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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A47J
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A47J
管理番号 1355225
審判番号 不服2018-10053  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-23 
確定日 2019-10-01 
事件の表示 特願2014- 26869「焼鳥製造方法及びその装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月24日出願公開、特開2015-150240、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年2月14日の出願であって、平成29年9月15日付けで拒絶理由が通知され、平成29年11月17日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成30年4月23日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成30年7月23日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、令和1年7月3日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、令和1年8月1日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定(平成30年4月23日付け拒絶査定)の概要
本願請求項1及び2に係る発明は、下記の引用例1ないし6に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



<引用例一覧>
1.特開2004-254983号公報
2.特開2002-165550号公報
3.特開2002-106851号公報
4.特開平6-153881号公報
5.特開平8-187184号公報
6.特開平7-292号公報

第3 当審拒絶理由の概要
本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



1.請求項1及び2の記載における、「焼鳥の加熱距離」(請求項1)あるいは「上記加熱焼成機構による焼鳥の加熱距離」(請求項2)とは、焼鳥が加熱を伴って移送される移送方向の距離を意味するのか、焼鳥と赤外線ヒータの発熱体との間の距離を意味するのか不明である。

2.請求項1及び2の記載における、「停止時間」とは、焼鳥の移送が停止される時間であるのか、焼鳥の回転(自転または正転逆転)が停止される時間であるのか不明である。

第4 本願発明
本願請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、令和1年8月1日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
複数個の串刺状の焼鳥を並列状態で連続移送し、該連続移送中の焼鳥に給電により赤外線ヒータから放射される赤外線を照射し、該赤外線のもつ熱エネルギーにより焼鳥を加熱焼成するに際し、ケース体内に棒状の上記赤外線ヒータを並列状に配置してヒーターユニットを構成し、赤外線ヒータからの赤外線をケース体の開口を介して並列状態で連続移送中の焼鳥に向けて照射可能に設けられ、上記赤外線ヒータはコイル状の発熱体を透明石英ガラス管内に配置してなり、該赤外線ヒータの発熱体の表面温度は700℃?1200℃の温度領域内とされ、該赤外線ヒータの発熱体の最大エネルギー波長が2.0μm?3.5μmの中波長赤外線であり、かつ、上記焼鳥を連続移送中に自転させ、上記焼鳥の串を抜脱自在に保持可能な複数個のホルダを配置し、該複数個のホルダを自転させるように構成され、該焼鳥の移送速度、焼鳥が加熱を伴って移送される移送方向の距離としての焼鳥の加熱距離、これによる加熱時間、及び焼鳥の自転回数、正転逆転の回数、焼鳥の回転が停止される時間としての停止時間、並びに自転速度を制御することを特徴とする焼鳥製造方法。
【請求項2】
複数個の串刺状の焼鳥を並列状態で連続移送する焼鳥移送機構と、該連続移送中の焼鳥に給電により赤外線を照射し、赤外線のもつ熱エネルギーにより焼鳥を加熱焼成する赤外線ヒータをもつ加熱焼成機構とからなり、上記加熱焼成機構は、ケース体内に棒状の上記赤外線ヒータを並列状に配置してヒーターユニットを構成し、赤外線ヒータからの赤外線をケース体の開口を介して並列状態で連続移送中の焼鳥に向けて照射可能に設けられ、上記赤外線ヒータはコイル状の発熱体を透明石英ガラス管内に配置してなり、該赤外線ヒータの発熱体の表面温度は700℃?1200℃の温度領域内とされ、該赤外線ヒータの発熱体の最大エネルギー波長が2.0μm?3.5μmの中波長赤外線であり、かつ、上記焼鳥を連続移送中に自転させる自転機構が設けられ、上記自転機構は、上記焼鳥の串を抜脱自在に保持可能な複数個のホルダを配置し、該複数個のホルダを自転させるように構成され、上記焼鳥移送機構による焼鳥の移送速度、上記加熱焼成機構による焼鳥が加熱を伴って移送される移送方向の距離としての焼鳥の加熱距離、これによる加熱時間、及び上記自転機構による焼鳥の自転回数、正転逆転の回数、焼鳥の回転が停止される時間としての停止時間、並びに自転速度は制御可能に設けられていることを特徴とする焼鳥製造装置。」

第5 引用例、引用発明等
1.引用例1
(1)引用例1の記載(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)
1a)「【請求項1】
複数個の串刺状の焼鳥を並列状態で連続移送する焼鳥移送機構と、連続移送中の焼鳥を遠赤外線で加熱する遠赤外線ヒータと、該焼鳥を連続移送中に自転させる自転機構とを備えてなることを特徴とする焼鳥製造装置。
・・・
【請求項4】
上記焼鳥の自転速度を調整する速度調整機構を設けてなることを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載の焼鳥製造装置。
【請求項5】
上記焼鳥移送機構は上記焼鳥の串を抜差自在に保持する複数個の焼鳥ホルダと、該複数個の焼鳥ホルダを連続移送させるチェーン機構とからなることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の焼鳥製造装置。」

1b)「【0009】
【発明の実施の形態】
図1乃至7図は本発明の実施の形態例を示し、大別して、機台1と、複数個の串刺状の焼鳥Wを並列状態で連続移送する焼鳥移送機構2と、連続移送中の焼鳥Wを遠赤外線で加熱する遠赤外線ヒータ3と、焼鳥Wを連続移送中に自転させる自転機構4からなる。
【0010】
この焼鳥移送機構2は、上記焼鳥Wの串Kを抜差自在に保持する複数個の焼鳥ホルダ5と、この複数個の焼鳥ホルダ5を連続移送させるチェーン機構6とからなり、この場合、機台1に駆動軸7及び従動軸8を横設し、駆動軸7及び従動軸8にそれぞれ駆動スプロケット7a及び従動スプロケット8aを固定し、この駆動スプロケット7a及び従動スプロケット8a間に移送用チェーン9を掛回し、駆動軸7に図示省略の駆動モータの主軸を連結し、移送用チェーン9に軸受体9aにより焼鳥ホルダ5を自転自在に並列状態に複数個配設し、駆動モータにより移送用チェーン9を送り方向Mに循回移送させることにより焼鳥ホルダ5を連続移送させるように構成している。
【0011】
又、この焼鳥ホルダ5は、焼鳥Wの串Kを抜差自在に保持する差込穴5aが形成され、かつ、串Kを突出可能な突き杆5bが差込穴5aに摺動自在に内装され、串Kを弾圧保持可能な板バネ状の弾性板5c、突き杆5bを後退させるバネ5d及び後退位置を定めるストッパ5eが設けられている。
【0012】
しかして、この場合、図1の右方を供給位置Qとし、左方を取出位置Hとし、この供給位置Qにおいて、人為的又は自動的に順次串刺し状の焼鳥Wの串Kを焼鳥ホルダ5の差込穴5aに挿通し、取出位置Hにおいて、図外の突出機構により突き杆5aを突体Dにより突き動作し、串Kを焼鳥ホルダ5から突き出し、下方の排出シュートS上に落下排出するように構成されている。
【0013】
又、上記遠赤外線ヒータ3は、上記機台1の上方に複数個配置され、下方に向いて遠赤外線Rを放射するように構成されている。」

1c)「【0014】
又、上記自転機構4には上記焼鳥Wの自転速度を調整する速度調整機構10が設けられ、この場合、上記複数個の焼鳥ホルダ5にそれぞれ自転用スプロケット11を設け、チェーン移送機構12として、上記従動軸8に従動用スプロケット8aより小径の調整スプロケット8bを設け、機台1に従軸13を横設し、従軸13にスプロケット13aを取り付け、調整スプロケット8bとスプロケット13aとの間に自転用スプロケット11に咬合可能な自転用チェーン14を掛回し、機台1に自転用チェーン14を自転用スプロケット11に咬合させるガイドレール15を配設して構成している。尚、自転速度の調整には、自転速度の大小調節及び停止並びに逆転もしくはこれらの組み合わせを含むものである。
【0015】
しかして、焼鳥ホルダ5の移送Mに伴い自転用スプロケット11と自転用チェーン14との咬合により焼鳥ホルダ5は自転Nすることになり、かつ、速度調整機構10としての自転用チェーン14の焼鳥Wの移送方向と同方向の移送及び従動スプロケット8aと調整用スプロケット8bとのピッチ円直径の差により焼鳥ホルダ5の自転速度が調整されて焼鳥Wは自転することになる。すなわち、自転用チェーン14を固定状態にすると焼鳥Wの自転速度が速すぎることがあるからである。又、この場合、速度調節機構10として、従動軸8を駆動源とする構造として簡素化を図っているが、自転用チェーン14を別途の駆動源で独立して移送させる構造とすることもできる。」

1d)「【0019】
又、この場合、上記連続移送中の焼鳥Wの下方に汁受部材16を配設し、汁受部材16の上表面を反射面16aに形成してなるから、遠赤外線ヒータ3から下方に向いて放射される遠赤外線Rを反射面16aにより上向きに反射し、これにより、遠赤外線ヒータ3から下方に向いて放射される遠赤外線R及び反射面16aにより上向きに反射されてくる遠赤外線Rにより焼鳥Wを上下両方から加熱することができ、それだけ加熱効率を向上することができ、又、この場合、上記連続移送中の焼鳥の下方に汁受部材16を配設し、汁受部材16内に空気通過部18を形成し、空気通過部18に冷却用空気を送風可能な送風機構19を配設してなるから、加熱される焼鳥Wから落ちてくる汁は汁受部材16が受け、汁受部材16は送風機構19からの空気通過部18を通過する冷却用空気Fにより冷却されているので、汁は速やかに冷却され、このため汁による煙の発生を抑制することができ、又、この場合、上記焼鳥Wの自転速度を調整する速度調整機構10を設けてなるから、焼鳥Wの大きさや種類等に適応することができ、良好な焼き上がり状態を得ることができる。」

(2)引用発明
上記(1)及び図面の記載からみて、引用例1には次の発明が記載されている。

「複数個の串刺状の焼鳥Wを並列状態で連続移送する焼鳥移送機構2と、連続移送中の焼鳥Wを遠赤外線で加熱する遠赤外線ヒータ3とからなり、遠赤外線ヒータ3は、焼鳥製造装置の機台1の上方に複数個配置され、下方に向いて遠赤外線Rを連続移送中の焼鳥Wに放射するように構成され、かつ、焼鳥Wを連続移送中に自転させる自転機構4が設けられ、自転機構4は、焼鳥Wの串Kを抜差自在に保持する複数個の焼鳥ホルダ5を自転させるように構成され、焼鳥Wの自転速度を調整する速度調整機構10が設けられており、自転速度の調整は、自転速度の大小調節及び停止並びに逆転もしくはこれらの組み合せを含むものである、焼鳥製造装置。」(以下、「引用発明」という。)

2.引用例2
引用例2公報には、その段落【0012】、【0014】及び【0024】並びに図1及び図11の記載からみて、次の事項が記載されている。
「透明な石英ガラス管11の内部に炭素系物質を含む焼結体により形成された平板状の発熱体12a、12bが封入されている赤外線電球20a、20bであり、発熱体12の発熱温度が1000℃?1300℃、赤外線電球20a、20bから放射される放射光のピーク波長が2?3μmである、調理機に熱源として用いられる赤外線電球。」(以下、「引用例2記載事項」という。)



3.引用例3
引用例3公報には、その段落【0028】ないし【0033】及び図5及び図6の記載からみて、次の事項が記載されている。
「透明な石英ガラス管11の内部に炭素系物質を含む焼結体により形成された平板状の発熱体12が挿入されたものであり、発熱体12の発熱温度が1000℃?1500℃、赤外線電球のピーク波長が2.1μmである、調理器に熱源として用いられる赤外線電球。」(以下、「引用例3記載事項」という。)



4.引用例4
引用例4公報には、その【請求項1】、段落【0027】及び図1の記載からみて、次の事項が記載されている。
「タングステンコイルを封入した石英管7であって、0.7ミクロンから25ミクロンの波長を有した赤外線を放出する、食品製品の熱処理を行う装置に一列横方向に配置されて用いられる赤外線要素6。」(以下、「引用例4記載事項」という。)

5.引用例5
引用例5公報には、その【請求項1】、【請求項2】、段落【0009】及び【0012】並びに図1及び図2の記載からみて、次の事項が記載されている。
「串取付け部がフレームに複数取付けられ動力部により所定の時間間隔毎に所定量回転される串焼自動反転装置。」(以下、「引用例5記載事項」という。)

6.引用例6
引用例6公報には、その【請求項1】及び段落【0018】並びに図1ないし図5の記載からみて、次の事項が記載されている。
「焼き物と発熱部との距離を調整するために、串の置き具合を色々の角度に設定し焼き物と発熱部の距離を調整して焼き加減を調節可能な、焼き物器。」(以下、「引用例6記載事項」という。)

第6 原査定についての判断
1.本願発明2について
本願発明2と引用発明とを対比する。
引用発明における「焼鳥W」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明2における「焼鳥」に相当し、以下同様に、「焼鳥移送機構2」は「焼鳥移送機構」に、「連続移送中の焼鳥Wを遠赤外線で加熱する遠赤外線ヒータ3」は、「該連続移送中の焼鳥に」、「赤外線を照射し、赤外線のもつ熱エネルギーにより焼鳥を加熱焼成する赤外線ヒータをもつ加熱焼成機構」に、「自転機構4」は「自転機構」に、「串K」は「串」に、「抜差自在」は「抜脱自在」に、「保持する」は「保持可能な」に、「焼鳥ホルダ5」は「ホルダ」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明における「自転機構4は、焼鳥Wの串Kを抜差自在に保持する複数個の焼鳥ホルダ5を自転させるように構成され」ることは、本願発明2における「自転機構は、上記焼鳥の串を抜脱自在に保持可能な複数個のホルダを配置し、該複数個のホルダを自転させるように構成され」ることに相当し、
さらに、引用発明における「焼鳥Wの自転速度を調整する速度調整機構10が設けられ」ることは、本願発明2における「自転速度は制御可能に設けられ」ることに相当する。

そうすると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。

[一致点]
「複数個の串刺状の焼鳥を並列状態で連続移送する焼鳥移送機構と、該連続移送中の焼鳥に赤外線を照射し、赤外線のもつ熱エネルギーにより焼鳥を加熱焼成する赤外線ヒータをもつ加熱焼成機構とからなり、かつ、上記焼鳥を連続移送中に自転させる自転機構が設けられ、上記自転機構は、上記焼鳥の串を抜脱自在に保持可能な複数個のホルダを配置し、該複数個のホルダを自転させるように構成され、自転速度は制御可能に設けられている、焼鳥製造装置。」

[相違点1]
本願発明2においては、「赤外線ヒータ」は、「給電」により「赤外線を照射」するのに対して、引用発明においては、「遠赤外線ヒータ3」は、「給電」により「遠赤外線を照射」するか不明である点。

[相違点2]
本願発明2においては、「上記加熱焼成機構は、ケース体内に棒状の上記赤外線ヒータを並列状に配置してヒーターユニットを構成し、赤外線ヒータからの赤外線をケース体の開口を介して並列状態で連続移送中の焼鳥に向けて照射可能に設けられ」るのに対して、
引用発明においては、「遠赤外線ヒータ3は、焼鳥製造装置の機台1の上方に複数個配置され、下方に向いて遠赤外線Rを連続移送中の焼鳥Wに放射するように構成され」るものの、「遠赤外線ヒータ3」が「棒状」であるのか、また、「ケース体内」に「並列状に配置してヒーターユニットを構成」して、「遠赤外線ヒータ3」からの「赤外線をケース体の開口を介して並列状態で連続移送中の焼鳥に向けて照射可能」であるのか不明である点。

[相違点3]
本願発明2においては、「上記赤外線ヒータはコイル状の発熱体を透明石英ガラス管内に配置してなり、該赤外線ヒータの発熱体の表面温度は700℃?1200℃の温度領域内とされ、該赤外線ヒータの発熱体の最大エネルギー波長が2.0μm?3.5μmの中波長赤外線であ」るのに対して、
引用発明においては、「遠赤外線ヒータ3」の具体的な構成及び発熱体の表面温度、最大エネルギー波長について不明である点。

[相違点4]
本願発明2においては、「上記焼鳥移送機構による焼鳥の移送速度、上記加熱焼成機構による焼鳥が加熱を伴って移送される移送方向の距離としての焼鳥の加熱距離、これによる加熱時間、及び上記自転機構による焼鳥の自転回数、正転逆転の回数、焼鳥の回転が停止される時間としての停止時間」、「は、制御可能に設けられている」のに対して、
引用発明においては、「焼鳥Wの自転速度を調整する速度調整機構10が設けられ」ており、「自転速度の調整は、自転速度の大小調節及び停止並びに逆転もしくはこれらの組み合せを含む」ものの、「焼鳥の移送速度」、「焼鳥が加熱を伴って移送される移送方向の距離としての焼鳥の加熱距離」、これによる「加熱時間」、「焼鳥の自転回数」、「正転逆転の回数」、及び「焼鳥の回転が停止される時間としての停止時間」が制御可能であるか不明である点。

事案に鑑み、まず上記相違点3及び4について検討する。

[相違点3について]
上記引用例2記載事項は、「透明な石英ガラス管11の内部に炭素系物質を含む焼結体により形成された平板状の発熱体12a、12bが封入されている赤外線電球20a、20bであり、発熱体12の発熱温度が1000℃?1300℃、赤外線電球20a、20bから放射される放射光のピーク波長が2?3μmである、調理機に熱源として用いられる赤外線電球。」、
上記引用例3記載事項は、「透明な石英ガラス管11の内部に炭素系物質を含む焼結体により形成された平板状の発熱体12が挿入されたものであり、発熱体12の発熱温度が1000℃?1500℃、赤外線電球のピーク波長が2.1μmである、調理器に熱源として用いられる赤外線電球。」、
上記引用例4記載事項は、「タングステンコイルを封入した石英管7であって、0.7ミクロンから25ミクロンの波長を有した赤外線を放出する、食品製品の熱処理を行う装置に一列横方向に配置されて用いられる赤外線要素6。」である。
しかし、引用例2及び3記載事項の発熱体は、「透明な石英ガラス管11の内部に炭素系物質を含む焼結体により形成された平板状の発熱体」であって、発熱体の発熱温度や放射光のピーク波長については、本願発明2の赤外線ヒータの発熱体の表面温度や最大エネルギー波長の数値範囲と重複するものの、本願発明2のような「透明石英ガラス管内に配置」した「コイル状の発熱体」ではなく、引用例4記載事項の「赤外線要素」は、「タングステンコイルを封入した石英管7」であって、0.7ミクロンから25ミクロンの波長を有した赤外線を放出するものの、その最大エネルギー波長が明らかではなく、発熱体であるタングステンコイルの表面温度についても明らかでない。
なお、引用例2における段落【0063】及び図11(符合111参照)の記載、並びに引用例3における段落【0033】及び図5(符合102参照)の記載には、従来のタングステン線のコイルを用いたヒータが開示されているが、それらのピーク波長は1.5μm付近である。
そうすると、上記引用例2ないし4記載事項のいずれにおいても、「コイル状の発熱体を透明石英ガラス管内に配置してなり、該赤外線ヒータの発熱体の表面温度は700℃?1200℃の温度領域内とされ、該赤外線ヒータの発熱体の最大エネルギー波長が2.0μm?3.5μmの中波長赤外線であ」る「赤外線ヒータ」について開示や示唆をするものではないから、引用発明、及び上記引用例2ないし4記載事項における開示や示唆により、上記相違点3に係る本願発明2の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たとはいえない。

[相違点4について]
上記引用例5記載事項は、「串取付け部がフレームに複数取付けられ動力部により所定の時間間隔毎に所定量回転される串焼自動反転装置。」、
上記引用例6記載事項は、「焼き物と発熱部との距離を調整するために、串の置き具合を色々の角度に設定し焼き物と発熱部の距離を調整して焼き加減を調節可能な、焼き物器。」である。
しかし、上記引用例5及び6記載事項のいずれにおいても、「焼鳥の移送速度」、「焼鳥が加熱を伴って移送される移送方向の距離としての焼鳥の加熱距離」と、これによる「加熱時間」、「焼鳥の自転回数」、「正転逆転の回数」、または「焼鳥の回転が停止される時間としての停止時間」のいずれか、が制御可能であることについて開示や示唆をするものではないから、引用発明、及び上記引用例5及び6記載事項における開示や示唆により、上記相違点4に係る本願発明2の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たとはいえない。

したがって、上記相違点1及び2について検討するまでもなく、本願発明2は、引用発明及び引用例2ないし6記載事項に基いて当業者が容易に発明し得たとはいえない。

2.本願発明1について
本願発明1は、本願発明2の「装置」の発明のカテゴリーを「方法」としたものであるから本願発明2と同様に、引用発明及び引用例2ないし6記載事項に基いて当業者が容易に発明し得たとはいえない。

第7 当審拒絶理由について
令和1年8月1日提出の手続補正書により、
・請求項1の記載における「焼鳥の加熱距離」は、「焼鳥が加熱を伴って移送される移送方向の距離としての焼鳥の加熱距離」、
・請求項2の記載における「焼鳥の加熱距離」は、「焼鳥が加熱を伴って移送される移送方向の距離としての焼鳥の加熱距離」、
・請求項1及び2の記載における「停止時間」は、「焼鳥の回転が停止される時間としての停止時間」とそれぞれ補正された。
その結果、請求項1及び2の記載における上記「焼鳥の加熱距離」や「停止時間」の意味が明確となり、上記第3 1.2.における当審拒絶理由は解消された。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-09-17 
出願番号 特願2014-26869(P2014-26869)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A47J)
P 1 8・ 537- WY (A47J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 土屋 正志  
特許庁審判長 平城 俊雅
特許庁審判官 槙原 進
松下 聡
発明の名称 焼鳥製造方法及びその装置  
代理人 黒田 勇治  

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