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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1354842 |
審判番号 | 不服2018-829 |
総通号数 | 238 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-10-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-01-22 |
確定日 | 2019-09-04 |
事件の表示 | 特願2014-173498「半導体パッケージおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月26日出願公開、特開2015- 57823〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2010年(平成22年)12月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年1月19日(US)米国、2010年3月24日(US)米国)を国際出願日とする特願2012-548940号の一部を平成26年8月28日に新たな特許出願としたものであって、平成26年9月16日に手続補正がなされ、平成27年11月16日付けで拒絶理由が通知され、平成28年3月18日に手続補正がなされ、同年5月30日付けで拒絶理由が通知され、同年12月7日に手続補正がなされ、平成29年2月10日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年8月23日に手続補正がなされたが、同年9月15日付けで拒絶査定がなされた。これに対して、平成30年1月22日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに手続補正がなされたものである。 第2 平成30年1月22日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成30年1月22日にされた手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 平成30年1月22日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするものであり、請求項1については、 本件補正前に、 「 【請求項1】 半導体パッケージであって、 ダイと、 第1の下側リードと第2の下側リードとを含む下側リードフレームであって、前記第1の下側リードは、ダイの第1の面上のダイ接点に電気的に接続されている、前記下側リードフレームと、 上側リードを含む上側リードフレームであって、 前記上側リードの一部はL字状に屈曲されており、 前記L字状の上側リードは、前記ダイとの関係で所望の位置で前記下側リードフレームから前記上側リードフレームを支持し 前記L字状の上側リードは、前記ダイの第2の面上のダイ接点と前記第2の下側リードとの間で電気的に接続されており、かつ、前記ダイの前記第2の下側リードの反対側においては別の下側リードと電気的に接続されておらず、それによりパッケージの接点は前記半導体パッケージの第1の面上にある、前記上側リードフレームと、 を含む、半導体パッケージ。」 とあったところを、 本件補正により、 「 【請求項1】 半導体パッケージであって、 ダイと、 第1の下側リードと第2の下側リードとを含む下側リードフレームであって、前記第1の下側リードは、ダイの第1の面上のダイ接点に電気的に接続されている、前記下側リードフレームと、 上側リードを含む上側リードフレームであって、 前記上側リードの一部はL字状に屈曲されており、 前記L字状の上側リードは、前記ダイとの関係で所望の位置で前記下側リードフレームから前記上側リードフレームを支持し 前記L字状の上側リードは、前記ダイの第2の面上のダイ接点と前記第2の下側リードとの間で電気的に接続されており、かつ、前記ダイの前記第2の下側リードの反対側においては別の下側リードと電気的に接続されておらず、それによりパッケージの接点は前記半導体パッケージの第1の面上にあり、 前記下側リードフレームに対向する面上に1つ以上の溝部が形成されている前記上側リードフレームと、 を含む、半導体パッケージ。」 とするものである。なお、下線は補正箇所を示す。 2.補正の適否 請求項1についての本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「上側リードフレーム」について、「前記下側リードフレームに対向する面上に1つ以上の溝部が形成されている」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。 (1)本願補正発明 本願補正発明は、上記「1.」に本件補正後の請求項1として記載したとおりのものである。 (2)引用例 ア.引用例1の記載 原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-222890号公報(以下「引用例1」という。)には、「半導体装置」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。 (a)「【0009】すなわち、本願発明の第1の側面により提供される半導体装置は、第1端子部および第2端子部が樹脂パッケージの底面から露出した形態を有する半導体装置であって、一面および他面のそれぞれに電極が形成された半導体チップと、上記第1端子部を有するとともに上記一面の電極に導通接続される第1導体と、上記第2端子部を有するとともに上記他面の電極に導通接続される第2導体と、を備えた半導体装置において、上記第1導体と上記第2導体とは、上記樹脂パッケージの底面に沿って互いに対向するように同一平面上に配置されており、かつ、上記第1導体は、少なくとも一部が上記半導体チップの直下に位置しているとともに、上記一面と接合される第1部分および上記樹脂パッケージの厚み方向に延びる第2部分を有する第3導体を介して上記一面の電極と導通接続されており、上記第2導体は、直接的に上記他面の電極と導通接続されていることを特徴としている。」 (b)「【0021】図1ないし図3は、本願発明の第1の実施の形態に係る半導体装置を示している。なお、図1は上記半導体装置を上面側から見た全体斜視図、図2は上記半導体装置を下面側から見た全体斜視図、図3は図1のIII-III線に沿う断面図である。 【0022】図1ないし図3に示した半導体装置X1は、面実装型として構成されたワイヤレスタイプのものであり、第1導体1、第2導体2、第3導体3、半導体チップ4、および樹脂パッケージ5を有している。 【0023】第1導体1は、平面視長矩形状の形態を有しており、一面10が平坦面とされているとともに、他面11の両端部のそれぞれに凸部12が設けられている。これらの凸部12の表面12aは、樹脂パッケージ5の底面50から露出しており、この表面12aが第1端子部を構成している。 【0024】第2導体2は、平面視矩形状の形態を有しており、一面20が平坦面とされているとともに、他面21には2つの凸部22が設けられている。これらの凸部22の表面22aは、樹脂パッケージ5の底面50から露出しており、この表面22aが第2端子部を構成している。第2導体2は、第1導体1と同一平面上において一定間隔隔てて互いに対向して配置されている。 【0025】なお、凸部12,22は、たとえば他面11,21における凸部12,22を形成する領域以外をハーフエッチング処理を施すことにより形成されている。 【0026】第3導体3は、第1部分としての基部30と第2部分としての折り曲げ部31とを有する断面L字状の形態とされている。折り曲げ部31の先端面31aは、ハンダなどにより第1導体1の一面10と接合されている。 【0027】半導体チップ4は、たとえばダイオードなどのベアチップであり、一面40および他面41のそれぞれに電極(図示略)が設けられている。この半導体チップ4は、その他面41と第1導体1の一面10における第2導体2に近い領域および第2導体2の一面20との間を、たとえばハンダ接合することにより第1導体1と第2導体2との間を橋渡すようにして実装されている。その結果、第1導体1の一部が半導体チップ4の直下に位置している。」 (c)「【0029】一方、半導体チップ4の一面40は、第3導体3の基部30の他面30aに対して、ハンダなどにより接合されており、基部30により半導体チップ4の一面40の全体が覆われている。したがって、半導体チップの上面がワイヤと接続されたワイヤタイプの半導体装置(図12および図13参照)と比較すれば、半導体チップ4の一面40が樹脂材料と接触しなくなるとともに、当該一面40が樹脂材料よりも熱伝導性の高い第3導体3の基部30により覆われている。その結果、上記半導体装置X1は、ワイヤタイプのものに比べて放熱性に優れ、また外部光などのノイズ成分の影響を低減することができるようになる。 【0030】樹脂パッケージ5は、第1ないし第3導体1?3および半導体チップ4を封止するとともに、第1および第2導体1,2の凸部12,22の表面12a,22aがこの樹脂パッケージ5の底面50から露出するようにして形成されている。この樹脂パッケージ5は、たとえばエポキシ樹脂を用いたトランスファーモールド法により形成されている。」 (d)「【0033】このリードフレーム6には、一対のサイドメンバ60A,60Bおよび一対のクロスメンバ(図示略)により規定される枠内に、半導体装置X1の第1導体1および第2導体2となるべき第1ないし第3領域61?63が複数形成されている。図4および図5に示したリードフレーム6では、一方のサイドメンバ60Aから他方のサイドメンバ60Bに向けて複数の第1領域61が横並びして延出し、他方のサイドメンバ60Bから一方のサイドメンバ60Aに向けて複数の第2領域62が横並びして延出している。各第1領域61と各第2部分62との間の領域には、第1領域61および第2領域62の双方に相当する部分を有する第3領域部分63が形成されている。」 (e)「【0037】このような形態を有するリードフレーム6は、銅製あるいはニッケル製などの金属板の裏面側からハーフエッチング処理を施すことにより肉薄とされた部分が形成され、表面および裏面の双方からエッチング処理を施すことにより貫通した部分が形成される。より具体的には、たとえば金属板の表面および裏面のそれぞれにエッチング処理を施すべき部分に対応して開口部が形成されたマスクを設けた後にエッチング液内に金属板を浸漬し、エッチング処理後にマスクを除去することによりリードフレーム6が形成される。」 (f)「【0041】最後に、リードフレーム6における各半導体装置形成領域xの外周に沿って、たとえばダイヤモンドカッタなどを用いて樹脂パッケージ8および各橋絡部64?67を切断することにより、図1ないし図3に示したような個別の半導体装置X1が得られる。」 上記(a)ないし(f)、図1ないし図3から、引用例1には以下の事項が記載されている。 ・上記(b)の段落【0021】及び【0022】によれば、引用例1の第1の実施の形態に係る半導体装置X1は、第1導体1、第2導体2、第3導体3、半導体チップ4、および樹脂パッケージ5を有するものである。 ・上記(b)の段落【0027】によれば、半導体チップ4は、一面40および他面41のそれぞれに電極が設けられているものである。 また、上記(a)によれば、引用例1の半導体装置は、一面および他面のそれぞれに電極が形成された半導体チップと、第1導体と、第2導体と、を備えた半導体装置において、上記第1導体は、第3導体を介して上記一面の電極と導通接続されており、上記第2導体は、直接的に上記他面の電極と導通接続されているものである。 したがって、引用例1の第1の実施の形態に係る半導体装置X1において、半導体チップ4は、一面40および他面41のそれぞれに電極が設けられており、第1導体1は、第3導体3を介して半導体チップ4の一面40の電極と導通接続されており、第2導体2は、直接的に半導体チップ4の他面41の電極と導通接続されているものである。 ・上記(d)によれば、リードフレーム6には、半導体装置X1の第1導体1および第2導体2となるべき第1ないし第3領域61?63が複数形成されているものであり、上記(e)によれば、リードフレーム6は金属板である。また、上記(f)によれば、リードフレーム6における各半導体装置形成領域xの外周に沿って、樹脂パッケージ8および各橋絡部64?67を切断することにより、個別の半導体装置X1が得られるものである。 したがって、第1導体1および第2導体2は、金属板であるリードフレーム6を、リードフレーム6における各半導体装置形成領域xの外周に沿って切断することにより得られるものである。 ・図1及び図3によれば、半導体装置X1において、符号「50」で示される樹脂パッケージ5の底面が存在する方向を下方向とした場合に、第3導体3は、第1導体1及び第2導体2の上方に存在するものである。 ・上記(b)の段落【0026】によれば、第3導体3は、第1部分としての基部30と第2部分としての折り曲げ部31とを有する断面L字状の形態とされており、折り曲げ部31の先端面31aは、ハンダなどにより第1導体1の一面10と接合されているものである。また、図1ないし図3によれば、半導体装置X1において、第3導体3は板状の部材が断面L字状に折り曲げられた形状のものであり、第3導体3は、折り曲げ部31が第1導体1と接続される部分に対して、半導体チップ4を介した反対側では、第1導体1や第2導体2に接続するものではない。 したがって、第3導体3は、板状の部材が断面L字状に折り曲げられた形状であって、第1部分としての基部30と第2部分としての折り曲げ部31とを有する断面L字状の形態とされており、折り曲げ部31の先端面31aは、ハンダなどにより第1導体1の一面10と接合されているものであり、第3導体3は、折り曲げ部31が第1導体1と接続される部分に対して、半導体チップ4を介した反対側では、第1導体1や第2導体2に接続するものではない。 ・上記(b)の段落【0023】によれば、第1導体1は凸部12が設けられており、凸部12の表面12aは、樹脂パッケージ5の底面50から露出しており、この表面12aが第1端子部を構成しているものである。したがって、第1導体1に設けられた凸部12の表面12aは、樹脂パッケージ5の底面50から露出しており、この表面12aが第1端子部を構成しているものである。 ・上記(b)の段落【0024】によれば、第2導体2は凸部22が設けられており、凸部22の表面22aは、樹脂パッケージ5の底面50から露出しており、この表面22aが第2端子部を構成しているものである。したがって、第2導体2に設けられた凸部22の表面22aは、樹脂パッケージ5の底面50から露出しており、この表面22aが第2端子部を構成しているものである。 ・上記(c)によれば、樹脂パッケージ5は、第1ないし第3導体1?3および半導体チップ4を封止するものである。 ・上記(c)によれば、半導体チップ4の一面40は、第3導体3の基部30の他面30aに対して、ハンダなどにより接合されており、基部30により半導体チップ4の一面40の全体が覆われているものである。 そうすると、上記摘示事項、図1ないし図3を総合勘案すると、引用例1には、第1の実施の形態に係る半導体装置X1として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「第1導体1、第2導体2、第3導体3、半導体チップ4、および樹脂パッケージ5を有する半導体装置X1であって、 半導体チップ4は、一面40および他面41のそれぞれに電極が設けられており、 第1導体1は、第3導体3を介して半導体チップ4の一面40の電極と導通接続されており、 第2導体2は、直接的に半導体チップ4の他面41の電極と導通接続されており、 第1導体1および第2導体2は、金属板であるリードフレーム6を、リードフレーム6における各半導体装置形成領域xの外周に沿って切断することにより得られるものであり、 第3導体3は、第1導体1及び第2導体2の上方に存在するものであり、 第3導体3は、板状の部材が断面L字状に折り曲げられた形状であって、第1部分としての基部30と第2部分としての折り曲げ部31とを有する断面L字状の形態とされており、折り曲げ部31の先端面31aは、ハンダなどにより第1導体1の一面10と接合されており、第3導体3は、折り曲げ部31が第1導体1と接続される部分に対して、半導体チップ4を介した反対側では、第1導体1や第2導体2に接続するものではなく、 第1導体1に設けられた凸部12の表面12aは、樹脂パッケージ5の底面50から露出しており、この表面12aが第1端子部を構成しており、 第2導体2に設けられた凸部22の表面22aは、樹脂パッケージ5の底面50から露出しており、この表面22aが第2端子部を構成しており、 樹脂パッケージ5は、第1ないし第3導体1?3および半導体チップ4を封止し、 半導体チップ4の一面40は、第3導体3の基部30の他面30aに対して、ハンダなどにより接合されており、基部30により半導体チップ4の一面40の全体が覆われている、 半導体装置X1。」 イ.引用例2の記載 原査定の拒絶の理由に引用された特表2008-533694号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。 (g)「【0017】 図3および図4は、上部リードフレーム10の下側および下部リードフレーム12の上側をそれぞれ示す図である。図3に示すように、上部リードフレーム10の下面を部分的にエッチング処理することで、十字形の溝105が形成されている。後述するように、溝105によって、熱サイクル時の半導体ダイを伴なう上部リードフレーム10のコンプライアンスが向上する。溝105によって、熱サイクル時の応力の蓄積が減少する。溝105は、上部リードフレーム10を厚さ0.002インチから0.006インチにエッチング処理することで形成してもよい。図12Aから図12Dは、上部リードフレーム10および11の下側に形成できる溝のいくつかのパターンを示しており、単一の十字(図12A)、二重の十字(図12B)、および一連の並列の溝(図12Cおよび図12D)を含む。しかしながら、上部リードフレーム10にあまり多くの溝を形成すると、リードフレームの強度が減少し、成形処理時にダイに亀裂の生じる危険性が増すことが分かっている。成形処理中は、上部リードフレーム10の平坦な中央部102が、ダイに亀裂を生じさせる可能性のある特異な力からダイを保護している。」 (h)「【0019】 図5は、上部リードフレーム10および下部リードフレーム12を含む半導体パッケージ20の断面図を示す。図5は、図3および図4に示す切断線5-5に沿ったものである。パッケージ20は、上部リードフレーム10と下部リードフレーム12との間に置かれた半導体ダイ14を含む。この実施例では、半導体ダイ14は、ダイ14の上面にドレイン端子(図示せず)とダイ14の下面にソース端子およびゲート端子(図示せず)とを有する垂直トレンチMOSFETを含む。 【0020】 ダイ14の上面のドレイン端子は、上部はんだ層16によって上部リードフレーム10に電気的かつ熱的に接続されており、図示のように上部リードフレーム10の下面の溝105の中に延在している。上部リードフレーム10の足部106Aは、ドレイン接点124の空洞127の中に延在しており、はんだ層17Aを介してドレイン接点124と電気的かつ熱的に接触している。同様に、上部リードフレーム10の足部106Bは、ドレイン接点122の空洞125の中に延在しており、はんだ層17Bを介してドレイン接点122と電気的かつ熱的に接触している。後述するように、はんだ層17Aおよび17Bは、同時に堆積させるようにしてもよい。一部の実施例では、ドレイン接点の空洞125および127を省いてもよい。」 (i)「【図面の簡単な説明】 【0038】 【図1A】上部リードフレームの斜視図である。 【図1B】上部リードフレームの代替の実施例の斜視図である。 【図2】下部リードフレームの斜視図である。 【図3】上部リードフレームを下から見た図である。 【図4】下部リードフレームを上から見た平面図である。 【図5】この発明に従う半導体パッケージの断面図である。」 (j)【図1A】 (k)【図3】 (l)【図5】 上記(g)ないし(h)から、引用例2には以下の事項が記載されている。 ・上記(h)によれば、上部リードフレーム10および下部リードフレーム12を含む半導体パッケージ20に関するものである。 ・上記(h)によれば、パッケージ20は、上部リードフレーム10と下部リードフレーム12との間に置かれた半導体ダイ14を含むものである。 ・上記(h)によれば、半導体ダイ14は、ダイ14の上面にドレイン端子とダイ14の下面にソース端子およびゲート端子とを有する垂直トレンチMOSFETを含むものである。 ・上記(h)によれば、ダイ14の上面のドレイン端子は、上部はんだ層16によって上部リードフレーム10に電気的かつ熱的に接続されているものである。 ・上記(g)によれば、上部リードフレーム10の下面を部分的にエッチング処理することで、十字形の溝105が形成されているものであり、溝105によって、熱サイクル時の半導体ダイを伴なう上部リードフレーム10のコンプライアンスが向上し、熱サイクル時の応力の蓄積が減少するものである。そして、熱サイクル時の半導体ダイを伴なう上部リードフレーム10のコンプライアンスが向上するということは、熱サイクル時の半導体ダイと上部リードフレームとの間の適合性が向上することと解される。 そうすると、上記摘示事項を総合勘案すると、引用例2には、上部リードフレームと、下部リードフレームと、上部リードフレームと下部リードフレームとの間に置かれた半導体ダイを含み、半導体ダイは上面と下面に端子を有し、半導体ダイの上面の端子は、上部はんだ層によって上部リードフレームに電気的かつ熱的に接続されている半導体パッケージにおいて、上部リードフレームの下面に溝を形成することで、熱サイクル時の半導体ダイと上部リードフレームとの間の適合性が向上し、熱サイクル時の応力の蓄積が減少するという技術事項(以下「引用例2に記載された技術事項」という。)が示されている。 (3)対比 そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「半導体装置X1」は、樹脂パッケージ5を有するものであり、樹脂パッケージ5は、第1ないし第3導体1?3および半導体チップ4を封止するものであるから、引用発明の「半導体装置X1」はパッケージであるといえる。したがって、引用発明の「半導体装置X1」は本願補正発明の「半導体パッケージ」に相当する。 (イ)引用発明の「半導体チップ4」は本願補正発明の「ダイ」に相当する。 (ウ)引用発明の「半導体チップ4の他面41の電極」及び「半導体チップ4の一面40の電極」は、それぞれ、本願補正発明の「ダイの第1の面上のダイ接点」及び「ダイの第2の面上のダイ接点」に相当するものである。 (エ)引用発明の「第2導体2」は、半導体チップ4の他面41の電極と導通接続されており、金属板であるリードフレーム6を、リードフレーム6における各半導体装置形成領域xの外周に沿って切断することにより得られるものであるから、リードであるといえる。また、引用発明において、第3導体3は、第1導体1及び第2導体2の上方に存在するものであるから、第2導体2は相対的に下方に存在するものである。したがって、引用発明の「第2導体2」は本願補正発明の「第1の下側リード」に相当する。 また、引用発明の「第2導体2は、直接的に半導体チップ4の他面41の電極と導通接続されて」いることは、本願補正発明の「前記第1の下側リードは、ダイの第1の面上のダイ接点に電気的に接続されている、」ことに相当する。 (オ)引用発明の「第1導体1」は、第3導体3を介して半導体チップ4の一面40の電極と導通接続されており、金属板であるリードフレーム6を、リードフレーム6における各半導体装置形成領域xの外周に沿って切断することにより得られるものであるから、リードであるといえる。また、引用発明において、第3導体3は、第1導体1及び第2導体2の上方に存在するものであるから、第1導体1は相対的に下方に存在するものである。したがって、引用発明の「第1導体1」は本願補正発明の「第2の下側リード」に相当する。 (カ)引用発明の「第2導体2」及び「第1導体1」の集合体は、下側リードで構成されるものであるから、下側リードフレームであるといえる。したがって、引用発明の「第2導体2」及び「第1導体1」の集合体は、本願補正発明の「第1の下側リードと第2の下側リードとを含む下側リードフレーム」に相当する。 (キ)引用発明において、「第1導体1は、第3導体3を介して半導体チップ4の一面40の電極と導通接続されて」いるものであるから、引用発明の「第3導体3」は、半導体チップ4の一面40の電極と導通接続されているものである。また、引用発明の「第3導体3」は、板状の部材が断面L字状に折り曲げられた形状のものである。したがって、引用発明の「第3導体3」はリードであるといえる。さらに、引用発明において、第3導体3は、第1導体1及び第2導体2の上方に存在するものであるから、第3導体3は相対的に上方に存在するものである。したがって、引用発明の「第3導体3」は本願補正発明の「上側リード」に相当する。 (ク)引用発明の「第3導体3」は、上側リードで構成されるものであるから、上側リードフレームであるといえる。したがって、引用発明の「第3導体3」は本願補正発明の「上側リードを含む上側リードフレーム」に相当する。 (ケ)引用発明の「第3導体3は、・・・第1部分としての基部30と第2部分としての折り曲げ部31とを有する断面L字状の形態とされて」いることは、本願補正発明の「前記上側リードの一部はL字状に屈曲されて」いることに相当する。 (コ)引用発明の「第3導体3」は、「第1部分としての基部30と第2部分としての折り曲げ部31とを有する断面L字状の形態とされており、折り曲げ部31の先端面31aは、ハンダなどにより第1導体1の一面10と接合されて」いるものであるから、ハンダなどにより第1導体1の一面10と接合することで、第1導体1(本願補正発明の「下側リードフレーム」の一部に対応)から第3導体3を支持しているものであるといえる。そして、第1導体1と第3導体3との接合は、第1導体1と第3導体3と半導体チップ4とが所望の位置関係になるように行われていることは明らかである。 したがって、引用発明の「第3導体3は、・・・第1部分としての基部30と第2部分としての折り曲げ部31とを有する断面L字状の形態とされており、折り曲げ部31の先端面31aは、ハンダなどにより第1導体1の一面10と接合されて」いることは、本願補正発明の「前記L字状の上側リードは、前記ダイとの関係で所望の位置で前記下側リードフレームから前記上側リードフレームを支持」することに相当する。 (サ)引用発明の「第1導体1は、第3導体3を介して半導体チップ4の一面40の電極と導通接続されて」いることは、第3導体3が半導体チップ4の一面40の電極(本願補正発明の「ダイの第2の面上のダイ接点」に相当)及び第1導体1(本願補正発明の「第2の下側リード」に相当)と電気的に接続されていることになるので、本願補正発明の「前記L字状の上側リードは、前記ダイの第2の面上のダイ接点と前記第2の下側リードとの間で電気的に接続されて」いることに相当する。 (シ)引用発明の「樹脂パッケージ5の底面50」は、半導体装置X1の面となるものであるから、本願補正発明の「半導体パッケージの第1の面」に相当する。また、引用発明の「第1導体1に設けられた凸部12の表面12a」及び「第2導体2に設けられた凸部22の表面22a」は、樹脂パッケージ5の底面50から露出して、それぞれ第1端子部及び第2端子部を構成するものであるから、本願補正発明の「パッケージの接点」に相当する。 そして、引用発明において、「第1導体1は、第3導体3を介して半導体チップ4の一面40の電極と導通接続されて」いるものであるから、第3導体3は、半導体チップ4の一面40の電極及び第1導体1と電気的に接続されていることにより、第1導体1に設けられた凸部12の表面12aを、半導体チップ4の一面40の電極に導通接続された第1端子部として機能させるものである。 したがって、引用発明の「第3導体3」(本願補正発明の「上側リード」に相当)は、本願補正発明の「パッケージの接点は前記半導体パッケージの第1の面上にあ」るものとするものであるといえる。 (ス)引用発明の「第3導体3は、折り曲げ部31が第1導体1と接続される部分に対して、半導体チップ4を介した反対側では、第1導体1や第2導体2に接続するものではなく、」ということは、本願補正発明の「前記L字状の上側リードは、・・・前記ダイの前記第2の下側リードの反対側においては別の下側リードと電気的に接続されておらず、」ということに相当する。 (セ)「上側リードフレーム」について、本願補正発明では「前記下側リードフレームに対向する面上に1つ以上の溝部が形成されている」のに対し、引用発明ではその旨の特定はされていない。 (ソ)引用発明の「第1導体1、第2導体2、第3導体3、半導体チップ4・・・を有する半導体装置X1」は、本願補正発明の「ダイと、・・・前記下側リードフレームと、・・・前記上側リードフレームと、を含む、半導体パッケージ」に相当する。 そうすると、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違する。 <一致点> 「半導体パッケージであって、 ダイと、 第1の下側リードと第2の下側リードとを含む下側リードフレームであって、前記第1の下側リードは、ダイの第1の面上のダイ接点に電気的に接続されている、前記下側リードフレームと、 上側リードを含む上側リードフレームであって、 前記上側リードの一部はL字状に屈曲されており、 前記L字状の上側リードは、前記ダイとの関係で所望の位置で前記下側リードフレームから前記上側リードフレームを支持し 前記L字状の上側リードは、前記ダイの第2の面上のダイ接点と前記第2の下側リードとの間で電気的に接続されており、かつ、前記ダイの前記第2の下側リードの反対側においては別の下側リードと電気的に接続されておらず、それによりパッケージの接点は前記半導体パッケージの第1の面上にある前記上側リードフレームと、 を含む、半導体パッケージ。」 <相違点> 「上側リードフレーム」について、本願補正発明では「前記下側リードフレームに対向する面上に1つ以上の溝部が形成されている」のに対し、引用発明ではその旨の特定はされていない点。 (4)判断 上記相違点について検討する。 リードフレームとダイとを含む半導体パッケージにおいて、熱サイクル時のリードフレームとダイの接合部分における適合性の悪化や応力の蓄積が問題となることは、周知の課題であるから、引用発明において、当該周知の課題を解決するために、引用例2に記載された技術事項を適用することで、半導体チップ4の一面40とハンダなどにより接合される第3導体3の基部30の他面30aに溝を形成することは、当業者が容易に想到し得ることである。 そして、引用発明における第3導体3の基部30の他面30aは、第3導体3の基部30の両面のうち、第1導体1及び第2導体2が存在する方の面であるから、第3導体3(本願補正発明の「上側リードフレーム」に相当)の面のうち、第1導体1及び第2導体2(本願補正発明の「下側リードフレーム」に相当)に対向する面であるといえる。 また、本願補正発明の作用効果も、引用発明と引用例2に記載された技術事項から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。 なお、審判請求人は、審判請求書において、「また、引用文献2の段落[0017]では、『図3に示すように、上部リードフレーム10の下面を部分的にエッチング処理することで、十字形の溝105が形成されている。』との記載があるが、図3を参照すると、この溝105は上部リードフレーム10を貫通する貫通孔であることが分かる。溝105が貫通孔であることから、本願発明における溝部とは構成が全く異なり、本願発明のように、熱サイクル時における上側リードと半導体ダイとの間の適合性を向上させることができるという効果を奏することはできない。」との主張をしている。 しかし、上記「(2)イ.(g)」によれば、引用例2における溝105は、上部リードフレーム10を厚さ0.002インチから0.006インチにエッチング処理することで形成されるものであるから、エッチング処理後の溝105の厚さが0.002インチから0.006インチであることになり、溝105は貫通孔ではない。 また、引用例2において、上部リードフレームを下から見た図である図3に記載される十字形の溝105が貫通孔であれば、引用例2の上部リードフレームの斜視図を表す図1Aにおいて、上部リードフレームの上面側に十字形の溝105が記載されているはずであるところ、上記「(2)イ.(j)」によれば、図1Aには十字形の溝105が記載されていないことからも、溝105は貫通孔ではない。 さらに、引用例2において、十字形の溝105が貫通孔であれば、半導体パッケージの断面図を表す図5において、溝105は上部リードフレームの両面を貫通するものとして記載されているはずであるところ、上記「(2)イ.(l)」によれば、図5において、溝105は上部リードフレームの両面を貫通するものとして記載されていないことからも、溝105は貫通孔ではない。 そして、引用例2に記載された技術事項は、上部リードフレームの下面に溝を形成することで、熱サイクル時の半導体ダイと上部リードフレームとの間の適合性が向上するものである以上、熱サイクル時における上側リードと半導体ダイとの間の適合性を向上させることができるという効果を奏することは、当業者が十分に予測できたものである。 したがって、審判請求人の上記主張を採用することはできない。 よって、本願補正発明は、引用発明及び引用例2に記載された技術事項により当業者が容易になし得たものである。 (5)補正の適否についてのむすび 以上のとおり、本願補正発明は、引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.本件補正についてのむすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成30年1月22日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年8月23日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 1.」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。 2.引用例 原査定の拒絶の理由で引用された引用例1及びその記載事項は、上記「第2 2.(2)ア.」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明において、「上側リードフレーム」について、「前記下側リードフレームに対向する面上に1つ以上の溝部が形成されている」との限定(上記相違点に対応)を削除したものに相当する。 そうすると、本願発明の発明特定事項は、上記「第2 2.(3)」に記載したとおり、引用例1に記載された発明と全て一致し相違する点はないので、本願発明は引用例1に記載された発明である。 4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2019-03-29 |
結審通知日 | 2019-04-02 |
審決日 | 2019-04-15 |
出願番号 | 特願2014-173498(P2014-173498) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L) P 1 8・ 575- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ▲吉▼澤 雅博、深沢 正志 |
特許庁審判長 |
國分 直樹 |
特許庁審判官 |
東 昌秋 山澤 宏 |
発明の名称 | 半導体パッケージおよび方法 |
代理人 | 舛谷 威志 |