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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A61M
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61M
管理番号 1354823
審判番号 不服2018-10116  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-24 
確定日 2019-09-24 
事件の表示 特願2015- 34429「カテーテル」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月 1日出願公開、特開2016-154685、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年2月24日の出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成29年 9月29日付け:拒絶理由通知
平成29年11月30日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 2月 6日付け:拒絶理由通知
平成30年 4月11日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 4月20日付け:拒絶査定
平成30年 7月24日 :審判請求書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明(以下「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、平成30年 4月11日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
操作部と、
前記操作部と連結され、中心軸に沿って前記操作部の側から順に並ぶ基端領域と中間領域と先端領域とを含んで延在し、かつ、前記基端領域、前記中間領域および前記先端領域の全てをそれぞれ前記中心軸に沿って並走して貫く第1の通路および第2の通路が設けられた可撓性シャフトと、
前記第1の通路に挿通される第1の操作ワイヤと、
前記第2の通路に挿通される第2の操作ワイヤと
を備え、
前記第1の通路のうちの前記基端領域を貫く第1の基端領域部分と前記中心軸との距離は、前記第1の通路のうちの前記先端領域を貫く第1の先端領域部分と前記中心軸との距離よりも近く、
前記第2の通路のうちの前記基端領域を貫く第2の基端領域部分と前記中心軸との距離は、前記第2の通路のうちの前記先端領域を貫く第2の先端領域部分と前記中心軸との距離よりも近く、
前記第1の通路のうち前記中間領域を貫く第1の中間領域部分および前記第2の通路のうち前記中間領域を貫く第2の中間領域部分は、前記基端領域から前記先端領域へ向かうにしたがって互いに遠ざかるように前記中心軸に対して傾斜しており、
前記可撓性シャフトは、前記第1の通路のうちの前記第1の基端領域部分としての第1の操作ワイヤ用ルーメンおよび前記第2の通路のうちの前記第2の基端領域部分としての第2の操作ワイヤ用ルーメンが形成されたマルチルーメンチューブを前記基端領域に有する
カテーテル。

【請求項2】
前記マルチルーメンチューブは、前記中心軸に対して対称に配置された第1のルーメンおよび第2のルーメンと、前記中心軸に対して対称に配置された第3のルーメンおよび第4のルーメンをさらに有し、
前記第1のルーメンと前記第3のルーメンとは、前記中心軸を含む第1の面を対称面として対称に配置され、
前記第2のルーメンと前記第4のルーメンとは、前記第1の面を対称面として対称に配置され、
前記第1のルーメンと前記第4のルーメンとは、前記中心軸を含んで前記第1の面と直交する第2の面を対称面として対称に配置され、
前記第2のルーメンと前記第3のルーメンとは、前記第2の面を対称面として対称に配置されており、
前記第1から第4のルーメンには、それぞれ1以上の導線が挿通される
請求項1記載のカテーテル。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定における請求項1に係る発明についての拒絶の理由の概要は次のとおりである。

理由1
本願請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由2
本願請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2010-264280号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載事項
(1)上記引用文献1には、図面とともに、次の記載がある。
「【請求項1】
カテーテル近位部分およびカテーテル遠位部分を有しているカテーテルシャフトを備えており、前記カテーテル遠位部分は前記カテーテル近位部分より可撓性であり、
前記カテーテルシャフトの第1腔内に配置されたテンドンおよびニードルを備えており、前記テンドンは、引っ張られると、前記カテーテル遠位部分を撓ませることができ、
前記カテーテル近位部分のところで前記カテーテルシャフトに連結されたカテーテル取っ手を備えており、前記カテーテル取っ手は前記テンドンを制御するための第1制御機構と、前記ニードルを制御するための第2制御機構とを有しており、
前記カテーテル近位部分に沿っては、前記テンドンはほぼ中央に位置決めされており、前記ニードルは前記テンドンのまわりに巻き付けられており、
前記カテーテル遠位部分に沿っては、前記テンドンは前記カテーテル遠位部分の撓みを許容するために前記カテーテルシャフトの中心を外れて位置決めされており、前記ニードルは前記テンドンのまわりに巻き付けられていない、撓み可能なカテーテル組立体。」

「【0024】
カテーテル遠位部分102を撓ませるために、少なくとも1つのテンドン(以下を参照)がカテーテルシャフト101内に配置されている。図1に示すように、カテーテル遠位部分102は、撓まされると、丸まって撓み部分102-Dになる。撓みつまみ202を有するカテーテル取っ手200がカテーテル近位部分104のところでカテーテルシャフト101に連結されている。カテーテル取っ手200はカテーテル遠位部分102を撓ませるテンドンを制御するために制御機構(下記を参照)を有している。カテーテルシャフト101内には、ニードルのような少なくとも1つの治療器具(下記を参照)が配置されている。カテーテルシャフト101内に配置された治療器具に対する必要な連通または連結を許容する複数の連結ポート204がカテーテル取っ手200に設けられている。幾つかの実施形態では、ニードルのようなたった1つの治療器具がカテーテルシャフト101内に配置されている。ニードルの代わりに、或いはニードルに加えて、光力学的治療のような治療のために光エネルギを放出する光ファイバ束のような他の治療器具、または心筋内再血管形成を行なうチャンネリング器具を備えることもできる。これらの実施形態では、たった1つの連結ポート204がカテーテル取っ手200に設けられている。
【0025】
図2はカテーテル組立体100のカテーテルシャフト101の側面図を示している。カテーテルシャフト101は、テンドン130を有しているテンドン組立体103と、ニードル138を有しているニードル組立体109とを有している。テンドン組立体103およびニードル組立体109は、中央腔131内に配置されており、そしてカテーテル遠位部分102からカテーテル近位部分104まで連続的に延びている。カテーテル近位部分104において、テンドン組立体103は中心に(或いはほぼ中心に)位置決めされており、ニードル組立体109はカテーテルシャフト101の中心を外れて位置決めされている。カテーテル組立体100が1つより多いニードル組立体を有してもよいことはわかるであろう。変更例として、他の治療器具または診断器具がニードル組立体109に取って代わってもよく、或いはニードル組立体109に加えて、他の治療器具または診断器具が備えられてもよい。ニードルの代わりに、或いはニードル組立体109に加えて、光力学的治療のような治療のために光エネルギを放出する光ファイバ束のような他の治療器具、または心筋内再血管形成を行なうチャンネリング器具を備えることもできる。
【0026】
一実施形態では、テンドン組立体103およびニードル組立体109の各々はカテーテルシャフト101の中央腔131内に設けられた腔内に配置されている(図3および図4)。テンドン組立体103はテンドン腔26内に配置されており、ニードル組立体109は腔168内の配置されている。
【0027】
図3は遠位カテーテルシャフト118の横断面D1を示している。図3に示すように、テンドン組立体103は遠位カテーテルシャフト118の中心を外れて位置決めされており、ニードル組立体109は遠位カテーテルシャフト118のほぼ中心に位置決めされている。テンドン組立体103は、カテーテル組立体100の遠位部分102を撓ませることができるために中心を外れる必要がある。テンドン組立体103は、遠位カテーテルシャフト118に中心を外れて位置決めされているテンドン腔126内に配置されている。ニードル組立体109は、一実施の形態において遠位カテーテルシャフトのほぼ中心に位置決めされているニードル腔168内に配置されている。中央腔131は、テンドン組立体103およびニードル組立体109を固着するためにポリマーが充填されてもよい。中央腔131を取り囲んでいるのは圧縮ケージ122(以下に詳述)であり、圧縮ケージ122を取り囲んでいるのは遠位ジャケット120であり、この遠位ジャケット120は遠位カテーテルシャフト118のための外径を規定する。必要なら、追加の器具、構成部品またはニードル組立体を収容するために、遠位カテーテルシャフト118には、もっと多くの腔が配置されてもよい。」

「【0030】
遠位カテーテルシャフト118は遠位コアシャフト124を有しており、近位カテーテルシャフト112は近位コアシャフト116を有している。遠位コアシャフト124および近位コアシャフト116の各々はポリエーテルブロックアミド(ペバックス;これはアトフィナケミカルズの登録商標である)、ナイロンまたはポリウレタンのようなポリマーで作られている。遠位コアシャフト124用に使用される材料は近位コアシャフト116用に使用される材料より可撓性である(例えば、硬度ジュロメータが低い)。」

「【0186】
・・・
以下に論述する模範的な実施形態は、多数の撓み方向を有するカテーテル組立体を説明する図45ないし図52を参照して説明するものである。これらの実施形態によれば、カテーテル組立体はカテーテルシャフトのまわりに360度、多数の方向またはあらゆる方向に撓む。これにより、カテーテルシャフトを回す必要が無くなる。図45ないし図52の実施形態は、使用し易いカテーテル組立体にあり、そして正確な治療投与で3D空洞内のあらゆる目標部位に届くことが可能である。
【0187】
図45には、カテーテル組立体306の横断面図が示されている。このカテーテル組立体306は4つのテンドン288および1つのニードル304を有している。カテーテル組立体306が4つのテンドン288を有していることは図45に示されているが、代わりにもっと多いまたは少ない数のテンドン288を使用してもよい。例えば、カテーテル組立体306は図49に示すように3つのテンドン288のみを有してもよい。もっと多いテンドン288が使用されていると、同じ撓みを行なうのに、他の要因すべてが等しいと仮定すると、1つのテンドン288あたり、より小さい力が必要とされる。シャフトの横断面の平面に対するテンドン288の位置はテンドンがあるシャフトの部分に応じて変化する。非撓み性の部分、すなわち、カテーテル近位部分では、テンドン288はカテーテルシャフトの中心に位置決めされる。一実施形態では、テンドン288は中央腔286内に配置されている。テンドン288の各々はテンドンシース290内に配置されてもよい。この実施形態では、テンドンシース290は中央腔286内に配置されている。ニードル304は中心から離れて腔301に位置決めされてもよい。変更例として、ニードル304は中央腔286に位置決めされ、テンドンシース290のそばに沿って移動自由であってもよい。ニードル304はニードルシース302内に配置されてもよい。テンドン288、テンドンシース290、ニードル304およびニードルシース302の構成は(例えば、カテーテル組立体100に置けるように)前述のものと同様である。」

「【0194】
(図51および図52を含めて)図48では、カテーテルシャフトの撓み可能な部分において、テンドン288は撓み方向に向って引っ張り力を生じるために中心を外れて設置されている。テンドン288は互いから約90度のところに設置されている。一実施形態では、テンドン288は、これらが遠位固定点314に達するまで腔の内側に収容され続ける。固定点314では、テンドン288は溶接、はんだ付け、機械的トラッピングまたは接着剤接合によりバンドに取付けられており、それでも、90度半径方向に間隔を隔てられている。テンドン288が互いから等角度で設置されることが最適である。カテーテル組立体306に4つのテンドン288が設けられる実施形態では、各テンドン288は互いから約90度離れて設置されている。カテーテル組立体306に3つのテンドン288が設けられる実施形態では、各テンドン288は互いから約120度離れて設置されている。他の実施形態では、各テンドン288は他のテンドン288と平行に且つ互いから約180度離れて設置されている。ニードル腔は中央腔302にあり続ける(或いは、テンドン288がカテーテル近位部分のところでカテーテルシャフトの中心に設置され、ニードルが中心を外れて設置される図45および図46に示される方法により非撓み性シャフトが構成される場合には、中心に至らされる)。思い浮かべることができるように、テンドン88のうちの1つが引っ張られると、撓み可能な部分がその1つのテンドン288の位置の方向に向けて撓む。2つのテンドン288が引っ張られると、これらの2つのテンドン288の位置間の方向に撓みが生じる。一実施形態では、2つのテンドン288が引っ張られると、これらの2つのテンドン288は、両テンドンに作用する引張力が互いに相殺し、2つのテンドン288の位置間の方向に2つのテンドン288の引き付けが生じるように、共に並ばれるべきである。」

「【0197】
一実施形態では、各テンドン288は取っ手(例えば、カテーテル取っ手200)におけるプルノブ(図示せず)に連結されている。各テンドン88は独立して引っ張られることができ、1つのテンドン288のみが任意の時期に引っ張れ得る。その結果、カテーテルはテンドン288の数に等しい数の方向に撓むことができる。変更例として、各テンドン288が独立して引っ張られてもよく、2つの隣接したテンドン288が同時に引っ張られてもよい。このような実施形態では、カテーテル組立体306のカテーテルシャフトは隣接したテンドン288間の方向に撓み、撓み方向は加えられるテンドン並進量の比に関係付けられる。このように、任意の撓み方向(360度の撓み方向)が達成され得る。例えば、一実施形態では、2つのテンドン288が設けられており、この実施形態では、少なくとも2方向の撓みが生じることができる。他の実施形態では、3つのテンドン288が設けられており、かかる実施形態では、少なくとも3方向の撓みが生じることができる。」

「図2



「図3



「図45



「図48



(2)上記の摘記から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
(ア)段落【0024】の「撓みつまみ202を有するカテーテル取っ手200がカテーテル近位部分104のところでカテーテルシャフト101に連結されている。」との記載から、「カテーテル取っ手200はカテーテルシャフトと連結される。」といえる。

(イ)段落【0187】には「図48では、カテーテルシャフトの撓み可能な部分において、テンドン288は撓み方向に向って引っ張り力を生じるために中心を外れて設置されている。テンドン288は互いから約90度のところに設置されている。一実施形態では、テンドン288は、これらが遠位固定点314に達するまで腔の内側に収容され続ける。」と記載され、段落【0194】には「他の実施形態では、各テンドン288は他のテンドン288と平行に且つ互いから約180度離れて設置されている。」と記載され、図48から、カテーテルシャフト内に、内部にテンドン288が挿通された4本のテンドンシース290が中心軸に沿って並走して延在するとともに、4本のテンドンシース290は近位端側から遠位端に向かって一定距離、カテーテルシャフトの中心軸近辺を中心軸に沿って平行に配置され、その後遠位端に向かうにつれ中心軸から遠ざかるように傾斜して配置され、さらに遠位端側において中心軸から離れた位置に配置され、遠位固定点314においてテンドン288は固定されることが看取される。
以上から、「カテーテルシャフトの中心軸に沿って2本のテンドンシース290が並走して延在し、2本のテンドンシース290内には2本のテンドン288がそれぞれ挿通され、テンドンシース290は近位端側から遠位端に向かって一定距離、カテーテルシャフトの中心軸近辺を中心軸に沿って平行に配置され、その後遠位端に向かうにつれ中心軸から遠ざかるように傾斜して配置され、さらに遠位端側において中心軸から離れた位置に配置されている。」といえる。

(ウ)段落【0026】の「一実施形態では、テンドン組立体103およびニードル組立体109の各々はカテーテルシャフト101の中央腔131内に設けられた腔内に配置されている」との記載、段落【0027】の「中央腔131は、テンドン組立体103およびニードル組立体109を固着するためにポリマーが充填されてもよい。」との記載、段落【0194】の「一実施形態では、テンドン288は、これらが遠位固定点314に達するまで腔の内側に収容され続ける。」との記載、図48からテンドン288はカテーテルシャフト内に配置されたテンドンシース290内に挿通される点が看取されることから、「カテーテルシャフト内に設けられたテンドンシース290等を除く腔内に、ポリマーが充填されている。」といえる。

2 引用発明
上記1を踏まえると、引用文献1には、以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。

「カテーテル取っ手200はカテーテルシャフトと連結され、
カテーテルシャフトの中心軸に沿って2本のテンドンシース290が並走して延在し、2本のテンドンシース290内には2本のテンドン288がそれぞれ挿通され、テンドンシース290は近位端側から遠位端に向かって一定距離、カテーテルシャフトの中心軸近辺を中心軸に沿って平行に配置され、その後遠位端に向かうにつれ中心軸から遠ざかるように傾斜して配置され、さらに遠位端側において中心軸から離れた位置に配置され、
カテーテルシャフト内に設けられたテンドンシース290等を除く腔内に、ポリマーが充填されたカテーテル組立体。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
本願発明1と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。

(1)引用発明の「カテーテル取っ手200」は、その用語の意味、機能または構成等からみて、本願発明1の「操作部」に相当する。以下同様に、「カテーテルシャフト」は「可撓性シャフト」に、「カテーテルシャフトの中心軸」は「中心軸」に、「並走して延在し」は「並走して貫く」に、「2本のテンドンシース290」は「第1の通路および第2の通路」に、「2本のテンドン288」は「第1の操作ワイヤおよび第2の操作ワイヤ」に、「近位端側から遠位端に向かって一定距離」は「基端領域」に、「その後遠位端に向かうにつれ」は「中間領域」に、「さらに遠位端側」は「先端領域」に、「カテーテル組立体」は「カテーテル」に、それぞれ相当する。

(2)引用発明における「テンドンシース290は近位端側から遠位端に向かって一定距離、カテーテルシャフトの中心軸近辺を中心軸に沿って平行に配置され」、「さらに遠位端側において中心軸から離れた位置に配置され」た態様は、本願発明1の「第1の通路のうちの前記基端領域を貫く第1の基端領域部分と前記中心軸との距離は、前記第1の通路のうちの前記先端領域を貫く第1の先端領域部分と前記中心軸との距離よりも近く、前記第2の通路のうちの前記基端領域を貫く第2の基端領域部分と前記中心軸との距離は、前記第2の通路のうちの前記先端領域を貫く第2の先端領域部分と前記中心軸との距離よりも近」い態様に相当する。

(3)引用発明における「テンドンシース290は」「その後遠位端に向かうにつれ中心軸から遠ざかるように傾斜して配置され」る態様は、本願発明1の「第1の通路のうち前記中間領域を貫く第1の中間領域部分および前記第2の通路のうち前記中間領域を貫く第2の中間領域部分は、前記基端領域から前記先端領域へ向かうにしたがって互いに遠ざかるように前記中心軸に対して傾斜」した態様に相当する。

以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】
「操作部と、
前記操作部と連結され、中心軸に沿って前記操作部の側から順に並ぶ基端領域と中間領域と先端領域とを含んで延在し、かつ、前記基端領域、前記中間領域および前記先端領域の全てをそれぞれ前記中心軸に沿って並走して貫く第1の通路および第2の通路が設けられた可撓性シャフトと、
前記第1の通路に挿通される第1の操作ワイヤと、
前記第2の通路に挿通される第2の操作ワイヤと
を備え、
前記第1の通路のうちの前記基端領域を貫く第1の基端領域部分と前記中心軸との距離は、前記第1の通路のうちの前記先端領域を貫く第1の先端領域部分と前記中心軸との距離よりも近く、
前記第2の通路のうちの前記基端領域を貫く第2の基端領域部分と前記中心軸との距離は、前記第2の通路のうちの前記先端領域を貫く第2の先端領域部分と前記中心軸との距離よりも近く、
前記第1の通路のうち前記中間領域を貫く第1の中間領域部分および前記第2の通路のうち前記中間領域を貫く第2の中間領域部分は、前記基端領域から前記先端領域へ向かうにしたがって互いに遠ざかるように前記中心軸に対して傾斜している
カテーテル。」

【相違点】
本願発明1において、可撓性シャフトは、第1の通路のうちの第1の基端領域部分としての第1の操作ワイヤ用ルーメンおよび第2の通路のうちの第2の基端領域部分としての第2の操作ワイヤ用ルーメンが形成されたマルチルーメンチューブを基端領域に有するのに対して、引用発明においては、カテーテルシャフト内に設けられたテンドンシース290等を除く腔内に、ポリマーが充填された点。

(4)相違点についての判断
上記相違点について検討すると、引用発明ではカテーテルシャフト内には充填材が充填されている事項が記載されているものの、充填材とマルチルーメンチューブとは異なるものであるため、これをもってしてカテーテルシャフト内にマルチルーメンチューブが設けられた、ということはできない。
引用発明においてカテーテルシャフト内にポリマーを充填する目的は、中央腔内においてテンドン組立体やニードル組立体を固着すること(段落【0027】)と解される一方、本願発明1において、マルチルーメンチューブを可撓性シャフトの基端領域に配置した目的は、カテーテルの蛇行を防止する抗圧縮部材としての機能を発揮すること(段落【0004】?【0006】)であり、カテーテルシャフト内に相違点に係る構成を設ける目的が異なる。
そうすると、引用発明には、上記相違点における本願発明1に係る構成を想起する動機付けがあるとはいえない。
また、本願発明1は上記相違点に係る構成を有していることで、「トルク応答性や曲げ応答性に優れる」という、明細書記載の効果(段落【0010】)を奏するものと認められる。
したがって、引用発明において、上記相違点における本願発明1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到することができるものではない。

(5)小括
以上の検討から、本願発明1は、引用発明であるとはいえず、また、引用発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものともいえない。

2.本願発明2について
本願発明2は本願発明1の構成を全て含むものであるところ、本願発明1の「可撓性シャフトは、前記第1の通路のうちの前記第1の基端領域部分としての第1の操作ワイヤ用ルーメンおよび前記第2の通路のうちの前記第2の基端領域部分としての第2の操作ワイヤ用ルーメンが形成されたマルチルーメンチューブを前記基端領域に有する」という発明特定事項を有するから、本願発明1についてと同様の理由により、本願発明2は、引用発明であるとはいえず、また、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1及び2はいずれも、引用発明ではないから特許法第29条第1項第3号に該当するものではなく、また、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないとはいえない。

したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-09-10 
出願番号 特願2015-34429(P2015-34429)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61M)
P 1 8・ 113- WY (A61M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 和田 将彦  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 莊司 英史
沖田 孝裕
発明の名称 カテーテル  
代理人 特許業務法人つばさ国際特許事務所  

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