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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1354862
審判番号 不服2018-8474  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-20 
確定日 2019-09-05 
事件の表示 特願2013-273204「回路基板及び回路基板形成装置並びに回路基板形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月 9日出願公開、特開2015-128107〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年12月27日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 8月24日付け:拒絶理由通知書
平成29年10月27日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 3月13日付け:拒絶査定
平成30年 6月20日 :審判請求書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成29年10月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
複数の電子部品が実装され、導電体の配線パターンを有する回路基板であって、
複数の前記電子部品が設けられる区間における前記配線パターンが形成されている領域のうち、前記区間の距離以内の長さを有するスリットを少なくとも1つ設け、
前記スリットは、当該回路基板の一方の面及び該一方の面と反対側の面の両面を貫通し、半田が充填され、
前記スリットの長さ方向の形状は、くの字に曲がっている回路基板。」

第3 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1又は2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1.特開平9-107162号公報
引用文献2.実願平4-83238号(実開平6-50376号)のCD-ROM

第4 引用文献2の記載及び引用発明
1 引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。以下同様。)。
「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、電子機器の配線に用いられるプリント基板に係り、特にリレー等のスイッチング素子が実装された自動車用パワーウィンドウスイッチ等のプリント基板に関する。」

「【0016】
プリント基板は、絶縁材により構成された基板本体1を有しており、基板本体1上には配線パターン2が形成されている。そして、配線パターン2は、両端に素子を挿入してはんだ付けするための穴8が穿設されているランド部3を有しており、ランド部3の穴8に隣接する部分3aはレジスト被膜が除去されている。
更に、配線パターン2のランド部3の間を連結する連結部9には、一方のランド部3から他方のランド部3にかけて長孔10が穿設されており、長孔10と同形状の貫通孔11が基板本体1に穿設されている。そして、貫通孔11の壁面はメッキされ配設パターン2と接続するように導通部12を構成している。
【0017】
また、導通部12には、図4に示すように、フローはんだ工程によりはんだ13が溶着されており、これにより配線パターン2の占有面積を増加せずに配線の断面積を増加し、素子の実装面積を低下することなくかつコストの上昇を伴わずに大電流を流せるようになっている。」


2 上記記載から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
(1)引用文献2に記載された技術は、電子機器の配線に用いられるプリント基板に関するものである(【0001】)。

(2)プリント基板は、基板本体1上には配線パターン2が形成されており、
配線パターン2は、両端に素子を挿入してはんだ付けするための穴8が穿設されているランド部3を有しており、
配線パターン2のランド部3の間を連結する連結部9には、一方のランド部3から他方のランド部3にかけて長孔10が穿設されており、長孔10と同形状の貫通孔11が基板本体1に穿設されている(【0016】)。

(3)貫通孔11の壁面はメッキされ配設パターン2と接続するように導通部12を構成している(【0016】)。

(4)導通部12には、フローはんだ工程によりはんだ13が溶着されている(【0017】)。

(5)図2及び図3より、連結部9及び貫通孔11は、直線状であることが見て取れる。

(6)図3より、貫通孔11は、基板本体1の一方の面及び該一方の面と反対側の面の両面を貫通することが見て取れる。

上記(1)-(6)から、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「電子機器の配線に用いられる、基板本体1上には配線パターン2が形成されているプリント基板であって、
配線パターン2は、両端に素子を挿入してはんだ付けするための穴8が穿設されているランド部3を有しており、
配線パターン2のランド部3の間を連結する連結部9には、一方のランド部3から他方のランド部3にかけて長孔10が穿設されており、長孔10と同形状の貫通孔11が基板本体1に穿設されており、
貫通孔11は、基板本体1の一方の面及び該一方の面と反対側の面の両面を貫通するものであり、
貫通孔11の壁面はメッキされ配設パターン2と接続するように導通部12を構成し、
導通部12には、フローはんだ工程によりはんだ13が溶着されており、
連結部9及び貫通孔11は、直線状である、
プリント基板。」

第5 対比
本願発明と引用発明を対比する。
1 引用発明は「電子機器の配線に用いられる」「プリント基板」であるから、該プリント基板に「はんだ付け」される「素子」は、電子部品であるといえる。
そして、引用発明の「配線パターン2は、両端に素子を挿入してはんだ付けするための穴8が穿設されているランド部3を有して」いるので、「配線パターン2が形成されているプリント基板」は、複数の「素子」が実装されることが明らかであり、引用発明の「配線パターン2が形成されているプリント基板」は、本願発明の「複数の電子部品が実装され、導電体の配線パターンを有する回路基板」に相当する。

2 引用発明の「両端に素子を挿入してはんだ付けするための穴8が穿設されているランド部3」及び「ランド部3の間を連結する連結部9」を有する「配線パターン2」は、複数の「素子」が設けられる区間における「配線パターン2」であるといえる。
また、引用発明の「両端に素子を挿入してはんだ付けするための穴8が穿設されているランド部3」「の間を連結する連結部9」に設けられた「貫通孔11」は、「素子を挿入してはんだ付けするための穴8」の間の距離以内の長さであるので、「配線パターン2」が形成されている領域のうち、複数の「素子」が設けられる区間の距離以内の長さを有する孔(スリット)であるといえる。
したがって、引用発明の「配線パターン2のランド部3の間を連結する連結部9には、一方のランド部3から他方のランド部3にかけて長孔10が穿設されており、長孔10と同形状の貫通孔11が基板本体1に穿設されて」いることは、本願発明の「複数の前記電子部品が設けられる区間における前記配線パターンが形成されている領域のうち、前記区間の距離以内の長さを有するスリットを少なくとも1つ設け」ることに相当する。

3 引用発明の「貫通孔11は、基板本体1の一方の面及び該一方の面と反対側の面の両面を貫通するものであり、貫通孔11の壁面はメッキされ配設パターン2と接続するように導通部12を構成し、導通部12には、フローはんだ工程によりはんだ13が溶着されて」いるので、引用発明の「貫通孔11」は、本願発明の「当該回路基板の一方の面及び該一方の面と反対側の面の両面を貫通し、半田が充填され」る「前記スリット」に相当する。

すると、本願発明と引用発明とは、次の(一致点)及び(相違点)を有する。
(一致点)
「複数の電子部品が実装され、導電体の配線パターンを有する回路基板であって、
複数の前記電子部品が設けられる区間における前記配線パターンが形成されている領域のうち、前記区間の距離以内の長さを有するスリットを少なくとも1つ設け、
前記スリットは、当該回路基板の一方の面及び該一方の面と反対側の面の両面を貫通し、半田が充填されている回路基板。」

(相違点)
本願発明は、「スリットの長さ方向の形状は、くの字に曲がっている」のに対して、引用発明は、「貫通孔11」が、「直線状である」である点。

第6 判断
上記相違点について検討する。
複数の電子部品が実装される回路基板の配線パターンには、直線状のみならず、L字状、T字状、くの字状など様々な形状の配線パターンが存在するすることは、技術常識であり、
引用発明の「プリント基板」においても、くの字状などを含む様々な形状の配線パターンに合わせてランド部3の間を連結する「連結部9」を設けることは、適宜なし得る設計的事項である。
そして、引用発明の「貫通孔11」は、「一方のランド部3から他方のランド部3にかけて」「基板本体1に穿設され」るものであるから、くの字状の「連結部9」を設けたものにおいて、該「連結部9」の一方のランド部3から他方のランド部3にかけて「貫通孔11」を設けることにより、「貫通孔11」の長さ方向の形状を、くの字に曲った形状とし、上記相違点に係る本願発明の構成を得ることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明が奏する効果は、引用発明から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、 本願の請求項1に係る発明は、引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-07-05 
結審通知日 2019-07-09 
審決日 2019-07-23 
出願番号 特願2013-273204(P2013-273204)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 原田 貴志  
特許庁審判長 國分 直樹
特許庁審判官 須原 宏光
五十嵐 努
発明の名称 回路基板及び回路基板形成装置並びに回路基板形成方法  
代理人 川上 美紀  
代理人 藤田 考晴  
代理人 三苫 貴織  

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