日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、その後の手続きは以下のとおりである。
・平成29年8月1日付け拒絶理由通知
・平成30年1月9日に意見書及び手続補正書の提出
・平成30年6月14日付け拒絶査定(以下、「原査定」という。)
・平成30年10月22日に拒絶査定不服審判の請求、その請求と同時に手続補正書の提出
・平成30年12月4日に手続補正書(審判請求書の請求の理由について補正)の提出

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

本願の請求項1ないし10に係る発明は、その出願前(優先日前)に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である下記の引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献一覧>
引用文献1:特表2012-529276号公報
引用文献2:特開平7-40433号公報
引用文献3:特開2008-87182号公報

第3 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明8」という。)は、平成30年10月22日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
喫煙物品を製造する方法であって、前記方法が、
一つ以上のセグメントおよび前記一つ以上のセグメントの少なくとも一部分を囲む実質的に透明なラッパーを備えたマウスピースを提供する工程と、
前記マウスピースと軸方向に整列したエアロゾル発生基質を提供する工程と、
紙材料に窓を含む紙材のシートを提供する工程であって、前記喫煙物品の製造時点での前記実質的に透明なラッパーの収縮と前記紙材料の収縮の比が、摂氏42度での相対湿度15パーセントで3時間という条件下において、約3.5未満である工程と、
内在するマウスピースセグメントが前記窓および前記実質的に透明なラッパーを通して見えるように、紙材の前記シートを前記透明なラッパーの少なくとも一部分の周りに巻く工程とを含み、
前記実質的に透明なラッパーが、二酢酸セルロースを含む高分子フィルムから形成され、
マウスピースを提供する前記工程が、収縮が0.85パーセント未満の透明なラッパーを備えたマウスピースを提供する工程を含む、
前記方法。
【請求項2】
紙材の前記シートを前記透明なラッパーの少なくとも一部分の周りに巻く前記工程が、紙材の前記シートを前記エアロゾル発生基質の一部分の周りに巻いて前記マウスピースを前記エアロゾル発生基質に固定する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記収縮比が3未満である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記高分子フィルムが二軸延伸ポリプロピレンを含む、請求項1?3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
喫煙物品であって、
一つ以上のセグメントおよび前記一つ以上のセグメントの少なくとも一部分を囲む実質的に透明なラッパーを備えたマウスピースと、
前記マウスピースと軸方向に整列したエアロゾル発生基質と、
前記マウスピースの少なくとも一部分および前記エアロゾル発生基質の一部分を囲んで前記マウスピースを前記エアロゾル発生基質に固定する、紙ラッパーと、
前記紙ラッパーにある窓であって、内在するマウスピースセグメントが前記窓および前記実質的に透明なラッパーを通して見えるようにする窓とを含み、
前記喫煙物品の製造時点での前記実質的に透明なラッパーの収縮と前記紙ラッパーの収縮との比が、摂氏42度での相対湿度15パーセントで3時間という条件下において、3.5未満であり、
前記実質的に透明なラッパーが、二酢酸セルロースを含む高分子フィルムから形成され、
前記喫煙物品の製造時点での前記実質的に透明なラッパーの前記収縮が0.85パーセント未満である、
前記喫煙物品。
【請求項6】
前記収縮比が3未満である、請求項5に記載の喫煙物品。
【請求項7】
前記実質的に透明なラッパーが、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを含む、請求項5?6のいずれか1項に記載の喫煙物品。
【請求項8】
喫煙物品における実質的に透明なラッパーおよび紙ラッパーの使用であって、前記紙ラッパーに窓が提供され、内在するマウスピースセグメントが前記窓および前記実質的に透明なラッパーを通して見ることができるようになされ、前記喫煙物品の製造時点での前記実質的に透明なラッパーの収縮と前記紙ラッパーの収縮との比が、摂氏42度での相対湿度15パーセントで3時間という条件下において、3.5未満であり、前記実質的に透明なラッパーが、二酢酸セルロースを含む高分子フィルムから形成され、前記喫煙物品の製造時点での前記実質的に透明なラッパーの前記収縮が0.85パーセント未満である、前記使用。」

第4 引用文献、引用発明
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、「喫煙品」に関し、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。
「【請求項1】
喫煙可能な材料のロッドと、そのロッドの一端に取り付けられたフィルターとを含み、前記フィルターは、透明なプラグラッパーで包まれたフィルター材料からなる細長い本体を含み、第1のチッピングラッパーがロッドにフィルターを取り付けるためにロッドとフィルターの間の接合部を覆い、さらに少なくとも1つの追加のチッピングラッパーがフィルターの周囲に第1チッピングラッパーとは間隔を空けて供され、これによって、透明なプラグラッパーの一部が第1チッピングラッパーと少なくとも1つの追加チッピングラッパーとの間で露出し、フィルター材料を見ることができる窓部を形成する、喫煙品。
・・・
【請求項10】
透明なプラグラッパーで包まれた細長い本体のフィルター材料で形成されたフィルターを供する工程と、喫煙可能な材料のロッドをフィルターの一端にフィルター及びロッドの周囲を第1のチッピングラッパーで包むことによって取り付け、これによって、第1チッピングラッパーがフィルターとロッドの間の接合部を覆う工程と、少なくとも1つの追加のチッピングラッパーでフィルターの周囲を第1チッピングラッパーとは間隔を空けて包み、これによって、透明なプラグラッパーの一部が第1チッピングラッパーと少なくとも1つの追加チッピングラッパーとの間で露出し、フィルター材料を見ることができる窓部を形成する工程と、を含む喫煙品の製造方法。」

「【0001】
本発明は、フィルターを有する喫煙品に関し、特に、その中に窓部分を備えたフィルターを有する喫煙品、及びその喫煙品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紙巻きタバコなどの喫煙品は、ペーパーラッパーに包まれたタバコまたはタバコベースの喫煙可能な材料からなる円筒形状のタバコロッドを含み、場合によってはフィルターユニットが設けられている。それの基本的な形態において、フィルターユニットは、アセテートトウなどのろ過材料から形成された円筒形状の要素であり、任意で、例えば凹部及び隙間並びに粒状炭素などの添加材などの煙流及びろ過機能を変性する特徴を含む。トウは、円筒形状および構造のろ過材を維持する役割を果たすプラグラッパーの層で包んでもよい。フィルターユニットは、チッピング紙を用いてタバコロッドに接合され、該チッピング紙は、フィルターユニットの周囲を包み、フィルターユニットとタバコロッドの間の接続部を覆っている外方の紙の層である。チッピング紙は、所定の位置に接着される。
【0003】
フィルターを含む種々の形態の喫煙品が知られており、例えば、下記特許文献1には、透明なプラグラッパーで包まれた1対の別個のフィルター材料のプラグと、タバコロッドをフィルターに取り付けているチッピング紙とを含むフィルターを有する喫煙品が開示されている。このチッピングラッパー(tipping wrapper)は、透明な材料の1つのセクションの片側に配置された不透明な紙からなるいくつかのセクションから形成され、これらは互いに接着されてチッピングラッパーを形成している。したがって、この公知の喫煙品のフィルターは、フィルターセグメント間のスペースが見えるように透明な材料によって形成された窓部を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術のフィルターには、別個の材料のセクションを互いに接着して形成されるチッピング紙が複雑な構造であること、その製造方法がより複雑で時間が掛かること、したがって費用が掛かること、といった不都合がある。
【0005】
さらに下記特許文献2に開示の喫煙品が知られており、その喫煙品は、その一端にフィルターが取り付けられたタバコロッドを含む。フィルターは、透明なプラグラッパーで包まれた複数のフィルター材料のプラグを含む。フィルターは、チッピングラッパーと共にタバコロッドに取り付けられ、そのチッピングラッパーはフィルター材料が外から見えるようにするために形成された1つ以上の窓部を含んでもよい。しかしながら、この従来技術の喫煙品は、チッピングラッパーに窓部のための孔を予め形成しなければならないこと、あるいは、チッピングラッパーを喫煙品に供する前にチッピングラッパーに別個の孔を形成するための追加の製造工程が必要とされること、といった不都合がある。いずれにしても、チッピングラッパーの構造は複雑であり及び/または製造工程が複雑であり、したがって、製造費用は増加する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、実質的に上述の問題を軽減または克服するフィルターを有する喫煙品を提供することを目的とする。」

「【0022】
図1及び2を参照すると、本発明の第1の実施態様による喫煙品10が、示されており、これはタバコロッド12とフィルター14を含む。タバコロッド12は、紙のスリーブ内に収容された円筒形状の喫煙可能なタバコまたはタバコベースの材料を含む。
【0023】
フィルター14は、例えばセルロースアセテートトウなどのフィルター材料からなる円筒形状のプラグ16を含み、ばらばらの状態のフィルター材料を円筒形状のフィルターの形に保持する役割を果たすプラグラッパー18で包まれている。プラグラッパー18は、透明な材料で製せられており、これによって、フィルター材料16がプラグラッパー18を介して見ることができる。本明細書中で使用する「透明」という用語は、完全にまたは部分的に透けて見えるあらゆる材料を意味する。このことは例えば、着色されているかを問わず、透明な材料、薄い色が付けられた材料、または他の「半透明」な材料を、「透明」であると見なすことを意味する。
【0024】
フィルター14は、タバコロッド12とフィルター14の周囲に巻き付けられ、それらの間の接合部を覆う第1のチッピングラッパー20aによってタバコロッド12に取り付けられる。チッピングラッパーは、フィルター14とタバコロッド12にそれを接着させるための接着剤を含む。
【0025】
第2の別個のチッピングラッパー20bが、フィルター14のタバコロッド12側の端部より遠位のフィルター14の吸い口側端部の周囲に巻き付けられ、第1チッピングラッパー20aから間隙Gを残して第1チッピングラッパー20aから間隔をおいて位置する。透明なプラグラッパー18は、間隙Gの間で露出し、喫煙品10のフィルターセクションにおいて窓部22が形成される。したがって、フィルター材料16が窓部22を介して見ることができる。さらに、上述のフィルターセクションにおける窓部22を有する喫煙品10は、穿孔を有する、または予め接着された別個のセクションを有する複雑な形態のチッピングラッパーを用いることなく、または複雑なチッピングラッパーの製造工程を経ることなく、簡単で廉価に製せられる。」

「【0053】
上述の実施態様において、チッピングラッパーは紙の帯からなり、これによって、喫煙者の触感は標準的な紙の吸い口の喫煙品の感覚に対応する。特に、紙で製せられたフィルターの吸い口側端部においてチッピングラッパーはそれゆえ有利である。
【0054】
プラグラッパーは、上述の実施態様において透明な材料で製せられるものとして説明している。そのような材料は、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、酢酸セルロースフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンオキシド(PEOX)、ポリエチレン、セロファン、Natureflex(登録商標)、またはポリ乳酸の1つを含むが、これに限定されない。プラグラッパーが全体的に透明で透き通っていることに加え、色付き透明(「半透明」)であってもよく、または、プラグラッパー上に模様、マーキング、ロゴまたは他の図形または表示を印刷してもよい。」

(2)上記(1)及び図面の記載から分かること
ア 上記(1)の請求項1及び10、段落【0001】、【0022】ないし【0025】及び【0053】並びに図1ないし図8cの記載によれば、引用文献1には、喫煙品及び喫煙品の製造方法が記載されていることが分かる。
また、喫煙品において、透明なプラグラッパー並びに紙の帯からなる第1のチッピングラッパー及び第2のチッピングラッパーが使用されていることも分かる。

イ 上記(1)の請求項1及び10並びに段落【0023】の記載によれば、喫煙品は、透明なプラグラッパーで包まれたフィルター材料からなる円筒形状のプラグを含むフィルターを含むことが分かる。

ウ 上記(1)の請求項1及び10並びに段落【0022】及び【0024】の記載によれば、喫煙品は、フィルターが一端に取り付けられた喫煙可能な材料のタバコロッドを含むことが分かる。

エ 上記(1)の請求項1及び10並びに段落【0024】及び【0053】の記載によれば、第1のチッピングラッパーが、タバコロッドとフィルターの周囲に巻き付けられ、それらの間の接合部を覆うことでフィルターをタバコロッドに取り付ける、紙の帯からなるものであることが分かる。

オ 上記(1)の請求項1及び10並びに段落【0025】及び【0053】の記載によれば、第2のチッピングラッパーが、フィルターのタバコロッド側の端部より遠位のフィルターの吸い口側端部の周囲に巻き付けられ、第1のチッピングラッパーから間隔をおいて位置する紙の帯からなるものであることが分かる。

カ 上記(1)の請求項1及び10並びに段落【0025】の記載によれば、透明なプラグラッパーの一部が第1のチッピングラッパーと第2のチッピングラッパーとの間で露出し、フィルター材料を見ることができる窓部が形成されていることが分かる。

キ 上記(1)の段落【0054】の記載によれば、透明なプラグラッパーが、酢酸セルロースフィルムを含む透明な材料から形成されることが分かる。

(3)引用発明
ア 引用発明A
上記(1)及び(2)を総合すると、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されていると認められる。
「喫煙品であって、
透明なプラグラッパーで包まれたフィルター材料からなる円筒形状のプラグを含むフィルターと、
前記フィルターが一端に取り付けられた喫煙可能な材料のタバコロッドと、
前記タバコロッドと前記フィルターの周囲に巻き付けられ、それらの間の接合部を覆うことで前記フィルターを前記タバコロッドに取り付ける、紙の帯からなる第1のチッピングラッパーと、
前記フィルターの前記タバコロッド側の端部より遠位の前記フィルターの吸い口側端部の周囲に巻き付けられ、前記第1のチッピングラッパーから間隔をおいて位置する紙の帯からなる第2のチッピングラッパーと、
前記透明なプラグラッパーの一部が前記第1のチッピングラッパーと前記第2のチッピングラッパーとの間で露出し、前記フィルター材料を見ることができる窓部とを含み、
前記透明なプラグラッパーが、酢酸セルロースフィルムを含む透明な材料から形成される、
前記喫煙品。」

イ 引用発明B
上記(1)及び(2)を総合すると、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明B」という。)が記載されていると認められる。
「喫煙品の製造方法であって、前記方法が、
透明なプラグラッパーで包まれたフィルター材料からなる円筒形状のプラグを含むフィルターを提供する工程と、
前記フィルターが一端に取り付けられた喫煙可能な材料のタバコロッドを提供する工程と、
紙の帯からなる第1のチッピングラッパーと、前記第1のチッピングラッパーから間隔をおいて位置する紙の帯からなる第2のチッピングラッパーとを提供する工程と、
前記第1のチッピングラッパーが、前記タバコロッドと前記フィルターの周囲に巻き付けられ、それらの間の接合部を覆うことで前記フィルターを前記タバコロッドに取り付け、前記第2のチッピングラッパーが、前記フィルターの前記タバコロッド側の端部より遠位の前記フィルターの吸い口側端部の周囲に巻き付けられ、前記透明なプラグラッパーの一部が前記第1のチッピングラッパーと前記第2のチッピングラッパーとの間で露出し、前記フィルター材料を見ることができる窓部を形成する工程とを含み、
前記実質的に透明なラッパーが、酢酸セルロースフィルムを含む透明な材料から形成される、
前記方法。」

ウ 引用発明C
上記(1)及び(2)を総合すると、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明C」という。)が記載されていると認められる。
「喫煙品における透明なプラグラッパー並びに紙の帯からなる第1のチッピングラッパー及び第2のチッピングラッパーの使用であって、前記透明なプラグラッパーの一部が前記第1のチッピングラッパーと前記第2のチッピングラッパーとの間で露出し、フィルター材料を見ることができる窓部が形成され、前記透明なプラグラッパーが、酢酸セルロースフィルムを含む透明な材料から形成される、前記使用。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、「二酢酸セルロース樹脂フィルムの製造方法」に関し、図面と共に次の記載がある。
「【0002】
【従来の技術】二酢酸セルロース樹脂フィルムは、透明性、光沢、染色性、触感に優れている等の特徴を有しているため、ブリスターパッケージ、食品包装、ラミネート品としての包装材料や、電気絶縁材料、本のカバー、真空蒸着した装飾品、安全眼鏡、保護具などに使用されている。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、「透明ガスバリア性フィルムおよびその製造方法」に関し、図面と共に次の記載がある。
「【0001】
本発明は、酸素および水蒸気を遮断する透明ガスバリア性フィルムに関する。特に食品、日用品、医薬品等の包装分野に用いられる透明ガスバリア性フィルム、あるいは非包装分野での酸素および水蒸気を遮断が必要な部材分野に用いられる透明ガスバリア性フィルムに関する。」

「【0014】
透明高分子フィルム基材2として用いる高分子透明プラスチック基材は、特に限定されるものではなく公知のものを使用することができる。例えばポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル系(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド系(ナイロン-6、ナイロン-66等)、ポリスチレン、エチレンビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネイト、ポリエーテルスルホン、アクリル、セルロース系(トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース等)などが挙げられるが特に限定されない。」

第5 対比・判断
1 本願発明5について
(1)対比
本願発明5と引用発明Aとを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・後者の「喫煙品」は、前者の「喫煙物品」に相当し、以下同様に、「透明なプラグラッパー」は「実質的に透明なラッパー」に、「フィルター材料からなる円筒形状のプラグ」は「セグメント」に、「フィルター」は「マウスピース」に、「喫煙可能な材料のタバコロッド」は「エアロゾル発生基質」に、「紙の帯からなる第1のチッピングラッパー」及び「紙の帯からなる第2のチッピングラッパー」は「紙ラッパー」に、「窓部」は「窓」に、それぞれ相当する。

・後者の「透明なプラグラッパーで包まれたフィルター材料からなる円筒形状のプラグを含むフィルター」は、前者の「一つ以上のセグメントおよび前記一つ以上のセグメントの少なくとも一部分を囲む実質的に透明なラッパーを備えたマウスピース」に相当する。

・タバコロッドの一端は、タバコロッドの軸方向における端であり、引用文献1の図1に記載されているように、フィルターはタバコロッドの軸方向に延在して配置されるものであるから、後者の「前記フィルターが一端に取り付けられた喫煙可能な材料のタバコロッド」は、前者の「前記マウスピースと軸方向に整列したエアロゾル発生基質」に相当する。

・後者の「前記タバコロッドと前記フィルターの周囲に巻き付けられ、それらの間の接合部を覆うことで前記フィルターを前記タバコロッドに取り付ける、紙の帯からなる第1のチッピングラッパー」及び「前記フィルターの前記タバコロッド側の端部より遠位の前記フィルターの吸い口側端部の周囲に巻き付けられ、前記第1のチッピングラッパーから間隔をおいて位置する紙の帯からなる第2のチッピングラッパー」は、第1のチッピングラッパーによってフィルターの少なくとも一部分及びタバコロッドの一部分を囲んでフィルターをタバコロッドに固定するものといえるから、前者の「前記マウスピースの少なくとも一部分および前記エアロゾル発生基質の一部分を囲んで前記マウスピースを前記エアロゾル発生基質に固定する、紙ラッパー」に相当する。

・後者の「前記透明なプラグラッパーの一部が前記第1のチッピングラッパーと前記第2のチッピングラッパーとの間で露出し、前記フィルター材料を見ることができる窓部」は、紙の帯からなる第1のチッピングラッパーと紙の帯からなる第2のチッピングラッパーにより形成された窓部であって、紙ラッパーにある窓といえ、フィルターのセグメントである円筒形状のプラグのフィルター材料を見えるようにするものであるから、前者の「前記紙ラッパーにある窓であって、内在するマウスピースセグメントが前記窓および前記実質的に透明なラッパーを通して見えるようにする窓」に相当する。

・後者の「前記透明なプラグラッパーが、酢酸セルロースフィルムを含む透明な材料から形成される」態様は、前者の「前記実質的に透明なラッパーが、二酢酸セルロースを含む高分子フィルムから形成され」るに、「実質的に透明なラッパーが、高分子フィルムから形成され」るという限りにおいて一致する。

したがって、両者は、
「喫煙物品であって、
一つ以上のセグメントおよび前記一つ以上のセグメントの少なくとも一部分を囲む実質的に透明なラッパーを備えたマウスピースと、
前記マウスピースと軸方向に整列したエアロゾル発生基質と、
前記マウスピースの少なくとも一部分および前記エアロゾル発生基質の一部分を囲んで前記マウスピースを前記エアロゾル発生基質に固定する、紙ラッパーと、
前記紙ラッパーにある窓であって、内在するマウスピースセグメントが前記窓および前記実質的に透明なラッパーを通して見えるようにする窓とを含み、
前記実質的に透明なラッパーが、高分子フィルムから形成される、
前記喫煙物品。」の点で一致し、次の点で相違している。

[相違点A-1]
本願発明5においては、「前記喫煙物品の製造時点での前記実質的に透明なラッパーの収縮と前記紙ラッパーの収縮との比が、摂氏42度での相対湿度15パーセントで3時間という条件下において、3.5未満」であるのに対して、引用発明Aにおいては、喫煙品の製造時点での透明なプラグラッパーの収縮と第1のチッビングラッパー及び第2のチッピングラッパーの収縮との比について特定されていない点(以下、「相違点A-1」という。)。

[相違点A-2]
本願発明5においては、「前記喫煙物品の製造時点での前記実質的に透明なラッパーの前記収縮が0.85パーセント未満である」のに対して、引用発明Aにおいては、喫煙品の製造時点での透明なプラグラッパーの収縮について特定されていない点(以下、「相違点A-2」という。)。

[相違点A-3]
本願発明5においては、「実質的に透明なラッパーが、二酢酸セルロースを含む高分子フィルムから形成され」るのに対して、引用発明Aにおいては、「透明なプラグラッパーが、酢酸セルロースフィルムを含む透明な材料から形成される」点(以下、「相違点A-3」という。)。

(2)相違点についての判断
まず、上記相違点A-1について検討する。
上記相違点A-1に係る本願発明5の発明特定事項は、本願明細書の段落【0006】に記載された、「喫煙物品の製造後の紙ラッパーのしわが低減または防止されるように、実質的に透明なラッパーと紙ラッパーを持つ喫煙物品を提供する」という課題を解決することを図るものである。
一方、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2及び3には、上記第4の2及び3の記載によれば、二酢酸セルロースフィルムが包装分野だけでなく、各種の分野に用いられることが示されているにとどまり、実質的に透明なラッパーと紙ラッパーを持つ喫煙物品について、製造後の紙ラッパーのしわが低減または防止されるように、喫煙物品の製造時点での実質的に透明なラッパーの収縮と紙ラッパーの収縮との比が、所定の条件下において、所定値未満となるようにする技術は何ら記載されておらず、示唆もされていない。
そうすると、引用発明Aにおいて、引用文献2及び3に記載された事項を考慮したとしても、上記相違点A-1に係る本願発明5の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たということはできない。

(3)まとめ
そして、本願発明5は、上記相違点A-1に係る発明特定事項を備えることにより、上記課題を解決するとともに、本願明細書の段落【0018】に記載された、「従って本発明による喫煙物品は、実質的に透明なラッパーを、その上にある従来的な紙材料で形成されたラッパーとともに使用することを有利に許容しながらも、例えば、物品の保管中に高温かつ低湿度に晒された場合など、喫煙物品が年数を経たときでも紙材料にしわが発生しないことが確保される。」という所期の効果を奏するものである。
したがって、本願発明5は、他の相違点A-2及びA-3について判断するまでもなく、引用発明A並びに引用文献2及び3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明6及び7について
本願の特許請求の範囲における請求項6及び7は、請求項5の記載を他の記載に置き換えることなく、直接又は間接的に引用して記載したものであるから、本願発明6及び7は、本願発明5の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本願発明6及び7は、本願発明5と同様の理由で、引用発明A並びに引用文献2及び3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明Bとを、上記1(1)の対比を踏まえて対比すると、両者は少なくとも次の点で相違する。
[相違点B]
本願発明1においては、「紙材料に窓を含む紙材のシートを提供する工程であって、前記喫煙物品の製造時点での前記実質的に透明なラッパーの収縮と前記紙材料の収縮の比が、摂氏42度での相対湿度15パーセントで3時間という条件下において、約3.5未満である工程」を含むのに対して、引用発明Bにおいては、「紙の帯からなる第1のチッピングラッパーと、前記第1のチッピングラッパーから間隔をおいて位置する紙の帯からなる第2のチッピングラッパーとを提供する工程」を含むものの、喫煙品の製造時点での透明なプラグラッパーの収縮と第1のチッビングラッパー及び第2のチッピングラッパーの収縮との比について特定されていない点(以下、「相違点B」という。)。

(2)相違点についての判断
上記1(2)の判断を踏まえると、引用発明Bにおいて、引用文献2及び3に記載された事項を考慮したとしても、上記相違点Bに係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たということはできない。

(3)まとめ
そして、本願発明1は、上記相違点Bに係る発明特定事項を備えることにより、上記1で挙げた本願明細書の段落【0006】に記載された課題を解決するとともに、本願明細書の段落【0018】に記載された所期の効果を奏するものである。
したがって、本願発明1は、引用発明B並びに引用文献2及び3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

4 本願発明2ないし4について
本願の特許請求の範囲における請求項2ないし4は、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく、直接又は間接的に引用して記載したものであるから、本願発明2ないし4は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本願発明2ないし4は、本願発明1と同様の理由で、引用発明B並びに引用文献2及び3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

5 本願発明8について
(1)対比
本願発明8と引用発明Cとを、上記1(1)の対比を踏まえて対比すると、両者は少なくとも次の点で相違する。
[相違点C]
本願発明8においては、「前記喫煙物品の製造時点での前記実質的に透明なラッパーの収縮と前記紙ラッパーの収縮との比が、摂氏42度での相対湿度15パーセントで3時間という条件下において、3.5未満」であるのに対して、引用発明Cにおいては、喫煙品の製造時点での透明なプラグラッパーの収縮と第1のチッビングラッパー及び第2のチッピングラッパーの収縮との比について特定されていない点(以下、「相違点C」という。)。

(2)相違点についての判断
上記1(2)の判断を踏まえると、引用発明Cにおいて、引用文献2及び3に記載された事項を考慮したとしても、上記相違点Cに係る本願発明8の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たということはできない。

(3)まとめ
そして、本願発明8は、上記相違点Cに係る発明特定事項を備えることにより、上記1で挙げた本願明細書の段落【0006】に記載された課題を解決するとともに、本願明細書の段落【0018】に記載された所期の効果を奏するものである。
したがって、本願発明8は、引用発明C並びに引用文献2及び3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-09-10 
出願番号 特願2015-545790(P2015-545790)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A24D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 豊島 ひろみ  
特許庁審判長 松下 聡
特許庁審判官 平城 俊雅
槙原 進
発明の名称 透明なラッパーを備えた喫煙物品  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 那須 威夫  
代理人 近藤 直樹  
代理人 上杉 浩  
代理人 大塚 文昭  
代理人 弟子丸 健  
代理人 西島 孝喜  
代理人 須田 洋之  
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