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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08G 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08G |
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管理番号 | 1355205 |
審判番号 | 不服2018-6654 |
総通号数 | 239 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-11-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-05-15 |
確定日 | 2019-09-11 |
事件の表示 | 特願2015-530415「2剤型ポリウレタン組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月20日国際公開、WO2014/040922、平成27年12月 3日国内公表、特表2015-534590〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件審判請求に係る出願(以下「本願」という。)は、平成25年9月6日(パリ条約に基づく優先権主張:2012年9月11日、欧州特許庁)の国際出願日にされたものとみなされる特許出願であって、以降の手続の経緯は以下のとおりのものである。 平成27年 3月 5日 国内書面(願書翻訳文) 平成27年 4月28日 翻訳文提出(明細書等) 平成28年 9月 5日 出願審査請求 平成29年 4月19日付け 拒絶理由通知 平成29年 9月25日 意見書・手続補正書 平成30年 1月 9日付け 拒絶査定 平成30年 5月15日 本件審判請求 第2 原審の拒絶査定の概要 原審において、平成29年4月19日付け拒絶理由通知書で概略以下の内容を含む拒絶理由が通知され、当該拒絶理由が解消されていない点をもって平成30年1月9日付けで下記の拒絶査定がされた。 <拒絶理由通知> 「 理由 1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ●理由1(新規性)、2(進歩性)について ・・(中略)・・ (2) ・請求項 1-8、12、15、16 ・引用文献等 2 ・備考 引用文献2には、ウレタンプレポリマー、水酸基を2個以上有するポリオール化合物、硬化触媒としての有機酸ビスマス、及びポリアルジミンを含む2液硬化型ポリウレタン組成物が記載(請求項1参照)され、上記2液硬化型ポリウレタン組成物を接着剤に用いること、上記ウレタンプレポリマーが含むイソシアネートとしてジフェニルメタンジイソシアネート等を用いること、上記ポリオール化合物としてポリエーテルポリオールを用いること、上記有機酸ビスマスとしてオクチル酸ビスマス等を用いること、上記ポリアルジミンを、ヘキサメチレンジアミン等のポリアミンとベンズアルデヒド等のアルデヒドとを反応させることで製造することが記載([0009]、[0012]-[0013]、[0017]、[0019]、[0021]-[0029]等参照)され、上記2液硬化型接着剤の例が記載(実施例7-17参照)されている。 また、本願請求項15に記載の接着方法は一般的なものであり、当該方法により接着された物品を含め、引用文献2に記載されているに等しい事項である。 よって、請求項1-8、12、15、16に係る発明は、引用文献2に記載された発明であるか、あるいは、引用文献2に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・・(中略)・・ <引用文献等一覧> 1.特表平10-513205号公報 2.特開2010-222439号公報 3.特開2008-013695号公報 4.特開2007-197507号公報 5.特表2010-522790号公報 6.特表2010-530917号公報」 <拒絶査定> 「この出願については、平成29年 4月19日付け拒絶理由通知書に記載した理由1、2によって、拒絶をすべきものです。 なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。 備考 ●理由1(特許法第29条第1項第3号)、理由2(特許法第29条第2項)について (2) ・請求項 1-7、11、14、15 ・引用文献等 2 引用文献2には、ウレタンプレポリマー、水酸基を2個以上有するポリオール化合物、硬化触媒としての有機酸ビスマス、及びポリアルジミンを含む2液硬化型ポリウレタン組成物が記載(請求項1参照)され、上記2液硬化型ポリウレタン組成物を接着剤に用いること、上記ウレタンプレポリマーが含むイソシアネートとしてジフェニルメタンジイソシアネート等を用いること、上記ポリオール化合物としてポリエーテルポリオールを用いること、上記有機酸ビスマスとしてオクチル酸ビスマス等を用いること、上記ポリアルジミンを、ヘキサメチレンジアミン等のポリアミンとベンズアルデヒド等のアルデヒドとを反応させることで製造することが記載([0009]、[0012]-[0013]、[0017]、[0019]、[0021]-[0029]等参照)され、上記2液硬化型接着剤の例が記載(実施例7-17参照)されている。 また、本願請求項15に記載の接着方法は一般的なものであり、当該方法により接着された物品を含め、引用文献2に記載されているに等しい事項である。 よって、請求項1-7、11、14、15に係る発明は、引用文献2に記載された発明であるか、あるいは、引用文献2に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 なお、出願人は、意見書3.2.1及び4.2.1において、「引用文献2には、ポリアルジミンを用いることが開示されていますが(請求項1等)、本願請求項1におけるように、「互変異性化によってエナミノ基に変換され得ない少なくとも1種のアルジミノ基と、オキサゾリジノ基、アルジミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、第一級アミノ基、第二級アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも1種の追加の反応性基とを有する、少なくとも1種のブロック化アミン」を用いることは開示されていません。」と主張する。 しかしながら、引用文献2には、上記ポリアルジミンを、ヘキサメチレンジアミン等のポリアミンとベンズアルデヒド等のアルデヒドとを反応させることにより製造することが記載されていることは上述の通りであり、上記製造方法によるポリアルジミンはα位の炭素原子上に水素原子を有しないもの、すなわち、互変異性化によってエノミナ基に変換され得ないものである。また、実施例で用いているポリアルジミンである「ALD-1(三菱化学ポリウレタン(株)製)」は、上記製造方法による、α位の炭素原子上に水素原子を有しないポリアルジミンに相当する(必要であれば、参考文献としての引用文献7の[0029]-[0034]等を参照されたい。)ものである。 よって、上記出願人の主張は採用できない。 また、出願人は、意見書3.2.2において、「本願請求項1は引用文献2の開示に対して新規性を有しています。発明特定事項を共有する残りの請求項に係る発明についても同様です。」と主張する。 しかしながら、上記主張に対する見解は上述の通りである。 よって、上記出願人の主張は採用できない。 ・・(中略)・・ <引用文献等一覧> 2.特開2010-222439号公報 4.特開2007-197507号公報 5.特表2010-522790号公報 7.特開2007-211142号公報(新たに引用された文献、参考文献)」 第3 当審の判断 当審は、平成29年9月25日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、特許法第29条の規定に違反し、特許を受けることができないものであるから、本願は、他の請求項に係る発明につき検討するまでもなく、拒絶すべきものである、 と判断する。以下、詳述する。 1.本願特許請求の範囲に記載された事項 上記手続補正書により補正された本願の特許請求の範囲には、その請求項1ないし15に項分け記載された「第1剤及び第2剤からなる組成物」、「第1基体と第2基体とを接着する方法」及び「接着方法により得られる物品」に関する事項が記載されている。 そのうち、請求項1には、以下の事項が記載されている。 「第1剤及び第2剤からなる組成物であって、 前記第1剤が少なくとも1種のポリオールを含有し、 前記第2剤が少なくとも1種のポリイソシアネートを含有し、 また、前記組成物が、互変異性化によってエナミノ基に変換され得ない少なくとも1種のアルジミノ基と、オキサゾリジノ基、アルジミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、第一級アミノ基、第二級アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも1種の追加の反応性基とを有する、少なくとも1種のブロック化アミンを更に含有し、 前記組成物が、ビスマス(III)化合物及びジルコニウム(IV)化合物からなる群から選択される少なくとも1種の触媒を更に含む、 第1剤及び第2剤からなる組成物。」 (以下、請求項1に記載された事項で特定される発明を「本願発明」という。) 2.各引用文献に記載された事項 なお、以下の各文献の摘示において、下線は当審が付した。 (1)引用文献2(特開2010-222439号公報) 上記原査定で引用された引用文献2(以下「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1a) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 (A)ウレタンプレポリマー、 (B)水酸基を2個以上有するポリオール化合物、 (C)有機錫及び有機酸ビスマスからなる群から選択される少なくとも1種の硬化触媒、及び (D)ポリアルジミン を含むことを特徴とする2液硬化型ポリウレタン組成物。 【請求項2】 (E)有機アルカリ金属及び有機アルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の2液硬化型ポリウレタン組成物。」 (1b) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、2液硬化型ポリウレタン組成物に関し、特に接着剤、コーティング材、シーリング材、防水材、床材、壁材、及び塗料等に好適に用いられる2液硬化型ポリウレタン組成物に関する。」 (1c) 「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は、鉛系硬化触媒を必要とせず、硬化物の発泡を抑制し、且つ硬化性、作業性に優れ、接着剤、コーティング材、シーリング材、防水材、床材、壁材、及び塗料等の各種用途に好適に用いられる2液硬化型ポリウレタン組成物を提供することを目的とする。 ・・(中略)・・ 【発明の効果】 【0009】 本発明によれば、鉛系硬化触媒を必要とせず、硬化物の発泡を抑制し、且つ硬化性、作業性に優れ、接着剤、コーティング材、シーリング材、防水材、床材、壁材、及び塗料等の各種用途に好適に用いられる2液硬化型ポリウレタン組成物を提供することができる。」 (1d) 「【0012】 前記ウレタンプレポリマー(A)としては、公知の複数のイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを広く使用可能であり、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール、ポリアミン等の1分子中に2個以上の活性水素を持つ公知の化合物とを公知の方法で反応させて得られる。ウレタンプレポリマー(A)中にはイソシアネート基が残存している。」 (1e) 「【0019】 前記硬化触媒(C)の有機酸ビスマスとしては公知の有機酸ビスマスを使用することができる。例えば、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、ロジン酸ビスマス等のカルボン酸ビスマスが好適である。」 (1f) 「【0021】 前記ポリアルジミン(D)としては、加水分解によりアミンを生成する従来公知のポリアルジミンを広く使用可能であるが、芳香族アルデヒドから誘導されるポリアルジミンが好ましく、下記一般式(1)で示されるポリアルジミンがさらに好ましい。これらポリアルジミンは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いても良い。 【0022】 【化1】 【0023】 式(1)中、R^(1)は炭素数6?15のアリール基であり、フェニル基及び1以上の置換基で置換された置換フェニル基が挙げられる。置換基としては炭素数が1?9のアルキル基、炭素数が1?9のアルコキシ基等が好ましい。上記アリール基の置換基数としては1?3のものが好ましい。R^(1)としては、具体的には、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、プロポキシフェニル基等が好適な例として挙げられる。R^(1)は1分子中で同一であっても異なっていても良い。 式(1)中、R^(2)は、炭素数2?15で2価又は3価の炭化水素基、分子量が70?6,000で2価又は3価のポリオキシアルキレン基、イソホロンジアミンのアミノ残基、又は下記一般式(2)で示されるアミンのアミノ残基である。なお、式(1)及び(2)中、nは2又は3を示す。 【0024】 【化2】 【0025】 式(2)中、R^(3)は炭素数6?13で、かつ2価又は3価のビシクロ環、またはトリシクロ環からなる炭化水素基であり、ビシクロ環、トリシクロ環のシクロ環の炭素数は5?12のものが好ましい。更にシクロ環は置換基を有するものでも良い。置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基等が好ましい。 【0026】 前記ポリアルジミン(D)の製造方法は特に限定されず、ポリアミンとアルデヒドとを反応させる等の公知の方法で簡単に製造可能である。・・(中略)・・ 【0027】 前記ポリアミンとしては、例えば、(a)エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン,・・(中略)・・水、エチレングリコール、プロピレングリコール等にプロピレンオキサイド及び/又はエチレンオキサイドを付加重合して得たポリオキシアルキレングリコール類のヒドロキシル基をアミノ基に変換して得られるポリオキシアルキレンジアミン等のジアミン、・・(中略)・・等が挙げられ、特に融点50℃以下の低融点ポリアミンが好ましい。 【0028】 前記アルデヒドとしては、例えば、ベンズアルデヒド、o-トルアルデヒド、m-トルアルデヒド、p-トルアルデヒド、4-エチルベンズアルデヒド、4-プロピルベンズアルデヒド、4-ブチルベンズアルデヒド、2,4-ジメチルベンズアルデヒド、2,4,5-トリメチルベンズアルデヒド、p-アニスアルデヒド、p-エトキシベンズアルデヒド等が挙げられる。」 (1g) 「【0032】 本発明の2液硬化型ポリウレタン組成物には、上記した成分に加えて、必要に応じて、充填剤、可塑剤、顔料及び染料等の着色剤、帯電防止剤、難燃剤、接着付与剤、チキソトロピー付与剤、シランカップリング剤、分散剤、酸化防止剤、安定剤、硬化触媒、溶剤等を配合してもよい。」 (1h) 「【0037】 本発明の2液硬化型ポリウレタン組成物は、ウレタンプレポリマー(A)を含む基剤と、ポリオール化合物(B)を含む硬化剤と、からなり、基剤及び硬化剤の一方又は両方に硬化触媒(C)を含み、且つ基剤及び硬化剤の一方又は両方にポリアルジミン(D)を含み、必要に応じて、さらに金属化合物(E)や他の添加剤を含むものである。基剤と硬化剤は作業時に混合され、各種用途に用いられる。硬化触媒(C)、ポリアルジミン(D)及び金属化合物(E)は、それぞれ、基剤及び硬化剤のいずれに配合してもよく、また両方に配合してもよいが、ポリアルジミン(D)を基剤に配合し、硬化触媒(C)及び金属化合物(E)を硬化剤に配合することが好適である。 【0038】 基剤と硬化剤の配合比率は特に制限はないが、基剤中に含まれるNCO基の数と硬化剤中に含まれるOH基の数の比(NCO/OH比)が0.9?1.3であることが好ましく、1.0?1.2であることがより好ましい。 【0039】 本発明の2液硬化型ポリウレタン組成物は、接着剤、コーティング材、シーリング材、防水材、床材、壁材、及び塗料等に好適に用いられ、特にシーリング材に好適に用いられる。」 (1i) 「【実施例】 【0040】 以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。 【0041】 (実施例1?17及び比較例1?8) 表1?4に示す組成にて基剤及び硬化剤をそれぞれ調製し、2液硬化型ポリウレタン組成物を作製した。 ・・(中略)・・ 【0043】 【表2】 【0044】 【表3】 【0045】 【表4】 【0046】 表1?4における各配合物質の配合量は質量部で示され、*1?*10は次の通りである。 *1:商品名「S750-NB」、セメダイン(株)製、2成分形ポリウレタン系シーリング材の基剤(NCO:3.0%) *2:商品名「ALD-1」、三井化学ポリウレタン(株)製、ジアルジミン(アミン価337mgKOH/g) *3:商品名「アクトコール(登録商標)DIOL-3000」、三井化学ポリウレタン(株)製 *4:商品名「アクトコール(登録商標)87-34」、三井化学ポリウレタン(株)製 *5:商品名「ネオスタンU-830」、日東化成(株)製、ジオクチル錫ジネオデカノエート *6:商品名「プキャットCa-5B」、日本化学産業(株)製、ネオデカン酸系カルシウム(Ca:5%) *7:商品名「MS-700」、丸尾カルシウム(株)製、表面処理沈降炭酸カルシウム *8:商品名「ホワイトンSB」、白石カルシウム(株)製、重質炭酸カルシウム *9:商品名「ミネラルスピネットA」、新日本石油(株)製 *10:商品名「ネオスタンU-600」、日東化成(株)製、ビスマストリス(2-エチルヘキサノエート) 【0047】 前記得られた組成物に対し、下記の測定を行った。結果を表5?8に示す。 1.発泡性試験 基剤と硬化剤を混合後、直径13mm、長さ110mmの試験管に充填し、50℃の乾燥機で養生した。24時間後、試験管上部からはみ出した長さを測定した。 2.作業性試験 基剤と硬化剤を混合し、混合直後と2時間後の23±2℃、50±5%RHにおける粘度を測定した。増粘率2.0未満を○、2.0以上を×と評価した。 3.硬化性試験 基剤と硬化剤を混合し、23±2℃、50±5%RHで養生した。24時間後の表面硬化を指触により確認し、指に付着しない場合を○、付着する場合を×と評価した。 ・・(中略)・・ 【0049】 【表6】 【0050】 【表7】 【0051】 【表8】 」 (2)引用文献7(特開2007-211142号公報) 上記原査定で引用された引用文献7(以下「参考例」という。)には、以下の事項が記載されている。 (2a) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 (A)末端又は側鎖にイソシアネート基を有し、且つ、ウレタン結合を有するプレポリマー; (B)アミンアダクト型潜在性硬化剤;及び (C)湿気潜在性硬化剤 を含む、一液型熱硬化性組成物。 ・・(中略)・・ 【請求項5】 前記(C)湿気潜在性硬化剤の配合量が組成物の全質量を基準として0.1?10質量%である、請求項1乃至4のいずれかに記載の一液型熱硬化性組成物。 【請求項6】 請求項1乃至5のいずれかの一液型熱硬化性組成物からなるシーリング材又は接着剤。」 (2b) 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明は、上記した要求に応えることを意図したものであり、具体的には、優れた接着性を備え、加熱により容易に硬化し、高温焼き付け時にも軟化せず、加熱温度や加熱時間等の関係で硬化が不十分であっても、その後に空気中の湿気で完全に硬化し、且つ、硬化後に塗膜との密着性が高い一液型熱硬化性組成物を提供することをその目的とする。 ・・(中略)・・ 【発明の効果】 【0012】 本発明によれば、優れた接着性を備え、加熱により容易に硬化し、高温焼き付け時にも軟化せず、且つ、硬化後に塗膜との密着性が高い一液型熱硬化性組成物を得ることができる。」 (2c) 「【0029】 本発明の組成物の必須成分の一つである(C)湿気潜在性硬化剤とは、使用環境下の水分による加水分解によりアミンが生成するものであり、例えば、エナミン(英国特許1575666号)、ポリアルジミンあるいはポリケチミン(英国特許1064841号、独国特許3133769号、特開平2-283710号公報、特開平4-279620号公報)、β?ラクタム(特開平2-168号公報)、オキサゾリジン(特開平2-55715号公報)等が挙げられる。前記(C)湿気潜在性硬化剤の配合量は組成物の全質量を基準として0.1?10質量%、好ましくは0.1?6質量%、より好ましくは0.1?4質量%、更により好ましくは0.1?2質量%であることができる。 【0030】 特に、(C)湿気潜在性硬化剤としては、特開平4-279620号公報に開示されている下記一般式: 【化1】 (式中、 Xは炭素数6?15のアリール基を示し、各Xは互いに同じでも異なっていてもよく、 Yは炭素数2?15の2価若しくは3価の炭化水素基、又は、分子量が70?6000の2価若しくは3価のポリオキシアルキレン基を示し、 nは2又は3を示す)で表されるポリアルジミンが好ましい。 【0031】 前記アリール基としては、例えば、フェニル基及び1以上の置換基で置換された置換フェニル基が好ましい。この場合の置換基としては炭素数が1?9のアルキル基、炭素数が1?9のアルコキシ基等が好ましい。上記アリール基の置換基数としては1?3のものが好ましい。Xで示すアリール基の具体例としては例えばフェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、プロポキシフェニル基等が挙げられる。 【0032】 前記炭化水素基としては鎖状、分岐状又は環状のアルキル基に基づくものが好ましい。鎖状アルキル基としては炭素数が4?8のもの、分岐状アルキル基としては炭素数が4?10のもの、環状アルキル基としては1?3の環を有するものが好ましく、環状アルキル基の環の部分の炭素数は5?12のものが好ましい。更に前記環部分は置換基を有するものでもよい。置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のC1-6アルキル基が好ましい。 ・・(中略)・・ 【0034】 (C)湿気潜在性硬化剤として用いることができる代表的な市販品としては、例えば、ポリアルジミンである三井武田ケミカル(株)製のALD-1等が挙げられる。」 (2d) 「【0035】 本発明の一液型湿気硬化型組成物は、上記の成分の他、本発明の目的を損なわない範囲で、充填剤、可塑剤、チキソトロピー剤、溶剤、顔料、カップリング剤、硬化触媒、水分吸収剤(脱水剤)、安定剤等の添加剤を適宜含有することができる。これらの添加剤の配合量は、組成物全体の質量を基準として、例えば1?80質量%、好ましくは1?60質量%の範囲内とすることができる。 【0036】 充填剤としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、シリカ、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、カーポンブラック、ガラスバルーン、プラスチックバルーン、珪藻土、ゼオライト等が挙げられる。上記充填剤は単独で使用してもよく、又は、2種類以上を併用してもよい。 ・・(中略)・・ 【0039】 溶剤は、作業性調整の為に添加することができるが、例えば、芳香族系炭化水素、ミネラルスピリット、メチルエチルケトン等が挙げられる。上記溶剤は単独で使用してもよく、又は、2種類以上を併用してもよい。 ・・(中略)・・ 【0045】 本発明の一液型湿気硬化型組成物には、この他にも、必要に応じて、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、分散剤等の各種添加剤を配合することができる。 【0046】 本発明の一液型熱硬化型組成物は、従来から採用されているような湿分(湿気)の影響を極力抑えた環境下(例えば真空下)で周知の方法により製造することができる。例えば、各種の充填材、可塑剤、チキソトロピー剤等と共に(A)プレポリマーをベント装置付きバッチ式二軸混練ミキサー等を用いて混合攪拌し、その後、(B)アミンアダクト型硬化剤及び(C)湿気潜在性硬化剤を、必要に応じて、カップリング剤、水分吸収剤、紫外線吸収剤、溶剤、硬化触媒及び他の添加剤と共に適宜配合し、さらに混合・脱泡することにより、目的とする組成物を製造することができる。 【0047】 本発明の一液型熱硬化型組成物は、接着性、硬化特性、耐塗装性等に優れているので、加熱処理を伴う製造工程を含む用途に好適に使用することができる。したがって、本発明の一液型熱硬化型組成物は、自動車、家電製品、建築、土木工事の用途のシーリング材、接着剤等の成分として好ましく使用することができる。」 3.検討 (1)引用例に記載された発明 上記引用例には、実施例7ないし9として、「ウレタンプレポリマー(A)」100質量部と「ポリアルジミン(D)」2.5、5又は10質量部とからなる「基剤」並びに2種の「ポリオール化合物(B)」の合計104質量部と「有機酸ビスマス(C)」0.8質量部と2種の「炭酸カルシウム」の合計286質量部と「溶剤」10質量部とからなる「硬化剤」からなる「2液硬化型ポリウレタン組成物」が記載され(摘示(1i)【0041】、【0043】参照)、当該「2液硬化型ポリウレタン組成物」につき、「発泡性試験」、「作業性試験」及び「硬化性試験」の結果についても記載されており(摘示(1i)【0047】、【0049】参照)、上記「ウレタンプレポリマー(A)」が、「2成分形ポリウレタン系シーリング材の基剤(NCO:3.0%)」であり、遊離NCO基を有すること及び上記「有機酸ビスマス(C)」が、「ビスマストリス(2-エチルヘキサノエート)」なるビスマス化合物であることも記載されている(摘示(1i)【0046】参照)。 してみると、上記引用例には、上記(1a)ないし(1i)の記載事項(特に(1i)の記載事項)からみて、 「遊離NCO基を有するウレタンプレポリマー(A)100質量部とポリアルジミン(D)2.5、5又は10質量部とからなる基剤並びにポリオール化合物(B)104質量部とビスマストリス(2-エチルヘキサノエート)である有機酸ビスマス化合物(C)0.8質量部と炭酸カルシウム286質量部と溶剤10質量部とからなる硬化剤からなる2液硬化型ポリウレタン組成物」 に係る発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 (2)検討 ア.対比 本願発明と上記引用発明とを対比すると、引用発明における「遊離NCO基を有するウレタンプレポリマー(A)」は、引用例の記載に照らすと、「ウレタンプレポリマー(A)中にはイソシアネート基が残存している」ものであり(摘示(1d)参照)、「(NCO:3.0%)」(質量比)であること(摘示(1f)参照)がそれぞれ開示されていることにより、遊離NCO基を複数有するものであると理解するのが自然であって、本願明細書(【0011】)に定義された「比較的高分子量のイソシアネート基含有ポリマー」に該当するものと理解できるから、本願発明における「ポリイソシアネート」に相当し、引用発明における「ポリアルジミン(D)」は、アルジミノ基が、(第1級)アミン化合物に対してアルデヒドを反応させて形成され、後に加水分解によりアミノ基を遊離するようにアミノ基をブロックしている基であることが当業者に自明であり、当該アルジミノ基を複数有する化合物である点で、本願発明における「アルジミノ基と、・・アルジミノ基・・の追加の反応性基とを有する・・ブロック化アミン」に相当する。 また、引用発明における「ポリオール化合物(B)」は、本願発明における「ポリオール」に相当するとともに、引用発明における「ビスマストリス(2-エチルヘキサノエート)である有機酸ビスマス化合物(C)」は、ビスマス(原子)1個に対して2-エチルヘキサン酸基が3分子結合するものであって、当該ビスマス(原子)は、3価の金属原子であると解することができ、「(C)」成分は硬化触媒である(摘示(1a)及び(1e)参照)から、本願発明における「ビスマス(III)化合物・・の触媒」に相当する。 さらに、引用発明における「遊離NCO基を有するウレタンプレポリマー(A)・・からなる基剤」及び「ポリオール化合物(B)・・からなる硬化剤」は、それぞれ、本願発明における「第2剤が少なくとも1種のポリイソシアネートを含有し」及び「第1剤が少なくとも1種のポリオールを含有し」に相当することが明らかであり、引用発明における「基剤並びに・・硬化剤からなる2液硬化型ポリウレタン組成物」は、記載順序を入れ替えると、本願発明における「第1剤及び第2剤からなる組成物」に相当する。 なお、引用発明における「ポリアルジミン(D)とからなる基剤」及び「3価のビスマス化合物(C)・・とからなる硬化剤」は、当該「基剤」と「硬化剤」とから「2液硬化型ポリウレタン組成物」を構成した場合、「ポリアルジミン(D)」及び「3価のビスマス化合物(C)」がいずれも当該「組成物」中に含有されたものとなることが明らかであるから、本願発明における「前記組成物が、・・ブロック化アミンを更に含有し」及び「前記組成物が、ビスマス(III)化合物・・の触媒を更に含む」にそれぞれ相当する。 してみると、本願発明と引用発明とは、 「第1剤及び第2剤からなる組成物であって、 前記第1剤が少なくとも1種のポリオールを含有し、 前記第2剤が少なくとも1種のポリイソシアネートを含有し、 また、前記組成物が、アルジミノ基と、アルジミノ基の追加の反応性基とを有するブロック化アミンを更に含有し、 前記組成物が、ビスマス(III)化合物の触媒を更に含む、 第1剤及び第2剤からなる組成物。」 の点で一致し、以下の2点で一応相違するものと認められる。 相違点1:「ブロック化アミン」につき、本願発明では、「互変異性化によってエナミノ基に変換され得ない少なくとも1種のアルジミノ基・・を有する」のに対して、引用発明では、「ポリアルジミン(D)」であり、当該化合物が「互変異性化によってエナミノ基に変換され得ない少なくとも1種のアルジミノ基」を有するか否か不明である点 相違点2:引用発明では、「ポリオール化合物(B)と・・炭酸カルシウムと溶剤とからなる硬化剤」を含有するのに対して、本願発明では、「第1剤が少なくとも1種のポリオールを含有」するものであり、「炭酸カルシウム」と「溶剤」を含有することにつき特定されていない点 イ.各相違点に係る検討 (ア)相違点2について 事案に鑑み、まず、上記相違点2につき検討すると、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明の「組成物」において、2剤型ポリウレタン組成物に通常使用される追加の成分、特に、可塑剤、炭酸カルシウムなどの無機又は有機のフィラー、溶剤なども含むものと解されるレオロジー改質剤、湿潤剤、レベリング剤などの界面活性物質などの成分を含んでもよいことが開示され(【0101】)、その実施例においても、チョーク(すなわち泥質石灰石「白亜」であり化学名は炭酸カルシウム)を使用した例(【0148】【表7】参照)が開示されている。 また、上記参考例にも開示される(摘示(2d)参照)とおり、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーとアミンアダクト又は湿気硬化性の硬化剤とを含有する硬化性組成物において、組成物の作業性調整などを意図して、炭酸カルシウムなどの充填剤及びミネラルスピリットなどの溶剤をそれぞれ適宜量使用することは、当業者の周知慣用の技術であるものとも認められる。 してみると、本願発明においても、2剤型ポリウレタン組成物に通常使用される追加の成分、特に、可塑剤、炭酸カルシウムなどの無機又は有機のフィラー、溶剤なども含むものと解されるレオロジー改質剤、湿潤剤、レベリング剤などの界面活性物質などの成分を更に含有する態様を含むものと認められる。 したがって、上記相違点2については、実質的な相違点であるとはいえない。 (イ)相違点1について 上記相違点1につき検討するにあたり、本願発明における「互変異性化によってエナミノ基に変換され得ないアルジミノ基」につき確認すると、本願明細書に記載される(【0060】)とおり、「アルジミノ基の炭素原子に関して、α位の炭素原子上に水素原子を有しない」ものであるから、アルジミノ基が、脂肪族の第3級炭素原子に結合しているか、芳香族の環内の炭素原子に結合していれば、当該アルジミノ基は、互変異性化によってエナミノ基に変換され得ないアルジミノ基であるものと認められる。 以上を踏まえて検討すると、上記引用例には、その特許請求の範囲に記載された「(D)ポリアルジミン」(摘示(1a)参照)として、第1級アミノ基を複数有するポリアミン化合物と芳香族アルデヒドから製造される一般式(1)で表される化合物が好適であることが記載され、使用できるアルデヒドとして専らアルデヒド基が直接芳香環に結合する芳香族アルデヒドが例示されているのみである(摘示(1f)、特に【0028】参照)とともに、当該特許請求の範囲に記載された事項を具備するものと解される実施例7ないし9では、「ALD-1」なる商品名で表されるジアルジミン化合物(摘示(1i)参照)が使用されている。 また、上記「ALD-1」なる商品名で表されるジアルジミン化合物につき、上記参考例の記載(摘示(2c)参照)に照らすと、湿気潜在性硬化剤として、式中の「X」基が炭素数6から15のアリール基である「一般式」で表されるポリアルジミンが好適であり、その代表的な市販品としてポリアルジミンである「ALD-1」なる商品名で表されるものが例示されている。 なお、引用例に記載された「ALD-1」なる商品名で表されるジアルジミン化合物の販売元である「三井化学ポリウレタン株式会社」は、参考例における「三井武田ケミカル株式会社」が単に商号変更した法人であることが当業者に周知であり、引用例における「ALD-1」と参考例における「ALD-1」とは、同一の材料であるものと理解するのが自然である。 してみると、引用発明に係る実施例7ないし9において「ポリアルジミン(D)」として使用される「ALD-1」なる商品名で表されるジアルジミン化合物は、引用例に開示された第1級アミノ基を複数有するポリアミン化合物と芳香族アルデヒドから製造される一般式(1)で表される化合物であるものと認められる。 そして、当該「一般式(1)で表される化合物」につき検討すると、アルジミノ基のα位に存する「R^(1)」基は、炭素数6?15のアリール基であって、アルジミノ基のα位の炭素原子は、芳香環を構成する炭素原子であり水素原子が結合しているものではないから、「一般式(1)で表される化合物」における「-N=CH-R^(1)」なるn個のアルジミノ基(部分)は、いずれも「互変異性化によってエナミノ基に変換され得ないアルジミノ基」であるものと認められる。 なお、本願発明における「追加の反応性基」としての「アルジミノ基」において、「互変異性化によってエナミノ基に変換され得ないアルジミノ基」が除外されているものではないから、本願発明には、ポリアミン化合物とα位の炭素原子に水素原子が結合していない芳香族アルデヒド化合物のみとの反応生成物、すなわち化合物が有するアルジミノ基が、全て「互変異性化によってエナミノ基に変換され得ないアルジミノ基」であるポリアルジミン化合物を使用する場合も包含されていることは明らかである。 してみると、引用発明における「ポリアルジミン(D)」は、「(少なくとも1個の)互変異性化によってエナミノ基に変換され得ないアルジミノ基」を有するものといえるから、本願発明における「ブロック化アミン」に該当するものである。 したがって、上記相違点1については、実質的な相違点であるとはいえない。 (ウ)小括 以上のとおり、上記相違点1及び2は、いずれも実質的な相違点であるとはいえない。 ウ.検討のまとめ したがって、本願発明は、引用発明、すなわち引用例に記載された発明である。 4.当審の判断のまとめ 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものでない。 第4 むすび したがって、本願は、請求項1に記載された事項で特定される発明が、特許法第29条の規定により、特許を受けることができるものではないから、その他の請求項に係る発明につき更に検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2019-04-02 |
結審通知日 | 2019-04-09 |
審決日 | 2019-04-22 |
出願番号 | 特願2015-530415(P2015-530415) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C08G)
P 1 8・ 113- Z (C08G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 今井 督 |
特許庁審判長 |
近野 光知 |
特許庁審判官 |
佐藤 健史 橋本 栄和 |
発明の名称 | 2剤型ポリウレタン組成物 |
代理人 | 特許業務法人三枝国際特許事務所 |