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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1355382
審判番号 不服2019-2012  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-02-13 
確定日 2019-09-19 
事件の表示 特願2016-100706号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月24日出願公開、特開2017-205349号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年5月19日の出願であって、平成30年4月12日付けで拒絶の理由が通知され、平成30年6月18日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成30年11月7日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成31年2月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成31年2月13日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成31年2月13日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
本件補正は特許請求の範囲の請求項1の記載の補正を含むものであり、本件補正前の平成30年6月18日にされた手続補正の特許請求の範囲の請求項1の記載と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ以下のとおりである(下線部は補正箇所を示す。また、A?H2については発明を分説するため当審で付与した。)。

(本件補正前)
「【請求項1】
A 遊技球が流下する経路として、遊技球の発射強度に応じた複数通りの経路を備えた遊技機であって、
B 遊技球の発射強度に関する演出が少なくとも実行可能な演出実行手段と、
C 前記演出実行手段を制御する制御手段と、を備え、
D 前記遊技球の発射強度に関する演出には、遊技状態が変化することを契機に行われる第1種演出と、遊技状態が変化することとは異なることを契機に行われる第2種演出と、が含まれ、
E 前記第1種演出は、所定事象の報知が行われているときに制限され、
F 前記第1種演出と前記第2種演出とは演出の態様が異なる
ことを特徴とする遊技機。」

(本件補正後)
「【請求項1】
A 遊技球が流下する経路として、遊技球の発射強度に応じた複数通りの経路を備えた遊技機であって、
B 遊技球の発射強度に関する演出が少なくとも実行可能な演出実行手段と、
C 前記演出実行手段を制御する制御手段と、を備え、
D 前記遊技球の発射強度に関する演出には、遊技状態が変化することを契機に行われる第1種演出と、遊技状態が変化することとは異なることを契機に行われる第2種演出と、が含まれ、
E 前記第1種演出は、所定事象の報知が行われているときに制限され、
F 前記第1種演出と前記第2種演出とは演出の態様が異なり、
G 前記複数通りの経路には、第1経路と、第2経路と、が存在し、特定の遊技状態では、遊技球が前記第1経路を流下するとき、前記第2経路を流下するときに比して、遊技者の利益が大きくなり易く、
H 前記特定の遊技状態では、
H1 前記第2経路を流下する遊技球が検知されると、前記第2種演出の待機状態に制御され、前記待機状態において、前記第2経路を流下する遊技球の検知数が所定数であるときの前記第2種演出の態様は第1態様であり、
H2 前記第2経路を流下する遊技球がさらに検知されたときの前記第2種演出の態様は第2態様である
ことを特徴とする遊技機。」

2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「複数通りの経路」について、「G 前記複数通りの経路には、第1経路と、第2経路と、が存在し、特定の遊技状態では、遊技球が前記第1経路を流下するとき、前記第2経路を流下するときに比して、遊技者の利益が大きくなり易」いとの限定を付加し、同発明特定事項である「第2種演出」について、「H 前記特定の遊技状態では、H1 前記第2経路を流下する遊技球が検知されると、前記第2種演出の待機状態に制御され、前記待機状態において、前記第2経路を流下する遊技球の検知数が所定数であるときの前記第2種演出の態様は第1態様であり、H2 前記第2経路を流下する遊技球がさらに検知されたときの前記第2種演出の態様は第2態様である」との限定を付加する補正を含むものである。
そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0042】、【0112】、【0114】、【0183】及び図10の記載に基づいており、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

そこで、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、前記1(本件補正後)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献に記載された事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2012-176070号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0014】
以下、本発明を具体化したパチンコ遊技機について図1?図9に従って説明する。
図1には、パチンコ遊技機10が略示されており、パチンコ遊技機10の機体の外郭をなす外枠11の開口前面側には、各種の遊技用構成部材をセットする縦長方形の中枠12が開放及び着脱自在に組み付けられているとともに、中枠12の前面側には前枠13が開閉及び着脱自在に組み付けられている。前枠13は、図1に示すようにパチンコ遊技機10を機正面側から見た場合において、中枠12に重なるように組み付けられている。前枠13は、遊技球を貯留可能な上皿14を一体成形した構成とされているとともに、裏面側には、機内部に配置された遊技盤YBを保護するガラス支持枠が組み付けられている。また、中枠12の前面側であって前枠13の下部には、上皿14から溢れ出た遊技球を貯留する下皿15が装着されているとともに、下皿15の右方には、遊技球を遊技盤YBに発射させる際に遊技者によって回動操作される遊技球発射用の発射ハンドル16が装着されている。また、パチンコ遊技機10には、各種音声を出力して音声演出を行う複数のスピーカSPが配置されている。」

「【0035】
したがって、本実施形態において、遊技者は、発射ハンドル16の遊技球の発射強度を調整することで各始動入賞口26,27へ遊技球を打ち分けることができる。具体的に遊技者は、遊技球が左流路を流下する発射強度で発射ハンドル16を操作することで、第1始動入賞口26、第2始動入賞口27、又は大入賞口30へと遊技球を向かわせ得る。また、遊技者は、遊技球が右流路を流下する発射強度で発射ハンドル16を操作することで、第2始動入賞口27又は大入賞口30へと遊技球を向かわせ得る。この場合に遊技者は、第2始動入賞口27の開閉羽根28を開動作させる契機を付与するゲートGTにも遊技球を向かわせ得る。本実施形態では、常には、左流路から第1始動入賞口26を狙って遊技球を左打ちする一方で、大当り遊技中や変短状態が付与されているときには、発射ハンドル16の発射強度を変更して遊技球を右打ちする仕様となっている。そして、本実施形態では、ゲートGT及び第2始動入賞口27が演出表示装置20の右方に配設されているため、一度、大当り遊技を生起させたのであれば、大当り遊技中の発射強度を変更しなくても第2始動入賞口27を狙うことができるため、図柄変動ゲームの始動条件を獲得させることができる。」

「【0052】
サブ統括制御基板41は、主制御基板40が出力した制御信号(制御コマンド)に基づき、演出表示制御基板42を制御する。また、演出表示制御基板42は、主制御基板40とサブ統括制御基板41が出力した制御信号(制御コマンド)に基づき、演出表示装置20の表示態様(図柄、背景、文字などの表示画像など)を制御する。また、音声制御基板43は、主制御基板40とサブ統括制御基板41が出力した制御信号(制御コマンド)に基づき、スピーカSPの音声出力態様(音声出力のタイミングなど)を制御する。また、発射制御基板44は、遊技者によって発射ハンドル16が操作されたことを契機に、遊技盤YBの遊技領域に発射される遊技球の発射を制御する。」

「【0056】
また、主制御用ROM40bには、複数種類の変動パターンが記憶されている。変動パターンは、図柄変動ゲームが開始してから図柄変動ゲームが終了するまでの間の演出(表示演出、発光演出、音声演出)のベースとなるパターンであって、図柄変動ゲームの変動内容(演出内容)及び変動時間(演出時間)を特定し得る。本実施形態において、複数種類の変動パターンは、大当り変動用の変動パターン、はずれリーチ変動用の変動パターン、及びはずれ変動用の変動パターンに分類できる。大当り変動は、大当り抽選に当選した場合に行われる変動である。そして、大当り変動では、特別図柄による図柄変動ゲームにおいて最終的に大当り図柄を確定停止表示させる。一方、大当り変動では、飾り図柄による図柄変動ゲームにおいて、リーチ演出を経て、最終的に大当り図柄を確定停止表示させる。はずれリーチ変動は、大当り抽選に当選せずに、リーチ抽選に当選した場合に行われ、特別図柄による図柄変動ゲームにおいて最終的にはずれ図柄を確定停止表示させる。一方、はずれリーチ変動では、飾り図柄による図柄変動ゲームにおいて、リーチ演出を経て、最終的にはずれ図柄を確定停止表示させる。はずれ変動は、大当り抽選及びリーチ抽選の何れにも当選しなかった場合に行われ、特別図柄による図柄変動ゲームにおいて最終的にはずれ図柄を確定停止表示させる。一方、はずれ変動では、飾り図柄による図柄変動ゲームにおいて、リーチ演出を経ないで、最終的にはずれ図柄を確定停止表示させる。なお、特別図柄による図柄変動ゲームでは、特別図柄の変動が開始されると、リーチ演出を行うことなく、変動時間の経過時まで特別図柄の変動が継続される。そして、大当り変動用、はずれリーチ変動用及びはずれ変動用の変動パターンは、それぞれ複数種類あり、何れかが選択される。」

「【0101】
このように、第1図柄変動ゲームよりも第2図柄変動ゲームの方が、大当り抽選に当選した場合に付与される大当りの種類が有利であるため、非変短状態中においても第2始動入賞口27を狙って遊技球を発射させることが考えられる。ところが、非変短状態中に第2始動入賞口27を狙っても、開閉羽根28の単位時間あたりの合計開放時間が変短状態時に比して短いため、結果的に第2始動入賞口27に遊技球を入球させ難く、その遊技球は図柄変動ゲームの始動条件すら付与しないことになる。したがって、非変短状態中は、ゲートGT及び第2始動入賞口27よりも第1始動入賞口26を狙った方が、遊技者にとって有利な特典を獲得し得る。つまり、本実施形態のパチンコ遊技機10では、非変短状態時の始動入賞口として第1始動入賞口26が対応する一方で、変短状態時の始動入賞口としてゲートGT及び第2始動入賞口27が対応するとも言える。」

「【0103】
以下、推奨報知演出について図7に従って詳しく説明する。
推奨報知演出は、演出表示装置20で行われるようになっており、右打ち推奨報知演出と左打ち推奨報知演出に大別される。また、左打ち推奨報知演出は、遊技者の操作を必要とする第1の左打ち推奨報知演出と、遊技者の操作を必要としない第2の左打ち推奨報知演出(対象報知演出)とに分類される。具体的に説明すると、第1の左打ち推奨報知演出は、大当り遊技中を除く非変短状態中にゲートGTを遊技球が通過して遊技球が検知された場合、1球目の検知では行われず、1球目の検知から所定時間(実施形態では5秒)内に、再度、ゲートGTを新たな遊技球が通過した際に行われるようになっている。そして、左打ち推奨報知演出では、「左打ちして下さい」の文字が画像表示部GHの上部に表示され(図7(a))、第1始動入賞口26を狙うことが推奨される。また、文字が画像表示部GHの上部に表示されるため、図柄変動ゲームと並行して左打ち推奨報知演出が実行されることになる。つまり、推奨報知演出は、通常の遊技演出と並行して行われるため、実行中の図柄変動ゲームを中断して推奨報知演出が実行されるようなことはない。
【0104】
その一方で、第2の左打ち推奨報知演出は、ゲートGTでの遊技球の検知を必要とせず、大当り遊技終了後、予め定めた回数の図柄変動ゲームが実行されたことにより変短状態が終了して非変短状態となったことを契機に行われるようになっている。なお、第2の左打ち推奨報知演出では、現在の遊技状態(非変短状態)と対応関係にある第1始動入賞口26が遊技者に報知されるようになっており、第1の左打ち推奨報知演出と同じく、「左打ちして下さい」の文字が画像表示部GHに表示されるようになっている(図7(a)参照)。」

「【0116】
その一方で、音声制御用CPU43aは、第1の左打ち推奨報知演出の実行を指示する演出指示コマンドを入力すると、指示される推奨報知演出を実行させるようにスピーカSPを制御する。具体的には、スピーカSPから、「左打ちして下さい」という音声が複数回(実施形態では2回)出力される。なお、本実施形態では、第1の左打ち推奨報知演出の実行を指示する演出指示コマンドのみ、演出表示制御基板42及び音声制御基板43に出力されるようになっている。このため、右打ち推奨報知演出及び第2の左打ち推奨報知演出は、スピーカSPにて行われず、演出表示装置20のみで実行されるようになっている。本実施形態では、統括制御用CPU41a、表示制御用CPU42a、音声制御用CPU43aが、報知制御手段として機能する。また、演出表示装置20及びスピーカSPが報知手段として機能する。」

上記記載事項を総合すれば、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる(a?h1については本願補正発明のA?H1に対応させて付与した。)。

「a 遊技球が流下する流路として、遊技球の発射強度に応じた左流路と右流路(【0035】)を備えたパチンコ遊技機10(【0014】)であって、
b 左打ち推奨報知演出を行う演出表示装置20(【0103】)及びスピーカSP(【0116】)と、
c 前記演出表示装置20を制御する演出表示制御基板42及び前記スピーカSPを制御する音声制御基板43(【0052】)と、を備え、
d、h、h1 前記左打ち推奨報知演出には、大当り遊技終了後、予め定めた回数の図柄変動ゲームが実行されたことにより変短状態が終了して非変短状態となったことを契機に行われる第2の左打ち推奨報知演出(【0104】)と、大当り遊技中を除く非変短状態中にゲートGTを遊技球が通過して遊技球が検知された場合、1球目の検知では行われず、1球目の検知から所定時間内に、再度、ゲートGTを新たな遊技球が通過した際に行われる第1の左打ち推奨報知演出(【0103】)と、が含まれ
e 図柄変動ゲームと並行して左打ち推奨報知演出が実行され(【0103】)、大当り変動及びはずれリーチ変動では、飾り図柄による図柄変動ゲームにおいて、リーチ演出が行われ(【0056】)、
f、h、h1 前記第2の左打ち推奨報知演出及び前記第1の左打ち推奨報知演出のいずれも「左打ちして下さい」の文字が前記演出表示装置20に表示されるが(【0103】、【0104】)、前記第2の左打ち推奨報知演出はスピーカSPにて行われず、前記第1左打ち推奨報知演出のみスピーカSPから「左打ちして下さい」という音声が複数回出力され(【0116】)、
g 常には、前記左流路から第1始動入賞口26を狙って遊技球を左打ちする一方で、大当り遊技中や変短状態が付与されているときには、発射ハンドル16の発射強度を遊技球が右流路を流下する発射強度に変更して遊技球を右打ちする仕様となっており(【0035】)、非変短状態中は、ゲートGT及び第2始動入賞口27よりも第1始動入賞口26を狙った方が、遊技者にとって有利な特典を獲得し得る(【0101】)
パチンコ遊技機10。」

イ 本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2016-19557号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態を詳細に説明する。図1は、本実施の形態におけるパチンコ遊技機の正面図であり、主要部材の配置レイアウトを示す。パチンコ遊技機1は、大別して、遊技盤面を構成する遊技盤と、遊技盤を支持固定する遊技機用枠3とから構成されている。遊技盤には、ガイドレールによって囲まれた、略円形状の遊技領域2が形成されている。この遊技領域2には、遊技媒体としての遊技球が、所定の打球発射装置から発射されて打ち込まれる。」

「【0033】
左遊技領域2Aや右遊技領域2Bにおける普通入賞球装置6Aや普通可変入賞球装置6B等の配置により、第1遊技領域である左遊技領域2Aへと誘導された遊技球は、第2遊技領域である右遊技領域2Bに設けられた通過ゲート41を通過したり、普通可変入賞球装置6Bが形成する第2始動入賞口を通過したりすることが不可能又は困難である。加えて、第2遊技領域である右遊技領域2Bへと誘導された遊技球は、第1遊技領域である左遊技領域2Aに設けられた普通入賞球装置6Aが形成する第1始動入賞口を通過することが不可能又は困難である。」

「【0234】
演出制御基板12では、演出制御用CPU120が、図19に示す演出制御プロセス処理において、通常遊技状態にて(ステップS132;NO)、大当り遊技状態に制御されることが示唆されていないときに(ステップS133;NO)、図26(A)?(B)に示すように遊技球が通過ゲート41を通過し、その通過回数が例えば2回といった所定の上限値に達した場合(ステップS154;YES)、図26(B)に示すように左打ち報知演出処理として、「ハンドルを左に戻してね」等のメッセージを画像表示装置5の画面上に表示させることや、音声制御基板13に対する指令の出力によりスピーカ8L、8Rから「ハンドルを左に戻してね」等の音声を出力することによって、遊技球を左遊技領域2Aに発射すべきことを遊技者に報知する(ステップS156)。
【0235】
このように左打ち報知演出処理を行った後に(ステップS155;YES)、変動パターン指定コマンドを受信した回数が、例えば5回といった所定の上限値に達する前に(ステップS161)、即ち、図26(C)?(E)に示すように飾り図柄の可変表示が5回実行されるよりも前に、図26(D)?(E)に示すように遊技球が通過ゲート41を通過し、その通過回数が例えば2回といった所定の上限値に達した場合(ステップS154;YES)、演出制御用CPU120は、図26(E)に示すように左打ち再報知演出処理として、「ハンドルを左に戻してね」等のメッセージを画像表示装置5の画面上に、左打ち報知演出処理のときよりも大きなフォントサイズにて表示させることや、音声制御基板13に対する指令の出力によりスピーカ8L、8Rから「ハンドルを左に戻してね」等の音声を、左打ち報知演出処理のときよりも大音量にて出力することによって、遊技球を左遊技領域2Aに発射すべきことを遊技者に再報知する(ステップS159)。」

「【0258】
以上説明したように、本発明の遊技機は、遊技領域(例えば、遊技領域2等)に遊技媒体(例えば、遊技球等)を発射可能な遊技機(例えば、パチンコ遊技機1等)であって、前記遊技領域は第1経路(例えば、左遊技領域2A等)と第2経路(例えば、右遊技領域2A等)とを含み、第1遊技状態(例えば、特別可変入賞球装置7に形成された大入賞口が閉鎖状態となる通常遊技状態等)と第2遊技状態(例えば、特別可変入賞球装置7に形成された大入賞口が開放状態となる大当り遊技状態等)とに制御可能であり、前記第1遊技状態に制御されているときには、前記第1経路に遊技媒体を発射する方が有利であり(例えば、特別可変入賞球装置7に形成された大入賞口が閉鎖状態となっているため、第1経路に設けられた普通入賞球装置6Aが形成する第1始動入賞口に向けて遊技球を発射する方が有利であること等)、前記第2遊技状態に制御されているときには、前記第2経路に遊技媒体を発射する方が有利であり(例えば、特別可変入賞球装置7に形成された大入賞口が開放状態となっているため、大入賞口に向けて遊技球を発射する方が有利であること等)、前記第1遊技状態に制御されているとき(例えば、演出制御用CPU120がステップS132にて大当り遊技状態フラグがオンである、即ち、パチンコ遊技機1における遊技状態が大当り状態であると判定したとき等)に前記第2経路への遊技媒体の発射を検出したこと(例えば、演出制御用CPU120がステップS131にてゲート通過指定コマンド受信フラグがオンである、即ち、右遊技領域2Bへの遊技球の発射が検出されていると判定したこと等)に基づいて報知を行う(例えば、演出制御用CPU120がステップS156にて左打ち報知演出処理として、「ハンドルを左に戻してね」等のメッセージを画像表示装置5の画面上に表示させることや、音声制御基板13に対する指令の出力によりスピーカ8L、8Rから「ハンドルを左に戻してね」等の音声を出力することによって、遊技球を左遊技領域2Aに発射すべきことを遊技者に報知すること等)一方で、前記第1遊技状態に制御されているときに前記第2遊技状態に制御されることを示唆した後は(例えば、演出制御用CPU120がステップS527にて大当り用楽曲の再生を開始した後等)、前記第2経路への遊技媒体の発射を検出しても報知を制限する(例えば、演出制御用CPU120がステップS133にて大当り示唆済みフラグがオンである、即ち、大当り遊技状態に制御されることが既に示唆されていると判定し、ゲートスイッチ検出カウント値が1加算されないことにより、ステップS154にてゲートスイッチ検出カウント値が所定の上限値とはならないことから、左打ち報知処理演出が実行されないこと等)。」

「【0262】
(3)また、上記(1)又は(2)の遊技機において、前記第1遊技状態に制御されているときに、前記第2経路への遊技媒体の発射を検出したことに基づいて前記報知を実行した後、特定期間内に(例えば、演出制御用CPU120がステップS161にて変動パターン指定コマンドを受信した回数が、例えば5回といった所定の上限値に達する前である、即ち、飾り図柄の可変表示が5回実行されるよりも前であると判定すること等)前記第2経路への遊技媒体の発射を再度検出したときには、前記報知よりも認識し易い態様で報知を行う(例えば、演出制御用CPU120がステップS159にて左打ち再報知演出処理として、「ハンドルを左に戻してね」等のメッセージを画像表示装置5の画面上に、左打ち報知演出処理のときよりも大きなフォントサイズにて表示させることや、音声制御基板13に対する指令の出力によりスピーカ8L、8Rから「ハンドルを左に戻してね」等の音声を、左打ち報知演出処理のときよりも大音量にて出力することによって、遊技球を左遊技領域2Aに発射すべきことを遊技者に報知すること等)ようにしてもよい。
【0263】
これにより、効果的に報知を行うことができる。」

上記記載事項を総合すれば、引用文献2には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる(h?h2については本願補正発明のH?H2に対応させて付与した。)。

「h 通常遊技状態にて、大当り遊技状態に制御されることが示唆されていないときに、
h1 遊技球が右遊技領域2Bに設けられた通過ゲート41を通過し、その通過回数が例えば2回といった所定の上限値に達した場合、左打ち報知演出処理として、「ハンドルを左に戻してね」等のメッセージを画像表示装置5の画面上に表示させることや、音声制御基板13に対する指令の出力によりスピーカ8L、8Rから「ハンドルを左に戻してね」等の音声を出力することによって、遊技球を左遊技領域2Aに発射すべきことを遊技者に報知し(【0033】、【0234】)、
h2 左打ち報知演出処理を行った後に、変動パターン指定コマンドを受信した回数が、例えば5回といった所定の上限値に達する前に、遊技球が右遊技領域2Bに設けられた通過ゲート41を通過し、その通過回数が例えば2回といった所定の上限値に達した場合、左打ち再報知演出処理として、「ハンドルを左に戻してね」等のメッセージを画像表示装置5の画面上に、左打ち報知演出処理のときよりも大きなフォントサイズにて表示させることや、音声制御基板13に対する指令の出力によりスピーカ8L、8Rから「ハンドルを左に戻してね」等の音声を、左打ち報知演出処理のときよりも大音量にて出力することによって、遊技球を左遊技領域2Aに発射すべきことを遊技者に再報知する(【0033】、【0235】)
パチンコ遊技機1(【0020】)。」

(3)対比・判断
ア 対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。なお、見出し(a)?(h、h1)は、本願補正発明のA?H、H1に対応させている。

(a)引用発明1の「a 遊技球が流下する流路として、遊技球の発射強度に応じた左流路と右流路を備えたパチンコ遊技機10」は、左流路と右流路が複数通りの経路といえるから、本願補正発明の「A 遊技球が流下する経路として、遊技球の発射強度に応じた複数通りの経路を備えた遊技機」に相当する。

(b)引用発明1において、「左打ち推奨報知演出」が遊技球の発射強度に関する演出であることは明らかである。
したがって、引用発明1の「b 左打ち推奨報知演出を行う演出表示装置20及びスピーカSP」は、本願補正発明の「B 遊技球の発射強度に関する演出が少なくとも実行可能な演出実行手段」に相当する。

(c)引用発明1の「c 前記演出表示装置20を制御する演出表示制御基板42及び前記スピーカSPを制御する音声制御基板43」は、本願補正発明の「C 前記演出実行手段を制御する制御手段」に相当する。

(d)引用発明1の「大当り遊技終了後、予め定めた回数の図柄変動ゲームが実行されたことにより変短状態が終了して非変短状態となったことを契機に行われる第2の左打ち推奨報知演出」及び「大当り遊技中を除く非変短状態中にゲートGTを遊技球が通過して遊技球が検知された場合、1球目の検知では行われず、1球目の検知から所定時間内に、再度、ゲートGTを新たな遊技球が通過した際に行われる第1の左打ち推奨報知演出」は、それぞれ、本願補正発明の「遊技状態が変化することを契機に行われる第1種演出」及び「遊技状態が変化することとは異なることを契機に行われる第2種演出」に相当する。
したがって、引用発明1の「d、h、h1 前記左打ち推奨報知演出には、大当り遊技終了後、予め定めた回数の図柄変動ゲームが実行されたことにより変短状態が終了して非変短状態となったことを契機に行われる第2の左打ち推奨報知演出と、大当り遊技中を除く非変短状態中にゲートGTを遊技球が通過して遊技球が検知された場合、1球目の検知では行われず、1球目の検知から所定時間内に、再度、ゲートGTを新たな遊技球が通過した際に行われる第1の左打ち推奨報知演出と、が含まれ」ることは、本願補正発明の「D 前記遊技球の発射強度に関する演出には、遊技状態が変化することを契機に行われる第1種演出と、遊技状態が変化することとは異なることを契機に行われる第2種演出と、が含まれ」ることに相当する。

(f)引用発明1の「f、h、h1 前記第2の左打ち推奨報知演出及び前記第1の左打ち推奨報知演出のいずれも「左打ちして下さい」の文字が前記演出表示装置20に表示されるが、前記第2の左打ち推奨報知演出はスピーカSPにて行われず、前記第1左打ち推奨報知演出のみスピーカSPから「左打ちして下さい」という音声が複数回出力され」ることは、スピーカSPによる推奨報知演出の実行の有無により演出の態様が異なるといえるから、本願補正発明の「F 前記第1種演出と前記第2種演出とは演出の態様が異な」ることに相当する。

(g)引用発明1の「左流路」及び「右流路」は、それぞれ、本願補正発明の「第1経路」及び「第2経路」に相当する。
また、引用発明1の「常には」及び「非変短状態」は、本願補正発明の「特定の遊技状態」に相当する。
したがって、引用発明1の「g 常には、前記左流路から第1始動入賞口26を狙って遊技球を左打ちする一方で、大当り遊技中や変短状態が付与されているときには、発射ハンドル16の発射強度を遊技球が右流路を流下する発射強度に変更して遊技球を右打ちする仕様となっており、非変短状態中は、ゲートGT及び第2始動入賞口27よりも第1始動入賞口26を狙った方が、遊技者にとって有利な特典を獲得し得る」ことは、本願補正発明の「G 前記複数通りの経路には、第1経路と、第2経路と、が存在し、特定の遊技状態では、遊技球が前記第1経路を流下するとき、前記第2経路を流下するときに比して、遊技者の利益が大きくなり易」いことに相当する。

(h、h1)引用発明1の構成d、h、h1の「大当り遊技中を除く非変短状態中」及び「ゲートGTを遊技球が通過して遊技球が検知された場合、1球目の検知では行われ」ないことは、本願補正発明の「H 前記特定の遊技状態」及び「H1 前記第2経路を流下する遊技球が検知されると、前記第2種演出の待機状態に制御され」ることに相当する。
また、引用発明1の構成d、h、h1の「1球目の検知から所定時間内に、再度、ゲートGTを新たな遊技球が通過した際に行われる第1の左打ち推奨報知演出」が構成f、h、h1の「「左打ちして下さい」の文字が前記演出表示装置20に表示され」、「スピーカSPから「左打ちして下さい」という音声が複数回出力され」て行われることは、本願補正発明の構成H1の「前記待機状態において、前記第2経路を流下する遊技球の検知数が所定数であるときの前記第2種演出の態様は第1態様であ」ることに相当する。
したがって、引用発明1の構成d、h、h1の「大当り遊技中を除く非変短状態中にゲートGTを遊技球が通過して遊技球が検知された場合、1球目の検知では行われず、1球目の検知から所定時間内に、再度、ゲートGTを新たな遊技球が通過した際に行われる第1の左打ち推奨報知演出」が、構成f、h、h1の「「左打ちして下さい」の文字が前記演出表示装置20に表示され」、「スピーカSPから「左打ちして下さい」という音声が複数回出力され」て行われることと、本願補正発明の「H 前記特定の遊技状態では、H1 前記第2経路を流下する遊技球が検知されると、前記第2種演出の待機状態に制御され、前記待機状態において、前記第2経路を流下する遊技球の検知数が所定数であるときの前記第2種演出の態様は第1態様であり、H2 前記第2経路を流下する遊技球がさらに検知されたときの前記第2種演出の態様は第2態様である」こととは、「H 前記特定の遊技状態では、H1 前記第2経路を流下する遊技球が検知されると、前記第2種演出の待機状態に制御され、前記待機状態において、前記第2経路を流下する遊技球の検知数が所定数であるときの前記第2種演出の態様は第1態様であ」る点で共通する。

してみると、本願補正発明と引用発明1とは、
「A 遊技球が流下する経路として、遊技球の発射強度に応じた複数通りの経路を備えた遊技機であって、
B 遊技球の発射強度に関する演出が少なくとも実行可能な演出実行手段と、
C 前記演出実行手段を制御する制御手段と、を備え、
D 前記遊技球の発射強度に関する演出には、遊技状態が変化することを契機に行われる第1種演出と、遊技状態が変化することとは異なることを契機に行われる第2種演出と、が含まれ、
F 前記第1種演出と前記第2種演出とは演出の態様が異なり、
G 前記複数通りの経路には、第1経路と、第2経路と、が存在し、特定の遊技状態では、遊技球が前記第1経路を流下するとき、前記第2経路を流下するときに比して、遊技者の利益が大きくなり易く、
H 前記特定の遊技状態では、
H1 前記第2経路を流下する遊技球が検知されると、前記第2種演出の待機状態に制御され、前記待機状態において、前記第2経路を流下する遊技球の検知数が所定数であるときの前記第2種演出の態様は第1態様である
遊技機。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
本願補正発明では「E 前記第1種演出は、所定事象の報知が行われているときに制限され」るのに対し、引用発明1では「第2の左打ち推奨報知演出」(第1種演出)は、構成eの「リーチ演出」等の所定の事象の報知が行われているときに制限されることが開示されていない点。

(相違点2)
本願補正発明は「H2 前記第2経路を流下する遊技球がさらに検知されたときの前記第2種演出の態様は第2態様である」のに対し、引用発明1はそのような構成を有さない点。

イ 判断
(相違点1について)
パチンコ遊技機の技術分野において、左打ち推奨報知演出がリーチ演出や大当り予告演出等の所定の報知を邪魔することのないように、所定の事象の報知が行われているときに制限されることは、例えば、

(ア)原査定時に周知技術を示すために例示された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2016-77547号公報(下線は当審で付した。)

「【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態を詳細に説明する。図1は、本実施の形態におけるパチンコ遊技機の正面図であり、主要部材の配置レイアウトを示す。パチンコ遊技機(遊技機)1は、大別して、遊技盤面を構成する遊技盤(ゲージ盤)2と、遊技盤2を支持固定する遊技機用枠(台枠)3とから構成されている。遊技盤2には、ガイドレールによって囲まれた、ほぼ円形状の遊技領域が形成されている。この遊技領域には、遊技媒体としての遊技球が、所定の打球発射装置から発射されて打ち込まれる。」

「【0227】
このように、スーパーリーチのリーチ演出が実行される場合には、第1左打ち指示報知や第1右打ち指示報知の実行が制限される一方で、第2左打ち指示報知や第2右打ち指示報知は実行されるため、スーパーリーチのリーチ演出の妨げとなることなく、左遊技領域2Aや右遊技領域2Bに遊技球を発射すべき旨の指示、すなわち第2左打ち指示報知画像や第2右打ち指示報知画像52を表示することができる。なお、第1左打ち指示報知や第1右打ち指示報知の実行の制限は、スーパーリーチのリーチ演出の終了後、第1左打ち指示報知画像や第1右打ち指示報知画像51を表示する演出動作が再開されることにより、解除されればよい。」

(イ)原査定時に周知技術を示すために例示された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2013-106968号公報(下線は当審で付した。)

「【0024】
図示のパチンコ遊技機1は、矩形状の外枠4と、この外枠4の左右一側、たとえば左側のヒンジ2aを介して縦軸心廻りに開閉および着脱自在に枢着された前面枠2とを備えている。」

「【0174】
ただし、これらの確変状態および時短状態の各期間中において、リーチ変動R1、R2、R3などが、画像表示装置に予告演出画像が表示される予告演出a、b、cを伴って生起し、しかも当該予告演出a?cが遊技者の見たいと欲する所定の予告演出(図11の報知制御テーブルの報知禁止/中断欄の○印)の予告演出画像365(図16(c)参照)である場合がある。つまり所定の予告演出の予告演出画像365が発射誘導情報画像366と重なって表示画面360に現出する(図9中の斜線部K1?K3)ことがある。そこで、このような場合は、図16(c)のように、当該予告演出(所定の予告演出)a?bの予告演出画像365の表示を優先し、右打ち誘導情報「右へ→」の表示を禁止または中断する。そして、時短状態から通常遊技状態への切り替わり時点では、図16(d)のような左打ち誘導情報画像「左へ→」を表示する。」

「【0176】
また同様に、右打ちを終了して左打ち誘導情報の報知を行うタイミングで、特定演出(所定の予告演出)が行われる場合、たとえば図9中の時短状態から通常遊技状態への切り替わりに際して左打ち誘導情報の報知と重なって特定演出が発生したときは、その特定演出を優先し、左打ち誘導情報の報知を行わない等、発射誘導情報の報知を抑制する。抑制するとは、報知を禁止または中断して報知を行わないかまたは報知態様を異ならせることであり、たとえば予告演出画像に対して影響を与えないまたは影響の少ないように、発射誘導情報の報知画像を小さく表示し、あるいは報知画像を薄く表示し、あるいは報知画像の表示場所を画面内で変更して表示する等である。このとき音声や光ガイドなどによる発射誘導情報の報知についても、特定演出の音声や効果音あるいは光演出の方を優先し、発射誘導情報の音声等による報知は行わないようにしてもよい。」

(ウ)本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2012-24468号公報(下線は当審で付した。)

「【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳述する。図1?図12は本発明をパチンコ機に採用した一実施形態を例示している。図1において、遊技機本体1は、矩形状の外枠2と、この外枠2の左右一側、例えば左側のヒンジ3を介して縦軸心廻りに開閉及び着脱自在に枢着された内枠4とを備えている。」

「【0067】
受信した遊技状態コマンドが時短終了コマンドであっても(S13:Yes)、その時点で変動開始される演出図柄の変動パターンがリーチ変動パターンであれば(S18:Yes)、その図柄変動及び予告演出の表示が優先され、左打ち誘導情報の表示は抑制される(図12(d))。」

「【0069】
受信した遊技状態コマンドが潜伏確変開始コマンドであっても(S14:Yes)、その時点で変動開始される演出図柄の変動パターンがリーチ変動パターンであれば(S18:Yes)、その図柄変動及び予告演出の表示が優先され、左打ち誘導情報の表示は抑制される(図12(d))。」

「【0073】
一方、予め定められた発射誘導情報の出力終了時期が到来していない場合であっても (S31:No)、リーチ変動パターンによる演出図柄の変動が開始される場合には(S34:Yes)、その図柄変動及び予告演出の表示が優先され、その時点で発射誘導情報の表示が停止され(S32)、発射誘導情報出力中フラグがOFFに切り換えられるようになっている。」

「【0080】
また、発射誘導情報制御手段85は、第1,第2演出図柄がリーチ変動パターンによる変動表示中であることを条件に発射誘導情報の表示を抑制するように構成されているため、リーチ変動パターンによる変動表示中はその図柄変動及び予告演出が発射誘導情報によって邪魔されることがなく、図柄変動演出本来の演出効果を発揮させることができる。」

に記載されているように周知技術である。

そして、引用発明1において、「e 図柄変動ゲームと並行して左打ち推奨報知演出が実行され、大当り変動及びはずれリーチ変動では、飾り図柄による図柄変動ゲームにおいて、リーチ演出が行われ」ることから、第2の左打ち推奨報知演出と所定の事象の報知演出のタイミングが重なる場合に両者の演出をどのようにすべきかは引用発明1に内在する課題といえ、この課題解決のために、左打ち推奨報知演出がリーチ演出や大当り予告演出等の所定の事象の報知を邪魔することのないように、所定の事象の報知が行われているときに制限されるという上記周知技術を適用することに格別の困難性はなく、そのようにして、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。

(相違点2について)
引用発明2の「h 通常遊技状態にて、大当り遊技状態に制御されることが示唆されていないとき」は、本願補正発明の「H 前記特定の遊技状態」に相当する。
また、引用発明2の「h1 遊技球が右遊技領域2Bに設けられた通過ゲート41を通過し、その通過回数が例えば2回といった所定の上限値に達」するまでは、本願補正発明の「H1 前記第2経路を流下する遊技球が検知されると、前記第2種演出の待機状態に制御され」ることに相当する。
そして、引用発明2の構成h1の「その通過回数が例えば2回といった所定の上限値に達した場合、左打ち報知演出処理として、「ハンドルを左に戻してね」等のメッセージを画像表示装置5の画面上に表示させることや、音声制御基板13に対する指令の出力によりスピーカ8L、8Rから「ハンドルを左に戻してね」等の音声を出力することによって、遊技球を左遊技領域2Aに発射すべきことを遊技者に報知」することは、本願補正発明の構成H1の「前記待機状態において、前記第2経路を流下する遊技球の検知数が所定数であるときの前記第2種演出の態様は第1態様であ」ることに相当する。
さらに、引用発明2の「h2 左打ち報知演出処理を行った後に、変動パターン指定コマンドを受信した回数が、例えば5回といった所定の上限値に達する前に、遊技球が右遊技領域2Bに設けられた通過ゲート41を通過し、その通過回数が例えば2回といった所定の上限値に達した場合」は、本願補正発明の「H2 前記第2経路を流下する遊技球がさらに検知されたとき」に相当する。
そのうえ、引用発明2の構成h2の「左打ち再報知演出処理として、「ハンドルを左に戻してね」等のメッセージを画像表示装置5の画面上に、左打ち報知演出処理のときよりも大きなフォントサイズにて表示させることや、音声制御基板13に対する指令の出力によりスピーカ8L、8Rから「ハンドルを左に戻してね」等の音声を、左打ち報知演出処理のときよりも大音量にて出力することによって、遊技球を左遊技領域2Aに発射すべきことを遊技者に再報知する」ことは、本願補正発明の構成H2の「前記第2種演出の態様は第2態様である」ことに相当する。

そうすると、引用発明2の「h 通常遊技状態にて、大当り遊技状態に制御されることが示唆されていないときに、h1 遊技球が右遊技領域2Bに設けられた通過ゲート41を通過し、その通過回数が例えば2回といった所定の上限値に達した場合、左打ち報知演出処理として、「ハンドルを左に戻してね」等のメッセージを画像表示装置5の画面上に表示させることや、音声制御基板13に対する指令の出力によりスピーカ8L、8Rから「ハンドルを左に戻してね」等の音声を出力することによって、遊技球を左遊技領域2Aに発射すべきことを遊技者に報知し、h2 左打ち報知演出処理を行った後に、変動パターン指定コマンドを受信した回数が、例えば5回といった所定の上限値に達する前に、遊技球が右遊技領域2Bに設けられた通過ゲート41を通過し、その通過回数が例えば2回といった所定の上限値に達した場合、左打ち再報知演出処理として、「ハンドルを左に戻してね」等のメッセージを画像表示装置5の画面上に、左打ち報知演出処理のときよりも大きなフォントサイズにて表示させることや、音声制御基板13に対する指令の出力によりスピーカ8L、8Rから「ハンドルを左に戻してね」等の音声を、左打ち報知演出処理のときよりも大音量にて出力することによって、遊技球を左遊技領域2Aに発射すべきことを遊技者に再報知する」ことは、相違点2に係る本願補正発明の構成を含む「H 前記特定の遊技状態では、H1 前記第2経路を流下する遊技球が検知されると、前記第2種演出の待機状態に制御され、前記待機状態において、前記第2経路を流下する遊技球の検知数が所定数であるときの前記第2種演出の態様は第1態様であり、H2 前記第2経路を流下する遊技球がさらに検知されたときの前記第2種演出の態様は第2態様である」ことに相当する。

そして、引用発明1と引用発明2に接した当業者であれば、引用発明1の第1の左打ち推奨報知演出を引用発明2のような再報知を行う効果的な報知としようと想起することに格別の困難性はなく、例えば、引用発明1の構成d、h、h1の「大当り遊技中を除く非変短状態中にゲートGTを遊技球が通過して遊技球が検知された場合、1球目の検知では行われず、1球目の検知から所定時間内に、再度、ゲートGTを新たな遊技球が通過した際に行われる第1の左打ち推奨報知演出」を構成f、h、h1の「「左打ちして下さい」の文字が前記演出表示装置20に表示され」「スピーカSPから「左打ちして下さい」という音声が複数回出力され」るものとして実行した後に、引用発明2の構成h2を参照して、変動パターン指定コマンドを受信した回数が、例えば5回といった所定の上限値に達する前に、遊技球がゲートGTを通過し、その通過回数が例えば2回といった所定の上限値に達した場合、左打ち再報知演出処理として、「左打ちして下さい」等のメッセージを画面上に、より大きなフォントサイズにて表示させることや、スピーカSPから「左打ちして下さい」等の音声を、より大音量にて出力することによって、遊技球を左遊技領域に発射すべきことを遊技者に再報知するものとして、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。

なお、本願補正発明の「H2 前記第2経路を流下する遊技球がさらに検知されたとき」が、1回の検知のみと解することもできるので、その場合についてさらに検討すると、引用発明2の「h2 左打ち報知演出処理を行った後」の「通過回数が例えば2回といった所定の上限値」の「2回」は例示であるし、引用文献2の段落【0262】の「前記第2経路への遊技媒体の発射を再度検出したときには、前記報知よりも認識し易い態様で報知を行う」(下線は当審で付した。)との記載に基づけば、所定の上限値を1回とすることは、引用文献2に開示されているといえるか、あるいは、設計事項の範囲内ということができ、引用発明1に引用発明2を適用して、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明1、2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)審判請求書における請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、本願補正発明と引用発明1とは、本願補正発明が「G 前記複数通りの経路には、第1経路と、第2経路と、が存在し、特定の遊技状態では、遊技球が前記第1経路を流下するとき、前記第2経路を流下するときに比して、遊技者の利益が大きくなり易く」、「H 前記特定の遊技状態では、H1 前記第2経路を流下する遊技球が検知されると、前記第2種演出の待機状態に制御され、前記待機状態において、前記第2経路を流下する遊技球の検知数が所定数であるときの前記第2種演出の態様は第1態様であり、H2 前記第2経路を流下する遊技球がさらに検知されたときの前記第2種演出の態様は第2態様である」というように構成されている一方で、引用発明1がそのように構成されていない点で相違し、そして、本願補正発明は、「第2種演出を行うに際して、遊技者が煩わしく感じてしまうことを抑制しつつも、第2種演出の開始後、その演出の態様を、第2経路を流下する遊技球の検知に基づいて変化させ、第2種演出に対する遊技者の注目度を高めることができる」というように、本願補正発明の特徴的構成を具備しない引用文献1では奏し得ない、格別な作用と効果を奏する旨主張する。
しかしながら、本願補正発明の構成Gについては、上記(3)ア(g)で検討したように、引用発明1と一致する構成であるし、また、本願補正発明の構成H?H2については、上記(3)イ(相違点2について)で検討したとおり、引用発明1に引用発明2を適用して、当業者が容易になし得たものである。

(5)上申書における請求人の主張について
令和1年6月19日に提出された上申書において、請求人は、請求項1及び2に「前記第1種演出と前記第2種演出とは優先度が異なり」との構成を付加する補正案のように補正する用意があり、補正案における請求項1は、既に特許査定を受けた本願に関連する出願(特願2016-100708号)の請求項1の構成を全て含んでいる旨主張する。
しかしながら、引用発明1において、第2の左打ち推奨報知演出は表示のみであるのに対し、第1の左打ち推奨報知演出は表示+音声であること、引用文献1の段落【0136】の「第2の左打ち推奨報知演出は実行しなくても良い」との記載や、段落【0142】の「第1の左打ち推奨報知演出の実行中は、図柄変動ゲームや大当り遊技が開始されないような設定としても良い」との記載に基づけば、例えば、第1の左打ち推奨報知演出の実行中は他の音声演出を制限し、第2の左打ち推奨報知演出の実行中は他の音声演出を制限しないものとしたり、第1の左打ち推奨報知演出は必ず実行するが、第2の左打ち推奨報知演出は他の演出と重なるときは実行しないものとしたり、第1の左推奨報知演出の実行中は、図柄変動ゲームや大当り遊技が開始されないが、第2の左推奨報知演出の実行中は、図柄変動ゲームや大当り遊技が開始されるものとしたりするなどして、第1の左打ち推奨報知演出の優先度を第2の左打ち推奨報知演出の優先度より高くして両者の優先度を異なるものとすることは当業者が容易になし得たものである。
したがって、上記補正案のように補正しても、本願は特許を受けることができないから、さらなる通知をすべき特別な事情を見いだすことはできない。

(6)本件補正についてのむすび
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?2に係る発明は、平成30年6月18日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1の(本件補正前)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶理由
原査定の拒絶の理由の理由2は、
(進歩性)この出願の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、
特開2012-176070号公報(引用文献1)
特開2016-77547号公報(原査定時に周知技術を示す文献として例示されたもの)
特開2013-106968号公報(原査定時に周知技術を示す文献として例示されたもの)
特開2015-159866号公報(原査定時に周知技術を示す文献として例示されたもの)
というものである。

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記第2[理由]2(2)アに記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本願補正発明から、構成G及びH?H2を削除したものである。
そして、本願発明と引用発明とを、前記第2[理由]2(3)アに記載したのと同様に対比すると、両者は相違点1でのみ相違し、その余の点では一致する(先の相違点2は生じない。)。
そうすると、前記第2[理由]2(3)イ(相違点1について)で記載したように、相違点1に係る本願発明の構成は、引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易になし得たものであるから、本願発明は引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-07-16 
結審通知日 2019-07-23 
審決日 2019-08-06 
出願番号 特願2016-100706(P2016-100706)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 篠崎 正  
特許庁審判長 石井 哲
特許庁審判官 大谷 純
藤田 年彦
発明の名称 遊技機  
代理人 山本 実  
代理人 恩田 誠  
代理人 恩田 博宣  

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