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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B60C 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B60C |
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管理番号 | 1354956 |
異議申立番号 | 異議2018-700676 |
総通号数 | 238 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-10-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-08-13 |
確定日 | 2019-09-05 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6278843号発明「タイヤ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6278843号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6278843号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、平成26年6月12日の出願であって、平成30年1月26日にその特許権の設定登録(請求項の数7)がされ、同年2月14日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年8月13日に特許異議申立人 佐藤 雅彦(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年10月22日付けで取消理由が通知され、同年12月21日に特許権者 株式会社ブリヂストン(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出され、平成31年1月15日付けで特許異議申立人に対し審尋がされ、同年同月31日に特許異議申立人から回答書が提出され、同年3月22日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、令和1年5月24日に特許権者から意見書が提出され、同年6月20日付けで特許異議申立人に対し審尋がされ、同年7月9日に特許異議申立人から回答書が提出されたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 タイヤのトレッド表面に形成された、タイヤセンター部からトレッドの幅方向端部まで延長するタイヤ周方向及びタイヤ幅方向に対して傾斜する傾斜ラグ溝を備えたタイヤにおいて、 前記傾斜ラグ溝のタイヤ幅方向との成す角度をラグ溝傾斜角度とし、 前記タイヤの踏み込み側の接地形状の輪郭線の法線とタイヤ幅方向との成す角度を輪郭線傾斜角度とし、 前記タイヤの赤道面を中心とした、幅が前記タイヤの接地幅の20%の領域をセンター部、前記センター部の幅方向外側にそれぞれ隣接する、幅が前記タイヤの接地幅の20%の領域を中間部、前記中間部の幅方向外側にそれぞれ隣接する、幅が前記タイヤの接地幅の20%の領域をショルダー部としたとき、 前記ラグ溝傾斜角度と前記輪郭線傾斜角度との差の絶対値が、タイヤ幅方向の各位置において、0°以上60°以下の範囲にあり、 前記センター部と前記中間部における前記差の絶対値が、前記ショルダー部における前記差の絶対値よりも大きいことを特徴とするタイヤ。 【請求項2】 前記センター部と前記中間部における前記差の絶対値が20°以上50°以下であり、前記ショルダー部における前記差の絶対値が0°以上30°以下であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。 【請求項3】 前記センター部のラグ溝傾斜角度の最大値と最小値との差が前記ショルダー部のラグ溝傾斜角度の最大値と最小値との差よりも小さく、前記ショルダー部のラグ溝傾斜角度の最大値と最小値との差が前記中間部のラグ溝傾斜角度の最大値と最小値との差よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。 【請求項4】 前記センター部のラグ溝傾斜角度の平均値に対する前記ショルダー部のラグ溝傾斜角度の平均値の比が、前記中間部のラグ溝傾斜角度の平均値に対する前記ショルダー部のラグ溝傾斜角度の平均値の比よりも小さく、前記中間部のラグ溝傾斜角度の平均値に対する前記ショルダー部のラグ溝傾斜角度の平均値の比が、前記センター部のラグ溝傾斜角度の平均値に対する前記中間部のラグ溝傾斜角度の平均値の比よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。 【請求項5】 前記タイヤの幅方向中心に、タイヤ周方向に連続して延長するように形成されたリブ溝を更に備え、 前記傾斜ラグ溝は、一端が前記リブ溝に連通し、他端が前記トレッドの踏面のタイヤ幅方向端部に開口していることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。 【請求項6】 前記リブ溝の溝幅が前記タイヤの接地幅の20%以下であり、 前記リブ溝の溝幅と前記傾斜ラグ溝の前記リブ溝側の溝幅とが、前記傾斜ラグ溝のタイヤ幅方向端部の溝幅よりも狭いことを特徴とする請求項5に記載のタイヤ。 【請求項7】 前記傾斜ラグ溝により区画される陸部のタイヤ踏面側に形成されて、タイヤ幅方向に延長する複数のサイプを有し、 前記複数のサイプは、隣り合うサイプの間隔が3.0mm以上、10mm以下であるように前記陸部に配置されていることを特徴とする請求項1?請求項6に記載のタイヤ。」 第3 特許異議申立書に記載した申立て理由及び平成31年3月22日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要 1 特許異議申立書に記載した申立て理由の概要 平成30年8月13日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立て理由の概要は次のとおりである。 (1)申立て理由1(甲第1号証を主引用文献とする進歩性) 本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、下記の本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (2)申立て理由2(明確性) 本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 (3)証拠方法 甲第1号証:特開2011-251614号公報 甲第2号証:特開平1-314609号公報 甲第3号証:国際公開第2014/084325号 甲第4号証:特開2000-142031号公報 (以下、順に「甲1」のようにいう。) 2 平成31年3月22日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要 平成31年3月22日付けで通知した取消理由(決定の予告)(以下、「取消理由(決定の予告)」という。)の概要は次のとおりである。なお、該取消理由(決定の予告)は申立て理由2とおおむね同旨である。 (明確性)本件特許発明1ないし7は、ラグ溝傾斜角度と輪郭線傾斜角度との差の絶対値(以下、「角度差」という。)について、タイヤ幅方向の領域(センター部、中間部、ショルダー部)ごとに規定するものである。 しかし、角度の測定方法(センター部、中間部及びショルダー部の各領域のどの位置で測定するのか)について、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明に記載されておらず、また、角度の測定方法が、当業者の出願時における技術常識であったともいえないので、角度差のタイヤ幅方向の領域(センター部、中間部、ショルダー部)ごとの規定が、結局のところ、何を規定しているのか明確でない。 したがって、本件特許発明1ないし7に関して、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎としても、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるといえる。 よって、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 第4 当審の判断 1 取消理由(決定の予告)について (1)明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 (2)特許請求の範囲の記載並びに願書に添付した明細書の記載及び図面 ア 特許請求の範囲の記載 特許請求の範囲の記載は、上記第2のとおりである。 イ 願書に添付した明細書の記載及び図面 (ア)願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の【0019】ないし【0021】及び【0023】の記載は次のとおりである。 ・「【0019】 [実施例] 本発明を実施例に基づき以下詳細に説明する。 リム及び内圧は、JATMA YEAR BOOK(2011、日本自動車タイヤ協会規格)にて定めるラジアルプライタイヤのサイズに対応する適用リム及び空気圧-負荷能力対応表に基づく。 試作したタイヤのタイヤサイズは195/65R15である。実施例1?10のパターン形状は、全て、図1に示すように、V字状のラグ溝と、センター部に設けられた1本のリブ溝と、細溝とを有し、ラグ溝とリブ溝と細溝とにより区画されたブロックには、サイプが形成されている。ラグ溝、リブ溝、及び、細溝の溝深さは9mmで、サイプ深さは全て6mmである。 図3に示すように、従来例のタイヤ50のパターン形状は、3本の周方向溝51?53と、ショルダー部に形成された傾斜角度が0°のラグ溝54とを有するのみである。 また、従来例のタイヤ50では、3本の周方向溝51?53の溝幅w_(1),w_(2),w_(3)の総和をw_(0)としたとき、w_(0)/Wは20%である。 実施例1?10及び従来例のタイヤのネガティブ率は、いずれも、35%である。 なお、比較のため、|θ_(FP)-θ_(LG)|が60°を超えたパターンのタイヤ(比較例1?3)と、サイプ間の距離が3mm未満もしくは10mmを超えたパターンのタイヤ(比較例4,5)と、リブ溝の溝幅がタイヤの接地幅の15%を超えたパターンのタイヤ(比較例6)とを作製し、同様の試験を行った。なお、比較例のネガティブ率も35%とした。 実施例1?10及び比較例1?6のパターン形状については後述する。 【0020】 試験は上記のタイヤを6J-15のリムに内圧200kPaで組み付け、乗用車に装着して、舗装路ウェット路面上でのハイドロプレーニングテスト、雪上加速性能テストを行った。 ハイドロプレーニングテストは、舗装路面上に水深7mmの水を散布し、この上で徐行から加速を行い、タイヤスリップ率が10%になったときの「車体速度」で評価を行っている。タイヤが水の上で空転し始める時の「車体速度」が高い方がハイドロプレーニング性能に優れている。 また、雪上加速性能テストは、静止状態からアクセルを全開し、50m走行するまでの時間(加速タイム)で評価を行っている。 テスト結果を図4(a),(b)の表に示す。テストの結果は従来例を100とした指数で表現し、各性能ともに指数大が良である。 なお、本タイヤは冬用タイヤであるので、ハイドロプレーニング性能については、従来例比で10%低下までを許容範囲とし、雪上加速性能については、従来例比で10%以上の向上が必須であるとして、優劣の判定を行った。 【0021】 実施例1?10及び比較例1?6のパターン形状について説明する。 実施例1 ・輪郭線傾斜角度θ_(FP) センター部θ_(FP-C)/2nd部θ_(FP-2)/ショルダー部θ_(FP-S)=90°/70°/30° ・ラグ溝傾斜角度θ_(LG) センター部θ_(LG-C)/2nd部θ_(LG-2)/ショルダー部θ_(LG-S)=30°/30°/30° ・サイプ間隔d=4.5mm ・リブ溝 1本、w_(c)=6mm、w_(c)/W=4.3% 実施例2は、センター部θ_(LG-C)/2nd部θ_(LG-2)/ショルダー部θ_(LG-S)を75°/60°/30°としたもので、他は実施例1と同じである。 実施例3は、センター部θ_(LG-C)/2nd部θ_(LG-2)/ショルダー部θ_(LG-S)を70°/55°/30°としたもので、他は実施例1と同じである。 実施例4は、センター部θ_(LG-C)/2nd部θ_(LG-2)/ショルダー部θ_(LG-S)を50°/40°/30°としたもので、他は実施例1と同じである。 比較例1は、センター部θ_(LG-C)/2nd部θ_(LG-2)/ショルダー部θ_(LG-S)を0°/0°/0°としたもので、他は実施例1と同じである。 比較例2は、センター部θ_(LG-C)/2nd部θ_(LG-2)/ショルダー部θ_(LG-S)を20°/20°/20°としたもので、他は実施例1と同じである。 比較例3は、センター部θ_(LG-C)/2nd部θ_(LG-2)/ショルダー部θ_(LG-S)を25°/25°/25°としたもので、他は実施例1と同じである。」 ・「【0023】 図4(a)の表に示すように、ラグ溝傾斜角度と輪郭線傾斜角度との差の絶対値|θ_(FP)-θ_(LG)|が、タイヤ幅方向の各位置において、0°以上60°以下の範囲にあり、かつ、センター部における差の絶対値|θ_(FP-C)-θ_(LG-C)|と2nd部における差の絶対値|θ_(FP-2)-θ_(LG-2)|がショルダー部における差の絶対値|θ_(FP-S)-θ_(LG-S)|よりも大きい実施例1?4のタイヤは、いずれも、雪上加速性能が従来例比で10%以上高くなっていることがわかる。なお、ハイドロプレーニング性能については、いずれも、従来例よりも低下しているものの許容範囲にあるので、本発明のタイヤは、ハイドロプレーニング性能を維持しつつ、雪上グリップ性能を向上させることができることが確認された。 これに対して、比較例1?3のタイヤは、ラグ溝の傾斜が小さいことから、|θ_(FP-C)-θ_(LG-C)|及び|θ_(FP-2)-θ_(LG-2)|が60°を超えてしまい、その結果、雪上加速性能は向上するものの、ハイドロプレーニング性能が許容範囲を超えて低下してしまった。 また、実施例1?4を比較すると、|θ_(FP-C)-θ_(LG-C)|と|θ_(FP-2)-θ_(LG-2)|とが15°を超えれば、|θ_(FP-S)-θ_(LG-S)|が0°であっても、ハイドロプレーニング性能を維持しつつ加速性能は向上することが確認された。 また、|θ_(FP-C)-θ_(LG-C)|と|θ_(FP-2)-θ_(LG-2)|とが20°?40°の範囲が、ハイドロプレーニング性能と加速性能とのバランスがよいことがわかる。」 (イ)【図1】及び【図4】(a)は次のとおりである。 ・「【図1】 」 ・「【図4】 」 (3)判断 ア 特許請求の範囲には、角度の測定方法、特にセンター部、中間部及びショルダー部の各領域のどの位置で測定するのかについて、明記されておらず、また、タイヤ幅方向の任意の位置で測定することも明記されていない。 しかし、特許請求の範囲の請求項1の「タイヤ幅方向の各位置」との文言は、通常「タイヤ幅方向の任意の位置」を意味するものである。 イ 発明の詳細な説明の記載及び図面によると、センター部、2nd部(請求項1の「中間部」に相当する。)及びショルダー部の各領域において、輪郭線傾斜角度θ_(FP)、ラグ溝傾斜角度θ_(LG)及び輪郭線傾斜角度とラグ溝傾斜角度との差の絶対値|θ_(FP)-θ_(LG)|は、従来例、実施例及び比較例のいずれにおいても、一定値となっており、角度の測定が各領域内の「タイヤ幅方向の任意の位置」ではなく、ある特定の位置で行われており、「タイヤ幅方向の各位置」との文言を「タイヤ幅方向の任意の位置」と解することと矛盾するようにみえるが、これは、テスト手法として当然であり、角度の測定を特定の位置で行っている実施例しかないからといって、特許請求の範囲の「タイヤ幅方向の各位置」との文言が、特定の位置を意味することにはならない。 ウ したがって、上記「タイヤ幅方向の各位置」との文言を通常の意味である「タイヤ幅方向の任意の位置」を意味すると解しても、発明の詳細な説明の記載及び図面と矛盾しない。 エ また、上記「タイヤ幅方向の各位置」との文言をある特定の位置と解し、その特定の位置で、「輪郭線傾斜角度とラグ溝傾斜角度との差の絶対値|θ_(FP)-θ_(LG)|」が請求項1に記載された条件を満たせば、それ以外の位置において、上記差の絶対値がどのようなものでもいいという解釈が誤りであることは、当業者であれば、当然理解できることでもある。 オ さらに、センター部、中間部及びショルダー部の各領域の境界をどちらの範囲に属するとした場合であっても、発明の明確性に何ら影響を与えるものではない。例えば、センター部と中間部との間の境界をセンター部に属するものとすれば、中間部は境界を含まないものとなる。逆に、境界を中間部に属するものとすれば、センター部は境界を含まないものとなる。つまり、センター部、中間部及びショルダー部の各領域の境界の所属は択一的に容易に決定される。 カ したがって、特許請求の範囲に、角度の測定方法について、明記されておらず、また、タイヤ幅方向の任意の位置で測定することも明記されていないとしても、「タイヤ幅方向の各位置」との文言は、通常の意味である「タイヤ幅方向の任意の位置」を意味するものであることは明らかであるし、センター部、中間部及びショルダー部の各領域の境界の所属は発明の明確性に何ら影響を与えるものではないから、本件特許発明1ないし7に関して、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 (4)取消理由(決定の予告)についてのむすび したがって、取消理由(決定の予告)によっては、本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。 2 取消理由(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立て理由について 特許異議申立書に記載した申立て理由のうち、取消理由(決定の予告)で採用しなかった申立て理由は、申立て理由1(甲第1号証を主引用文献とする進歩性)である。 (1)甲1ないし4に記載された事項等 ア 甲1に記載された事項等 (ア)甲1に記載された事項 甲1には、「空気入りタイヤ」に関して、次の記載(以下、総称して「甲1に記載された事項」という。)がある。なお、下線は当審で付したものである。他の文献についても同様。 ・「【請求項1】 トレッド幅方向に沿った仮想線に対して傾斜した複数の主横溝を備え、車体の前進時の回転方向が指定された空気入りタイヤであって、 前記主横溝は、タイヤ回転方向の前方側からタイヤ回転方向の後方側に向かうに連れてタイヤ幅方向外側に向かって延びており、 前記主横溝には、前記前方側かつ前記タイヤ幅方向外側に延びる第1溝と、前記後方側かつタイヤ幅方向内側に延びる第2溝とが連通されており、 前記トレッド幅方向に沿った仮想線と前記第1溝とのなす角度は、前記仮想線と前記第2溝とのなす角度と異なっている空気入りタイヤ。 【請求項2】 前記主横溝の前記前方側及び前記主横溝の前記後方側には、前記主横溝に沿って延びる副横溝が形成され、 前記第1溝は前記前方側の前記副横溝に連通されており、前記第2溝は前記後方側の前記副横溝に連通されている請求項1に記載の空気入りタイヤ。 【請求項3】 前記副横溝には、前記前方側の前記主横溝から延びる前記第2溝と、前記後方側の前記主横溝から延びる前記第1溝とが連通されており、 前記副横溝に連通された前記第1溝の連通口と前記第2溝の連通口とは、対向する位置に形成される請求項2に記載の空気入りタイヤ。 【請求項4】 前記第1溝及び前記第2溝は、前記前方側から前記後方側に向かうに連れてタイヤ赤道線に向かって延びている請求項1乃至3の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。 【請求項5】 前記仮想線と前記第1溝とのなす角度は、前記仮想線と前記第2溝とのなす角度よりも小さく、 前記第1溝は、前記第2溝よりもタイヤ幅方向内側に形成される請求項1に記載の空気入りタイヤ。 【請求項6】 タイヤ赤道線を含む中央領域において、前記仮想線と前記主横溝とのなす角度は、60度以下である請求項1に記載の空気入りタイヤ。 【請求項7】 前記仮想線と前記主横溝とのなす角度は、前記タイヤ幅方向外側に向かうに連れて小さくなる請求項1に記載の空気入りタイヤ。 【請求項8】 前記タイヤ赤道線を含む中央領域には、前記回転方向に沿って周方向主溝が形成されており、前記主横溝は、前記周方向主溝に連通される請求項1に記載の空気入りタイヤ。 【請求項9】 前記タイヤ幅方向外側の領域には、前記回転方向に沿って周方向副溝が形成されており、前記主横溝は、前記周方向副溝に連通される請求項1に記載の空気入りタイヤ。 【請求項10】 前記主横溝と前記第1溝とが直交するとともに、前記主横溝と前記第2溝とが直交する請求項1に記載の空気入りタイヤ。」 ・「【0007】 そこで、本発明は、氷雪路面における走行性能と排水性能とを高いレベルで両立することができる空気入りタイヤの提供を目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0008】 上述した課題を解決するため、本発明の第1の特徴は、トレッド幅方向に沿った仮想線に対して傾斜した複数の主横溝を備え、車体の前進時の回転方向が指定された空気入りタイヤであって、前記主横溝は、タイヤ回転方向の前方側からタイヤ回転方向の後方側に向かうに連れてタイヤ幅方向外側に向かって延びており、前記主横溝には、前記前方側かつ前記タイヤ幅方向外側に延びる第1溝と、前記後方側かつ前記タイヤ幅方向内側に延びる第2溝とが連通されており、前記トレッド幅方向に沿った仮想線と前記第1溝とのなす角度は、前記仮想線と前記第2溝とのなす角度と異なっていることを要旨とする。 【0009】 本発明によれば、主横溝がタイヤ回転方向の前方側からタイヤ回転方向の後方側に向かうに連れてタイヤ幅方向外側に向かって延びるため、路面の水をタイヤ幅方向外側へ向けて排水する効果が高められる。また、主横溝に連通された第1溝及び第2溝が雪路面における雪柱せん断力を増加させるため、雪上性能が向上する。」 ・「【0025】 [第1実施形態] (1)空気入りタイヤの説明 第1実施形態に係る空気入りタイヤ1の構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る空気入りタイヤ1のトレッドパターンを説明する展開図である。空気入りタイヤ1は、ビード部、カーカス層、ベルト層、トレッド部(以上、不図示)を備える一般的なラジアルタイヤ(スタッドレスタイヤ)である。 【0026】 空気入りタイヤ1は、トレッド幅W方向に沿った仮想線Lに対して傾斜した複数の主横溝11を備える。空気入りタイヤ1は、車体の前進時の回転方向(R方向)が指定されている。 【0027】 主横溝11は、タイヤ回転方向Rの前方側Fからタイヤ回転方向Rの後方側Bに向かうに連れてタイヤ幅方向外側(アウト側)に向かって延びる。主横溝11には、前方側Fかつタイヤ幅方向外側に延びる第1溝21と、後方側Bかつタイヤ幅方向内側に延びる第2溝22とが連通されている。すなわち、第1溝21及び第2溝22は、前方側Fから後方側Bに向かうに連れてタイヤ赤道線CLに向かって延びている。 【0028】 一例として、タイヤ赤道線CLを含む中央領域Cにおいて、仮想線Lと主横溝11とのなす角度α(鋭角)は60度以下であり、タイヤ幅方向外側の領域(ショルダー領域を含む領域)Shにおいて、20度以下であることが好ましい。更に好ましくは、角度αは、中央領域Cにおいて45度以下、領域Shにおいて10度以下とすることができる。 【0029】 また、仮想線Lと第1溝21とのなす角度β(鋭角)は、仮想線Lと第2溝22とのなす角度γ(鋭角)と異なっており、本実施形態では、角度βは、角度γよりも小さい。すなわち、仮想線Lとのなす角度が小さい溝は、タイヤ幅方向内側に形成されている。一例として、0°≦β≦60°、70°≦γ≦90°の範囲にすることができる。更に好ましくは、0°≦β≦50°、80°≦γ≦90°である。 【0030】 また、空気入りタイヤ1の主横溝11の前方側F及び主横溝11の後方側Bには、主横溝11に沿って延びる副横溝12が形成されている。第1溝21は、当該第1溝21が連通された主横溝11よりも前方側Fに位置する副横溝12と連通されている。第2溝22は、当該第2溝22が連通された主横溝11よりも後方側Bに位置する副横溝12と連通されている。 【0031】 主横溝11の溝壁には、第1溝21と連通する連通口41と、第2溝22と連通する連通口42とが形成されている。副横溝12の溝壁には、第1溝21と連通する連通口43と、第2溝22と連通する連通口44とが形成されている。 【0032】 空気入りタイヤ1のタイヤ赤道線CLを含む中央領域Cには、回転方向Rに沿って周方向主溝31が形成されている。主横溝11は、周方向主溝31に連通している。また、ショルダー領域を含む領域Shには、回転方向Rに沿って周方向副溝32が形成されている。主横溝11は、周方向副溝32に連通し、交差している。 【0033】 空気入りタイヤ1において、仮想線Lと主横溝11とのなす角度αは、タイヤ幅方向外側に向かうに連れて小さくなる。 【0034】 なお、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、タイヤ赤道線CLと周方向主溝31とが一致しており、タイヤ赤道線CLに線対称のトレッドパターンが形成されている。また、主横溝11、第1溝21、第2溝22、周方向主溝31、周方向副溝32などの溝によって囲まれてできる陸部には、細溝(サイプ)が形成されていてもよい。ここで、細溝とは、空気入りタイヤ1が接地した際の圧力によって溝を形成する壁部同士が接するような溝をいう。」 ・「【表1】 」 ・「【図1】 」 (イ)甲1発明 甲1に記載された事項、特に【請求項1】、【請求項2】及び実施例に関する記載を整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 「トレッド幅方向に沿った仮想線に対して傾斜した複数の主横溝を備え、車体の前進時の回転方向が指定された空気入りタイヤであって、 前記主横溝は、タイヤ回転方向の前方側からタイヤ回転方向の後方側に向かうに連れてタイヤ幅方向外側に向かって延びており、 前記主横溝の前記前方側及び前記主横溝の前記後方側には、前記主横溝に沿って延びる副横溝が形成されている空気入りタイヤ。」 イ 甲2に記載された事項 甲2には、「空気入りタイヤ」に関して、次の記載(以下、総称して「甲2に記載された事項」という。)がある。 ・「2.特許請求の範囲 1.タイヤ接地面の接地中心位置に頂点を有し、タイヤ幅方向に傾斜する横方向溝からなるV字溝を接地面に形成したタイヤであって、前記接地面を幅方向に10区分に等分割した場合の接地面両側端を除く8区分の各区分内における前記横方向溝の接地面前端縁となす平均角度βが前記幅方向接地中心線を挟んでタイヤ進行方向に向かって幅方向左右にほぼ一定角度αであることを特徴とする空気入りタイヤ。 2.タイヤ接地面を幅方向に10区分に等分割した場合の接地面両側端を除く8区分の各区分内における横方向溝の接地面前端縁となす角度αが、(30±15)°の範囲内で選定されたことを特徴とする請求項1記載のタイヤ。」(第1ページ左下欄第4ないし19行) ・「本発明は、排水性に優れた空気入りタイヤに関する。」(第2ページ左上欄第1及び2行) ・「 」 ウ 甲3に記載された事項 甲3には、「空気入りタイヤ」に関して、次の記載(以下、総称して「甲3に記載された事項」という。)がある。 ・「[請求項1] タイヤのトレッドの表面に、タイヤ幅方向の一方の端部からタイヤ幅方向中心部に向かってタイヤ周方向に交差するように延長し、タイヤ幅方向中心部にて折り返してタイヤ幅方向の他方の端部に至るラグ溝が形成された空気入りタイヤであって、 タイヤ周方向に延長する少なくとも1本の周方向溝を備え、 当該タイヤの接地面において、接地幅中心と接地端との中心を通るタイヤ周方向に平行な2直線で囲まれた領域をセンター部、前記直線の外側をショルダー部としたとき、 前記センター部のタイヤ幅方向の長さlと、 前記センター部に設けられた周方向溝の溝断面積の合計Sとが、 1≦(S/l)≦3なる関係を満たすことを特徴とする空気入りタイヤ。」 ・「[0005] 本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、ウェット路面での操縦安定性能を確保しつつ、乾燥路面における操縦安定性能や耐摩耗性能を向上させることのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。」 ・「[0009] トレッド11のセンター部には、3本の周方向溝12,13a,13bとラグ溝15とが形成されている。3本の周方向溝12,13a,13bは、いずれも、タイヤ周方向に沿って延長しタイヤ周方向に連通するように設けられたストレート溝で、本例では、センター部の中央に位置する周溝12の溝幅を周溝12の外側に位置する周溝13a,13bの溝幅よりも細く形成している。 ラグ溝15は、タイヤ幅方向の一方(ここでは、右側)の端部からタイヤ幅方向中心部に向かってタイヤ周方向に交差するように延長して中央に位置する周溝12に開口する右側ラグ溝15aと、タイヤ幅方向の他方(左側)の端部からタイヤ幅方向中心部に向かってタイヤ周方向に交差するように延長して中央に位置する周溝12に開口する左側ラグ溝15bとを備えたほぼV字状の溝である。右側ラグ溝15aと左側ラグ溝15bとは、いずれも、円弧状の溝で、図1のパターンでは、右側ラグ溝15aは、中央に位置する周溝12からタイヤ幅方向外側に行くにしたがって右上がりに延長し、左側ラグ溝15bは左上がりに延長している。 3本の周方向溝12,13a,13bとラグ溝15により、トレッド11の表面は複数のブロック16(16p,16q)に区画される。各ブロック16p,16qの表面である接地面側には、それぞれ、直線状の複数のサイプ(2Dサイプ)17p,17qが設けられている。サイプ17p,17qの延長方向とタイヤ周方向とのなす角であるサイプ角度は75°である。」 ・「[図1] 」 エ 甲4に記載された事項 甲4には、「空気入りタイヤ」に関して、次の記載(以下、総称して「甲4に記載された事項」という。)がある。 ・「【請求項1】トレッド部に、タイヤ赤道側からトレッド縁側に向かってタイヤ進行方向の前方側に傾斜かつ湾曲してのびる湾曲溝を少なくとも含むトレッド溝を形成するとともに、 タイヤ回転時、前記湾曲溝は、タイヤを正規リムにリム組みしかつ正規内圧、正規荷重を付加した荷重状態において接地するトレッド接地面のタイヤ進行方向の前方側輪郭線に対し、実質的に直交することを特徴とする空気入りタイヤ。」 ・「【0004】そこで本発明の目的は、排水性が改善され高速でもタイヤの浮き上がりを防止でき、冒頭に述べた耐ハイドロプレーニング性能を向上させうる空気入りタイヤを提供することにある。」 ・「【0023】前記中央の縦溝4は、図1から明らかなように、前記前方側輪郭線K1に対して直角に交差してのび、従って、前記湾曲溝2と同様に、高い排水効果を発揮する。」 ・「【図1】 」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明における「タイヤ回転方向の前方側からタイヤ回転方向の後方側に向かうに連れてタイヤ幅方向外側に向かって延びて」いる「トレッド幅方向に沿った仮想線に対して傾斜した複数の主横溝」及び「前記主横溝の前記前方側及び前記主横溝の前記後方側に」「形成されている」「前記主横溝に沿って延びる副横溝」は、本件特許発明1における「タイヤのトレッド表面に形成された、タイヤセンター部からトレッドの幅方向端部まで延長するタイヤ周方向及びタイヤ幅方向に対して傾斜する傾斜ラグ溝」にそれぞれ相当する。 また、甲1発明における「車体の前進時の回転方向が指定された空気入りタイヤ」は本件特許発明1における「タイヤ」に相当する。 したがって、両者は次の点で一致する。 「タイヤのトレッド表面に形成された、タイヤセンター部からトレッドの幅方向端部まで延長するタイヤ周方向及びタイヤ幅方向に対して傾斜する傾斜ラグ溝を備えたタイヤ。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点> 本件特許発明1においては、「前記傾斜ラグ溝のタイヤ幅方向との成す角度をラグ溝傾斜角度とし、 前記タイヤの踏み込み側の接地形状の輪郭線の法線とタイヤ幅方向との成す角度を輪郭線傾斜角度とし、 前記タイヤの赤道面を中心とした、幅が前記タイヤの接地幅の20%の領域をセンター部、前記センター部の幅方向外側にそれぞれ隣接する、幅が前記タイヤの接地幅の20%の領域を中間部、前記中間部の幅方向外側にそれぞれ隣接する、幅が前記タイヤの接地幅の20%の領域をショルダー部としたとき、 前記ラグ溝傾斜角度と前記輪郭線傾斜角度との差の絶対値が、タイヤ幅方向の各位置において、0°以上60°以下の範囲にあり、 前記センター部と前記中間部における前記差の絶対値が、前記ショルダー部における前記差の絶対値よりも大きい」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点について検討する。 甲1には、相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項について何ら記載されていない。 甲2には、「タイヤ接地面を幅方向に10区分に等分割した場合の接地面両側端を除く8区分の各区分内における横方向溝の接地面前端縁となす角度αが、(30±15)°の範囲内で選定され」ることが記載され、この角度は、本件特許発明1の「前記ラグ溝傾斜角度と前記輪郭線傾斜角度との差の絶対値」に換算すると、45°?75°となり、「0°以上60°以下の範囲」と重複するから、「タイヤ接地面を幅方向に10区分に等分割した場合の接地面両側端を除く8区分の各区分内」については、相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項のうち、「前記傾斜ラグ溝のタイヤ幅方向との成す角度をラグ溝傾斜角度とし、 前記タイヤの踏み込み側の接地形状の輪郭線の法線とタイヤ幅方向との成す角度を輪郭線傾斜角度とし、 前記タイヤの赤道面を中心とした、幅が前記タイヤの接地幅の20%の領域をセンター部、前記センター部の幅方向外側にそれぞれ隣接する、幅が前記タイヤの接地幅の20%の領域を中間部、前記中間部の幅方向外側にそれぞれ隣接する、幅が前記タイヤの接地幅の20%の領域をショルダー部としたとき、 前記ラグ溝傾斜角度と前記輪郭線傾斜角度との差の絶対値が、タイヤ幅方向の各位置において、0°以上60°以下の範囲にあり」という事項を備えることが記載されているといえるかもしれないが、「接地面両側端」の区分内における横方向溝の接地面前端縁については、上記事項を備えることは記載されていない。 甲3には、周方向溝の幅やサイプの角度に関する事項は記載されているが、相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項は何ら記載されていない。 甲4には、「トレッド部」に形成された「湾曲溝」が「トレッド接地面のタイヤ進行方向の前方側輪郭線に対し、実質的に直交すること」が記載され、そのうち「実質的に直交」という記載に着目すれば、「前記ラグ溝傾斜角度と前記輪郭線傾斜角度との差の絶対値」は0°となり、「0°以上60°以下の範囲」と0°の一点で重複するから、相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項のうち、「前記傾斜ラグ溝のタイヤ幅方向との成す角度をラグ溝傾斜角度とし、 前記タイヤの踏み込み側の接地形状の輪郭線の法線とタイヤ幅方向との成す角度を輪郭線傾斜角度とし、 前記タイヤの赤道面を中心とした、幅が前記タイヤの接地幅の20%の領域をセンター部、前記センター部の幅方向外側にそれぞれ隣接する、幅が前記タイヤの接地幅の20%の領域を中間部、前記中間部の幅方向外側にそれぞれ隣接する、幅が前記タイヤの接地幅の20%の領域をショルダー部としたとき、 前記ラグ溝傾斜角度と前記輪郭線傾斜角度との差の絶対値が、タイヤ幅方向の各位置において、0°以上60°以下の範囲にあり」という事項を備えることが記載されているといえるかもしれないが、「トレッド部」に形成された「湾曲溝」が「トレッド接地面のタイヤ進行方向の前方側輪郭線に対し、実質的に直交する」場合、「前記センター部と前記中間部における前記差の絶対値」と「前記ショルダー部における前記差の絶対値」は等しくなることから、「前記センター部と前記中間部における前記差の絶対値が、前記ショルダー部における前記差の絶対値よりも大きい」という事項を備えることはありえず、上記事項を備えることが記載されているとはいえない。 したがって、甲1発明において、甲1ないし4に記載された事項を適用しても、相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項には至らないので、甲1発明において、甲1ないし4に記載された事項を適用して、相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 ウ まとめ したがって、本件特許発明1は、甲1発明及び甲1ないし4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明2ないし7について 請求項2ないし7は請求項1を直接的又は間接的に引用するものであり、本件特許発明2ないし7は本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1が甲1発明及び甲1ないし4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件特許発明2ないし7も甲1発明及び甲1ないし4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)取消理由(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立て理由についてのむすび したがって、取消理由(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立て理由によっては、本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。 第5 結語 上記第4のとおり、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、取消理由(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した申立て理由によって、取り消すことができない。 また、他に本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2019-08-27 |
出願番号 | 特願2014-121025(P2014-121025) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
Y
(B60C)
P 1 651・ 121- Y (B60C) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 鏡 宣宏 |
特許庁審判長 |
大島 祥吾 |
特許庁審判官 |
加藤 友也 植前 充司 |
登録日 | 2018-01-26 |
登録番号 | 特許第6278843号(P6278843) |
権利者 | 株式会社ブリヂストン |
発明の名称 | タイヤ |
代理人 | 宮園 靖夫 |