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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01C
管理番号 1355569
審判番号 不服2018-13184  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-03 
確定日 2019-10-23 
事件の表示 特願2013-212626「電子機器およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月20日出願公開、特開2015- 75416、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成25年10月10日の出願であって、平成29年4月5日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成29年4月11日)、これに対し、平成29年6月9日に意見書及び手続補正書が提出され、これに対し、平成29年11月28日付で最後の拒絶の理由が通知され(発送日:平成29年12月5日)、これに対し、平成30年1月30日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成30年6月29日付で平成30年1月30日にされた手続補正を却下するとともに拒絶査定がなされ(発送日:平成30年7月3日)、これに対し、平成30年10月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出されたものである。


2.審判請求時の手続補正
平成30年10月3日の手続補正で、特許請求の範囲は以下のように補正された。
「【請求項1】
所定の分類軸に分類して施設情報を格納した施設データベースを参照して取得した施設を地図上に表示する機能と、画面に現在位置を含む地図を表示する機能とを備える電子機器であって、
車両の走行中に入力操作を受け付け可能な入力受付手段と、
1または複数回の入力操作により構成される定型入力操作に前記施設データベースの検索条件を予め対応付けて設定する機能と、
前記定型入力操作を受け付けると、前記施設データベースを参照して、当該定型入力操作に対応付けられた検索条件に該当する施設を、前記施設データベースを参照して提示するよう制御する機能とを備え、
1の定形入力操作に対して前記検索条件を時間帯別に設定しておく機能を備え、当該定型入力操作を受け付けたとき、当該定形入力操作に対して時間帯別に設定された検索条件のうち現在の時刻が含まれる時間帯の検索条件によって検索する機能を備えること
を特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記入力受付手段は、複数のプリセットボタンであり、
少なくともいずれか1つのプリセットボタンは、前記施設の検索以外の機能に割り当てる機能を備えること
を特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
コンピュータを、請求項1または2に記載の電子機器として機能させるプログラム。」

上記補正は、請求項1のみが補正され、検索条件を時間帯別に設定することについて「1の定形入力操作に対して」との限定を付加し、定型入力操作を受け付けた現在の時刻が含まれる時間帯の検索条件によって検索する機能について「当該定形入力操作に対して時間帯別に設定された検索条件のうち」との限定を付加するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲を減縮するものに該当する。なお、「1の定形入力操作に対して」の「1の」は、令和元年9月13日付ファクスによれば「1回の」を意味するものである。
そして、以下に示すように、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、独立特許要件を満たすものである。なお、補正後の請求項1の記載は、補正の却下の決定の対象となった平成30年1月30日付手続補正書の請求項1の記載と同じである。


3.引用例
補正の却下の決定及び原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-77180号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。
a「【請求項1】
指定された施設を検索条件に基づいて検索する施設検索手段と、道路地図データおよび位置検出手段により検出された車両の現在位置に基づいて目的地もしくは経由地を介した目的地までの経路を探索する経路探索手段とを備えた車両用ナビゲーション装置であって、
前記施設検索手段が検索可能な検索条件のうち車両の走行中に入力が禁止されているユーザの希望条件を車両の停車中に予め登録するための登録手段と、
この登録手段により登録されたユーザの希望条件に対応して指定するための指定手段とを設け、
前記施設検索手段は、前記指定手段により指定されたときは、前記指定手段に対応して登録されている希望条件を満たす施設を検索し、
前記経路探索手段は、前記施設検索手段により検索された施設を新たな目的地もしくは最初の経由地として経路を探索することを特徴とする車両用ナビゲーション装置。」

b「地図データ入力器4は、例えばCD-ROMもしくはDVD-ROMなどのようなメディアからデータを読取るためのものである。このメディアには、道路地図データが記憶されている。この場合、道路地図データとしては、地図を表示するための地図描画用データ、マップマッチングや経路探索、経路誘導などの種々の処理に必要な道路データ、交差点の詳細データからなる交差点データ等の地理的情報が記憶されている。
さらにこのメディアには、例えば、レジャー施設(ファミリーレストラン,動物園,植物園,博物館,美術館,映画館等)や宿泊施設,温泉施設、公共施設(警察,消防署,区役所,市役所,公民館,市民会館,学校,男性女性用公衆トイレ等)、病院、車両関係施設(駐車場,ガソリンスタンド,カー用品店,車販売営業所,レンタカー)や、交通機関施設(高速道路インターチェンジ,料金所,有料道路,交差点,駅,空港,フェリーのりば,道の駅,タクシー乗り場)等多種多用な施設の詳細データがそれらの位置と対応して記憶されている。具体的には、レジャー施設等のように営業時間が決められている施設には、営業時間のデータが対応して記憶されている。宿泊施設等の場合、駐車場の有無や宿泊値段や宿泊施設タイプ(ビジネスホテル,リゾートホテル,ペンション,カプセルホテル等)等詳細なデータが宿泊施設毎に対応して記憶されている。これらの施設は、通常時においてユーザの操作スイッチ群6の操作により場所など詳細設定が行われることにより制御回路2が検索するように構成されている。
尚、メディアはメモリカード等により構成されていても良い。また、地図データ入力器4に代えて無線通信機を備え、上述したデータ(道路地図データも含む)が車両の外部との無線通信によりダウンロードされるように構成されていても良い。
表示装置5は、地図画面などを表示するためのカラー液晶ディスプレイを備えており、この表示画面には、通常時において縮尺を複数段階に変更可能な道路地図が表示されると共に、この表示に重ね合わせられるように車両の現在位置および進行方向を示すポインタP(図4(a)参照)が表示されるようになっている。また、表示装置5には、その他にも、誘導経路や各種メッセージやなども表示されるようになっており、車両の現在位置の周辺の施設も記号(ランドマーク)により表示されるようになっている。」(【0012】-【0015】)

c「上記構成の動作のうち本発明に関連した動作について、図2ないし図5をも参照しながら説明する。
<登録設定時の動作について>
まず、ユーザは、車両の走行中に入力が禁止されているユーザの希望条件を登録する。車両の停車中に、ユーザの希望に応じて、ユーザの希望条件登録設定が行われる。図2は、登録時の制御回路2の動作をフローチャートにより示している。制御回路2は、ユーザによるカーナビゲーション装置1のメニュー操作により施設検索条件登録を開始し、施設検索条件登録終了操作されるまで実行する(S1:NO)。この施設検索条件登録は、制御回路2が検索可能な検索条件のうち、車両の走行中に入力が禁止されているユーザの詳細な希望条件を予め登録するために行われ、時間(時刻)や場所以外の詳細な希望条件がユーザにより設定入力されることにより登録される(S2)。
図3は、この登録時に制御回路2が表示装置5に表示させる希望条件の表示例を示している。例えば、宿泊施設の希望条件の登録例として図3(a)に示すように、宿泊数や人数、予約部屋数や宿泊施設のタイプや1泊1部屋あたりの希望値段等が選択入力されるようになっている。また、ガソリンスタンドの希望条件の登録例として図3(b)に示すように、A社,B社,C社,…の中からユーザが提携カードを所持するA社ガソリンスタンドが選択入力されたり、銀行検索条件の登録例として図3(c)に示すように、X社,Y社,Z社,…の中から例えばユーザが提携カードを所持するX社の銀行が選択入力される。尚、これらの選択は、ラジオボタン形式やチェックボックス形式で選択可能としても良いし、「A社ガソリンスタンド」、「X社銀行」、「駐車場のある1万円以下の宿泊施設」、「無料の女性用公衆トイレがある施設」等のようにフリーキーワードによる直接入力形式としても良い。
図2に戻って、制御回路2は、ユーザにより新たに登録された希望条件を受付けRAMに希望条件情報として記憶する。希望条件の登録が完了すると、制御回路2は、登録ボタンの選択処理を行う。この登録ボタンの選択処理は、複数の登録ボタンの中から、新たに登録された希望条件を登録するボタンをユーザに選択させる処理を示している。RAMには、これらのボタンに対応した記憶領域が設けられており、制御回路2は上述した希望条件情報をボタンに対応した記憶領域に記憶する。制御回路2は、複数の登録ボタンの全ての名称を表示装置5に表示させ、ユーザに登録ボタンの選択を促す(S3)。」(【0018】-【0020】)

d「「簡単目的地設定」ボタンは、予め登録されたユーザ希望条件の施設をユーザが目的地あるいは経由地として指定するためのボタンである。このボタンが押下されることにより指定されたことを検出すると制御回路2は、図4(b)に示すような画面を表示装置5に表示させる。この表示画面中、「女性用トイレ」「MY銀行」「1万円以下ホテル」「MYカードGS」「24時間レストラン」「仮眠所付き道の駅」とは、図2のステップS5において入力された登録ボタンの名称、すなわち、ユーザの希望条件に対応した登録情報を示しており、各ボタンには、ユーザの希望条件が対応して記憶されており、登録ボタンの名称(登録情報)が表示装置5に表示されている。ユーザはこれらの登録ボタンを押下することにより検索条件を指定することができ、これにより、ユーザは表示された登録情報から容易に指定することができる。
「女性用トイレ」ボタンには、例えば女性用の無料公衆トイレ施設が対応して登録されている。「MY銀行」ボタンには、ユーザが提携カードを所持するX社銀行が対応して登録されており、その他にもホテルやガソリンスタンドや24時間レストランや道の駅の詳細設定(希望条件情報)が対応して登録されている。また、ユーザが「戻る」ボタンを押下することにより、制御回路2は、この設定動作をキャンセルし図4(a)に示す表示画面を表示装置5に表示させる。
図5は、目的地もしくは経由地の検索設定動作をフローチャートにより示している。
例えば車両の走行中に、ユーザが「MY銀行」の登録ボタンを押下することで指定すると、制御回路2は、この指定信号を検出し、登録ボタンの希望条件情報をRAMから取得し条件に加える(T1)。すなわち、制御回路2は、登録ボタンに設定されている「X社」の銀行であることを条件として加える。そして制御回路2は、位置検出器3により車両の現在位置を検出し、この現在位置近傍(周辺)である施設であることを条件として加える(T2)。具体的には、制御回路2は、車両の現在位置から施設に向けて道に沿う距離で換算して例えば数km以内に位置する施設であるか否かを判定する。これにより、車両の現在位置から近い施設を検索することができる。なお、車両の現在位置周辺の施設であることを判定する方法として、制御回路2が、位置検出器3により検出された車両の現在位置からの「直線距離」が例えば数km以内に位置する施設であることを判定することにより行うようにしても良い。この場合、道に沿う距離を算出するのに比較して、処理を簡単化し軽くすることができ処理速度を向上することができる。」(【0025】-【0027】)

e「ステップT9において、制御回路2は、条件を満たす施設が設定されていないと判定すれば、検索された施設を新たな目的地として設定し、経路を探索する(T11)。ステップT10もしくはT11で経路の探索を終了すれば、図4(c)に示すように、「X社銀行」までの経路を例えば太線により表示装置5に表示させ、制御回路2は従来と同様に案内を開始する(T12)。これにより、ユーザは不意に施設に立ち寄る必要を生じた場合であっても、検索された施設が新たな目的地もしくは最初の経由地として経路が探索されるのでユーザは素早く施設に到着することができる。」(【0032】)

b及び図面を参照すると、メディアが多種多用な施設の詳細データを記憶し、例えば宿泊施設等の場合、駐車場の有無や宿泊値段や宿泊施設タイプ(ビジネスホテル,リゾートホテル,ペンション,カプセルホテル等)等詳細なデータが宿泊施設毎に対応して記憶されているから、所定の分類軸に分類して施設情報を格納した施設データベースを有しているといえる。
b及び図面を参照すると、車両用ナビゲーション装置は、地図画面に車両の現在位置の周辺の施設を記号(ランドマーク)により表示しているから、施設情報を格納した施設データベースを参照して取得した施設を地図上に表示する機能と、画面に現在位置を含む地図を表示する機能とを備えるといえる。
d及び図面を参照すると、「簡単目的地設定」ボタンは、「女性用トイレ」「MY銀行」「1万円以下ホテル」「MYカードGS」「24時間レストラン」「仮眠所付き道の駅」の登録ボタンを有し、例えば車両の走行中に、ユーザが「MY銀行」の登録ボタンを押下することで指定しているから、車両の走行中に入力操作を受け付け可能な簡単目的地設定ボタンであるといえる。
c及び図面を参照すると、ユーザは、カーナビゲーション装置のメニュー操作により施設検索条件登録を開始し、施設検索条件登録終了操作されるまで実行し、この施設検索条件登録は、制御回路が検索可能な検索条件のうち、車両の走行中に入力が禁止されているユーザの詳細な希望条件を予め登録するために行われ、時間(時刻)や場所以外の詳細な希望条件がユーザにより設定入力されることにより登録されるから、1または複数回の入力操作により構成される定型入力操作に施設データベースの検索条件を予め対応付けて設定する機能を有しているといえる。
c及び図面を参照すると、車両の走行中に、ユーザが「MY銀行」の登録ボタンを押下することで指定すると、制御回路は、位置検出器により車両の現在位置を検出し、この現在位置近傍(周辺)である施設であることを条件として加えるから、定型入力操作を受け付けると、施設データベースを参照して、当該定型入力操作に対応付けられた検索条件に該当する施設を、前記施設データベースを参照して提示するよう制御する機能を有しているといえる。

上記記載事項からみて、引用例1には、
「所定の分類軸に分類して施設情報を格納した施設データベースを参照して取得した施設を地図上に表示する機能と、画面に現在位置を含む地図を表示する機能とを備える車両用ナビゲーション装置であって、
車両の走行中に入力操作を受け付け可能な簡単目的地設定ボタンと、
1または複数回の入力操作により構成される定型入力操作に前記施設データベースの検索条件を予め対応付けて設定する機能と、
前記定型入力操作を受け付けると、前記施設データベースを参照して、当該定型入力操作に対応付けられた検索条件に該当する施設を、前記施設データベースを参照して提示するよう制御する機能とを備える車両用ナビゲーション装置。」との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

補正の却下の決定に引用された特開2011-179870号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。
f一方、最近では、インターネットなどの利用技術の発展、通信料金の低額化が進み、車載用のナビゲーション装置においても、各種の情報提供サーバを利用できる通信手段を備えた装置が提供されている。このようなナビゲーション装置においては、情報提供サーバが有する最新の情報、例えば、施設情報を利用して周辺検索を行い、その結果を取得して表示させることができる。」(【0016】)
g「そこで、本発明は、検索された施設情報に基づく所期の目的が達成されたと判定された場合、当該施設情報にかかる検索条件の優先順を自動的に繰り下げ、あるいは、当該検索条件を自動的に削除することにより、ユーザの手を煩わせることなく、所望の施設情報を取得することのできるナビゲーション装置を提供することを目的とする。」(【0020】)
h「並び替え条件記憶手段135は、並び替え判定手段128によるウィジェット設定項目の並び替え条件を記憶する。図2は、並び替え条件記憶手段135に記憶される並び替え条件の一例を示す。並び替え条件は、検索対象の施設種別と、並び替えの判定結果に基づいて検索の順位を繰り上げる条件と、前記判定結果に基づいて検索の順位を繰り下げる条件と、施設種別間の優先順位とからなる。
例えば、検索する施設の種別が「ガソリンスタンド」の場合、走行開始から長時間又は長距離走行しており、計時手段125により計測された走行時間が所定時間以上、あるいは、走行距離算出手段126により算出された走行距離が所定距離以上であるとき、ガソリンが少なくなっているため、「ガソリンスタンド」の検索条件の優先順位を繰り上げる。また、停車判定手段123又は現在位置検出手段121により、ガソリンスタンドの付近に停車していると判定され、あるいは、給油検出手段127により給油中であることが検出されたとき、ガソリンスタンドを検索する目的が達成されているため、「ガソリンスタンド」の検索条件の優先順位を繰り下げる。」(【0061】-【0062】)
i「検索する施設の種別が「宿泊施設」の場合、現在位置検出手段121により検出された現在位置が目的地付近であるとき、あるいは、時刻取得手段124により取得した現在の時刻が夕方以降の時間帯であるとき、宿泊施設の検索が必要となる可能性が高いため、「宿泊施設」の検索条件の優先順位を繰り上げる。また、出発地付近、朝方の時間帯、あるいは、高速道路を走行中のときには、宿泊施設を検索する必要性が低いため、「宿泊施設」の検索条件の優先順位を繰り下げる。
検索する施設の種別が「グルメ」の場合、時刻取得手段124から取得した現在の時刻が食事時の時間帯であるとき、レストランの検索を所望する可能性が高いため、「グルメ」の検索条件の優先順位を繰り上げる。また、食事時以外の時間帯、あるいは、食事場所に既に停車しているときには、レストランを検索する必要性が低いため、「グルメ」の検索条件の優先順位を繰り下げる。」(【0064】-【0065】)
j「地図表示画面は、地図表示領域310と、その下端部分に設けられた現在時刻表示領域330と、現在位置表示領域331とから構成される。地図表示領域310には、現在位置マーク311とメニューアイコン320が地図上に表示され、現在位置マーク311を中心として所定縮尺及び所定範囲の地図画像が表示されている。
ここで、ユーザがメニューアイコン320に触れるか手指を接近させること等によりメニューアイコン320を選択すると、記憶手段134に記憶されているメニュー設定項目を参照し、表示制御手段132が図5に示すメニュー設定画面340を表示入力手段131に表示する。メニュー設定画面340は、画面の大部分の領域を占めるメニュー表示領域と、その下端部分に設けられた現在時刻表示領域(図示せず)と現在位置表示領域331とから構成される。
メニュー表示領域には、上部に直前の表示画面を表示するための「戻る」アイコン399が設けられている。また、メニュー表示領域には、複数のメニュー設定アイコン341?345が表示される。図5では、3つのメニュー設定アイコン341?343が具体的に表示されている。第1のアイコン341は「目的地」アイコンであり、第2のアイコン342は「ウィジェット設定アイコン」であり、第3のアイコン343は、「経路探索アイコン」である。」(【0079】-【0081】)
k「一方、ユーザが第2のアイコンである「ウィジェット設定アイコン」342を選択すると(ステップS106、YES)、ウィジェット設定手段122は、記憶手段134に記憶されているウィジェット設定項目に基づいてウィジェット設定画面の表示を指示し、表示制御手段132は、図6に示すウィジェット設定画面350を表示入力手段131に表示する(ステップS107)。」(【0084】)
l「ウィジェット設定表示領域は、複数のウィジェット設定項目アイコン351?360を備えている。図6では、7つのウィジェット設定項目アイコン351?356が具体的に表示されている。第1のアイコン351は「駐車場」、第2のアイコン352は「ガソリンスタンド」、第3のアイコン353は「宿泊」、第4のアイコン354は「観光情報」、第5のアイコン355は「天気」、第6のアイコン356は「グルメ」、第7のアイコン357は「温泉」、第8のアイコン358は「自動」がそれぞれ割り当てられている。また、上部に直前の表示画面を表示するための「戻る」アイコン399が設けられている。
ウィジェット設定項目アイコン351?357は施設の種別に対応しており、ウィジェット設定項目アイコンが選択されると、選択されたウィジェット設定項目アイコンに対応した施設の種別が選択される。なお、本実施例では、天気や観光情報なども施設の種別の1つとして説明する。第8のアイコン「自動」は、並び替え条件記憶手段135に記憶されている並び替え条件の優先順位(図2)に従い、ウィジェットを自動的に選択するためのアイコンである。
表示されたウィジェット設定画面350を用いて、表示入力手段131からウィジェット設定項目アイコン351?360の1つが選択されると(ステップS108)、検索リスト作成手段129は、選択されたウィジェット設定項目アイコン351?360に従って検索リストを作成する(ステップS109)。」(【0086】-【0087】)
m「例えば、第8のアイコン「自動」が選択され、図7の(a)に示すように、最も優先順位の高い検索条件として「ガソリンスタンド」のウィジェット設定項目が選択されている場合において、停車判定手段123により車両が停車状態となったものと判定され、あるいは、給油検出手段127が車両に対する給油状態を検出すると、並び替え判定手段128は、ガソリンスタンドの施設検索が不要になったため、検索条件の並び替えが必要であると判定する(ステップS114、要)。そこで、検索リスト作成手段129は、並び替え条件記憶手段135に記憶されている並び替え条件に従い、「ガソリンスタンド」のウィジェット設定項目を検索リストの最下位に繰り下げ、検索リストを図7の(b)に示すように更新する(ステップS115)。更新された検索リスト及び現在位置を含む検索条件は、施設検索要求手段130により情報提供サーバ200に送信され(ステップS110)、図7の(b)に示す検索リストに基づいて施設情報の検索が継続される。この場合、「駐車場」のウィジェット設定項目を最も優先順位の高い検索条件として施設検索が行われる。」(【0097】)

上記記載事項(特にj、k、l)からみて、引用例2には、
「地図表示画面でユーザがメニューアイコンを選択すると、メニュー設定画面が表示され、前記メニュー設定画面は、画面の大部分の領域を占めるメニュー表示領域を有し、前記メニュー表示領域には、複数のメニュー設定アイコンが表示され、前記複数のメニュー設定アイコンの第2のアイコン「ウィジェット設定アイコン」を選択すると施設の種別に対応する複数のウィジェット設定項目アイコンが表示され、前記複数のウィジェット設定項目アイコンの1つが選択されると、選択されたウィジェット設定項目アイコンに対応した施設の種別が選択され、前記ウィジェット設定項目アイコンの第8のアイコン「自動」が選択されると、現在の時刻が夕方以降の時間帯であるとき、「宿泊施設」の検索条件の優先順位を繰り上げ、朝方の時間帯のときには、「宿泊施設」の検索条件の優先順位を繰り下げるナビゲーション装置。」との事項が記載されている。


4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「車両用ナビゲーション装置」、「簡単目的地設定ボタン」は、本願発明の「電子機器」、「入力受付手段」に相当する。

したがって、両者は、
「所定の分類軸に分類して施設情報を格納した施設データベースを参照して取得した施設を地図上に表示する機能と、画面に現在位置を含む地図を表示する機能とを備える電子機器であって、
車両の走行中に入力操作を受け付け可能な入力受付手段と、
1または複数回の入力操作により構成される定型入力操作に前記施設データベースの検索条件を予め対応付けて設定する機能と、
前記定型入力操作を受け付けると、前記施設データベースを参照して、当該定型入力操作に対応付けられた検索条件に該当する施設を、前記施設データベースを参照して提示するよう制御する機能とを備える電子機器。」の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点〕
本願発明は、1の定形入力操作に対して前記検索条件を時間帯別に設定しておく機能を備え、当該定型入力操作を受け付けたとき、当該定形入力操作に対して時間帯別に設定された検索条件のうち現在の時刻が含まれる時間帯の検索条件によって検索する機能を備えるのに対し、引用発明は、この様な機能を有していない点。


5.判断
引用例2の上記記載事項は、ユーザが検索条件を時間帯別に設定しておく機能を得るまでに、メニューアイコンを選択し、次に複数のメニュー設定アイコンから第2のアイコン「ウィジェット設定アイコン」を選択、更に複数のウィジェット設定項目アイコンから第8のアイコン「自動」を選択しなければならず、1の定形入力操作で得ることはできない。
本願発明が解決しようとする課題は、明細書【0004】に記載がある様に「カーナビゲーション装置で目的とする施設を検索するには、多階層のメニュー選択等の複雑な操作を要求されるため、走行中に急にコンビニエンスストアに寄りたくなった場合やガソリンスタンドに寄りたくなった場合などには、いったん走行を停止してから施設の検索を行う必要があった。」であり、本願発明の構成を採用することにより「いったん走行を停止しなくても、あるいは、階層の深い設定を行わなくとも、定型入力操作に対応付けて予め設定しておいた所望の条件での施設検索をすることができる。」(【0007】)という作用効果を奏するが、引用例1、2には、1の定形入力操作に対して検索条件を時間帯別に設定しておく機能について記載も示唆も無い。
そうすると、仮に引用発明に引用例2記載の事項を適用できたとしても、1の定形入力操作に対して検索条件を時間帯別に設定しておく機能という構成は得られないから、引用発明において相違点にかかる構成を採用することは当業者が容易に考えられたとすることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明及び引用例2記載の事項に基づいて当業者が容易に考えられたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないとすることはできない。よって、特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合する。


6.原査定
(1)平成29年11月28日付の最後の拒絶理由
平成29年11月28日付の請求項1に関する最後の拒絶理由の概要は以下のとおりである。
「1.(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用例等一覧>
1.特開2004-77180号公報
2.特開2006-251720号公報」


(2)引用例
補正の却下の決定及び原査定の拒絶の理由に引用された引用例1である特開2004-77180号公報の記載事項及び対比は「3.」、「4.」に記載のとおりである。

原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-77180号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。
A「【請求項7】
前記施設種の前記利用履歴に含まれる利用時刻に基づき、前記施設が属する施設種に利用時間帯を設定する施設種利用時間帯設定手段を備えることを特徴とする請求項6項記載の表示アイコン自動変更システム。
【請求項8】
前記施設種の前記利用時間帯に基づき、該施設種に属する施設を示すアイコンを表示するアイコン表示手段を備えることを特徴とする請求項7記載の表示アイコン自動変更システム。」
B「本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、運転者の嗜好の変化や利用時間帯の変化に応じて、施設を示すアイコン表示を自動で変更可能な表示アイコン自動変更システムを提供することを目的とする。」(【0005】)
C「次に、本実施例において制御部17が行う処理を図2に示すフローチャートを用いて詳述する。図2において、まず、運転者が施設を利用するために車両を駐車する。駐車した際に、制御部17は車両の駐車判定処理を行う(ステップ11)。駐車判定は、例えばエンジンキーをイグニッションOFFにした際のセンサ出力を検出して駐車と判定してもよく、内燃機関の停止を検出可能な他のセンサ等の出力を検出して駐車と判定してもよい。制御部17は車両が駐車したと判定すると、車両の現在位置から最も近い施設の施設情報を施設データベースから検索し、利用施設特定処理を行う(ステップ12)。次に、制御部17は、利用施設として特定した施設の属する施設種を特定する施設種特定処理を行う(ステップ13)。この施設種特定処理については、後に詳述する。なお、施設種は、施設種分類情報として情報化された状態で、後述する施設種別テーブルに格納されている。利用施設の施設種を特定した後、制御部17は、特定した施設種を表す施設種分類情報及び利用日時を利用履歴に記憶する利用履歴記憶処理を行う(ステップ14)。このようにして構築される利用履歴に基づき、制御部17は、利用時間帯設定処理を行う(ステップ15)。この利用時間帯設定処理は、利用した施設の利用履歴に含まれる利用時刻に基づいて、利用した施設の属する施設種の利用時間帯を設定する処理である。この利用時間帯設定処理については、後に詳述する。運転者が車両を運転している際に、制御部17は現在時刻に該当する利用時間帯を持つ施設種の有無を判定し、該当する施設種があれば、道路地図情報とともに、該当する施設種に属するすべての施設を示すアイコンを表示部6に表示するアイコン表示処理を行う(ステップ16)。」(【0024】)
D「さらに、図5に示す利用履歴に基づいて、道路地図とともに施設を示すアイコンを表示部6に表示した場合について、図7に示す表示例を用いて詳述する。図7は、図5に示す利用履歴に基づいて、利用施設種53に属する施設を示すアイコンを、所定の時刻71に表示部6に表示する表示例を示す図である。図7(a)は、時刻71(12:00から16:30までの時間帯に含まれる時刻)に表示部6に表示する表示例を示す図である。図5に示す利用履歴によれば、この時刻71に施設を利用していないため、表示部6には道路地図のみが表示され、施設を示すアイコンは表示されない。図7(b)は、時刻72(16:30から17:30までの時間帯に含まれる時刻)に表示部6に表示する表示例を示す図である。前述した図6に示す相関関係図により、施設種「レストラン」の利用時間帯66は16:30から18:50までと設定されている。これによって、時刻が16:30を過ぎると、表示部6には施設種「レストラン」に属する施設を示すアイコン76が表示される。図7(c)は、時刻73(17:30から18:50までの時間帯に含まれる時刻)に表示部6に表示する表示例を示す図である。前述した図6に示す相関関係図により、施設種「コンビニエンスストア」の利用時間帯63aは17:30から19:50までと設定されている。これによって、時刻が17:30を過ぎると、表示部6には施設種「レストラン」に属する施設を示すアイコン76と共に、施設種「コンビニエンスストア」に属する施設を示すアイコン77が表示される。図7(d)は、時刻74(18:50から19:50までの時間帯に含まれる時刻)に表示部6に表示する表示例を示す図である。施設種「レストラン」の利用時間帯66は16:30から18:50までと設定されているため、時刻が18:50を過ぎると、表示部6には施設種「レストラン」に属する施設を示すアイコン76が表示されなくなる。図7(e)は、時刻75(19:50から21:00までの時間帯に含まれる時刻)に表示部6に表示する表示例を示す図である。施設種「コンビニエンスストア」の利用時間帯63aは、17:30から19:50までと設定されているため、時刻が19:50を過ぎると、表示部6には施設種「コンビニエンスストア」に属する施設を示すアイコン77が表示されなくなる。」(【0030】)

上記記載事項(特にA)からみて、引用例3には、
「施設種の利用履歴に含まれる利用時刻に基づき、施設が属する施設種に利用時間帯を設定する施設種利用時間帯設定手段を備え、前記施設種の前記利用時間帯に基づき、該施設種に属する施設を示すアイコンを表示するアイコン表示手段を備える表示アイコン自動変更システム。」との事項が記載されている。


(3)判断
引用例3の上記記載事項は、施設種の利用履歴に含まれる利用時刻に基づき、施設が属する施設種に利用時間帯を設定し、前記施設種の前記利用時間帯に基づき、該施設種に属する施設を示すアイコンを表示するのみで、時間帯別に設定された検索条件を1の定形入力操作で得ることはできない。
本願発明が解決しようとする課題は、明細書【0004】に記載がある様に「カーナビゲーション装置で目的とする施設を検索するには、多階層のメニュー選択等の複雑な操作を要求されるため、走行中に急にコンビニエンスストアに寄りたくなった場合やガソリンスタンドに寄りたくなった場合などには、いったん走行を停止してから施設の検索を行う必要があった。」であり、本願発明の構成を採用することにより「いったん走行を停止しなくても、あるいは、階層の深い設定を行わなくとも、定型入力操作に対応付けて予め設定しておいた所望の条件での施設検索をすることができる。」(【0007】)という作用効果を奏するが、引用例1、2には、1の定形入力操作に対して検索条件を時間帯別に設定しておく機能について記載も示唆も無い。
そうすると、仮に引用発明に引用例2記載の事項を適用できたとしても、1の定形入力操作に対して検索条件を時間帯別に設定しておく機能という構成は得られないから、引用発明において相違点にかかる構成を採用することは当業者が容易に考えられたとすることはできないから、原査定を維持することはできない。


7.むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び引用例3記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
そうすると、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-10-10 
出願番号 特願2013-212626(P2013-212626)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩田 玲彦  
特許庁審判長 久保 竜一
特許庁審判官 長馬 望
堀川 一郎
発明の名称 電子機器およびプログラム  

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