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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1354863
審判番号 不服2018-9255  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-04 
確定日 2019-09-05 
事件の表示 特願2014- 37001号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月 7日出願公開、特開2015-159966号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成26年2月27日の出願であって、平成29年10月13日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月12日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成30年4月3日付け(送達日:同年同月10日)で拒絶査定がなされ、それに対して、同年7月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、これに対し、当審において、平成31年4月15日付けで拒絶の理由が通知され、令和1年6月12日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明

本願請求項1に係る発明は、令和1年6月12日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載の事項により特定される発明(以下、「本願発明」という。)であり、分説してAないしE-1の符号を付与すると、次のとおりのものである(なお、下線は上記手続補正書による補正箇所を示す。)。

「【請求項1】
A 遊技を行うことが可能な遊技機であって、
B 可動領域の少なくとも一部が重複する複数の演出用可動体と、
C 前記複数の演出用可動体を動作させる駆動手段と、
D 前記駆動手段による前記複数の演出用可動体の動作を制御する動作制御手段と、
E 前記複数の演出用可動体のうち少なくともいずれか1つの動作状態を監視可能な動作状態監視手段と、
を備え、
E-1 前記動作状態監視手段は、前記複数の演出用可動体に含まれる第1演出用可動体と第2演出用可動体との少なくともいずれか一方が、動作により重複する可動領域に及ぶ際に、前記第1演出用可動体及び前記第2演出用可動体の少なくともいずれか他方の動作状態を監視し、
D-1 前記動作制御手段は、前記動作状態監視手段の監視内容にもとづいて、前記第1演出用可動体に対して所定演出動作を実行させることで、重複する可動領域に位置している前記第2演出用可動体に前記第1演出用可動体が干渉してしまう場合、前記第2演出用可動体に対して前記所定演出動作と連動する所定退避動作を実行させることで、前記第2演出用可動体を重複する可動領域から退避させ、
D-2 前記第1演出用可動体による前記所定演出動作と前記第2演出用可動体による前記所定退避動作とが連動して実行されることで、前記第1演出用可動体と前記第2演出用可動体とを用いた一体的な演出を実行可能である
A ことを特徴とする遊技機。」

第3 平成31年4月15日付け拒絶理由の概要

当審による平成31年4月15日付け拒絶理由は、請求項1に係る発明に対する以下の拒絶理由を含むものである。

請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。


刊行物1:特開2012-90654号公報

第4 刊行物に記載された事項

1 刊行物1

(1) 記載事項

刊行物1には以下の記載がある(下線は当審が付与した。以下同様。)。

刊1-ア
「【0001】
本発明は、遊技盤上に複数の可動役物を備えて、当該可動役物を用いた演出をおこなうぱちんこ遊技機に関する。」

刊1-イ
「【0031】
画像表示部104の遊技者から見て前面となる位置には、第1可動役物130aと第2可動役物130bとが配置されている。第1可動役物130aと第2可動役物130bとは、ソレノイドやモータなどの駆動部(図2-1符合200や230などを参照)を備えており、この駆動部の駆動によって駆動される。
【0032】
たとえば、第1可動役物130aは、第1可動役物130aを用いた演出(以下「第1役物演出」という)時に、画像表示部104上方より下方へスライドし、画像表示部104の前面に進出する(図2-2参照)。また、第1可動役物130aは、第1役物演出以外のときには、画像表示部104上方に設けられた収容スペースに収容される(図1に示した状態となる)。
【0033】
また、第2可動役物130bは、第2可動役物130bを用いた演出(以下「第2役物演出」という)時に、画像表示部104下方より上方へスライドし、画像表示部104の前面に進出する(図2-3参照)。また、第2可動役物130bは、第2役物演出以外のときには、画像表示部104下方に設けられた収容スペースに収容される(図1に示した状態となる)。また、第1可動役物130aおよび第2可動役物130bには、装飾用のランプ(図2-1?図2-3中符号221)などを設けて、第1役物演出時や第2役物演出時などに点灯や点滅させるようにしてもよい。」

刊1-ウ
「【0038】
(可動役物の構成)
つぎに、図2-1を用いて、第1可動役物130aおよび第2可動役物130bの構成について説明する。図2-1は、本実施の形態1の可動役物の正面図(その1)である。
【0039】
図2-1に示すように、第1可動役物130aは、第1駆動部200と、第1スライドギア210と、第1装飾部材220とを備える。ここで、第1駆動部200は、駆動モータ201と、駆動ギア202と、従動ギア203とからなる。駆動モータ201は、供給された電気エネルギーを機械エネルギーに変換して、駆動ギア202を駆動回転させる。従動ギア203は、駆動ギア202に歯合連結し、駆動ギア202の回転力によって従動回転する。
【0040】
第1スライドギア210は、従動ギア203に歯合連結し、従動ギア203の回転に伴って、第1可動役物130aを往復動作させる。図2-1において、第1スライドギア210の上方には第1センサS1が設けられている。ぱちんこ遊技機100は、第1役物演出以外のときは、第1センサS1に第1スライドギア210の一端が接触する図2-1に示す位置(以下この位置を、第1可動役物130aの「退避位置」という)まで第1可動役物130aを退避させる。退避位置は、第1可動役物130aの原点位置とすることもできる。また、ここで、第1可動役物130aの退避位置以外の任意の位置を第1可動役物130aの「進出位置」という。
【0041】
上記では第1センサS1は第1スライドギア210が接触することにより第1可動役物130aが退避位置となったかを検出することにしたが、第1センサS1にはフォトセンサなどを採用してもよい。公知の技術のため詳細な説明を省略するが、フォトセンサは同方向を向いた受光素子と発光素子とを備える。フォトセンサは発光素子が発光した光を第1スライドギア210に当てて、反射してくる光の有無を受光素子で検知することにより、第1可動役物130aが退避位置にあるか否かを検出することができる。
【0042】
第1スライドギア210には、第1装飾部材220が固設される。第1装飾部材220にはランプ221などが設けられ、たとえば、第1役物演出時に点灯や点滅をおこなう。また、第1装飾部材220にはローラ222が設けられ、当該ローラ222が枠体(不図示)に設けられたガイドレール223に沿って移動可能になっている。図示の例では第1装飾部材220の形状を円形としたがこれに限らず、任意の形状とすることができる。
【0043】
また、図2-1に示すように、第2可動役物130bは、第2駆動部230と、第2スライドギア240と、第2装飾部材250とを備える。ここで、第2駆動部230は、駆動モータ231と、駆動ギア232と、従動ギア233とからなる。駆動モータ231は、供給された電気エネルギーを機械エネルギーに変換して、駆動ギア232を駆動回転させる。従動ギア233は、駆動ギア232に歯合連結し、駆動ギア232の回転力によって従動回転する。
【0044】
第2スライドギア240は、従動ギア233に歯合連結し、従動ギア233の回転に伴って、第2可動役物130bを往復動作させる。図2-1において、第2スライドギア240の下方には第2センサS2が設けられている。ぱちんこ遊技機100は、第2役物演出以外のときは、第2センサS2に第2スライドギア240の一端が接触する図2-1に示す位置(以下この位置を、第2可動役物130bの「退避位置」という)まで第2可動役物130bを退避させる。退避位置は、第2可動役物130bの原点位置とすることもできる。また、ここで、第2可動役物130bの退避位置以外の任意の位置を第2可動役物130bの「進出位置」という。
【0045】
上記では第2センサS2は第2スライドギア240が接触することにより第2可動役物130bが退避位置となったかを検出することにしたが、第1センサS1と同様に、第2センサS2にはフォトセンサなどを採用してもよい。
【0046】
第2スライドギア240には、第2装飾部材250が固設される。第2装飾部材250にはランプ221などが設けられ、たとえば、第2役物演出時に点灯や点滅をおこなう。また、第2装飾部材250にはローラ252が設けられ、当該ローラ252が枠体(不図示)に設けられたガイドレール253に沿って移動可能になっている。図示の例では第2装飾部材250の形状を円形としたがこれに限らず、任意の形状とすることができる。
【0047】
(可動役物の動作)
つぎに、前述の図2-1、後述の図2-2および図2-3を用いて、第1可動役物130aおよび第2可動役物130bの動作について説明する。図2-2は、本実施の形態1の可動役物の正面図(その2)である。図2-3は、本実施の形態1の可動役物の正面図(その3)である。
【0048】
前述したように、第1可動役物130aは、退避位置にあるとき、画像表示部104の上方に設けられた収納スペースに収納され、第1センサS1により検出される。第1役物演出がおこなわれると、第1可動役物130aは図2-1において下方へとスライドする。そして、第1可動役物130aは、図2-2において第1可動役物130aの最下部が点線A上となる位置(以下この位置を、第1可動役物130aの「演出位置」という)まで移動する。第1役物演出では、図2-2に示すように、第1可動役物130aは画像表示部104の前面となる演出位置へ進出してきて遊技を演出する。第1可動役物130aは、第1役物演出が終了すると図2-2において上方へとスライドし、図2-1に示した退避位置へと移動する。
【0049】
また、前述したように、第2可動役物130bは、退避位置にあるとき、画像表示部104の下方に設けられた収納スペースに収納され、第2センサS2により検出される。第2役物演出がおこなわれると、第2可動役物130bは図2-1において上方へとスライドする。そして、第2可動役物130bは、図2-3において第2可動役物130bの最上部が点線B上となる位置(以下この位置を、第2可動役物130bの「演出位置」という)まで移動する。第2役物演出では、図2-3に示すように、第2可動役物130bは画像表示部104の前面となる演出位置へ進出してきて遊技を演出する。第2可動役物130bは、第2役物演出が終了すると図2-3において下方へとスライドし、図2-1に示した退避位置へと移動する。
【0050】
ところで、第1可動役物130aと第2可動役物130bとは演出効果を高めようと大型化を図った役物であるために、図2-3において点線Bは点線Aよりも上となる。このため、第1可動役物130aと第2可動役物130bとが共に演出位置へ移動すると、第1可動役物130aと第2可動役物130bとが物理的に干渉してしまう。この物理的な干渉は、第1可動役物130aと第2可動役物130bとの機構的な破損につながる恐れがある。そこで、ぱちんこ遊技機100では、この物理的な干渉を回避するように、第1可動役物130aと第2可動役物130bとの駆動を制御する。」

刊1-エ
「【0085】
(ランプ制御部の機能的構成)
つぎに、第1可動役物130aおよび第2可動役物130bの駆動制御をおこなうランプ制御部302cの機能的構成について説明する。図4は、本実施の形態1のランプ制御部の機能的構成を示すブロック図である。図4に示すように、ランプ制御部302cは、受信部401と、検出部402と、判定部403と、駆動制御部404とを備えている。
【0086】
たとえば、以下で説明する受信部401と、検出部402と、判定部403と、駆動制御部404との各機能部は、ランプ制御部302cのCPU361がROM362に記憶されたプログラムを実行することによりその機能を実現する。
【0087】
受信部401は、可動役物(本実施の形態1では第1可動役物130aおよび第2可動役物130b)の駆動指示を受信する機能を有する。たとえば、受信部401は、第1可動役物130aまたは第2可動役物130bの駆動を指示する駆動指示コマンドを演出統括部302aから受信する。受信部401は、駆動指示コマンドを受信すると、この駆動指示コマンドに基づく情報を判定部403へ出力する。
【0088】
検出部402は、可動役物(本実施の形態1では第1可動役物130aおよび第2可動役物130b)の位置検出をおこなう機能を有する。たとえば、図4に示すように、検出部402は、第1センサS1および第2センサS2に接続される。そして、第1センサS1および第2センサS2からの検出信号の入力を受け付けて、第1可動役物130aおよび第2可動役物130bが退避位置であるか否かを検出する。
【0089】
また、本実施の形態1では図示を省略するが、第1可動役物130aおよび第2可動役物130bのそれぞれが演出位置であるか否かを検出するセンサを検出部402に接続してもよい。この場合、検出部402は、第1可動役物130aおよび第2可動役物130bのそれぞれが演出位置であるか否かを検出することができる。
【0090】
また、検出部402は、第1駆動部200と第2駆動部230とに接続され、第1可動役物130aおよび第2可動役物130bの駆動状態を検出してもよい。具体的には、検出部402は、ロータリーエンコーダなどにより駆動モータ201,231の回転を検出する。これにより、検出部402は、第1駆動部200と第2駆動部230とが駆動しているか、どれだけ駆動したか、などを検出することができる。検出部402は、上記により位置検出や駆動状態の検出をおこなうと、この検出結果を判定部403へ出力する。
【0091】
判定部403は、駆動指示があった場合に、検出部402による検出結果に基づいて、駆動指示により指示された駆動対象の可動役物を駆動させるか否かを判定する機能を有する。たとえば、判定部403は、駆動対象の可動役物とは異なる他の可動役物が、当該可動役物の演出位置でない場合(たとえば当該可動役物の退避位置である場合)に、駆動対象の可動役物を駆動させると判定する。また、たとえば、判定部403は、他の可動役物が、当該可動役物の演出位置である場合に、駆動対象の可動役物を駆動させないと判定してもよい。
【0092】
検出部402が可動役物の駆動状態を検出する場合には、判定部403は、他の可動役物が駆動中でない場合には駆動対象の可動役物を駆動させると判定し、他の可動役物が駆動中である場合には駆動対象の可動役物を駆動させないと判定してもよい。判定部403は、上記により駆動対象の可動役物を駆動させるか否かを判定すると、この判定結果を駆動制御部404へ出力する。
【0093】
駆動制御部404は、判定部403により駆動対象の可動役物を駆動させると判定された場合に、駆動対象の可動役物の駆動部(本実施の形態1では第1駆動部200、第2駆動部230)を制御して、当該可動役物を駆動させる機能を有する。たとえば、駆動対象の可動役物が第1可動役物130aであれば、駆動制御部404は第1駆動部200を制御して、第1可動役物130aを駆動させる。駆動対象の可動役物が第2可動役物130bであれば、駆動制御部404は第2駆動部230を制御して、第2可動役物130bを駆動させる。」

刊1-オ
「【0117】
また、ぱちんこ遊技機100は、第1可動役物130aまたは第2可動役物130bを駆動させる際に、他方の可動役物の位置に応じて、そのまま駆動させたり、駆動を待機させたりする。これにより、ぱちんこ遊技機100は、一方の可動役物が演出位置に進出している際には他方の可動役物を駆動させず、第1可動役物130aと第2可動役物130bとが物理的に干渉してしまうことを防止して、第1可動役物130aおよび第2可動役物130bの破損を防止することができる。」

刊1-カ
「【図1】



刊1-キ
「【図2-1】



刊1-ク
「【図2-2】



刊1-ケ
「【図2-3】



刊1-コ
「【図4】



(2) 引用発明

上記刊1-アないし刊1-コの記載を含む刊行物1に記載された事項を総合すると、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「a 遊技盤上に複数の可動役物を備えて、当該可動役物を用いた演出をおこなうぱちんこ遊技機であって(【0001】、【図1】)、
b 第1可動役物130aと第2可動役物130bとが配置され、第1可動役物130aと第2可動役物130bとが共に演出位置へ移動すると、第1可動役物130aと第2可動役物130bとが物理的に干渉するものであり(【0031】、【0050】、【図2-1】、【図2-2】、【図2-3】)、
c 第1可動役物130aと第2可動役物130bとは、ソレノイドやモータなどの駆動部を備えており、この駆動部の駆動によって駆動され、第1可動役物130aは、第1駆動部200を備え、第2可動役物130bは、第2駆動部230を備え(【0031】、【0039】、【0043】、【図2-1】、【図2-2】、【図2-3】)、
d 第1可動役物130aおよび第2可動役物130bの駆動制御をおこなうランプ制御部302cは、検出部402と、判定部403と、駆動制御部404とを備え、駆動制御部404は、判定部403により駆動対象の可動役物を駆動させると判定された場合に、駆動対象の可動役物が第1可動役物130aであれば、第1駆動部200を制御して、第1可動役物130aを駆動させ、駆動対象の可動役物が第2可動役物130bであれば、第2駆動部230を制御して、第2可動役物130bを駆動させ(【0085】、【0093】、【図4】)、
e,e-1 検出部402は、第1可動役物130aおよび第2可動役物130bの位置検出をおこなう機能を有し、第1可動役物130aおよび第2可動役物130bのそれぞれが演出位置であるか否かを検出するセンサを検出部402に接続し、上記により位置検出をおこなうと、この検出結果を判定部403へ出力し、判定部403は、駆動指示があった場合に、検出部402による検出結果に基づいて、駆動指示により指示された駆動対象の可動役物を駆動させるか否かを判定する機能を有し(【0088】-【0091】)、
d-1 第1可動役物130aまたは第2可動役物130bを駆動させる際に、他方の可動役物の位置に応じて、そのまま駆動させたり、駆動を待機させたりし、一方の可動役物が演出位置に進出している際には他方の可動役物を駆動させず、第1可動役物130aと第2可動役物130bとが物理的に干渉してしまうことを防止して、第1可動役物130aおよび第2可動役物130bの破損を防止することができる(【0117】)
a ぱちんこ遊技機。」

第5 対比

1 本願発明と引用発明との対比

本願発明と引用発明とを対比する。

(1) 本願発明のAの特定事項について
引用発明の構成aにおける「ぱちんこ遊技機」は、遊技を行うことが可能であることは明らかであるから、本願発明の「遊技機」に相当する。

(2) 本願発明のBの特定事項について
ア 引用発明の構成bにおける「第1可動役物130a」と「第2可動役物130b」は、本願発明の「複数の演出用可動体」に相当する。
イ 引用発明の構成bにおける「第1可動役物130aと第2可動役物130bとが共に演出位置へ移動すると、第1可動役物130aと第2可動役物130bとが物理的に干渉する」ことは、本願発明の「複数の演出用可動体」の「可動領域の少なくとも一部が重複する」ことに相当する。
ウ よって、引用発明の「共に演出位置へ移動すると、」「物理的に干渉する」「第1可動役物130aと第2可動役物130b」は、本願発明の「可動領域の少なくとも一部が重複する複数の演出用可動体」に相当する。

(3) 本願発明のCの特定事項について
引用発明の構成cにおける「第1可動役物130aと第2可動役物130b」を「駆動」する「ソレノイドやモータなどの駆動部」は、本願発明の「前記複数の演出用可動体を動作させる駆動手段」に相当する。

(4) 本願発明のDの特定事項について
ア 引用発明の構成dにおける「ランプ制御部302c」が備える「駆動制御部404」は、構成d-1において特定されるように、「駆動対象の可動役物が第1可動役物130aであれば、第1駆動部200を制御して、第1可動役物130aを駆動させ、駆動対象の可動役物が第2可動役物130bであれば、第2駆動部230を制御して、第2可動役物130bを駆動させ」るものである。
イ よって、引用発明の「駆動対象の可動役物が第1可動役物130aであれば、第1駆動部200を制御して、第1可動役物130aを駆動させ、駆動対象の可動役物が第2可動役物130bであれば、第2駆動部230を制御して、第2可動役物130bを駆動させ」る「駆動制御部404」は、本願発明の「前記駆動手段による前記複数の演出用可動体の動作を制御する動作制御手段」に相当する。

(5) 本願発明のEの特定事項について
ア 引用発明の構成dにおける「ランプ制御部302c」が備える「検出部402」は、構成e,e-1において特定されるように、「第1可動役物130aおよび第2可動役物130bの位置検出をおこなう機能を有」し、「第1可動役物130aおよび第2可動役物130bのそれぞれが演出位置であるか否かを検出するセンサ」が「接続」され、「位置検出をおこなうと、この検出結果を判定部403へ出力」するものである。
イ そして、引用発明の構成e,e-1における「演出位置であるか否か」の「検出」は、その「検出」に基づいて、構成d-1において特定された「他方の可動役物の位置に応じて、そのまま駆動させたり、駆動を待機させたりし、一方の可動役物が演出位置に進出している際には他方の可動役物を駆動させず、第1可動役物130aと第2可動役物130bとが物理的に干渉してしまうことを防止」することを実現するものであるから、引用発明の構成e,e-1における「第1可動役物130aおよび第2可動役物130bのそれぞれが演出位置であるか否か」の「検出」は、本願発明における「複数の演出用可動体のうち少なくともいずれか1つの動作状態」の「監視」に相当し、引用発明の「検出部402」は、本願発明の「動作状態監視手段」に相当する。
ウ よって、引用発明の構成e,e-1における「第1可動役物130aおよび第2可動役物130bの位置検出をおこなう機能を有」し、「第1可動役物130aおよび第2可動役物130bのそれぞれが演出位置であるか否かを検出するセンサ」が「接続」された「検出部402」は、本願発明の「前記複数の演出用可動体のうち少なくともいずれか1つの動作状態を監視可能な動作状態監視手段」に相当する。

(6) 本願発明のE-1の特定事項について
ア 引用発明の「第1可動役物130a」及び「第2可動役物130b」は、それぞれ、本願発明の「第1演出用可動体」及び「第2演出用可動体」に相当する。
イ 引用発明の構成b及び構成d-1において、「第1可動役物130aと第2可動役物130bとが共に」「移動すると」「物理的に干渉する」「演出位置に」「一方の可動役物が」「進出している際」は、本願発明の「前記複数の演出用可動体に含まれる第1演出用可動体と第2演出用可動体との少なくともいずれか一方が、動作により重複する可動領域に及ぶ際」に相当する。
ウ 引用発明の構成e,e-1における「検出部402」が「第1可動役物130aおよび第2可動役物130bのそれぞれが演出位置であるか否かを検出」することは、本願発明の「前記動作状態監視手段」が「前記第1演出用可動体及び前記第2演出用可動体の少なくともいずれか他方の動作状態を監視」することに相当する。
エ よって、引用発明の「検出部402」が「第1可動役物130aと第2可動役物130bとが共に」「移動すると」「物理的に干渉する」「演出位置に」「一方の可動役物が」「進出している際」に「第1可動役物130aおよび第2可動役物130bのそれぞれが演出位置であるか否かを検出」することは、本願発明の「前記動作状態監視手段は、前記複数の演出用可動体に含まれる第1演出用可動体と第2演出用可動体との少なくともいずれか一方が、動作により重複する可動領域に及ぶ際に、前記第1演出用可動体及び前記第2演出用可動体の少なくともいずれか他方の動作状態を監視」することに相当する。

(7) 本願発明のD-1の特定事項について
ア 上記(4)イより、引用発明の「駆動制御部404」は、本願発明における「動作制御手段」に相当する。
イ 上記(5)イより、引用発明の「演出位置であるか否か」の「検出」は、本願発明の「動作状態」の「監視」に相当する。そして、引用発明の構成d-1における「可動役物の位置」は、本願発明の「動作状態監視手段の監視内容」に相当する。
ウ 引用発明の構成d-1において、「第1可動役物130aまたは第2可動役物130bを駆動させ」ることは、演出動作の実行であるといえる。また、本願発明の「第1演出用可動体に対して所定演出動作を実行させること」及び「第2演出用可動体に対して前記所定演出動作と連動する所定退避動作を実行させること」も、演出動作の実行であるといえる。
エ 引用発明の構成d-1における「第1可動役物130aと第2可動役物130bとが物理的に干渉してしまうこと」は、本願発明の「重複する可動領域に位置している前記第2演出用可動体に前記第1演出用可動体が干渉してしまう」ことに相当する。
オ 引用発明の構成d-1における「第1可動役物130aまたは第2可動役物130bを駆動させる際に、他方の可動役物の位置に応じて、そのまま駆動させたり、駆動を待機させたりし、一方の可動役物が演出位置に進出している際には他方の可動役物を駆動させず、第1可動役物130aと第2可動役物130bとが物理的に干渉してしまうことを防止」することと、本願発明の「重複する可動領域に位置している前記第2演出用可動体に前記第1演出用可動体が干渉してしまう場合、前記第2演出用可動体に対して前記所定演出動作と連動する所定退避動作を実行させることで、前記第2演出用可動体を重複する可動領域から退避させ」ることは、「重複する可動領域に位置している第2演出用可動体に第1演出用可動体が干渉してしまう場合、第1演出用可動体と、第2演出用可動体とが干渉しないように演出動作を実行」する点で両者は共通する。
カ よって、引用発明の「駆動制御部404」が「第1可動役物130aまたは第2可動役物130bを駆動させる際に、他方の可動役物の位置に応じて、そのまま駆動させたり、駆動を待機させたりし、一方の可動役物が演出位置に進出している際には他方の可動役物を駆動させず、第1可動役物130aと第2可動役物130bとが物理的に干渉してしまうことを防止」することと、本願発明の「前記動作制御手段は、前記動作状態監視手段の監視内容にもとづいて、前記第1演出用可動体に対して所定演出動作を実行させることで、重複する可動領域に位置している前記第2演出用可動体に前記第1演出用可動体が干渉してしまう場合、前記第2演出用可動体に対して前記所定演出動作と連動する所定退避動作を実行させることで、前記第2演出用可動体を重複する可動領域から退避させ」ることとは、「動作制御手段は、動作状態監視手段の監視内容にもとづいて、第1演出用可動体に対して所定演出動作を実行させることで、重複する可動領域に位置している第2演出用可動体に前記第1演出用可動体が干渉してしまう場合、前記第1演出用可動体と、前記第2演出用可動体とが干渉しないように演出動作を実行」する点で両者は共通する。

(8) 本願発明のD-2の特定事項について
引用発明の構成d-1における「第1可動役物130aまたは第2可動役物130bを駆動させる際に、他方の可動役物の位置に応じて、そのまま駆動させたり、駆動を待機させたりし、一方の可動役物が演出位置に進出している際には他方の可動役物を駆動させ」ることと、本願発明の「前記第1演出用可動体による前記所定演出動作と前記第2演出用可動体による前記所定退避動作とが連動して実行されることで、前記第1演出用可動体と前記第2演出用可動体とを用いた一体的な演出を実行可能である」こととは、「第1演出用可動体と第2演出用可動体とを用いた演出を実行可能である」点で両者は共通する。

2 一致点及び相違点

以上のことから、本願発明と引用発明は、以下の点で一致する。

<一致点>
A 遊技を行うことが可能な遊技機であって、
B 可動領域の少なくとも一部が重複する複数の演出用可動体と、
C 前記複数の演出用可動体を動作させる駆動手段と、
D 前記駆動手段による前記複数の演出用可動体の動作を制御する動作制御手段と、
E 前記複数の演出用可動体のうち少なくともいずれか1つの動作状態を監視可能な動作状態監視手段と、
を備え、
E-1 前記動作状態監視手段は、前記複数の演出用可動体に含まれる第1演出用可動体と第2演出用可動体との少なくともいずれか一方が、動作により重複する可動領域に及ぶ際に、前記第1演出用可動体及び前記第2演出用可動体の少なくともいずれか他方の動作状態を監視し、
D-1’ 前記動作制御手段は、前記動作状態監視手段の監視内容にもとづいて、前記第1演出用可動体に対して所定演出動作を実行させることで、重複する可動領域に位置している前記第2演出用可動体に前記第1演出用可動体が干渉してしまう場合、前記第1演出用可動体と、前記第2演出用可動体とが干渉しないように演出動作を実行し、
D-2’ 第1演出用可動体と第2演出用可動体とを用いた演出を実行可能である
A 遊技機。

そして、両者は、以下の点で相違する。

<相違点> (構成D-1、D-2に関して)
第1演出用可動体と、第2演出用可動体とが干渉しないように実行される演出動作に関して、本願発明は、「第2演出用可動体に、第1演出用可動体に対して実行させる所定演出動作と連動する所定退避動作を実行させることで、前記第2演出用可動体を重複する可動領域から退避させ、前記第1演出用可動体による前記所定演出動作と前記第2演出用可動体による前記所定退避動作とが連動して実行されることで、前記第1演出用可動体と前記第2演出用可動体とを用いた一体的な演出を実行可能」としているのに対して、引用発明は、その点が特定されていない点。

第6 検討・判断

1 相違点についての検討

上記相違点について以下に検討する。

パチンコ遊技機において、複数の演出用可動体を動作させる場合、一方の可動体を移動させる前に他方の可動体を退避させ、両者が干渉しないようにすることは、下記のア及びイに示すように、本願出願前に周知の事項(以下、「周知事項1」という。)である。

ア 本願出願前に頒布された刊行物である特開2011-87665号公報(以下、「周知文献ア」という。)には、以下の記載がある(下線は当審で付与した。以下、同様。)。

「【0001】
本発明は、ぱちんこ遊技機(一般的に「パチンコ機」とも称する)や回胴式遊技機(一般に「パチスロ機」とも称する)等の遊技機に関するものである。」

「【0572】
一方、図203及び図205に示すように、第二役物装置3070の上側爪装飾体3072及び下側爪装飾体3073は、可動装飾部材として、上爪可動部3113及び下爪可動部3122を備えている。上爪可動部3113及び下爪可動部3122は、複合演出装置3075の飾りとして配設されており、複合演出装置3075の前方、すなわち物理的に干渉し得る干渉可能位置に突出して配置されている。これは、複合演出装置3075と組み合わせることで立体的な装飾を形成するとともに、複合演出装置3075が回動することを遊技者にイメージさせ難くすることを狙ったものであり、複合演出装置3075が回動する際、予想外の展開によって遊技者に与えるインパクトを一層高めることが可能となっている。特に、上爪可動部3113及び下爪可動部3122には、それぞれ竜の爪の形状を模した光透過性の爪形飾り部3118,3128が設けられており、複合演出装置3075を上下から鷲掴みするように形成されているため、複合演出装置3075が表側表示位置(前向位置)で固定されているイメージを強く意識させることが可能となっている。
【0573】
ところで、上爪可動部3113及び下爪可動部3122は、干渉可能位置に配置されていることから、複合演出装置3075を回動させる際に、物理的に干渉しないように、すなわち複合演出装置3075と衝突したり接触したりすることがないように、退避位置(複合演出装置3075の斜め上方及び斜め下方)(図204参照)に移動させることが可能になっている。・・・」

「【0637】
[6.本実施形態の特徴的な作用効果]
このように、本実施形態のパチンコ機1によれば、複合演出装置3075を移動させる前に、上爪可動部3113及び下爪可動部3122を退避位置に移動させるように駆動用信号を出力するとともに、上爪可動部3113及び下爪可動部3122が退避位置に達したか否かを検出し、駆動用信号が出力されているにも拘らず、上爪可動部3113または下爪可動部3122の少なくとも一方が退避位置に達したことが検出されない場合には、これらの作動不良と判断し、回転駆動手段3077に対する駆動用信号の出力を禁止するようになっているため、複合演出装置3075と、上爪可動部3113または下爪可動部3122との接触による破損等を未然に防ぐことができる。」

「【0643】
すなわち、上記実施形態では、第一可動役物として複合演出装置3075を備え、第二可動役物として上爪可動部3113及び下爪可動部3122を備えるものを示したが、第一可動役物及び第二可動役物の種類は特に限定されるものではなく、機構的に干渉し得る状態に配置された二つの可動役物であれば好適に適用することができる。また、同じ形態であり移動方向が互いに異なる一対の可動役物であっても、本発明を適用することができる。」

イ 同特開2012-200363号公報(以下、「周知文献イ」という。)には、以下の記載がある。

「【0001】
本発明は、遊技用価値を用いて遊技を行うことが可能であり、所定の演出装置を備えた遊技機に関する。」

「【0150】
第1可動物402は、背面における左右所定箇所が、このように構成された左右のギヤユニット430L,430Rの取付アーム437L,437Rの取付穴453に前後方向を向く連結軸(図示略)を介して連結されて左右側が支持されており、駆動モータ432L,432Rにより図15(a)に示す上昇位置(駆動初期位置)と図15(b)に示す下降位置との間で移動可能とされている。また、第1可動物402は、上昇位置において切欠部303Aよりも上方に配置され、下降位置において切欠部303Aを前面側から覆うように配置される。
【0151】
第2可動物403L,403Rは、ベース部材401の背面側に配設されたリンク部材426L,426Rを介して第1可動物402に連結されている。そして、第1可動物402が上昇位置に位置しているときに切欠部303A近傍に位置する演出位置と、第1可動物402が下降位置に位置しているときに切欠部303Aから外側方に離れた位置となる退避位置と、の間で左右方向に移動可能に設けられている。
【0152】
すなわち本実施例では、第1可動物402が上昇位置に位置し、第2可動部403L,403Rが演出位置に位置する状態が第1状態(初期状態)であり、第1可動物402が下降位置に位置し、第2可動部403L,403Rが退避位置に位置する状態が第2状態(演出状態)とされている。
【0153】
より詳しくは、第2可動物403L,403Rは、演出位置において第1可動物402の左右端部の直下に位置しており(図15(a)参照)、退避位置において第1可動物402の左右端部の外側方に位置する(図15(b)参照)。
【0154】
つまり、図15に示すように、第1可動物402は、第1位置である上昇位置(図15(a)参照)に設けられ、該上昇位置から下降位置(図15(b)参照)までの第1移動範囲(図15(b)中右上り斜線領域)内で移動可能に設けられ、また、第2可動物403L,403Rは、第1移動範囲内にある第2位置である演出位置(図15(a)参照)と、該演出位置から退避位置(図15(b)参照)までの第2移動範囲{図15(b)中左上り斜線領域(第1移動範囲と重畳しない範囲)}内で左右方向に移動可能に設けられている。
【0155】
図15(b)に示すように、第1可動物402の移動範囲(図15(b)中右上り斜線領域)の一部と第2可動物403L,403Rの移動範囲(図15(b)中左上り斜線領域)の一部とが重複(図15(b)中クロス斜線領域)している。そして、第2可動物403L,403Rは、演出位置において第1可動物402の移動範囲と重複する重複領域に位置することから、第1可動物402が上昇位置から下降位置まで下降する場合、第2可動物403L,403Rに接触する虞があるため、第1可動物402が下降位置に到達するまでに退避位置に移動されるようになっている。」
「【図15】



また、パチンコ遊技機において、複数の演出用可動体を用いる場合、それらの動作を連動させ、一体的な演出を実行可能とすることも、下記のウないしオに示すように、本願出願前に周知の事項(以下、「周知事項2」という。)である。

ウ 同特開2010-42127号公報(以下、「周知文献ウ」という。)には、従来技術に関する記載として、以下の記載がある。

「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技球を用いて遊技を行うパチンコ機などの遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のパチンコ機には、遊技盤上に、第1可動役物と、第2可動役物と、を備え、両者の演出による相乗効果により斬新な演出を実行するものがある。例えば、第1可動役物として、「水戸」という表示部と、「黄門」という表示部と、各表示部に設けられた揺動部材と、で構成され、所定のタイミングで、各揺動部材が回転動作することにより、各表示部が移動して一連の「水戸黄門」という表現を完成している。また、第2可動役物として、家紋をモチーフにした表示部が適用され、所定のタイミングで、これが前後動作する。この第1可動役物と第2可動役物とが連動することにより、相乗効果として、各可動役物の演出が斬新な演出になることをねらいとしている(下記特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007-29255号公報」

エ 同特開2013-34707号公報(以下、「周知文献エ」という。)には、以下の記載がある。

「【0001】
本発明は、移動可能に保持された可動役物を備えて、この可動役物を駆動させる遊技機に関する。」

「【0005】
近年では、演出効果を高めるために複数の可動役物を備えて、複数の可動役物が連動するように動作させる演出をおこなう遊技機もある。このような遊技機において、故障などにより或る可動役物が動作しなくなっているにもかかわらず他の可動役物を動作させると、遊技者に違和感を与えてしまうこともあった。このような場合、遊技者は違和感から遊技に興ざめしてしまい、遊技に対する興味を失って、遊技をやめてしまうこともあった。」

オ 上記周知文献イには、以下の記載もある。

「【0005】
上記特許文献1に記載の遊技機では、3つの演出可動体が表示領域内にて出没動作を行うが、それぞれの動作範囲が設計上または制御上で互いに干渉しないようになっており、例えば、表示領域の左側方にある演出可動体は、表示領域の左側端から直線的に右方向へ動作するが、この動作範囲は他の2つの演出可動体の動作範囲とは重複せず、互いに別個に動作するだけであるため、複数の演出可動体に関連性がないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、複数の可動部の動作に関連性を持たせて演出効果を向上させることができる遊技機を提供することを目的とする。」

してみると、本願発明の相違点に係る構成のうち、第2演出用可動体に対して、第1演出用可動体に対して実行させる所定演出動作と連動する所定退避動作を実行させることで、前記第2演出用可動体を重複する可動領域から退避させる点は、上記周知事項1として示したように、本願出願前に周知の事項であり、また、前記第1演出用可動体による所定演出動作と前記第2演出用可動体による動作とが連動して実行されることで、前記第1演出用可動体と前記第2演出用可動体とを用いた一体的な演出を実行可能とする点も、上記周知事項2として示したように、本願出願前に周知の事項である。

そして、引用発明、上記周知事項1及び上記周知事項2は、いずれも、複数の演出用可動体を採用した遊技機という共通の技術分野に属するものであり、引用発明において、演出効果を高めることを動機付けとして、上記周知事項1及び上記周知事項2を適用し、第2演出用可動体に対して、第1演出用可動体に対して実行させる所定演出動作と連動する所定退避動作を実行させることで、前記第2演出用可動体を重複する可動領域から退避させるとともに、前記第1演出用可動体による所定演出動作と前記第2演出用可動体による動作とが連動して実行されることで、前記第1演出用可動体と前記第2演出用可動体とを用いた一体的な演出を実行可能とし、本願発明の上記相違点に係る構成を成すことは、当業者が容易に想到し得る程度のことである。
また、本願発明によってもたらされる作用効果も、引用発明、上記周知事項1及び上記周知事項2に基づいて、当業者が予測し得るものであって、格別なものとは認められない。

2 令和1年6月12日付け意見書における請求人の主張への反論

請求人は、令和1年6月12日付け意見書の「(4)本発明と引用文献に記載の発明との対比」において、
「本発明においては、第2演出用可動体が重複する可動領域に位置しているときに、第1演出用可動体により所定演出動作が実行されるときには、第2演出用可動体に単なる退避動作をさせるのではなく、第1演出用可動体と第2演出用可動体とを用いた一体的な演出となるような所定退避動作を、第1演出用可動体の所定演出動作と連動して第2演出用可動体が実行するため、これら第1演出用可動体と第2演出用可動体との一体的な演出に遊技者が注目するようになるので、第1演出用可動体と第2演出用可動体とによる干渉を防止しつつ、演出の興趣を向上できるという効果を奏します。」
と主張している。
しかしながら、複数の演出用可動体を用いる場合において、それらの動作を連動させ、一体的な演出を実行可能とすることは、上記周知事項2として示したように、本願出願前に周知の事項であり、第1演出用可動体と第2演出用可動体とを用いた一体的な演出となるような所定退避動作を、第1演出用可動体の所定演出動作と連動して第2演出用可動体が実行するように構成することは、周知事項の寄せ集めにすぎず、請求人が主張する作用効果も、上記した各周知事項より当業者であれば当然に導き出せる程度のものであり、予測可能なものである。
したがって、上記意見書における請求人の主張を参酌しても、本願発明に格別な進歩性を見いだすことはできない。

第7 結語

以上のとおり、本願発明は、引用発明に、本願出願前に周知の事項を適用することによって、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-07-02 
結審通知日 2019-07-09 
審決日 2019-07-22 
出願番号 特願2014-37001(P2014-37001)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 智也  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 蔵野 いづみ
▲高▼橋 祐介
発明の名称 遊技機  
代理人 林 修身  
代理人 重信 和男  
代理人 堅田 多恵子  
代理人 大久保 岳彦  
代理人 石川 好文  
代理人 溝渕 良一  

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