• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1354814
審判番号 不服2018-12246  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-12 
確定日 2019-08-29 
事件の表示 特願2015- 34019「テンプレート形成方法、テンプレート、テンプレート基材、および半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月 1日出願公開、特開2016-157785〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
平成27年 2月24日 特許出願
平成29年12月21日 拒絶理由通知(同年12月26日発送)
平成30年 2月 6日 意見書・手続補正書
平成30年 6月 1日 拒絶査定(同年6月12日発送)
平成30年 9月12日 本件審判請求・手続補正書

第2 平成30年9月12日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成30年9月12日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の概略
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項7に、
「基板の第1面に設けられた台座領域と、
前記台座領域の側面に形成された撥液性部と、
を備え、
前記台座領域は、テンプレートパターンが形成された領域であり、
前記撥液性部は、凹凸形状の表面を有する、
ことを特徴とするテンプレート。」
とあるものを、
「基板の第1面に設けられた台座領域と、
前記台座領域の側面に形成された撥液性部と、
を備え、
前記台座領域は、テンプレートパターンが形成された領域であり、
前記撥液性部は、凹部と凸部とが不均一に並べられた凹凸形状の表面を有する、
ことを特徴とするテンプレート。」(当審注:下線は、請求人が補正箇所に付した下線である。)
と補正する補正事項を含むものである。
上記補正事項は、撥液性部の表面が有する「凹凸形状」について、「凹部と凸部とが不均一に並べられた凹凸形状」に減縮する補正であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項7に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて検討する。

2 引用発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2010-251601号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
ア 「【請求項2】
光インプリント法に用いるテンプレートであって、
基板と、
前記基板上の領域であって、インプリント用パターンを有する、パターン形成領域と、
前記パターン形成の外側に配置され、前記パターン形成領域より下方の第1の段部と、
前記パターン形成領域と前記第1の段部を繋ぐ、第1の側面部と、
前記第1の段部の外側に配置され、前記第1の段部より下方の第2の段部と、
前記第1の段部と前記第2の段部を繋ぎ、前記第1の側面部よりも大きな表面ラフネスを有する、第2の側面部と、
を備えることを特徴とするテンプレート。
【請求項3】
請求項2に記載のテンプレートであって、
前記第1の側面部に、前記基板よりも撥水性又は撥油性の高い材料からなる被膜を備えていることを特徴とするテンプレート。」(注:下線は当審が付加した。以下、同様である。)

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント用テンプレート及びその製造方法、並びに前記テンプレートを用いたパターン形成方法に関する。」

イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、被加工基板の隙間領域を、インプリントレジストで覆うことが可能なテンプレート及びその製造方法、並びにパターン形成方法を提供する。」

ウ 「【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被加工基板の隙間領域を、インプリントレジストで覆うことができる。」

エ 「【0042】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係るテンプレートの製造方法を、図1A?図1Fを用いて説明する。図1A?図1Fは本実施形態に係るテンプレートの製造工程を示す断面図である。
【0043】
(1)まず、図1Aからわかるように、露光光に対して透明な基板10の表面における所定の領域(パターン形成領域14)にインプリント用パターンを形成する。このインプリント用パターンは、例えばインプリント法もしくは電子ビーム(EB:Electron Beam)露光、及び反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)を用いて形成される。なお、このインプリント用パターンの溝の深さは、例えば60nm?70nmである。基板10は例えば石英からなる。
【0044】
(2)次に、図1Bからわかるように、パターン形成領域14にレジスト膜11を形成する。このレジスト膜11のラインエッジラフネスは、後述の隙間領域19の幅以下である。なお、このレジスト膜11の形成には、フォトリソグラフィのほか、電子ビーム露光又はEUV露光を用いてもよい。
【0045】
(3)次に、図1Cからわかるように、レジスト膜11をマスクにして異方性エッチング(例えばRIE)を行うことにより、基板10を所定の深さまで除去する。このエッチングにより、図1Cに示すように、第1の側面部13a及び第1の段部13bが形成される。この第1の側面部13aは、第1の段部13bとパターン形成領域14を繋ぐものであり、パターン形成領域14の面に対してほぼ垂直である。
【0046】
なお、このエッチングの深さは、プレス工程時にパターン形成領域14からはみ出したインプリントレジストが第1の段部13bに付着しないように決められる。例えば5μmであり、1μm以上であることが好ましい。
【0047】
(4)次に、図1Dからわかるように、レジスト膜11を除去した後、例えばフォトリソグラフィを用いて、パターン形成領域14及びパターン形成領域14を囲う外周部14b(第1の段部13bの一部)にレジスト膜12を形成する。なお、このレジスト膜12により覆われる外周部14bの面積は後述のウェットエッチングの条件に依存する。
【0048】
(5)次に、図1Eからわかるように、レジスト膜12をマスクにしてウェットエッチングを行うことにより、基板10を所定の深さまで除去する。このエッチングにより、図1Eに示すように、第2の側面部13c及び第2の段部13dが形成される。この第2の側面部13cは第2の段部13dと第1の段部13bを繋ぐものである。この第2の側面部13cはウェットエッチングにより形成されたため、第1の側面部13aに比べて表面ラフネスが大きい。また、図1Eに示すように、この第2の側面部13cは基板10がサイドエッチングされて形成されたために湾曲している。
【0049】
なお、エッチングの深さは、プレス工程の際にテンプレートと被加工基板(ウェーハ)が干渉しないように決められる。前述の異方性エッチング工程によるエッチングの深さと、本ウェットエッチング工程によるエッチングの深さとの和が、例えば15μm?30μmになるまでエッチングを行う。つまり、前述の異方性エッチング工程で基板10を5μmエッチングした場合、本工程では10μm?25μmだけエッチングする。
【0050】
(6)次に、レジスト膜12を除去する。
【0051】
上記の工程により、図1Fに示す本実施形態に係るテンプレート13が得られる。」

オ 「【0078】
次に、本実施形態に係るテンプレートの変形例として、テンプレート13(13’)に防汚処理を施したテンプレート23について図5を用いて説明する。図5はテンプレート23の断面図である。
【0079】
図5からわかるように、このテンプレート23はテンプレート13(13’)の第1の側面部13aに防汚処理を施したものである。具体的には、撥水性又は撥油性を有する材料からなる被膜16を、第1の側面部13aに形成する。この被膜16は、基板10の材料よりも高い撥水性又は撥油性を有する材料である。例えば、石英からなる基板10に対してはフロロカーボンなどのフッ素系の材料が用いられる。
【0080】
この防汚処理は、本実施形態で説明したテンプレートの製造方法において、例えば、テンプレート13(13’)が完成した後、又は異方性エッチングを行った後に行われる。
【0081】
なお、この防汚処理は第1の側面部13aの全面にわたって施すことは必須ではなく、プレス工程時にはみ出したインプリントレジストが付着する領域に施されていればよい。
【0082】
上記のテンプレート23を用いてインプリント法を行えば、パターン形成領域14の第1の側面部13aに防汚処理が施されているので、はみ出したインプリントレジストがこの第1の側面部13aに残存することがない。このため、インプリント(ショット)を繰り返しても、インプリントレジストのはみ出し量を高精度に制御することが可能である。
その結果、隙間領域を再現性良くインプリントレジストで覆うことが可能となる。」

カ 図1F、図5は、以下のとおりである。

キ テンプレート13に防汚処理を施したテンプレート23に着目すると、引用例1には以下の発明が記載されている。
「光インプリント法に用いるテンプレート23であって、
基板10と、
前記基板10上の領域であって、インプリント用パターンを有する、パターン形成領域14と、
前記パターン形成の外側に配置され、前記パターン形成領域14より下方の第1の段部13bと、
前記パターン形成領域と前記第1の段部を繋ぐ、第1の側面部13aと、
前記第1の段部13bの外側に配置され、前記第1の段部より下方の第2の段部13dと、
前記第1の段部13bと前記第2の段部13dを繋ぎ、前記第1の側面部13aよりも大きな表面ラフネスを有し、
前記第1の側面部13aに、前記基板10よりも撥水性又は撥油性の高い材料からなる被膜16を備え、
はみ出したインプリントレジストがこの第1の側面部13aに残存することがない、
テンプレート23。」(以下「引用発明」という。)

3 対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
ア 本願補正発明の「基板の第1面に設けられた台座領域」と、引用発明の「前記基板10上の領域であって、インプリント用パターンを有する、パターン形成領域14」であって、その「外側に配置され、前記パターン形成領域14より下方の第1の段部13bと」「第1の側面部13a」により繋がれる「パターン形成領域14」を対比する。
(ア)はじめに、本願補正発明の「台座領域」の技術的意味について、発明の詳細な説明の記載を参酌して検討する。本願の発明の詳細な説明には以下の記載がある。
「【0010】
第1の実施形態に係るテンプレート10A,10Bは、おもて面側(図1では底面側)の中央領域に台座部(メサ)を有している。台座部は、テンプレート10A,10Bのおもて面側の外周領域よりも所定の厚さだけ高くなっている。テンプレート10A,10Bでは、台座部の上面側にテンプレートパターン(凹凸パターン)が形成されている。」
上記記載によれば、「台座領域」は、「テンプレート10A,10Bのおもて面側の中央領域」に位置し、テンプレートパターン(凹凸パターン)が形成されており、おもて面側の外周領域よりも所定の厚さだけ高い領域を意味するものと解される。
(イ)引用発明の「パターン形成領域14」が、「前記基板10上の領域であって、インプリント用パターンを有する」することは、本願補正発明の「基板の第1面に設けられ」、「テンプレートパターン(凹凸パターン)」が形成されていることに相当する。また、引用発明の「パターン形成領域14」は、その「外側に配置され、前記パターン形成領域より下方の第1の段部13bと」「第1の側面部13a」により繋がれているから、外側の第1の段部13bよりも所定の厚さだけ高い領域である。
してみると、引用発明の「前記基板10上の領域であって、インプリント用パターンを有する、パターン形成領域14」であって、その「外側に配置され、前記パターン形成領域14より下方の第1の段部13bと」「第1の側面部13a」により繋がれる「パターン形成領域14」は、本願補正発明の「基板の第1面に設けられた台座領域」に相当する。
(ウ)以上によれば、両者は相当関係にある。

イ 本願補正発明の「前記台座領域の側面に形成された撥液性部」と、引用発明の「前記パターン形成領域14と前記第1の段部13bを繋ぐ、第1の側面部13a」に備える「前記基板10よりも撥水性又は撥油性の高い材料からなる被膜16」を対比する。
引用発明の「前記パターン形成領域14と前記第1の段部13bを繋ぐ、第1の側面部13a」は、本願補正発明の「前記台座領域の側面」に相当し、引用発明の「前記基板10よりも撥水性又は撥油性の高い材料からなる被膜16」は本願補正発明の「撥液性部」に相当する。
してみると、両者は相当関係にある。

ウ 本願補正発明の「前記台座領域は、テンプレートパターンが形成された領域であ」ることと、引用発明の「パターン形成領域14」が「インプリント用パターンを有する」ことを対比する。
引用発明の「パターン形成領域14」は、本願補正発明の「台座領域」に相当し、引用発明の「インプリント用パターン」は、本願補正発明の「テンプレートパターン」に相当する。
してみると、両者は相当関係にある。

エ 引用発明の「テンプレート23」は、本願補正発明の「テンプレート」に相当する。

オ 以上によれば、本願補正発明と引用発明は、
「基板の第1面に設けられた台座領域と、
前記台座領域の側面に形成された撥液性部と、
を備え、
前記台座領域は、テンプレートパターンが形成された領域である、
テンプレート。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
相違点:「撥液性部」に関し、本願補正発明は「凹部と凸部とが不均一に並べられた凹凸形状の表面を有する」のに対し、引用発明は、「前記基板10よりも撥水性又は撥油性の高い材料からなる被膜16」である点。

4 判断
以下、上記相違点について検討する。
(1)はじめに、撥水性についての周知技術について検討する。
接触角が大きな表面に凹凸構造を形成して実表面積を増大させると接触角がさらに大きくなる(撥水性が高まる)こと、そして、実表面積を増大させる凹凸構造は、規則的であっても、あるいはランダム(不規則的)であっても良いことは、以下のア?ウに記載されるように、当業者の周知技術である。
ア 辻居薫著「超撥水と超親水-その仕組みと応用-」 米田出版、2009年3月5日(以下「周知例1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
(ア)第三章 濡れはどのように決まるか?
第一節 濡れは表面(界面)張力の釣り合いで決まる(濡れの化学的因子)
「図3・1は、固体状に水滴が乗っている状態である。水滴の形を決めているのは、水の表面張力γ_(L)、固体の表面張力γ_(S)、水と固体の間の界面張力γ_(SL)の横方向の釣り合いである。図に示すように、これら三つの力が一点で交わる接触点で釣り合う。その釣り合いの式は、ヤング(Young)の式と呼ばれ(3・1)式で表される。

ここで、θは接点から引いた水表面との接線と固体表面とのなす角で、水を含む方の角度で定義される接触角である。接触角が90度より小さいときに濡れると言い、大きいときにはじくと言う。ヤングの式を支配しているのは表面張力と界面張力であり、それら表面(界面)張力は物質に固有の物理量である。つまり、濡れを支配しているのは、固体及び液体そのものの組み合わせである。濡れに対するこの因子は、固体及び液体そのものの組み合わせである。濡れに対するこの因子は、化学的因子と呼ばれる。」(24頁11行?25頁7行)

(イ)図3・1は、以下のとおりである。

(ウ)第四章 デコボコ(凹凸)表面の濡れ
「平らな表面上で濡れ(接触角)を決めているのは、化学的因子、固体表面と液体の物質そのものであることを前章で説明した。より具体的には、固体と液体の表面張力、及び固体/液体間の界面張力の釣り合い(ヤングの式)である。本章では、濡れを決めるもう一つの因子、表面の構造因子について述べよう。結論から言うと、化学的因子は平らな表面上の接触角を決め、表面の微細な凹凸構造はその接触角を強調する方向に働く。…表面の凹凸構造は真の表面積を増大させ、それが濡れの方向を強調する。つまり、濡れる表面はより濡れるようになり、水をはじく表面はよりはじくようになるのである。…」(36頁1行?同頁8行)

(エ)第六章 人工的な超撥水表面
第三節 その他の凹凸構造による超撥水表面
「…、表面の凹凸構造はみかけの表面積に比べて実表面積を増大させ、濡れを強調する(Wenzelの理論)。したがって、超撥水や超親水性を与える表面の凹凸構造は、フラクタクル構造や柱(針)状構造に限らない。どんな形の凹凸構造であっても、実表面積を増大すれば効果を発揮する。本節では、種々の凹凸構造による超撥水表面を取り上げよう。」(112頁6行?同頁9行)

周知例1には、化学的因子(物質の表面張力等)が平らな表面上の接触角を決めること、そして、表面の凹凸構造が実表面積を増大させ、接触角を強調する方向に働いて撥水性を高めることが開示されている。

イ 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献4.特開2014-160754号公報(以下「引用例4」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
(ア)「【0033】
ここで、撥液性凹凸パターン32の接触角θ_(CB)が90°よりも大きくなる凹凸構造を有し、撥液性が発揮され得ることで、当該撥液性凹凸パターン32における凹部322内にインプリント樹脂12は入り込むことができない。そのため、図3に示すような状態において、撥液性凹凸パターン32表面における凸部天面321以外の部分(凹部322上)のインプリント樹脂は空気と接触していることになる。すなわち、撥液性凹凸パターン32表面における凸部天面321以外の部分のインプリント樹脂に対する接触角θ_(2)は180°である。よって、上記式(1)は、下記式(3)により表すことができる。
cosθ_(CB)=r_(1)・cosθ_(1)-r_(2)=r_(1)(cosθ_(1)+1)-1 ・・・(3)
【0034】
すなわち、撥液性凹凸パターン32の表面の接触角θ_(CB)は、撥液性凹凸パターン32における凸部天面321の占める面積割合r_(1)と、凸部天面321のインプリント樹脂に対する接触角θ_(1)(インプリントモールド1を構成する基材のインプリント樹脂に対する接触角)とにより決定される。そのため、インプリントモールド1を構成する基材の種類及びインプリント樹脂12の種類を考慮して、効果的に撥液性を奏し得るための撥液性凹凸パターン32の構造、寸法等が決定されることになる。」
(イ)図3は以下のとおりである。


引用例4には、撥液性凹凸パターン32の表面の接触角θ_(CB)は、撥液性凹凸パターン32における凸部天面321の占める面積割合r_(1)と、凸部天面321のインプリント樹脂に対する接触角θ_(1)(インプリントモールド1を構成する基材のインプリント樹脂に対する接触角)とにより決定され、撥液性凹凸パターン32の構造、寸法等を設定することにより、効果的に発液性を奏することが記載されている。

ウ 特表2006-524615号公報(以下「周知例2」という。)には、以下の記載がある。
「【0010】
本発明は、トレイキャリアのより効果的なクリーニングおよび乾燥を促進するための超撥水性表面を備えるキャリアを含む。本発明では、キャリアの表面全体または表面の一部が超撥水性にされる。…
【0011】
本発明の特に好適な実施例では、超撥水性表面は、基板に形成された緊密な間隔のマイクロ規模からナノ規模の複数の突出部を含む。本出願では、「マイクロ規模」は概ね100マイクロメートル未満の寸法を指し、「ナノ規模」は概ね100ナノメートル未満の寸法を指す。…
【0012】
突出部は、基板材料自体中もしくはその表面上に、または基板表面に配置された1層以上の材料に形成される。突出部は、規則的もしくは不規則的な形状の三次元固体または凹部であり、何らかの規則的な幾何学パターンで、またはランダムに配置される。突出部は、フォトリソグラフィを用いて、またはナノマシニング、マイクロスタンピング、マイクロコンタクトプリンティング、自己組織化金属コロイド単分子層、原子間力顕微鏡ナノマシニング、ゾル・ゲル成形、自己組織化単分子層指向性パターニング、化学エッチング、ゾル・ゲルスタンピング、コロイドインクによるプリンティングを用いて、または平行なカーボンナノチューブの層を基板に配置することによって形成される。」

周知例2には、緊密な間隔のマイクロ規模からナノ規模の複数の突出部を基板に形成して超撥水性表面とすること、突出部の配置は規則的でも不規則的でも良いことが開示されている。

(2)上記周知技術を踏まえ、上記相違点について検討する。
引用発明は、「前記第1の側面部に、前記基板よりも撥水性又は撥油性の高い材料からなる被膜を備え」ることで、「はみ出したインプリントレジストがこの第1の側面部13aに残存すること」をなくすものであるところ、インプリントレジストが側面部に残存することを確実に防止する目的で、第1の側面部の撥水性を高めるように上記周知技術を採用し、第1の側面部13aの表面をランダム(不規則)な凹凸構造とし、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項となすことは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。

ウ そして、本願補正発明が奏する作用効果は、引用発明と周知技術に基づいて当業者が容易に予測しうる程度のものである。

5 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明と周知技術とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年2月6日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項7に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「基板の第1面に設けられた台座領域と、
前記台座領域の側面に形成された撥液性部と、
を備え、
前記台座領域は、テンプレートパターンが形成された領域であり、
前記撥液性部は、凹凸形状の表面を有する、
ことを特徴とするテンプレート。」

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項7に係る発明は、引用発明及び引用例4に記載された凹凸構造、又は周知の撥液性微細凹凸構造に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3 引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1の記載事項及び引用発明は、前記第2の[理由]2に記載したとおりである。

4 対比・判断
(1)本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本願補正発明から、撥液性部の表面が有する「凹凸形状」について、「凹部と凸部とが不均一に並べられた」との限定事項を削除したものである。
してみると、本願発明と引用発明は、
「基板の第1面に設けられた台座領域と、
前記台座領域の側面に形成された撥液性部と、
を備え、
前記台座領域は、テンプレートパターンが形成された領域である、
テンプレート。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:「撥液性部」に関し、本願発明は「凹凸形状の表面を有する」のに対し、引用発明は、「前記基板よりも撥水性又は撥油性の高い材料からなる被膜」である点。

(2)以下、上記相違点1について検討する。
引用発明は、「前記第1の側面部に、前記基板よりも撥水性又は撥油性の高い材料からなる被膜を備え」ることで、「はみ出したインプリントレジストがこの第1の側面部13aに残存すること」をなくすものであるところ、インプリントレジストが側面部に残存することを確実に防止する目的で、例えば、引用例4(特開2014-1060754号公報)等に開示される上記周知技術を採用し、第1の側面部13aの表面を発液性凹凸パターンの構造とし、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項となすことは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。

(3)そして、本願発明が奏する作用効果は、引用発明と周知技術に基づいて当業者が容易に予測しうる程度のものである。

(4)したがって、本願発明は、引用発明と周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-06-27 
結審通知日 2019-07-02 
審決日 2019-07-16 
出願番号 特願2015-34019(P2015-34019)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今井 彰  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 星野 浩一
小松 徹三
発明の名称 テンプレート形成方法、テンプレート、テンプレート基材、および半導体装置の製造方法  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ