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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01N
管理番号 1355570
審判番号 不服2019-1195  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-01-30 
確定日 2019-10-23 
事件の表示 特願2017- 76414「光イメージング装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月10日出願公開、特開2017-138329、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成24年12月7日に出願した特願2012?268502号の一部を平成29年4月7日に新たな特許出願としたものであって、平成30年3月2日付けで拒絶理由が通知され、同年5月7日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年10月19日付けで拒絶査定(原査定)がされたところ、平成31年1月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正(以下「本件手続補正」という。)がなされたものである。


第2 原査定の概要

原査定の概要は次のとおりである。

この出願の請求項1ないし8に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


・請求項 1、2
・引用文献等 1-3

・請求項 3、4
・引用文献等 1-4

・請求項 5-7
・引用文献等 1-5

・請求項 8
・引用文献等 1-6

引用文献等一覧
1.特表2004-534954号公報
2.米国特許第7873407号明細書
3.国際公開第2008/114372号
4.特表2006-525494号公報
5.特表2006-519995号公報
6.特開2012-154628号公報


第3 本願発明

本願の請求項1ないし8に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明8」という。)は、平成30年12月11日にされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものであり、本願発明1は以下のとおりである。

「 【請求項1】
生体試料に励起光を照射し、それに対して該試料から得られた蛍光を検出して2次元画像化する光イメージング装置において、
a)その上面の前部に、水平軸を中心に上方後部側に蝶動自在である上蓋を有する筐体と、
b)前記上蓋が上方後部側に蝶動され開放されたときに、その上方に何らの障害物もない状態で露出する、上面に生体試料を略水平に載置するための試料台であり、その載置面に光が透過する光透過部が設けられた試料台と、
c)前記試料台上に載置された生体試料に照射される励起光を発する複数の射出部を含み、該複数の射出部がそれぞれ、光学的屈折素子を用いて励起光光束を空間的に発散させつつ射出するものである照明部と、
d)該照明部による励起光に対して前記生体試料から放出された蛍光による像を取得する撮像部と、
e)前記照明部による励起光が前記試料台の光透過部を通して前記生体試料に下方から照射されるように該励起光を導くとともに該生体試料から下方へ放出され前記光透過部を経た蛍光を前記撮像部に導くべく、前記励起光と前記蛍光とを共に空間内で折り曲げる、前記試料台の下方の空間に配置された共通の反射光学部、を含む導光光学系と、
を備えることを特徴とする光イメージング装置。」

なお、本願発明2ないし8は、本願発明1を減縮した発明である。


第4 引用文献の記載事項、引用発明

1 引用文献1について

(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付加した。以下同様。)。

(引1-ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、大きくは画像化システムおよびその使用方法に関する。より具体的には本発明は、複数の視点から画像をキャプチャするのに用いられる画像化システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像化のある特別な種類は、低い強度の光(個々の光子のオーダーである)を発光する試料からキャプチャすること、および光子放射データに基づく画像の構築を伴う。この試料中の光源は、関心のある活性の源を視覚的に示す。例えば、特定のインビボ画像化の応用例は、標本の写真式表現上にスーパーインポーズされた、標本の内部からの光子放射の一つ以上の表現の分析を含む。ルミネセンス(発光、luminescence)表現は、対象となる活動が行われている標本の部分を示す。写真的表現は、ユーザに標本の画像的な基準を提供する。
【0003】
インビボ画像化は、試料の画像をカメラを用いてキャプチャすることによって行われる。増倍または冷却電荷結合素子(CCD)カメラは、試料中の低強度発光細胞の所在を検出するのにしばしば用いられる。これらのカメラは、かなり複雑で特殊な冷却を必要とし、試料室の上部の単一の場所に固定される。ユーザは、上方のカメラの視野内の試料室の底部の所定の位置に試料を置く。カメラおよび試料のこの静的な関係によって、画像キャプチャは上からの画像だけに限定される。
【0004】
しばしば、試料の異なる視像をキャプチャすることが望ましい。例えば、哺乳類試料の下側から内部の発光細胞を検出することは、上方カメラによってキャプチャされる前に光が透過しなければならない周りを覆う細胞によって影響されえる。異なる角度からのデータを集めることによって、動物の中の光源の位置および強度についてユーザは、単一の視点だけを用いて可能であるよりもより多くの情報を得ることができる。しかし上方のカメラを用いるとき、異なる視像をキャプチャするために試料を再位置決めするのは非実用的でありえる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のことを鑑みて、試料の姿勢を再位置決めすることなく異なる視点群からの画像群をキャプチャできる改良された画像化システムが非常に望まれる。」

(引1-イ)「【0016】
I.画像化システム
【0017】
ある局面において、本発明は大きくは改良された画像化システムに関する。図1Aは、本発明のある実施形態によって写真および発光画像をキャプチャする画像化システム10を示す。システム10は、画像化ボックス12内の画像キャプチャの自動化された制御をユーザに提供する。画像化システム10はまた、構造化光画像をキャプチャおよび構築するのに便利である。
【0018】
画像化システム10は、発光試料を受け入れる画像化ボックス12を備え、このボックス中では低強度の光、例えばルシフェラーゼによる発光が検出される。画像化ボックス12は、ボックスの側面鉛直壁上にある、カメラを取り付けるカメラマウント109を持つハウジング16を含む(図2A?2C)。画像化ボックス12は、「光が漏れない」ように構成され、すなわち、実質的に全ての外部光は周囲の室内からボックス12へと入射することを阻止される。
【0019】
高感度カメラ、例えば増倍された、または電荷結合素子(CCD)カメラ20が、ハウジングに固定されたカメラマウント109を好ましくは通して画像化ボックス12に取り付けられる。CCDカメラ20は、画像化ボックス12内で、試料の発光および写真(すなわち反射光による画像)の画像をキャプチャすることができる。CCDカメラ20は、低温流体を管路24を介してCCDカメラを通して循環させる冷却装置22のような適切な冷却源によって冷却されてもよい。適切な冷却装置には、ペンシルバニア州アレンタウンのIGC-APD Cryogenics Inc.から入手可能な「CRYOTIGER(登録商標)」コンプレッサがある。液体窒素または固体装置のような他の冷媒もCCDカメラ20を冷却するのに用いられえる。
・・・
【0023】
画像化システム10は、さまざまな視点およびカメラ20に対する試料の位置から複数の画像をキャプチャするのに適している。これらの画像は、試料の写真的表現上にスーパーインポーズされた試料の内部からの発光(emissions)の一つ以上の表現の分析を含むインビボ画像化の応用例で用いられえる。ある実施形態において、画像化システム10は、ルシフェラーゼ発光細胞(luciferase-expressing cells)からの発光、蛍光分子からの蛍光などの低強度光源の2-Dおよび構造化光画像化のために用いられる。低強度光源は、任意の種類の発光体または試料から放射されえ、これらには例えば、組織培養板、マルチウェル板(96、384、および864ウェル板を含む)、およびルシフェラーゼ発光細胞を持つマウスを含むさまざまな哺乳類の対象物のような、発光分子を含む動物または植物が含まれる。」

(引1-ウ)「【0026】
II.画像化ボックス
【0027】
ある局面において本発明は、さまざまな画像化操作に適切な画像化装置に関する。図1Bは、本発明のある実施形態による図1Aの画像化ボックス12の外部要素を示す。図2A?Eおよび4A?Dは、本発明のさまざまな実施形態によるボックス12の内部要素を示す。説明される画像化装置のそれぞれは、ボックス12内の試料の画像をボックスに結合されたカメラを用いてキャプチャすることができる。
【0028】
図1Bに示されるように、画像化ボックス12は開いた位置にあるドア18と共に示され、試料を受け入れるための内部空間44を示す。内部空間44は、対向する側面エンクロージャパネル103aおよび103b(103bは図2Dで見える)、底部にある光を漏らさないパーティション52、背面エンクロージャパネル47、および内部空間44の空間開口部49を規定する前面壁48によって規定される。
【0029】
空間44の下には、光を漏らさないパーティション52によって空間44から遮られたより小さなコンパートメントがあり、その上部表面が空間44の床として働く。ある実施形態においてはこのより小さなコンパートメントは、本体14内に形成された前面開口部55を通して引き出し54をスライド可能に受け入れるように構成されるハウジングスペースを提供する。引き出し54は、コンピュータ28と電気的に通信し、ボックス14のさまざまな要素および機能を制御する電子部品56を格納する。ある特定の実施形態において画像化ボックス12は、鋼のような適切な金属で作られた本体14を有する。
【0030】
ラッチのかかるドア18は、支点の回りに回転可能にボックス本体14にヒンジ46によって取り付けられ、このヒンジによりドア18が図1Aに示される閉じた位置から図1Bに示される開いた位置に移動しえる。開いた位置において、ドア18はユーザが開口部49を通して空間44にアクセスできるようにする。閉じた位置において、ドア18は開口部49を通して空間44にアクセスできないようにする。
【0031】
ここで図2A?Eを主に参照して、ボックス12のさまざまな内部要素(破線で示される)が本発明のある実施形態に基づいて説明される。図2Aは、外部壁を取り除いたボックス12の要素の上面透視図であり、固定された基準線107の真下のステージ204を示す。図2Bは、外部壁を取り除いたボックス12内の要素の上面透視図であり、固定された基準線107の下の中心からずれたステージ204を示す。図2Cは、外部壁を取り除いたボックス12内の要素の上面透視図であり、固定された基準線107の上の中心からずれたステージ204を示す。図2Dは、ボックス12の内部側面図であり、光伝送デバイス111なしで側壁103bおよびハウジング16を示す。図2Eは光伝送デバイス111なしの側壁103bおよびハウジング16の内部上面透視図である。図2A?Eは、全てドア18と共に示され、外部壁は図示のために取り除かれている。
【0032】
図2C?2Eを参照して、カメラ20は、カメラレンズ100がボックス12の側壁103bに形成されたポート101を通して内部空間44を見るように側面ハウジング16にマウントされる。カメラレンズ100は、図1Aのカメラ20に光学的に結合され、Fストップまたはレンズ100の開口を調節し、それによってレンズを通る光の量を変化させるユーザに制御される絞りまたはFストップリング102を含む。Navitar社のF0.95、50mmのTVレンズが、カメラレンズ100として使用するのに適切である。Fストップリング102は、Fストップモータ105によって駆動されるギア104と係合する円周状に配置された歯を含む。Fストップモータ105は、電気的要素56と電気的に通信し、コンピュータ28によって制御される。全体として、モータ105およびコンピュータ28内のプロセッサが協働してレンズ100のFストップの位置決めを行う。
【0033】
フォーカス機構106(図2E)は、そのフォーカスを合わせるためにレンズの往復運動を提供する。フォーカス機構は、レンズ支持体107を含み、これは上部ハウジング16にマウントされた静止部分およびネジ山が切られた内径113を含む可動部分を示す。ボルト108は内径113と係合可能であり、カメラレンズ100をフォーカスが合うように移動させるために、カメラレンズフォーカスモータ114の対応する駆動ホイール112を通して歯の付けられたベルト110によって駆動されるホイールを含む。カメラレンズフォーカスモータ114は、電気要素56と電気的に通信し、図1Aのコンピュータ28に含まれるプロセッサによって制御される。
【0034】
固定された基準線は、カメラレンズ100の場所の直線に沿ってボックス12の内部空間44へつながる固定された領域を表す。よって固定された基準線107は、側壁103bに実質的に垂直な向きに内部空間からカメラレンズ100の中心を通って(図2A?E)伸びる。この基準線107は簡単のために、移動機構202および光伝送デバイス111がその上でそれらの間で協働して試料から反射または放射された光をカメラレンズ100に向かってレンズ中へと導き、カメラ20によって画像をキャプチャする場所の基準線を提供する静止した軸によって表される。
【0035】
図2Cに示されるように、カメラマウント109は、側壁103bの側面ハウジング16に取り付けられる。カメラマウント109は、空間44内の試料106をカメラ20によって見るためにカメラ20を受け入れ、固定基準線107に対して位置付けるように構成される。カメラ20は試料106の写真の画像(すなわち反射に基づく画像)をキャプチャすることができる一方で、その発光画像をキャプチャできるだけ充分に高感度でもある。カメラ20は、電荷結合素子(CCD)、フォトダイオードアレイ、フォトゲートアレイ、または同様の画像キャプチャデバイスを利用しえる。
【0036】
可動ステージ装置200は、内部空間44内に配置され、移動機構202および発光試料106を支持するステージ204を含む。可動ステージ装置200は、ステージ204(および試料106)を内部空間44内で複数の位置に再位置決めするための動きの2つの自由度が可能である。それらの間の任意の位置が画像キャプチャのために維持されえる。
【0037】
図2A?Cに示されるように、実施形態中の移動機構202は、互いに実質的に垂直に方向付けられる2つのリニアアクチュエータ206および208を備える。それぞれのリニアアクチュエータ206および208は、ステージ204をそれぞれのアクチュエータに沿って直線的に位置付けることが可能である。リニアアクチュエータ206はステージ204の鉛直の位置付けを行い、リニアアクチュエータ208はステージ204の水平の位置付けを行う。リニアアクチュエータ206は、ボックス12に取り付けられた静止部分およびリニアアクチュエータ208に取り付けられた可動部分を持つ。リニアアクチュエータ208は、リニアアクチュエータ206に取り付けられた比較的静止の部分およびステージ204に取り付けられた可動部分を持つ。移動機構202に用いるのが適切なこのようなリニアアクチュエータの一例は、ニューヨーク州、ポート・ワシントンのThomson Industriesによって製造されるLC-33である。それぞれのリニアアクチュエータ206および208はまた、それらの個々の移動部分に沿った動きを制限するために両端に変位制限デバイスを含む。
【0038】
移動機構202は好ましくは、コンピュータ28に動作可能に結合されてステージ204の位置を制御するために位置フィードバックを与える位置センサ群のセットを含む。この場合、位置センサ群は、一端がステージ204に固定され、もう一端が巻き取りリール212a(図2A)に固定された紐または細い紐144を含む。リール上に巻かれた紐144の量および紐144の全長に基づいて、コンピュータ28はステージ204およびセンサ142の間の紐の長さを決定できる(すなわち長さによって変化する紐の抵抗に基づいてコンピュータ28中のルックアップテーブルを用いて変換を実行する)。他の実施形態において位置センサは、開始鉛直または水平位置において可動ステージ204をインターセプトする内部空間44内に配置されたレーザによって提供される。このレーザは、それから移動ステージ58の位置を共通の鉛直または水平位置にキャリブレートするのに用いられえる。
【0039】
リニアアクチュエータ206および208、位置センサ212、およびコンピュータ28は、内部空間44内のステージ204のための閉ループ位置制御を行うために結合される。より具体的にはユーザは、コンピュータ28を介して、固定基準線107の回りの実質的に円形のパスに沿った一つ以上のステージ204の位置を入力できる。ある実施形態においてユーザは、固定基準線107に対するステージ204の視点角度(viewing angle)を与える。コンピュータ28に含まれるソフトウェアはそれから視点角度を、リニアアクチュエータ206および208のそれぞれを動かす制御信号に変換する。2つのリニアアクチュエータ206および208のそれぞれに含まれるモータはそれからコンピュータ28によって与えられる制御信号を受け取り、ステージ204をそれに従って位置決めする。画像キャプチャ位置群の間のステージ204の動きは、アクチュエータ206および208の同時の動きによって、またはアクチュエータ206および208のそれぞれをステップ的に順次アクティベートすることによって達成される。
【0040】
図2A?2Cにおいて最もよくわかる光伝送デバイス111は、試料106から反射または放射された光を固定基準線107の向きに沿って導き、カメラ20による画像キャプチャのためにレンズ100に入射させる。光伝送デバイス111は、静止ブラケット119(図2A)を用いてハウジング16にマウントされ、このブラケットは、ミラーアセンブリ120が静止ブラケット119に対して自由に回転できるようにする、静止ブラケット119および可動ブラケット126の間に円周状に配置されたベアリングを含む。ミラーアセンブリ120は、よって回転可能にハウジング16に結合され、固定基準線107の静止軸に同軸状にアラインされた軸の回りに回転する。
【0041】
図2Cを参照して、ミラーアセンブリ120は、ステージ204上の試料106からの光を固定された基準線107に沿った向きに反射する角度の付けられたミラー121を備える。外側壁123は、実質的に円筒状であり、光がステージ204およびミラー121の間を通ることを可能にする開口部122を含む。ミラーアセンブリ120の外側壁123はまた、ステージ204の現在の視点角度と直接に関係しない、内部空間44内に残留する光がレンズ100に到達するのを防ぐ。これは、ステージ204の長さにわたるだけミラー121を充分に長く構成することによって部分的には達成される。ステージが静止軸の周りの円形パスに沿って位置するとき、外側壁123およびミラー121は協働してステージ204の角度が付けられた向きから主に光を集め、この光はレンズ100によって受光されるためにそれから固定基準線107に沿って反射される。
【0042】
図2Fは、光伝送デバイス111を用いたボックス12内での光伝送の簡略化された図を示す。図2Fで示されるように、図2Aに示されるステージ204の位置について、光は試料106から放射され、ミラー121で反射され、固定基準線107に沿って伝送される。
【0043】
ある実施形態において光源は、ミラーアセンブリ120の筒内に設けられ、画像化ボックス12内の試料または標本を照らす。光源は、試料の写真画像をキャプチャするために連続的に照らしても、瞬間的に光ってから発光画像をキャプチャするときには消されてもよい。ある特定の実施形態において光源は、カメラレンズ100の周囲に円周上に配置された低電力のライトの輪を備える。他の実施形態において光源は、白色発光ダイオード(LED)の4つのペアを備え、これらのうちの一つのペアは、カメラレンズ100の周囲の4つの角のそれぞれにマウントされる。LEDを用いる一つの優位性は、そのスペクトル放射が赤外光を含まずに可視光を含みえることである。ワイヤ(不図示)がライトから電子要素56およびコンピュータ28に伸びて、光量がコンピュータ28を通して外部から制御することが可能でありえる。
【0044】
図2Fはまた、構造化光源170の使用を示す。示されるように構造化光源170から放射される構造化光源175は、ミラー173で反射され、部分的に透明なミラー121を通過し、試料106に達する。ある実施形態において、ミラー121の部分的に透明であることは、ハーフミラーまたは部分的に鍍金されたミラーを用いて達成される。他の実施形態において、波長に特定の透明度特性を持つダイクロイックミラーが用いられる。構造化光175はそれからカメラ20によってキャプチャされえる。
【0045】
図2A?2Eで示される実施形態において光伝送デバイス111は、コンピュータ28を用いてミラーアセンブリ120の制御および固定基準線107に対する位置付けを行う。ミラーアセンブリ120は、ミラーアセンブリモータ128によって駆動されるベルトに係合する(図2E)円周上に配置された歯を可動ブラケット126の内側に含む(歯は不図示)。可動ブラケット126はそれから、モータ128の入力について静止ブラケット119に対して回転運動を提供する。モータ128は電子要素56と電気的に通信し、コンピュータ28によって制御される。モータ128およびコンピュータ28内のプロセッサは併せて協働してミラーアセンブリ120の回転位置を制御する。
【0046】
移動機構202によって提供される2つの自由度の動きは、カメラ20による画像キャプチャのために、ステージ204および試料106が固定基準線107に対して複数の角度で位置することを可能にする。よってコンピュータ28を介したユーザ入力に基づいて、移動機構202および光伝送デバイス111は協働してステージ204上の試料106からの光を固定基準線107およびレンズ100に導くことによって、カメラ20を用いて画像をキャプチャする。円形パスの周りに試料106の全360度の角度の視点を提供するのにくわえて、移動機構202は、固定基準線107に対するステージ204の与えられた角度について画像の深さを変化させることが可能である。併せて移動機構202および光伝送デバイス111は協働して、約7.5cmから約16.5cmの範囲のカメラ20の視野を提供する。ある特定の実施形態において、光伝送デバイス111は協働して、約13cmから約16.5cmの範囲のカメラ20の視野を提供する。上述のユーザが設定する角度位置制御と同様に、ユーザはステージ204の所望の焦点深度および視点角度を入力しえる。コンピュータ28に含まれるソフトウェアおよびリニアアクチュエータ206および208はそれから協働してステージ204を固定基準線107に対して所望の角度および深さに位置付ける。
【0047】
動作中にステージ204およびミラーアセンブリ120が不用意に接触しないように、移動機構202は、衝突防止機構を内蔵してもよい。ある実施形態においてそのような衝突防止機構は、ソフトウェアによるものであり、コンピュータ28内のプロセッサによって制御される。よってステージ204の位置フィードバックおよびミラーアセンブリ120の既知の位置に基づいて、コンピュータ28はステージ204が不用意にミラーアセンブリ120に接触しないようにする制御信号を発生する。これは、図2Cに示されるような位置および180度離れた位置の間のステージ204の移動に有利でありえる。この場合、コンピュータ28のプロセッサは制御信号をリニアアクチュエータ206および208に伝達し、これらアクチュエータがステージ204をミラーアセンブリ120の周りに軌道をもって移動する、例えば、固定基準線107からの最小半径を維持しながら移動する。
【0048】
こんどは図3Aおよび3Bを参照して、本発明のある実施形態によるステージ204の上面図および側面図がそれぞれ示される。
【0049】
ある実施形態において、ステージ204は、ステージ204およびボックス12内の他の要素が不用意に接触することを防止するハードウェアによる衝突防止機構を含む。特定の実施形態において衝突ピン250は、図3Aに示されるようにステージ204のカメラ20に最も近い側面に配置される。衝突ピン250は、ステージ204および要素が空間44内で接触することを防止する。ステージ204と光伝送デバイス111、カメラ20または壁103bとの間の接触を防止するために、金属リング260が静止ブラケット119上に光伝送デバイス111の周りに円周状に配置される。金属衝突ピン250はグラウンドに落とされ、金属リング260は5Vに維持されるので、衝突ピン250および金属リング260の間の予期しない接触は、リミットスイッチとして機能し、ステージ204に接触した旨の電気的通信をコンピュータ28と即時に行う。それからステージ204の動きは停止される。併せて衝突ピン250および金属リング260は、リニアアクチュエータ206および208が動くあいだ、円形の衝突防止境界を光伝送デバイス111の周囲に設定する。
【0050】
他の実施形態において、ステージ204が不用意に空間44内の要素に接触することを防ぐためのソフトウェアによる衝突防止が実現されえる。位置センサ212を用いたステージ204の位置フィードバックおよびミラーアセンブリ120の既知の位置に基づいて、コンピュータ28は、ステージ204がミラーアセンブリ120と重ならないようにし、よって試料106および空間44内の要素の間の不用意な接触のリスクを最小限にする制御信号を作る。
【0051】
図3Aに示されるように、ステージ204は、フレーム252および透明部254を備える。透明部254は、固定基準線107の周りのステージ204の任意の位置について、試料106から放射または反射された光が光伝送デバイス111へと実質的に干渉なしに最小限の歪みで伝わることを可能にする。透明部254は、試料106を支持する透明なワイヤアレイ256を好ましくは備える。特定の実施形態において透明なワイヤアレイ256は、フレーム252の対向するエッジ上の穴258を通して編まれた単一の透明なナイロン糸であり、試料106を支持するために張られた状態に保持される。他の実施形態においてアレイ256は、テニスラケットのメッシュと同様のクロスパターンの格子に似たメッシュである。
【0052】
ボックス12はまた、ボックス12内で試料の画像キャプチャを促進する他の要素を含んでもよい。カメラレンズ100の自動焦点制御に加えシステム10は、カメラ20および固定基準線107に沿った光の通路の間に、マルチフィルタ群118を少なくとも部分的に選択的に提供する自動フィルタ選択デバイス117も含む。フィルタ118のそれぞれは、一つ以上の特定の画像化応用例について画像キャプチャを促進しえる。図2Dに示されるように、光フィルタ選択デバイス117は、その周囲に複数の光学フィルタ群118を備えるように構成された円形フィルタ選択ホイール116を含む。ホイール116は、その中心で回転可能なように、側面ハウジング16に付けられた取り付けブラケット130に装着される。フィルタホイール116は、レンズ100からは中心がずらされて装着されることによって、試料から放射されカメラレンズ100に達する前にミラー121によって反射された光が交差する位置に、個々のフィルタ118がそれぞれ回転できる。フィルタ116は、その周辺のエッジに溝を持ち、この中に歯の付けられたベルト131が噛み合う。歯の付けられたベルト131はまた、フィルタホイールモータ136上のドライブホイール134と係合する。フィルタホイールモータ136は、電気要素56と電気的に通信し、コンピュータ28に含まれるプロセッサによって制御される。フィルタホイール116によって支持される複数の光学フィルタ118は、明るい試料のための中性灰色フィルタ、特定の波長を制限する1つ以上の波長阻止フィルタ、励起光が検出光とは異なる蛍光の応用例のための蛍光フィルタなど、画像キャプチャを促進する任意の幅広い光学フィルタを含みえる。」

(引1-エ)【図1B】




(引1-オ)【図2A】




(引1-カ)【図2B】




(引1-キ)【図2C】




(引1-ク)【図3A】




(2)引用文献1の記載において、「側面エンクロージャパネル」「103b」及び「側壁103b」、「内部空間44」及び「空間44」、「空間開口部49」及び「開口部49」、「画像化ボックス12」及び「ボックス12」、「自動フィルタ選択デバイス117」及び「光フィルタ選択デバイス117」、「円形フィルタ選択ホイール116」及び「フィルタホイール116」は、それぞれ同じものを表すと認められることから、以下、表記を「側面エンクロージャパネル103b」、「内部空間44」、「空間開口部49」、「画像化ボックス12」、「自動フィルタ選択デバイス117」、「円形フィルタ選択ホイール116」に統一する。

上記(引1-ア)ないし(引1-ク)の記載から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 試料106として発光分子を含む動物を含み、
試料106を受け入れるための内部空間44は、対向する側面エンクロージャパネル103a及び103b、底部にある光を漏らさないパーティション52、背面エンクロージャパネル47、並びに内部空間44の空間開口部49を規定する前面壁48によって規定され、
ラッチのかかるドア18は、支点の回りに回転可能にボックス本体14にヒンジ46によって取り付けられ、開いた位置において、ドア18はユーザが空間開口部49を通して内部空間44にアクセスできるようにし、閉じた位置において、ドア18は空間開口部49を通して内部空間44にアクセスできないようにし、
カメラ20は、カメラレンズ100がボックス12の側面エンクロージャパネル103bに形成されたポート101を通して内部空間44を見るように側面ハウジング16にマウントされ、試料106の写真の画像(すなわち反射に基づく画像)をキャプチャすることができる一方で、その発光画像をキャプチャできるだけ充分に高感度でもあり、
固定された基準線107は、カメラレンズ100の場所の直線に沿ってボックス12の内部空間44へつながる固定された領域を表し、よって固定された基準線107は、側面エンクロージャパネル103bに実質的に垂直な向きに内部空間からカメラレンズ100の中心を通って伸び、
可動ステージ装置200は、内部空間44内に配置され、移動機構202及び試料106を支持するステージ204を含み、ステージ204(及び試料106)を内部空間44内で複数の位置に再位置決めするための動きの2つの自由度が可能であり、それらの間の任意の位置が画像キャプチャのために維持され得るものであり、ステージ204は、フレーム252及び透明部254を備え、透明部254は、試料106から放射又は反射された光が光伝送デバイス111へと実質的に干渉なしに最小限の歪みで伝わることを可能にし、
光伝送デバイス111は、ハウジング16にマウントされ、試料106から反射又は放射された光を固定基準線107の向きに沿って導き、カメラ20による画像キャプチャのためにレンズ100に入射させるものであって、ミラーアセンブリ120は、回転可能にハウジング16に結合され、固定基準線107の静止軸に同軸状にアラインされた軸の回りに回転し、ステージ204上の試料106からの光を固定された基準線107に沿った向きに反射する角度の付けられたミラー121を備え、ステージ204が静止軸の周りの円形パスに沿って位置するとき、ミラーアセンブリ120の外側壁123及びミラー121は協働してステージ204の角度が付けられた向きから主に光を集め、この光はレンズ100によって受光されるためにそれから固定基準線107に沿って反射され、
光源は、白色発光ダイオード(LED)の4つのペアを備え、これらのうちの一つのペアは、カメラレンズ100の周囲の4つの角のそれぞれにマウントされ、
カメラ20及び固定基準線107に沿った光の通路の間に、マルチフィルタ群118を少なくとも部分的に選択的に提供する自動フィルタ選択デバイス117を含み、自動フィルタ選択デバイス117は、その周囲に複数の光学フィルタ群118を備えるように構成された円形フィルタ選択ホイール116を含み、円形フィルタ選択ホイール116によって支持される複数の光学フィルタ118は、明るい試料のための中性灰色フィルタ、特定の波長を制限する1つ以上の波長阻止フィルタ、励起光が検出光とは異なる蛍光の応用例のための蛍光フィルタなど、画像キャプチャを促進する任意の幅広い光学フィルタを含む、
画像化ボックス12。」


第5 対比・判断

1 本願発明1について

(1)本願発明1と引用発明とを対比する。


(ア)引用発明の、「試料106として」の「動物」は、本願発明1の「生体試料」に相当する。

(イ)引用発明の「励起光が検出光とは異なる蛍光の応用例」が、「光源」が発した励起光を「試料106」に照射し、それにより「試料106」が発した蛍光による蛍光画像を「カメラ20」でキャプチャする使用例を意味することは明らかである。

(ウ)上記(ア)及び(イ)を踏まえると、引用発明の「試料106として発光分子を含む動物を含み」、「励起光が検出光とは異なる蛍光の応用例」を使用例として含む「画像化ボックス12」は、本願発明1の「生体試料に励起光を照射し、それに対して該試料から得られた蛍光を検出して2次元画像化する光イメージング装置」に相当する。


(ア)引用発明の「支点」と、本願発明1の「水平軸」とは、「回転軸」で共通する。

(イ)引用発明の「回転可能に」「ヒンジ46によって取り付けられ」ていることは、本願発明1の「蝶動自在である」ことに相当する。

(ウ)引用発明の「ドア18」と、本願発明1の「上蓋」とは、「開閉体」で共通する。

(エ)引用発明の「ボックス本体14」は、本願発明1の「筐体」に相当する。

(オ)上記(ア)ないし(エ)を踏まえると、引用発明の「ドア18」が「支点の回りに回転可能に」「ヒンジ46によって取り付けられ」た「ボックス本体14」と、本願発明1の「その上面の前部に、水平軸を中心に上方後部側に蝶動自在である上蓋を有する筐体」とは、「回転軸を中心に蝶動自在である開閉体を有する筐体」で共通する。


(ア)引用発明において、「ステージ204」が水平になるように配置されることは明らかであるから、上記ア(ア)を踏まえると、引用発明の「試料106を支持するステージ204」は、本願発明1の「上面に生体試料を略水平に載置するための試料台」に相当する。

(イ)引用発明の「フレーム252及び透明部254を備え、透明部254は、試料106から放射又は反射された光が光伝送デバイス111へと実質的に干渉なしに最小限の歪みで伝わることを可能に」することは、本願発明1の「その載置面に光が透過する光透過部が設けられ」ていることに相当する。

(ウ)引用発明の「ステージ204」は、「内部空間44内に配置され」、「開いた位置において、ドア18はユーザが空間開口部49を通して内部空間44にアクセスできるように」することから、「ドア18」が「開いた位置において」、「ステージ204」が露出することは明らかである。

(エ)上記(ア)ないし(ウ)及びイを踏まえると、引用発明の「ドア18は、支点の回りに回転可能にボックス本体14にヒンジ46によって取り付けられ、開いた位置において、ドア18はユーザが空間開口部49を通して内部空間44にアクセスできるようにし」、その「内部空間44内に配置され」た「ステージ204」と、本願発明1の「前記上蓋が上方後部側に蝶動され開放されたときに、その上方に何らの障害物もない状態で露出する、上面に生体試料を略水平に載置するための試料台であり、その載置面に光が透過する光透過部が設けられた試料台」とは、「前記開閉体が蝶動され開放されたときに、露出する、上面に生体試料を略水平に載置するための試料台であり、その載置面に光が透過する光透過部が設けられた試料台」で共通する。


(ア)引用発明の「光源」は、本願発明1の「照明部」に相当する。

(イ)引用発明の「白色発光ダイオード(LED)の4つのペア」は、本願発明1の「複数の射出部」に相当する。

(ウ)上記(ア)及び(イ)、ア並びにウ(ア)を踏まえると、引用発明の「白色発光ダイオード(LED)の4つのペアを備え」た「光源」と、本願発明1の「前記試料台上に載置された生体試料に照射される励起光を発する複数の射出部を含み、該複数の射出部がそれぞれ、光学的屈折素子を用いて励起光光束を空間的に発散させつつ射出するものである照明部」とは、「前記試料台上に載置された生体試料に照射される励起光を発する複数の射出部を含む照明部」で共通する。


(ア)引用発明の「カメラ20」は、本願発明1の「撮像部」に相当する。

(イ)上記(ア)及びア(イ)を踏まえると、引用発明の「試料106の写真の画像(すなわち反射に基づく画像)をキャプチャすることができる一方で、その発光画像をキャプチャできるだけ充分に高感度でもあ」る「カメラ20」は、本願発明1の「該照明部による励起光に対して前記生体試料から放出された蛍光による像を取得する撮像部」に相当する。


(ア)引用発明は、「ステージ204上の試料106からの光を固定された基準線107に沿った向きに反射する角度の付けられたミラー121を備え」たものであるところ、引用発明の「励起光が検出光とは異なる蛍光の応用例」において、「光源は、白色発光ダイオード(LED)の4つのペアを備え、これらのうちの一つのペアは、カメラレンズ100の周囲の4つの角のそれぞれにマウントされ」ていることから、「光源」が発した「励起光」は、「ミラー121」で反射されて「ステージ204上の試料106」に照射されることは明らかである。

(イ)引用発明の「ミラー121」及び「光伝送デバイス111」は、それぞれ本願発明1の「反射光学部」及び「導光光学系」に相当する。

(ウ)上記(ア)及び(イ)を踏まえると、引用発明の「ミラーアセンブリ120は、回転可能にハウジング16に結合され、固定基準線107の静止軸に同軸状にアラインされた軸の回りに回転し、ステージ204上の試料106からの光を固定された基準線107に沿った向きに反射する角度の付けられたミラー121を備え、ステージ204が静止軸の周りの円形パスに沿って位置するとき、ミラーアセンブリ120の外側壁123及びミラー121は協働してステージ204の角度が付けられた向きから主に光を集め、この光はレンズ100によって受光されるためにそれから固定基準線107に沿って反射され」、「試料106から反射又は放射された光を固定基準線107の向きに沿って導き、カメラ20による画像キャプチャのためにレンズ100に入射させるものであ」る「光伝送デバイス111」と、本願発明1の「前記照明部による励起光が前記試料台の光透過部を通して前記生体試料に下方から照射されるように該励起光を導くとともに該生体試料から下方へ放出され前記光透過部を経た蛍光を前記撮像部に導くべく、前記励起光と前記蛍光とを共に空間内で折り曲げる、前記試料台の下方の空間に配置された共通の反射光学部、を含む導光光学系」とは、「前記照明部による励起光が前記試料台の前記生体試料に照射されるように該励起光を導くとともに該生体試料から放出された蛍光を前記撮像部に導くべく、前記励起光と前記蛍光とを共に空間内で折り曲げる、空間に配置された共通の反射光学部、を含む導光光学系」で共通する。

(2)よって、本願発明1と引用発明とは、

「 生体試料に励起光を照射し、それに対して該試料から得られた蛍光を検出して2次元画像化する光イメージング装置において、
a)回転軸を中心に蝶動自在である開閉体を有する筐体と、
b)前記開閉体が蝶動され開放されたときに、露出する、上面に生体試料を略水平に載置するための試料台であり、その載置面に光が透過する光透過部が設けられた試料台と、
c)前記試料台上に載置された生体試料に照射される励起光を発する複数の射出部を含む照明部と、
d)該照明部による励起光に対して前記生体試料から放出された蛍光による像を取得する撮像部と、
e)前記照明部による励起光が前記試料台の前記生体試料に照射されるように該励起光を導くとともに該生体試料から放出された蛍光を前記撮像部に導くべく、前記励起光と前記蛍光とを共に空間内で折り曲げる、空間に配置された共通の反射光学部、を含む導光光学系と、
を備える光イメージング装置。」

の発明である点で一致し、次の3点で相違する。

(相違点1)
試料台に対する導光光学系の反射光学部の配置について、本願発明1においては、「励起光が前記試料台の光透過部を通して前記生体試料に下方から照射されるように該励起光を導くとともに該生体試料から下方へ放出され前記光透過部を経た蛍光を前記撮像部に導くべく」、「反射光学部」は「前記試料台の下方の空間に配置され」ているのに対し、引用発明においては、「ステージ204」は「移動機構202」により「内部空間44内で複数の位置に再位置決めするための動きの2つの自由度が可能であり、それらの間の任意の位置が画像キャプチャのために維持され得るものであり」、「ミラー121」は「固定基準線107の静止軸に同軸状にアラインされた軸の回りに回転」することから、励起光がステージ204の透明部254を通して試料106に下方から照射されるように該励起光を導くとともに該試料106から下方へ放出され前記透明部254を経た蛍光をカメラ20に導くべく、「ミラー121」が「ステージ204」の下方に位置するように「ステージ204」を移動させることができるが、「ステージ204」の位置は固定されたものではない点。

(相違点2)
回転軸を中心に蝶動自在である開閉体が、本願発明1においては、「筐体」の「上面の前部に、水平軸を中心に上方後部側に蝶動自在」に設けられ、「上方後部側に蝶動され開放されたときに」、「試料台」を「その上方に何らの障害物もない状態で露出」させる「上蓋」であるのに対し、引用発明においては、「支点の回りに回転可能にボックス本体14にヒンジ46によって取り付けられ、開いた位置において」、「ユーザが」「前面壁48」によって「規定」される「空間開口部49を通して内部空間44にアクセスできるように」する「ドア18」である点。

(相違点3)
照明部の射出部のそれぞれが、本願発明1においては、「光学的屈折素子を用いて励起光光束を空間的に発散させつつ射出するものである」のに対し、引用発明においては、そのような特定はされていない点。

(3)相違点についての判断

ア 上記相違点1について検討する。

(ア)引用発明は、(引1-ア)の段落【0005】に記載された「試料の姿勢を再位置決めすることなく異なる視点群からの画像群をキャプチャできる改良された画像化システムが非常に望まれる。」という課題に対処するために、「ステージ204(及び試料106)を内部空間44内で複数の位置に再位置決めするための動きの2つの自由度が可能であり、それらの間の任意の位置が画像キャプチャのために維持され得るもの」とする「移動機構202」を採用したものである。
そのため、引用発明において、「試料の姿勢を再位置決めすることなく異なる視点群からの画像群をキャプチャできる」ことを阻害する構成である、「ミラー121」が「ステージ204」の下方に位置するように「ステージ204」の配置を固定させる構成を採用する動機付けはない。

(イ)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3ないし6には、反射光学部を試料台の下方の空間に配置することは、記載も示唆もない。

(ウ)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2は、試料の上下左右の四方からの撮影を可能とするピラミッド型の反射部材を開示している。
そこで、「試料の姿勢を再位置決めすることなく異なる視点群からの画像群をキャプチャできる」ようにするための構成として、引用発明のステージ204を移動させる構成に代えて、引用文献2に開示されたピラミッド型の反射部材を採用する場合について検討する。
この場合、ステージ204の下方にピラミッド型の反射部材の一面が存在することになり、上記相違点1に係る本願発明1の特定事項を得ることができる。

イ 次ぎに、相違点2について検討する。

上記ア(ウ)で検討した引用発明のステージ204を移動させる構成に代えて、引用文献2に開示されたピラミッド型の反射部材を採用する場合、ステージ204の上方にもピラミッド型の反射部材の一面が存在することになり、引用発明のドア18がボックス本体14の上面開口部を開閉する構成に変更したとしても、上記相違点2に係る本願発明1の特定事項である「試料台」を「その上方に何らの障害物もない状態で露出」させる構成を得ることはできない。
そうすると、引用文献1ないし6に基づいて、上記相違点1及び2に係る本願発明1の発明特定事項をともに備えた構成を得ることはできない。

ウ したがって、上記相違点3について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2ないし6の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明2ないし8について

本願発明2ないし8は、本願発明1を減縮した発明であって、本願発明1の「その上方に何らの障害物もない状態で露出する、上面に生体試料を略水平に載置するための試料台」及び「前記試料台の下方の空間に配置された共通の反射光学部」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明及び引用文献2ないし6の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


第6 原査定について

本件手続補正により、本願発明1ないし8は、「その上方に何らの障害物もない状態で露出する、上面に生体試料を略水平に載置するための試料台」及び「前記試料台の下方の空間に配置された共通の反射光学部」という特定事項を有するものとなっており、当業者であっても、原査定において引用された引用文献1ないし6に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第7 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-10-08 
出願番号 特願2017-76414(P2017-76414)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 横尾 雅一  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 渡戸 正義
信田 昌男
発明の名称 光イメージング装置  
代理人 特許業務法人京都国際特許事務所  
代理人 特許業務法人京都国際特許事務所  

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