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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E04F
管理番号 1354951
異議申立番号 異議2019-700430  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-10-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-05-28 
確定日 2019-08-30 
異議申立件数
事件の表示 特許第6430124号発明「コーナーボード」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6430124号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6430124号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成26年2月14日に特許出願され、平成30年11月9日に特許の設定登録がされ、平成30年11月28日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和1年5月28日に特許異議申立人金澤毅(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。

第2 本件発明
本件特許の請求項1?5に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される、下記のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」という。)。

「【請求項1】
建築物の室内の柱に取り付けられるコーナーボードであって、
裏面で前記柱の一側面に対向することとなる第一石膏ボード芯材部と、
前記柱の一側面に隣接する他側面に、裏面で対向することとなる第二石膏ボード芯材部と、
前記第一石膏ボード芯材部の表面及び前記第二石膏ボード芯材部の表面を覆うようにして設けられた表面側紙部材と、
前記第一石膏ボード芯材部の裏面を覆うようにして設けられた第一裏面側紙部材と、
前記第二石膏ボード芯材部の裏面を覆うようにして設けられた第二裏面側紙部材と、
前記第一石膏ボード芯材部及び前記第二石膏ボード芯材部に隣接して配置されるとともに前記表面側紙部材の裏面に隣接して配置される補強部材と、
を備え、
前記柱に取り付けられる前の状態において、前記第一石膏ボード芯材部及び前記第二石膏ボード芯材部の間に前記補強部材を挟み込んだ状態で、前記第一石膏ボード芯材部及び前記第二石膏ボード芯材部と前記補強部材とが折れ曲がり形状をなすように固着されており、
前記柱の前記一側面及び前記他側面によって形成される角部を覆うようになっており、
前記第一石膏ボード芯材部に隣接して前記補強部材が配置され、前記補強部材に隣接して前記第二石膏ボード芯材部が配置され、前記第一石膏ボード芯材部及び前記第二石膏ボード芯材部は互いに接触せず、
前記補強部材は、前記柱の側を向く部分に矩形状に切り欠かれることにより形成された、前記柱への取り付け前の状態で外部に露出する切欠きを有し、前記切欠きの前記第一石膏ボード芯材部の側に位置する面は前記柱に取り付けられる前の状態において当該第一石膏ボード芯材部の裏面に設けられた前記第一裏面側紙部材の裏面に直線状に連なっており、前記切欠きの前記第二石膏ボード芯材部の側に位置する面は前記柱に取り付けられる前の状態において当該第二石膏ボード芯材部の裏面に設けられた前記第二裏面側紙部材の裏面に直線状に連なっており、
前記柱に対して密着して取り付けられることを特徴とするコーナーボード。
【請求項2】
前記補強部材は不燃性材料からなることを特徴とする請求項1に記載のコーナーボード。
【請求項3】
前記補強部材は、前記表面側紙部材に隣接する部分で横断面が円弧形状となっていることを特徴とする請求項2に記載のコーナーボード。
【請求項4】
前記不燃性材料は不燃性無機質材料であることを特徴とする請求項2又は3に記載のコーナーボード。
【請求項5】
前記不燃性無機質材料は珪酸カルシウムであることを特徴とする請求項4に記載のコーナーボード。」
第3 申立理由の概要
1 本件特許の請求項1?4に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
2 本件特許の請求項5に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された発明に基いて、もしくは、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

[証拠方法]
甲第1号証:実願昭50-165554号(実開昭52-77534号)のマイクロフィルム
甲第2号証:登録実用新案第3092498号公報
甲第3号証:建材総合力クログ ’13-’14、日本、フクビ化学工業株式会社、2013年10月
甲第4号証:日刊木材新聞、日本、2014年1月8日
甲第5号証:コーナー専用タイガーパネルL型、日本、吉野石膏株式会社、1983年10月

第4 各甲号証の内容
1 甲第1号証について
(1)甲第1号証の記載事項(下線は決定で付した。以下同様。)
ア「この考案は、柱あるいは梁に使用される覆工材、特に石膏ボード等の塑造材製パネルにより形成された覆工材に関するものである。」(明細書1頁14-16行)
イ「・・この考案を図面に示す実施例について説明すると、両面または片面に紙、布、合成樹脂シート等の表面材1を貼着してなる石膏ボード等の塑造材製パネル2の側縁と平行にかつ両側縁から等距離の位置に、その表面材1(両面に貼着されている場合はそのいずれか一方)を底面とする2条の断面矩形の凹溝3を形成する。そして、この凹溝3において面板部分4と側面部分5を折曲するとき第1?3図に示すように角部に空隙を形成するようになつている。
面板部分4と側面部分5の折曲に際して、予め凹溝3に断面角形、三角形および扇形等の硬質合成樹脂、金属、その他適度の剛性を有する材料からなる芯材6を配し、接着剤により固着する。さらに側面部分5の外がわ端部にはテーパー7が形成されている。
このように、パネル2の側縁と平行にかつ両側縁から等距離に適宜2条の凹溝3を設け、その左右の面板部分4と側面部分5を折曲することにより第1図乃至第3図に示すような溝型の柱、梁の覆工材8を形成することができる。
そして、第5図に示すように柱9の外周にパテ10により溝形の覆工材8,8を側面部分5の端縁を互いに突合せて接合する。さらに側面部分5のテーパー7により接合部の外側に凹部が形成されるので、そこにパテあるいは充填材等を充填する。
なお、柱9に覆工材8を取付ける下地材としてはパテ10に限るものではなく、他の各種形態の下地材であつてもよい。
また、柱に壁が連続している場合、すなわち柱が独立していないような場合、柱の半周に配置することも可能である。」(明細書2頁7行-3頁19行)
ウ「第7図、第8図および第9図は詰物の形状の異なる実施例を示すもので、断面角形、三角形および扇形の一角部分にリブ17,17が設けられている。そして、そのリブ17,17が面板部分4および側面部分5の裏面に接着剤により固定され、面板部分4と側面部分5の裏面側角部を覆うようになっている。したがつて、リブ17,17を設けることにより、面板部分4と側面部分5の裏面側角部を保護し、欠損を防止することができるとともに、面板部分4と側面部分5を直角に折曲して確実に固定できる。」(明細書4頁12行-5頁2行)
エ「この考案は、・・・パネルには、その表面材を貼着してなる塑造材製パネルに、前記表面材を底面とする断面矩形の凹溝をパネルの側縁と平行にかつ両側面から等距離に設け、この凹溝においてその左右の面板部分と側面部分を折曲し、前記凹溝には芯材を配し、接着剤により接着するので、パネルの折曲が容易にできるとともに、芯材により角部が補強され、欠損を生ずることはない。また、柱および梁の覆工材として堅牢で、しかも全体として曲げ強度を増大させることができる。さらに、所要の大きさの溝型に形成された覆工材を柱および梁の外側の取付けるだけの作業で済むので、施工が迅速かつ容易にでき、工期、工費の削減ができる等実用価値が大である。」(明細書5頁3-17行)
オ「第1図、第2図および第3図はこの考案による覆工材の横断面図、第4図はその展開横断面図、第5図は柱の覆工材として使用した状態を示す断面図、第6図は梁の覆工材として使用した状態を示す断面図、第7図、第8図および第9図は芯材の形状の異なる実施例の要部を示す断面図である。」(明細書5頁下から2行-6頁5行)

カ 図面
(ア)第1図、第3図及び第4図






上記図から以下の点が看て取れる(折曲したときに、面板部分及び左右2つの側面部分5で囲まれる側を「内側」といい、その反対側を「外側」という。)。
a 第1図及び第3図から、面板部分4及び左右2つの側面部分5を有する覆工材8における、テーパー7がある外側の面及び、当該面とは反対側の内側の面の両面に、表面材1が覆うように設けられている点。
b 第1図及び第3図から、芯材6が面板部分4及び左右2つの側面部分5に隣接して配置され、芯材6が円弧部分を有する断面を有している点。
c 第1図及び第3図から、テーパー7がある外側の表面材1の裏面に芯材6が隣接して配置されている点。
d 第1図及び第3図から、覆工材8が柱に取り付けられていない状態であって、面板部分4及び左右2つの側面部分5の間に芯材6を挟み込んだ状態で、面板部分4及び左右2つの側面部分5と芯材6とが折れ曲がり形状をなす状態となっている点。
e 図4から、面板部分4と左右2つの側面部分5にわたって、テーパー7がある面に、表面材1が配設されている点。

(イ)第5図



第5図から以下の点が看て取れる(以下、図面上での上側、下側、右側、左側を、それぞれ「上側」「下側」「右側」「左側」という。)。
a 2つの覆工材8が、四角い柱9の左右から突き合わせて接合され、それぞれの覆工材8において、上側及び下側の芯材6それぞれの右側ないしは左側に横長の棒状部材が存在しており、また、上側及び下側の芯材6の間に縦長の棒状部材が配置されている点。
b 左側の覆工材8において、上側の芯材6の右側に存在している横長の棒状部材及び下側の芯材6の右側に存在している横長の棒状部材が、四角い柱9の四方の面のうちの上側及び下側の面と向かい、覆工材8の上側及び下側の芯材6の間に配置されている縦長の棒状部材が、四角い柱9の四方の面のうちの前記上側及び下側の面に対して直交して隣接する四角い柱9の四方の面のうち左側の面に向かっている点。
c 覆工材8の上側及び下側の横長の棒状部材並び縦長の棒状部材とによって、前記柱9の上側及び下側の面並びに左側の面により形成される2つの角部を覆うようになっている点。
d 覆工材8の上側及び下側の横長の棒状部材に隣接して芯材6が配置され、前記芯材6に隣接して縦長の棒状部材が配置され、上側及び下側の横長の棒状部材と縦長の棒状部材が互いに接していない点。
e 覆工材8の上側及び下側の横長の棒状部材並び縦長の棒状部材が、柱9に対して下地材としてのパテ10を介して取り付けられている点。

(ウ)上記(ア)の覆工材8と(イ)の左側の覆工材8の各部材の対応関係
a 上記(ア)の第1図及び第3図に示された覆工材8と、上記(イ)の第5図の左側に示された覆工材8の配置状況からみて、第5図の左側の覆工材8にとって第5図の上下は、第1図及び第3図の覆工材8の左右に対応する。
b 上記(イ)の第5図に示された左の覆工材8の上側及び下側の横長の棒状部材は、芯材6の位置及びテーパー状が形成されている部位からみて、(ア)の第1図及び第3図の左右2つの側面部分5と対応する部位であるといえる。
c 同様に、上記(イ)の第5図に示された左の覆工材8の縦長の棒状部材は、(ア)の第1図及び第3図の面板部分4に対応する部材であるといえる。

(エ)第5図に記載されている事項
上記(ウ)の対応関係を踏まえて、上記(イ)をみると、第5図には、次の事項が記載されていることがいえる。
a 覆工材8の左側及び右側の側面部分5が、四角い柱9の四方の面のうちの左側及び右側の面と向かい、面板部分4が、四角い柱9の四方の面のうちの前記左側及び右側の面に対して直交して隣接する面に向かっていること。
b 覆工材8の左側及び右側の側面部分5及び面板部分4によって、柱9の左側及び右側の面並びにこれらの面に直交する面により形成される2つの角部を覆うようになっていること。
c 覆工材8の左側及び右側の側面部分5に隣接して芯材6が配置され、前記芯材6に隣接して面板部分4が配置され、上側及び下側の側面部分5と面板部分4が互いに接していないこと。

(オ)第9図



a 第9図から、面板部分4及び側面部分5の内側にある表面材1において、芯材6に近傍の部分の裏面を覆い、かつ芯材6に接続させて配置したリブ17が看て取れる。

(2)甲第1号証に記載された発明
上記(1)を踏まえると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明)
「柱9に使用される石膏ボードの塑造材製パネルにより形成された覆工材8であり、両面に紙の表面材1を貼着してなる石膏ボードの塑造材製パネル2の側縁と平行にかつ両側縁から等距離の位置に、その表面材1を底面とする2条の断面矩形の凹溝3を形成し、凹溝3において面板部分4と左右2つの側面部分5を折曲するに際して、予め凹溝3に断面扇形の適度の剛性を有する材料からなる芯材6を配し、接着剤により固着して形成された溝形の柱の覆工材8であって、
面板部分4及び左右2つの側面部分5を有する覆工板8において、テーパー7がある外側の面及び、当該面とは反対側の内側の面の両面を紙の表面材1が覆うように設けられるとともに、テーパー7と同じ側にある紙の表面材1の裏面に芯材6が隣接して配置され、
芯材6が面板部分4及び左右2つの側面部分5に隣接して配置され、
覆工材8が柱9に取り付けられていない状態であって、面板部分4及び左右2つの側面部分5の間に芯材6を挟み込んだ状態で、面板部分4及び左右2つの側面部分5と芯材6とが折れ曲がり形状をなす状態となっており、
覆工材8の左側及び右側の側面部分5が、四角い柱9の四方の面のうちの左側及び右側の面と向かい、面板部分4が、四角い柱9の四方の面のうちの前記左側及び右側の面に対して直交して隣接する面に向かっており、
覆工材8の左側及び右側の側面部分5並びに面板部分4によって、柱9の左側及び右側の面並びにこれらの面に直交する面により形成される2つの角部を覆うようになっており、
覆工材8の左側及び右側の側面部分5に隣接して芯材6が配置され、前記芯材6に隣接して面板部分4が配置され、上側及び下側の側面部分5と面板部分4が互いに接しておらず、
柱9に対してパテ10やその他の下地材を介して取り付けられる、覆工材8。」

2 甲第2号証について
(1)甲第2号証の記載事項
ア「【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、建物の例えば室内等に配置され交差する壁面隅部構造の改良に関するものである。 」
イ「【0004】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、請求項1の考案にあっては、直交する内側の壁面芯材(3)と外側の表面下地材(4)とを含む壁面隅部構造であって、平面視断面において外側の円弧面(1a)と内側の平坦な直角交差面(1b)と、前記円弧面(1a)の左右端部と前記直角交差面(1b)の左右端部を繋げる一対の平坦側面(1c)とで上下方向長手に連続して形成された壁面隅部構成材(1)を備え、前記芯材(3)の交差する角の外側に前記直角交差面(1b)を当接し前記円弧面(1a)を外側に置いて前記壁面隅部構成材(1)を固着し、前記平坦側面(1c)及び前記芯材(3)外面に前記表面下地材(4)を当接して固着した壁面隅部構造により解決した。・・・」
ウ「【0005】
【考案の実施の形態】
本考案の実施の形態を図面に基づき以下詳細に説明する。
図1は、本考案の一例の壁面隅部構造を示す組立て斜視図である。
図2は、図1の壁面隅部構造に用いる壁面隅部構成材及び幅木隅部構成材の斜視図である。
・・・
図1・・においては手前側、図2においては背面側を外側とし、外側と反対の凹状に見える側を内側とし、組立て状態において外側よりみて上下左右として説明する。
本考案の一例の壁面隅部構造に用いる壁面隅部構成材1は、図1、図2(a)に示す通り、外側が平面視断面において半径rの円弧面1aと、内側が平面視断面において平坦な直角交差面1bと、円弧面1aの左右端部と直角交差面1bの左右端部を繋げる左右対称位置の一対の平坦側面1cとが上下方向長手に連続して形成されている。壁面隅部構成材1は、通常木質、プラスチック、軽金属又はこれらの組合わせ材が用いられる。半径rは使用場所、周辺の構成材等によって選定されるので特に限定はないが、一例として25mmにとられる。」
エ「【0007】
次に、図1により壁面隅部構成材1及び幅木隅部構成材2が装着された交差する壁面隅部構造の一例について説明する。図3について従来の壁面隅部構造で説明したと同様に一対の壁面芯材3を直交させて組み、壁面芯材3端部の交差する角に壁面隅部構成材1の直角交差面1bを当接し円弧面1aを外側に置いてビス等の固着具により上下に固着する。次いで壁面隅部構成材1の各平坦側面1c及び壁面芯材3表面に一対の表面下地材4を当接して接着等により固着する。
更に図示しないが、必要により表面下地材4及び壁面隅部構成材1外表面全体に従来例で説明した表面仕上材を貼着して仕上げるのが美観及び損傷、汚れ防止上好ましい。
ここで壁面隅部の外側を直角でなく円弧状としたので怪我の心配がなく、段差が生ぜず充填材による段差解消の必要がないので施工の手間がかからず、外観上からも好ましい。
幅木隅部構成材2を付加する場合は、壁面隅部構成材1の円弧面1a下部から床面GGに渡り幅木隅部構成材2の内側の円弧面2bを当接し円弧面2aを外側に向けて接着する。次いで一対の長方形状幅木材7を左右において幅木隅部構成材2の各平坦側面2c及び表面下地材4表面に当接し、表面下地材4外面にビス、木ねじ、タック等の固着具により固着する。
表面下地材4表面に表面仕上材が貼着してある場合には、壁面隅部構成材1の円弧面1a外面の表面仕上材外側に下部から床面Gに渡り小径円弧面2bを当接し大径円弧面2aを外側に向けて幅木隅部構成材2を固着し、幅木材7を幅木隅部構成材2の各平坦側面2c及び表面下地材4外側の表面仕上材に当接し固着具により固着する。
幅木隅部構成材2は必須のものではなく選択的構成要素であるが、これを用いることにより壁面隅部構成材1を装着した壁面隅部構造下部の損傷、汚れ防止に有効である。
【0008】
【考案の効果】
本考案の壁面隅部構造によれば、用いた壁面隅部構成材が壁面隅部の外側を直角でなく円弧状としたので怪我の心配がなく、当て板による段差解消のために充填材を用いる必要がないので施工の手間がかからず、外観上からも暖か味がある。
又幅木隅部構成材を付加することにより、壁面隅部構造の下部の損傷、汚れ防止に有効である。」

オ 図面
(ア)【図1】




(イ)【図2】




3 甲第3号証について
(1)甲第3号証の記載事項
ア 250頁左側下方
「窯業系コーナー下地材 クロス下地コーナー
材質 繊維混入セメント ケイ酸カルシウム板」

イ 「4 省令準耐火構造対応タイプ」と題した図面
(250頁右側中段)




上記図面から以下の点が看て取れる。
(ア)クロス下地コーナーSJ15Rが、屈曲した構造を有し、柱の角部を覆っている点。
(イ)クロス下地コーナーSJ15Rに隣接してせっこうボードが配置されている点。

4 甲第4号証について
(1)甲第4号証の記載事項
図面



図面から、角補強材を有するコーナーボードを柱に取付けた点、及び、コーナーボードに壁せっこうボードを隣接させた点が看て取れる。

5 甲第5号証について
(1)甲第5号証の記載事項
ア 紙面上段
「コーナー専用
タイガーパネルL型
コーナーの仕上げをスピーディにしかも美しく。」
イ 紙面中段
「出隅に 入隅に 梁に 柱に」
ウ 紙面中段




第5 判断
1 進歩性欠如(特許法第29条2項)
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、
(ア)甲1発明の「柱9に対して」に「取り付けられ」ている「石膏ボードの塑造材製パネルにより形成された覆工材8」「であって」、「柱9の左側及び右側の面並びにこれらの面に直交する面により形成される2つの角部を覆うようになって」いるものは、本件発明1の「柱に取り付けられるコーナーボード」に相当し、本件発明1の「前記柱に対して密着して取り付けられることを特徴とするコーナーボード」とは、「柱に対して」「取り付けられる」「コーナーボード」の点で共通する。

(イ)また、甲1発明の「覆工材8」の「左側及び右側の側面部分5」は、「紙の表面材1」と紙の表面材1が貼着された部位とを含むことは明らかであり、また、紙の表面材1が貼着された部位が、石膏ボードの塑造材製であることは明らかである。そうすると、甲1発明の「左側及び右側の側面部分5」の紙の表面材1が貼着された部位及び「紙の表面材1」は、本件発明1の「第一石膏ボード芯材部」及び「紙部材」にそれぞれ相当する。
また、甲1発明の「左側及び右側の側面部分5」は、「四角い柱9の四方の面のうちの左側及び右側の面と向か」う部位であって、「左側及び右側の側面部分5」の裏面に位置する側が「四角い柱9の四方のうちの左側及び右側の面」に「向かって」いることは明らかである。そして、甲1発明の「四角い柱9の四方のうちの左側及び右側の面」と、本件発明1の「柱の一側面」とは、「柱の一側面」である点で共通する。
以上のことをふまえると、甲1発明の「覆工材8」の「左側及び右側の側面部分5」のうち、紙の表面材1が貼着された部位と、本件発明1の「裏面で前記柱の一側面に対向することとなる第一石膏ボード芯材部」とは、「裏面で前記柱の一側面に対向することとなる第一石膏ボード芯材部」である点で共通する。

(ウ)また、甲1発明の「覆工材8」の「面板部分4」は、「紙の表面材1」と紙の表面材1が貼着された部位とを含むことは明らかであり、また、紙の表面材1が貼着された部位が、石膏ボードの塑造材製であることは明らかである。そうすると、甲1発明の「面板部分4」の紙の表面材1が貼着された部位及び「紙の表面材1」は、本件発明1の「第一石膏ボード芯材部」及び「紙部材」にそれぞれ相当する。
また、甲1発明の「面板部分4」は、「四角い柱9の四方の面のうちの前記左側及び右側の面に対して直交して隣接する面に向か」う部位であって、「面板部分4」の裏面に位置する側が「四角い柱9の四方の面のうちの前記左側及び右側の面に対して直交して隣接する面」に「向かって」いることは明らかである。そして、甲1発明の「四角い柱9の四方の面のうちの前記左側及び右側の面に対して直交して隣接する面」と、本件発明1の「前記柱の一側面に隣接する他側面」とは、「前記柱の一側面に隣接する他側面」である点で共通する。
以上のことをふまえると、甲1発明の「覆工材8」の「面板部分4」のうち、紙の表面材1が貼着された部位と、本件発明1の「前記柱の一側面に隣接する他側面に、裏面で対向することとなる第二石膏ボード芯材部」とは、「前記柱の一側面に隣接する他側面に、裏面で対向することとなる第二石膏ボード芯材部」である点で共通する。

(エ)また、甲1発明の「石膏ボードの塑造材製パネル2」の両面に貼着された「両面に紙の表面材1」は、折曲した「面板部分4」及び「側面部分5」の外側及び内側を覆うように設けられていることは明らかである。
そうすると、甲1発明の「面板部分4」及び「側面部分5」の、外側を覆う「紙の表面材1」は、本件発明1の「前記第一石膏ボード芯材部の表面及び前記第二石膏ボード芯材部の表面を覆うようにして設けられた表面側紙部材」に相当し、同様に、甲1発明の「面板部分4」及び「側面部分5」の内側を覆う「紙の表面材1」は、本件発明1の「前記第一石膏ボード芯材部の裏面を覆うようにして設けられた第一裏面側紙部材」及び「前記第二石膏ボード芯材部の裏面を覆うようにして設けられた第二裏面側紙部材」に相当する。

(オ)また、甲1発明は、「芯材6が面板部分4」に「隣接して配置され」ているのであるから、面板部分4における、紙の表面材1が貼着された部位が、芯材6に隣接して配置されていることは明らかである。
また、甲1発明は、「芯材6」が「側面部分5に隣接して配置され」ているのであるから、側面部分5における、紙の表面材1が貼着された部位が、芯材6に隣接して配置されていることは明らかである。
そして、上記(イ)及び(ウ)で説示したように、甲1発明の、面板部分4における、紙の表面材1が貼着された部位、及び、側面部分5における、表面材1が貼着された部位は、それぞれ「第一石膏ボード芯材部」及び「第二石膏ボード芯材部」に相当する。
さらに、甲1発明の「芯材6」は、剛性を有する材料からなるものであるから、本件発明1の「補強部材」に相当する。
以上のことから、甲1発明の、面板部分4における、紙の表面材1が貼着された部位が隣接して配置されるとともに、側面部分5における、紙の表面材1が貼着された部位が隣接して配置される「芯材6」は、本件発明1の「前記第一石膏ボード芯材部及び前記第二石膏ボード芯材部に隣接して配置され」る「補強部材」に相当する。

(カ)また、甲1発明の「テーパー7と同じ側にある紙の表面材1の裏面」に「隣接して配置され」る「芯材6」を備えることは、本件発明1の「前記表面側紙部材の裏面に隣接して配置される補強部材」と、を備えることに相当する。

(キ)また、甲1発明の「覆工材8」は、「溝形」となるように「接着剤により固着して形成され」ているものであり、上記(イ)(ウ)で説示したとおり、甲1発明の、面板部分4における、紙の表面材1が貼着された部位、及び、側面部分5における、表面材1が貼着された部位は、それぞれ「第一石膏ボード芯材部」及び「第二石膏ボード芯材部」に相当する。
そうすると、甲1発明の「柱9に取り付けられていない状態において、面板部分4および側面部分5の間に芯材6を挟み込んだ状態で、面板部分4及び側面部分5と芯材6とが折れ曲がり形状をなす状態」となっていて、「接着剤により固着して形成され」ることと、本件発明1の「前記柱に取り付けられる前の状態において、前記第一石膏ボード芯材部及び前記第二石膏ボード芯材部の間に前記補強部材を挟み込んだ状態で、前記第一石膏ボード芯材部及び前記第二石膏ボード芯材部と前記補強部材とが折れ曲がり形状をなすように固着されて」いることとは、「前記柱に取り付けられる前の状態において、前記第一石膏ボード芯材部及び前記第二石膏ボード芯材部の間に前記補強部材を挟み込んだ状態で、前記第一石膏ボード芯材部及び前記第二石膏ボード芯材部と前記補強部材とが折れ曲がり形状をなすように固着されて」いる点で共通するといえる。

(ク)また、甲1発明の「柱9の左側及び右側の面並びにこれらの面に直交する面により形成される2つの角部を覆うようになって」いることと、本件発明1の「前記柱の前記一側面及び前記他側面によって形成される角部を覆うようになって」いることとは、「前記柱の前記一側面及び前記他側面によって形成される角部を覆うようになって」いる点で共通する。

(ケ)また、上記(オ)に加えて、甲1発明が、「覆工材8が柱9に取り付けられていない状態であって、面板部分4及び左右2つの側面部分5の間に芯材6を挟み込んだ状態で、面板部分4及び左右2つの側面部分5と芯材6とが折れ曲がり形状をなす状態」となっていることからみて、面板部分4における、紙の表面材1が貼着された部位と、側面部分5における、紙の表面材1が貼着された部位とが接触していないことは明らかである。また、上記(イ)(ウ)で説示したとおり、甲1発明の、面板部分4における、紙の表面材1が貼着された部位、及び、側面部分5における、表面材1が貼着された部位は、それぞれ「第一石膏ボード芯材部」及び「第二石膏ボード芯材部」に相当する。
そうすると、甲1発明の、面板部分4における、紙の表面材1が貼着された部位と、側面部分5における、紙の表面材1が貼着された部位とが接触していないことと、本件発明1の「前記第一石膏ボード芯材部に隣接して前記補強部材が配置され、前記補強部材に隣接して前記第二石膏ボード芯材部が配置され、前記第一石膏ボード芯材部及び前記第二石膏ボード芯材部は互いに接触」していないこととは、「前記第一石膏ボード芯材部に隣接して前記補強部材が配置され、前記補強部材に隣接して前記第二石膏ボード芯材部が配置され、前記第一石膏ボード芯材部及び前記第二石膏ボード芯材部は互いに接触」していない点で共通する。

そうすると、両者の一致点および相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「建築物の室内の柱に取り付けられるコーナーボードであって、
裏面で前記柱の一側面に対向することとなる第一石膏ボード芯材部と、
前記柱の一側面に隣接する他側面に、裏面で対向することとなる第二石膏ボード芯材部と、
前記第一石膏ボード芯材部の表面及び前記第二石膏ボード芯材部の表面を覆うようにして設けられた表面側紙部材と、
前記第一石膏ボード芯材部の裏面を覆うようにして設けられた第一裏面側紙部材と、
前記第二石膏ボード芯材部の裏面を覆うようにして設けられた第二裏面側紙部材と、
前記第一石膏ボード芯材部及び前記第二石膏ボード芯材部に隣接して配置されるとともに前記表面側紙部材の裏面に隣接して配置される補強部材と、
を備え、
前記柱に取り付けられる前の状態において、前記第一石膏ボード芯材部及び前記第二石膏ボード芯材部の間に前記補強部材を挟み込んだ状態で、前記第一石膏ボード芯材部及び前記第二石膏ボード芯材部と前記補強部材とが折れ曲がり形状をなすように固着されており、
前記柱の前記一側面及び前記他側面によって形成される角部を覆うようになっており、
前記第一石膏ボード芯材部に隣接して前記補強部材が配置され、前記補強部材に隣接して前記第二石膏ボード芯材部が配置され、前記第一石膏ボード芯材部及び前記第二石膏ボード芯材部は互いに接触しない、
コーナーボード。」

(相違点1)
補強部材について、本件発明1では、「前記柱の側を向く部分に矩形状に切り欠かれることにより形成された、前記柱への取り付け前の状態で外部に露出する切欠きを有し、前記切欠きの前記第一石膏ボード芯材部の側に位置する面は前記柱に取り付けられる前の状態において当該第一石膏ボード芯材部の裏面に設けられた前記第一裏面側紙部材の裏面に直線状に連なっており、前記切欠きの前記第二石膏ボード芯材部の側に位置する面は前記柱に取り付けられる前の状態において当該第二石膏ボード芯材部の裏面に設けられた前記第二裏面側紙部材の裏面に直線状に連なって」いるのに対して、甲1発明では、そのように特定されていない点。

(相違点2)
コーナーボードが柱に対して取付けられることについて、本件発明1では、「前記柱に対して密着して取り付けられる」のに対して、甲1発明では、「柱9に対してパテ10やその他の下地材を介して取り付けられている」点。

(相違点3)
コーナーボードが取り付けられる柱について、本件発明1では、「建築物の室内柱」であるのに対して、甲1発明では、そのような特定がなされていない点

イ 判断
上記相違点について検討する。
(ア)相違点1について
甲第2号証には、上記第4の2のとおりの事項が記載されている。すなわち、外側が平面視断面において半径rの円弧面1aと、内側が平面視断面において平坦な直角交差面1bと、円弧面1aの左右端部と直角交差面1bの左右端部を繋げる左右対称位置の一対の平坦側面1cとが上下方向長手に連続して形成されている壁面隅部構成材1が記載されており、直交させて組まれた一対の壁面芯材3の端部の交差する角に、前記壁面隅部構成材1の直角交差面1bを当接し円弧面1aを外側に置いて固着するとともに、壁面隅部構成材1の各平坦側面1c及び壁面芯材3表面に一対の表面下地材4を当接して固着する技術事項が記載されている。また、前記表面下地材4及び前記壁面隅部構成材1の外表面全体に表面仕上材を貼着して仕上げるという技術事項が記載されている。そして、上記壁面隅部構成材1に形成された平坦な直角交差面1bは、切欠きといいうる構造である。
甲1発明の課題は、柱および梁の周囲に下地材を複数本配して、板状のパネルを一枚一枚取付けていくものでは施工が容易でなく、多くの工期、工費を要することである(1頁下から3行?2頁2行)。一方、甲第2号証には、従来の壁面隅部構造にあっては、当て板を交差する壁面隅部の表面下地材等に固着し衝撃を緩和していたが、当て板の厚みによって表面下地材等との間に段差が生ずるので、当該段差を解消するために充填材で段差を埋めていたため、施工に手間がかかり、美観上からも好ましく、角が突出しており接触事故の対策が十分とはいえなかったこと(段落【0003】)を課題とすることが記載されている。
そうすると、両者はともに施工を容易にするためのものではあるものの、その前提となる施工の困難さは、甲1発明においては板状のパネルを一枚一枚取付けていくことに起因する一方、甲第2号証のものでは当て板の厚みによって段差が生ずることに起因するものであって、甲1発明と甲第2号証記載のものとの具体的な課題は異なるといえる。また、甲第2号証記載のものは、壁面隅部構成材を固着した後に表面下地材を当接して固着するものであるから、板状のパネルを一枚一枚取付けていくという甲1発明の課題を解決するものではないし、甲1発明は、甲第2号証記載のもののように当て板を用いるものではないから、甲第2号証のような課題を有するものではない。さらに、甲1発明の覆工材8は、パテ10やその他の下地材を介して柱9に取り付けられるものであって、覆工材8の芯材6は、柱9に対して当接等をして直接的に係わるものではない。
そうすると、甲1発明と甲第2号証に記載された事項とに課題の共通性があるとはいえず、また、甲1発明に、甲第2号証に記載された事項の課題が内在されているともいえない。よって、甲第2号証に記載された、壁面隅部構成材1に形成された直角交差面1b(切欠き)の事項を甲1発明に適用する動機付けはない。
したがって、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者であっても容易に想到することはできない。

ウ 申立人の主張について
(ア)申立人は、甲第1号証に開示された発明は、柱等に使用される覆工材に関する発明であり、柱等の角部が補強された構造を有し、簡単に施工でき、工期、工費を削減できる。また、甲第1号証には、芯材(詰め物)の形状を断面角形や、三角形、扇形等、任意に選択できることが記載され、例えばリブを設けた形状も開示されている。そうすると、甲第1号証において、覆工材を適用する柱の角部の形状や、柱に設置した後に求められる外形等に応じて芯材の形状を選択し、例えば設置する柱の外形にあわせて、芯材に面板部分側の面や、側面部分側の面が、面板部分の裏面や、側面部分の裏面と直線状に連なった矩形状の切欠き部を設けることは適宜為し得る設計事項に過ぎない、旨主張している。(申立書19頁16行?20頁1行)

しかしながら、甲第1号証には、芯材の形状を選択できる点が記載されているが、芯材に切欠きを設けることは記載も示唆もされてはいないし、また、詰物(芯材6)の一角部分に設けられたリブ17は、面板部分4及び側面部分5の内側にある表面材1において、芯材6に近傍の部分の裏面を覆い、かつ芯材6に接続させて配置したリブ17であって、芯材6に設けられた切欠きではない(上記第4の1(1)カ(オ)参照)。
一方、甲第2号証には、切欠き(直角交差面1b)が設けられた壁面隅部構成材1が記載されているが、当該壁面隅部構成材1は、一対の壁面芯材3を直交させて組み、壁面芯材3端部の交差する角に切欠きを当接し、円弧面1aを外側に置いてビス等の固着具により上下に固着されるものであり、その後、壁面隅部構成材1の各平坦側面1c及び壁面芯材3表面に一対の表面下地材4を当接して接着等により固着するものである。すなわち、壁面隅部構成材1は、表面下地材4と一体となって、上記交差する角の部分に当接されるものではない(上記第4の2(1)エ参照)。
したがって、このような記載に基づいて、甲1発明の芯材6に、面板部分側の面及び側面部分側の面が、面板部分の裏面及び側面部分の裏面と直線状に連なった矩形状の切欠き部を形成することが適宜為しうる設計事項であるということはできない。

(イ)申立人は、甲第1号証及び甲第2号証はいずれも、柱等の角部に設けられる仕上げ材に関する発明であるから、甲第1号証に開示された発明の芯材において、例えば柱表面と、芯材との密着性を高めるため、甲第2号証に開示された壁面隅部構成材の場合と同様に、直角交差面、すなわち矩形状の切欠き部を設け、該切欠き部の面板部分側の面や、側面部分側の面を、面板部分の裏面や、側面部分の裏面と直線状に連ねることは当業者であれば適宜為しうる程度のことである、旨主張している。(申立書20頁12?22行)

しかしながら、上記イで説示したとおり、甲1発明の覆工材8の芯材6は、柱9に対して当接等をして直接的に係わるものではないから、甲1発明において芯材と柱との密着性を高めるという課題は生じない。よって、甲第2号証に記載された事項を甲1発明に適用する動機付けはない。
したがって、甲1発明の芯材6において、矩形状の切欠き部を設け、該切欠き部の面板部分側の面や、側面部分側の面を、面板部分の裏面や、側面部分の裏面と直線状に連ねる構成とすることが当業者であれば適宜為しうる程度のことであるということはできない。

(ウ)申立人は、甲第4号証、甲第5号証に示されているように、柱に覆工材を取り付ける際に、直接柱に取り付けることは一般的な態様であり、本願出願日前既に周知慣用の技術でもある。このことからも、甲1発明が、柱の角部と芯材とが接触しないように配置する形態に限定されるものでないことは明らかである。また、仮に甲1発明において、覆工材が柱の角部と芯材とが接触しないように配置されていたとしても、上記周知慣用の技術に基いて、柱の角部と芯材とが接触した構成とすることは当業者であれば適宜為し得ることに過ぎない、旨主張している。(申立書22頁21?末行)

しかしながら、覆工材を直接柱に取り付けることが周知慣用の技術であるとしても、上述のとおり、甲1発明に甲第2号証に記載された事項を適用することが容易になしうることではないのであるから、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることができないことは明らかである。

以上のとおりであるから、申立人の主張を採用することはできない。

エ 小括
したがって、本件発明1は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲1発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2?4について
本件発明2?4は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み更に減縮した発明であるから、本件発明1についての判断と同様の理由により、甲1発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明5について
ア 甲1発明及び甲第3号証に記載された事項に基づく進歩性欠如、並びに、甲1発明、甲第2号証に記載された事項及び第3号証に記載された事項に基づく進歩性欠如について
(ア)対比
請求項5は、請求項1を間接的に引用しているところ、上記(1)アにおける本件発明1と甲1発明との対比を踏まえて、本件発明5と甲1発明とを対比すると、両者は、上記(1)アで説示した、(一致点)において一致し、(相違点1)?(相違点3)に加えて、以下の点で相違する。

(相違点4)
補強部材について、本件発明5では、「不燃性材料」からなり、「前記不燃性材料は不燃性無機質材料」であり、「前記不燃性無機質材料は珪酸カルシウム」であるのに対して、甲1発明では、そのような特定がなされていない点

(イ)判断
上記相違点について検討する。
a 相違点1について
甲第3号証及び第2号証には、上記第4の3及び2のとおりの事項が記載されている。
しかしながら、上記(1)イ(ア)で説示したとおり、甲1発明の覆工材8の芯材6は、柱9に対して当接等をして直接的に係わるものではないから、甲1発明及び甲第3号証に記載された事項、並びに、甲1発明及び甲第2号証に記載された事項において、課題の共通性があるとはいえず、また、甲1発明に、甲第3号証及び甲第2号証に記載の事項の課題が内在されているともいえない。
よって、甲第3号証に記載されたクロス下地コーナーSJ15Rという部材が有する屈曲した構造や、甲第2号証に記載された壁面隅部構成材1に形成された平坦な直角交差面1bの形状を、甲1発明に適用する動機付けはない。
したがって、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者であっても容易に想到することはできない。

(ウ)まとめ
したがって、本件発明5は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲1発明及び甲第3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲1発明、甲第2号証に記載された事項及び第3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

2 まとめ
以上のとおり、本件発明1?4は、甲1発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、それらの特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。また、本件発明5は、甲1発明及び甲第3号証に記載された事項に基いて、もしくは、甲1発明、甲第2号証に記載された事項及び甲第3号証に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものではない。


第6 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?5に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に請求項1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-08-21 
出願番号 特願2014-26135(P2014-26135)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (E04F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 金高 敏康津熊 哲朗  
特許庁審判長 森次 顕
特許庁審判官 小林 俊久
西田 秀彦
登録日 2018-11-09 
登録番号 特許第6430124号(P6430124)
権利者 チヨダウーテ株式会社
発明の名称 コーナーボード  
代理人 永井 浩之  
代理人 中村 行孝  
代理人 金川 良樹  
代理人 朝倉 悟  
代理人 佐藤 泰和  

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