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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60B
管理番号 1355561
審判番号 不服2018-16836  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-18 
確定日 2019-10-23 
事件の表示 特願2014-226981号「非空気入りタイヤ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月23日出願公開,特開2016- 88375号,請求項の数(4)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成26年11月7日の出願であって,平成30年2月26日付けで拒絶理由が通知され,同年6月12日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが,同年9月7日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,同年12月18日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

1.本願の請求項1?4に係る発明は,以下の引用文献1?3に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2013-86712号公報
2.特開2011-219009号公報
3.特開2004-360803号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願請求項1?4に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」等という。)は,平成30年12月18日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である(下線部は,補正箇所であり,当審で付した。)
「【請求項1】
車軸に取り付けられる取り付け体と,
前記取り付け体をタイヤ径方向の外側から囲繞するリング状体と,
前記取り付け体と前記リング状体とを変位自在に連結する連結部材と,
を備える非空気入りタイヤであって,
前記連結部材は,合成樹脂材料で形成されるとともに,前記連結部材に金属製の補強部材が埋設され,
前記補強部材は,前記連結部材の延在方向に沿った板状に形成され,前記連結部材全体に内在されていることを特徴とする非空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記連結部材は,両端部が前記取り付け体および前記リング状体に各別に連結された弾性連結板を備え,
前記弾性連結板には,タイヤ周方向に湾曲する湾曲部が形成されており,
前記補強部材は,前記弾性連結板に埋設されていることを特徴とする請求項1に記載の非空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記取り付け体のうち少なくとも前記連結部材が連結する部分,前記リング状体,及び前記連結部材は,合成樹脂材料で一体に形成され,
前記補強部材の端部は,前記取り付け体および前記リング状体のうち少なくとも一方の内部に達していることを特徴とする請求項1又は2に記載の非空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記補強部材には,前記合成樹脂材料が進入して固着される貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の非空気入りタイヤ。」

第4 引用文献,引用発明等
(1)引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。
ア.「【請求項1】
車軸に取り付けられる取り付け体と,
該取り付け体に外装される内筒体,および該内筒体をタイヤ径方向の外側から囲繞する外筒体を備えるリング部材と,
前記内筒体と前記外筒体との間にタイヤ周方向に沿って複数配設されるとともに,これらの両筒体同士を相対的に弾性変位自在に連結する連結部材と,
を備え,
前記リング部材および複数の前記連結部材は一体に形成されていることを特徴とする非空気入りタイヤ。」
イ.「【技術分野】
【0001】
本発明は,使用に際し内部に加圧空気の充填が不要な非空気入りタイヤに関するものである。」
ウ.「【発明の効果】
【0016】
この発明によれば,容易に組み立てることが可能で,重量も抑えることができる。」
エ.「【0018】
以下,本発明に係る非空気入りタイヤの一実施形態を図1から図4を参照しながら説明する。
この非空気入りタイヤ1は,図示されない車軸に取り付けられる取り付け体11と,取り付け体11に外装される内筒体12,および内筒体12をタイヤ径方向の外側から囲繞する外筒体13を備えるリング部材14と,内筒体12と外筒体13との間にタイヤ周方向に沿って複数配設されるとともに,これらの両筒体12,13同士を相対的に弾性変位自在に連結する連結部材15と,外筒体13の外周面側にその全周にわたって配設されたトレッド部材16と,を備えている。
【0019】
ここで,取り付け体11,内筒体12,外筒体13,およびトレッド部材16はそれぞれ,共通軸と同軸に配設されている。以下,この共通軸を軸線Oといい,この軸線Oに沿う方向をタイヤ幅方向Hといい,該軸線Oに直交する方向をタイヤ径方向といい,該軸線O回りに周回する方向をタイヤ周方向という。なお,取り付け体11,内筒体12,外筒体13,およびトレッド部材16は,タイヤ幅方向Hの中央部が互いに一致させられて配設されている。
【0020】
リング部材14のうち,外筒体13は内筒体12よりもタイヤ幅方向Hの大きさ,つまり幅が大きくなっている。また,内筒体12の内周面には,タイヤ径方向の内側に向けて突出するとともにタイヤ幅方向Hの全長にわたって延びる突条部12aが,タイヤ周方向に間隔をあけて複数配設されている。
【0021】
取り付け体11は,図1および図2に示されるように,前記車軸の先端部が装着される装着筒部17と,装着筒部17をタイヤ径方向の外側から囲繞する外リング部18と,装着筒部17と外リング部18とを連結する複数のリブ19と,を備えている。
装着筒部17,外リング部18,およびリブ19は例えばアルミニウム合金等の金属材料で一体に形成されている。装着筒部17および外リング部18はそれぞれ,円筒状に形成され前記軸線Oと同軸に配設されている。複数のリブ19は,前記軸線Oを基準とする点対称に配置されている。」
オ.「【0026】
連結部材15は,リング部材14における内筒体12と外筒体13とを互いに連結する第1弾性連結板21および第2弾性連結板22を備えている。
連結部材15は,第1弾性連結板21が一のタイヤ幅方向Hの位置にタイヤ周方向に沿って複数配置され,かつ第2弾性連結板22が前記一のタイヤ幅方向Hの位置とは異なる他のタイヤ幅方向Hの位置にタイヤ周方向に沿って複数配置されるように,タイヤ周方向に沿って複数(図示の例では60個)設けられている。
すなわち,複数の第1弾性連結板21は,タイヤ幅方向Hにおける同一の位置にタイヤ周方向に沿って複数配置されるとともに,複数の第2弾性連結板22は,第1弾性連結板21からタイヤ幅方向Hに離れた同一のタイヤ幅方向Hの位置にタイヤ周方向に沿って複数配置されている。」
カ.「【0029】
図示の例では,第1弾性連結板21および第2弾性連結板22それぞれにおいて,一端部21a,22aと他端部21b,22bとの間に位置する中間部分21c,22cに,タイヤ周方向に湾曲する湾曲部21d?21f,22d?22fが,このタイヤ1をタイヤ幅方向Hから見たタイヤ側面視で,当該連結板21,22が延びる方向に沿って複数形成されている。両連結板21,22それぞれにおいて,複数の湾曲部21d?21f,22d?22fのうち,前述の延びる方向で互いに隣り合う各湾曲部21d?21f,22d?22fの湾曲方向は,互いに逆向きになっている。
【0030】
第1弾性連結板21に形成された複数の湾曲部21d?21fは,タイヤ周方向の他方側に向けて突となるように湾曲した第1湾曲部21dと,第1湾曲部21dと一端部21aとの間に位置しかつタイヤ周方向の一方側に向けて突となるように湾曲した第2湾曲部21eと,第1湾曲部21dと他端部21bとの間に位置しかつタイヤ周方向の一方側に向けて突となるように湾曲した第3湾曲部21fと,を有している。
第2弾性連結板22に形成された複数の湾曲部22d?22fは,タイヤ周方向の一方側に向けて突となるように湾曲した第1湾曲部22dと,第1湾曲部22dと一端部22aとの間に位置しかつタイヤ周方向の他方側に向けて突となるように湾曲した第2湾曲部22eと,第1湾曲部22dと他端部22bとの間に位置しかつタイヤ周方向の他方側に向けて突となるように湾曲した第3湾曲部22fと,を有している。
図示の例では,第1湾曲部21d,22dは,第2湾曲部21e,22eおよび第3湾曲部21f,22fよりも,前記タイヤ側面視の曲率半径が大きくなっている。なお,第1湾曲部21d,22dは,第1弾性連結板21および第2弾性連結板22の前記延びる方向における中央部に配置されている。
【0031】
さらに,両弾性連結板21,22の各長さは互いに同等とされるとともに,両弾性連結板21,22の各他端部21b,22bは,図4に示されるように,前記タイヤ側面視で,内筒体12の外周面において前記各一端部21a,22aとタイヤ径方向で対向する位置から前記軸線Oを中心にタイヤ周方向における一方側および他方側にそれぞれ同じ角度(例えば20°以上135°以下)ずつ離れた各位置に各別に連結されている。また,第1弾性連結板21および第2弾性連結板22それぞれの第1湾曲部21d,22d同士,第2湾曲部21e,22e同士,並びに第3湾曲部21f,22f同士は互いに,タイヤ周方向に突となる向きが逆で,かつ大きさが同等になっている。
【0032】
これにより,各連結部材15の前記タイヤ側面視の形状は,図4に示されるように,タイヤ径方向に沿って延在し,かつ両連結板21,22の各一端部21a,22aを通る仮想線Lに対して線対称となっている。
また,両弾性連結板21,22それぞれにおいて,前述した延びる方向の中央部から前記一端部21a,22aにわたる一端側部分は,該中央部から前記他端部21b,22bにわたる他端側部分よりも厚さが大きくなっている。これにより,連結部材15の重量の増大を抑えたり,連結部材15の柔軟性を確保したりしながら,第1,第2弾性連結板21,22において大きな負荷がかかり易い一端側部分の強度を高めることができる。なお,これらの一端側部分と他端側部分とは段差なく滑らかに連なっている。
【0033】
そして本実施形態では,リング部材14および複数の連結部材15は,一体に形成されている。
さらに本実施形態では,リング部材14は,図1に示されるように,タイヤ幅方向Hの一方側に位置する一方側分割リング部材23と,タイヤ幅方向Hの他方側に位置する他方側分割リング部材24と,に分割されている。なお図示の例では,リング部材14はタイヤ幅方向Hの中央部で分割されている。
【0034】
そして,一方側分割リング部材23は,第1弾性連結板21と一体に形成され,他方側分割リング部材24は,第2弾性連結板22と一体に形成されている。
さらに本実施形態では,一方側分割リング部材23および第1弾性連結板21,並びに他方側分割リング部材24および第2弾性連結板22はそれぞれ,鋳造若しくは射出成形により一体に形成されている。
以下,一方側分割リング部材23および第1弾性連結板21が一体に形成されたものを第1分割ケース体31といい,他方側分割リング部材24および第2弾性連結板22が一体に形成されたものを第2分割ケース体32という。
【0035】
ここで,射出成形としては,第1,第2分割ケース体31,32それぞれの全体を各別に同時に成形する一般的な方法であってもよいし,第1,第2分割ケース体31,32それぞれにおいて,一方側,他方側分割リング部材23,24,並びに第1,第2弾性連結板21,22のうちの一方をインサート品として他方を射出成形するインサート成形でもよいし,あるいはいわゆる二色成形等であってもよい。
また,第1,第2分割ケース体31,32それぞれにおいて,一方側,他方側分割リング部材23,24と,第1,第2弾性連結板21,22と,は,互いに異なる材質で形成してもよいし,同一の材質で形成してもよい。なお,この材質としては,金属材料や樹脂材料等が挙げられるが,軽量化の観点から樹脂材料,特に熱可塑性樹脂が好ましい。
なお,第1,第2分割ケース体31,32それぞれの全体を各別に同時に射出成形する場合には,内筒体12に形成された複数の突条部12aをゲート部分としてもよい。」
キ.上記カ.の段落【0033】?【0035】の下線部の記載事項からみて,第1,第2弾性連結板21,22の材質としては,樹脂材料が好ましいことが理解できる。

そうすると,引用文献1には,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「車軸に取り付けられる取り付け体11と,
前記取り付け体11に外装される内筒体12,および内筒体12をタイヤ径方向の外側から囲繞する外筒体13と,
内筒体12と外筒体13との間に,これらの両筒体12,13同士を相対的に弾性変位自在に連結する連結部材15と,を備える非空気入りタイヤ1であって,
前記連結部材15は,第1弾性連結板21および第2弾性連結板22を備え,
第1,第2弾性連結板21,22の材質としては,樹脂材料が好ましい,
非空気入りタイヤ1。」

(2)引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「【技術分野】
【0001】
本発明は,タイヤ構造部材として,車両からの荷重を支持する支持構造体を備える非空気圧タイヤ(non-pneumatic tire)及びその製造方法に関するものであり,好ましくは空気入りタイヤの代わりとして使用することができる非空気圧タイヤ及びその製造方法に関するものである。」
イ.「【0020】
本発明の非空気圧タイヤTは,車両からの荷重を支持する支持構造体SSと,支持構造体SSの外周側に設けられるベルト層6とを備えるものである。本発明の非空気圧タイヤTは,このような支持構造体SS,ベルト層6を備えるものであればよく,その支持構造体SSとベルト層6の外側(外周側)や内側(内周側)に,トレッド層7,補強層,車軸やリムとの適合用部材などを備えていてもよい。」
ウ.「【0027】
本発明における支持構造体SSは,弾性材料で成形されるが,支持構造体SSを製造する際に,一体成形が可能となる観点から,内側環状部1,中間環状部2,外側環状部3,内側連結部4,及び外側連結部5は,補強構造を除いて基本的に同じ材質とすることが好ましい。
【0028】
本発明における弾性材料とは,JIS K7312に準じて引張試験を行い,10%伸び時の引張応力から算出した引張モジュラスが,100MPa以下のものを指す。本発明の弾性材料としては,十分な耐久性を得ながら,適度な剛性を付与する観点から,好ましくは引張モジュラスが5?100MPaであり,より好ましくは7?95MPaである。母材として用いられる弾性材料としては,熱可塑性エラストマー,架橋ゴム,その他の樹脂が挙げられる。」
エ.「【0032】
弾性材料で一体成形された支持構造体SSは,内側環状部1,中間環状部2,外側環状部3,内側連結部4,及び外側連結部5が,補強繊維により補強されていることが好ましい。
【0033】
補強繊維としては,長繊維,短繊維,織布,不織布などの補強繊維が挙げられるが,長繊維を使用する形態として,タイヤ軸方向に配列される繊維とタイヤ周方向に配列される繊維とから構成されるネット状繊維集合体を使用するのが好ましい。
【0034】
補強繊維の種類としては,例えば,レーヨンコード,ナイロン-6,6等のポリアミドコード,ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルコード,アラミドコード,ガラス繊維コード,カーボンファイバー,スチールコード等が挙げられる。
【0035】
本発明では,補強繊維を用いる補強の他,粒状フィラーによる補強や,金属リング等による補強を行うことが可能である。粒状フィラーとしては,カーボンブラック,シリカ,アルミナ等のセラミックス,その他の無機フィラーなどが挙げられる。」
オ.上記イ.の下線部の記載から,「車軸やリムなどの適合用部材と,前記適合用部材の外側に車両の荷重を支持する支持構造体SSを備える,非空気圧タイヤT」が理解できる。
そうすると,引用文献2には,以下の事項が記載されていると認められる。
「車軸やリムとの適合用部材と,
前記適合用部材の外側に車両の荷重を支持する支持構造体SSを備える,
非空気圧タイヤTであって,
支持構造体SSは,内側環状部1,中間環状部2,外側環状部3,内側連結部4,及び外側連結部5を備え,樹脂からなる弾性材料で成形されるとともに,
支持構造体SSは,内側環状部1,中間環状部2,外側環状部3,内側連結部4,及び外側連結部5が,補強繊維としてのスチールコードや金属リングで補強される,
非空気圧タイヤT。」

(3)引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,車両のパワープラントを弾性的に支持する弾性支持装置に関する。」
イ.「【0016】
補強プレート43には,ビーム材42との結合力を高めるために射出成形時に樹脂を充填する貫通穴56…が設けられている。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,後者の「非空気入りタイヤ1」は前者の「非空気入りタイヤ」に相当し,以下同様に,「外筒体13」は「リング状体」に,「相対的に弾性変位自在」は「変位自在」に,「連結部材15」は「連結部材」に,それぞれ相当する。
本願の明細書の段落【0023】の「取り付け体11には,外リング部18に外嵌される円筒状の外装体12が備えられている。」との記載からみて,後者の「取り付け体11」と「取り付け体11に外装される内筒体12」とを合わせたものは,前者の「取り付け体」に相当する。
そうすると,後者の「車軸に取り付けられる取り付け体11と,前記取り付け体11に外装される内筒体12,および内筒体12をタイヤ径方向の外側から囲繞する外筒体13と,内筒体12と外筒体13との間に,これらの両筒体12,13同士を相対的に弾性変位自在に連結する連結部材15と,を備える非空気入りタイヤ1」は,前者の「車軸に取り付けられる取り付け体と,前記取り付け体をタイヤ径方向の外側から囲繞するリング状体と,前記取り付け体と前記リング状体とを変位自在に連結する連結部材と,を備える非空気入りタイヤ」に相当する。
後者の「前記連結部材15は,第1弾性連結板21および第2弾性連結板22を備え,第1,第2弾性連結板21,22の材質としては,樹脂材料が好ましい」ことにより,樹脂材料として特定することもできるから,前者の「前記連結部材は,合成樹脂材料で形成される」ことに相当する。
してみれば,両者は,
「車軸に取り付けられる取り付け体と,
前記取り付け体をタイヤ径方向の外側から囲繞するリング状体と,
前記取り付け体と前記リング状体とを変位自在に連結する連結部材と,
を備える非空気入りタイヤであって,
前記連結部材,合成樹脂材料で形成される,
非空気入りタイヤ。」
の点で一致し,以下の点で相違すると認められる。
<相違点>
本願発明1では,「前記連結部材に金属製の補強部材が埋設され,前記補強部材は前記延在方向に沿った板状に形成され,前記連結部材全体に内在されている」のに対して,引用発明では,補強部材に関する特定がなされていない点。

(2)相違点の判断
引用文献2には,上記「第4(2)」の事項が記載されている
本願発明1と引用文献2に記載された事項とを対比すると,後者の「車軸やリムとの適合用部材」および「内側環状部1」が前者の「取り付け体」に相当し,以下同様に,「外側環状部3」は「リング状体」に,「内側連結部4,中間環状部2,外側連結部5」が「連結部材」に,「非空気圧タイヤT」は「非空気入りタイヤ」に,それぞれ相当する。
後者の「車軸やリムとの適合用部材と,前記適合用部材の外側に車両の荷重を支持する支持構造体SSを備える」ことは,支持構造体SSが内側環状部1と外側環状部3を備え,車軸が前記適合用部材に取り付けられること及び外側環状部3が適合用部材と内側環状部1をタイヤ径方向外側から囲繞することは明らかであるから,前者の「車軸に取り付けられる取り付け体と,前記取り付け体をタイヤ径方向外側から囲繞するリング状体」に相当する。
後者の「支持構造体SS」は樹脂からなる弾性材料で形成されるから,「支持構造体SS」を形成する「内側連結部4,中間環状部2,外側連結部5」は,前者の「取り付け体とリング状体を変位自在に連結する連結部材」に相当する。
そして,後者の「支持構造体SSは,内側環状部1,中間環状部2,外側環状部3,内側連結部4,及び外側連結部5を備え,樹脂からなる弾性材料で成形されるとともに,支持構造体SSは,内側環状部1,中間環状部2,外側環状部3,内側連結部4,及び外側連結部5が,補強繊維としてのスチールコードや金属リングで補強される」ことと,前者の「前記連結部材は,合成樹脂材料で形成されるとともに,前記連結部材に金属製の補強部材が埋設され」ることとは,「連結部材は,合成樹脂材料で形成されるとともに,連結部材に金属製の補強部材が付されている」ことにおいて共通する。
そうすると,引用文献2には,本願発明1の表現に倣って整理すると以下の事項が開示されているといえる。
「車軸に取り付けられる取り付け体と,
前記取り付け体をタイヤ径方向の外側から囲繞するリング状体と,
前記取り付け体と前記リング状体とを変位自在に連結する連結部材と,
を備える非空気入りタイヤであって,
前記連結部材は,合成樹脂材料で形成されるとともに,前記連結部材に金属製の補強部材が付されている,非空気入りタイヤ。」
しかしながら,「内側連結部4,中間環状部2,外側連結部5が,補強繊維としてのスチールコードや金属リングで補強される」ことのうち,内側連結部4と外側連結部5が補強繊維としてのスチールコードで補強されていることは,「補強部材は,連結部材の延在方向に沿った板状に形成される」とはいえないし,金属リングが仮に板状の金属部材からなるリングであったとしても,金属リングによって補強されたものが,リング部材をなす「内側環状部1,中間環状部2,外側環状部3」に沿った板状のリングになることは,想定できるが,連結部材である「内側連結部4と外側連結部5」の延在方向に沿った板状に形成されることは,記載も示唆もされていない。
さらに,内側連結部4,中間環状部2,外側連結部5が,補強繊維としてのスチールコードや金属リングで補強されるものが「連結部材全体に内在されている」ものともいえない。
したがって,引用文献2には,本願発明1の「前記連結部材に金属製の補強部材が埋設され,前記補強部材は,前記連結部材の延在方向に沿った板状に形成され,前記連結部材全体に内在されていること」に相当する事項は開示されていない。
また,本願発明4について原査定の拒絶の理由で周知の事項として引用した引用文献3にも上記構成は記載されていない。
よって,引用発明に引用文献2に開示された事項および引用文献3に記載された周知の事項を適用しても,本願発明1の発明特定事項とすることはできない。
そして,本願発明1は,相違点1に係る本願発明1の構成により,「連結部材をその延在方向の各断面において均一に補強することができ,タイヤの圧縮に対して補強することができ,しかも連結部材自体の耐久性を向上できる。」という格別な作用効果を奏するものである。
したがって,本願発明1は,引用発明,引用文献2に開示された事項,引用文献3に記載される周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2?4について
本願発明2?4は,本願発明1の発明特定事項を全て含み,さらに限定して発明を特定するものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2に開示された事項,引用文献3に記載された周知の事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-10-08 
出願番号 特願2014-226981(P2014-226981)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B60B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 高島 壮基  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 藤井 昇
一ノ瀬 覚
発明の名称 非空気入りタイヤ  
代理人 西澤 和純  
代理人 仁内 宏紀  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 大槻 真紀子  

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