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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1355215
審判番号 不服2018-14885  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-07 
確定日 2019-10-01 
事件の表示 特願2017- 96575「音響波検出用プローブおよび光音響計測装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月 7日出願公開、特開2017-153989、請求項の数(19)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成25年8月2日に出願された特願2013?161068号の一部を、平成29年5月15日に新たに出願したものであって、平成29年6月9日に手続補正書が提出され、平成30年5月11日付けで拒絶理由が通知され、同年7月23日に意見書が提出され、同月31日付けで拒絶査定(原査定)されたところ、同年11月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


第2 原査定の概要

原査定の概要は次のとおりである。

本願の請求項1ないし19に係る発明は、以下の引用文献1ないし12に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2011-172730号公報
2.実願昭63-50641号(実開平1-153506号)のマイクロフィルム
3.国際公開第2012/111336号
4.特開2008-276007号公報
5.国際公開第2013/056089号
6.特開2012-179350号公報
7.特開2012-228402号公報
8.特開2011-13665号公報
9.特開平7-281053号公報
10.特開平8-160275号公報
11.特開2009-133630号公報
12.特表2000-515651号公報


第3 本願発明

本願の請求項1ないし19に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明19」という。)は、平成29年6月9日にされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定されるとおりのものであり、本願発明1は以下のとおりである。

「 【請求項1】
被検体に向けて出射させる測定光を導光する導光部と、前記測定光の出射により前記被検体内で発生した光音響波を検出する音響波検出素子とを備える音響波検出用プローブにおいて、
前記導光部が、
該導光部に入射した前記測定光を集光する集光部材と、
該集光部材を透過した前記測定光のエネルギープロファイルをフラットトップ化し、かつ前記測定光を拡散させるホモジナイザと、
複数の光ファイバを包含し、前記ホモジナイザを透過した前記測定光を導光するバンドルファイバと、
前記集光部材または前記ホモジナイザを光軸方向に移動可能とさせる位置調整部とを含み、
前記集光部材の焦点距離をf、前記集光部材と前記ホモジナイザとの距離をxとした場合に、下記式1で規定される前記測定光の最小ビーム径Dが前記バンドルファイバの径dとの関係で下記式2を満たし、
前記バンドルファイバの入射端部が、前記測定光のビーム径が0.8d以上1.2d以下である状態で前記測定光が入射する位置に配置されたプローブ。
【数1】

(式1において、φは前記ホモジナイザに入射する際の前記測定光の拡がり角を表し、θは前記ホモジナイザの拡散角を表す。)」

以下、式1を「D=[2.5・f・tan(√((φ/2)^(2)+(θ/2)^(2))]*(f-x)/f」と表記する。

なお、本願発明2ないし19の概要は以下のとおりである。
本願発明2ないし19は、本願発明1を減縮した発明である。


第4 引用文献の記載事項、引用発明

1 引用文献1について

(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付加した。以下同様。)。

(引1-ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は生体情報処理装置に関し、特に光音響波による三次元立体像と超音波エコーによる二次元断層像を組み合わせる生体情報処理装置に関する。」

(引1-イ)「【0018】
[プローブ構成]
図2に、光音響信号と超音波エコー信号を同時に取得するためのプローブ構成を示す。図2Aはプローブの外観を示し、図2Bはトランスデューサ部分の拡大図である。また、図2Cはプローブの全体構成と光音響法および超音波エコー法による撮影領域を示す。
図2Aに示すように、プローブ100はケース30、ケーブル31、およびトランスデューサ部4から構成される。トランスデューサ部4は、上述のように超音波用トランスデューサアレイ4aと光音響用トランスデューサアレイ4bからなる。図2Bに示すように、光音響用トランスデューサアレイ4bは、二次元配列されており、その周囲にパルスレーザ光を入射するための光照射開口23が設けられている。超音波用トランスデューサアレイ4aは、一次元状のトランスデューサ列を複数列配列させたアレイ(リニア)型構造である。ここでは、1列のトランスデューサに含まれる素子数が、列数に比較して十分に多い。この構造は、正確には二次元配列であるが、略一次元配列とみなせ、1.75次元アレイ型トランスデューサとも呼ばれる。
なお、超音波用トランスデューサアレイ4aと光音響用トランスデューサアレイ4bは、超音波用トランスデューサアレイ4aのリニア走査の方向に直交する方向に並べて設けられている。また、超音波用トランスデューサアレイ4aにはトランスデューサ列が複数あるため、ビームフォーミング処理によりリニア走査の方向と垂直な方向にビームを傾けることができ、超音波ビームを被検体表面に対して斜めに送受信できる。
なお、トランスデューサアレイの上面、下面にはそれぞれ整合層、バッキング、配線、
また超音波用トランスデューサアレイの上面には音響レンズが配置されているが、図面では省略されている。
【0019】
プローブの全体構成について図2Cを参照して説明する。本実施形態におけるプローブ100では、保護板15上に、超音波用トランスデューサアレイ4a、光音響用トランスデューサアレイ4b、光入射プリズム16a,16b、光伝送路17が形成されている。光伝送路17内には半透明鏡膜18と全反射鏡膜19が形成されている。光源13より発生したパルスレーザ光は光伝送路17を伝搬し、その一部好ましくはその半分の光量が半透明鏡膜18で反射され光入射プリズム16aにより保護板15を透過して被検体14へ照射される。また光伝送路17中で半透明鏡膜18を透過したパルスレーザ光は全反射鏡膜19で反射され光入射プリズム16bにより保護板15を透過して被検体14へ照射される。光伝送路17はパルスレーザ光を損失なく透過させるものであればよく、光ファイバ束や硝子ブロック材を用いて作成できる。硝子ブロック材で形成される場合は半透明鏡膜18と全反射鏡膜19をブロック張り合わせ面や端面にパルスレーザ光の波長に合わせた多層薄膜によって形成できる。さらに光伝送路17内はパルスレーザ光を空間伝搬させる構成とし、半透明鏡膜18と全反射鏡膜19を半透鏡、全反射鏡を用いて構成することもできる。この場合には光伝送路17内を外部と区切る鏡筒で囲うことで構成すればよい。光入射プリズム16a,16bも硝子ブロック材で構成できるが、全反射鏡で代用して同等の効果を得ることも可能である。さらに光伝送路17を光ファイバ束で構成するときは光ファイバ束の可塑性を用いて直接光伝送路17よりパルスレーザ光を被検体14に照射することも可能である。
【0020】
本実施形態では照射用パルスレーザ光は、被検体14に光音響用トランスデューサアレイ4b周囲の光照射開口23から入射される。パルスレーザ光は、光入射プリズム16a,16bによって被検体14に斜入射し、光音響用トランスデューサアレイ4bの直下で交差するように照射される。パルスレーザ光が照射される部分(光音響用トランスデューサアレイ4bの前方の部分)が、光音響分光法により立体像が撮像される光音響撮像領域20である。本構成では、光音響用トランスデューサアレイ4b下部の光音響撮像領域20を略均一光量で照射できるという利点を有する。
被検体14が薄い場合には、光音響用トランスデューサアレイ4bと反対側から被検体14にパルスレーザを入射する構成とすることも可能である。また被検体14に対して光音響用トランスデューサアレイ4b側と反対側の両面照射を行うことで被検体14の厚み方向の光照射の強度を均一化することもできる。ただし、被検体14が厚い場合には被検体14内をパルスレーザ光が透過しにくいため、本構成のように少なくとも光音響用トランスデューサアレイ4b側からのパルスレーザ光入射が好ましい形態である。
【0021】
超音波用トランスデューサアレイ4aは、超音波ビームの送信を行い、同時に被検体14内での該ビームの反射波を、超音波エコー信号として受信する。なお、受信超音波にビームフォーミング処理を行うことで、受信ビームに指向性を持たせることができる。超音波の送受信ビームは走査方向(図2Cでは紙面に垂直な方向)に走査される。これにより、超音波走査面21における被検体14の断層像が得られる。つまり、超音波走査面21は、超音波エコー法による撮像領域(撮像断面)である。また、超音波ビームを被検体表面に対して傾けて被検体14に入射させて断層像撮影を良好に行うための超音波用スタンドオフ29を設けることが好ましい。」

(引1-ウ)【図2】




(2)上記(引1-ア)ないし(引1-ウ)の記載から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 光音響信号と超音波エコー信号を同時に取得するためのプローブ100であって、
プローブ100はケース30、ケーブル31、及びトランスデューサ部4から構成され、
トランスデューサ部4は、超音波用トランスデューサアレイ4aと光音響用トランスデューサアレイ4bからなり、光音響用トランスデューサアレイ4bは、二次元配列されており、その周囲にパルスレーザ光を入射するための光照射開口23が設けられており、
保護板15上に、超音波用トランスデューサアレイ4a、光音響用トランスデューサアレイ4b、光入射プリズム16a,16b、光伝送路17が形成されており、
光伝送路17は光ファイバ束を用いて作成され、光伝送路17内には半透明鏡膜18と全反射鏡膜19が形成されていて、光源13より発生したパルスレーザ光は光伝送路17を伝搬し、その一部好ましくはその半分の光量が半透明鏡膜18で反射され光入射プリズム16aにより保護板15を透過して被検体14へ照射され、また、光伝送路17中で半透明鏡膜18を透過したパルスレーザ光は全反射鏡膜19で反射され光入射プリズム16bにより保護板15を透過して被検体14へ照射される、
プローブ100。」

2 引用文献2について

(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、次の事項が記載されている。

(引2-ア)明細書第1頁下から5行?末行
「〔産業上の利用分野〕
本考案はレーザ光伝送装置、特に、光ファイバーでレーザ光を伝送し、その出射側のレーザ光分布を空間的に均質化するレーザ光伝送装置に関する。」

(引2-イ)明細書第3頁下から3?2行
「したがって、従来のレーザ光伝送装置は均質な光強度分布が得られないという欠点があった。」

(引2-ウ)明細書第4頁下から8行?第6頁3行
「第1図に示すレーザ光伝送装置は、レーザ光発生部1と、レーザ光を拡大するエクスパンダ2と、多数の微少なレンズを平面的に並べたマイクロレンズアレイと3、拡散板4と、レーザ光を微少スポットに集光する集光レンズ5とレーザ光を伝送する光ファイバー6とを含んで構成される。
マイクロレンズアレイ3としては、焦点距離の短い凸レンズを平面的に配置して接着したものや、プラスチックで一体成型したものがある。
拡散板4としては、透明ガラス基板上に乳剤を塗布したオパールガラスが適当である。
レーザ光発生部1で発生されたレーザ光はエクスパンダ2でビーム径を拡大されてマイクロレンズアレイ3に入射する。
マイクロレンズアレイ3に入射される前の光強度分布は、レーザ光発生部1での光強度分布が保存されて、たとえばガウス分布等の分布を持っている。
マイクロレンズアレイ3を通過すると、レーザ光はマイクロレンズアレイ3の個々の微少なレンズによっで部分的に独立して拡散されることになるので、拡散板4の入射前では、光強度分布が均一化される方向に改善されることになる。
さらに、拡散板4を通過すると、レーザ光は拡散板4の各点で四方八方に散乱し、この散乱動作を繰返えしながら拡散板4を出射するので、出射側での光強度分布はさらに一様な分布に近づいてくる。
このレーザ光を集光レンズ5で集光して光ファイバー6に入射すると、光ファイバー6の出射側での光強度分布も均質なものとなる。」

(引2-エ)第1図




(2)上記(引2-ア)ないし(引1-エ)の記載から、引用文献2には、以下の技術事項(以下「引例2技術事項」という。)が記載されていると認められる。

「 光ファイバーでレーザ光を伝送し、その出射側のレーザ光分布を空間的に均質化するレーザ光伝送装置であって、
レーザ光発生部1、レーザ光を拡大するエクスパンダ2、多数の微少なレンズを平面的に並べたマイクロレンズアレイ3、拡散板4、レーザ光を微少スポットに集光する集光レンズ5、及び、レーザ光を伝送する光ファイバー6を含んで構成され、
マイクロレンズアレイ3に入射される前の光強度分布は、レーザ光発生部1での光強度分布が保存され、
マイクロレンズアレイ3を通過すると、レーザ光はマイクロレンズアレイ3の個々の微少なレンズによって部分的に独立して拡散されて、拡散板4の入射前では、光強度分布が均一化される方向に改善され、
さらに、拡散板4を通過すると、レーザ光は拡散板4の各点で四方八方に散乱し、この散乱動作を繰返えしながら拡散板4を出射するので、出射側での光強度分布はさらに一様な分布に近づき、
このレーザ光を集光レンズ5で集光して光ファイバー6に入射すると、光ファイバー6の出射側での光強度分布も均質なものとなる、
レーザ光伝送装置。」

3 引用文献3について

(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、次の事項が記載されている。

(引3-ア)「技術分野
[0001] 本発明は、光が被検体に照射されることにより被検体内で発生した光音響波を検出して光音響画像を生成する光音響撮像装置、それに用いられるプローブユニットおよび光音響撮像装置の作動方法に関するものである。」

(引3-イ)「[0004] しかし、光音響イメージングにおいて必要とされる高エネルギー(1mJ以上)のパルスレーザ光を単一の光ファイバによって導光することは困難である。その光ファイバの端面が破壊されてしまう可能性が高いためである。そのため、パルスレーザ光を複数の光ファイバで分岐せしめて導光することができれば好ましい。」

(引3-ウ)「[0010] 本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、複数の光ファイバを用いてレーザ光を導光して実施する光音響イメージングにおいて、複数の分岐光のそれぞれと複数の光ファイバのそれぞれとの位置合わせを容易にすることを可能とする光音響撮像装置、それに用いられるプローブユニットおよび光音響撮像装置の作動方法を提供することを目的とするものである。」

(引3-エ)「[0037] 本実施形態による光音響撮像装置10は、特定波長成分を含む測定光Lを発生させこの測定光Lを被検体7に照射する光送信部1と、この測定光Lが被検体7に照射されることにより被検体7内で発生する光音響波Uを検出して任意断面の光音響画像データを生成する画像生成部2と、音響信号と電気信号の変換を行う電気音響変換部3と、この光音響画像データを表示する表示部6と、操作者が患者情報や装置の撮影条件を入力するための操作部5と、これら各ユニットを統括的に制御するシステム制御部4とを備えている。
[0038] そして、本実施形態のプローブユニット70は、電気音響変換部3、光分岐部12、バンドルファイバ14および光照射部15を備えている。
[0039] そして、本発明の光音響撮像装置の作動方法は、被検体7内に測定光Lを照射し、測定光Lの照射により被検体7内で発生した光音響波Uを検出して光音響波Uを電気信号に変換し、電気信号に基づいて光音響画像を生成する光音響撮像装置10の作動方法において、光学系の上流側から分岐回折光学素子40に入射した1本のレーザ光Loを分岐DOE40により規定される所定の分岐パターンに従って複数の分岐光Ldとして分岐せしめ、コア13a/クラッド13b構造を有する複数の光ファイバ13を包含するバンドルファイバ14であって、このバンドルファイバ14の一方の端面14eにおける複数の光ファイバ13の一方の端面13eが分岐パターンに対応して配列したバンドルファイバ14を用い、複数の分岐光Ldのそれぞれを複数の光ファイバ13のコア13aのそれぞれにバンドルファイバ14の上記一方の端面14eから入射せしめ、コア13aに入射した複数の分岐光Ldを光照射部15に導光し、光照射部15に導光された複数の分岐光Ldを測定光Lとして照射する上記光音響撮像装置10を作動させるものである。
[0040] 光送信部1は、波長の異なる複数の光源を備える光源部11と、光源部11から出力されたレーザ光Loを複数の分岐光Ldとして分岐する光分岐部12と、複数の分岐光Ldを光照射部15まで導光するバンドルファイバ14と、測定光Lを被検体7の体表面へ照射する光照射部15とを備えている。」

(引3-オ)「[0043] 光分岐部12は、分岐回折光学素子40(分岐DOE)を用いて光源部11から出力されたレーザ光Loを分岐せしめるものである。本明細書において分岐DOEとは、光の回折現象を利用して互いに異なる進行方向を有する複数の分岐光を生じせしめる光学素子を意味する。分岐本数は特に限定されないが、効果的にレーザ光Loのエネルギーを分散させる観点から、16本以上に分岐せしめることが好ましい。本実施形態において、光分岐部12は、分岐DOE40および集光レンズ系44から構成される。集光レンズ系とは、集光を目的として1つの光軸に沿って配置された1以上のレンズの集合を意味する。分岐DOE40の表面には所定の加工が施されており、この加工の内容により所定の分岐パターンが規定される。分岐パターンは特に限定されるものではないが、集光レンズ系での収差の低減の観点から、正方形構造または六方形構造であることが好ましく、六方形構造であることがより好ましい。集光レンズ系44は、分岐DOEにより生成された複数の分岐光Ldがバンドルファイバ14に入射しやすくするため、および複数の分岐光Ldのそれぞれとバンドルファイバ14との位置合わせを容易にするため、複数の分岐光Ldを平行化するものである。集光レンズ系44は、その焦点が分岐DOE40上におけるレーザ光Loの入射位置に対応するように配置されている。集光レンズ系の焦点が分岐DOEにおけるレーザ光の「入射位置に対応する」とは、集光レンズ系の焦点が、分岐DOEの所定の部分であってレーザ光が入射してから分岐光として出射するまでに当該光が通過しうる部分に含まれることを意味する。そして、特に出射面のビーム中心に集光レンズ系の焦点を合わせることが一般的である。また、光分岐部12が集光レンズ系44を有する場合、光分岐部は12、集光レンズ系44の微調整を可能にするため、集光レンズ系44をその光軸方向に移動せしめるレンズ位置調整部を有することが好ましい。集光レンズ系44xは、1つの集光レンズから構成されるものであってもよいし、2以上の集光レンズから構成される結合系レンズとすることもできる。なお、集光レンズ系44は、集光レンズ系44の前側焦点を分岐DOE40の分岐光出射位置に、後側焦点面をバンドルファイバ14の端面14eに合わせて配置することが好ましい。」

(引3-カ)「[0070] また、例えば本発明の光音響撮像装置10およびプローブユニット70は図10に示されるように、光分岐部12が、分岐DOE40の光学系の下流側にホログラフィック拡散板42を有するように構成することができる。図10においては、ホログラフィック拡散板42を集光レンズ系44とバンドルファイバ14の入射端面14eとの間に設けた場合の構成が示されているが、ホログラフィック拡散板42は分岐DOE40と集光レンズ系44との間に設けた構成としてもよい。ただし、距離を変えて集光スポット径を制御する際の調整の容易さの観点から、ホログラフィック拡散板42は、集光レンズ系44とバンドルファイバ14の入射端面14eとの間に設けられることが好ましい。このように配置されたホログラフィック拡散板42により、複数の分岐光Ldの集光スポット径が大きくなる方向に変化し、バンドルファイバ14の入射端面14eにおけるコア13aに入射する際の複数の分岐光Ldのビーム径が最適化される。したがって、光ファイバ13の損傷閾値エネルギー密度を超えないように複数の分岐光Ldを導光することができる。」

(引3-キ)[図10]




(2)上記(引3-ア)ないし(引3-キ)の記載から、引用文献3には、以下の技術事項(以下「引例3技術事項」という。)が記載されていると認められる。

「 光音響撮像装置10に用いられるプローブユニット70であって、
光音響撮像装置10は、光送信部1を備え、光送信部1は、波長の異なる複数の光源を備える光源部11と、光源部11から出力されたレーザ光Loを複数の分岐光Ldとして分岐する光分岐部12と、複数の分岐光Ldを光照射部15まで導光するバンドルファイバ14と、測定光Lを被検体7の体表面へ照射する光照射部15とを備えており、
プローブユニット70は、電気音響変換部3、光分岐部12、バンドルファイバ14及び光照射部15を備えており、
光分岐部12は、分岐DOE40、集光レンズ系44、及び、ホログラフィック拡散板42から構成され、ホログラフィック拡散板42は集光レンズ系44とバンドルファイバ14の入射端面14eとの間に設けられ、
光分岐部12は、分岐回折光学素子40(分岐DOE)を用いて光源部11から出力されたレーザ光Loを分岐せしめ、
集光レンズ系44は、分岐DOEにより生成された複数の分岐光Ldがバンドルファイバ14に入射しやすくするため、及び複数の分岐光Ldのそれぞれとバンドルファイバ14との位置合わせを容易にするため、複数の分岐光Ldを平行化するものであり、
コア13a/クラッド13b構造を有する複数の光ファイバ13を包含するバンドルファイバ14の一方の端面14eから、複数の分岐光Ldのそれぞれを複数の光ファイバ13のコア13aのそれぞれに入射せしめるとともに、
ホログラフィック拡散板42により、複数の分岐光Ldの集光スポット径が大きくなる方向に変化し、バンドルファイバ14の入射端面14eにおけるコア13aに入射する際の複数の分岐光Ldのビーム径が最適化される、
プローブユニット70。」


第5 対比・判断

1 本願発明1について

(1)本願発明1と引用発明とを対比する。


(ア)引用発明の「光ファイバ束を用いて作成され」た「光伝送路17」及び「光入射プリズム16a,16b」は、本願発明1の「導光部」に相当する。

(イ)引用発明の「光音響信号」及び「光音響用トランスデューサアレイ4b」は、それぞれ本願発明1の「光音響波」及び「音響波検出素子」に相当する。

(ウ)引用発明の「光音響信号と超音波エコー信号を同時に取得するためのプローブ100」は、本願発明1の「音響波検出用プローブ」に相当する。

(エ)上記(ア)ないし(ウ)を踏まえると、引用発明の「保護板15上に、超音波用トランスデューサアレイ4a、光音響用トランスデューサアレイ4b、光入射プリズム16a,16b、光伝送路17が形成されており、光伝送路17は光ファイバ束を用いて作成され、光伝送路17内には半透明鏡膜18と全反射鏡膜19が形成されていて、光源13より発生したパルスレーザ光は光伝送路17を伝搬し、その一部好ましくはその半分の光量が半透明鏡膜18で反射され光入射プリズム16aにより保護板15を透過して被検体14へ照射され、また、光伝送路17中で半透明鏡膜18を透過したパルスレーザ光は全反射鏡膜19で反射され光入射プリズム16bにより保護板15を透過して被検体14へ照射される」、「光音響信号と超音波エコー信号を同時に取得するためのプローブ100」は、本願発明1の「被検体に向けて出射させる測定光を導光する導光部と、前記測定光の出射により前記被検体内で発生した光音響波を検出する音響波検出素子とを備える音響波検出用プローブ」に相当する。

イ 引用発明の「光源13より発生したパルスレーザ光」「を伝搬」する「光伝送路17」を「作成」する「光ファイバ束」は、本願発明1の「複数の光ファイバを包含し」、「前記測定光を導光するバンドルファイバ」に相当する。

(2)よって、本願発明1と引用発明とは、

「 被検体に向けて出射させる測定光を導光する導光部と、前記測定光の出射により前記被検体内で発生した光音響波を検出する音響波検出素子とを備える音響波検出用プローブにおいて、
前記導光部が、
複数の光ファイバを包含し、前記測定光を導光するバンドルファイバを含む、
プローブ。」

の発明である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
導光部が、本願発明1は、「入射した前記測定光を集光する集光部材と、該集光部材を透過した前記測定光のエネルギープロファイルをフラットトップ化し、かつ前記測定光を拡散させるホモジナイザと」、「前記集光部材または前記ホモジナイザを光軸方向に移動可能とさせる位置調整部とを含み、前記集光部材の焦点距離をf、前記集光部材と前記ホモジナイザとの距離をxとした場合に、式1:D=[2.5・f・tan(√((φ/2)^(2)+(θ/2)^(2))]*(f-x)/fで規定される前記測定光の最小ビーム径Dが前記バンドルファイバの径dとの関係で0.8d≦D≦1.2dを満たし、前記バンドルファイバの入射端部が、前記測定光のビーム径が0.8d以上1.2d以下である状態で前記測定光が入射する位置に配置され(式1において、φは前記ホモジナイザに入射する際の前記測定光の拡がり角を表し、θは前記ホモジナイザの拡散角を表す。)」るのに対し、引用発明は、「光ファイバ束」を有するものの、「光源13より発生したパルスレーザ光」がどのようにして「光伝送路17」の「光ファイバ束」に「伝搬」されるのか不明である点。

(3)相違点についての判断

ア 上記相違点1について検討する。

(ア)引例2技術事項の「集光レンズ5」は、本願発明1の「集光部材」に相当し、引例2技術事項の「マイクロレンズアレイ3」及び「拡散板4」は、併せて本願発明1の「ホモジナイザ」に相当する。
しかしながら、本願発明1と引例2技術事項とでは、「集光部材」と「ホモジナイザ」の配置が逆になっている。
引例2技術事項は、レーザ光をマイクロレンズアレイ3及び拡散板4を通過させることで光強度分布の均一性を改善した上で、集光レンズ5で集光して光ファイバー6に入射させることで、光ファイバー6の出射側での光強度分布を均質なものとする技術事項であり、マイクロレンズアレイ3及び拡散板4と集光レンズ5の配置順に技術的意義があると認められるところ、引用発明に引例2技術事項を適用する際に、マイクロレンズアレイ3及び拡散板4と集光レンズ5の配置順を逆転させる動機付けがあるとはいえない。

(イ)引例3技術事項の「集光レンズ系44」及び「ホログラフィック拡散板42」は、それぞれ本願発明1の「集光部材」及び「ホモジナイザ」に相当する。
しかしながら、引例3技術事項は、分岐回折光学素子40(分岐DOE)を用いて光源部11から出力されたレーザ光Loを分岐せしめ、複数の分岐光Ldのそれぞれを複数の光ファイバ13のコア13aのそれぞれに入射せしめる技術事項であるから、引用発明に引例3技術事項を適用したとしても、本願発明1の特定事項である、「前記バンドルファイバの入射端部が、前記測定光のビーム径が0.8d以上1.2d以下である状態で前記測定光が入射する位置に配置され」る(dはバンドルファイバの径)という構成は得られない。
また、引例3技術事項は、複数の分岐光Ldのそれぞれを複数の光ファイバ13のコア13aのそれぞれに入射せしめることに技術的意義があると認められるところ、分岐回折光学素子40(分岐DOE)を除いて「集光レンズ系44」及び「ホログラフィック拡散板42」のみを引用発明に適用する動機付けがあるとはいえない。

(ウ)さらに、上記引用文献4ないし12にも、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を開示又は示唆する記載はない。

(エ)よって、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項は、引用発明、引例2技術事項、引例3技術事項、及び、引用文献4ないし12の記載事項から、当業者が容易に想起し得た事項であるとは認められない。

イ したがって、本願発明1は、引用発明、引例2技術事項、引例3技術事項、及び、引用文献4ないし12の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明2ないし19について

本願発明2ないし19は、本願発明1を減縮した発明であって、本願発明1の「入射した前記測定光を集光する集光部材と、該集光部材を透過した前記測定光のエネルギープロファイルをフラットトップ化し、かつ前記測定光を拡散させるホモジナイザと」、「前記集光部材または前記ホモジナイザを光軸方向に移動可能とさせる位置調整部とを含み、前記集光部材の焦点距離をf、前記集光部材と前記ホモジナイザとの距離をxとした場合に、式1:D=[2.5・f・tan(√((φ/2)^(2)+(θ/2)^(2))]*(f-x)/fで規定される前記測定光の最小ビーム径Dが前記バンドルファイバの径dとの関係で0.8d≦D≦1.2dを満たし、前記バンドルファイバの入射端部が、前記測定光のビーム径が0.8d以上1.2d以下である状態で前記測定光が入射する位置に配置され(式1において、φは前記ホモジナイザに入射する際の前記測定光の拡がり角を表し、θは前記ホモジナイザの拡散角を表す。)」ると同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明、引例2技術事項、引例3技術事項、及び、引用文献4ないし12の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


第6 むすび

以上のとおり、本願発明1ないし19は、引用発明、引例2技術事項、引例3技術事項、及び、引用文献4ないし12の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-09-18 
出願番号 特願2017-96575(P2017-96575)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 奥田 雄介  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 渡戸 正義
信田 昌男
発明の名称 音響波検出用プローブおよび光音響計測装置  
代理人 中島 淳  
代理人 加藤 和詳  
代理人 福田 浩志  

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