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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1355312
審判番号 不服2018-7432  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-31 
確定日 2019-10-08 
事件の表示 特願2015-512661「コンテクストベースの仮想データ境界」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月21日国際公開、WO2013/173039、平成27年 9月24日国内公表、特表2015-528139、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,2013年4月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年5月14日(以下,「優先日」という。),米国)を国際出願日として出願したものであって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成26年11月11日 :国内書面の提出
平成27年 1月 6日 :翻訳文の提出
平成28年 4月 1日 :手続補正書の提出
平成29年 5月23日付け :拒絶理由の通知
平成29年 8月24日 :意見書,手続補正書の提出
平成30年 1月29日付け :拒絶査定(原査定)
平成30年 5月31日 :審判請求書,手続補正書の提出
平成30年 7月24日 :前置報告
平成30年10月29日 :上申書の提出
平成31年 4月17日付け :拒絶理由の通知(当審)
令和 元 年 5月22日 :意見書,手続補正書の提出

第2 本願発明
本願請求項1-10に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明10」という。)は,令和元年5月22日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
データアクセス制御を改善する方法であって,
プロセッサにより,少なくとも一つのコンテクスト基準に対し少なくとも一つの閾値を割り当てることと,
プロセッサにより,要求者からコンテクスト情報を受信することと,
プロセッサにより,前記要求者からの前記コンテクスト情報が,前記少なくとも一つのコンテクスト基準に対する前記少なくとも一つの閾値を満たすかどうかを決定することと,
前記要求者からの前記コンテクスト情報が,前記少なくとも一つのコンテクスト基準に対する前記少なくとも一つの閾値のうちの少なくとも一つを満たす場合に,プロセッサにより,前記要求者を認証することと,
前記要求者が認証される場合,プロセッサにより,前記要求者に前記データへのアクセスを許可することと,を含み,
前記コンテクスト情報は,前記要求者が前記データへアクセスしようとしているときの前記要求者の地理的位置,および,前記要求者が衛星から受信したスポットビームから抽出されたビームパラメータを含み,
前記要求者を認証することは,スポットビームベース認証を含み,
前記決定することは,
前記ビームパラメータに基づいて,データベースから,前記スポットビームの中心の座標と,地球表面上での前記スポットビームの半径と,を探索するステップと,
前記スポットビームの中心の座標と地球表面上での前記スポットビームの半径とにより特定され,前記スポットビームの外周で囲まれる領域内に,前記要求者の地理的位置があるか否かを決定するステップであって,前記少なくとも一つのコンテクスト基準は,前記要求者によるアクセスが許容される地理的領域を含み,前記少なくとも一つの閾値は,前記スポットビームの外周を含む,ステップと,を含み,
前記要求者を認証することは,前記要求者の地理的位置が前記スポットビームの外周で囲まれる領域内にある場合に,前記要求者を認証することを含む,方法。」

なお,本願発明2-10の概要は以下のとおりである。

本願発明2-8は,本願発明1を減縮した発明である。

本願発明9は,本願発明1に対応する「データアクセス制御を改善するための装置」の発明であって,本願発明1とカテゴリ表現が異なる発明である。

本願発明10は,本願発明1に対応する「データアクセス制御を改善するシステム」の発明であって,本願発明1とカテゴリ表現が異なる発明である。

第3 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2010-199997号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下,同様。)

A 「【0012】
本発明の一側面であるアクセス認証方法は,ファイルの登録やファイルのアクセス制限の設定を行う第1クライアント装置と,登録されたファイルへのアクセスを行う第2クライアント装置と,第2クライアント装置からファイルアクセスを受け付ける第1サーバ装置と,第1クライアント装置からファイル登録やアクセス制限設定を受け付ける第2サーバ装置と,第2クライアント装置のユーザを識別可能なユーザ情報を取得する第3クライアント装置と,を含んで構成されるアクセス認証システムで用いられ,第2サーバ装置が,アクセス制限が設定された登録ファイルを暗号化する暗号化ステップと,第2サーバ装置が,暗号化ステップにより暗号化された登録ファイルとアクセス制限の設定内容を管理する情報管理ステップと,第1サーバ装置が,アクセス制限の設定された登録ファイルへのアクセス要求が第2クライアント装置からあった場合,第2サーバ装置を介して,第2クライアント装置のユーザが登録ファイルへのアクセス権を有することの個別認証を要求する個別認証要求を,第3クライアント装置に行う個別認証要求ステップと,第2サーバ装置が,個別認証要求ステップによる個別認証要求を受けた第3クライアント装置から取得したユーザ情報を用いて個別認証を行う個別認証ステップと,第2サーバ装置が,個別認証ステップで第2クライアント装置のユーザがアクセス要求に係る登録ファイルへのアクセス権を有する旨の認証結果が得られた場合,暗号化された登録ファイルを復号する復号ステップと,第2サーバ装置が,復号ステップにより復号された登録ファイルを第2クライアント装置に送信するファイル送信ステップと,を有する。」

B 「【0022】
[実施形態1]
はじめに,本発明の第1の実施形態(実施形態1)に係るアクセス認証システムの構成について説明する。図2は,実施形態1のアクセス認証システムのシステム構成を示した図である。実施形態1のアクセス認証システムは,情報提供側の情報処理装置であるPC100,Webサーバ200,HDD210,管理サーバ300,HDD310,情報取得側の情報処理装置であるPC400及び携帯電話機500から構成され,各装置がネットワークを介して接続されている。
【0023】
図2の各装置は図1の各構成と以下のように対応する。すなわち,PC100は第1クライアント装置10に,Webサーバ200は第1サーバ装置20に,管理サーバ300は第2サーバ装置30に,PC400は第2クライアント装置40に,携帯電話機500は第3クライアント装置50にそれぞれ対応する。
【0024】
PC100は,管理サーバ300に対して,公開情報のファイルの登録や登録したファイルへのアクセス制限の設定を行う。管理サーバ300は,PC100からのファイル登録やアクセス制限設定を受け付け,ファイルや設定内容をHDD310に保存して管理する。HDD310は,管理サーバ300と接続され,アクセス制限の設定内容の情報を,閲覧権限情報DB311として保持し,またアクセス制限が設定され暗号化された状態の公開情報ファイルを制限付きファイルDB312として保持する。
…(中略)…
【0026】
PC400は,Webサーバ200に対して,公開情報ファイルのアクセス要求(閲覧要求)を行う。Webサーバ200は,PC400からアクセスされるたびに基本認証を行う。基本認証は,通常行われているID及びパスワードによる認証である。Webサーバ200は,はじめてPC400からアクセスされたとき,基本認証に用いる基本認証情報(例えばWebサーバ200が割り振ったIDとユーザが指定したパスワード)を取得し,HDD210に基本認証情報DB212として保持する。また,基本認証情報とともに,PC400とユーザが同一の携帯電話機500のアドレス情報が取得され,関連付けられて保持される。」

C 「【0028】
Webサーバ200は,PC400からアクセスされるとHDD210の基本認証情報DB212の情報を用いて基本認証を行い,正当に認証された場合に,HDD210のファイル閲覧情報DB211からファイル閲覧情報を取得してPC400に送信する。そして,Webサーバ200は,PC400からアクセス制限の設定された登録ファイルへのアクセス要求を受けた場合,管理サーバ300を介して,個別認証要求を携帯電話機500に送信する。
…(中略)…
【0030】
携帯電話機500は,通話機能はもちろんのこと,メール送受信やWeb閲覧が可能なネットワーク機能,カメラ機能,GPS機能といった種々の機能を備える。これらの機能により,ユーザしか持ちえないユーザ情報として,電話番号,住所,年齢,メールアドレス,顔画像,位置情報,音声,端末固有情報等の情報を取得することができる。」

D 「【0032】
図3は,アクセス制限内容のパターンの例を示したものである。アクセス制限のパターンは,想定するユーザ(公開先)に応じたレベル分けによりアクセスレベルが設けられ,アクセスを許可する条件(認証キー)や,認証方法(相手から取得するユーザ情報の内容,相手への通知方法等)等が指定されて登録される。例えばパターン「A」は,アクセスレベルが「開示」で一般ユーザを公開先として想定しており,ユーザにより登録されたID及びパスワードを認証キーとした基本認証を認証方法としている。また,例えばパターン「C」は,アクセスレベルが「低」で個人ユーザを公開先として想定しており,情報提供者の登録した情報(クイズの解答,キーワード,特定のキャラクタ画像等)を認証キーとした認証を認証方法としている(パターン「A」以外の認証は個別認証となる)。
…(中略)…
【0034】
なお,認証キーは,携帯電話機500において取得可能なユーザ情報として,電話番号,メールアドレス,住所情報,年齢,生体情報指紋等,端末固有識別情報(ICカードに保持された情報),画像情報(顔,写真,イラスト等),音声情報,位置情報(GPSで取得された情報),時間情報,任意の文字列,基本認証情報(ID及びパスワード)のいずれか,あるいはこれらの組み合わせとしてもよい。」

したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ファイルの登録やファイルのアクセス制限の設定を行う第1クライアント装置と,前記登録されたファイルへのアクセスを行う第2クライアント装置と,前記第2クライアント装置から前記ファイルアクセスを受け付ける第1サーバ装置と,前記第1クライアント装置からファイル登録やアクセス制限設定を受け付ける第2サーバ装置と,前記第2クライアント装置のユーザを識別可能なユーザ情報を取得する第3クライアント装置と,を含んで構成されるアクセス認証システムで用いられ,
前記第2サーバ装置が,アクセス制限が設定された登録ファイルを暗号化する暗号化ステップと,
前記第2サーバ装置が,前記暗号化ステップにより暗号化された登録ファイルと前記アクセス制限の設定内容を管理する情報管理ステップと,
前記第1サーバ装置が,前記アクセス制限の設定された登録ファイルへのアクセス要求が前記第2クライアント装置からあった場合,前記第2サーバ装置を介して,前記第2クライアント装置のユーザが前記登録ファイルへのアクセス権を有することの個別認証を要求する個別認証要求を,前記第3クライアント装置に行う個別認証要求ステップと,
前記第2サーバ装置が,前記個別認証要求ステップによる個別認証要求を受けた前記第3クライアント装置から取得したユーザ情報を用いて個別認証を行う個別認証ステップと,
前記第2サーバ装置が,前記個別認証ステップで前記第2クライアント装置のユーザが前記アクセス要求に係る登録ファイルへのアクセス権を有する旨の認証結果が得られた場合,前記暗号化された登録ファイルを復号する復号ステップと,
前記第2サーバ装置が,前記復号ステップにより復号された登録ファイルを前記第2クライアント装置に送信するファイル送信ステップと,
を有し,
前記ユーザ情報は,認証キーであって,携帯電話機において取得可能な情報である,電話番号,メールアドレス,住所情報,年齢,生体情報指紋等,端末固有識別情報(ICカードに保持された情報),画像情報,音声情報,位置情報(GPSで取得された情報),時間情報,任意の文字列,基本認証情報(ID及びパスワード)のいずれか,あるいはこれらの組み合わせとしてもよい,
ことを特徴とするアクセス認証方法。」

2 引用文献2-6について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2012-003299号公報)の段落【0016】-【0032】,引用文献3(特開2007-300447号公報)の段落【0020】-【0024】,引用文献4(特開2009-211431号公報)の段落【0080】-【0081】,【0092】,【0098】-【0104】,【0124】,引用文献5(米国特許出願公開第2002/138632号明細書)の段落[0008],[0028]-[0033],引用文献6(欧州特許出願公開第0997808号明細書)の段落[0029]-[0041]には,
「位置や,時刻,各種認証情報等のコンテクスト情報の組合せに基づいて認証を行い,認証が成立した場合には,所定の処理やアクセスを許可すること,及び前記コンテクスト情報の組合せに基づく認証は,前記各コンテクスト情報が所定の基準(例えば位置の場合には所定範囲内にあること,パスワードの場合には予め記憶されたパスワードとの一致など)を満たすか否かによって行われる」という技術的事項が記載されていると認められる。

3 引用文献7について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献7(国際公開第2011/127450号)には,図面とともに次の事項が記載されている。
(当審注: 訳には,パテントファミリーである特表2013-525753号公報を参照した。)

E 「Abstract: A method and system are disclosed for providing an estimate of a location of a user receiver device. The method and system involve emitting from at least one vehicle at least one spot beam on Earth, and receiving with the user receiver device a signal from at least one spot beam. In one or more embodiments, at least one vehicle may be a satellite and/or a pseudolite. The method and system further involve calculating with the user receiver device the estimate of the location of the user receiver device according to the user receiver device's location within at least one spot beam. In some embodiments, when the user receiver device receives signals from at least two spot beams, the user receiver device calculates the estimate of the location of the user receiver device to be located in the center of the intersection of at least two spot beams.」(要約)

訳; 「【要約】
ユーザ受信装置の位置の推定を行う方法及びシステムが開示される。方法及びシステムは,少なくとも1つのビークルから,少なくとも1つのスポットビームを地球に向けて放射するステップと,そしてユーザ受信装置で,信号を少なくとも1つのスポットビームから受信するステップと,を含む。1つ以上の実施形態では,少なくとも1つのビークルは,衛星及び/又は擬似衛星とすることができる。方法及びシステムは更に,ユーザ受信装置で,ユーザ受信装置の位置の推定値を,少なくとも1つのスポットビームの内部のユーザ受信装置の位置に応じて算出するステップを含む。幾つかの実施形態では,ユーザ受信装置が信号群を,少なくとも2つのスポットビームから受信すると,ユーザ受信装置は,ユーザ受信装置が少なくとも2つのスポットビームの交差部の中心に位置している位置の推定値を算出する。」

F 「 FIG. 1A illustrates the use of a single satellite's 100 overlapping multiple spot beams 110 in order to obtain an estimate of the location of a user receiver device 120, in accordance with at least one embodiment of the present disclosure. And, FIG. 1B shows the use of a single satellite's 100 overlapping multiple spot beams 110 along with the use of a cellular network 130 in order to obtain an estimate of the location of a user receiver device 120, in accordance with at least one embodiment of the present disclosure. FIG. 1B is similar to FIG. 1A except for the fact that FIG. 1B employs the use of a cellular network 130. in both of these figures, it can be seen that the single satellite 100 emits at least one spot beam 110 on Earth. In one or more embodiments, the satellite 100 uses at least one radio frequency (RF) antenna to emit at least one of the spot beams 110. The user receiver device 120 receives a signal from at least one of the projected spot beams 110. The user receiver device 120 then calculates an estimate of its location on Earth according to its location within one of the projected spot beams 110.
In FIGS. 1A and 1B, the user receiver device 120 calculates the location of at least one spot beam within which the user receiver device 120 is located, in order to make this calculation, the user receiver device 120 uses knowledge of the satellite 100 position, knowledge of the satellite 100 attitude, and/or knowledge of the direction and/or pattern of the spot beams 110. In some embodiments, in order for the user receiver device 120 to obtain knowledge of the direction and/or pattern of the spot beams 110, the user receiver device 120 refers to a beam geometry database and/or an internal orbital model. 」(第9頁9-28行)

訳; 「【0026】
図1Aは,本開示の少なくとも1つの実施形態による,1個の衛星100からの複数の重なりスポットビーム110を利用してユーザ受信装置120の位置の推定値を取得する様子を示している。また,図1Bは,本開示の少なくとも1つの実施形態による,1個の衛星100からの複数の重なりスポットビーム110を,セルラーネットワーク130と併せて利用して,ユーザ受信装置120の位置の推定値を取得する様子を示している。図1Bは図1Aと,図1Bがセルラーネットワーク130を用いている点を除いて,同様である。これらの図の両方の図では,1個の衛星100が少なくとも1つのスポットビーム110を地球に向けて放射していることが分かる。1つ以上の実施形態では,衛星100は,少なくとも1つの無線周波数(RF)アンテナを用いて,スポットビーム群110のうちの少なくとも1つのスポットビームを放射していることが分かる。ユーザ受信装置120は,信号を投射スポットビーム群110のうちの少なくとも1つの投射スポットビームから受信する。次に,ユーザ受信装置120は,当該ユーザ受信装置の地球上の位置の推定値を,投射スポットビーム群110のうちの1つの投射スポットビームの内部の当該ユーザ受信装置の位置に応じて算出する。
【0027】
図1A及び1Bでは,ユーザ受信装置120は,当該ユーザ受信装置120が少なくとも1つのスポットビームの内部に位置している当該少なくとも1つのスポットビームの位置を算出する。この算出を行うために,ユーザ受信装置120は,衛星100の位置に関する情報,衛星100の姿勢に関する情報,及び/又はスポットビーム群110の方向及び/又はパターンに関する情報を利用する。幾つかの実施形態では,ユーザ受信装置120が,スポットビーム群110の方向及び/又はパターンに関する情報を取得するために,ユーザ受信装置120は,ビーム幾何学形状データベース及び/又は内部軌道モデルを参照する。」

したがって,上記引用文献7には,「衛星からのスポットビームに基づいてユーザ受信装置の位置の推定値を算出する」という技術的事項が記載されていると認められる。

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。
ア 引用発明の「アクセス認証方法」は,「第1クライアント装置」が「ファイルの登録やファイルのアクセス制限の設定を行」い,「第2サーバ装置」が「第1クライアント装置からファイル登録やアクセス制限設定を受け付け」,「第2クライアント装置」が「登録されたファイルへのアクセスを行」い,「第1サーバ装置」が「第2クライアント装置から前記ファイルアクセスを受け付ける」「アクセス認証システム」において,「第2サーバ装置」が「個別認証ステップで前記第2クライアント装置のユーザが前記アクセス要求に係る登録ファイルへのアクセス権を有する旨の認証結果が得られた場合,前記暗号化された登録ファイルを復号」し,「復号された登録ファイルを前記第2クライアント装置に送信する」ことから,「アクセス認証システム」が「ファイル」という“データ”への“アクセス制御”を行う方法であるといえる。
そうすると,引用発明においても,ファイルへのアクセス制限に係る制御を改善しようとすることは明らかであるから,引用発明と本願発明1とは,“データアクセス制御を改善する方法”である点で一致するといえる。

イ 引用発明では,「第1サーバ装置が,前記アクセス制限の設定された登録ファイルへのアクセス要求が前記第2クライアント装置からあった場合,前記第2サーバ装置を介して,前記第2クライアント装置のユーザが前記登録ファイルへのアクセス権を有することの個別認証を要求する個別認証要求を,前記第3クライアント装置に行」い,「前記第2サーバ装置が,前記個別認証要求ステップによる個別認証要求を受けた前記第3クライアント装置から取得したユーザ情報を用いて個別認証を行う」ところ,「第2クライアント装置」の「ユーザ」から「アクセス制限の設定された登録ファイルへのアクセス要求」があると,「第2サーバ装置」は「個別認証」を行うために,当該「ユーザ」の「第3クライアント装置」から「ユーザ情報」を受信すると解されることから,引用発明の「ユーザ」,「ユーザ情報」は,それぞれ本願発明1の「要求者」,「コンテクスト情報」に相当するといえ,「第2サーバ装置」は“要求者からコンテクスト情報を受信する”といえる。
また,引用発明では,「第2サーバ装置」が「個別認証」を行うための「ユーザ情報」は,「携帯電話機において取得可能な情報である,電話番号,メールアドレス,住所情報,年齢,生体情報指紋等,端末固有識別情報(ICカードに保持された情報),画像情報,音声情報,位置情報(GPSで取得された情報),時間情報,任意の文字列,基本認証情報(ID及びパスワード)のいずれか,あるいはこれらの組み合わせとしてもよい」と特定されるところ,「ユーザ情報」としての「携帯電話機において取得可能な情報」の各々は,本願発明1の「コンテクスト基準」に相当するといえ,「ユーザ情報」の「携帯電話機において取得可能な情報」の各々が所定の“条件”を満たす場合に「個別認証」が成功することは明らかであるから,「第2サーバ装置」は“少なくとも一つのコンテクスト基準に対し少なくとも一つの条件を割り当てる”といえる。
そして,引用発明では,「第2サーバ装置」は「取得したユーザ情報を用いて個別認証を行う」ことから,“コンテクスト基準”に対し“条件”を割り当てる「第2サーバ装置」は“要求者からのコンテクスト情報が,少なくとも一つのコンテクスト基準に対する所定の条件を満たすかどうかを決定する”といえる。
一方,本願発明1では,「プロセッサにより,少なくとも一つのコンテクスト基準に対し少なくとも一つの閾値を割り当て」,「要求者からコンテクスト情報を受信」し,「前記要求者からの前記コンテクスト情報が,前記少なくとも一つのコンテクスト基準に対する前記少なくとも一つの閾値を満たすかどうかを決定する」ところ,「コンテクスト基準」の「閾値」は上位概念では“条件”といいうる事項であるから,“プロセッサにより,少なくとも一つのコンテクスト基準に対し少なくとも一つの条件を割り当て”,“前記要求者からの前記コンテクスト情報が,前記少なくとも一つのコンテクスト基準に対する所定の条件を満たすかどうかを決定する”といえる。
したがって,引用発明の「第1サーバ装置」,「第2サーバ装置」はいずれも“プロセッサ”といいうるものであるから,引用発明と本願発明1とは,後記する点で相違するものの,
“プロセッサにより,少なくとも一つのコンテクスト基準に対し少なくとも一つの条件を割り当てることと,
プロセッサにより,要求者からコンテクスト情報を受信することと,
プロセッサにより,前記要求者からの前記コンテクスト情報が,前記少なくとも一つのコンテクスト基準に対する所定の条件を満たすかどうかを決定することと,”
を含む点で共通するといえる。

ウ 上記イでの検討より,引用発明では,「第2サーバ装置」は「取得したユーザ情報を用いて個別認証を行う」ところ,「第2サーバ装置」は“要求者からのコンテクスト情報が,少なくとも一つのコンテクスト基準に対する所定の条件を満たすかどうかを決定する”といえるから,“要求者からのコンテクスト情報が,少なくとも一つのコンテクスト基準に対する少なくとも一つの条件のうちの少なくとも一つを満たす場合に,プロセッサにより,前記要求者を認証する”といえる。
一方,本願発明1では,「要求者からの前記コンテクスト情報が,前記少なくとも一つのコンテクスト基準に対する前記少なくとも一つの閾値のうちの少なくとも一つを満たす場合に,プロセッサにより,前記要求者を認証する」ところ,「コンテクスト基準」の「閾値」は上位概念では“条件”といいうる事項である。
そうすると,引用発明と本願発明1とは,後記する点で相違するものの,
“要求者からの前記コンテクスト情報が,前記少なくとも一つのコンテクスト基準に対する前記少なくとも一つの条件のうちの少なくとも一つを満たす場合に,プロセッサにより,前記要求者を認証すること”
を含む点で共通するといえる。

エ 引用発明では,「第2サーバ装置」は「第2クライアント装置のユーザが前記アクセス要求に係る登録ファイルへのアクセス権を有する旨の認証結果が得られた場合,前記暗号化された登録ファイルを復号」し,「復号された登録ファイルを前記第2クライアント装置に送信する」ところ,「復号された登録ファイル」を送信することにより,「第2クライアント装置」の「ユーザ」に「アクセス制限が設定された登録ファイル」への“アクセスを許可”しているとみることができる。
そうすると,引用発明と本願発明1とは,“要求者が認証される場合,プロセッサにより,前記要求者に前記データへのアクセスを許可すること”を含む点で一致するといえる。

オ 上記イでの検討より,引用発明では,「第2サーバ装置」が「個別認証」を行うための「ユーザ情報」として,「携帯電話機において取得可能な情報である,電話番号,メールアドレス,住所情報,年齢,生体情報指紋等,端末固有識別情報(ICカードに保持された情報),画像情報,音声情報,位置情報(GPSで取得された情報),時間情報,任意の文字列,基本認証情報(ID及びパスワード)のいずれか,あるいはこれらの組み合わせとしてもよい」と特定されるところ,引用発明の「ユーザ情報」は本願発明1の「コンテクスト情報」に相当するものであり,「ユーザ情報」として「位置情報(GPSで取得された情報)」を含むことから,“コンテクスト情報は,要求者がデータへアクセスしようとしているときの前記要求者の地理的位置を含”むといえる。
そうすると,引用発明と本願発明1とは,後記する点で相違するものの,
“前記コンテクスト情報は,前記要求者が前記データへアクセスしようとしているときの前記要求者の地理的位置を含”む点で共通するといえる。

したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「データアクセス制御を改善する方法であって,
プロセッサにより,少なくとも一つのコンテクスト基準に対し少なくとも一つの条件を割り当てることと,
プロセッサにより,要求者からコンテクスト情報を受信することと,
プロセッサにより,前記要求者からの前記コンテクスト情報が,前記少なくとも一つのコンテクスト基準に対する所定の条件を満たすかどうかを決定することと,
前記要求者からの前記コンテクスト情報が,前記少なくとも一つのコンテクスト基準に対する前記少なくとも一つの条件のうちの少なくとも一つを満たす場合に,プロセッサにより,前記要求者を認証することと,
前記要求者が認証される場合,プロセッサにより,前記要求者に前記データへのアクセスを許可することと,を含み,
前記コンテクスト情報は,前記要求者が前記データへアクセスしようとしているときの前記要求者の地理的位置を含む,方法。」

(相違点)
(相違点1)
コンテクスト基準に関し,本願発明1は,「プロセッサにより,少なくとも一つのコンテクスト基準に対し少なくとも一つの閾値を割り当て」,「前記コンテクスト情報が,前記少なくとも一つのコンテクスト基準に対する前記少なくとも一つの閾値を満たすかどうかを決定する」のに対して,
引用発明では,「第2サーバ装置」がコンテクスト基準(携帯電話機において取得可能な情報)の各々に対し満たすべき条件を有し,コンテクスト情報(ユーザ情報)が所定の条件を満たしているか決定するものの,コンテクスト基準に「閾値」を割り当て,コンテクスト情報がコンテクスト基準に対する「閾値」を満たすかどうか決定することは特定されていない点。

(相違点2)
要求者の認証に関し,本願発明1は,「要求者からの前記コンテクスト情報が,前記少なくとも一つのコンテクスト基準に対する前記少なくとも一つの閾値のうちの少なくとも一つを満たす場合に,プロセッサにより,前記要求者を認証する」のに対して,
引用発明では,コンテクスト情報(ユーザ情報)が所定の条件を満たす場合に要求者(ユーザ)を認証するものの,コンテクスト情報がコンテクスト基準に対する「閾値」を満たす場合に認証することは特定されていない点。

(相違点3)
コンテクスト情報に関し,本願発明1は,「要求者が前記データへアクセスしようとしているときの前記要求者の地理的位置,および,前記要求者が衛星から受信したスポットビームから抽出されたビームパラメータを含」むのに対して,
引用発明は,コンテクスト情報(ユーザ情報)は,「位置情報(GPSで取得された情報)」を含むものの,衛星から受信したスポットビームから抽出されたビームパラメータを含むことは特定されていない点。

(相違点4)
スポットビームベース認証に関し,本願発明1は,要求者の認証に「スポットビームベース認証を含み」,「要求者の地理的位置が前記スポットビームの外周で囲まれる領域内にある場合に,前記要求者を認証することを含む」のに対して,
引用発明は,コンテクスト情報(ユーザ情報)が所定の条件を満たす場合に要求者(ユーザ)を認証するものの,スポットビームベース認証を含むことは言及されていない点。

(相違点5)
スポットビームベース認証に係るコンテクスト基準の条件を満たすかどうかの決定に関し,本願発明1は,「ビームパラメータに基づいて,データベースから,前記スポットビームの中心の座標と,地球表面上での前記スポットビームの半径と,を探索するステップと,前記スポットビームの中心の座標と地球表面上での前記スポットビームの半径とにより特定され,前記スポットビームの外周で囲まれる領域内に,前記要求者の地理的位置があるか否かを決定するステップであって,前記少なくとも一つのコンテクスト基準は,前記要求者によるアクセスが許容される地理的領域を含み,前記少なくとも一つの閾値は,前記スポットビームの外周を含む,ステップと,を含」むのに対して,
引用発明は,要求者(ユーザ)の認証にスポットビームベース認証を含むことは言及されておらず,スポットビームのビームパラメータに基づき,コンテクスト情報がコンテクスト基準に対して条件を満たすかどうか決定することは特定されていない点。

(2)相違点についての判断
ア 相違点4,5について
事案に鑑みて,上記相違点4,5をまとめて先に検討すると,引用発明は,コンテクスト情報(ユーザ情報)が位置情報(GPSで取得された情報)を含み,コンテクスト情報が所定の条件を満たす場合にユーザを認証するものであるところ,要求者(ユーザ)の認証にスポットビームベース認証を含むことは言及されておらず,スポットビームのビームパラメータに基づき,コンテクスト情報がコンテクスト基準に対して条件を満たすかどうか決定することも特定されておらず,そのように設計変更することの動機付けもない。
そして,引用文献7に記載されるように,「衛星からのスポットビームに基づいてユーザ受信装置の位置の推定値を算出する」旨の技術が,本願の優先日前に当該技術分野において公知であったと認められるものの,スポットビームのビームパラメータに基づき,コンテクスト情報がコンテクスト基準に対して条件を満たすかどうか決定することにより,ユーザを認証するスポットビームベース認証に係る技術は,上記引用文献2-7には記載されておらず,本願の優先日前に当該技術分野において周知技術であったとまではいえず,当業者が適宜に選択し得た設計的事項であるとすることもできない。
そうすると,引用発明において,要求者の認証にスポットビームベース認証を含み,前記スポットビームの外周で囲まれる領域内に,前記要求者の地理的位置があるか否かの決定を,ビームパラメータに基づいて,データベースから,前記スポットビームの中心の座標と,地球表面上での前記スポットビームの半径とを探索し,前記スポットビームの中心の座標と地球表面上での前記スポットビームの半径とにより,前記スポットビームの外周で囲まれる領域を特定することにより行うこと,すなわち,本願発明1の上記相違点4,5に係る構成とすることは,当業者が適宜なし得たものであるとすることはできない。

イ まとめ
したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明,引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2-8について
本願発明2-8は本願発明1を減縮した発明であり,本願発明1の
「要求者を認証することは,スポットビームベース認証を含み」,「前記ビームパラメータに基づいて,データベースから,前記スポットビームの中心の座標と,地球表面上での前記スポットビームの半径と,を探索」し,「前記スポットビームの中心の座標と地球表面上での前記スポットビームの半径とにより特定され,前記スポットビームの外周で囲まれる領域内に,前記要求者の地理的位置があるか否かを決定する」ことによる「スポットビームベース認証」であって,「少なくとも一つのコンテクスト基準は,前記要求者によるアクセスが許容される地理的領域を含み,前記少なくとも一つの閾値は,前記スポットビームの外周を含む」ものであって,「前記要求者の地理的位置が前記スポットビームの外周で囲まれる領域内にある場合に,前記要求者を認証すること」(以下,「相違点4,5に係る構成」という。)
と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明9について
本願発明9は,本願発明1に対応する「データアクセス制御を改善するための装置」の発明であって,本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明であり,本願発明1の「相違点4,5に係る構成」と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4 本願発明10について
本願発明10は,本願発明1に対応する「データアクセス制御を改善するシステム」の発明であって,本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明であり,本願発明1の「相違点4,5に係る構成」と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は,請求項1-10について上記引用文献1-7に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
しかしながら,令和元年5月22日付け手続補正により補正された請求項1-10は,それぞれ「相違点4,5に係る構成」に対応する構成を有するものとなっており,
上記のとおり,本願発明1-10は,引用発明,引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。
したがって,原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
(特許法第36条第6項第2号について)
(1)当審では,請求項1-10の「データベースから,前記スポットビームの中心の座標と,地球表面上での前記スポットビームの半径と,を探索すること」が特定する事項が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが,令和元年5月22日付けの手続補正により,
「前記ビームパラメータに基づいて,データベースから,前記スポットビームの中心の座標と,地球表面上での前記スポットビームの半径と,を探索するステップ」
と補正された結果,この拒絶の理由は解消した。

(2)当審では,請求項1-10の「前記要求者の地理的位置が,前記スポットビームの外周で囲まれる領域内にあるか否かを決定すること」が特定する事項が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが,令和元年5月22日付けの手続補正により,
「前記スポットビームの中心の座標と地球表面上での前記スポットビームの半径とにより特定され,前記スポットビームの外周で囲まれる領域内に,前記要求者の地理的位置があるか否かを決定するステップであって,前記少なくとも一つのコンテクスト基準は,前記要求者によるアクセスが許容される地理的領域を含み,前記少なくとも一つの閾値は,前記スポットビームの外周を含む,ステップと,」
と補正された結果,この拒絶の理由は解消した。

(3)当審では,請求項1-8の「割り当てること」と,「受信すること」と,「決定すること」と,「前記要求者を認証すること」と,「前記要求者に前記データへのアクセスを許可すること」のステップそれぞれについて,主体が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが,令和元年5月22日付けの手続補正により,それぞれのステップの主体が「プロセッサにより,」と補正された結果,この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり,本願発明1-10は,当業者が引用発明,引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-09-26 
出願番号 特願2015-512661(P2015-512661)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 脇岡 剛圓道 浩史  
特許庁審判長 仲間 晃
特許庁審判官 辻本 泰隆
山崎 慎一
発明の名称 コンテクストベースの仮想データ境界  
代理人 園田・小林特許業務法人  
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