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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
管理番号 1354973
異議申立番号 異議2019-700420  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-10-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-05-23 
確定日 2019-09-24 
異議申立件数
事件の表示 特許第6430935号発明「クロルフェニラミン又はその塩の安定化方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6430935号の請求項1ないし13に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6430935号の請求項1?13に係る特許についての出願は、2014年(平成26年)5月27日(優先権主張 2013年(平成25年)5月30日 日本国(JP))を国際出願日とする出願であって、平成30年11月9日にその特許権の設定登録がされ、平成30年11月28日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許に対し、令和元年5月23日に特許異議申立人 藤井香(以下「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。

第2 本件発明
特許第6430935号の請求項1?13に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、請求項の番号に従い「本件発明1」?「本件発明13」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)

「【請求項1】
クロルフェニラミン及び/又はその薬学的に許容される塩を含有し、pHが7.0以上である液剤が、容器に収容されてなるクロルフェニラミン類含有製品であって、
前記容器が、前記液剤を収容する容器本体と、前記容器本体に収容された液剤を注出する注出口を有する注出部と、前記注出口をふさぐ蓋部とを備え、
前記注出部の内部空間の壁面、及び前記蓋部において前記注出口と対向する壁面の少なくとも一方が、ポリブチレンテレフタレートを含む樹脂で構成されていることを特徴とする、
クロルフェニラミン類含有製品。
【請求項2】
前記注出部が、前記液剤を液滴状で注出するノズルであり、当該ノズルの内部空間の壁面がポリブチレンテレフタレートを含む樹脂で構成されている、請求項1に記載のクロルフェニラミン類含有製品。
【請求項3】
前記容器本体が、ポリエチレンテレフタレートを含む樹脂で構成されている、請求項1又は2に記載のクロルフェニラミン類含有製品。
【請求項4】
前記液剤のpHが7.5?9.0である、請求項1?3のいずれかに記載のクロルフェニラミン類含有製品。
【請求項5】
前記液剤に、クロルフェニラミン及び/又はその薬学的に許容される塩が0.0006?0.2w/v%含まれる、請求項1?4のいずれかに記載のクロルフェニラミン類含有製品。
【請求項6】
前記液剤が点眼剤である、請求項1?5のいずれかに記載のクロルフェニラミン類含有製品。
【請求項7】
クロルフェニラミン及び/又はその薬学的に許容される塩を含有し、pHが7.0以上である液剤の安定化方法であって、
容器の内壁を構成する領域の少なくとも一部分が、ポリブチレンテレフタレートを含む樹脂によって構成されている容器に、クロルフェニラミン及び/又はその薬学的に許容される塩を含有する液剤を収容することを特徴とする、
安定化方法。
【請求項8】
前記容器が、前記液剤を収容する容器本体と、前記容器本体に収容された液剤を注出する注出口を有する注出部と、前記注出口をふさぐ蓋部とを備え、
前記注出部の内部空間の壁面、及び前記蓋部において前記注出口と対向する壁面の少なくとも一方が、ポリブチレンテレフタレートを含む樹脂で構成されている、請求項7に記載の安定化方法。
【請求項9】
前記注出部が、前記液剤を液滴状で注出するノズルであり、当該ノズルの内部空間の壁面がポリブチレンテレフタレートを含む樹脂で構成されている、請求項7又は8に記載の安定化方法。
【請求項10】
前記容器本体が、ポリエチレンテレフタレートを含む樹脂で構成されている、請求項7?9のいずれかに記載の安定化方法。
【請求項11】
前記液剤のpHが7.5?9.0である、請求項7?10のいずれかに記載の安定化方法。
【請求項12】
前記液剤に、クロルフェニラミン及び/又はその薬学的に許容される塩が0.0006?0.2w/v%含まれる、請求項7?11のいずれかに記載の安定化方法。
【請求項13】
前記液剤が点眼剤である、請求項7?12のいずれかに記載の安定化方法。」

第3 申立理由の概要
異議申立人は、下記の甲第1号証?甲第12の2号証(以下、号証の番号に従い「甲1」?「甲12の2」という。)を提出し、本件発明1、3?8、10?13は甲1?甲8からみて進歩性に欠如することは明らかであり、本件発明2、9は甲1?甲10からみて進歩性に欠如することは明らかであるので、本件発明1?13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきである(同法第113条第2号)、という申立理由を主張する。

甲1:特開2002-68963号公報
甲2:日本救急医学会誌、2005年、16巻12号、633?638頁
甲3:特開平11-147825号公報
甲4:特開2002-249445号公報
甲5:特開平11-319028号公報
甲6:特開平5-261139号公報
甲7:国際公開第94/26309号
甲8:国際公開第2011/99486号
甲9:実公平1-18529号公報
甲10:特表2006-511257号公報
甲11:特許出願2015-519867の審査過程における平成30年4月9日提出の意見書
甲12:第十六改正日本薬局方解説書(医薬品各条)、C-3253?C-3255頁
甲12の2:第十六改正日本薬局方解説書(附録)

第4 各甲号証の記載事項
1 甲1の記載事項
甲1(特開2002-68963号公報)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付した。

(1a)「【請求項1】 液剤を収容するための収容部と、この収容部から延出しかつ先端部が閉塞したネック部とを有し、かつ少なくとも内面が硬質合成樹脂で形成された密封性容器に収容される液剤であって、少なくとも脂溶性成分を含有する液剤。
【請求項2】 脂溶性成分がテルペン系化合物である請求項1記載の液剤。
【請求項3】 脂溶性成分が、メントール類及びカンフル類から選択された少なくとも一種である請求項1又は2記載の液剤。
【請求項4】 テルペン系化合物の含有量が0.0001?5(W/V)%である請求項2記載の液剤。
【請求項5】 容器が、ポリエステル系樹脂及びポリカーボネート系樹脂から選択された少なくとも一種の硬質合成樹脂で形成されている請求項1?4のいずれかの項に記載の液剤。
【請求項6】 粘膜適用製剤である請求項1?5のいずれかの項に記載の液剤。
【請求項7】 少なくとも内面が硬質合成樹脂で形成され、かつ請求項1?6のいずれかの項に記載の液剤を収容した容器であって、前記液剤を収容するための収容部と、この収容部から液剤を流出させるための開口可能な閉塞部とを備えている容器。
【請求項8】 請求項7記載の容器に脂溶性成分を含む液剤を収容することにより、容器への脂溶性成分の吸着を抑制する方法。」(【請求項1】?【請求項8】)

(1b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、脂溶性成分を含有する液剤、この液剤を収容するための容器、及び前記容器を用いた脂溶性成分の吸着の抑制方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、点眼剤などの液剤を収容する容器は、一般に、容器本体、ノズル、キャップなどの複数の部材で構成される。容器本体は中空成形された液体収容部の上部にネック部を有しており、このネック部の頂部には開口部が形成されている。また内容液を適量注出するため、容器本体の開口部にノズルが嵌合され、前記ノズル流出口からの内容液の漏出を抑制するため、開口部全体をキャップで覆っている。このような容器において、通常、容器本体はポリエチレンテレフタレートなどの硬質合成樹脂やポリエチレンなどの軟質合成樹脂を原料として用い、ブロー成形、インジェクション成形、インジェクションブロー成形などにより製造されている。また、ノズルはポリエチレンなどの軟質合成樹脂で製造され、キャップはポリスチレンなどの硬質合成樹脂で製造されている。
【0003】一方、容器に収容される点眼剤などの液剤には、メントール類、カンフル類などのテルペン系化合物を官能性成分(香料成分、清涼化成分)などとして含有し、これらテルペン系化合物の有する清涼感などの官能的な特徴を製品特性としているものが多い。そして、粘膜のように刺激に対して敏感な器官に適用する製品の場合、官能性成分の配合濃度が高すぎると、灼熱感や過度な刺激を与え不快感を生じるため、配合濃度を低くする必要がある。しかし、官能性成分は脂溶性であるため、容器材料であるポリエチレン、ポリプロピレンなどの軟質合成樹脂に吸着しやすい。このため、前記液剤を軟質合成樹脂製の容器に充填すると、配合濃度がもともと低いこれらの易吸着性成分(官能性成分)がさらに容器に吸着されるため、経時的に官能性成分の濃度がさらに減少し、製品の官能的な特徴が損なわれやすい。」(【0001】?【0003】)

(1c)「【0007】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、香料成分、清涼化成分などの脂溶性成分の濃度減少を長期間に亘って防止できる液剤及び容器を提供することにある。
【0008】本発明の他の目的は、低濃度の脂溶性成分であっても長期間に亘って濃度を維持できる液剤及び容器を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、硬質合成樹脂で形成された密封性の容器を用いると、脂溶性成分(特に、香料成分、清涼化成分などの官能性成分)の濃度減少を抑制でき、長期間に亘って安定的に液剤を保存できることを見いだし、本発明を完成した。」(【0007】?【0009】)

(1d)「【0014】
【発明の実施の形態】[液剤]本発明の液剤(薬液)は脂溶性成分を含有している。脂溶性成分としては、軟質合成樹脂(ポリエチレンなど)に対して吸着性の成分、例えば、テルペン系化合物、キサンチン系化合物(カフェインなど)、脂溶性ビタミン類(ビタミンA類、ビタミンD類、ビタミンE類、ビタミンK類など)、脂溶性薬物などが例示できる。前記脂溶性成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。通常、テルペン系化合物、キサンチン系化合物、及び脂溶性ビタミン類から選択された少なくとも一種の成分が使用される。
・・・
【0017】脂溶性成分の量は、特には制限されないが、脂溶性成分が芳香性や清涼性を有する場合、比較的微量である。液剤中の脂溶性成分(特に、テルペン系化合物などの官能性成分)の含有量は、例えば、0.0001?5(W/V)%程度、好ましくは0.001?0.5(W/V)%程度、さらに好ましくは0.001?0.1(W/V)%程度である。なお、粘膜適用液剤では、脂溶性成分(特に、テルペン系化合物などの官能性成分)の含有量は、通常、0.001?0.1(W/V)%程度、好ましくは0.001?0.01(W/V)%程度である。
【0018】前記液剤には、溶液剤、懸濁剤、乳剤、エキス剤又はチンキ剤、シロップ剤、ローション剤などが含まれる。・・・特に、本発明の製剤は、粘膜適用製剤、例えば、眼粘膜又は鼻粘膜適用製剤(例えば、点眼剤、洗眼剤、点鼻剤など)として有用である。
【0019】前記液剤における有効成分(薬理活性又は生理活性成分)の種類は特に制限されず、液剤の用途および種類に応じて、種々の活性成分、例えば、抗炎症薬成分、抗アレルギー薬成分、解熱鎮痛薬成分、抗精神薬成分、抗高血圧薬成分、利尿薬成分、鎮咳薬成分、去痰薬成分、抗ぜんそく薬成分、健胃薬成分、消化薬成分、潰瘍治療薬成分、貧血薬成分、収れん薬成分、抗菌又は殺菌薬成分、抗腫瘍薬成分、ホルモン類、タンパク又はペプチド類、ビタミン類、アミノ酸類などが使用できる。本発明において好適な粘膜適用製剤(特に眼科用液剤、点鼻剤)の成分としては、例えば、次のような成分(特に、眼や鼻粘膜に対して適用される成分)が例示できる。
【0020】充血除去剤(血管収縮剤又は交感神経興奮剤):α-アドレナリン作動薬、・・・など
眼圧降下剤:例えば、ピロカルピン又はその塩(塩酸ピロカルピンなど)、イソプロピルウノプロストン、・・・など
眼筋調節成分:アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、例えば、メチル硫酸ネオスチグミンなどの第4級アンモニウム化合物など
近視治療・予防剤:例えば、トロピカミド、シクロペントレート、エンドセリンなど
消炎(又は抗炎)剤又は収れん剤:例えば、イプシロン-アミノカプロン酸、ベルベリン、アズレンスルホン酸、・・・など
なお、消炎(又は抗炎)剤としては、芳香族性カルボン酸誘導体、・・・なども例示できる。
【0021】抗ヒスタミン剤:例えば、マレイン酸クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、イプロヘプチン、フマル酸ケトチフェン、フマル酸エメダスチン、・・・など
抗菌剤又はサルファ剤:例えば、スルホンアミド類(スルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール又はそれらの塩(スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソミジンナトリウムなど))、・・・など
ビタミン類:例えば、ビタミンB2(又はフラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム)、ビタミンB6(又は塩酸ピリドキシン)、ビタミンB12(又はシアノコバラミン)、酢酸レチノール(ビタミンAアセテート)、パルミチン酸レチノール、酢酸トコフェロール(ビタミンEアセテート)、酢酸d-α-トコフェロール、パンテノール、パントテン酸ナトリウム、パントテン酸カルシウムなど
アミノ酸類:例えば、L-アスパラギン酸又はその塩(L-アスパラギン酸カリウム、・・・など
糖類:例えば、単糖類(グルコースなど)、二糖類(トレハロース、ラクトース、フルクトースなど)、・・・など
その他の成分:ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなど
さらに、用途に応じて必要であれば、局所麻酔剤(オキシブプロカイン、リドカイン、塩酸リドカインなど)、無痛化剤(塩酸プロカインなど)などの種々の活性成分を用いてもよい。
【0022】通常、これらの成分のうち、下記群から選択された少なくとも一種の成分又はそれらの薬学上許容される塩が使用できる。
【0023】ナファゾリン、・・・アズレンスルホン酸、グリチルリチン酸、塩化リゾチーム、アラントイン、亜鉛、マレイン酸クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、・・・塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、・・・ピリドキシン、シアノコバラミン、レチノール、トコフェロール、パンテノール、パントテン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、グルコース、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、およびポリビニルアルコール
これらの成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0024】これらの成分の含有量は、液剤の種類(又は用途)、活性成分の種類などに応じて選択でき、例えば、液剤全体に対して、0.0001?30(W/V)%、好ましくは0.001?10(W/V)%、さらに好ましくは0.01?10(W/V)%程度の範囲から選択できる。」(【0014】?【0024】)

(1e)「【0040】水性液剤(特に、粘膜適用液剤、例えば、点眼剤などの眼科用液剤、点鼻剤など)のpHは、通常、4?9、好ましくは5?8.5(例えば、5.5?8)程度である。浸透圧は、通常、150?500mOsm程度であり、生理食塩水に対する浸透圧比は、通常、0.6?2.0、好ましくは0.7?1.7、特に0.8?1.5程度である。」(【0040】)

(1f)「【0055】硬質合成樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアミド系樹脂、硬質塩化ビニル樹脂、スチレン系樹脂(ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)など)、セルロースアセテート類など、好ましくは、脂溶性成分(特に、テルペン系化合物)に対して低吸着性の樹脂(ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂など)が例示できる。
【0056】ポリエステル系樹脂としては、ジカルボン酸成分(フタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸成分など)とジオール成分とで構成された樹脂が使用できる。ジオール成分には、脂肪族ジオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコールなどのC2-6アルキレングリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどのシクロアルカンジオールなど)、芳香族ジオール(ビスフェノール-Aなどのビスフェノール類など)などが含まれる。ポリエステル系樹脂としては、芳香族ポリエステル系樹脂、例えば、ポリアルキレンテレフタレート(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリC2-4アルキレンテレフタレートなど)、ポリアルキレンナフタレート(ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレートなどのポリC2-4アルキレンナフタレートなど)、ポリシクロアルキルテレフタレート(ポリ1,4-シクロヘキシルジメチレンテレフタレート(PCT)など)、ポリアリレート類(ビスフェノール類(ビスフェノール-Aなど)とフタル酸類(フタル酸、テレフタル酸)とで構成された樹脂など)などのホモポリエステルが挙げられる。また、ポリエステル系樹脂には、前記ホモポリエステル単位を主成分(例えば、50重量%以上)として含むコポリエステル、前記ホモポリエステルの共重合体(PETとPCTとの共重合体など)なども含まれる。」(【0055】?【0056】)

(1g)「【0064】前記密封性容器に液剤を充填すると、内面が硬質合成樹脂で形成されているため、長期間に亘って脂溶性成分の吸着を抑制できる。このため、脂溶性薬物、官能性成分などの比較的低濃度で使用される成分であっても、濃度を維持でき、例えば、官能性の喪失を防止できる。そのため、刺激に対して敏感な部分(目や鼻などの粘膜など)に作用する液剤に有利に利用できる。
【0065】
【発明の効果】本発明によれば、内面が硬質合成樹脂で形成された密封性容器に液剤を密封しているため、輸送時や保存時(特に、開封前)に液剤中の脂溶性成分の濃度が低下するのを抑制できる。」(【0064】?【0065】)

(1h)「【図2】図2は本発明の容器の開封前の状態の一例を説明するための概略断面図である。
【図3】図3は本発明の容器の開封後の状態の一例を説明するための概略断面図である。
・・・
【符号の説明】
11…収容部
12…ネック部
13…流出口
14…液剤

」(【図2】及び【図3】の簡単な説明、【符号の説明】、【図2】及び【図3】)

(1i)「【0044】図2及び図3は、前記ネック部の開口(又は開封)を説明するための概略断面図である。すなわち、容器のネック部12の外周壁には螺旋溝が形成され、このネック部12にキャップ(硬質合成樹脂製のキャップなど)16が螺着している。そして、このキャップ16の頂部内面には、キャップ16の軸方向に延出するニードル部19が形成されている。このキャップ16のニードル部19をネック部12の頂部13から容器本体内に挿通させることにより、頂部13を開封でき、吐出口(図示せず)が形成される。」(【0044】)

2 甲2の記載事項
甲2(日本救急医学会誌、2005年、16巻12号、633?638頁)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付した。

(2a)「全身性強直性痙攣と持続するミオクローヌスを伴った市販鎮咳薬による急性薬物中毒の1例」(タイトル)

(2b)「抗ヒスタミン薬のように脂溶性に富む有機陽イオンの場合,これまで非イオン型の薬剤が受動拡散することにより吸収されるものと考えられてきた。・・・本症例の場合,同時にアルコールを摂取したことにより,脂溶性に富むマレイン酸クロルフェニラミンが通常より速く吸収され,急激に門脈血中濃度が上昇したのと同時に,代謝経路におけるアルコールとの相互作用のため,first pass effectの影響が小さくなった可能性が考えられる。」(636頁左欄11行?右欄9行)

3 甲3の記載事項
甲3(特開平11-147825号公報)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付した。

(3a)「【請求項1】 グリチルリチン酸、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸三カリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、グリチルリチン酸二アンモニウムから選ばれる1種又は2種以上のグリチルリチン酸類を含有する粘膜外用剤における上記グリチルリチン酸類の濃度を該グリチルリチン酸類の臨界ミセル濃度以上とすると共に、上記製剤のpHを4?6に調整することによって、上記グリチルリチン酸類の粘膜からの吸収性を向上させることを特徴とする粘膜吸収性の向上方法。
【請求項2】 更に、上記製剤に上記グリチルリチン酸類以外の有効成分を配合することによって、上記グリチルリチン酸類による上記有効成分の粘膜吸収促進作用を向上させる請求項1記載の粘膜吸収性の向上方法。」(【請求項1】及び【請求項2】)

(3b)「【0036】図2?5のグラフによれば、グリチルリチン酸二カリウムはpH6以下において共存するマレイン酸クロルフェニラミン,塩酸テトラヒドロゾリン,塩酸ジフェンヒドラミン及び硝酸ナファゾリンのいずれについても脂溶性を向上させる作用を有することが認められ、特にグリチルリチン酸二カリウム濃度がそのcmc以上であれば、単独(グリチルリチン酸二カリウム無配合)ではpH6よりも高いpH領域において高い脂溶性を示すマレイン酸クロルフェニラミン及び塩酸ジフェンヒドラミンについては、pH6以下のpH領域においてもほぼ同様の脂溶性を維持することができ、一方、単独ではpH7.4以下のpH領域で脂溶性のpH依存性がほとんどない塩酸テトラヒドロゾリン及び硝酸ナファゾリンについては、pH6以下のpH領域においてこれら共存薬物の脂溶性を格段に向上させることが認められることから、製剤中のグリチルリチン酸二カリウムの濃度をcmc以上とすると共に、製剤pHを6以下、特にpH5.5以下に調整することによって、グリチルリチン酸二カリウムによる共存薬物の生体組織への浸透促進作用が向上することが予想される。

(3c)「【図2】マレイン酸クロルフェニラミンの水-1-オクタノール間における1-オクタノール層への分配率とpHとの関係を示すグラフである。
・・・
【図2】

」(【図2】の簡単な説明、及び【図2】)

4 甲4の記載事項
甲4(特開2002-249445号公報)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付した。

(4a)「【請求項1】 1回の使用で使い捨てるタイプのプラスチックス製容器に充填する眼科用液剤組成物であって、抗ヒスタミン剤、血管収縮剤および消炎・収斂剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有し、かつ防腐剤を含有せず、さらにはpHが5?6であることを特徴とする眼科用液剤組成物。」(【請求項1】)

(4b)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】 本発明者らは、1回の使用で使い捨てるタイプの容器、いわゆる「ディスポ容器」に充填することによって、防腐剤フリーとすることが可能と考え、実際に従来公知のプラスチックス製容器に点眼剤を充填したところ、容器内壁に点眼剤が吸着するという問題があることが分かった。従って、本発明は1回の使用で使い捨てるタイプのプラスチックス製容器に点眼剤を充填したときの容器への吸着を抑制した防腐剤フリーの眼科用液剤組成物を提供することにある。・・・
【0006】
【課題を解決するための手段】 本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、以下により達成される。
(1)1回の使用で使い捨てるタイプのプラスチックス製容器に充填する眼科用液剤組成物であって、抗ヒスタミン剤、血管収縮剤および消炎・収斂剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有し、かつ防腐剤を含有せず、さらにはpHが5?6であることを特徴とする眼科用液剤組成物。」

(4c)「【0011】 ところで、本発明で使用する抗ヒスタミン剤、血管収縮剤および消炎・収斂剤は、本来酸性領域で安定な成分である。しかし点眼剤として使用する場合、pHが酸性領域にあると点眼による眼刺激を誘発するため、あまり好ましくない。一方で、眼刺激を抑制するために、pHを中性領域にして、1回の使用で使い捨てるタイプのポリエチレンまたはポリプロピレン等のプラスチックス製の容器に抗ヒスタミン剤、血管収縮剤および消炎・収斂剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有する点眼剤を保存した場合、ガラス製容器に比べて該成分が吸着し、目的とした効果が得られない場合があることが分かった。しかしながら、該成分の容器への吸着を抑制する目的で、1回の使用で使い捨てるタイプの点眼剤をガラス製容器に充填するのは、持ち運びの面からも好ましくない。そこで、本発明者らは該成分の1回の使用で使い捨てるタイプのポリエチレンまたはポリプロピレン等のプラスチックス製容器への吸着を抑制し、かつ点眼による眼刺激を感じないpHの条件を検討した結果、液剤のpHを5?6という極めて限られた範囲内に調整した場合に限り、1回の使用で使い捨てるタイプの上記プラスチックス製の容器に、抗ヒスタミン剤、血管収縮剤および消炎・収斂剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む液剤を充填しても、これらが容器に吸着することが抑制され、かつ点眼による眼刺激を生じない眼科用液剤組成物となし得ることが分かった。」(【0011】)

(4d)「【0026】 所定の経時後の結果を表2に示した。表中の数値は、保存開始前の測定値〔(w/v)%〕を1として、保存開始後の各時点における測定値〔(w/v)%〕を相対百分率表示(%)にて示した。抗ヒスタミン剤であるマレイン酸クロルフェニラミンは、ポリエチレン製容器に保存した場合、pHが中性領域からアルカリ性領域の場合に、酸性領域であるときと比較して、該容器により吸着し、pH5?6のときには殆ど吸着しないことが分かった。」

(4e)「【表2】

」(【表2】)

5 甲5の記載事項
甲5(特開平11-319028号公報)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付した。

(5a)「【請求項1】 ワンタッチ型キャップを有し、中栓の材質がメルトフローレート5g/10min以下のポリエチレンである点眼剤容器に、脂溶性成分を含有する点眼液を充填したことを特徴とする点眼剤。」(【請求項1】)

(5b)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは点眼剤の検討過程において、ワンタッチ型キャップの容器に、脂溶性薬物を配合した点眼液を入れたところ、キャップの中栓にクラック(亀裂)が発生し、液漏れが生じることがあることを見出した。また、点眼液中に界面活性剤をさらに配合すると、クラックの発生割合がさらに上昇してしまうことを同時に見出した。そのようなクラックは従来のスクリュー型キャップの容器では生じなかったことである。
【0006】クラックを防止するために最も有効な手段として中栓の厚みを厚くする方法が考えられるが、脂溶性薬物、なかでもメントールは、中栓に一般的に用いられるポリエチレンに吸着し易く、点眼液中の薬物の残存量が低下してしまうことがあるという問題点がある。一方、強度、成形性などの点からワンタッチ型キャップ容器の中栓として他の材質のものを使用するのは困難であった。
【0007】本発明は、脂溶性薬物を含有する点眼液をワンタッチ型キャップを有する点眼剤容器に充填した場合においても、経時的に中栓にクラックを生じない安定な点眼剤を提供することを目的とする。」(【0005】?【0007】)

(5c)「【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前述の課題を解決するために鋭意研究を進めた結果、脂溶性成分を含有する点眼液を、中栓の材質としてメルトフローレートが5g/10min以下のポリエチレンを用いたワンタッチ型キャップの容器に充填すると、中栓にクラックが生じず、また、界面活性剤の同時配合により一層発生しやすくなるクラックを防止することができることも同時に見出し本発明を完成した。
【0009】すなわち本発明はワンタッチ型キャップを有し、中栓の材質がメルトフローレート5g/10min以下のポリエチレンである点眼剤容器に、脂溶性成分を含有する点眼液を充填したことを特徴とする点眼剤である。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の点眼剤に使用される脂溶性成分としては、メントール、クロロブタノール、ボルネオール、ハッカ油、カンフル、ウイキョー油、クールミント、ゲラニオール、ベルガモット油、ユーカリ油、ビタミンE(酢酸トコフェロール)、ビタミンA(酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール)などをあげることができる。」(【0008】?【0010】)

(5d)「【0018】
【実施例】以下、実施例および試験例により、本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1
メントール40mgおよびボルネオール3mgを滅菌精製水に溶解した。ここに塩酸テトラヒドロゾリン25mg、メチル硫酸ネオスチグミン2mg、マレイン酸クロルフェニラミン20mg、塩酸ピリドキシン100mg、L-アスパラギン酸Mg・K500mg、アミノエチルスルホン酸1000mgを加え、更にクロロブタノール200mg、EDTA-2Na3mg、ホウ酸1000mg、塩化ベンザルコニウム10mgを加え、ホウ砂でpHを5.5に調整した後、滅菌精製水を加えて全量を100mlとし点眼液を調製した。この点眼液を0.22μmのメンブランフィルターでろ過後、ポリエチレンテレフタレート製の7mL点眼容器に充填し、その後メルトフローレートが1.6g/10minのポリエチレン製中栓で密閉し、ポリプロピレン製のワンタッチ型キャップをはめて点眼剤を製した。」(【0018】)

6 甲6の記載事項
甲6(特開平5-261139号公報)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付した。

(6a)「【請求項4】エチレンビニルアルコ-ル共重合体、ポリエチレンテレフタレ-ト、ポリビニルアルコ-ル、ポリアクリロニトニル、セルロ-ス、ナイロン6またはポリブチレンテレフタレ-トからなる包装用素材を用い、脂溶性薬物を含有する内服用固形製剤を充填した脂溶性薬物の吸着を防止した分包剤。
【請求項5】多層構造を有する分包用袋において、内容物と接する側が、エチレンビニルアルコ-ル共重合体、ポリエチレンテレフタレ-ト、ポリビニルアルコ-ル、ポリアクリロニトニル、セルロ-ス、ナイロン6またはポリブチレンテレフタレ-トである脂溶性薬物を含有する内服用固形製剤を充填した脂溶性薬物の吸着を防止した分包剤。
【請求項6】脂溶性薬物が、テプレノン、トコフェロ-ル類、トコフェリルニコチネ-ト、ユビデカレノンまたはインドメタシンファルネシルである請求項4または5記載の分包剤。」(【請求項4】?【請求項6】)

(6b)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】近年、分析技術の進歩により、医薬品の分包中のわずかな含量変化も測定できるようになり、それにともない脂溶性薬物のある種のものは、分包の包装材料に吸着して、保存中に含量が低下することが判明した。
【0004】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、次の手段により、課題を解決できることを見いだし本発明を完成した。即ち、本発明は、エチレンビニルアルコ-ル共重合体、ポリエチレンテレフタレ-ト、ポリビニルアルコ-ル、ポリアクリロニトニル、セルロ-ス、ナイロン6またはポリブチレンテレフタレ-トからなる脂溶性薬物の吸着を防止した分包用袋である。更に本発明は、多層構造を有する分包用袋において、内容物と接する側が、エチレンビニルアルコ-ル共重合体、ポリエチレンテレフタレ-ト、ポリビニルアルコ-ル、ポリアクリロニトニル、セルロ-ス、ナイロン6またはポリブチレンテレフタレ-トである脂溶性薬物の吸着を防止した分包用袋である。」(【0003】?【0004】)

(6c)「【0005】また、本発明は、エチレンビニルアルコ-ル共重合体、ポリエチレンテレフタレ-ト、ポリビニルアルコ-ル、ポリアクリロニトニル、セルロ-ス、ナイロン6またはポリブチレンテレフタレ-トからなる包装用素材を用い、脂溶性薬物を含有する内服用固形製剤を充填した脂溶性薬物の吸着を防止した分包剤であり、更に、多層構造を有する分包用袋において、内容物と接する側が、エチレンビニルアルコ-ル共重合体、ポリエチレンテレフタレ-ト、ポリビニルアルコ-ル、ポリアクリロニトニル、セルロ-ス、ナイロン6またはポリブチレンテレフタレ-トである脂溶性薬物を含有する内服用固形製剤を充填した脂溶性薬物の吸着を防止した分包剤である。
【0006】本発明における脂溶性薬物とは、水に対する溶解性が小さく、油に対する溶解性が大きい薬物を意味し、特に限定されない。好ましい例としては、テプレノン、トコフェロ-ル類、トコフェリルニコチネ-ト、ユビデカレノンまたはインドメタシンファルネシル等を挙げることができる。本発明によると、袋に分包した脂溶性薬物が保存中に袋に吸着せず、含量の低下を起こすことがないが、これが即ち本発明の目的である。本発明における包装用素材は、エチレンビニルアルコ-ル共重合体、ポリエチレンテレフタレ-ト、ポリビニルアルコ-ル、ポリアクリロニトニル、セルロ-ス、ナイロン6またはポリブチレンテレフタレ-トを用いることができるが、特に好ましいものは、エチレンビニルアルコ-ル共重合体である。」(【0005】?【0006】)

(6d)「【0011】実施例1
あらかじめ、テプレノン100gとトコフェロ-ル0.2gを混合し、その後、撹拌混合機を用いてその混合物を無水ケイ酸水加物100gに吸着する。更に、D-マンニト-ル450g、乳糖290gを加えて十分に混合する。その後、この混合粉体を流動層造粒機に移し、前もって調製したヒドロキシプロピルセルロ-ス水溶液を噴霧して、混合粉体を造粒する。造粒後、乾燥、整粒して、少量のタルク、無水ケイ酸水加物を加えて、滑沢混合し、テプレノンを含有した細粒剤を得た。上記細粒剤を、充填分包機を用いて、ポリエチレンテレフタレ-トを最内層とする多層の包装袋に充填し、分包剤を得た。
・・・
【0013】[実験例]実施例1と同様の方法によって得られたテプレノンを含有する細粒剤を、ポリエチレンテレフタレ-ト、ポリビニルアルコ-ル、ポリアクリロニトニル、セルロ-ス、ナイロン6、ポリブチレンテレフタレ-トまたはエチレンビニルアルコ-ル共重合体性担体を最内層とする多層の包装袋に充填し、経時的に、テプレノン含量を測定した。比較例として、実施例1と同様の方法によって得られたテプレノンを含有する細粒剤を、無延伸ポリプロピレン、二軸延伸ポリプロピレン、塩化ビニルまたはエチレン酢酸ビニル共重合体を最内層とする多層の包装袋に充填し、経時的に、細粒剤中のテプレノン含量を測定した。テプレノン含量は、細粒剤中からテプレノンを酢酸エチルで抽出し、ガスクロマトグラフィ-により測定した。結果を表1に示す。
【0014】
【表1】

【0015】表1より、本発明にかかる包装用袋は、テプレノンの吸着を起こさず含量の低下をもたらさないことが明らかである。」(【0011】?【0015】)

7 甲7の記載事項
甲7(国際公開第94/26309号)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付した。

(7a)「(2) 3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールからなる有効成分の溶解剤と有効成分とを含有することを特徴とする外用製剤。
(3) 前記3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールを 0. 00 1? 20重量%含有する特許請求の範囲第 2項記載の外用製剤。
(4) 前記有効成分が薬効成分であり、かつ経皮吸収製剤である請求項(2) に記載の外用製剤。
(5) 前記3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールを 0. 1?20重 量%含有する特許請求の範囲第(4)項記載の外用製剤。
(6) 前記経皮吸収製剤の剤型が、パップ剤、硬膏剤、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、、ゲル状クリーム剤、ローション剤、リザーバー型パッチ、リニメント剤、エアゾール剤から選択される請求項(4) または(5) に記載の外用製剤。
・・・
(8) 前記経皮吸収製剤の剤型が硬膏剤であり、その基剤が前記3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールと薬効成分に加えて、少なくとも薬効成分の 溶解剤としてのロジンエステル誘導体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体またはアクリル系粘着剤、軟化剤を配合してなる請求項(6)に記載の外用製剤。」(請求項(1)?(8))

(7b)「硬膏剤の支持体は、薬効成分である非ステロイド消炎鎮痛薬の放出に影響を与えないポリプロピレン布またはポリエステル布が選ばれる。ポリエステル布としては、P E T (ポリエチレンテレフタレート)またはP B T (ポリブチレンテレフタレート)よりなる布であることが好ましい。非ステロイド消炎鎮痛薬の放出性を良好にするためには、支持体と非ステロイド消炎鎮痛薬との相互作用がないこと、すなわち薬効成分の吸着がないことが必須条件であり、この観点から、支持体のポリマー組成はポリプロピレン、P E TまたはP B Tが最適である。ポリプロピレン、P E TまたはP B Tよりなる支持体を用いることによって支持体への薬効成分の吸着がなく良好な放出性を示すことができる。」(7頁11?19行)

8 甲8の記載事項
甲8(国際公開第2011/099486号)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付した。

(8a)「[請求項1]脂溶性物質を含有する水性組成物が接する包装体の少なくとも一部を構成する包装体成形用材料であって、ポリエステル樹脂(A)、環状オレフィン共重合樹脂(B)、及びエチレン系アイオノマー樹脂(C)を含み、(A)成分の含有量が60?85質量%、(B)成分の含有量が10質量%以上、(B)成分及び(C)成分の合計含有量が15?40質量%である樹脂組成物からなる包装体成形用材料。
・・・
[請求項4]脂溶性物質を含有する水性組成物が接する包装体であって、その少なくとも一部を構成する包装体成形用材料として、請求項1に記載の包装体成形用材料を用いてなる包装体。

[請求項5]脂溶性物質が、脂溶性ビタミン類、アルキルフェノール系化合物、パラベン系化合物、第4級アンモニウム塩化合物、テルペン系化合物、及びグリチルレチン酸又はそのエステルから選ばれる1種以上である、請求項4に記載の包装体。

[請求項6]脂溶性物質を含有する水性組成物が、脂溶性ビタミン類及び/又はアルキルフェノール系殺菌剤を含有する水性化粧料である、請求項4に記載の包装体。
・・・
[請求項8]請求項4に記載の包装体に、脂溶性物質を含有する水性組成物を充填してなる製品。

[請求項9]脂溶性物質が、脂溶性ビタミン類、アルキルフェノール系化合物、パラベン系化合物、第4級アンモニウム塩化合物、テルペン系化合物、及びグリチルレチン酸又はそのエステルから選ばれる1種以上である、請求項8に記載の製品。

[請求項10]脂溶性物質を含有する水性組成物が、脂溶性ビタミン類及び/又はアルキルフェノール系殺菌剤を含有する水性化粧料である、請求項8に記載の製品。
・・・
[請求項12]包装体の少なくとも一部を構成する包装体成形用材料として、ポリエステル樹脂(A)、環状オレフィン共重合樹脂(B)、及びエチレン系アイオノマー樹脂(C)を含み、(A)成分の含有量が60?85質量%、(B)成分の含有量が10質量%以上、(B)成分及び(C)成分の合計含有量が15?40質量%である樹脂組成物からなる包装体成形用材料を用いる、水性組成物に含有された脂溶性物質の吸着防止方法。

[請求項13]脂溶性物質が、脂溶性ビタミン類、アルキルフェノール系化合物、パラベン系化合物、第4級アンモニウム塩化合物、テルペン系化合物、及びグリチルレチン酸又はそのエステルから選ばれる1種以上である、請求項12に記載の吸着防止方法。

[請求項14]脂溶性物質が、脂溶性ビタミン類及び/又はアルキルフェノール系殺菌剤であり、水性組成物が水性化粧料である、請求項12に記載の吸着防止方法。」([請求項1]?[請求項14])

(8b)「[0011]すなわち、本発明の包装体成形用材料は、上記脂溶性物質を吸着し難い材質であるポリエステル樹脂(A)と、水分の透過を抑制する水分バリヤー性に優れた環状オレフィン共重合樹脂(B)と、ポリエステル樹脂(A)と環状オレフィン共重合樹脂(B)の双方に対し相溶性を有するエチレン系アイオノマー樹脂(C)を所定の割合で含有した樹脂組成物であるため、脂溶性物質の吸着を抑え、内容物の濃度変化を抑制し、包装体表面に生じる外観不良を軽減することができる。
これらの効果は、ポリエステル樹脂(A)が海となり、環状オレフィン共重合樹脂(B)及びアイオノマー樹脂(C)が微細な島となる海島構造が形成されることにより発現する。すなわち、ポリエステル樹脂(A)が成形体の表面層を形成するため、上記脂溶性物質を吸着し難くなる。また、水分バリヤー性に優れた環状オレフィン共重合樹脂(B)の微粒子が水分の拡散を阻害するため、水分バリヤー性が発揮される。そして、(A)及び(B)樹脂と親和性のあるアイオノマー樹脂(C)が相溶化剤としての効果を発揮し、表面平滑性に優れた成形品外観となる。従って、包装体全体として、脂溶性物質の吸着が少なく、水分透過性が小さく、優れた外観の包装体が得られる。」([0011])

(8c)「[0012][脂溶性物質]本発明において、脂溶性物質とは、水に溶け難く油(脂)に溶け易い物質をいう。具体的には、n-オクタノール/水分配係数が1より大きい物質をいう。
本発明における脂溶性物質は、吸着防止効果の観点から、脂溶性ビタミン類、アルキルフェノール系化合物、パラベン系化合物、第4級アンモニウム塩化合物、テルペン系化合物、及びグリチルレチン酸又はそのエステルから選ばれる1種以上であることが好ましい。」([0012])

(8d)「[0023][ポリエステル樹脂(A)]
ポリエステル樹脂(A)は、ジカルボン酸単位とグリコール単位を含み、かつ前記ジカルボン酸単位を形成する主要成分が芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体であるものが好ましい。
・・・
[0025]さらに、当該ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸単位2種以上を有する共重合ポリエステル樹脂であってもよいし、グリコール単位2種以上を有する共重合ポリエステル樹脂であってもよく、あるいはジカルボン酸単位2種以上及びグリコール単位2種以上を有する共重合ポリエステル樹脂であってもよい。
[0026]当該ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(IPA共重合PET)、1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート(CHDM共重合PET)等を挙げることができる。これらは1種、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。」([0023]?[0026])

9 甲9の記載事項
甲9(実公平1-18529号公報)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付した。

(9a)「1 硬質合成樹脂製の薬液びんの口部に着脱自在に装着する硬質合成樹脂製のキャップと、頂部に注出孔を有し、前記口部に挿着する中栓とからなり、該中栓は、前記口部の外径とほぼ同径の環状突部を中間部に形成する一方、前記キャップは、前記口部へ装着したときに、前記注出孔を閉塞する突栓を頂部内面に形成し、前記環状突部を押圧する段部を内面中間部に形成し、前記頂部内面が、前記中栓の頂部を押圧するようにした薬液びんの栓体装置において、前記中栓は、前記口部に嵌合して薬液をシールする鍔部を下端部に形成した硬質合成樹脂製の内筒と、該内筒に対して、前記鍔部の上方に被着する軟質合成樹脂製の外筒とからなり、該外筒の前記環状突部の下方部分は、前記口部に圧入されていることを特徴とする薬液びんの栓体装置。」(実用新案登録請求の範囲の第1項)

(9b)「産業上の利用分野
この考案は、薬液びんの栓体装置、殊に、収納落液を少量ずつ反覆排出することができ、しかも、収納薬品の変質を来さなように工夫した、キャップが着脱自在の薬液びんの栓体装置に関する。」(1頁2欄4?9行)

(9c)「そこで、この考案は、かかる従来技術の実情に鑑み、収納薬液の少量ずつの反覆排出に適するように中栓を設け、その中栓自体を、硬質合成樹脂製の内筒と、軟質合成樹脂製の外筒との二重構造とすることを彩用するものであるが、キャップによるシール性が完全で、しかも、薬液と軟質合成樹脂との接触を実質的になくして、収納薬液の変質を防止するために、中栓の上方部分を軟質合成樹脂製の外筒で覆うとともに、硬質合成樹脂製の内筒の下端部によって薬液をシールし、さらに、中栓の挿着を円滑にするために、口部と中栓との接触部分に軟質合成樹脂製の外筒を介在させるようにすることを、その目的とする。」(2頁3欄25?37行)

(9d)「作用
而して、この構成によるときは、中栓は、硬質合成樹脂製の内筒と軟質合成樹脂製の外筒とからなる二重構造をなし、その下端部は、外筒の鍔部によってシールされている一方、その注出孔は、キャップを装着しているときは、キャップの突栓によって閉塞されるから、薬液は、軟質合成樹脂と実質的に接触することはなく、したがって、薬液が変質するおそれはない。」(2頁4欄10?18行)

(9e)「実施例
以下、図面を以って実施例を説明する。
薬液びんの栓体装置は、薬液びんKの口部K1に挿着する中栓10と、口部K1に着脱自在に装着するキャップ21とからなる(第1図)。ただし、中栓10は、内筒11と外筒12とを一体に組み立ててなる。
・・・
中栓10の内筒11は、硬質合成樹脂から一体成形され、その形状は、頂部に注出孔11aを形成するとともに、その外面には、中間部に環状の係合突部11bを形成し、下端部に鍔部11cを形成してなる(第3図)。
・・・
中栓10の外筒12は軟質合成樹脂からなり(第2図)、その頂部には、注出孔12aを形成する一方、その外面の中間部には、環状突部12bを形成し、さらに、内面の中間部には、環状凹溝12cを形成してある。
・・・
キャップ21は、硬質合成樹脂からなって、その頂部21dには、突栓21aを形成し、内面中間部には、段部21bを形成し、さらに、内面下部には、口部K1の雄ねじK1aに螺合する雌ねじ21cを形成してある。ただし、突栓21aは、キャップ21を口部K1に装着するとき、外筒12の注出孔12aに嵌入することによって、外筒12と内筒11との各注出孔12a,11aが形成する中栓10の注出孔10aを閉塞することができるようになっている。
・・・
なお、ここで、軟質合成樹脂としては、たとえば、ポリエチレン・ポリプロピレン等が使用でき、硬質合成樹脂としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート・ポリブチレンテレフタレート・ポリカーボネート・ポリアリレート等が使用できるものとする。」(3頁5欄2行?6欄22行)

(9f)「図面の簡単な説明
第1図ないし第3図は実施例を示し、第1図は要部組立縦断面図、第2図は外筒の縦断面図、第3図は内筒の一部切欠き正面図である。
K・・・薬液びん、K1・・・口部、10・・・中栓、10a・・・注出孔、11・・・内筒、11b・・・係合突部、11c・・・鍔部、、12・・・外筒、12b・・・環状突部、12c・・・環状凹溝、21・・・キャップ、21a・・・突栓、21b・・・段部、21d・・・頂部内面。」(4頁8欄43行?10欄4行)

(9g)「

」(第1図?第3図)

10 甲10の記載事項
甲10(特表2006-511257号公報)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付した。

(10a)「【請求項1】
医薬製剤を患者に送達するためのシステムであって、
少なくとも1種の医薬を含む医薬製剤を内部に有する容器;
該容器に連通した状態の計量アセンブリー;
該計量アセンブリーに連通するようにサイズが構成された入口と患者の方向に該医薬を方向付けるための出口とを有する管状ノズル、ここで、該管状ノズルは、少なくとも1つの曲線部分を有する;
を備え、
該管状ノズルが、既定の長さを有し、かつ該管状ノズルの該既定の長さ全体にわたり曲直線をなす長手軸を有し、該管状ノズルが、該曲線部分内に存在する該管状ノズルの内径の少なくとも2.5倍の曲率半径を有する、上記システム。
・・・
【請求項13】
前記管状ノズルが高分子材料から構築される、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記高分子材料が、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルクロリド(PVC)、ポリビニリデンクロリド(PVDC)、ポリビニルフルオリド(PVF)、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ペルフルオロアルコキシ(PFA)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)、ポリスルホン(PS)、ポリアリールスルホン(PAS) ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、およびポリカーボネート(PC)、それらの組合せおよびそれらのブレンドよりなる群から選択される、請求項13に記載のシステム。」(【請求項1】?【請求項14】)

11 甲11の記載事項
甲11(特許出願2015-519867の審査過程における平成30年4月9日提出の意見書)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付した。

(11a)「2.本発明の特許性について
2-1.本願発明について
請求項1及び7に記載の本発明は、クロルフェニラミン及び/又はその塩を含み、且つ中性からアルカリ性を示す液剤において、クロルフェニラミン及び/又はその塩をプラスチック容器内で安定に維持させるための技術について確立できていなかった出願当初の現状に着眼して(段落0005)、クロルフェニラミン及び/又はその塩を含有し、pHが7.0以上である液剤において、クロルフェニラミン及び/又はその塩が容器に吸着するのを抑制して安定に維持できる技術を提供することを課題とし(段落0008)、当該課題を、請求項1及び7に記載の構成、特に、「前記注出部の内部空間の壁面、及び前記蓋部において前記注出口と対向する壁面の少なくとも一方が、ポリブチレンテレフタレートを含む樹脂で構成されている」という構成によって解決したものです。これによって、クロルフェニラミン及び/又はその塩をpH7.0以上の液剤に含んでいながらも、収容する容器にクロルフェニラミン及び/又はその塩が吸着するのを抑制して経時的に安定に保持することができる(段落0011)という効果が奏されます。本発明による優れた安定化効果は、実施例で実証されている通りです。また、参考例2-1に示されるように、クロルフェニラミンと同様に点眼剤等の薬理成分として用いられるナファゾリン塩酸塩がポリブチレンテレフタレート製のノズルを用いても経時的に安定に保持されないことからすると、本発明によって奏される安定化効果は、クロルフェニラミン及び/又はその塩において認められる特有の効果であるといえます。」(「2.本発明の特許性について」における「2-1.本願発明について」の項目)

(11b)「現に、引用文献2には、段落0008に、血管収縮剤の一種として塩酸ナファゾリンが挙げられていますが、本明細書の参考試験例2-1で証明されるとおり、ナファゾリン塩酸塩(つまり引用文献2に記載される塩酸ナファゾリン)は、ポリブチレンテレフタレート製ノズルを有する容器(容器1(表1))に収容しても全く安定性が改善されません。
そうしてみますと、引用文献2において、マレイン酸クロルフェニラミンがポリエチレン製容器に保存された場合に、中性領域からアルカリ性領域のpHで該容器に吸着することが記載されているとしても、引用文献1において開示された、ポリブチレンテレフタレートなどの硬質合成樹脂製の内筒を用いることで収納薬液の変質を防止する栓体装置を有する薬液びんが、引用文献2に記載されたマレイン酸クロルフェニラミンの吸着を抑制できることの何らの合理的期待もありません。」(「2-2-3.」の第7?8段落。[当合議体による注釈]上記「引用文献2」は「甲4:特開2002-249445号公報」である。)

12 甲12の記載事項
甲12(第十六改正日本薬局方解説書(医薬品各条)、C-3253?C-3255頁、及び甲12の2(第十六改正日本薬局方解説書(附録))には、次の事項が記載されている。

「ナファゾリン塩酸塩
・・・

」(C-3253の「タイトル」?C-3254の注1)

なお、甲12の2(第十六改正日本薬局方解説書(附録))には、第十六改正日本薬局方解説書の初版発行日が「平成23年6月26日」であることが記載されている。

第5 当合議体の判断

1 甲1(申立理由(進歩性欠如)の主引用例)に記載された発明

(1)甲1の請求項1を引用する請求項7には、少なくとも内面が硬質合成樹脂で形成され、かつ、少なくとも脂溶性成分を含有する液剤を収容した容器であって、前記液剤を収容するための収容部と、この収容部から液剤を流出させるための開口可能な閉塞部とを備えている容器の発明が記載されている(摘記(1a))。
そして、上記閉塞部に、液剤を流出させる吐出口が形成された後の容器の構造を示す【図3】及びその説明(摘記(1h)及び(1i))には、当該吐出口が形成された後の容器は、液剤14を収容する容器本体11、前記容器本体11のネック部12、及びネック部12に螺着している硬質合成樹脂性のキャップ16を有しており、前記キャップ16の頂部内面に形成されたニードル部19が、ネック部12の頂部13に形成された吐出口をふさいでいることが記載されている。
さらに、上記【図3】及びその説明(摘記(1h)及び(1i))からみて、当該容器は、上記吐出口の内部空間の壁面、及び上記ニードル部19を含むキャップ16において上記吐出口と対向する壁面の少なくとも一方が、硬質合成樹脂で構成されていると解される。
これらの記載から、甲1には、
「少なくとも脂溶性成分を含有する液剤が、少なくとも内面が硬質合成樹脂で形成された容器に収容されてなる製品であって、
前記容器が、前記液剤を収容する容器本体と、前記液剤を流出させる吐出口と、前記吐出口をふさぐニードル部を含む硬質合成樹脂製のキャップとを備え、
前記吐出口の内部空間の壁面、及び前記ニードル部を含むキャップにおいて前記吐出口と対向する壁面の少なくとも一方が、硬質合成樹脂で構成されている、前記製品。」の発明(以下、「甲1A発明」という。)が記載されていると認める。

(2)また、甲1の請求項8には、甲1の請求項7記載の容器に脂溶性成分を含む液剤を収容することにより、容器への脂溶性成分の吸着を抑制する方法の発明が記載されている(摘記(1a))。
そして、請求項7記載の容器の閉塞部に、液剤を流出させる吐出口が形成された後の容器の構造を示す【図3】及びその説明(摘記(1h)及び(1i))には、上記(1)で説示したような構造が記載されているので、甲1には、
「少なくとも内面が硬質合成樹脂で形成され、液剤を収容する容器本体と、前記液剤を流出させる吐出口と、前記吐出口をふさぐニードル部を含む硬質合成樹脂製のキャップとを備え、
前記吐出口の内部空間の壁面、及び前記ニードル部を含むキャップにおいて前記吐出口と対向する壁面の少なくとも一方が、硬質合成樹脂で構成されている容器に、少なくとも脂溶性成分を含有する液剤を収容することにより、前記容器への脂溶性成分の吸着を抑制する方法。」の発明(以下、「甲1B発明」という。)が記載されていると認める。

2 本件発明1?6と甲1A発明との対比・判断

(1)本件発明1と甲1A発明とを対比する。
甲1A発明で「前記容器が、前記液剤を収容する容器本体と、前記液剤を流出させる吐出口と、前記吐出口をふさぐニードル部を含む硬質合成樹脂製のキャップとを備え」ていることは、本件発明1で「前記容器が、前記液剤を収容する容器本体と、前記容器本体に収容された液剤を注出する注出口を有する注出部と、前記注出口をふさぐ蓋部を備え」ていることに相当する。 また、甲1A発明の「前記吐出口の内部空間の壁面、及び前記ニードル部を含むキャップにおいて前記吐出口と対向する壁面の少なくとも一方」は、本件発明1の「前記注出部の内部空間の壁面、及び前記蓋部において前記注出口と対向する壁面の少なくとも一方」に相当する。
そして、本件発明1の「ポリブチレンテレフタレートを含む樹脂」は硬質合成樹脂であるといえる(甲1の摘記(1f))。
そうすると、両発明は、
「液剤が容器に収容されてなる製品であって、
前記容器が、前記液剤を収容する容器本体と、前記容器本体に収容された液剤を注出する注出口を有する注出部と、前記注出口をふさぐ蓋部を備え、
前記注出部の内部空間の壁面、及び前記蓋部において前記注出口と対向する壁面の少なくとも一方が、硬質合成樹脂で構成されている、前記製品。」の発明である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)本件発明1では、液剤が「クロルフェニラミン及び/又はその薬学的に許容される塩を含有し、pHが7.0以上である液剤」である「クロルフェニラミン類含有製品」であり、さらに硬質合成樹脂が「ポリブチレンテレフタレートを含む樹脂」であることが特定されているのに対し、甲1A発明では、液剤が「少なくとも脂溶性成分を含有する液剤」であることが特定されているが、本件発明1における上記のような特定はされていない点。

(2)上記相違点について検討する。
甲1には、甲1A発明の液剤が含有する「脂溶性成分」について、以下の記載がある。

(i)「容器に収容される点眼剤などの液剤には、メントール類、カンフル類などのテルペン系化合物を官能性成分(香料成分、清涼化成分)などとして含有し、・・・しかし、官能性成分は脂溶性であるため、容器材料であるポリエチレン、ポリプロピレンなどの軟質合成樹脂に吸着しやすい。」(摘記(1b))
(ii)「脂溶性成分(特に、香料成分、清涼化成分などの官能性成分)」(摘記(1c))
(iii)「本発明の液剤(薬液)は脂溶性成分を含有している。脂溶性成分としては、軟質合成樹脂(ポリエチレンなど)に対して吸着性の成分、例えば、テルペン系化合物、キサンチン系化合物(カフェインなど)、脂溶性ビタミン類(ビタミンA類、ビタミンD類、ビタミンE類、ビタミンK類など)、脂溶性薬物などが例示できる。前記脂溶性成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。通常、テルペン系化合物、キサンチン系化合物、及び脂溶性ビタミン類から選択された少なくとも一種の成分が使用される。」(摘記(1d))
(iv)「脂溶性成分(特に、テルペン系などの官能性成分)の含有量は、・・・である。」(摘記(1d)に2箇所あり)

上記(i),(ii)及び(iv)のように、甲1では、甲1A発明の液剤が含有する「脂溶性成分」として、特に香料成分、清涼化成分、テルペン系などの官能性成分を用いることが強調されている。
上記(iii)には、甲1A発明の液剤が含有する「脂溶性成分」の具体例として「脂溶性薬物」が記載されているが、甲1には、前記「脂溶性薬物」に該当する薬物の具体例は記載されていない。

甲1には、さらに以下の記載がある。
(v)「【0019】前記液剤における有効成分(薬理活性又は生理活性成分)の種類は特に制限されず、液剤の用途および種類に応じて、種々の活性成分、例えば、抗炎症薬成分、抗アレルギー薬成分、・・・ビタミン類、アミノ酸類などが使用できる。本発明において好適な粘膜適用製剤(特に眼科用液剤、点鼻剤)の成分としては、例えば、次のような成分(特に、眼や鼻粘膜に対して適用される成分)が例示できる。
【0020】充血除去剤(血管収縮剤又は交感神経興奮剤):α-アドレナリン作動薬、・・・など
・・・
【0021】抗ヒスタミン剤:例えば、マレイン酸クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、イプロヘプチン、フマル酸ケトチフェン、フマル酸エメダスチン、・・・など
抗菌剤又はサルファ剤:例えば、・・・など
ビタミン類:例えば、ビタミンB2(又はフラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム)、ビタミンB6(又は塩酸ピリドキシン)、ビタミンB12(又はシアノコバラミン)、酢酸レチノール(ビタミンAアセテート)、パルミチン酸レチノール、酢酸トコフェロール(ビタミンEアセテート)、酢酸d-α-トコフェロール、パンテノール、パントテン酸ナトリウム、パントテン酸カルシウムなど
・・・
【0022】通常、これらの成分のうち、下記群から選択された少なくとも一種の成分又はそれらの薬学上許容される塩が使用できる。
【0023】ナファゾリン、・・・アズレンスルホン酸、グリチルリチン酸、塩化リゾチーム、アラントイン、亜鉛、マレイン酸クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、・・・塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、・・・ピリドキシン、シアノコバラミン、レチノール、トコフェロール、パンテノール、パントテン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、グルコース、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、およびポリビニルアルコール
これらの成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0024】これらの成分の含有量は、液剤の種類(又は用途)、活性成分の種類などに応じて選択でき、例えば、液剤全体に対して、0.0001?30(W/V)%、好ましくは0.001?10(W/V)%、さらに好ましくは0.01?10(W/V)%程度の範囲から選択できる。」(摘記(1d)

上記(v)の「マレイン酸クロルフェニラミン」は、本件発明1の液剤が含有する「クロルフェニラミン及び/又はその薬学的に許容される塩」に該当する成分である。そして、甲2に「脂溶性に富むマレイン酸クロルフェニラミン」(摘記(2b))と記載され、甲3に「単独(グリチルリチン酸二カリウム無配合)ではpH6よりも高いpH領域において高い脂溶性を示すマレイン酸クロルフェニラミン」(摘記(3b))と記載されているように、マレイン酸クロルフェニラミンが脂溶性であることは本件特許の優先日当時に知られていたといえる。
しかし、上記(v)の「マレイン酸クロルフェニラミン」は、あくまでも、甲1A発明の液剤が含有する有効成分(薬理活性又は生理活性成分)の具体例として記載された成分であり、甲1A発明の液剤が含有する「脂溶性成分」の一つである「脂溶性薬物」の具体例として記載された成分ではない。
そうすると、甲1?甲3の記載を参酌した当業者が、甲1A発明の液剤が含有する「脂溶性成分」として、甲1では前記「脂溶性成分」の具体例として記載されていないマレイン酸クロルフェニラミンをあえて選択して用いることを、容易に想到しえたとはいえない。

一方、甲4には、抗ヒスタミン剤であるマレイン酸クロルフェニラミンをポリエチレン製容器に保存した場合、pHが中性領域からアルカリ性領域のときに、pHが酸性領域であるときよりも、該容器に吸着するという課題(摘記(4d))が記載されており、また、甲5には、脂溶性薬物、なかでもメントールを含有する点眼液はポリエチレンに吸着しやすいという課題(摘記(5b))が記載されている。
そして、マレイン酸クロルフェニラミンが脂溶性であることは本件特許の優先日当時に知られていたこと(甲2の摘記(2b)及び甲3の摘記(3b))を考慮すると、甲4及び甲5に記載の課題は、液剤が含有する脂溶性の成分がポリエチレン製容器に吸着しやすいという課題である点で、甲1A発明が解決すべき「官能性成分は脂溶性であるため、容器材料であるポリエチレン、ポリプロピレンなどの軟質合成樹脂に吸着しやすい」という課題(摘記(1b))と共通する課題であるといえる。
しかし、甲4では、マレイン酸クロルフェニラミンを含む液剤のpHを「5?6という極めて限られた範囲内に調整」することによって上記課題を解決している(摘記(4a)?(4e))。また、甲5では、脂溶性成分を含有する点眼液を、「中栓の材質としてメルトフロートが5g/10min以下のポリエチレンを用いたワンタッチ型キャップの容器に充填する」ことによって上記課題を解決している(摘記(5c)及び(5d))。そして、甲5の実施例では、脂溶性成分であるメントール及びボルネオールと共にマレイン酸クロルフェニラミンが用いられているが(摘記(5d))、甲5のマレイン酸クロルフェニラミンは脂溶性成分の具体例として記載された成分ではない(摘記(5c))。
そうすると、マレイン酸クロルフェニラミンが脂溶性薬物であることが本件特許の優先日当時に知られていたことを考慮しても、甲1?甲5の記載を参酌した当業者が、甲1A発明の液剤の「脂溶性成分」としてマレイン酸クロルフェニラミンを選択して用いると同時に、当該液剤のpHを、甲4での解決手段(pHを5?6という極めて限られた範囲に調整すること)とは異なる範囲であるpH7.0以上にすることを、容易に想到しえたとはいえない。

さらに、甲1には、硬質合成樹脂の具体例として多数列挙された中の一つとして「ポリブチレンテレフタレート(PBT)」が記載され(摘記(1f))、甲6(摘記(6c)及び(6d))、甲7(摘記(7b))、甲8(摘記(8d))、及び甲9(摘記(9e))には、それぞれ脂溶性薬物(甲6)、薬効成分(甲7)、脂溶性物質(甲8)、収納薬品(甲9)の吸着を防止し得る樹脂の具体例の一つとしてポリブチレンテレフタレートが記載されており、甲10(摘記(10a))には、医薬製剤を送達する管状ノズルを構築する高分子材料の具体例の一つとしてポリブチレンテレフタレートが記載されている。
しかし、甲1、及び甲6?甲10のいずれにも、脂溶性成分(甲1)、脂溶性薬物(甲6)、薬効成分(甲7)、脂溶性物質(甲8)、収納薬品(甲9)、医薬製剤(甲10)のいずれかとして「クロルフェニラミン及び/又はその薬学的に許容される塩」を含有する液剤を用い、当該液剤を収容する容器について、「クロルフェニラミン及び/又はその薬学的に許容される塩」の吸着を防止するために、当該容器を構成する樹脂または高分子材料としてポリブチレンテレフタレートを用いることは記載も示唆もされていないのであるから、甲1?甲5の記載に加えて、さらに甲6?甲10の記載を参酌しても、甲1A発明の液剤の「脂溶性成分」としてマレイン酸クロルフェニラミンを選択して用いると共に、当該液剤の「pHを7.0以上」にし、さらに甲1A発明の容器の「硬質合成樹脂」として「ポリブチレンテレフタレート」を選択して用いることを、当業者が容易に想到しえたとはいえない。

以上のとおりであるから、甲1A発明、並びに甲1?甲10に記載された事項から、当業者が本件発明1を容易に想到しえたとはいえない。

(3)そして、本件発明2?6は、それぞれ、本件発明1の「注出部」の構造及びその材質(本件発明2)、「容器本体」の材質(本件発明3)、「液剤のpH」の範囲(本件発明4)、「液剤」中有の「クロルフェニラミン及び/又はその薬学的に許容される塩」の含有量(本件発明5)、「液剤」の用途(本件発明6)、をさらに特定するものであるが、本件発明1と同様に、甲1A発明、並びに甲1?甲10に記載された事項から、当業者が本件発明2?6を容易に想到しえたとはいえない。

3 本件発明7?13と甲1B発明との対比・判断

(1)本件発明7と甲1B発明との対比・判断
甲1B発明は、上記「1(2)」で説示した、
「少なくとも内面が硬質合成樹脂で形成され、液剤を収容する容器本体と、前記液剤を流出させる吐出口と、前記吐出口をふさぐニードル部を含む硬質合成樹脂製のキャップとを備え、
前記吐出口の内部空間の壁面、及び前記ニードル部を含むキャップにおいて前記吐出口と対向する壁面の少なくとも一方が、硬質合成樹脂で構成されている容器に、少なくとも脂溶性成分を含有する液剤を収容することにより、前記容器への脂溶性成分の吸着を抑制する方法。」の発明(以下、「甲1B発明」という。)である。
甲1B発明の「前記容器への脂溶性成分の吸着を抑制する方法」は、容器に収容された液剤の安定化方法に相当し、本件発明7の「ポリブチレンテレフタレートを含む樹脂」は硬質合成樹脂であるといえる(甲1の摘記(1f))ので、本件発明7と甲1B発明とは「液剤の安定化方法であって、容器の内壁を構成する領域の少なくとも一部分が硬質合成樹脂によって構成されている容器に液剤を収容する、安定化方法。」の発明である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)本件発明7では、液剤が「クロルフェニラミン及び/又はその薬学的に許容される塩を含有し、pHが7.0以上である液剤」であり、硬質合成樹脂が「ポリブチレンテレフタレートを含む樹脂」であることが特定されているのに対し、甲1B発明では、このような特定がされていない点。

上記相違点について検討する。
既に上記「2(2)」で説示したように、甲1?甲10の記載を参酌した当業者が、甲1B発明の液剤の「脂溶性成分」としてマレイン酸クロルフェニラミンを選択して用いると共に、当該液剤の「pHを7.0以上にし」、さらに甲1B発明の容器の「硬質合成樹脂」としてポリブチレンテレフタレートを選択して用いることを容易に想到しえたとはいえないのであるから、甲1B発明、並びに甲1?甲10に記載された事項から、当業者が本件発明7を容易に想到しえたとはいえない。

(2)本件発明8?13は、それぞれ、本件発明7の「容器」の構造及び材質(本件発明8)、「注出部」の構造及び材質(本件発明9)、「容器本体」の材質(本件発明10)、「液剤のpH」の範囲(本件発明11)、「液剤」中の「クロルフェニラミン及び/又はその薬学的に許容される塩」の含有量(本件発明12)、「液剤」の用途(本件発明13)、をさらに特定するものであるが、本件発明7と同様に、甲1B発明、並びに甲1?甲10に記載された事項から、当業者が本件発明8?13を容易に想到しえたとはいえない。

4 本件発明による効果について

本件明細書の試験例1(【0068】?【0073】)、試験例2(【0074】?【0077】)、及び試験例3(【0078】?【0080】)には、ポリブチレンテレフタレート製ノズルを装着した容器に収容したクロルフェニラミンマレイン酸塩を含有する液剤について、当該容器に対するクロルフェニラミンマレイン酸塩の吸着性が抑制されたことを示す結果が記載されており、これらの結果を参酌した当業者は、本件発明によって、クロルフェニラミン及び/又はその薬学的に許容される塩を含有し、pHが7.0以上である液剤が安定化されるという効果が奏されることを理解できるといえる。
そして、上記1?3で説示したように、甲1?甲10のいずれにも、甲1A発明または甲1B発明における液剤の脂溶性成分としてマレイン酸クロルフェニラミンを選択して用いると共に、当該液剤のpHを7.0以上にし、さらに甲1A発明または甲1B発明における容器の硬質合成樹脂としてポリブチレンテレフタレートを選択して用いることによって、当該容器に対するマレイン酸クロルフェニラミンの吸着性が抑制されることは記載も示唆もされていないのであるから、本件発明による効果は、甲1A発明または甲1B発明、並びに甲1?甲10に記載された事項から当業者が予測できない顕著な効果であるといえる。

5 なお、異議申立人は、本件発明による効果について、以下の主旨の主張をしている。
「特許権者は、審査段階において、本件明細書の参考例2-1?参考例2-3(【表7】)における容器1?3にはナファゾリン塩酸塩が吸着しないことから、ポリエチレン製容器への吸着はマレイン酸クロルフェニラミン特有の問題であるかのような持論を展開しているが、ナファゾリン塩酸塩は甲第12号証にも記載されている通り、そのアルカリ溶液を熱すると加水分解することが知られており、【表7】の参考例2-1?参考例2-3のナファゾリン塩酸塩は、樹脂への吸着現象に関わらずほぼ全てが加水分解した結果として残存率が0.0%になったと考えるのがごく自然である(特許異議申立書の22頁)。」
しかし、【表7】の参考例2-1?参考例2-3のナファゾリン塩酸塩が、樹脂への吸着現象に関わらずほぼ全てが加水分解したことを当業者が客観的に確認できる実験結果は示されていない。また、特許権者(出願人)は、審査段階における平成30年4月9日付け意見書(甲11)で、ナファゾリン塩酸塩がポリブチレンテレフタレート製のノズルを用いても経時的に安定に保持されないと主張しているのであって(摘記(11a)及び(11b))、【表7】の容器1?3にナファゾリン塩酸塩が吸着しないという主張はしていない。
そして、上記4で説示したように、本件明細書の試験例1(【0068】?【0073】)、試験例2(【0074】?【0077】)、及び試験例3(【0078】?【0080】)で示された結果は、甲1A発明または甲1B発明、並びに甲1?甲10に記載された事項から当業者が予測できない顕著な効果であるといえるので、仮に、異議申立人が主張するように、【表7】の参考例2-1?参考例2-3のナファゾリン塩酸塩が、樹脂への吸着現象に関わらずほぼ全てが加水分解していたとしても、本件発明による効果の顕著性は否定されない。

7 まとめ

以上によれば、甲11及び甲12の記載を参酌しても、本件発明1?13は、甲1A発明または甲1B発明、並びに甲1?甲10に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。

第6 むすび

以上のとおりであるから、本件発明1?13に係る特許は、特許第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、特許異議の申立ての理由によっては、本件発明1?13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-09-11 
出願番号 特願2015-519867(P2015-519867)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鳥居 福代  
特許庁審判長 滝口 尚良
特許庁審判官 前田 佳与子
長部 喜幸
登録日 2018-11-09 
登録番号 特許第6430935号(P6430935)
権利者 千寿製薬株式会社
発明の名称 クロルフェニラミン又はその塩の安定化方法  
代理人 松井 宏記  
代理人 田中 順也  
代理人 山田 威一郎  
代理人 立花 顕治  

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