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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1355292
審判番号 不服2017-15521  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-19 
確定日 2019-09-10 
事件の表示 特願2013-554404「搬送波集積技術を使用する無線通信システムにおける副搬送波の不活性化方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月30日国際公開、WO2012/115419、平成26年 4月24日国内公表、特表2014-510462〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2012年(平成24年)2月21日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2011年2月21日 米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年 1月18日付け 拒絶理由通知書
平成28年 5月 2日 意見書,及び手続補正書の提出
平成28年10月19日付け 拒絶理由通知書 (最後)
平成29年 1月24日 意見書,及び手続補正書の提出
平成29年 6月13日付け 平成29年1月24日にされた手続補正に
ついての補正の却下の決定,及び拒絶査定
平成29年10月19日 拒絶査定不服審判の請求,及び手続補正書の 提出
平成30年12月10日付け 拒絶理由通知書
平成31年 3月15日 意見書,及び手続補正書の提出


第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は,平成31年3月15日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1は以下のとおりである。

「無線通信システムの端末における信号の送受信方法において,
基地局からSCell(secondary cell)を活性化するための第1情報を受信する段階と,
前記SCellを活性化する段階と,
前記SCellと関連したタイマーを開始する段階と,
前記活性化されたSCellのための第2情報が前記基地局から受信されると,前記SCellと関連したタイマーを再開始する段階と,
前記タイマーが満了する場合,前記SCell上で物理的ダウンリンク制御チャネル(physical downlink control channel,PDCCH)のモニタリングを中断し,前記タイマーが満了し,既に設定されたサブフレームの以降,前記SCellと関連したプレコーダータイプ指示子(precoder type indication,PTI)報告を中断する段階とを含み,
前記第1情報は,1つの予約ビットと7個のCiビットを含む8ビットサイズのMAC(medium access control) CE(control element)であり,前記Ciビットにおいてi値は0?7に設定され,前記i値は,前記端末に設定された前記SCellの識別子に対応し,
前記タイマーの長さは少なくとも1つのフレーム数に対応し,前記フレーム数は無線リソース制御(radio resource control)メッセージに基づいて設定される
ことを特徴とする信号の送受信方法。」

ここで,上記「前記Ciビットにおいてi値は0?7に設定され」されるとの事項は,本願明細書の段落0016によれば,「7個のCフィールドのそれぞれは,C_(7),C_(6),C_(5),C_(4),C_(3),C_(2),C_(1)(すなわち,C_(i))で示されることができ」るものであるから,「前記Ciビットにおいてi値は1?7に設定され」るとの誤記であることは明らかである。
したがって,請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,以下のとおりのものと認める。

「無線通信システムの端末における信号の送受信方法において,
基地局からSCell(secondary cell)を活性化するための第1情報を受信する段階と,
前記SCellを活性化する段階と,
前記SCellと関連したタイマーを開始する段階と,
前記活性化されたSCellのための第2情報が前記基地局から受信されると,前記SCellと関連したタイマーを再開始する段階と,
前記タイマーが満了する場合,前記SCell上で物理的ダウンリンク制御チャネル(physical downlink control channel,PDCCH)のモニタリングを中断し,前記タイマーが満了し,既に設定されたサブフレームの以降,前記SCellと関連したプレコーダータイプ指示子(precoder type indication,PTI)報告を中断する段階とを含み,
前記第1情報は,1つの予約ビットと7個のCiビットを含む8ビットサイズのMAC(medium access control) CE(control element)であり,前記Ciビットにおいてi値は1?7に設定され,前記i値は,前記端末に設定された前記SCellの識別子に対応し,
前記タイマーの長さは少なくとも1つのフレーム数に対応し,前記フレーム数は無線リソース制御(radio resource control)メッセージに基づいて設定される
ことを特徴とする信号の送受信方法。」


第3 拒絶の理由
平成30年12月10日付けで当審が通知した拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)の概要は,
「1.この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
というものであり,補正前の請求項1に対して以下の引用例1,4が引用されている。

引用例1 Samsung,"SCell deactivation and CQI reporting",3GPP TSG-RAN2 meeting #73 R2-110881,[online],2011.02.14,インターネット<URL: http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_73/Docs/R2-110881.zip>

引用例4 Samsung,"Signalling aspects of existing LTE-A parameters",3GPP TSG-RAN2 meeting #72bis R2-110631,[online],2011.01.25,インターネット<URL: http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_72bis/Docs/R2-110631.zip>


第4 引用例等の記載及び引用発明等

1 引用例1
当審拒絶理由で引用されたSamsung,"SCell deactivation and CQI reporting",3GPP TSG-RAN2 meeting #73 R2-110881,[online],2011.02.14,インターネット<URL: http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_73/Docs/R2-110881.zip>(表題の当審訳:「SCellの不活性化とCQI報告」;以下,「引用例1」という。)には以下の記載がある。(下線は当審が付与。)

(1)「5.13 Activation/Deactivation of SCells
If the UE is configured with one or more SCells, the network may activate and deactivate the configured SCells. The PCell is always activated. The network activates and deactivates the SCell(s) by sending the Activation/Deactivation MAC control element described in 6.1.3.8. Furthermore, the UE maintains a sCellDeactivationTimer timer per configured SCell and deactivates the associated SCell upon its expiry. The same initial timer value applies to each instance of the sCellDeactivationTimer and it is configured by RRC. The configured SCells are initially deactivated upon addition and after a handover.」(3ページ17行-23行)
(当審訳:「5.13 SCellの活性化/不活性化
UEが一つ又は複数のSCellで構成される場合,ネットワークは,構成されたSCellを活性化及び不活性化することができる。PCellは常に活性化されている。ネットワークは,6.1.3.8において説明されている活性化/不活性化MAC control elementを送信することで,SCellの活性化と不活性化を行う。さらに,UEは,構成されたSCell毎にsCellDeactivationTimerタイマーを維持しており,タイマーが満了したときには,それに対応するSCellを不活性化する。RRCによって構成される同じ初期のタイマー値を,各sCellDeactivationTimerのインスタンスに適用する。構成されたSCellは,それが追加されたときと,ハンドオーバしたときには,初期状態として不活性化されている。)

(2)「
The UE shall for each TTI and for each configured SCell:
- if the UE receives an Activation/Deactivation MAC control element activating the SCell:
- activate the SCell;
- start or restart the sCellDeactivationTimer associated with the SCell;」(3ページ24行-27行)
(当審訳:「
UEは,各TTI毎,及び各構成されたSCell毎に:
-もし,UEがSCellの活性化を行う活性化/不活性化MAC control elementを受信した場合には,
-そのSCellを活性化する;
-そのSCellに対応するsCellDeactivationTimerを開始,あるいは再開始する;」)

(3)「
- else, if the UE receives an Activation/Deactivation MAC control element deactivating the SCell in subframe n; or
- if the sCellDeactivationTimer associated with the activated SCell expires in this subframe n:
- deactivate the SCell;
- stop the sCellDeactivationTimer associated with the SCell;
- not report CQI/PMI/RI for the SCell after subframe n+8;
- flush all HARQ buffers associated with the SCell.」(3ページ28行-33行)
(当審訳:「
?そうでなければ,もし,UEがSCellの不活性化を行う活性化/不活性化MAC control elementを,サブフレームnにおいて受信した場合,又は,
-その活性化SCellに対応するsCellDeactivationTimerがサブフレームnで満了した場合には:
-そのSCellを不活性化する;
-そのSCellに対応したsCellDeactivationTimerを停止する;
-そのSCellへのCQI/PMI/RIは,サブフレームn+8以降に報告しない;
-その活性化SCellに対応した,すべてのHARQバッファを初期化する。」)

(4)「
- if PDCCH on the activated SCell indicates an uplink grant or downlink assignment; or
- if PDCCH on the Serving Cell scheduling the activated SCell indicates an uplink grant or a downlink assignment for the activated SCell:
- restart the sCellDeactivationTimer associated with the SCell;」(3ページ34行-4ページ1行)
(当審訳:「
?もし,その活性化SCellのPDCCHが,上りgrantあるいは下りアサインメントを表す;又は
-その活性化SCellをスケジューリングするサービングCellのPDCCHが,その活性化SCellに対する上りgrantあるいは下りアサインメントを表す場合には,
-そのSCellに対応するsCellDeactivationTimerを再開始する;)

(5)「
- if the SCell is deactivated:
- not transmit SRS for the SCell;
- not report CQI/PMI/RI for the SCell in accordance with the specified timing;
- not transmit on UL-SCH for the SCell;
- not monitor the PDCCH of the SCell;
- not follow any downlink assignments or uplink grants for the Scell.」(4ページ2行-7行)
(当審訳:「
?もし,そのSCellが不活性化された場合には:
-そのSCellへのSRS送信しない
-そのSCellのCQI/PMI/RIは,指定されたタイミングで報告しない;
-そのSCellへのUL-SCH上の送信しない;
-そのSCellのPDCCHのモニターをしない
-そのSCellに対する下りアサインメントあるいは上りgrantに従わない。」)

上記記載及び当業者の技術常識を考慮すると,引用例1には,次の技術事項が記載されている。

ア 上記(1)の記載によると,UEが,ネットワークとの間で信号の送受信を行うことによって,SCellの活性化/不活性化を行っていることは明らかであるから,引用例1には,UEにおける信号の送受信方法が記載されているといえる。

イ 上記(1)の記載によると,UEは,ネットワークから活性化/不活性化MAC control elementを受信するから,上記(2)には,ネットワークからUEがSCellの活性化を行う活性化/不活性化MAC control elementを受信した場合には,そのSCellを不活性化し,そのSCellに対応するsCellDeactivationTimerを開始することが記載されている。

ウ 上記(4)には,その活性化SCellのPDCCHが,上りgrantあるいは下りアサインメントを表す場合には,そのSCellに対応するsCellDeactivationTimerを再開始することが記載されている。

エ 上記(3)には,その活性化SCellに対応するsCellDeactivationTimerがサブフレームnで満了した場合には,そのSCellを不活性化し,そのSCellへのCQI/PMI/RIは,サブフレームn+8以降に報告しないことが記載され,上記(5)には,SCellが不活性化された場合には,そのSCellのCQI/PMI/RIは,指定されたタイミングで報告せず,そのSCellのPDCCHのモニターをしないことが記載されているところ,上記(3)の「そのSCellを不活性化」によって,上記(5)の「SCellが不活性化された場合」以降の一連の処理が行われるものであり,また,上記(3)の,SCellへのCQI/PMI/RIは,サブフレームn+8以降に報告しないことと,上記(5)のSCellのCQI/PMI/RIは,指定されたタイミングで報告しないこととは,それぞれの対応関係から,同じ内容を示すことは明らかであるから,引用例1には,そのSCellに対応するsCellDeactivationTimerがサブフレームnで満了した場合には,そのSCellへのCQI/PMI/RIは,サブフレームn+8以降に報告せず,そのSCellのPDCCHのモニターをしないことが記載されているといえる。

オ UEが,活性化SCellのために,当該SCellに対するPDCCHをモニターして,当該SCellに対するCQI/PMI/RI報告を行うことは,当業者の技術常識である。
そうすると,上記(5)の「そのSCellのCQI/PMI/RIは,指定されたタイミングで報告しない」,及び「そのSCellのPDCCHのモニターをしない」ことは,「SCellが不活性化された場合」に行われるから,「そのSCellのCQI/PMI/RIは,指定されたタイミングで報告」を中断し,「そのSCellのPDCCHのモニターを」中断することであるといえるところ,上記エのとおりであるから,引用例1には,そのSCellに対応するsCellDeactivationTimerがサブフレームnで満了した場合には,そのSCellへのCQI/PMI/RIは,サブフレームn+8以降に中断し,そのSCellのPDCCHのモニターを中断することが記載されているといえる。

カ 上記(1)の記載によると,sCellDeactivationTimerの初期タイマー値は,RRCによって構成されるものであるといえる。

したがって,引用例1には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「UEにおける信号の送受信方法において,
ネットワークからUEがSCellの活性化を行う活性化/不活性化MAC control elementを受信した場合には,
そのSCellを活性化し,
そのSCellに対応するsCellDeactivationTimerを開始し,
その活性化SCellのPDCCHが,上りgrantあるいは下りアサインメントを表す場合には,
そのSCellに対応するsCellDeactivationTimerを再開始し,
そのSCellに対応するsCellDeactivationTimerがサブフレームnで満了した場合には,そのSCellのPDCCHのモニターを中断し,そのSCellへのCQI/PMI/RIは,サブフレームn+8以降に報告を中断し,
前記sCellDeactivationTimerの初期タイマー値は,RRCによって構成される,
方法」


2 引用例4
当審拒絶理由で引用されたSamsung,"Signalling aspects of existing LTE-A parameters",3GPP TSG-RAN2 meeting #72bis R2-110631,[online],2011.01.25,インターネット<URL: http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_72bis/Docs/R2-110631.zip>(表題の当審訳:「既存のLTE-Aパラメータのシグナリング態様」;以下,「引用例4」という。)には,RRCにおけるRRC IEのMAC-MainConfig fields descriptionとして,以下の記載がある。(下線は当審が付与。)

「sCellDeactivationTimer
SCell deactivation timer in TS 36.321 [6]. Value in number of radio frames. Value rf4 corresponds to 4 radio frames, value rf8 corresponds to 8 radio frames and so on. The same value applies for all serving cells.」(5葉51行-53行)
(当審訳:「sCellDeactivationTimer
TS36.321のSCell不活性化タイマー。値は,無線フレームの数を表す。rf4の値は,4つの無線フレームに対応し,rf8の値は,8つの無線フレームに対応し,以下同様である。全てのセルに対して同じ値が適用される。」)

したがって,引用例4には,「sCellDeactivationTimerは,無線フレームの数を表すパラメータである。」との,公知技術が記載されていると認められる。


3 周知例1
本願の優先日よりも前に利用可能となった,3GPP TS 36.213 V10.0.0 (2010-12),3GPP,[online],2010年12月22日掲載, page49-61, インターネット(以下,「周知例1」という。)には,以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

(1)「7.2.2 Periodic CQI/PMI/RI Reporting using PUCCH
(中略)
The following CQI/PMI and RI reporting types with distinct periods and offsets are supported for the PUCCH reporting modes given in Table 7.2.2-3:
・Type 1 report supports CQI feedback for the UE selected sub-bands
・Type 1a report supports subband CQI and second PMI feedback
・Type 2, Type 2b, and Type 2c report supports wideband CQI and PMI feedback
・Type 2a report supports wideband PMI feedback
・Type 3 report supports RI feedback
・Type 4 report supports wideband CQI
・Type 5 report supports RI and wideband PMI feedback
・Type 6 report supports RI and PTI feedback
」(49ページ2行-50ページ18行)
(当審訳:「PUCCHを用いる周期的なCQI/PMI/RI報告
(中略)
以下の異なる周期,及びオフセットのCQI/PMIとRI報告のタイプは,表7.2.2-3で与えられるPUCCH報告モードのためにサポートされる。
・タイプ1報告は,UEが選択したサブバンドのCQIフィードバックをサポートする。
・タイプ1A報告は,サブバンドCQI及び第2のPMIフィードバックをサポートする。
・タイプ2,タイプ2b,及びタイプ2c報告は,広帯域CQI及びPMIフィードバックをサポートする。
・タイプ2A報告は,広帯域PMIフィードバックをサポートする。
・タイプ3報告はRIフィードバックをサポートする。
・タイプ4報告は広帯域CQIをサポートする。
・タイプ5報告は,RI及び広帯域PMIフィードバックをサポートする。
・タイプ6報告は,RI及びPTIフィードバックをサポートする。
」)

(2)「
o Mode 2-1 description:
・In the subframe where RI is reported (only for transmission mode 4, 8 and 9 if the number of ports configured for CSI reporting is 2 or 4):
・A UE shall determine a RI assuming transmission on set S subbands.
・The UE shall report a type 3 report consisting of one RI.
・In the subframe where RI is reported and if the number ports configured for CSI reporting exceeds 4 then for transmission mode 9:
・A UE shall determine a RI assuming transmission on set S subbands.
・A UE shall determine a precoder type indication (PTI).
・The UE shall report a type 6 report consisting of one RI and the PTI.
」(55ページ21行-30行)
(当審訳:「
o モード2-1記述
・RIが報告されたサブフレームにおいて(CSI報告用に構成されたポートの数が2又は4である場合に,送信モード4,8,あるいは9についてのみ):
・UEは,セットSサブバンドでの送信を想定してRIを決定する。
・前記UEは,1つのRIで構成されるタイプ3報告を報告する。
・RIが報告されたサブフレーム,及びCSI報告のために設定されたポート数が4を超えることで,送信モード9用であるとき:
・UEは,セットSサブバンドでの送信を想定してRIを決定する。
・UEは,プレコーダ・タイプ・インディケーション(PTI)を決定する。
・前記UEは,1つのRIと前記PTIから構成されるタイプ6報告を報告する。」)


周知例1の記載を総合すると,「プレコーダ・タイプ・インディケーション(PTI)をCSI/PMI/RI報告で用いる。」ことは,本願の優先権主張の日より前に3GPP標準規格で規定された周知技術であると認められる。


4 周知例2
本願の優先日よりも前に利用可能となった,3GPP TS 36.321 V10.0.0 (2010-12),3GPP,[online],2010年12月21日掲載,page40-41,インターネット(以下,「周知例2」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「6.1.3.8 Activation/Deactivation MAC Control Element
The Activation/Deactivation MAC control element is identified by a MAC PDU subheader with LCID as specified in table 6.2.1-1. It has a fixed size and consists of a single octet containing seven C-fields and one R-field. The Activation/deactivation MAC control element is defined as follows (figure 6.1.3.8-1).
- Ci: this field indicates the activation/deactivation status of the SCell with Cell Index i as specified in [8]. The Ci field is set to "1" to indicate that the SCell with Cell Index i shall be activated. The Ci field is set to "0" to indicate that the SCell with Cell Index i shall be deactivated;
- R: Reserved bit, set to "0".



Figure 6.1.3.8-1: Activation/Deactivation MAC control element
」(40ページ10行-41ページ1行)
(当審訳:「6.1.3.8 活性化/不活性化MAC control element
活性化/不活性化MAC control elementは,表6.2.1-1に規定されているLCIDを有するMAC PDUサブヘッダによって識別される。それは,7つのC-fieldと1つのR-fieldを含む,固定されたサイズで単一のオクテットから構成される。活性化/不活性化MAC control elementは,以下のように定義される(図6.1.3-1)。
-Ci:このフィールドは,[8]に指定されているように,セルインデックスiに対応するSCellの活性化/不活性化状態を示す。セルインデックスiに対応するSCellを活性化されるべきことを示すために,Ciフィールドは”1”に設定される。セルインデックスiに対応するSCellを不活性化されるべきことを示すために,Ciフィールドは”0”に設定される。
-R:予約ビット,”0”にセットする。



図6.1.3.8-1:活性化/不活性化MAC control element
」)

単一オクテットは,8ビットを表すことは明らかであること,及び上記周知例2の記載から,「予約ビットである1つのRフィールド,及び,対応するSCellが活性化/不活性化されるべきことを示すビットであり,iが1?7に設定される7つのCiフィールド,を含む8ビットで構成される活性化/不活性化MAC control element」は,本願の優先権主張の日より前に3GPP標準規格で規定された周知技術であると認められる。


第5 引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。

1 引用発明の「UE」は,無線通信システムの端末であることは明らかであるから,引用発明の「UEにおける信号の送受信方法」は,本願発明の「無線通信システムの端末における信号の送受信方法」に相当する。

2 ネットワークからUEが信号を受信することが,基地局からUEが信号を受信することになることは,当業者の技術常識であるから,引用発明の「ネットワークからUEがSCellの活性化を行う活性化/不活性化MAC control elementを受信」することは,基地局からSCellの活性化を行う活性化/不活性化MAC control elementを受信することであるといえる。
そして,本願発明の「SCell(secondary cell)を活性化するための第1情報」は,MAC(medium access control) CE(control element)であるから,引用発明の「SCellの活性化を行う活性化/不活性化MAC control element」は,本願発明の「SCell(secondary cell)を活性化するための第1情報」に相当する。
したがって,引用発明の「ネットワークからUEがSCellの活性化を行う活性化/不活性化MAC control elementを受信」することと,本願発明とは,「基地局からSCell(secondary cell)を活性化するための第1情報を受信する段階」で共通する。

3 引用発明の「そのSCellを活性化」することは,本願発明の「前記SCellを活性化する段階」に相当する。

4 引用発明の「sCellDeactivationTimer」は,上記「第4 1(1)」によると,SCell毎の活性化/不活性化に関連するタイマーであるから,引用発明の「そのSCellに対応するsCellDeactivationTimerを開始」することと,本願発明とは,「前記SCellと関連したタイマーを開始する段階」で共通する。

5 UEにおいてPDCCHは,基地局から受信されるものであることが,技術常識である。また,活性化SCellのPDCCHによる,UL grant又はDL assignmentは,活性化されたSCellのための情報に含まれるから,引用発明の「その活性化SCellのPDCCHが,上りgrantあるいは下りアサインメントを表す」ことは,本願発明の「前記活性化されたSCellのための第2情報が前記基地局から受信」されることに含まれる。
そして,上記4のとおりであるから,引用発明の「そのSCellに対応するsCellDeactivationTimerを再開始」することは,SCellと関連したタイマーを再開始することであるといえる。
したがって,引用発明の「その活性化SCellのPDCCHが,上りgrantあるいは下りアサインメントを表す場合には,そのSCellに対応するsCellDeactivationTimerを再開始」することと,本願発明とは,「前記活性化されたSCellのための第2情報が前記基地局から受信されると,前記SCellと関連したタイマーを再開始する段階」で共通する。

6 引用発明の「そのSCellへのCQI/PMI/RI」は,そのSCellへの所定の報告に含まれ,及び「サブフレームn+8」は,予め設定されたサブフレームに含まれるといえるから,引用発明の「そのSCellに対応するsCellDeactivationTimerがサブフレームnで満了した場合には,そのSCellのPDCCHのモニターを中断し,そのSCellへのCQI/PMI/RIは,サブフレームn+8以降に報告を中断」することと,本願発明とは,「前記タイマーが満了する場合,前記SCell上で物理的ダウンリンク制御チャネル(physical downlink control channel,PDCCH)のモニタリングを中断し,前記タイマーが満了し,既に設定されたサブフレームの以降」,前記SCellと関連した所定の報告を中断する段階で共通する。

7 RRCによる構成は,無線リソース制御(radio resource control)メッセージを用いて設定することであることが技術常識であるところ,引用発明の「sCellDeactivationTimerの初期タイマー値」は,タイマーの長さを規定する値であることは明らかであるから,引用発明の「前記sCellDeactivationTimerの初期タイマー値は,RRCによって構成される」ことは,sCellDeactivationTimerのタイマーの長さを,RRCメッセージによって設定することであるといえる。
そうすると,引用発明の「前記sCellDeactivationTimerの初期タイマー値は,RRCによって構成される」ことと,本願発明とは,「前記タイマーの長さ」は,「無線リソース制御(radio resource control)メッセージに基づいて設定される」ことで共通する。

したがって,本願発明と引用発明とは,両者は,以下の点で一致し,また,相違している。

[一致点]
「無線通信システムの端末における信号の送受信方法において,
基地局からSCell(secondary cell)を活性化するための第1情報を受信する段階と,
前記SCellを活性化する段階と,
前記SCellと関連したタイマーを開始する段階と,
前記活性化されたSCellのための第2情報が前記基地局から受信されると,前記SCellと関連したタイマーを再開始する段階と,
前記タイマーが満了する場合,前記SCell上で物理的ダウンリンク制御チャネル(physical downlink control channel,PDCCH)のモニタリングを中断し,前記タイマーが満了し,既に設定されたサブフレームの以降,前記SCellと関連した所定の報告を中断する段階とを含み,
前記タイマーの長さは,無線リソース制御(radio resource control)メッセージに基づいて設定される,
ことを特徴とする信号の送受信方法。」

[相違点1]
一致点の「前記SCellと関連した所定の報告を中断する」ことについて,本願発明は,「プレコーダータイプ指示子(precoder type indication,PTI)報告を中断」するのに対して,引用発明は,CQI/PMI/RIの報告を停止する点。

[相違点2]
一致点の「第1情報」について,本願発明は,「1つの予約ビットと7個のCiビットを含む8ビットサイズのMAC(medium access control) CE(control element)であり,前記Ciビットにおいてi値は0?7に設定され,前記i値は,前記端末に設定された前記SCellの識別子に対応」するのに対して,引用発明は,活性化/不活性化MAC control elementの内容について特定していない点。

[相違点3]
一致点のSCellと関連した「タイマーの長さ」について,本願発明は,「少なくとも1つのフレーム数に対応」するのに対して,引用発明は,タイマーの長さを示すsCellDeactivationTimerの初期値について,特定していない点。


第6 判断
以下,相違点について検討する。

1 相違点1について
上記「第5 1」のとおり,「プレコーダ・タイプ・インディケーション(PTI)をCSI/PMI/RI報告で用いる」ことは,3GPP標準規格で規定された周知技術であるところ,当該CSI/PMI/RI報告を停止する場合には,そこで用いられているPTIの報告も停止すべきことは明らかである。
そうすると,引用発明において,プレコーダ・タイプ・インディケーション(PTI)をCSI/PMI/RIの報告で用い,CSI/PMI/RIの報告を停止することにともなって,PTIの報告も停止することは,格別困難なことではない。

2 相違点2について
引用発明では,活性化/不活性化MAC control elementの内容について特定されていないところ,上記「第5 2」のとおり,「予約ビットである1つのRフィールド,及び,対応するSCellが活性化/不活性化されるべきことを示すビットであり,iが1?7に設定される7つのCiフィールド,を含む8ビットで構成される活性化/不活性化MAC制御要素」は,3GPP標準規格で規定された周知技術であるから,引用発明における活性化/不活性化MAC control elementも,「予約ビットである1つのRフィールド,及び,対応するSCellが活性化/不活性化されるべきことを示すビットであり,iが1?7に設定される7つのCiフィールド,を含む8ビットで構成される活性化/不活性化MAC制御要素」であると解される。
そうすると,引用発明の活性化/不活性化MAC control elementに上記「第5 2」で述べた周知技術を用いて,「1つの予約ビットと7個のCiビットを含む8ビットサイズのMAC(medium access control) CE(control element)であり,前記Ciビットにおいてi値は1?7に設定され,前記i値は,前記端末に設定された前記SCellの識別子に対応」するものとすることは,格別困難なことではない。

3 相違点3について
上記「第4 2」のとおり,「SCell不活性タイマーとして用いられるsCellDeactivationTimerは,無線フレームの数に対応するパラメータである。」ことは,公知技術であるから,引用発明のsCellDeactivationTimerの値を,無線フレームの数に対応するパラメータとすることは,格別困難なことではない。
したがって,引用発明において,sCellDeactivationTimerの値を,「少なくとも1つのフレーム数に対応」するものとすることは,当業者が容易に想到できたことである。

そして,本願発明の作用効果も,引用発明,引用例4に記載された公知技術,及び周知例1,2に記載された周知技術に基づいて当業者が予測し得る範囲のものであり,格別なものではない。

したがって,本願発明は,引用発明,引用例4に記載された公知技術,及び周知例1,2に記載された周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。


[請求人の主張について]
請求人は,平成30年3月15日に提出された意見書において,以下のとおり主張する。

「拒絶理由通知でご提示を受けている引用文献では、本願発明の上記構成に対応するMAC CEの構造について何ら開示していないことは明白であり,(中略)
”PTI”の報告を中断する特徴は、SCellを不活性化し、対応する動作を行うときに行われる動作の一つであり、引用発明と本願発明の差別性をより明確に理解することができるものと請求人は思料致します。」

しかしながら,上記相違点の検討で述べたように,「1つの予約ビットと7個のCiビットを含む8ビットサイズのMAC(medium access control) CE(control element)であり,前記Ciビットにおいてi値は1?7に設定され,前記i値は,前記端末に設定された前記SCellの識別子に対応」すること,及び「プレコーダータイプ指示子(precoder type indication,PTI)報告」は,いずれも3GPP標準規格に規定されているように周知技術であるから,引用発明において,MAC control elementを,「1つの予約ビットと7個のCiビットを含む8ビットサイズのMAC(medium access control) CE(control element)であり,前記Ciビットにおいてi値は1?7に設定され,前記i値は,前記端末に設定された前記SCellの識別子に対応」することとし,「プレコーダータイプ指示子(precoder type indication,PTI)報告を中断」することは,格別困難なことではなく,また阻害要因はない。
したがって,上記請求人の主張は採用できない。


第7 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明,引用例4に記載された公知技術,及び周知例1,2に記載された周知技術に基づいて,当業者が容易に想到できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-04-12 
結審通知日 2019-04-15 
審決日 2019-04-26 
出願番号 特願2013-554404(P2013-554404)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 倉本 敦史  
特許庁審判長 中木 努
特許庁審判官 原田 聖子
脇岡 剛
発明の名称 搬送波集積技術を使用する無線通信システムにおける副搬送波の不活性化方法及び装置  
代理人 実広 信哉  
代理人 崔 允辰  
代理人 阿部 達彦  
代理人 木内 敬二  

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