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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1355206
審判番号 不服2018-8863  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-27 
確定日 2019-09-11 
事件の表示 特願2016- 39417「無線通信装置、無線通信方法、及び、無線通信制御装置、プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月18日出願公開、特開2016-149773〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年8月11日に出願した特願2000-245401号の一部を平成22年7月26日に新たな特許出願とした特願2010-167537号の一部を、平成24年2月9日に新たな特許出願とした特願2012-26483号の一部を、平成25年4月15日に新たな特許出願とした特願2013-85128号の一部を平成26年8月25日に新たな特許出願とした特願2014-170651号の一部を平成28年3月1日に新たな特許出願としたものである。
また、本願は、平成29年5月9日付けの拒絶理由の通知に対し、平成29年11月16日に意見書が提出されたが、平成30年2月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成30年6月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成30年6月27日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年6月27日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「通信装置を制御するリモート制御装置であって、
表示部と、
前記通信装置から電界強度情報を受信し、前記電界強度情報は、前記通信装置によって基地局から受信された電波の強度を示し、前記電界強度情報は、前記通信装置が無線通信システムを介して通信を送信または受信するための通信可能状態にあるか、または通信不能状態にあるかを示し、および、
前記通信装置からの前記電界強度情報に基づいて、電界強度インジケータを、前記表示部を介して表示し、前記電界強度インジケータは、前記通信装置が前記通信可能状態にあるときの電界強度の少なくとも4つのレベルからのレベルを示している
ように構成された制御部と
を備えたことを特徴とするリモート制御装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成28年3月1日にされた特許出願の願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「通信装置を制御するリモート制御装置であって、
表示部と、
前記通信装置から電界強度情報を受信し、前記電界強度情報は、前記通信装置が、無線通信システムを介して通信を送信または受信するための通信可能状態にあるか、または通信不能状態にあるかを示し、および、
前記通信装置からの前記電界強度情報に基づいて、電界強度インジケータを、前記表示部を介して表示する
ように構成された制御部と
を備えたことを特徴とするリモート制御装置。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された「リモート制御装置」において、「通信装置」から受信される「電界強度情報」について、上記のとおり、「前記通信装置によって基地局から受信された電波の強度を示」すとの限定を付加し、「制御部」により「表示部」を介して表示される「電界強度インジケータ」について、上記のとおり、「前記通信装置が前記通信可能状態にあるときの電界強度の少なくとも4つのレベルからのレベルを示している」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「改正前の特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原審拒絶査定に引用された、特開2000-069149号公報(平成12年3月3日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

「【0005】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するために請求項1記載の通信端末にあっては、通信端末、該通信端末に着脱自在に接続される接続端末、該接続端末と無線により接続する該接続端末と別体の携帯端末を有する携帯端末システムの通信端末において、当該通信端末の情報を取得する情報取得手段と、この情報取得手段により取得した情報を前記接続端末に接続端子を介して出力する出力手段とを備えている。したがって、通信端末から接続端末に当該通信端末が有する情報、例えば受信電波強度、圏外、位置登録更新、設定情報、通信履歴等を出力し、すると接続端末がこれを携帯端末に無線送信し、この送信される情報を携帯端末側で表示する等が可能となる。」(下線は当審で付与。以下同じ。)

「【0029】(1)第1の実施の形態
(1-A)システム構成
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかるシステムの全体構成を示すものである。このシステムは、公衆網(通信回線)1に接続され複数箇所に配置された基地局2(公衆基地局及び自営基地局)、最寄りの基地局2と送受信を行うPHS用の端末機である移動体電話端末(通信端末)3、この移動体電話端末3に着脱自在に装着される接続端末4、及びこの接続端末4と無線で接続されるポケット型及び腕時計型の携帯端末5、5とで構成されており、公衆網1には、一般加入電話6も接続されている。そして、図2の使用例に示すように、移動体電話端末3に接続端末4を接続して、ユーザー(着信者)の鞄7内に入れておく一方、ポケット型携帯端末5は胸ポケットに入れておき、腕時計型の携帯端末5はユーザーの腕に装着しておく。」

「【0038】この5図に示した接続端末4は、データ入出力コネクタ37が機器本体36に一体的に設けられている一体タイプであり、図3(A)(B)に示したように、データ入出力コネクタ37を通信用データ入出力接続部13に接続させることにより、移動体電話端末3に装着される。また、図3(C)に示したように、データ入出力コネクタ37と機器本体36とがケーブル41を介して接続されている別体タイプの接続端末4にあっては、データ入出力コネクタ37を通信用データ入出力接続部13に接続させるとともに、フラップ部8aに機器本体36を固定することにより、移動体電話端末3に装着される。」

「【0058】(2)第2の実施の形態
(2-A)システム構成
図11は、本発明の第2の実施の形態にかかるシステムの全体構成を示すものである。このシステムは、第1の実施の形態と同様に、公衆網1に接続され複数箇所に配置された基地局2、移動体電話端末3、接続端末4、携帯端末5、5とで構成されている。しかし、本実施の形態における接続端末4と携帯端末5とは第1の実施の形態とは異り、接続端末4は、移動体電話端末3からの着呼呼出信号を受け、着呼通知信号等を無線送信するのみならず、携帯端末5からの応答や移動体電話端末3に対する制御信号等を受信し、移動体電話端末3に送出する。また、携帯端末5は、着呼通知信号等を受信し報知とメッセージ表示とを行うのみならず、応答や移動体電話端末3に対する制御信号等を接続端末5に無線送信するものである。そして、図12の使用例に示すように、移動体電話端末3に接続端末4を接続して、ユーザーUの鞄7内に入れておく一方、腕時計型の携帯端末5はユーザーUの腕に装着しておく。これにより、同図(A)に示すように、呼出報知とメッセージ表示とが可能となるのみならず、同図(B)に示すように、接続端末5での操作により、電話にでないで(移動体電話端末3を使用せずに)、留守録操作や返信操作をリモコン操作により行うことを可能にするものである。」

「【0060】図13の上部は、本実施の形態における移動体電話端末3の回路の構成を示すブロックである。このブロックにおいて、アンテナ9、送受信部14、通信制御部18、音声処理部23、呼出音停止スイッチ27、サウンダ28、スピーカ10、マイク29、操作部12、表示部11、制御部30、端末IDメモリ33、RAM32、ROM31、データ通信用入出力回路35、通信用データ入出力接続部13を無線電話部に有する構成は、図4上部に示した第1の実施の形態と同様である。しかし、この第2の実施の形態における移動体電話端末3には、さらに送信付加情報&データメモリ73、受信付加情報&データメモリ74、付加機能1(留守録音)ブロック75、付加機能2(電話番号簿)ブロック76、付加機能3(データ系通信)ブロック77が設けられている。」

「【0060】図13の上部は、本実施の形態における移動体電話端末3の回路の構成を示すブロックである。このブロックにおいて、アンテナ9、送受信部14、通信制御部18、音声処理部23、呼出音停止スイッチ27、サウンダ28、スピーカ10、マイク29、操作部12、表示部11、制御部30、端末IDメモリ33、RAM32、ROM31、データ通信用入出力回路35、通信用データ入出力接続部13を無線電話部に有する構成は、図4上部に示した第1の実施の形態と同様である。しかし、この第2の実施の形態における移動体電話端末3には、さらに送信付加情報&データメモリ73、受信付加情報&データメモリ74、付加機能1(留守録音)ブロック75、付加機能2(電話番号簿)ブロック76、付加機能3(データ系通信)ブロック77が設けられている。」

「【0063】(2-C)接続端末の構成
接続端末4の外観構成は、図5(A)(B)(C)に示した第1の実施の形態と同様である。
【0064】図13の下部は、本実施の形態における接続端末4の回路の構成を示すブロックである。このブロックに示すように、移動体電話端末3の通信用データ入出力接続部13に、データ入出力コネクタ37が着脱自在に接続される。このデータ入出力コネクタ37には、データ入出力制御回路78を介して無線送受信制御部79が接続されている。この無線送受信制御部79は、携帯端末5との携帯端末5とのデータの送受信等を制御するものであって、設定操作部80の操作により設定された送信用IDと受信用IDとを各々内蔵ID(送信用ID)メモリ81と、内蔵ID(送信用ID)メモリ82とに格納する。」

「【0068】図14は、携帯端末5の回路の構成を示すブロックでり、アンテナ55、報知部54、表示部71、操作部53、その他データメモリ69、発振器65、分周/時計部66等を有している構成は、前述した図7に示す第1の実施の形態と同様である。そして、アンテナ55は送受信部93に接続されており、受信側においては、送受信部93で受信された送信用IDを伴う信号は変復調部94で復調されて、受信データ復号部95で復号される。この受信データ復号部95で復号された受信データを構成する受信コマンドと付加制御情報、受信付加データ、送信用IDは、各々受信コマンド/付加制御情報部96、受信付加データ部97、受信ID処理部98で検出される。そして、受信ID処理部98で検出された送信用IDは、ID照合部99で内蔵ID100に記憶されている受信用IDと照合される。この照合の結果、両IDが一致する場合には、制御部101が送信コマンド/付加制御情報部96からの送信コマンドと付加制御情報、及び受信付加データ部97からの受信付加データとを受信情報メモリ102に記憶させ、この受信情報メモリ102に記憶された制御情報とデータとが表示部71に表示される。」

「【0074】(2-F)動作
次に以上の構成にかかる本実施形態の動作を図17?図19のフローチャートに基づいて説明する。
【0075】移動体電話端末1の制御部30は、電源のオンに伴って図17に示すフローチャートに従って処理を実行し、移動体電話端末3の状態(通信状態、端末の設定状態、メモリの状態等)を検出し(ステップSB1)、着信の有無を監視する(ステップSB2)。そして、基地局2から着信があったならば着信処理を実行して(ステップSB3)、着信時に受信した相手電話番号及び発信者氏名、メッセージ等の着信情報を取り込む。引き続き、着信通知メッセージ(着呼通知:通常通知(図15(3))、留守録着信(図15(4)))を接続端末4へ出力する着信通知処理を実行して(ステップSB4)、データ通信用入出力制御回路35より、前記受信データ及び端末IDメモリ33に記憶されているIDを送信する。さらに、これら以外の着信処理に続くその他の移動体電話端末3での処理を実行し(ステップSB5)、例えば留守録モードが設定されている場合の応答メッセージの再生等を行う。」

「【0078】他方、携帯端末5の制御部101は、プログラムに基づき図19に示すフローチャートに従って動作し、メッセージ信号を受信したかを判断して、メッセージ信号を受信するとメッセージ信号を解析して該メッセージ信号の有効性を確認する(ステップSD1)。このメッセージ信号の有効性の確認は、移動体電話端末3側から接続端末4を介して送信されたIDを携帯端末5側で照合することにより行う。なお、これに限らず、携帯端末5が受信したメッセージ信号が、対応する移動体電話端末3から送信されたものであることを確認することができれば、他のいかなる方法であってもよい。」

「【0084】また、移動体電話端末3において、前記ステップSB2で基地局2からの着信でないことを判断すると、携帯端末5からのメッセージ信号を受信したかを判断し(ステップSB6)、メッセージ信号を受信してないと、端末状態通知タイミングかを判断する(ステップSB10)。そして、端末状態通知タイミングであると、ステップSB1で検出した端末の状態を通知メッセージを信号(図15(3)?(4))にして、要求信号(図15(1))とともに接続端末4に出力する(ステップSB11)。
【0085】接続端末4はこれを携帯端末5に送信し(ステップSC2)は、携帯端末5はこのメッセージ信号を受けると、前記ステップSD2で「NO」となり、受信したメッセージ信号が状態通知信号であるかを判断する(ステップSD9)。この受信メッセージ信号が状態通知信号であると、このメッセージ信号中にある状態情報(例えば、圏内圏外情報、受信レベル、電池残量、留守モード)を表示部71に表示する(ステップSD10)。」

「【0113】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、通信端末に接続された接続端末が別体の携帯端末に通信端末の情報、すなわち発信者情報、端末状態情報、通信端末の受信状態、電源状態、設定状態等を無線送信し、携帯端末で接続端末から送信されてきた情報を表示するので、通信端末を取り出して情報を視認せずとも、通信端末とは別体の携帯端末のみを用いて情報の視認が可能なり、これにより利便性の向上を図ることができる。」

「【図1】


(【図1】本発明の第1の実施の形態を示すシステム構成図である。)

「【図11】


(【図11】本発明の第2の実施の形態を示すシステム構成図である。)

「【図13】


(【図13】同移動体電話端末と接続端末の回路構成を示すブロックである。)

「【図14】


(【図14】同実施の形態における携帯端末の回路構成を示すブロック図である。)

「【図15】


(【図15】同実施の形態における接続端末から携帯端末への送信信号フォーマット図である。)

「【図17】


(【図17】同実施形態における移動体電話端末の動作を示すフローチャートである。)

「【図18】


(【図18】同実施形態における接続端末の動作を示すフローチャートである。)

「【図19】


(【図19】同実施形態における携帯端末の動作を示すフローチャートである。)

(イ)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
引用文献1に記載された第2の実施の形態に係るシステムは、【0058】及び図11の記載によれば、第1の実施の形態と同様に、基地局2、移動体電話端末3、接続端末4、携帯端末5、5とで構成されているものである。
そして、携帯端末5が、移動体電話端末3に対する制御信号等を接続端末4に無線送信することで、接続端末4は、該制御信号等を受信し、移動体電話端末3に送出し、留守録操作や返信操作をリモコン操作により行うことを可能にするものである。
また、第1の実施の形態に係るシステムに関する【0029】及び図1の記載によれば、移動体通信電話端末(通信端末)3は、最寄りの基地局2と送受信を行うPHS用の端末機であって、第2の実施形態は第1の実施形態と同様であるから、第2の実施の形態に係る移動体通信電話端末3も同様に、最寄りの基地局2と送受信を行うPHS用の端末機であるといえる。
ここで、【0058】には、「これにより、同図(A)に示すように、呼出報知とメッセージ表示とが可能となるのみならず、同図(B)に示すように、接続端末5での操作により、電話にでないで(移動体電話端末3を使用せずに)、留守録操作や返信操作をリモコン操作により行うことを可能にするものである。」と記載されているが、【0058】の他の箇所及び図11の記載を参酌すると、下線部の「接続端末5での操作により、」は「携帯端末5での操作により、」の誤記と認められる。
したがって、引用文献1の携帯端末5は、制御信号等を接続端末4に無線送信することで、移動体電話端末3をリモコン操作可能なものである。

次に、【0068】及び図14の記載によれば、引用文献1の携帯端末5は、表示部71を有し、アンテナ55を介して送受信部93で受信された信号が変復調部94で復調され、さらに、受信データ復号部95で復号された受信データを構成する受信コマンドと付加制御情報、受信付加データ、送信用IDのうち、受信コマンドと付加制御情報、及び受信付加データを受信情報メモリ102に記憶させ、制御部101が受信情報メモリ102に記憶された制御情報とデータとを表示部71に表示するものである。

【0005】の記載によれば、引用文献1のシステムは、通信端末から接続端末に当該通信端末が有する情報、例えば受信電波強度、圏外を出力し、すると接続端末がこれを携帯端末に無線送信し、この送信される情報を携帯端末側で表示する等が可能となるものである。

【0078】及び図19の記載によれば、携帯端末5の制御部101は、図19に示すフローチャート(ステップSD1?SD16)に従って動作するから、ステップSD1?SD16は、携帯端末5の制御部101によって実行されるといえる。また、携帯端末5の制御部101は、ステップSD1でメッセージ信号を受信したか判断するものである。
【0074】,【0075】,【0084】,【0085】及び図15,17-19の記載によれば、引用文献1のシステムにおいて、移動体電話端末3は、端末状態通知タイミングであると、検出した端末の状態(通信状態、端末の設定状態、メモリの状態等)を通知メッセージにして接続端末4に出力し、接続端末4はこれを携帯端末5に送信し、携帯端末5は状態通知信号を受信すると、メッセージ信号中にある状態情報(例えば、圏内圏外情報、受信レベル、電池残量、留守モード)を表示部71に表示する(ステップSD10)。
したがって、携帯端末5の制御部101は、移動体電話端末3から接続端末4を介して、圏内圏外情報、受信レベルを含む状態情報を受信し、表示部71に表示するものである。

また、【0038】,【0063】,【0064】及び図13の記載によれば、第2の実施形態の接続端末4は、移動体電話端末3の通信用データ入出力接続部13に、データ入出力コネクタ37が着脱自在に接続されるものであり、その外観構成は、第1の実施形態と同様であるから、接続端末4は、データ入出力コネクタ37を通信用データ入出力接続部13に接続させることにより、移動体電話端末3に装着されるものである。

【0113】の記載によれば、引用発明は、移動体電話端末3(通信端末)の情報、すなわち、通信端末の受信状態等を、別体の携帯端末に表示することで、通信端末を取り出して情報を視認せずとも、通信端末とは別体の携帯端末のみを用いて情報の視認が可能とし、利便性の向上を図るものである。

(ウ)上記(ア)、(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「最寄りの基地局2と送受信を行うPHS用の端末機である移動体電話端末3を、制御信号等を接続端末4に無線送信することで、リモコン操作可能な携帯端末5であって、
表示部71と、
移動体電話端末3から、移動体電話端末3に装着される接続端末4を介して、圏内圏外情報、受信レベルを含む状態情報を受信し、及び、
状態情報を表示部71に表示する制御部101と
を備え、
移動体電話端末3を取り出して移動体電話端末3の受信状態等の情報を視認せずとも、別体の携帯端末5のみを用いて情報の視認を可能とし、利便性の向上を図った携帯端末5。」

イ 周知技術
(ア)新たに引用する、特開平09-018928号公報(以下、「周知例1」という。)には、次の記載がある。

「【0007】今、端末7が基地局1を介して通話を行い、矢印A方向に移動する場合を考える。通話の開始時点に端末7は基地局1のハンドオーバ処理レベルを取得するとともに、基地局1の電界強度(以下RSSI)がこのハンドオーバレベル以上、すなわち端末7がエリア4内で移動する限りは基地局1を介して通話を続ける。端末7が移動しエリア4の境界線上のP1を越えると、基地局1のRSSIがハンドオーバ処理レベルより下回り、端末7はハンドオーバ処理を行い、その結果基地局2に接続を切り換え通話が継続される。」

「【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで、端末7は上述の従来技術のように、接続される基地局のRSSIを検出し、これに基づいて電界強度を示す表示を行うと共に、RSSIが所定のレベル以下で基地局からの電波の受信ができない場合は圏外の表示や放音による警告を行う。この圏外を判定するレベルは基地局毎に決められたハンドオーバ処理レベルよりも低く、たとえば基地局1の場合一点鎖線8で示すようなエリアとなり、端末7がこのエリア8内であれば充分通話が可能である旨の表示がなされる。」

「【0013】
【課題を解決するための手段】このため本発明は、複数の基地局のひとつとの間で無線通信を行うとともに各基地局から報知される情報に基づいて他の基地局にハンドオーバを行うことができるデジタルコードレス電話装置において、前記基地局から送信される信号の電界強度を検出する電界強度検出手段と、前記各基地局より報知される情報と前記電界強度検出手段により検出される基地局の電界強度とを比較し、該比較結果に従ってハンドオーバ処理を行うよう制御する制御手段と、所定回数ハンドオーバ処理に失敗しハンドオーバ処理前に接続されていた基地局に再度接続された際に警告を報知する報知手段とを有することを特徴とするものである。」

「【0016】
【実施例】以下図面に従って本発明の実施例を説明する。図1は本発明によるデジタルコードレス電話装置を示すブロック図である。アンテナ10より入力される高周波信号は、RF/IF回路11によって周波数変換され、復調回路12でπ/4シフトQPSKの復調が行われる。その後、TDMA処理回路13でTDMA処理が行われ、音声信号部分については音声処理回路14でアナログ信号に変換され受話スピーカ15より音声として出力される。また基地局からの各種メッセージや制御信号はTDMA処理回路13から抽出され、これに基づいて制御回路16によって装置全体が制御される。」

「【0018】22は受信される基地局からの電波の電界強度を検出するRSSI検出回路であり、このRSSI検出回路22の検出結果に従って、制御回路16により後述のフローチャートのように制御される。23はテンキー、ファンクションキー等の操作釦、24は圏外表示やその他各種表示をおこなう表示器、25はリンガスピーカである。
【0019】図2は表示器24の表示の一例を示すものである。表示器24にはRSSI検出回路22によって検出されるRSSIレベルに基づいて、そのレベルを示すバー表示24aおよびアンテナマーク24bが表示される。RSSI検出回路22によって検出されるRSSIレベルは、制御回路16にて所定のレベルと比較され、レベルに応じてバー表示24aが表示制御され、RSSIレベルが低くなるに従って同図の(a)、(b)、(c)の順に表示が切り換えられるとともに、所定レベル以下になると(d)に示すようにアンテナマーク24bが点滅し、「ケンガイチュウイ」の表示24cがなされ、さらに受話スピーカ15より警告音が放音される。」

「【図1】


(【図1】本発明によるデジタルコードレス電話装置の実施例を示すブロック図である。)

「【図2】


(【図2】本発明によるデジタルコードレス電話に於ける表示器を示す図である。)

(イ)上記記載によれば、周知例1には、次の技術が記載されているといえる。
【0013】の記載によれば、周知例1のデジタルコードレス電話装置は、複数の基地局との間で無線通信を行い、基地局から送信される信号の電界強度を検出する電界強度検出手段を有するものである。
【0016】,【0018】及び図1の記載によれば、電界強度検出手段とは、具体的には、受信される基地局からの電波の電界強度を検出するRSSI検出回路22であり、さらにデジタルコードレス電話装置は、圏外表示やその他各種表示をおこなう表示器24を有するものである。
【0019】及び図2の記載によれば、表示器24には、RSSI検出回路22によって検出されるRSSIレベルに基づいて、そのレベルを示すバー表示24a及びアンテナマーク24bが表示され、レベルに応じてバー表示24aが表示制御され、RSSIレベルが低くなるに従って、バー表示24aの本数が3本→2本→1本と減るように表示が切り換えられるとともに、所定レベル以下になると、バー表示24aは表示されず、アンテナマーク24bが点滅し、「ケンガイチュウイ」の表示24cがなされる。
そうすると、図2の表示器24の表示の例では、RSSIレベルを示すバー表示24a及びアンテナマーク24bは、バー表示24aの本数が3本、2本、1本、0本かつアンテナマーク24bが点滅の4つの表示を行うから、4つのレベルを示しているといえる。
ここで、【0009】には、圏外の表示を行うときは、接続される基地局のRSSIが所定のレベル以下で基地局からの電波が受信できない場合であることが記載されているから、図2の表示の例における、RSSIレベルが最も低く、「ケンガイチュウイ」の表示24cがなされるのは、基地局からの電波が受信できない場合と解される。
また、【0007】には、逆に、デジタルコードレス電話装置が、基地局1の電界強度がハンドオーバレベル以上、すなわち端末7がエリア4内で移動する限りは基地局1を介して通話を続けることが記載されているから、「ケンガイチュウイ」の表示24cがされず、バー表示24aの本数が3本、2本、1本の表示を行う3つのレベルは、通信の可能な状態と解される。

(ウ)上記(イ)によれば、周知例1には、次の技術が記載されていると認められる。
「複数の基地局との間で無線通信を行うデジタルコードレス電話装置であって、
受信される基地局からの電波の電界強度を検出するRSSI検出回路22と、
圏外表示やその他各種表示をおこなう表示器24を有し、
表示器には、RSSI検出回路22によって検出されるRSSIレベルに基づいて、バー表示24a及びアンテナマーク24bにより、そのレベルが表示され、
通信の可能な状態で3つのレベルが示されるとともに、
RSSIレベルが最も低く、基地局のRSSIが所定レベル以下の場合には、圏外の表示を行うことで、4つのレベルの表示を行うデジタルコードレス電話装置。」

(エ)新たに引用する、特開平11-113060号公報(以下、「周知例2」という。)には、次の記載がある。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、所定の通信エリア内に位置している状態(圏内状態)にある場合にのみ通信を行うことが可能な、例えばPHS(Personal Handyphone System)端末装置などの無線通信端末装置に関する。
【0002】
【従来の技術】PHS端末装置は、基地局装置からの電波が届く所定の通信エリア内に位置していないと通信を行うことができない。そこで従来よりPHS端末装置では、圏内状態にあるのか、あるいは通信エリア外に位置している状態(圏外状態)にあるのかを表示し、ユーザに報知するものとなっている。そしてこの表示は、例えば“圏外”という文字列やアンテナマークの表示/非表示によって行われている。」

「【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の一実施形態につき説明する。図1は、本発明に係る無線通信端末装置を適用して構成されたPHS端末装置の要部構成を示す機能ブロック図である。」

「【0013】基地局から送信されて到来した無線搬送波信号は、アンテナ1で受信されたのち無線部2の高周波スイッチ(SW)21を介して受信部22に入力される。この受信部22では、上記受信された無線搬送波信号が周波数シンセサイザ23から発生された受信局部発振信号とミキシングされて受信中間周波信号または受信ベースバンド信号に周波数変換される。なお、上記周波数シンセサイザ23から発生される局部発振周波数は制御部14より指示される。また、無線部2には受信電界強度(RSSI)検出器25が設けられている。このRSSI検出器25では、基地局から到来した無線搬送波信号の受信電界強度が検出され、その検出値は無線チャネルの空きを判定するために制御部14に通知される。」

「【0022】サウンダ部13は、制御部14の制御の下に着信音やアラームなどを発生するためのものである。制御部14は、各部を総括して制御することでPHS端末装置としての動作を実現するものである。この制御部14は、例えばマイクロコンピュータを主処理部として有し、PHS端末装置における周知の一般的な制御手段に加えて、待受け時に、圏内状態および圏外状態のいずれの状態にあるかを示す待受け画像を表示部12に表示させる待受け画像表示制御手段14aを有している。」

「【0025】そして制御部14は、ランモードになる毎に1度、図2に示すような待受け画像表示処理を待受け画像表示制御手段14aによって実行する。この待受け画像表示処理において制御部14はまず、TDMAデコーダ41での圏内・圏外の判定結果を確認し、現在自装置が圏内状態であるか否かの判定を行う(ステップST1)。
【0026】ここで圏内状態であるならば、制御部14は変数nを+1し(ステップST2)、続いてRSSI検出器25によって検出されている受信電界強度が「強」「中」「弱」のいずれであるかの判断を行う(ステップST3)。そして、受信電界強度が「強」である場合には、キャラクタデータ記憶領域9aからキャラクタデータA(n)を読出し、これを表示制御部122へと与える(ステップST4)。受信電界強度が「中」である場合には、キャラクタデータ記憶領域9aからキャラクタデータB(n)を読出し、これを表示制御部122へと与える(ステップST5)。受信電界強度が「弱」である場合には、キャラクタデータ記憶領域9aからキャラクタデータC(n)を読出し、これを表示制御部122へと与える(ステップST6)。」

「【0030】この結果、液晶表示器121に表示された画像は、動画像としてユーザに認識されるものとなる。一方、圏外状態であるならば、制御部14は無条件にキャラクタデータ記憶領域9aからキャラクタデータDを読出し、これを表示制御部122へと与える(ステップST9)。」

「【図2】


(【図2】待受け画像表示処理における制御部14の処理手順を示すフローチャート。)

(オ)上記記載によれば、周知例2には、次の技術が記載されているといえる。
【0001】及び【0002】の記載によれば、周知例2のPHS端末装置(【0011】)は、所定の通信エリア内に位置している状態(圏内状態)にある場合にのみ通信を行うことが可能で、所定の通信エリア外に位置している状態(圏外状態)では通信を行うことができないものであると解される。
そして、【0013】,【0022】,【0025】,【0026】,【0030】及び図2の記載によれば、周知例2のPHS端末装置は、RSSI検出器25で、基地局から到来した無線搬送波信号の受信電界強度が検出され、その検出値は制御部14に通知され、制御部14は、待受け時に、圏内状態及び圏外状態のいずれの状態にあるかを示す待受け画像を表示部12に表示させる待受け画像表示制御手段14aを有し、TDMAデコーダ41での圏内・圏外の判定結果を確認し、現在自装置が圏内状態であるか否かの判定を行い、圏内状態であれば、RSSI検出器25によって検出されている受信電界強度が「強」「中」「弱」のいずれであるかの判断を行い、受信電界強度に対応したキャラクタデータA(n)?C(n)の表示を行い、圏外状態であるならば、キャラクタデータDを表示するものである。
ここで、制御部14は、圏内状態で、基地局から到来した無線搬送波信号の受信電界強度に対応して、「強」「中」「弱」の3種類のキャラクタデータA(n)?C(n)の表示を行い、圏外状態では、別のキャラクタデータDの表示を行うから、4つのレベルの表示を行うといえる。

(カ)上記(オ)によれば、周知例2には、次の技術が記載されていると認められる。
「圏内状態にある場合にのみ通信を行うことが可能で、圏外状態では通信を行うことができないPHS端末装置であって、
基地局から到来した無線搬送波信号の受信電界強度を検出するRSSI検出器25を備え、
自装置が圏内状態及び圏外状態のいずれの状態にあるかを示す待受け画像を表示部12に表示させ、
圏内状態では、上記受信電界強度に対応して、3つのレベルの「強」、「中」、「弱」の表示を行うとともに、圏外状態では別の表示を行うことで、4つのレベルの表示を行うPHS端末装置。」

(キ)上記(ウ),(カ)によれば、
「基地局との間で通信を行う携帯端末であって、
基地局からの電波の受信電界強度について、通信を行うことが可能な状態にあるときの受信電界強度に対応して、3つのレベルで表示部に表示するとともに、当該3つのレベルの表示の他に、圏外状態を表示することで、基地局からの電波の受信電界強度を4つのレベルで表示部に表示する携帯端末。」
は周知技術(以下、「周知技術」という。)である。

(3)本件補正発明と引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明における「移動体電話端末3」は、最寄りの基地局2と送受信を行う、すなわち、通信を行うものであり、端末は装置に含まれるから、引用発明における「移動体電話端末3」は、本件補正発明における「通信装置」に含まれる。
(イ)引用発明における「携帯端末5」は、制御信号等を「接続端末4」に無線送信することで、「移動体電話端末3」をリモコン操作可能であるから、「携帯端末5」は「移動体電話端末3」をリモート制御するといえるので、「リモート制御装置」であるといえる。
したがって、引用発明における「携帯端末5」は、「通信装置」を制御するリモート制御装置であるといえる。
(ウ)引用発明における「表示部71」は、本件補正発明における「表示部」に相当する。
(エ)引用発明における「状態情報」は、圏内圏外情報、受信レベルを含み、一般に移動体電話端末は、圏内であれば送受信、すなわち、無線通信が可能な状態であり、圏外であれば送受信、すなわち、無線通信が不能な状態となるから(周知例1の【0009】及び周知例2の【0001】,【0002】も参照されたい)、引用発明における「状態情報」は、移動体電話端末3が無線通信システムを介して送信又は受信するための通信が可能な状態にあるか、不能な状態にあるかを示しているといえる。
また、引用文献1の【0005】に、通信端末(移動体電話端末)から接続端末に、受信電波強度を出力し、接続端末がこれを携帯端末に無線送信し、携帯端末が送信される情報を表示することが記載されているから、引用発明における「受信レベル」は、受信電波強度に対応するといえる。
そして、電波強度は、電界強度で表すことが一般的であるから、受信電波強度は、電界強度に関する情報といえる。
したがって、引用発明における「状態情報」と、本件補正発明における「電界強度情報」は、受信された電波の強度を示し、「通信装置」が無線通信システムを介して通信を送信又は受信するための通信可能状態にあるか、又は通信不能状態にあるかを示している「電界強度及び無線通信に関する状態情報」である点で共通する。
(オ)引用発明における「移動体電話通信端末3」は、上記(ア)で述べたように「通信装置」に含まれる。
また、上記(エ)より、引用発明における「携帯端末5」は、「移動体電話通信端末3」から「接続端末4」を介して、「電界強度及び無線通信に関する状態情報」を受信する。
そして、「接続端末4」は「移動体電話端末3」に装着されるものであるから、引用発明における「移動体電話通信端末3」に「接続端末4」を装着して一体とされた装置は、本願発明における「通信装置」に相当する。
(カ)上記(エ),(オ)より、引用発明における「携帯端末5」と、本件補正発明における「リモート制御装置」は、「通信装置」から、「電界強度及び無線通信に関する状態情報」を受信する点で共通する。
(キ)引用発明における「制御部101」は、移動体電話端末3から受信した圏内圏外情報、受信レベルを含む状態情報を表示部71に表示するものであり、状態情報は所定の標識、すなわち、インジケータにより表示されるから、「通信装置」からの「電界強度及び無線通信に関する状態情報」に基づいて、「インジケータ」を、表示部を介して表示する点で、本件補正発明における「制御部」と共通する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「通信装置を制御するリモート制御装置であって、
表示部と、
通信装置から電界強度及び無線通信に関する状態情報を受信し、電界強度及び無線通信に関する状態情報は、受信された電波の強度を示し、電界強度及び無線通信に関する状態情報は、通信装置が無線通信システムを介して通信を送信又は受信するための通信可能状態にあるか、又は通信不能状態にあるかを示し、及び、
通信装置からの電界強度及び無線通信に関する状態情報に基づいて、インジケータを、表示部を介して表示する制御部と
を備えた制御装置。」

【相違点1】
一致点の「電界強度及び無線通信に関する状態情報」について、本件補正発明では、「前記電界強度情報は、前記通信装置によって基地局から受信された電波の強度を示し」ているのに対して、引用発明では、「状態情報」は受信レベルを含み、受信レベルは受信電波強度に対応するものの、当該受信電波強度が基地局から受信された電波の強度であることが特定されていない点。

【相違点2】
一致点の「通信装置からの電界強度及び無線通信に関する状態情報に基づいて、インジケータを、表示部を介して表示する」ことを、本件補正発明では、「電界強度インジケータを、前記表示部を介して表示し、前記電界強度インジケータは、前記通信装置が前記通信可能状態にあるときの電界強度の少なくとも4つのレベルからのレベルを示している」という態様で行うのに対して、引用発明では、圏内圏外情報、受信レベルを含む「状態情報」をどのような態様で表示部71に表示するのか特定されていない点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
引用発明の携帯端末5は、(3)ア(エ)で述べたように、移動体電話端末3から接続端末4を介して、圏内圏外情報、受信電波強度に対応する受信レベルを含む状態情報を受信するものである。
ここで、移動体電話端末3は、最寄りの基地局2と送受信を行うPHS用の端末機であるから、圏内圏外情報は、基地局2から受信された電波の強度に基づくものであることは自明である(特開平08-340580号公報の【0002】,【0003】、特開平10-013951号公報の【0002】,【0003】及び特開2000-209642号公報の【0007】,【0008】参照)。
そうすると、圏内圏外情報と同様に状態情報として受信する、受信電波強度に対応する受信レベルが、移動体電話端末3が通信を行う基地局2から受信された電波の強度であることも自明である。
したがって、引用発明における「状態情報」の受信レベルとは、基地局2から受信された電波の受信電波強度であるから、「電界強度及び無線通信に関する状態情報」が「通信装置」によって、基地局から受信された電波の強度を示すことは、引用文献1に記載されているに等しい事項である。

イ 相違点2について
本件補正発明の「電界強度インジケータ」は、「前記通信装置が前記通信可能状態にあるときの電界強度の少なくとも4つのレベルからのレベルを示している」ものであるが、本願の明細書の【0045】及び図5には、表示部15に表示される、基地局からの受信電波の電界強度のレベルを示す電界強度表示61について、「例えば、良好、普通、悪い、通信不可とったように4段階程度のレベルで表される。」と記載されている。
また、本願明細書の【0152】及び図20には、リモートコントローラ42の表示部44に表示される電界強度表示について、「例えば、良好、普通、悪い、通信不可とったように4段階程度のレベルで表示部44に表示される。」と記載されている。
そして、本願明細書及び図面には、電界強度表示について、「良好、普通、悪い、通信不可」の4段階程度のレベルを表示する以外の例は示されていないから、本件補正発明における「前記通信装置が前記通信可能状態にあるときの電界強度の少なくとも4つのレベル」とは、「良好、普通、悪い、通信不可」と解される。

上記(2)イ(キ)で述べたように、「基地局との間で通信を行う携帯端末であって、基地局からの電波の受信電界強度について、通信を行うことが可能な状態にあるときの受信電界強度に対応して、3つのレベルで表示部に表示するとともに、当該3つのレベルの表示の他に、圏外状態を表示することで、基地局からの電波の受信電界強度を4つのレベルで表示部に表示する携帯端末。」は、周知技術である。
そして、周知技術における「通信を行うことが可能な状態にあるときの受信電界強度」に対応する「3つのレベル」は、本件補正発明における「4つのレベル」のうち、「良好、普通、悪い」の3段階のレベルに対応するものといえる。
また、「圏外状態」では、基地局との通信を行うことができないことは明らかであるから、周知技術における「圏外状態」は、本件補正発明における「4つのレベル」のうち、「通信不可」のレベルに対応するものといえる。

引用発明は、(2)ア(ウ)で述べたように、移動体電話端末3を取り出して移動体電話端末3の受信状態等の情報を視認せずとも、別体の携帯端末5のみを用いて情報の視認を可能とし、利便性の向上を図るものである。
したがって、引用発明においても、移動体電話端末3から接続端末4を介して受信した、圏内圏外情報、受信レベルを含む状態情報を携帯端末5の表示部71に表示する態様として、周知技術を勘案して、基地局から受信された電波の受信電界強度を、4つのレベルで表示部に表示するようにして、本件補正発明とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

エ したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 請求人の主張について
請求人は、平成30年6月27日に提出された審判請求書において、
「引用文献1は、リモート制御装置によって受信された状態情報が、通信装置によって基地局から受信された電波の強度を示すことを記載していません。よって、引用文献1は、本願の請求項1に記載されているような、通信装置から電界強度情報を受信し、電界強度情報は、通信装置によって基地局から受信された電波の強度を示す、ように構成されたリモート制御装置を記載していません。」と主張している。
この点については、「2 補正の適否」の「(4)判断 ア 相違点1について」で述べたとおりである。
また、請求人は、同審判請求書において、「引用文献1乃至4のいずれも、本願の請求項1に記載されているような、通信装置が通信可能状態にあるときの電界強度の少なくとも4つのレベルからのレベルを示す電界強度インジケータを記載していません。」と主張している。
この点については、「2 補正の適否」の「(4)判断 イ 相違点2について」で述べたように、周知技術である。
したがって、請求人の主張は、採用することができない。

4 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年6月27日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成28年3月1日にされた特許出願の願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1乃至32に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由1(新規性)は、この出願の請求項1,3,4,6,9-12,14,15,17,20乃至22に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものである。
また、理由2(進歩性)は、この出願の請求項1乃至32に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2乃至4に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2000-69149号公報
引用文献2:特開平10-39966号公報
引用文献3:特開平4-217128号公報
引用文献4:登録実用新案第3041235号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由1(新規性)及び理由2(進歩性)で引用された引用文献1の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
なお、原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2乃至4は、請求項2,5,7,8,13,16,18,19,23-32についての理由2(進歩性)で引用されたものである。

4 対比・判断
前記第2の[理由]2(3)に記載したとおり、本件補正発明と引用発明とは、
「通信装置を制御するリモート制御装置であって、
表示部と、
通信装置から電界強度及び無線通信に関する状態情報を受信し、電界強度及び無線通信に関する状態情報は、受信された電波の強度を示し、電界強度及び無線通信に関する状態情報は、通信装置が無線通信システムを介して通信を送信又は受信するための通信可能状態にあるか、又は通信不能状態にあるかを示し、及び、
通信装置からの電界強度及び無線通信に関する状態情報に基づいて、インジケータを、表示部を介して表示する制御部と
を備えた制御装置。」
である点で一致するから、引用発明は、当該「制御装置」の発明特定事項を当然含むものである。
そして、相違点1及び2に係る発明特定事項は、本願発明には含まれていない。
そうすると、本願発明と引用発明との間で、発明を特定するために必要な事項に差異はないから、両発明は同一である。
また、仮に本願発明と引用発明との間に差異があるとしても、当業者が引用発明に基づいて容易に想到し得たものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明と同一であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、仮に同一でないとしても引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-04-04 
結審通知日 2019-04-09 
審決日 2019-04-22 
出願番号 特願2016-39417(P2016-39417)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
P 1 8・ 113- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関口 明紀望月 章俊  
特許庁審判長 吉田 隆之
特許庁審判官 富澤 哲生
古河 雅輝
発明の名称 無線通信装置、無線通信方法、及び、無線通信制御装置、プログラム  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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