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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1355423
審判番号 不服2018-9526  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-10 
確定日 2019-10-15 
事件の表示 特願2017- 26057「入力装置およびタッチパネルの制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月18日出願公開、特開2017- 84425、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)4月16日(優先権主張 平成23年6月10日)を国際出願日とする特願2013-519353号の一部を平成28年4月13日に新たな特許出願とした特願2016-80126号の一部を平成29年2月15日に新たな特許出願(特願2017-26057号)としたものであって、平成29年11月28日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年2月5日付けで手続補正がされ、平成30年4月4日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年7月10日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成30年4月4日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-10に係る発明は、以下の引用文献1、3-4に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2009-212719号公報
2.特開昭62-150477号公報
3.米国特許出願公開第2011/0115821号明細書
4.特開2010-277377号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって、請求項1の
「前記制御手段は、前記第2のモードにおいて、前記手袋を着用した手指による入力があると、前記タッチパネルと前記手指との接触位置の中心点から所定の間隔を半径とする円周形状のガイド表示を、前記表示手段に表示させる」
という発明特定事項を、
「前記制御手段は、前記第2のモードにおいて、前記手袋を着用した手指による入力があると、前記タッチパネルと前記手指との接触位置の中心点から、前記手袋を着用している手指の接触領域より大なる所定の間隔を半径とする円周形状のガイド表示を、前記表示手段に表示させる」
と変更することによって、請求項1に、「前記手袋を着用している手指の接触領域より大なる」所定の間隔であるという事項を追加する補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

当初明細書の段落【0018】には、次の記載がある。
「【0018】
図2は、本実施の形態にかかる入力装置において、タッチパネルの静電容量が変化した範囲を円で近似した場合の一例を示す図である。図2に示すように、素手または手袋を装着した指53でタッチパネル1に触れると、タッチパネルの所定の範囲の静電容量が変化する。素手または手袋を装着した指53とタッチパネル1とが接触する面は略円形であるので、接触面を円54で近似することができる。このとき、手袋装着の有無および手袋の厚さに対応した測定値として、この円54の半径rまたは直径を用いることができる。」、
また、当初明細書の段落【0071】-【0076】には、次の記載がある。
「【0071】
実施の形態4
次に、本発明の実施の形態4について説明する。図16は本実施の形態にかかる入力装置を示すブロック図である。本実施の形態にかかる入力装置では、制御手段40がガイド表示手段15(当審注:「ポインタ表示手段15」の誤記と認める。)を備えている点が、実施の形態1にかかる入力装置と異なる。これ以外は、実施の形態1にかかる入力装置と同様であるで、同一の構成要素には同一の符号を付し重複した説明は省略する。
【0072】
手袋を装着してタッチパネル1を操作した場合、手袋を装着している指の先端部分の面積が大きくなるため、表示手段2に表示されているアイコンが手袋で隠れてしまい操作性が低下するという問題がある。この問題を解決するために本実施の形態にかかる入力装置では、ポインタ表示手段15を用いて、タッチパネル1を操作する指の先端部分を中心としてポインタを表示している。
【0073】
図17A、図17Bは、本実施の形態にかかる入力装置のポインタを示す図である。図17Aはタッチパネル1と手袋を装着している指とが接触している場合を示し、図17Bはタッチパネル1と手袋を装着している指との距離が離れている場合を示している。
【0074】
図17Aに示すように、タッチパネル1と手袋を装着している指81とが接触している場合は、ポインタ表示手段15は、タッチパネル1と指または手袋との接触面の中心点(つまり、円で近似した場合の円82の中心点83)から所定の間隔を隔てたポインタ表示位置84を中心として、複数のポインタ86_1?86_3を表示する。なお、円82は、図2に示した円54に対応している。このように、ポインタ表示手段15を用いて、タッチパネル1を操作する指の先端部分(ポインタ表示位置84)を中心として、複数のポインタ86_1?86_3を表示することで、タッチパネルの操作性を向上させることができる。

・・・(中略)・・・

【0076】
なお、図17A、図17Bに示した例では、ポインタ表示位置84を中心として複数のポインタ86_1?86_3、87_1?87_3を表示している。しかし、ポインタの位置および形状は図17A、図17Bに示した場合に限定されることはなく、任意に決定することができる。また、上記ではポインタの数が複数である場合について説明したが、ポインタの数は単数であってもよい。例えば、実施の形態3にかかるガイド表示をポインタ表示位置84を中心として表示してもよい。」
ここで、図17Aを参照すると、上記段落【0076】に記載されるように、「指の先端部分を中心として」、「ガイド表示をポイント表示位置84を中心として表示」する場合、「接触位置の中心点」から、ガイド表示の中心となる指の先端部分の「ポイント表示位置84」までの間隔が、「前記手袋を着用している手指の接触領域より大なる」所定の間隔となることは、明らかであるといえる。
よって、「前記制御手段は、前記第2のモードにおいて、前記手袋を着用した手指による入力があると、前記タッチパネルと前記手指との接触位置の中心点から、前記手袋を着用している手指の接触領域より大なる所定の間隔を半径とする円周形状のガイド表示を、前記表示手段に表示させる」という事項は、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではなく、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはないといえる。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-10に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1-10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明10」という。)は、平成30年7月10日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
タッチパネルと、
前記タッチパネルと重畳するように設けられた表示手段と、
通常の手指による入力を受け付ける第1のモードと手袋を着用した手指による入力を受け付ける第2のモードとを切り替える切り替え手段と、
前記タッチパネルの静電容量の値を測定可能な測定手段と、
前記測定手段の測定結果に基づいて前記通常の手指による入力と前記手袋を着用した手指による入力とを判別する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記第2のモードにおいて、前記手袋を着用した手指による入力があると、前記タッチパネルと前記手指との接触位置の中心点から、前記手袋を着用している手指の接触領域より大なる所定の間隔を半径とする円周形状のガイド表示を、前記表示手段に表示させる、
入力装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第2のモードにおいては、前記タッチパネルの感度を前記第1のモードより高くする、請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記測定手段で測定された前記静電容量の値に応じて前記表示手段に表示されるアイコンの大きさを調整するアイコン表示調整手段を更に備える、請求項1または2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記アイコン表示調整手段は、前記タッチパネルの静電容量が変化した範囲に対応した第1の値が大きくなるにつれて前記表示手段に表示されるアイコンの大きさが大きくなるように、前記アイコンの大きさを調整する、請求項3に記載の入力装置。
【請求項5】
前記アイコン表示調整手段は、前記タッチパネルの静電容量が変化した範囲を円で近似した際の円の面積よりも前記アイコンの面積が大きくなるように、前記アイコンの大きさを調整する、請求項3に記載の入力装置。
【請求項6】
前記アイコン表示調整手段は、前記タッチパネルの静電容量の最大値に対応した第2の値が小さくなるにつれて前記表示手段に表示されるアイコンの大きさが大きくなるように、前記アイコンの大きさを調整する、請求項3に記載の入力装置。
【請求項7】
前記ガイド表示は、前記タッチパネルと当該タッチパネルに近接する手指との距離が離れるにつれて大きくなる、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項8】
前記タッチパネルと手指または手袋との接触面の中心点から所定の間隔を隔てたポインタ表示位置を中心としてポインタを表示するポインタ表示手段を更に備える、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項9】
前記ポインタ表示手段は、前記タッチパネルと当該タッチパネルに近接する手指との距離が離れるにつれて前記ポインタが前記ポインタ表示位置から離れるように表示する、請求項8に記載の入力装置。
【請求項10】
タッチパネルの静電容量の値を測定し、
前記静電容量の値に基づいて、通常の手指による入力と手袋を着用した手指による入力とを判別し、
前記判別結果に基づいて、前記通常の手指による入力を受け付ける第1のモードと前記手袋を着用した手指による入力を受け付ける第2のモードとを切り替え、
前記第2のモードにおいて、前記手袋を着用した手指による入力があると、前記タッチパネルと前記手指との接触位置の中心点から、前記手袋を着用している手指の接触領域より大なる所定の間隔を半径とする円周形状のガイド表示を、表示手段に表示させる、
タッチパネルの制御方法。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、以下の記載がある(下線は当審付与。以下同様。)。

(1) 段落【0016】-【0020】
「【0016】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
<デジタルカメラの構成>
図1(A)は本発明の一実施形態に係るデジタルカメラ10の正面側の構成を示す斜視図であり、図1(B)はその裏面図の構成を示す斜視図である。図2は、デジタルカメラ10の側面の構成を示す断面図である。図1および図2に示すように、デジタルカメラ10は、電子機器の一例を構成し、カメラ本体80と入力装置90とを備えている。カメラ本体80は、例えばマグネシウム合金やアルミニウム等の金属材料により矩形状に成形された筐体であり、カメラ本体80の上面80cにはシャッターボタン20、パワーボタン26が設けられる。カメラ本体80の正面80aの左端部にはその短手方向に沿って把持部22が設けられ、正面80aの右側にはレンズ18が設けられる。カメラ本体80の裏面80bには、液晶パネル等からなる表示部14が設けられる。
【0017】
入力装置90は、ユーザの摺動および押し込み操作による位置情報を検出する入力検出部66と、ユーザの指が接触したときの感度情報を検出する感度検出部72とを有している。入力検出部66と感度検出部72とはそれぞれ独立して別々に位置に設けられる。

・・・(中略)・・・

【0020】
感度検出部72は、感度検出センサ68と回路基板70とを有している。感度検出センサ68は、入力検出センサ62と同様に静電容量方式のセンサにより構成され、ユーザの指が感度検出センサ68の操作面を摺動および押し込み操作したときに生じる静電容量(感度情報)を検出する。この感度検出センサ68は、可撓性を有するシート状部材からなり、カメラ本体80の正面80aに形成された開口部76に取り付けられる。本例では、感度検出センサ68の表面がカメラ本体80から露出するようにして取り付けているが(図2参照)、カメラ本体80の筐体を介して取り付けるようにしても良い。」

(2) 段落【0025】-【0027】
「【0025】
入力検出部66は、図2に示した操作面を有するキートップ60を備え、操作体としてのユーザ30の指30aがキートップ60の操作面に接触したときの位置情報(静電容量)I1を検出する。また、入力検出部66は、入力された位置情報I1に基づいて位置信号S1を生成し、生成した位置信号S1を感度調整部50に供給する。
【0026】
感度検出部72は、ユーザ30の指30aがセンサに押し当てられたときに得られる感度情報(静電容量)I2を検出し、検出した感度情報I2に基づく感度信号S2を生成する。生成された感度信号S2はA/D変換部38に供給される。A/D変換部38は、感度検出部72から供給された感度信号S2をA/D変換して感度データD2を生成し、生成した感度データD2をCPU32に供給する。
【0027】
CPU32は、A/D変換部38から供給された感度データD2に基づいて入力検出部66から出力される位置信号S1の出力レベルを調整するか否かを判断する。そして、A/D変換部38から出力される感度データD2と所定の閾値とを比較し、入力検出部66の感度を調節するための調整データD3を生成し、生成した調整データD3を感度調整部50に供給する。例えば、CPU32は、ユーザが手袋を装着して操作を行う場合には、入力検出部66の感度が低くなるため、入力検出部66の感度が大きくなるような調整データD3を生成する。一方、ユーザが手袋操作後、素手で操作を行う場合には、入力検出部66の感度が小さくなるような(標準感度に戻るような)調整データD3を生成する。」

(3) 段落【0030】
「【0030】
表示部14は、入力検出部66によって入力された情報に基づく表示画面を表示する。表示部14はモニタ機能の他にファインダー等としての機能を有する。例えば、表示部14はCPU32からの制御情報(指令D)に基づいてズームイン、ズームアウト、再生/早送りモード、ボリューム(Vol)調整モード等のアイコンを表示する。」

(4) 段落【0062】-【0063】
「【0062】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
【0063】
例えば、上述した実施の形態では、デジタルカメラ10,100,200に本発明の感度を調整する感度調整部50、感度検出部72等を設けたが、これに限定されることはない。静電容量方式のセンサやタッチパネルを備えた電子機器であれば適用することができる。」

したがって、関連図面と技術常識に照らし、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「デジタルカメラ10は、カメラ本体80と入力装置90とを備え、
カメラ本体80の裏面80bには、液晶パネル等からなる表示部14が設けられ、
入力装置90は、ユーザの摺動および押し込み操作による位置情報を検出する入力検出部66と、ユーザの指が接触したときの感度情報を検出する感度検出部72とを有し、
感度検出部72は、感度検出センサ68と回路基板70とを有し、
感度検出センサ68は、静電容量方式のセンサにより構成され、ユーザの指が感度検出センサ68の操作面を摺動および押し込み操作したときに生じる静電容量(感度情報)を検出し、感度検出センサ68は、カメラ本体80の正面80aに形成された開口部76に取り付けられ、
感度検出部72は、ユーザ30の指30aがセンサに押し当てられたときに得られる感度情報(静電容量)I2を検出し、検出した感度情報I2に基づく感度信号S2を生成し、
A/D変換部38は、感度検出部72から供給された感度信号S2をA/D変換して感度データD2を生成し、
CPU32は、A/D変換部38から出力される感度データD2と所定の閾値とを比較し、入力検出部66の感度を調節するための調整データD3を生成し、生成した調整データD3を感度調整部50に供給し、
CPU32は、ユーザが手袋を装着して操作を行う場合には、入力検出部66の感度が低くなるため、入力検出部66の感度が大きくなるような調整データD3を生成する一方、ユーザが手袋操作後、素手で操作を行う場合には、入力検出部66の感度が小さくなるような(標準感度に戻るような)調整データD3を生成し、
表示部14は、入力検出部66によって入力された情報に基づく表示画面を表示し、表示部14はCPU32からの制御情報(指令D)に基づいてズームイン、ズームアウト、再生/早送りモード、ボリューム(Vol)調整モード等のアイコンを表示し、
デジタルカメラ10に、感度を調整する感度調整部50、感度検出部72等を設けたが、これに限定されることはなく、静電容量方式のタッチパネルを備えた電子機器であれば適用することができる、
入力装置90。」

2.引用文献2について
上記引用文献2(当審注:平成29年11月28日付け拒絶理由通知で引用されたが、原査定の拒絶の理由には引用されていない。)には、6ページ左上欄7-12行に、以下の記載がある。
「この操作は指の移動につれてカーソル10が指と短い距離を保ったまま移動するものであり、しかもカーソル10は指から離れているので指で隠されることはないから、極めて操作性が高い。目標点まで正確かつ要領良く到達できるので表示装置としての価値が高い。」

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、段落【0020】に、以下の記載がある。
「As a result, using only the finger FGR (or other objects) to approach or leave the screen, the user can adjust a size of the frame or the picture, which realizes the intuitive control, and enhances operating fun.」
(当審訳:
その結果、一本の指FGR(または他のオブジェクト)だけを用いて、画面に近づけたり離したりすることによって、ユーザはフレームや画像のサイズを調整することができ、これによって、直感的な制御が実現されて、操作の面白みが向上される。)

4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4には、段落【0090】、【0098】、【0116】に、以下の記載がある。
「【0090】
108は座標算出部であり、位置指示部材7がタッチパネル5に接触若しくは近接範囲71内に接近したことを接触検出部101又は近接検出部102が検出した場合、タッチパネル5上の位置指示部材7が接触した位置あるいは位置支持部材7からタッチパネル5に下ろした法線とタッチパネル5が交わる点及びその周囲近傍の位置座標を算出する。
より詳細には、座標算出部108は、上述した座標検出装置6(図2等を参照)から出力される、全ての検出電極に対する検出値に基づき、接触あるいは近接の状態を有意に検出した検出電極を抽出し、この抽出された検出電極に対応した位置情報を用いて、位置指示部材7が接近あるいは近接するタッチパネル(検出面)5上の平面座標値x,y(以降、単に「座標値」と呼称する)を算出する。」
「【0098】
このとき実施例1では、図4に示すように、タッチパネルシステム300の現在の設定状態である、描画色として設定されている色と同じ色の確認用マーカ201を表示する。尚、確認用マーカ201の表示位置は、座標算出部108(図3参照)によって算出されたタッチパネル5上の座標に対応する位置またはその近傍位置である。または、座標算出部108(図3参照)によって算出されたタッチパネル5上の座標に対応する位置またはその近傍位置とは異なる、予め規定された所定の位置に表示してもよい。」
「【0116】
更に、離間距離に応じて、確認用マーカ201の大きさを変えるようにしてもよい。例えば、離間距離が大きいほど確認用マーカ201のサイズを大きく、離間距離が小さいほどサイズを小さくする。こうすることで、使用者は離間距離を直感的に認識可能となり、更に使い勝手が向上する。」

第6 対比・判断
1.対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

(1) 引用発明の「カメラ本体80の正面80aに」設けられた「感度検出部72」は、「ユーザ30の指30aがセンサに押し当てられたときに得られる感度情報(静電容量)I2を検出し」ているから、本願発明1の「タッチパネル」と「タッチ部材」である点で共通するといえる。

(2) 引用発明の「カメラ本体80の裏面80bに」設けられた「表示部14」は、本願発明1の「前記タッチパネルと重畳するように設けられた表示手段」と、「表示手段」である点で共通するといえる。

(3) 引用発明の「入力検出部66の感度を調節するための調整データD3」が供給される「感度調整部50」は、「ユーザが手袋を装着して操作を行う場合には、入力検出部66の感度が低くなるため、入力検出部66の感度が大きくなるような調整データD3を生成する一方、ユーザが手袋操作後、素手で操作を行う場合には、入力検出部66の感度が小さくなるような(標準感度に戻るような)調整データD3を生成し」ているから、本願発明1の「通常の手指による入力を受け付ける第1のモードと手袋を着用した手指による入力を受け付ける第2のモードとを切り替える切り替え手段」に対応する。

(4) 引用発明の「感度検出部72」のうちの「感度検出センサ68」は、「感度検出センサ68は、静電容量方式のセンサにより構成され、ユーザの指が感度検出センサ68の操作面を摺動および押し込み操作したときに生じる静電容量(感度情報)を検出し」ているから、本願発明1の「前記タッチパネルの静電容量の値を測定可能な測定手段」と「前記タッチ部材の静電容量の値を測定可能な測定手段」である点で共通するといえる。

(5) 引用発明の「入力装置90」は、本願発明1の「入力装置」に対応する。

したがって、本願発明1と、引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「タッチ部材と、
表示手段と、
通常の手指による入力を受け付ける第1のモードと手袋を着用した手指による入力を受け付ける第2のモードとを切り替える切り替え手段と、
前記タッチ部材の静電容量の値を測定可能な測定手段と、
前記測定手段の測定結果に基づいて前記通常の手指による入力と前記手袋を着用した手指による入力とを判別する制御手段と、を有する、
入力装置。」

[相違点1]
本願発明1は、「タッチパネル」を備えており、「表示手段」は「前記タッチパネルと重畳するように設けられ」ているのに対して、引用発明は、「カメラ本体80の正面80aに」設けられた「感度検出部72」を備えており、「表示部14」は「カメラ本体80の裏面80bに」設けられるものであって、「前記タッチパネルと重畳するように設けられ」ることが特定されていない点。

[相違点2]
本願発明1では、「前記制御手段は、前記第2のモードにおいて、前記手袋を着用した手指による入力があると、前記タッチパネルと前記手指との接触位置の中心点から、前記手袋を着用している手指の接触領域より大なる所定の間隔を半径とする円周形状のガイド表示を、前記表示手段に表示させる」のに対して、引用発明では、「表示部14は、入力検出部66によって入力された情報に基づく表示画面を表示し、表示部14はCPU32からの制御情報(指令D)に基づいてズームイン、ズームアウト、再生/早送りモード、ボリューム(Vol)調整モード等のアイコンを表示」するものであって、所定の「ガイド表示」を表示させることが特定されていない点。

2.相違点についての判断
事案に鑑みて、「ガイド表示」に関連する、上記[相違点2]について先に検討する。

上記「第5」3.の引用文献3に記載されるとおり、表示部と指との距離に応じて、表示を拡大・縮小するという技術的事項は、本願優先日前において周知技術であったといえる。

上記「第5」4.の引用文献4に記載されるとおり、表示部と指との距離に応じて、円形の「確認用マーカ」の表示を拡大・縮小するという技術的事項は、本願優先日前において周知技術であったといえる。

しかし、引用文献3-4のいずれにも、相違点2に係る本願発明1の構成である「前記制御手段は、前記第2のモードにおいて、前記手袋を着用した手指による入力があると、前記タッチパネルと前記手指との接触位置の中心点から、前記手袋を着用している手指の接触領域より大なる所定の間隔を半径とする円周形状のガイド表示を、前記表示手段に表示させる」構成は記載されておらず、また、周知技術とも認められない。

また、引用発明の「感度検出部74」と「表示部14」とは、カメラ本体80の「正面80a」と「裏面80b」とにあるから、相違点2に係る本願発明1の構成における、「手指との接触位置の中心」から「所定の間隔を半径とする」「ガイド表示」を表示することの起因、動機付けも見出し難い。

なお、上記「第5」2.の引用文献2に記載されるとおり、カーソルが指で隠されないように、指と所定の距離だけずれた位置にカーソルを表示するという技術的事項は、本願優先日前において周知技術であったといえるが、引用文献2にも、相違点2に係る本願発明1の構成は記載されていない。

したがって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献3-4に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-9について
本願発明2-9も、本願発明1を減縮した発明であって、本願発明1の上記[相違点2]に係る、「ガイド表示」の具体的構成と同一の構成を備えるものである。
よって、本願発明1と同じ理由により、本願発明2-9も、当業者であっても、引用発明、引用文献3-4に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明10について
本願発明10は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1の上記[相違点2]の「ガイド表示」の具体的構成に対応する構成を備えるものである。
よって、本願発明1と同じ理由により、本願発明10も、当業者であっても、引用発明、引用文献3-4に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1-10は、当業者が引用発明、引用文献3-4に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-09-30 
出願番号 特願2017-26057(P2017-26057)
審決分類 P 1 8・ 55- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲高▼瀬 健太郎若林 治男  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 白井 亮
稲葉 和生
発明の名称 入力装置およびタッチパネルの制御方法  
代理人 家入 健  

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