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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02F
管理番号 1354918
異議申立番号 異議2018-700508  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-10-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-06-20 
確定日 2019-07-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6248398号発明「情報表示媒体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6248398号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。 特許第6248398号の請求項1及び2に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6248398号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成25年3月6日に出願され、平成29年12月1日にその特許権の設定登録がされ、同年12月20日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

平成30年 6月20日 : 特許異議申立人 赤松 智信による請求 項1及び2に係る特許に対する特許異議
の申立て
平成30年 8月22日付け: 取消理由通知書
平成30年10月26日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の
提出
平成30年12月14日 : 特許異議申立人 赤松 智信による意見 書の提出
平成31年 2月 6日付け: 取消理由通知書(決定の予告)
平成31年 4月15日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の
提出

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
平成31年4月15日付けの訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下の(1)及び(2)のとおりである。
なお、本件訂正が請求されたことにより、平成30年10月26日付けの訂正請求は、取り下げられたものとみなす。

(1)訂正事項
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「・・・ことを特徴とする情報表示媒体。」と記載されているのを、「前記視覚効果処理基材が、前記電子ペーパーの前記透明電極側の面に着脱可能に配置されていることを特徴とする情報表示媒体。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、「前記視覚効果層自体が、前記第1視覚効果としての模様を表示し、さらに前記視覚効果層を透過させて前記第2視覚効果を表示する・・・」と記載されているのを、「前記視覚効果層自体が、前記第1視覚効果としての模様を表示し、さらに前記視覚効果層を透過させて前記第2視覚効果を表示するものであり、前記第2視覚効果が、全面表示による色彩であり、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)

(2)一群の請求項について
訂正事項1及び2に係る訂正前の特許請求の範囲について、請求項2は、請求項1を直接的に引用しているものであって、上記訂正事項1及び2によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1および2に対応する訂正後の請求項1および2は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
上記訂正事項に係る訂正は、「視覚効果処理基材」について、「前記視覚効果処理基材が、前記電子ペーパーの前記透明電極側の面に着脱可能に配置されている」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
本件特許明細書の段落0034には、「また、本実施の形態の情報表示媒体において視覚効果処理基材を交換する場合に、電子ペーパーの透明電極側の面への視覚効果処理基材の着脱を容易に行うことができるからである。」との記載があるから、上記訂正事項に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、上記訂正事項は、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項は、上記ア及びイのとおりであって、カテゴリー変更や対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は、変更するものではない。
よって、当該訂正事項は、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否
上記訂正事項に係る訂正は、「第2視覚効果」について、「前記第2視覚効果が、全面表示による色彩であり、」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
本件特許明細書の段落0046には、「第2視覚効果としては、具体的には、電子ペーパーの用途等に応じて上述した視覚効果から適宜選択されるが、なかでも、幾何学形状、文字、数字、符号、標章、絵柄等、および全面表示による色彩等であることが好ましい。」との記載があるから、上記訂正事項に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、上記訂正事項は、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項は、上記ア及びイのとおりであって、カテゴリー変更や対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は、変更するものではない。
よって、当該訂正事項は、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

3 小括
上記のとおり、上記訂正事項1及び2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1及び2について訂正することを認める。

第3 取消理由通知に記載した取消理由について
1 訂正後の請求項に係る発明
上記訂正後の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」及び「本件特許発明2」といい、全体を「本件特許発明」という。)は、上記訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである(下線は訂正箇所を示す。特許権者が付与したとおり。)。

「【請求項1】
光透過性を有し視覚効果処理が施された視覚効果処理基材と、
透明基材および前記透明基材上に形成された透明電極を有する透明電極基材、対向基材および前記対向基材上に形成された対向電極を有する対向電極基材、ならびに、前記透明電極基材および前記対向電極基材の間に配置され、表示媒体を含有する表示媒体層を有する電子ペーパーと、を有し、
前記視覚効果処理基材が、前記電子ペーパーの前記透明電極基材の前記表示媒体層側とは反対側に配置されており、
前記視覚効果処理基材が、基材と前記基材上に形成され光透過性を有し第1視覚効果を有する視覚効果層を有し、前記視覚効果層と前記電子ペーパーに表示される第2視覚効果とが平面視上重なるように配置されており、
前記視覚効果層自体が、前記第1視覚効果としての模様を表示し、さらに前記視覚効果層を透過させて前記第2視覚効果を表示するものであり、
前記第2視覚効果が、全面表示による色彩であり、
前記視覚効果処理基材が、前記電子ペーパーの前記透明電極側の面に着脱可能に配置されていることを特徴とする情報表示媒体。
【請求項2】
前記情報表示媒体が、前記電子ペーパーに隣接して配置された太陽電池を有し、前記電子ペーパーの前記透明電極基材の前記表示媒体層側とは反対側および前記太陽電池表面に前記視覚効果処理基材が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の情報表示媒体。」

2 取消理由通知の概要
平成30年10月26日付けの訂正請求書により訂正された請求項1及び2に係る特許に対して、当審が平成31年2月6日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。

(1)請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び周知技術等(周知例1、2、4?9)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)請求項2に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び周知技術等(周知例1?9)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

<引用例一覧>
甲第2号証 :特表2008-518346号公報
周知例1:特開2011-95639号公報
周知例2:特開2010-121392号公報
周知例3:特開2010-26070号公報
周知例4:特開2008-299334号公報(甲第1号証)
周知例5: MotionDisplay社のホームページを印刷したもの
<http:/www.motiondisplay.com/products/mdxo.html#1>
(甲第11号証の1)
周知例6:「SEGPOPの作り方」,YouTube[online][video],
2011年11月16日,平成31年1月29日検索,
<https://www.youtube.com/watch?v=imNhsjX9A1w>
(甲第14号証を参照。)
周知例7:「DesignKit」に含まれた資料(甲第15号証の14)
周知例8:実用新案登録第3139039号公報(甲第16号証)
周知例9:特開2005-32135号公報(甲第17号証)

3 引用例の記載
(1)甲第2号証(特表2008-518346号公報)
甲第2号証には、以下の事項が記載されている(下線は当審が付与した。以下同じ。)。

ア 「【0026】
図5は、図2のスマートカード1の線V-Vに沿った断面図である。図5に示されるように、ディスプレイ11はディスプレイの凹み7の中に位置付けられる。透明カバー18は、カード本体6の上に置かれる。カード本体6に面している透明カバー18の面において、及び最前部表面2に対応する部分で、不透明プリント19は、カバー18に塗布されている。不透明プリント19は、従って図2に示されるようにカード1の最前部表面2に表示されるべき背景色、ロゴ及び文字情報を有する。不透明プリント19は、従って、カード本体6、ディスプレイ電子機器領域13、ボタンセンサー、バッテリー及びプロセッサーを覆い、それらが最前部表面2において観察され得ないようにする。透明カバー18のその部分は、ディスプレイ表面3を形成するためであり、しかしながら如何なるプリントも設けられず、透明カバー窓20を形成する。透明カバー窓20を通じてディスプレイ領域12が観察され得る。遷移領域21は、最前部表面2とディスプレイ表面3との間に形成される。遷移領域21は、ファジイに作られる。これは、この遷移領域21内の不透明プリント19が次第に消えて最終的にカバー窓20の近くで透明になることを意味する。遷移領域21は、最前部表面2からディスプレイ表面3への視覚的に滑らかな遷移を提供する。3個の異なる波長の入射周辺光は、3個の矢印AL1、AL2及びAL3により表される。図5の右に示されるように、入射周辺光は、不透明プリント19と一致し、結果として波長AL1及びAL2を吸収する。一方、第3の波長AL3の光は、反射光RLとして反射される。入射周辺光は、ディスプレイ表面3と一致し、カバー窓20を通じ送信され、そしてディスプレイ領域12と一致する。ディスプレイ領域12は、以下に詳細に説明される光反射部分を有する。光反射部分は、波長AL1及びAL2の光を吸収し、第3の波長AL3の入射周辺光を反射し、反射光RLを供給する。反射光RLは、実質的に不透明プリント19からの反射光と同一の波長、従って色を有する。不透明プリント19からの及びディスプレイ領域12からの光RLは、同一の波長、及び従って色を有するので、ディスプレイ11が不活性化状態である場合、ディスプレイ表面3を、周囲の最前部表面2から区別することは、非常に困難である。
【0027】
・・・(略)・・・
【0028】
図6は、図5に示された領域VIの拡大である。この実施例のディスプレイ領域12は、着色された電気泳動ディスプレイである。電気泳動ディスプレイは、それ自体知られており、特許文献2及び特許文献3のような文献に記載され、特に米国カリフォルニア州のサイピックス・テクノロジーズ社(SiPix Technologies Inc.)により開発されている。電気泳動ディスプレイは、ディスプレイの画素毎に個々に制御される電界の影響の下、着色された流動体内で移動するよう製造された帯電粒子、通常は白色粒子、例えば二酸化チタン粒子に基づく。本発明では、ディスプレイ領域12は、第1の透明電極22、例えばインジウムスズ酸化物(ITO)電極、着色された流動体及び粒子を有する電気泳動媒体23の形式の切り替え可能な光学層、及び画素毎に個別の第2の電極のグリッド24を有する。更に、ディスプレイ領域12は、キャリア基盤を有する他の構成要素を設けられる。キャリア基盤は、それ自体知られているが図6に示されない(また以下の実施例にも示されない)。図6の実施例では、ディスプレイ領域12は、不活性化状態において、プロセッサー16により制御され、第2の電極のグリッド24に位置付けられた粒子を有する。入射周辺光は、カバー窓20、そして透明電極22及び電気泳動媒体23を通過する。媒体23では、波長AL1及びAL2の周辺光は、着色された流動体により吸収される。同時に波長AL3の周辺光は、反射光RLとして電極22及び窓20を通じ反射される。例えば、着色された流動体が緑色の場合、当該流動体は、緑色の光のみを反射し、従ってディスプレイ表面3の視覚的外観は緑色である。スマートカード1を設計する場合、不透明プリント19の色及び電気泳動媒体23の着色された流動体の色は一致し、ディスプレイ表面3において観察される光RLは、ディスプレイ表面3を囲む最前部表面2において観察される光RLと実質的に同一である。この一致では、電極なども考慮に入れられる。従って、例えばプリント19の色は、着色された流動体の色と正確に同一色に合わせられる必要はないが、しかしディスプレイ表面3が着色された流動体により与えられる視覚的外観と同一の視覚的外観を備えた最前部表面2を設けるべきである。」

イ 「【0033】
図7は、拡大された断面図であり、スマートカード101の形式で、本発明の第2の実施例の部分を示す。この代案の実施例では、ディスプレイ領域112は、カード本体106に合わせられる。ディスプレイ領域112は、上述のような電気泳動ディスプレイであり、従って透明の第1の電極122、着色された流動体及び白い粒子を有する電気泳動媒体123、及び画素毎に個別の第2の電極のグリッド124を有する。カバー窓120は、ディスプレイ表面103の領域においてディスプレイ領域112に適合される。カバー窓120は、ディスプレイ領域112の第1の電極122に隣接し、着色された半透明層126、例えば特定色の少量の着色剤が追加された透明プラスチックを有する。望ましくは、ディスプレイ領域112はディスプレイ領域112内に散乱効果を有するので、着色剤は色を吸収する非散乱染料である。代案として、顔料に基づく着色剤が用いられ得る。プロセッサーは、図7に示されないが、ディスプレイ領域112を不活性化状態に切り替える前に、白色粒子を制御し第1の電極122へ移動させる。この状態は図7に示される。波長AL1及びAL2の入射周辺光は、カバー窓120の半透明層126により吸収される。波長AL3の周辺光は、窓120及び第1の電極122を通過し、そして電気泳動媒体123内の白色粒子で反射し、反射光RLとして電極122及び窓120を通過して戻る。例えばカバー窓120の層126が黄色の場合、層126は黄色の光以外の全ての色を吸収する。黄色の光は、白色粒子で反射され、窓120を通じて戻り、そして従ってディスプレイ表面103の視覚的外観は黄色である。スマートカード101を設計する場合、カード本体106に設けられる透明カバー118に塗布される不透明プリント119の色、及びディスプレイ領域112に適用されるカバー窓120の層126の色は一致する。従ってディスプレイ表面103において観察される光RLは、ディスプレイ表面103を囲む最前部表面2(当審注:最前部表面2は、最前部表面102の誤記と認められる。)において観察される光RLと実質的に同一である。遷移領域121は、ファジイに作られ、最前部表面102からディスプレイ表面103への滑らかな遷移を提供する。」

ウ 「【0040】
図10は、拡大された断面図であり、スマートカード401の形式で、本発明の第5の実施例を示す。スマートカード401は、スマートカード301と同様であるが、スマートカード401に組み込まれたディスプレイが通常黒色の液晶ディスプレイ(LCD)であることが異なる。図10では、ディスプレイのディスプレイ領域412のみが示される。他の部分、例えば不透明プリント19、カバー18及びカバー窓20等は、図9を参照して記載された部分と同様であり、従って同一の参照符号が与えられる。ディスプレイのディスプレイ領域412は、第1の透明電極422、液晶層423の形式で切り替え可能な光学層、第2の透明電極424、及び反射器425を設けられる。第1の電極422の上面には、反射又は散乱する着色されたパターン426が位置付けられる。着色されたパターン426は、第1の電極422の約0.1-10%のみを覆う。及び従って全波長AL1、AL2及びAL3の大部分の入射周辺光は、第1の電極422を通過し、そして不活性状態において通常黒色のLCDのディスプレイ領域412に吸収される。入射周辺光の少量は、しかしながら、着色されたパターン426と一致する。波長AL1及びAL2の周辺光は、着色されたパターン426により吸収される。同時に波長AL3の周辺光は、パターン426で反射され、反射光RLとして窓20を通る。パターン426の被覆率が低いので、少量の入射周辺光のみが反射され、大部分の光はディスプレイ領域412に吸収される。従ってディスプレイ表面3の視覚的外観は、むしろ暗い色である。例えばパターン426が赤色の薄片から成る場合、パターン426は少量の赤色の光を反射する。赤色の光は、反射され、窓20を通じて戻り、そして従ってディスプレイ表面3の視覚的外観は暗い赤色である。スマートカード401を設計する場合、カード本体6に設けられる透明カバー18に塗布される不透明プリント19の色、及びパターン426の色及び被覆率は、図5及び図6を参照した記載と同様に、一致する。ディスプレイの活性化状態では、大部分の入射周辺光はパターン426で反射又は吸収されずに液晶層423に到達しなければならないので、パターン426の低い被覆率が必要であることが理解される。また大部分の光は、パターン426の面の下で反射又は吸収されずにディスプレイ表面3へ向かって反射されなければならないことも理解される。
【0041】
図10に示される通常黒色のLCDの代案として、暗い背景を有する透明状態に設定された双安定コレステリックLCDも用いられ得ることが理解される。更に別の代案として、図10の通常黒色のLCDの代案として、暗い状態に設定された電気泳動ディスプレイが用いられる。」

エ 「【0042】
図11は、本発明第6の実施例によるスマートカード501を図示する。スマートカード501は、図1に示されたスマートカード1と同様であり、従って発行元、有効期限等のようなスマートカードに関する情報を表示する最前部表面502を有する。最前部表面502は、ディスプレイ表面503を囲む。図11に示された場合では、ディスプレイ表面503の下に位置付けられたディスプレイ領域は、活性化状態であり、スマートカード501で利用可能なクレジットを示す。スマートカード501は、図1に示されたボタンと同様の入りボタン504及び切りボタン505を設けられる。図11に示されるように、ディスプレイ表面503は、最前部表面502に位置付けられたロゴ「P&H」の形式のグラフィカルパターン506の中心に位置付けられる。図11に示される活性化状態では、クレジット量は、ディスプレイ表面503の明るい背景に対し、暗い文字で明瞭に表示される。
【0043】
図12は、ディスプレイ領域が不活性化状態にされた後の、スマートカード501を示す。図11及び図12の実施例では、ディスプレイ領域は、図6及び図7を参照して上述されたような電気泳動ディスプレイである。電気泳動ディスプレイの固有特性は、双安定であり、これは電気泳動ディスプレイが不活性状態に設定される直前に明るい領域及び暗い領域の両方を有するよう設定され得ることを意味する。これら明るい領域及び暗い領域は、電気泳動ディスプレイの非活性化状態においてそれぞれの外観を保つ。図11及び図12の実施例では、電気泳動ディスプレイは、プロセッサーにより制御され(図4に示されたものと同様)、ディスプレイ表面503に示されるデザインが最前部表面502に示されるロゴ「P&H」の部分を形成するように、暗い色及び明るい領域を表示する。プロセッサーは、プロセッサーのメモリーにグラフィカルパターン506に関する情報、つまりロゴを格納している。図12から明らかなように、最前部表面502及びディスプレイ表面503に示されたデザインは、完全なロゴ「P&H」が示され、ディスプレイ表面503がどこに位置するか殆ど分からないよう、互いに融合する。」

オ 「【0049】
上述の実施例では、プリントの色は、ディスプレイ領域により反射された光の色と一致すると記載された。例えばLCDディスプレイの反射器から反射された光は、電極、液晶層、偏光器等の複数の構成要素を伝達し、事実上この経路で薄暗くなる。この薄暗くなる効果は、プリントの色を選択する時に考慮されるのが望ましい。例えば、プリントは、同様に薄暗くなり同じ印象を与え得る。
【0050】
以上に、ディスプレイ表面は、ディスプレイの不活性化状態において緑、赤、黄、又は金色の金属光沢のような特定の色を有すると記載された。しかしながら、実際の色を有さないが明るい及び暗い状態の中間の色に設定されるディスプレイ表面を有することも可能である。ディスプレイ表面は、不活性化状態において不均一な色を有し、装置に取り付けられる一般的な装飾に適応し得ることが更に理解される。例えば、ディスプレイ表面の左部分は黄色であり、右部分はオレンジであり得る。これは、例えば、ディスプレイ領域の上面に2つの異なる色を有する半透明層を設けることにより得られる。」

カ 図5?7及び図10?12は次のものである。
図5



図6



図7



図10



図11


図12


キ 上記イを踏まえて図7を見ると、カバー窓120は、着色された半透明層126に加え、透明カバー118と透明カバー118に塗布される不透明プリント119とを有することが把握できる。

ク 上記オの「ディスプレイ表面は、不活性化状態において不均一な色を有し、装置に取り付けられる一般的な装飾に適応し得ることが更に理解される。例えば、ディスプレイ表面の左部分は黄色であり、右部分はオレンジであり得る。これは、例えば、ディスプレイ領域の上面に2つの異なる色を有する半透明層を設けることにより得られる。」との記載から、スマートカードに取り付けられる一般的な装飾に適応し得るように、前記カバー窓120のディスプレイ表面103は、不活性化状態において不均一な色となるよう構成され得るものであることが理解できる。

ケ したがって、上記記載から、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。

「 ディスプレイ領域112の第1の電極122に隣接し、着色された半透明層126、例えば特定色の少量の着色剤が追加された透明プラスチックを有するカバー窓120と、
透明の第1の電極122、着色された流動体及び白い粒子を有する電気泳動媒体123、及び画素毎に個別の第2の電極のグリッド124を有する、電気泳動ディスプレイであるディスプレイ領域112と、
を備えたスマートカード101であって、
カバー窓120は、前記半透明層126に加え、透明カバー118と透明カバー118に塗布される不透明プリント119とを有し、
カード本体106に設けられる透明カバー118に塗布される不透明プリント119の色、及びディスプレイ領域112に適用されるカバー窓120の層126の色は一致し、
波長AL1及びAL2の入射周辺光は、前記カバー窓120の半透明層126により吸収され、波長AL3の周辺光は、前記カバー窓120及び第1の電極122を通過し、そして電気泳動媒体123内の白色粒子で反射し、反射光RLとして前記電極122及び前記カバー窓120を通過し、ディスプレイ表面103において観察される反射光RLは、ディスプレイ表面103を囲む最前部表面102において観察される光RLと実質的に同一である、
スマートカード101であって、
スマートカード101に取り付けられる一般的な装飾に適応し得るように、前記カバー窓120のディスプレイ表面103は、不活性化状態において不均一な色となるよう構成され得る、
スマートカード101。」

(2)周知技術1
下記ア及びイを踏まえると、以下の技術が周知であったといえる(以下、「周知技術1」という。)。

「光透過性を有する部材に模様を形成したものを、表示装置の表示と重ねて表示する技術」

ア 周知例1:特開2011-95639号公報
周知例1の段落0029には、「実施例1の発光機能付き筐体の斜視図を図1と図2に、また図1のIII-III’線における断面図を図3にそれぞれ示す。また、図3において、円で囲まれた部分の一部拡大図を同一図面内に示す。発光機能付き筐体100は、木質層の表面に所望の点灯パターン101を表示できる筐体であって、筐体内部に光源を備える。図1では光源部を非通電状態としており、この状態では木目模様を有する表層の木質層12が、内部を非透過としているため光源を認識できない。内部の光源部を通電させると、図2に示すように木質層12の視認面3に光が表出し、所望の点灯パターン101が表層に浮かび上がる。」と記載されている。

イ 周知例2:特開2010-121392号公報
周知例2の段落0019には、「表示板60は、ドア表面に表示させる図面、記号、文字表示等の表示模様62が表記若しくは孔に穿設された板状体である。表示板60は表面の人工大理石の薄板52と、発光装置70との間に配置され、発光装置70により発光された光が、制御装置80によって制御されながら表示板60に表された表示模様62を人工大理石の表面52に透過表示する構造である。」と記載されている。

(3)周知技術2
下記アないしエを踏まえると、以下の技術が周知であったといえる(以下、「周知技術2」という。)。

「電子ペーパー本体に表示するパターン等を印刷した透明なカバープレートを、電子ペーパーの上面に着脱可能に配置する技術」

ア 周知例4:特開2008-299334号公報(甲第1号証)
周知例4には、以下の内容が記載されている。
「【0031】
・・・(略)・・・さらに、印刷層23は、インクジェットまたはプリント方式で、透明基板24の表面に形成される。さらに、この印刷層23を有する透明基板24が上部基板221に粘着結合されることにより、この印刷層23の設置が完了する。このうち、透明基板24は平板またはフィルムである。
【0037】
・・・(略)・・・電子ペーパー本体に現されるパターンを変更したい時は、印刷層のパターンを変更するか、または、直接上部基板、透明基板またはカバープレートを交換するだけでよい。したがって、従来の製造工程に比べ、大幅な簡素化が可能であり、コストの削減も可能である。」

図5


イ 周知例5:MotionDisplay社のホームページを印刷したもの(甲第11号証の1)
周知例5には、電子ペーパーに「視覚効果処理基材」が張り付けられることが記載されている(下図右を参照。)。そして、甲第11号証の1の図面(下図左を参照。)には、替えの「視覚効果処理基材」が4つ開示されており、「ExchangeableOverlay」(訳:交換可能なオーバーレイ(覆うもの))と記載されている。





そして、甲第11号証の2は、アーカイブサイト(WaybackMachine)によってアーカイブされたMotionDisplay社のホームページの画面を印刷したものであるところ(同アーカイブサイトで上部のURLを入力したのち、「Exchangeableoverlay(XO)」タブをクリックした画面を印刷したもの)、同アーカイブサイトに保存された情報から、少なくとも2012年9月18日には、周知例5の内容が、MotionDisplay社のホームページに公開されていたものであるから、周知例5は、少なくとも2012年9月18日には公知であったものと認められる。

ウ 周知例6:「SEGPOPの作り方」(甲第14号証を参照。)
周知例6を掲載したウエブページには、「SEG-POP 話題の“電子ペーパー”を活用したPOPが家庭のパソコン と プリンターで簡単に作れちゃう!!」との説明があり、周知例5からは、人がフィルムを電子ペーパーに張り付けようとしている様子が把握できる。

そして、周知例6を掲載したウエブページに「2011/11/16に公開」と説明されていることから、周知例6は2011年11月16日に公開されたものと認められる。

エ 周知例7:「DesignKit」に含まれた資料(甲第15号証の14)
周知例7には、「LasVegas」模様のオーバーレイ(覆うもの)が静電気吸着するものであって、取り外し可能であることが記載されている(1頁「KitContents」の項の3番目の「・」参照)。

そして、周知例7の上方には、「June2002」の記載があることから、周知例7は、2002年6月に公知になったものと認められる。

(4)周知技術3
下記アを踏まえると、以下の技術が周知であったといえる(以下、「周知技術3」という。)。

「電子ペーパーの電源として太陽電池を用い、太陽電池の表面に透明板が配置され、太陽電池に隣接して電子ペーパーが配置される技術」

ア 周知例3(特開2010-26070号公報)
周知例3の【0022】には、「図3及び図4に示されるように、制御基板11は、電子ペーパー12の背面に当接するように配置され、データ送受信部13と、太陽電池14は、電子ペーパー12の正面である表示画面12a上(表示領域内)に層状に配置されている。制御基板11及び電子ペーパー12は、収容部7と略同寸の正面視方形状に形成されている。」と記載されている。
また、周知例3の【0029】には、「太陽電池14、データ送受信部13及びシール材10は、前後幅(厚み)が略同一に形成されており、表示装置8がケース体6の収容部7に収容された状態において、太陽電池14、データ送受信部13及びシール材10の表面が略面一となる。そのため、保護パネル9が収容部7の開口7aを閉塞する際に、保護パネル9の背面に、表示装置8の正面である太陽電池14とデータ送受信部13との表面が当接するので、表示装置8は収容部7内においてがたつきなく固設される。」と記載されている。

(5)一般的な技術的事項
下記ア及びイから明らかなように、「カードの表面に着脱可能な視覚効果を有するフィルムを貼着すること」は、本願出願前に広く知られた一般的な技術である。

ア 周知例8:実用新案登録第3139039号公報(甲第16号証)
周知例8には、以下の内容が開示されている。
「【0018】
上記のようにして適宜カードの表面に貼着された本考案カード用ステッカーは、その接着剤層5が再剥離可能な接着剤で形成されているから、その貼着はいつでも自由に剥がすことができ、また、前記接着剤層5がカード側に残ることはない。さらに、その剥離はツマミ10を摘まんで容易に行うことができるから、ステッカーの貼り替えも容易に行うことができる。なお、透光性シート材としては、上記の透明シート材6のほか、着色透光性シート材、フォログラムやレイボー模様を施した透光性シート材を用いることができる。」

イ 周知例9:特開2005-32135号公報(甲第17号証)
周知例9には、以下の内容が開示されている。
「【0016】
図1によれば、非接触型ICカード100の表面には、写真及び文字情報などの画像103が形成されている。これら画像103の形成は、通常、ICカード本体の表面に直接形成されているか、あるいはその表面に適用された透明なオーバーフィルム(図示せず)に予め印刷されている。本発明のリサイクル可能なICカードは、不要となった場合、ICカード本体に直接形成された画像は変更せずに、オーバーフィルム上の画像のみを、オーバーフィルムをICカード本体から剥離した後、新たなオーバーフィルムを前記ICカード本体に貼り付けることによって変更できるため、結果として、ICカードの再使用が可能となる。」

4 当審の判断
(1) 本件特許発明1について
ア 対比・一致点・相違点について
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。

(ア)本件特許発明1の「光透過性を有し視覚効果処理が施された視覚効果処理基材」との発明特定事項について

甲2発明の「カバー窓120」は「着色された半透明層126、例えば特定色の少量の着色剤が追加された透明プラスチックを有する」ものであって、着色された半透明層126は、下記(エ)のとおり、視覚効果を有する層といえるから、甲2発明は、本件特許発明1の上記発明特定事項を備える。

(イ)本件特許発明1の「透明基材および前記透明基材上に形成された透明電極を有する透明電極基材、対向基材および前記対向基材上に形成された対向電極を有する対向電極基材、ならびに、前記透明電極基材および前記対向電極基材の間に配置され、表示媒体を含有する表示媒体層を有する電子ペーパー」との発明特定事項について

a 甲2発明の「透明の第1の電極122」と本件特許発明1の「透明基材および前記透明基材上に形成された透明電極を有する透明電極基材」とは、「透明電極部材」である点で共通する。

b 甲2発明の「第2の電極のグリッド124」と本件特許発明1の「対向基材および前記対向基材上に形成された対向電極を有する対向電極基材」とは、「対向電極部材」である点で共通する。

c 甲2発明の「電気泳動媒体123」は、本件特許発明の「表示媒体」に相当する。
そして、甲2発明では、「波長AL1及びAL2の入射周辺光は、カバー窓120の半透明層126により吸収され、波長AL3の周辺光は、前記カバー窓120及び第1の電極122を通過し、そして電気泳動媒体123内の白色粒子で反射し、反射光RLとして電極122及び前記カバー窓120を通過」することで、「電気泳動媒体123」は「電気泳動ディスプレイ」の表示機能をなすから、甲2発明の「電気泳動媒体123」と本件特許発明1の「前記透明電極基材および前記対向電極基材の間に配置され、表示媒体を含有する表示媒体層」とは、「前記透明電極部材および前記対向電極部材の間に配置され、表示媒体を含有する表示媒体層」という点で共通する。

d 甲2発明の「電気泳動ディスプレイであるディスプレイ領域112」は、電子ペーパーの一形態であるから、本件特許発明1の「電子ペーパー」に相当する。

e したがって、甲2発明と本件特許発明と、「透明電極部材、対向電極部材、ならびに、前記透明電極部材および前記対向電極部材の間に配置され、表示媒体を含有する表示媒体層を有する電子ペーパー」である点で共通する。

(ウ)本件特許発明1の「前記視覚効果処理基材が、前記電子ペーパーの前記透明電極基材の前記表示媒体層側とは反対側に配置されており」との発明特定事項について

甲2発明の「カバー窓120」と「第1の電極122」とは、「波長AL1及びAL2の入射周辺光は、前記カバー窓120の半透明層126により吸収され、波長AL3の周辺光は、前記カバー窓120及び前記第1の電極122を通過し、そして電気泳動媒体123内の白色粒子で反射」できる配置になっているから、甲2発明は、本件特許発明1の上記発明特定事項を備える。

(エ)本件特許発明1の「前記視覚効果処理基材が、基材と前記基材上に形成され光透過性を有し第1視覚効果を有する視覚効果層を有し、前記視覚効果層と前記電子ペーパーに表示される第2視覚効果とが平面視上重なるように配置されており」との発明特定事項について

a 甲2発明の「カバー窓120」は、「半透明層126」と「透明カバー118」とを有しており、「ディスプレイ領域112」において、「波長AL1及びAL2の入射周辺光は、前記カバー窓120の半透明層126により吸収され、波長AL3の周辺光は、前記カバー窓120及び第1の電極122を通過し、そして電気泳動媒体123内の白色粒子で反射し、反射光RLとして前記電極122及び前記カバー窓120を通過し、ディスプレイ表面103において観察される」から、「半透明層126」は、視覚効果を有する層である。

b また、上記aのとおりであるから、「半透明層126」と「ディスプレイ領域112」が、本件特許発明1のように、平面視上重なるように配置されていることは明らかである。

c したがって、甲2発明は、本件特許発明1の上記発明特定事項を備える。

(オ)本件特許発明1の「前記視覚効果層自体が、前記第1視覚効果としての模様を表示し、さらに前記視覚効果層を透過させて前記第2視覚効果を表示するものであり」との発明特定事項について

甲2発明において、「波長AL1及びAL2の入射周辺光は、前記カバー窓120の半透明層126により吸収され、波長AL3の周辺光は、前記カバー窓120及び前記第1の電極122を通過し、そして電気泳動媒体123内の白色粒子で反射し、反射光RLとして電極122及び前記カバー窓120を通過」することにより、「ディスプレイ領域112」の表示内容が「カバー窓120」を透過して表示されるから、両者は、「前記視覚効果層自体が、前記第1視覚効果を表示し、さらに前記視覚効果層を透過させて前記第2視覚効果を表示する」という点で一致する。

(カ)本件特許発明1の「前記第2視覚効果が、全面表示による色彩であり」との発明特定事項について

a 甲2発明において、「波長AL3の周辺光は、前記カバー窓120及び第1の電極122を通過し、そして電気泳動媒体123内の白色粒子で反射し、反射光RLとして前記電極122及び前記カバー窓120を通過し、ディスプレイ表面103において観察される」から、当該白色粒子で反射した反射光RLは、ディスプレイ領域112の「全面」において「波長AL3に対応する色」であることは明らかである。

b 他方、本件特許の発明の詳細な説明には、下記のような記載があり、「色彩」に、白色または黒色が含まれており(特許権者の平成31年4月15日付けの意見書の2ページ下から9行?3ページ1行の主張からも明らかである。)、本件特許発明1の「色彩」には、白色及び黒色のような単色のものを含んでいることは明らかである。

明細書の段落0018には、「視覚効果処理基材において第1視覚効果1である模様(模様1)を、電子ペーパーを用いて第2視覚効果2である全面白色表示2Aを行った場合、視覚効果処理基材の模様1と視覚効果処理基材を透過した全面白表示2Aとにより、情報表示媒体100全体の表示として白みがかった模様1、2Aを表示することができる。・・・略・・・電子ペーパーの表示媒体の駆動を変化させ、・・・略・・・第2視覚効果2として全面黒表示2Cを表示させた場合、視覚効果処理基材の模様1と視覚効果処理基材を透過した全面黒表示2Cとにより、情報表示媒体100全体の表示として黒みがかった模様1、2Cを表示することができる。」と記載されている。

c したがって、甲2発明の「波長AL3に対応する色」は「色彩」といえるから、甲2発明は、本件特許発明1の上記発明特定事項を備える。

(キ)本件特許発明1の「前記視覚効果処理基材が、前記電子ペーパーの前記透明電極側の面に着脱可能に配置されている」との発明特定事項について

甲2発明は、「装置に取り付けられる一般的な装飾に適応し得る」ものであって、装飾が取り付けられるものの、本件特許発明1のように、「視覚効果処理基材」が「着脱可能に配置されている」とまではいえない。

(ク)本件特許発明1の「情報表示媒体」との発明特定事項について

上記(イ)のとおりであるから、甲2発明の「スマートカード101」は、本件特許発明1の「情報表示媒体」に相当する。

したがって、本件特許発明1と甲2発明との間には、次の一致点、相違点がある。

(一致点)
「 光透過性を有し視覚効果処理が施された視覚効果処理基材と、
透明電極部材、対向電極部材、ならびに、前記透明電極部材および前記対向電極部材の間に配置され、表示媒体を含有する表示媒体層を有する電子ペーパーと、を有し、
前記視覚効果処理基材が、前記電子ペーパーの前記透明電極部材の前記表示媒体層側とは反対側に配置されており、
前記視覚効果処理基材が、基材と前記基材上に形成され光透過性を有し第1視覚効果を有する視覚効果層を有し、前記視覚効果層と前記電子ペーパーに表示される第2視覚効果とが平面視上重なるように配置されており、
前記視覚効果層自体が、前記第1視覚効果を表示し、さらに前記視覚効果層を透過させて前記第2視覚効果を表示するものであり、
前記第2視覚効果が、全面表示による色彩である情報表示媒体。」

(相違点1)
透明電極部材が、本件特許発明1では、「透明基材および前記透明基材上に形成された透明電極を有する透明電極基材」であるのに対し、甲2発明では、「第1の電極122」の具体的な構成は特定されていない点。

(相違点2)
対向電極部材が、本件特許発明1では、「対向基材および前記対向基材上に形成された対向電極を有する対向電極基材」であるのに対し、甲2発明では、「第2の電極のグリッド124」の具体的な構成は特定されていない点。

(相違点3)
電子ペーパーが、本件特許発明1では、「前記透明電極基材および前記対向電極基材の間に配置され」るのに対し、相違点1及び2に伴い、透明電極基材と対向電極基材基材間に配置されているとはいえない点。

(相違点4)
視覚効果処理基材(カバー窓120)が、本件特許発明1では、「前記電子ペーパーの前記透明電極基材の前記表示媒体層側とは反対側に配置されて」いるのに対し、相違点1及び2に伴い、透明電極基材の表示媒体層側とは反対側とはいえない点。

(相違点5)
第1視覚効果が、本件特許発明1では、「模様」であるのに対し、甲2発明では、「模様」か否か明らかでない点。

(相違点6)
視覚効果処理基材が、本件特許発明1では、「前記電子ペーパーの前記透明電極側の面に着脱可能に配置されている」のに対し、甲2発明ではそのようなことが不明である点。

イ 当審の判断
(ア)相違点1?4について
a 電子ペーパーの技術分野において、電極を構成する場合に、2枚の基板上にそれぞれ透明電極及び対向電極を配置した電極構造とすること、及び、それらの間に電気泳動物質を配置することは、例えば、上記3(3)で周知例4として挙げた、特開2008-299334号公報(図1?7を参照。甲第1号証)に見られるように、周知・慣用のことであるから、相違点1?3は実質的なものではない。
また、相違点4についても、上記周知の電極構造を踏まえれば、実質的な相違ではない。

b また、相違点1?4に係るような「視覚効果処理基材」及び「電子ペーパー」の各基材や電極等のすべての位置関係を総合して考えたとしても、甲1号証の段落0024の「画素アレイモジュール21'''は、さらに、第一パターン化導電層213”及び第二パターン化導電層215を備える。このうち、第一パターン化導電層213”は基板211の第二表面211bに設置される。第二パターン化導電層215は基板211の第一表面211aと第二表面211bの間に設置される。」との記載、同段落0026の「透明電極層222は、上部基板221の一側面に設置され、さらに、電気泳動性物質223を挟んで画素電極アレイ212と対向する位置に設置される。」との記載、同段落0031の「印刷層23は、インクジェットまたはプリント方式で、透明基板24の表面に形成される。さらに、この印刷層23を有する透明基板24が上部基板221に粘着結合される」との記載、同段落0037の「電子ペーパー本体に現されるパターンを変更したい時は、・・・略・・・またはカバープレートを交換するだけでよい。」との記載及び同図5からみて、そのような位置関係のものは、本願の出願日である平成25年3月6日の前に既に知られたものである。

(イ)相違点5について
a 甲2発明においては、「スマートカード101に取り付けられる一般的な装飾に適応し得るように、前記カバー窓120のディスプレイ表面103は、不活性化状態において不均一な色となるよう構成され得る」のであるから、「一般的な装飾に適用し」ようとした場合に表示しようとする「不均一な色」と当該「装飾」とは同様に見える必要があることは明らかであって、両者は共に「不均一な色」すなわち「模様」であると言える。
また、仮にそうでないとしても、当該「一般的な装飾」として「模様」を選択することは、美観等のデザイン上の問題であって、当業者の通常の創作活動の範囲のことである。

b 他方、甲第2号証には、上記3(1)ウのとおり、図10にみられる第5の実施例として、「反射光RL」と「反射又は散乱する着色されたパターン426」とが重ね合わされて、ディスプレイ表面103において観察されるものであって、「スマートカード401を設計する場合、カード本体6に設けられる透明カバー18に塗布される不透明プリント19の色、及びパターン426の色及び被覆率は、図5及び図6を参照した記載と同様に、一致する」ようにすることが記載されている。
このことから、甲第2号証においては、上記aのとおり、「装飾」とディスプレイ表面103の「不均一な色」とを同様に見せるための手段として、上記「反射光RL」と「反射又は散乱する着色されたパターン426」とを重ね合わせる手段が示唆されているといえる。

c そうすると、上記bの示唆に基づいて、上記3(2)に示した「光透過性を有する部材に模様を形成したものを、表示装置の表示と重ねて表示する技術」(周知技術1)を適用することは、当業者であれば容易に想到し得たものであるから、甲2発明において、第1視覚効果として模様とすることは、技術的に見ても、当業者にとって特に困難なことではない。

(ウ)相違点6について
甲2発明のスマートカード101において、カバー窓120は、前記半透明層126に加え、透明カバー118と透明カバー118に塗布される不透明プリント119とを有しているものである。
そして、甲2発明が、「カード本体106に設けられる透明カバー118に塗布される不透明プリント119の色、及びディスプレイ領域112に適用されるカバー窓120の層126の色は一致」するものであり、それによって、「波長AL1及びAL2の入射周辺光は、前記カバー窓120の半透明層126により吸収され、波長AL3の周辺光は、前記カバー窓120及び第1の電極122を通過し、そして電気泳動媒体123内の白色粒子で反射し、反射光RLとして前記電極122及び前記カバー窓120を通過し、ディスプレイ表面103において観察される反射光RLは、ディスプレイ表面103を囲む最前部表面102において観察される光RLと実質的に同一」となるものである。
そうすると、甲2発明において、半透明層126と不透明プリント119とは、一体的に取り扱われるべきものであることは明らかである。

また、上記3(5)に示したとおり、「カードの表面に着脱可能な視覚効果を有するフィルムを貼着すること」は、本願出願前に広く知られた一般的な技術的事項であることから、甲2発明において、半透明層126と不透明プリント119が形成されたカバー窓120を一体として着脱可能としてもよいことは、当業者であれば容易に予測し得ることであり、その際、「電子ペーパー本体に表示するパターン等を印刷した透明なカバープレートを、電子ペーパーの上面に着脱可能に配置する技術」(周知技術2)を勘案して、半透明層126と不透明プリント119が形成されたカバー窓120を一体として着脱可能とすることは、当業者であれば容易になし得ることである。

(ウ)本件特許発明1の作用効果について
上記相違点1?相違点6を総合的に勘案しても、本件特許発明1の奏する作用効果は、甲2発明及び上記周知技術等の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲2発明及び上記周知技術等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2) 本件特許発明2について
ア 対比・一致点・相違点について
本件特許発明2と甲2発明とを対比する。
本件特許発明2と甲2発明とを対比すると、上記(1)アの(一致点)で一致し、上記(1)アの(相違点1)?(相違点6)に加え、次の点で相違する。

(相違点7)
本件特許発明2では、「前記情報表示媒体が、前記電子ペーパーに隣接して配置された太陽電池を有し、前記電子ペーパーの前記透明電極基材の前記表示媒体層側とは反対側および前記太陽電池表面に前記視覚効果処理基材が配置されている」のに対し、甲2発明は、「太陽電池」が特定されていない点。

イ 当審の判断
(ア)相違点1?相違点6について
相違点1?相違点6については、上記(1)イで判断したとおり。

(イ)相違点7について
電子ペーパーの電源として太陽電池を用い、太陽電池の表面に透明板が配置され、太陽電池に隣接して電子ペーパーが配置される技術は、上記3(4)のとおり、周知の技術(周知技術3)である。
そして、甲2発明に上記周知技術3を適用して、相違点7に係る本件特許発明2の発明特定事項となすことは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

(ウ)本件特許発明2の作用効果について
上記相違点1?相違点7を総合的に勘案しても、本件特許発明2の奏する作用効果は、甲2発明及び上記周知技術等の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

ウ 小括
本件特許発明2は、甲2発明及び上記周知技術等に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3) 特許権者の意見について
ア 特許権者は、平成30年10月26日の意見書において、主に以下の点を主張している。

(ア)「一般に、スマートカードにおきましては、電気泳動ディスプレイ等のディスプレイ領域112はカード内に埋め込まれており、カバー窓はその上に接着剤により接着固定されており、脱着可能とされることはありません。」
(イ)(引用発明の)「ディスプレイ表面503に表されている模様は、最前部表面502により決定されているものであり、ディスプレイ表面503を変更するという必要性、すなわちディスプレイ表面503を脱着可能とする動機付けは一切ありません。」

しかし、上記(1)イ(ウ)で検討したとおりであるから、特許権者の上記主張を採用することができない。

イ 特許権者は、平成31年4月15日の意見書において、主に以下の点を主張している。

(ア)(引用発明の)「上記ディスプレイが活性状態である際に情報が表示されるとは、本発明の第2視覚効果が文字であることを示すものであります。一方、本発明におきましては、「前記第2視覚効果が、全面表示による色彩であり」ます。したがって、この点で引用発明と上記本発明とは異なるものであります。」

(イ)「引用発明に対して、上記本発明の発明特定事項Fを組み合わせたのでは、引用発明におきまして、ディスプレイが活性化状態の際に、全面表示による色彩が変化するものとなりますことから、クレジット情報等の情報を表示することができなくなってしまい、引用発明の作用効果を奏することができなくなります。」

しかし、(1)ア(カ)で検討したように、甲2発明は、ディスプレイ領域112の全面において「波長AL3に対応する色」が表示されるものであるし、上記(2)イ(イ)で検討したように、甲2発明に周知技術1を適用した場合であっても、ディスプレイ領域112の全面において「反射光RL」よって「不均一な色」が表示されるのであるから、上記特許権者の主張(ア)及び(イ)は当を得ない。
また、上記主張(ア)及び(イ)が、甲2発明が活性化状態において文字を表示する場合があることをもって本件特許発明と相違するとの主張だと考えたとしても、活性化状態に相当するような事項について、本件特許発明には特段の特定はなく、また、本願の明細書の段落0018及び図2によれば、本件特許発明も文字を表示し得る態様を含んでいるから、両者に特許権者の主張するような相違を見出せない。
したがって、特許権者の主張を採用することはできない。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1及び2は、甲2発明及び上記周知技術等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本件特許発明1及び2は、甲2発明及び周知技術等に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。そうすると、本件特許発明1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件特許発明1及び2に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有し視覚効果処理が施された視覚効果処理基材と、
透明基材および前記透明基材上に形成された透明電極を有する透明電極基材、対向基材および前記対向基材上に形成された対向電極を有する対向電極基材、ならびに、前記透明電極基材および前記対向電極基材の間に配置され、表示媒体を含有する表示媒体層を有する電子ペーパーと、を有し、
前記視覚効果処理基材が、前記電子ペーパーの前記透明電極基材の前記表示媒体層側とは反対側に配置されており、
前記視覚効果処理基材が、基材と前記基材上に形成され光透過性を有し第1視覚効果を有する視覚効果層を有し、前記視覚効果層と前記電子ペーパーに表示される第2視覚効果とが平面視上重なるように配置されており、
前記視覚効果層自体が、前記第1視覚効果としての模様を表示し、さらに前記視覚効果層を透過させて前記第2視覚効果を表示するものであり、
前記視覚効果処理基材が、前記電子ペーパーの前記透明電極側の面に着脱可能に配置されていることを特徴とする情報表示媒体。
【請求項2】
前記情報表示媒体が、前記電子ペーパーに隣接して配置された太陽電池を有し、前記電子ペーパーの前記透明電極基材の前記表示媒体層側とは反対側および前記太陽電池表面に前記視覚効果処理基材が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の情報表示媒体。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-05-21 
出願番号 特願2013-44337(P2013-44337)
審決分類 P 1 651・ 121- ZAA (G02F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 磯崎 忠昭  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 西村 直史
山村 浩
登録日 2017-12-01 
登録番号 特許第6248398号(P6248398)
権利者 大日本印刷株式会社
発明の名称 情報表示媒体  
代理人 岸本 達人  
代理人 山下 昭彦  
代理人 山下 昭彦  
代理人 岸本 達人  
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