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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1355582
審判番号 不服2018-1667  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-06 
確定日 2019-10-03 
事件の表示 特願2016-513787「ユーザ装置、及び上り送信電力情報送信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月22日国際公開、WO2015/159874〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2015(平成27年)年4月14日(国内優先権主張 平成26年4月18日)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯の概略は以下のとおりである。

平成28年10月 5日 手続補正書の提出
平成29年 5月26日付け 拒絶理由通知書
平成29年 8月 7日 意見書及び手続補正書の提出
平成29年10月27日付け 拒絶査定
平成30年 2月 6日 拒絶査定不服審判の請求及び手続補正書の提出
平成30年11月28日 上申書の提出

第2 平成30年2月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年2月6日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により,本件補正前の特許請求の範囲の請求項9は,請求項8として次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。)
「デュアルコネクティビティによりユーザ装置と通信を行う第1の基地局及び第2の基地局を備える移動通信システムにおける前記ユーザ装置が実行する上り送信電力情報送信方法であって,
前記ユーザ装置における上り送信電力情報を前記第1の基地局又は前記第2の基地局に送信するための送信トリガを検知する送信トリガ検知ステップと,
前記送信トリガ検知ステップにより検知された送信トリガに基づいて,前記上り送信電力情報を前記第1の基地局又は前記第2の基地局に送信する上り送信電力情報送信ステップとを備え,
前記送信トリガ検知ステップにおいて,前記ユーザ装置は,
前記第1の基地局の配下のプライマリセルが前記ユーザ装置において設定された後,前記第2の基地局の配下の最初のセルであり,常にアクティベートされるPSCellが前記ユーザ装置に追加されることを前記送信トリガとして検知する
ことを特徴とする上り送信電力情報送信方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,平成29年8月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項9は次のとおりである。
「デュアルコネクティビティによりユーザ装置と通信を行う第1の基地局及び第2の基地局を備える移動通信システムにおける前記ユーザ装置が実行する上り送信電力情報送信方法であって,
前記ユーザ装置における上り送信電力情報を前記第1の基地局又は前記第2の基地局に送信するための送信トリガを検知する送信トリガ検知ステップと,
前記送信トリガ検知ステップにより検知された送信トリガに基づいて,前記上り送信電力情報を前記第1の基地局又は前記第2の基地局に送信する上り送信電力情報送信ステップとを備え,
前記送信トリガ検知ステップにおいて,前記ユーザ装置は,
前記第1の基地局の配下のプライマリセルが前記ユーザ装置において設定された後,前記第2の基地局の配下の最初のセルであるPSCellが前記ユーザ装置に追加されることを前記送信トリガとして検知する
ことを特徴とする上り送信電力情報送信方法。」

2 補正の適否
本件補正は,本件補正前の請求項9に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記第1の基地局の配下のプライマリセルが前記ユーザ装置において設定された後,前記第2の基地局の配下の最初のセルであるPSCellが前記ユーザ装置に追加されることを前記送信トリガとして検知する」を「前記第1の基地局の配下のプライマリセルが前記ユーザ装置において設定された後,前記第2の基地局の配下の最初のセルであり,常にアクティベートされるPSCellが前記ユーザ装置に追加されることを前記送信トリガとして検知する」に限定的に減縮したものである。また,本件補正前の請求項9に記載された発明と本件補正後の請求項8に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして,当該補正は本願当初明細書【0005】の記載を根拠とするものであり,同法第17条の2第3項に違反するところはない。また,同条第4項に違反するところはない。
そこで,本件補正後の請求項8に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものと認める。

(2)引用発明,及び,周知技術
ア 引用例2
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,NSN, Nokia Corporation, PHR for dual connectivity(当審仮訳:デュアルコネクティビティのためのPHR), 3GPP TSG-RAN WG2 ♯85 R2-140139, 2014年2月1日掲載, URL: http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_85/Docs/R2-140139.zip(以下「引用例2」という。なお,当該文書には,「3GPP TSG-RAN WG2 Meeting #84」との記載があるが,当該文書のタイムスタンプ,URL等から,「3GPP TSG-RAN WG2 Meeting #85」の誤りであると認める。)には,図面とともに,次の記載がある。

(ア)
「2 Discussion
PHR are typically needed at the eNB to know when the UE starts using power scaling because it is allocated too many resources, or similarly to estimate how many additional resources the UE can still be allocated before it starts being power limited. Therefore with dual connectivity PHR reporting to both nodes (either from UE or via X2 interface) is needed for UL resource allocation when there is UL transmission to both nodes.

It has been agreed during last meeting that there will be a special cell in SeNB carrying PUCCH in UL (PSCell). Furthermore, we assume that it should be possible to configure simultanous PUCCH and PUSCH transmission on this PSCell. In R10 specifications, type 2 PH is only used for PCell if simultaneous transmission of PUCCH and PUSCH is configured. In a similar way, Type 2 PH for PSCell should be supported with dual connectivity for if simultaneous transmission of PUCCH and PUSCH is configured for SCG..

In general dual transmission with simultaneous PUSCH to both MeNB and SeNB will be supported with dual connectivity.

a) Under this assumption current PHR mechanism for CA could be reused for dual connectivity and PHR for all (activated) cells reported to both eNBs for the schedulers to get more information about how much power is available in the UE.
NOTE:Only by having PH information of all (activated) cells the eNB can determine whether the UE is entering power limitations.

b) Alternatively it could be possible to have PHR only reported towards one eNB (e.g. the MeNB) and relay the information to the other eNB via X2 interface if needed, but the delay might impact the scheduling efficiency since PHR information should be rather real-time.
c) Another alternative would be to signal cell-specific PHR only towards the eNB responsible for scheduling the corresponding cells. Then each eNB could independently perform radio resource allocation using cell-specific PHR. In this case it would be difficult to detect whether a UE gets into power limitations unless one of the eNBs (e.g. the SeNB) periodically forwards its PH information to the other eNB (e.g. the MeNB).

d) Another possibility would be that PHR for all (activated) cells are transmitted to one eNB only (e.g. the MeNB), while the other eNB (e.g. the SeNB) would only be informed of the PH relative to its cells.

In order to simplify specifications and to allow for different eNB implementation specific resource allocation algorithms, we propose as working assumption that PHR for all (activated) cells should be reported to both eNBs (option a).

Proposal 1: PHR report to either eNB should include PH for all the activated cells (not restricted to the eNB to which the PHR is transmitted).」(第1葉第10行-同第40行)
(当審仮訳:
2 議論
PHRは典型的にeNBにおいて,過大なリソースがアロケートされたためUEが何時パワースケーリングの使用を開始するかを知るため,又は,同様に電力制限になる前にどれぐらい追加のリソースがUEにアロケートできるかを見積もるために必要とされる。それゆえ,デュアルコネクティビティにおいて,両方のノードへUL送信が存在するとき,両方のノードへのPHRリポーティング(UEから,又は,X2インターフェイスを介してのどちらも)がULリソースアロケーションのために必要とされる。

前回のミーティングの中で,ULでPUCCHを搬送するSeNBにおける特別なセル(PSCell)が導入されるであろうことが合意された。さらに,我々はこのPSCell上でPUCCHとPUSCHの同時送信が構成されうるべきことを仮定する。R10仕様において,PUCCHとPUSCHの同時送信が構成された場合,タイプ2 PHはPCellにのみ使用された。同様の方法でPSCellのためのタイプ2 PHは,PUCCHとPUSCHの同時送信がSCGのために構成された場合,デュアルコネクティビティとともにサポートされるべきである。

一般的にMeNBとSeNBの両方への同時PUSCH二重送信はデュアルコネクティビティとともにサポートされる。

a) この仮定の下にデュアルコネクティビティとスケジューラがどの程度の電力がUEに適用可能かについてのより多くの情報を得るために,現在のCAのためのPHR機構は両方のeNBへ報告された全ての(アクティベートされた)セルのためのPHRのために再利用されるであろう。

・記:全ての(アクティベートされた)セルのPH情報を持つことによってのみeNBはUEが電力制限に入ったか否かを決定することができる。

b) 別の選択肢として,PHRが一つのeNB(例えばMeNB)に報告されるのみで,その情報を必要に応じ,X2インターフェイスを介して他のeNBへ中継することも可能であろう,しかし,PHR情報はどちらかといえばリアルタイムであるべきなので,この遅延はスケジューリングの効率に影響を与えるだろう。

c) もう一つの選択肢はセル固有のPHRを対応するセルをスケジューリングするための責任のあるeNBにのみシグナリングすることであろう。この場合,それぞれのeNBはセル固有のPHRを用いて独立に無線リソース割当てを実行することができるであろう。この場合,eNBの一つ(例えばSeNB)が定期的にPH情報を他のeNB(例えばMeNB)に転送しなければ,UEが電力制限に入ったか否かを検出することは難しいであろう。

d) 他の可能性としては,全ての(アクティベートされた)セルのためのPHRは一つのeNB(例えばMeNB)のみに送信され,一方他のeNB(例えばSeNB)は自身のセルに関連するPHのみ知らされるであろう。

仕様を単純化するため,及び,異なるeNB特有のリソース配分アルゴリズムを許すために,我々は作業仮説として,全ての(アクティベートされた)セルのためのPHRは両方のeNBへレポートされるべきということを提案する(オプション a)。

提案1:両eNBへレポートするPHRは(PHRが送信されたeNBに制限されるのではなく)全てのアクティベートされたセルのPHを含むべきである。)

(イ)
「A Power Headroom Report(PHR) shall be triggered if any of the following events occur
(中略)
- activation of an SCell with configured uplink.」(第2葉第4行-同第11行)

(当審仮訳:
以下のいずれかのイベントが発生した際に,パワーヘッドルームレポート(PHR)がトリガされるだろう。
(中略)
- アップリンクが構成されたSCellのアクティベーション。)

(ウ)
「Proposal 4: activation of an SCell with configured uplink triggers PHR to both MeNB and SeNB.」(第2葉第27行)

(当審仮訳:
提案4: アップリンクが構成されたSCellのアクティベーションがMeNBとSeNBの両方へのPHRをトリガする。)

(エ)
「5.4.6 Power Headroom Reporting
The Power Headroom reporting procedure is used to provide the serving eNB, and for the case of dual connectivity MeNB and SeNB, with information about the difference between the nominal UE maximum transmit power and the estimated power for UL-SCH transmission per activated Serving Cell and also with information about the difference between the nominal UE maximum power and the estimated power for UL-SCH and PUCCH transmission on PCell and PSCell.
The reporting period, delay and mapping of Power Headroom are defined in subclause 9.1.8 of [9]. RRC controls Power Headroom reporting by configuring the two timers periodicPHR-Timer and prohibitPHR-Timer, and by signalling dl-PathlossChange which sets the change in measured downlink pathloss and the required power backoff due to power management (as allowed by P-MPRc [10]) to trigger a PHR [8].
In case of dual connectivity, the PHR contains information about Cells MCG as well as Cells in SCG.

For each MAC entity, a Power Headroom Report (PHR) shall be triggered if any of the following events occur:
(中略)
- activation of an SCell with configured uplink of either MCG or SCG.」(第3葉第8行-同第26行)

(当審仮訳:
5.4.6 パワーヘッドルームレポーティング
パワーヘッドルームレポーティング処理は,名目上の(nominal)UEの最大送信電力とアクティベートされたサービングセルごとのUL-SCH送信の推定電力との差についての情報,そして,名目上のUEの最大電力とPCellとPSCellのUL-SCHとPUCCH送信のための推定電力との差についての情報,をサービングeNB,そしてデュアルコネクティビティの際にはMeNBとSeNBへ提供することに用いられる。
レポートの期間,遅延そしてパワーヘッドルームのマッピングは[9]の9.1.8節に定義されている。RRCはパワーヘッドルームレポーティングをperiodicPHR-TimerとprohibitPHR-timerの2つのタイマーを構成することより,そして,測定されたダウンリンクパスロスにおける変更を設定し,(P-MPRc[10]によって許可されたものとして)PHRをトリガするためのパワーマネージメントのための電力の後退を要求するdl-PathlossChangeのシグナリングによりコントロールする。
デュアルコネクティビティの場合,PHRは,MCGのセルと同様にSCGのセルについての情報を含む。

各々のMACエンティティのために,パワーヘッドルームレポート(PHR)は以下のイベントのいずれかが発生した場合にトリガされるだろう。
(中略)
- MCG又はSCGの両方のアップリンクが構成されたSCellのアクティベーション。)

(オ)
前記(ア)より,引用例2には,デュアルコネクティビティによりUEと通信を行うMeNBとSeNBが記載されているといえる。そして,MeNB,SeNB及びUEは移動通信システムの構成要素であることは,当業者にとって明らかである。よって,引用例2には,「デュアルコネクティビティによりUEと通信を行うMeNBとSeNBを備える移動通信システムにおけるUE」が記載されていると認める。
前記(イ)2の「以下のいずれかのイベントが発生した際に,パワーヘッドルームレポート(PHR)がトリガされるだろう。」,「アップリンクが構成されたSCellのアクティベーション」,前記(エ)の「各々のMACエンティティのために,パワーヘッドルームレポート(PHR)は以下のイベントのいずれかが発生した場合にトリガされるだろう。」,「MCG又はSCGの両方のアップリンクが構成されたSCellのアクティベーション」,及び,前記(ウ)の「提案4: アップリンクが構成されたSCellのアクティベーションがMeNBとSeNBの両方へのPHRをトリガする。」との記載より,引用例2には,UEの動作としてSCGのアップリンクが構成されたSCellのアクティベーションがMeNBとSeNBへのPHRをトリガすることが記載されているといえる。さらに,(ア)の「ULでPUCCHを搬送するSeNBにおける特別なセル(PSCell)が導入されるであろうことが合意された。」との記載より,PSCellはSeNBにおけるセルグループであるSCGのアップリンクが構成されたSCellであることはあきらかである。してみれば,引用例2には,「PSCellのアクティベーションがMeNBとSeNBへのPHRをトリガする」ことが記載されていると認める。

(カ)
そして,当業者の技術常識からPHRを送信(レポート)するのはUEであり,さらに,前記(ア)の「提案1:両eNBへレポートするPHRは(PHRが送信されたeNBに制限されるのではなく)全てのアクティベートされたセルのPHを含むべきである。」との記載から,引用例2には,UEの動作として「前記トリガに基づいて,PHRをMeNBとSeNBに送信する」ことが記載されているといえる。加えて,引用例2には,前記(ア)のa)-d)の選択肢があることから,PHRの送信先はMeNBとSeNBの両方又は一方に送信(レポート)されることが記載されていると認める。よって,引用例2には,「前記トリガに基づいて,PHRをMeNBとSeNBの両方又は一方に送信する 」ことが記載されていると認める。

(キ)
してみれば,引用例2には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「デュアルコネクティビティによりUEと通信を行うMeNBとSeNBを備える移動通信システムにおけるUEが実行する方法であって,
PSCellのアクティベーションによりMeNBとSeNBへのPHRがトリガされ,
前記トリガに基づいて,PHRをMeNBとSeNBの両方又は一方に送信する
方法。」

イ 引用例6
当審で新たに引用する「Qualcomm Incorporated,Physical layer aspects for dual connectivity(当審仮訳:デュアルコネクティビティのための物理層の見地),3GPP TSG-RAN WG1♯76b R1-141444,2014年3月24日掲載,URL: http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_76b/Docs/R1-141444.zip
には,以下の事項が記載されている。

(ア)
「2 Discussion
RAN 2 has already made some decisions to enable dual connectivity operation. Some of those decisions include the following:
- CA is supported in the MeNB and in the SeNB, i.e., the MeNB and the SeNB may have multiple service cells for a UE
- MCG (Master Cell Group) is the group of serving cells associated with the MeNB
- SCG (Secondary Cell Group) is the group of the serving cells associated with the SeNB」第1/6ページ第12行-第18行)
(当審仮訳:
2 議論
RAN 2はデュアルコネクティビティオペレーションを可能にするために既に幾つかの決定を行った。それらの決定の幾つかは以下の事項を含む。
- CAはMeNBとSeNBにおいてサポートされる,例えば,MeNBとSeNBはUEのために複数のサービスセルを有するだろう。
- MCG(Master Cell Group)はMeNBと関連付けられたサービングセルのグループである。
- SCG(Secondary Cell Group)はSeNBと関連付けられたサービングセルのグループである。)

(イ)
「2.1 Special SCell carrying PUCCH for SeNB
(中略)
PCell, configured as one of the cells of the MeNB, belonging to the MCG, would provide lower layer functionality as defined in Rel-11 only within the MCG. To provide lower layer functionality for SCG, a new concept of a special cell, PCell_(SCG), was introduced. The PCell_(SCG) would be configured by RRC and would provide PCell-like lower layer functionality for SCG, as shown in Table 1.
(中略)
Some of the functionalities in the Table 1 were already agreed by RAN2, but are listed for convenience. Below is the brief discussion on why we consider those functionalities/properties for PCell_(SCG) as needed. Note that the details of how each of the functionalities can be realized (if applicable) can be discussed separately.
PCell_(SCG) functionality/properties with respect to SeNB/SCG:
- Carries UE's PUCCH for all cells in SCG
(中略)
- PCell_(SCG) is always activated cell
・ Already agreed.」(第2/6ページ第7行-第4/6ページ第15行)

(当審仮訳:
2.1 SeNBのためのPUCCHを搬送する特別なSCell
(中略)
MeNBのセルの一つとして構成され,MCGに属するものであるPCellは,MCGに関してのみRel-11で定義されたように低層機能を提供するであろう。SCGのための低層機能を提供するために,特別なセルの新しいコンセプトであるPCell_(SCG)が導入された。PCell_(SCG)はRRCにより構成され,テーブル1に示すようにSCGのためにPCellに似た低層機能を提供するであろう。
(中略)
テーブル1の幾つかの機能は既にRAN2で合意されている,しかしながら,便宜のためリスト化する。下記はこれらの機能/属性が必要に応じてPCell_(SCG)のためになぜ考慮するのかについての簡潔な議論を示す。どのようにそれぞれの機能が実現できるかについての詳細は(可能であれば)別途議論できることを特筆する。

SeNB/SCGについてのPCell_(SCG)機能/属性:
- SCGの全てのセルのためのUEのPUCCHを搬送する。
(中略)
- PCell_(SCG)は常にアクティベートされたセルである。
・ 既に合意されている。)

(ウ)
前記(ア),(イ)より,引用例6には「PCell_(SCG)はSeNBと関連付けられたサービングセルのグループであるSCGの全てのセルのためのUEのPUCCHを搬送するものであって,常にアクティベートされるものである。」ことが記載されていると認める。ここで,引用例6は本願出願前に3GPP TSG RAN WG1に提出された規格提案文書であり,当該文書に既に合意済みとして記載された事項は,当業者にとって周知技術であるから,引用例6に記載された前記事項は,当業者にとって周知である。

(3) 引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

ア 対比
(ア)
引用発明の「UE」,「PHR」と本件補正発明の「ユーザ装置」,「上り送信電力情報」とでは,表現上の差異があるにすぎない。
本件補正発明の「第1の基地局」,及び,「第2の基地局」は,本件の発明の詳細な説明における「MeNB」,及び,「SeNB」に対応するものであるから,前記「第1の基地局」はMeNBを,前記「第2の基地局」はSeNBを,それぞれ含むものである。してみれば,引用発明の「MeNB」,及び,「SeNB」は,本件補正発明の「第1の基地局」,及び,「第2の基地局」に含まれる。さらに,引用発明の方法は,UEが「前記トリガに基づいて,PHRをMeNBとSeNBの両方又は一方に送信する」ことから,ユーザ装置が実行する上り送信電力情報送信方法と言える。
してみれば,本件補正発明の「デュアルコネクティビティによりユーザ装置と通信を行う第1の基地局及び第2の基地局を備える移動通信システムにおける前記ユーザ装置が実行する上り送信電力情報送信方法」と,引用発明の「デュアルコネクティビティによりUEと通信を行うMeNBとSeNBを備える移動通信システムにおけるUEが実行する方法」とでは,「デュアルコネクティビティによりユーザ装置と通信を行う第1の基地局及び第2の基地局を備える移動通信システムにおける前記ユーザ装置が実行する上り送信電力情報送信方法」との点で共通する。

(イ)
引用発明の「PSCellのアクティベーションによりMeNBとSeNBへのPHRをトリガする」との事項から,引用発明において,UEにおいて当該アクティベーションの検知が行われることは明らかである。よって,本件補正発明の「前記ユーザ装置における上り送信電力情報を前記第1の基地局又は前記第2の基地局に送信するための送信トリガを検知する送信トリガ検知ステップ」,及び,「前記送信トリガ検知ステップにより検知された送信トリガに基づいて,前記上り送信電力情報を前記第1の基地局又は前記第2の基地局に送信する上り送信電力情報送信ステップ」との事項と,引用発明の「PSCellのアクティベーションによりMeNBとSeNBへのPHRがトリガされ」,及び,「前記トリガに基づいて,PHRをMeNBとSeNBに送信する」との事項とでは,「前記ユーザ装置における上り送信電力情報を基地局に送信するための送信トリガを検知する送信トリガ検知ステップ」,及び,「前記送信トリガ検知ステップにより検知された送信トリガに基づいて,前記上り送信電力情報を基地局に送信する上り送信電力情報送信ステップ」との点で共通する。

イ 一致点,及び,相違点
以上のことから,本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。

[一致点]
「デュアルコネクティビティによりユーザ装置と通信を行う第1の基地局及び第2の基地局を備える移動通信システムにおける前記ユーザ装置が実行する上り送信電力情報送信方法であって,
前記ユーザ装置における上り送信電力情報を基地局に送信するための送信トリガを検知する送信トリガ検知ステップと,
前記送信トリガ検知ステップにより検知された送信トリガに基づいて,前記上り送信電力情報を基地局に送信する上り送信電力情報送信ステップとを備え,
ることを特徴とする上り送信電力情報送信方法。」

[相違点1]
一致点である「前記ユーザ装置における上り送信電力情報を基地局に送信するための送信トリガを検知する送信トリガ検知ステップと」,「前記送信トリガ検知ステップにより検知された送信トリガに基づいて,前記上り送信電力情報を基地局に送信する上り送信電力情報送信ステップとを備え」との事項に関し,本件補正発明が,「上り送信電力情報を前記第1の基地局又は前記第2の基地局に送信する」のに対し,引用発明は,「PHRをMeNBとSeNBの両方又は一方に送信する」ものである点。

[相違点2]
本件補正発明における「PSCell」が「前記第1の基地局の配下のプライマリセルが前記ユーザ装置において設定された後,前記第2の基地局の配下の最初のセルであり,常にアクティベートされる」ものであるのに対し,引用発明の「PSCell」には,そのような特定がない点。

[相違点3]
本件補正発明は「PSCellが前記ユーザ装置に追加されることを前記送信トリガとして検知する」のに対し,引用発明は「PSCellのアクティベーションによりMeNBとSeNBへのPHRがトリガされ」るものである点。

(4) 判断
ア 相違点1について
本件補正発明の「上り送信電力情報を前記第1の基地局又は前記第2の基地局に送信する」との記載から,前記記載は上り送信電力情報を第1の基地局又は第2の基地局のどちらか一方に送信するものと解されるところ,引用発明においてもPHRをMeNBとSeNBの一方に送信することが,選択肢として特定されていることから,前記相違点1は実質的な相違点ではない。
また,本件の発明の詳細な説明【0027】に「以下では,基地局(MeNB,SeNB)と記載した場合,基地局MeNBのみ,基地局SeNBのみ,基地局MeNBと基地局SeNBの両方,のいずれでもよいことを示すものとする。」,同【0036】に「ユーザ装置UEは,ステップ104のアクティベートがトリガされたタイミングでPHRを基地局(MeNB,SeNB)に送信してもよいし,リチューニングが完了した段階(つまり,PSCellのCCの送信を開始する段階)でPHRを基地局(MeNB,SeNB)に送信してもよい。」と記載されている。これより,本件発明の詳細な説明の記載を参酌すると,本件補正発明の「上り送信電力情報を前記第1の基地局又は前記第2の基地局に送信する」は,上り送信電力情報を前記第1の基地局と前記第2の基地局の両方又は一方に送信するものを意味すると解し得る。一方,引用発明は「前記トリガに基づいて,PHRをMeNBとSeNBの両方又は一方に送信する」ものであるから,この場合であっても,前記相違点1は実質的な相違点ではない。

イ 相違点2について
まず,引用発明において,MeNBのプライマリセルがUEにおいて設定された後にのみ,SeNBの配下のセルがUEに追加され得ることは当業者の技術常識である。また,PSCellがPrimary Secondary Cell(最初の第2のセル)の略であることは当業者の技術常識であることに鑑みれば,PSCellがSeNBの最初のセルであることもあきらかである。してみれば本件補正発明のPSCellが「前記第1の基地局の配下のプライマリセルが前記ユーザ装置において設定された後」,「前記第2の基地局の配下の最初のセルであり」,「前記ユーザ装置に追加される」ものであることも,当業者にとって自明の事項である。
次に,前記(2) イより「PCell_(SCG)はSeNBと関連付けられたサービングセルのグループであるSCGの全てのセルのためのUEのPUCCHを搬送するものであって,常にアクティベートされるものである。」ことは周知技術である。ここで,引用発明のPSCellもPCell_(SCG)とSCGのセルのためのUEのPUCCHを搬送するという点で同様のものである。してみれば,前記周知技術を引用発明に適用し,PSCellを「常にアクティベートされる」ものとすることは,当業者が適宜なし得た事項である。
よって,本件補正発明の「前記第1の基地局の配下のプライマリセルが前記ユーザ装置において設定された後,前記第2の基地局の配下の最初のセルであり,常にアクティベートされるPSCell」との事項は,当業者が容易に想到することができた事項である。

ウ 相違点3について
引用発明のPSCellのアクティベートには,アクティベートに先立ってPSCellがUEに追加される必要があることは当業者の技術常識であるから,送信トリガとして検知する対象を引用発明のPSCellのアクティベーションに換え,本件補正発明の「PSCellが前記ユーザ装置に追加されることを前記送信トリガとして検知する」ものとすることは,当業者が容易に想到することができたものである。


そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

したがって,本件補正発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

オ 上申書について
なお,審判請求人は平成30年11月28日付け上申書において,
「しかし,引用文献5,6には,PSCellが追加されること,及びPSCellは常にアクティベートされることが記載されているものの,これらはPHRのトリガとは全く関係のない文献です。PHRのトリガを記載した引用文献1又は2において,PHRのトリガとは全く関係のない引用文献5,6を適用する動機付けはありません。
引用文献1?3,及び,単にPSCellが記載されているに過ぎない引用文献5,6から「常にアクティベートされるPSCell」の追加をPHRトリガとすることに容易に想到し得たはずはなかったものと思料いたします。」と主張している。
しかしながら,前記ウのとおり,「PSCellが前記ユーザ装置に追加されることを前記送信トリガとして検知する」ことは,引用発明から容易に想到することができた事項である。一方,引用例6は,PCell_(SCG)(前記のとおり,引用発明の「PSCell」と同様のものである。)が常にアクティベートされるものであることが周知であることを示す文献である。よって,PHRのトリガに関する事項が引用例6に記載されていなくとも,前記イのとおりであって,引用発明との組合わせには十分な動機付けがあるといえる。したがって,審判請求人の主張は前記相違点2についての判断に影響を与えるものではない

3 本件補正についてのむすび
よって,本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年2月6日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成29年8月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項9に係る発明(以下「本願発明」という。)は,その請求項9に記載された事項により特定される,前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものと認める。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。そして,請求項9に対して,主たる引用例として引用例2 NSN, Nokia Corporation,PHR for dual connectivity,3GPP TSG-RAN WG2♯85 R2-140139が引用されている。

3 引用発明,及び,周知技術
引用発明,及び,周知技術は,前記第2 (2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は前記第2で検討した本件補正発明の「前記第1の基地局の配下のプライマリセルが前記ユーザ装置において設定された後,前記第2の基地局の配下の最初のセルであるであり,常にアクティベートされるPSCellが前記ユーザ装置に追加されることを前記送信トリガとして検知する」との発明特定事項から,「常にアクティベートされる」との限定事項を削除したものである。
そうすると,本願発明は引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお,本願出願人は平成29年8月7日付け意見書において,
「引用文献1に記載された発明と請求項1に係る発明とを対比すると,引用文献1には,少なくとも,請求項1における「前記送信トリガ検知部は,前記第1の基地局の配下のプライマリセルが前記ユーザ装置において設定された後,前記第2の基地局の配下の最初のセルであるPSCellが前記ユーザ装置に追加されることを前記送信トリガとして検知する」ことが記載も示唆もされていない点で両者間には大きな相違点があります。当該相違点は,引用文献2?4にも記載も示唆もされていません。」
「引用文献1?4に示唆されていない構成を有する請求項1に係る発明によれば,基地局が,プライマリセルの設定の後に,第2の基地局の配下において常にアクティベートされているPSCellの追加に伴う送信電力の変化を考慮してスケジューリングできるという顕著な効果を奏します。」
「よって,請求項1に係る発明,請求項1と同様の特徴を含む請求項9に係る発明,及び従属請求項2,4?8に係る発明に対する全ての拒絶理由は解消されたものと考えます。」
と主張している。
しかしながら,前記2 (4) ウで検討したとおりであり,本願発明の「前記送信トリガ検知部は,前記第1の基地局の配下のプライマリセルが前記ユーザ装置において設定された後,前記第2の基地局の配下の最初のセルであるPSCellが前記ユーザ装置に追加されることを前記送信トリガとして検知する」との点は,引用発明から容易に想到することができた事項である。また,「基地局が,プライマリセルの設定の後に,第2の基地局の配下において常にアクティベートされているPSCellの追加に伴う送信電力の変化を考慮してスケジューリングできるという顕著な効果を奏します。」との効果も,引用発明及び前記第2 2 イの周知技術から自明である。
よって,本願出願人の前記意見は採用することができない。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-08-05 
結審通知日 2019-08-06 
審決日 2019-08-20 
出願番号 特願2016-513787(P2016-513787)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 健  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 岩間 直純
井上 弘亘
発明の名称 ユーザ装置、及び上り送信電力情報送信方法  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 石原 隆治  
代理人 伊東 忠重  

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