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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02F
管理番号 1355585
審判番号 不服2018-4855  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-09 
確定日 2019-10-03 
事件の表示 特願2013- 28049「画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月28日出願公開、特開2014-157256〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
平成25年 2月15日 特許出願
平成28年11月11日 拒絶理由通知(同年11月22日発送)
平成29年 1月19日 意見書
平成29年 6月15日 拒絶理由通知(同年6月20日発送)
平成29年 8月16日 意見書・手続補正書
平成29年12月15日 拒絶査定(平成30年1月9日送達)
平成30年 4月 9日 本件審判請求、手続補正書
平成30年 9月14日 上申書
平成30年12月12日 審尋(同年12月19日発送)
平成31年 2月15日 回答書
平成31年 4月25日 拒絶理由通知(令和1年5月7日発送、以下「 当審拒絶理由通知」という。)
令和 1年 7月 8日 意見書・手続補正書

2 本願発明
本願の請求項1?4に係る発明は、令和1年7月8日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項2に係る発明は次のとおりのものである。
「(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
(2)画像表示セル、
(3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、
(4)前記偏光子の視認側に積層される偏光子保護フィルム、及び
(5)前記偏光子保護フィルムより視認側に配置される、透明導電層が積層された基材フィルム
を有し、
前記偏光子保護フィルム及び前記基材フィルムは、いずれも3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、
その差が1800nm以上であり、
前記偏光子保護フィルム及び前記基材フィルムのうち、少なくとも一方の配向フィルムの配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角度が45度±30度以下である、
画像表示装置。」(以下「本願発明」という。)

3 引用する刊行物等
(1)引用例1
ア 記載事項
当審拒絶理由通知で引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2009-282424号公報(以下「引用例1」という。)には、以下の記載が図とともにある。
(ア)【特許請求の範囲】の記載
「【請求項1】
画素電極及び共通電極を有する一対の基板の間に液晶を挟持して形成された液晶表示パネルと、
該液晶表示パネルの外側にそれぞれ配置された偏光体と、
を有し、
前記液晶表示パネルの表示面側に配置された前記偏光体は、
偏光子と、
該偏光子を挟持する一対の保護膜と、
を有し、
前記偏光子の表示面側に配置された前記保護膜は、位相差値を有し、
前記表示面側の偏光体よりも外側に、直線偏光の光を円偏光又は楕円偏光の光として射出することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液晶表示装置において、
前記位相差値を有する前記保護膜は、λ/4位相差膜であることを特徴とする液晶表示装置。

【請求項5】
請求項1?4のいずれか一項に記載の液晶表示装置を備えたことを特徴とする電子機器」(注:下線は当審が付加した。以下同様。)

(イ)【背景技術】の記載
「【0002】
液晶表示装置は、主に、液晶表示パネルと照明装置とにより構成される。照明装置から射出された光は液晶表示パネルを透過し、これにより液晶表示パネルは照明される。液晶表示パネルは、2枚の基板に液晶を挟持してなる構造を有している。液晶表示パネルの照明装置側の外面上には、下偏光体が設置され、液晶表示パネルの観察者側の外面上には、上偏光体が設置される。液晶表示パネルは、液晶分子を反転させて、その配向を制御することで階調を変化させる。
【0003】
一般的な液晶表示装置では、観察者が偏光サングラス等の偏光めがねをかけて表示画面を見る場合を想定して、上偏光体は、その透過軸の角度が、表示画面の横方向又は縦方向に対して45°となるように設定されている。しかし、このように、上偏光体の角度が規定されてしまうと、液晶表示パネルの液晶分子の反転方向も、それに合わせる必要があり、製造工程上、困難なことが多い。
【0004】
図5(A)に偏光サングラス対応をしていない液晶表示装置構成を示す。偏光体90は、観察者側(図面上側)から保護膜90c、偏光子90a、及び保護膜90bの順に構成されている。偏光体90の観察者側にはハードコート層52が形成されている。偏光体90の厚さは例えば120μmである。偏光体90はハードコート層52のため耐擦傷性に優れている。
【0005】
又、図5(B)及び(C)に偏光サングラス対応をしている液晶表示装置構成を示す。図5(B)に示すように、位相差膜92を偏光体90と観察者の間に設置することで、偏光体90から射出された光を、直線偏光から円偏光に変換している(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
更に、液晶表示パネル12の偏光体90の前面に位相差膜92を配置し、位相差膜92のリターデイションΔn・dを140nmや4000nm等付近に設定し、且つ、位相差膜92の光学軸と偏光体90の吸収軸とのなす角度は45°を用いている(例えば、特許文献2及び3参照)。
【0007】
これにより、偏光体90の透過軸の角度がどのような角度であっても、偏光めがねをかけた観察者は、表示画面上に表示された表示画像を見ることができる。つまり、特許文献1?3に記載の液晶表示装置では、偏光体90の透過軸の角度、及び、液晶表示パネルの液晶分子の反転方向を、観察者に合わせて設定する必要がない。
【0008】
又、図5(C)にカバー一体型を示す。偏光体90の観察者側にはカバー94が形成されている。」

(ウ)【発明が解決しようとする課題】の記載
「【0010】
しかしながら、特許文献1は偏光体90の前面に位相差膜92を配置すること、特許文献2及び3は位相差値を規定することで偏光サングラス対応を達成しているが、偏光体90の前面に位相差膜92を配置することで液晶表示装置の厚みが増すという問題がある。又位相差膜92単体では硬度が低く傷つきやすい。上記カバー一体型の場合は、傷はつきにくいが厚みはカバー94と位相差膜92とになるので厚くなる。」

(エ)【課題を解決するための手段】の記載
「【0012】
[適用例1]画素電極及び共通電極を有する一対の基板の間に液晶を挟持して形成された液晶表示パネルと、該液晶表示パネルの外側にそれぞれ配置された偏光体と、を有し、前記液晶表示パネルの表示面側に配置された前記偏光体は、偏光子と、該偏光子を挟持する一対の保護膜と、を有し、前記偏光子の表示面側に配置された前記保護膜は、位相差値を有し、前記表示面側の偏光体よりも外側に、直線偏光の光を円偏光又は楕円偏光の光として射出することを特徴とする液晶表示装置。
【0013】
これによれば、液晶表示パネルの表示面側に配置された偏光体の、表示面側に配置された支持基材である保護膜として位相差膜を配置することで、従来の偏光サングラス対応よりも保護膜1枚分薄型の偏光体構成で、観察者が偏光めがねをかけて眺めた場合でも、見る方向によって表示面が見えなくなることのない偏光サングラス対応を可能とする液晶表示装置を提供する。」

(オ)【発明を実施するための最良の形態】の記載
「【0029】
[液晶表示装置の構成]
先ず、本実施形態の液晶表示装置について、図1及び図2を参照して説明する。…

【0032】
液晶表示パネル12は、導光板14の発光面積と略同一の表示面積を有する。液晶表示パネル12は、ガラス等の基板22及び24を、シール材26を介して貼り合わせてセル構造を形成し、その内部に液晶28を封入して構成される。基板22の内面上には、サブ画素毎に画素電極30が配置され、基板24の内面上には、全面に共通電極32、サブ画素毎に着色層34が配置される。尚、本実施形態に係る液晶表示パネル12は、TN(Twisted Nematic)方式の液晶表示パネルであり、画素電極30と共通電極32との間に電圧を印加することにより、液晶28の液晶分子を反転させ、その配向を変化させる。

【0035】
液晶表示パネル12の表示面側に配置された偏光体38は、偏光子42と偏光子42を挟持する一対の保護膜44,46とを有している。偏光体38の片側の支持基材である保護膜46の変わりに一般的に用いられる位相差膜を配置する。偏光子42の表示面側に配置された保護膜46は、位相差値を有し、表示面側の偏光体38よりも外側に、直線偏光の光Lを円偏光又は楕円偏光として射出する。
【0036】
偏光子42の厚さは、例えば20?30μmである。保護膜44の厚さは、例えば数十?80μmである。位相差膜(保護膜)46の厚さは、例えば30?60μmである。これにより、偏光体38の厚みは従来の構成と同等程度になる。

【0039】
位相差膜46は、例えばリターデイションΔn・dを120?160nmの範囲に設定し、且つ、位相差膜46の光学軸と偏光子42の吸収軸とのなす角度を45°に設定する。

【0048】
上記実施形態では、液晶表示パネル12の背後に光源部16を配置する透過型液晶表示装置の例を示したが、光源部16に代えて反射板を配置し、表示面側からの光を反射させる反射型液晶表示装置にしても反射した光が透過型の場合と同じ経路をとるため、同様の結果がえられる。

【0061】
上記実施形態に係る液晶表示装置2は、上記携帯型電話機100に限らず、電子ブック、…、タッチパネルを備えた機器、…、プロジェクションテレビ向けライトバルブ等々の画像表示手段として好適に用いることができ、いずれの電子機器においても、観察者48が偏光めがね50をかけて眺めた場合でも、見る方向によって表示面が見えなくなることのない偏光サングラス対応を可能とする薄型の電子機器を提供する。」

(カ)図1、図2は、以下のとおりである。
図1 図2

イ 引用発明
(ア)上記ア(オ)【0061】の記載によれば、引用例1には「タッチパネルと液晶表示装置を備えた電子機器」が開示されており、該電子機器は「観察者が偏光めがねをかけて眺めた場合でも、見る方向によって表示面が見えなくなることのない偏光サングラス対応を可能とする」電子機器である。

(イ)上記ア(ア)【請求項1】、【請求項2】の記載によれば、引用例1には、
「画素電極及び共通電極を有する一対の基板の間に液晶を挟持して形成された液晶表示パネルと、
該液晶表示パネルの外側にそれぞれ配置された偏光体と、
を有し、
前記液晶表示パネルの表示面側に配置された前記偏光体は、
偏光子と、
該偏光子を挟持する一対の保護膜と、
を有し、
前記偏光子の表示面側に配置された前記保護膜は、λ/4位相差膜であり、
前記表示面側の偏光体よりも外側に、直線偏光の光を円偏光又は楕円偏光の光として射出する液晶表示装置。」
が開示されている。

(ウ)上記ア(オ)【0032】の記載によれば、液晶表示パネルはセル構造を有している。

(エ)上記ア(オ)【0035】、【0036】、【0039】の記載によれば、偏光子の表示面側に配置された位相差膜(保護膜)の光学軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は45°に設定されている。

(オ)上記ア(オ)【0048】の記載によれば、液晶表示パネルの背後に光源部を配置することが開示されている。

(カ)以上によれば、引用例1には以下の発明が記載されている。
「タッチパネルと液晶表示装置を備えた電子機器であって、
前記液晶表示装置は、
画素電極及び共通電極を有する一対の基板の間に液晶を挟持して形成され、セル構造を有する液晶表示パネルと、
該液晶表示パネルの外側にそれぞれ配置された偏光体と、
該液晶表示パネルの背後に配置された光源部と、
を有し、
前記液晶表示パネルの表示面側に配置された前記偏光体は、
偏光子と、
該偏光子を挟持する一対の保護膜と、
を有し、
前記偏光子の表示面側に配置された前記保護膜は、λ/4位相差膜であり、
前記保護膜の光学軸と前記偏光子の吸収軸とのなす角度は45°に設定されており、
前記表示面側の偏光体よりも外側に、直線偏光の光を円偏光又は楕円偏光の光として射出し、観察者が偏光めがねをかけて眺めた場合でも、見る方向によって表示面が見えなくなることのない偏光サングラス対応を可能とする、
タッチパネルと液晶表示装置を備えた電子機器。」(以下「引用発明」という。)

(2)引用例2
ア 記載事項
当審拒絶理由通知で引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2011-107198号公報(以下「引用例2」という。)には、以下の記載が図とともにある。

(ア)「【請求項1】
バックライト光源と、液晶セルと、液晶セルの視認側に配した偏光板とを少なくとも有する液晶表示装置において、
バックライト光源として白色発光ダイオードを用いるとともに、
前記偏光板の視認側に、3000?30000nmのリタデーションを有する高分子フィルムを、前記偏光板の吸収軸と前記高分子フィルムの遅相軸とのなす角が凡そ45度となるように配して用いることを特徴とする液晶表示装置の視認性改善方法。」

(イ)「【背景技術】

【0004】
ところで、日差しの強い屋外等の環境では、その眩しさを解消するために、偏光特性を有するサングラスを掛けた状態でLCDを視認する場合がある。この場合、観察者はLCDから射出した直線偏光を有する光を、偏光板を通して視認することとなるため、LCDに内装される偏光板の吸収軸と、サングラスなどの偏光板の吸収軸とがなす角度によっては画面が見えなくなってしまう。
【0005】
上記問題を解決するため、例えば、特許文献1では、LCD表面に位相差(4分の1波長)板を斜めに積層して直線偏光を円偏光に変換して偏光解消する方法が提案されている。」

(ウ)「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、位相差(4分の1波長)板といえども、ある特定の波長領域の光に対してのみ4分の1波長を達成するに過ぎず、広い可視光領域に渡って均一に4分の1波長を達成する材料は得られていない。そのため特許文献1の方法では、十分な視認性改善効果は得られない。」

(エ)「【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、特定のバックライト光源と特定のリタデーションを有する高分子フィルムとを組み合せて用いることにより、上記問題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0012】
即ち、本発明は、以下の(i)?(vi)に係る発明である。
(i)バックライト光源と、液晶セルと、液晶セルの視認側に配した偏光板とを少なくとも有する液晶表示装置において、バックライト光源として白色発光ダイオードを用いるとともに、前記偏光板の視認側に、3000?30000nmのリタデーションを有する高分子フィルムを、前記偏光板の吸収軸と前記高分子フィルムの遅相軸とのなす角が凡そ45度となるように配して用いることを特徴とする液晶表示装置の視認性改善方法。

(v)前記視認性改善方法を用いたことを特徴とする液晶表示装置。」
…」

(オ)「【発明の効果】
【0013】
本発明の方法では、連続的で幅広い発光スペクトルを有する白色発光ダイオード光源において効率よく直線偏光を解消し、光源に近似したスペクトルが得られるため、サングラスなどの偏光板を通して液晶表示画面を観察する際でも、その観察角度によらず良好な視認性を確保できる。」

(カ)「【実施例】

【0043】
上記式(2)をもとに、配向ポリカーボネートフィルムの複屈折の波長分散性を考慮して干渉色を計算するプログラムを作成し、リタデーションと干渉色の関係を表す干渉色チャートを作成した。図2には、図1に示した白色発光ダイオードの発光スペクトルを用いて計算した、配向ポリカーボネートフィルムの干渉色チャートを示した。図1、図2より実測とシミュレーションで色は一致しており、リタデーション(Re)≧3000nm以上で干渉色の変動は著しく低下し、Re≧8000nm程度では干渉色はほぼ一定となることが判った。」

イ 引用例2に開示された技術事項
(ア)上記ア(イ)【0005】、(ウ)【0008】の記載によれば、引用例2には、「LCD表面に位相差(4分の1波長)板を斜めに積層して直線偏光を円偏光に変換して偏光解消する方法では、広い可視光領域に渡って均一に4分の1波長達成する材料は得られていないから、十分な視認性改善効果は得られない」ことが記載されている。

(イ)上記ア(エ)【0012】の記載によれば、「バックライト光源として白色発光ダイオードを用いるとともに、前記偏光板の視認側に、3000?30000nmのリタデーションを有する高分子フィルムを、前記偏光板の吸収軸と前記高分子フィルムの遅相軸とのなす角が凡そ45度となるように配して用いること」で液晶表示装置の視認性を改善することが記載されている。

(ウ)上記ア(オ)【0013】の記載によれば、「白色発光ダイオード光源」は「連続的で幅広い発光スペクトルを有する」ことが記載されている。

(エ)上記ア(カ)【0043】の記載によれば、「リタデーション(Re)≧3000nm以上で干渉色の変動は著しく低下し、Re≧8000nm程度では干渉色はほぼ一定となる」ことが記載されている。

(オ)上記ア(オ)【0013】の記載によれば、「サングラスなどの偏光板を通して液晶表示画面を観察する際でも、その観察角度によらず良好な視認性を確保できる」ことが記載されている。

(カ)以上によれば、引用例2には、以下の技術事項が開示されている。
「偏光特性を有するサングラスを掛けた状態でLCDを視認する場合、LCDに内装される偏光板の吸収軸と、サングラスなどの偏光板の吸収軸とがなす角度によっては画面が見えなくなる問題を解決する方法として、
LCD表面に位相差(4分の1波長)板を斜めに積層して直線偏光を円偏光に変換して偏光解消する方法では、広い可視光領域に渡って均一に4分の1波長達成する材料は得られていないから、十分な視認性改善効果は得られないこと、
バックライト光源として連続的で幅広い発光スペクトルを有する白色発光ダイオードを用いるとともに、偏光板の視認側に、3000?30000nmのリタデーションを有する高分子フィルムを、前記偏光板の吸収軸と前記高分子フィルムの遅相軸とのなす角が凡そ45度となるように配して用いることにより、リタデーション(Re)≧3000nm以上で干渉色の変動は著しく低下し、Re≧8000nm程度では干渉色はほぼ一定となり、サングラスなどの偏光板を通して液晶表示画面を観察する際でも、その観察角度によらず良好な視認性を確保できること。」(以下「引用例2の技術事項」という。

4 対比
本願発明と引用発明を対比する。
ア 本願発明の「連続的な発光スペクトルを有する白色光源」と、引用発明の「該液晶表示パネルの背後に配置された光源部」を対比すると、両者は「光源」の点で一致する。

イ 本願発明の「画像表示セル」と、引用発明の「セル構造を有する液晶表示パネル」を対比すると、両者は相当関係にある。

ウ 本願発明の「前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子」と、引用発明の「前記液晶表示パネルの表示面側に配置された前記偏光体」が有する「偏光子」を対比する。
引用発明の「液晶表示パネルの表示面側」は、本願発明の「画像表示セルより視認側」に相当する。してみると、両者は相当関係にある。

エ 本願発明の「前記偏光子の視認側に積層される偏光子保護フィルム」と、引用発明の「偏光子を挟持する一対の保護膜」のうち「偏光子の表示面側に配置された前記保護膜」を対比する。
引用発明の「偏光子の表示面側」は本願発明の「偏光子の視認側」に相当し、引用発明の偏光子の表示面側に配置された「保護膜」は本願発明の「偏光子保護フィルム」に相当する。また、引用発明の保護膜は偏光子を挟持するものであるから、引用発明の保護膜が「偏光子の表示面側に配置され」ることは、本願発明の「偏光子の視認側に積層される」ことに相当する。
してみると、両者は相当関係にある。

オ 本願発明の「前記偏光子保護フィルムより視認側に配置される、透明導電層が積層された基材フィルム」と、引用発明の電子機器が液晶表示装置とともに備える「タッチパネル」を対比する。
一般に、タッチパネルは、表示装置の視認側に配置するものであること、また、透明導電層が積層された基材フィルムを有するものであることは、何れも技術常識(以下「技術常識1」という。必要ならば、当審拒絶理由通知で引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、藤田勝著 「センサ部の構造としくみ」 トランジスタ技術 第46巻第8号 2009年8月1日発行 CQ出版社 99頁?106頁(以下「引用例4」という。)参照。例えば図1には「後ろのディスプレイなどが重なって見える」と記載されており、タッチパネルがディスプレイの視認側に配置されることが開示されている。また、引用例4の「透明導電膜(ITOなど)」が本願発明の「透明導電層」に相当し、引用例4の「下部基板(プラスチック・フィルム/ガラス)」あるいは「上部基板(プラスチック・フィルム/ガラス)」が本願発明の「基材フィルム」に相当する。)である。
上記技術常識1を踏まえれば、引用発明のタッチパネルは、表示装置の視認側に配置され、透明導電層が積層された基材フィルムを有しているから、両者は相当関係にある。なお、本願の発明の詳細な説明には、「【0012…タッチパネル(6)は、2枚の透明導電性フィルム(11,12)がスペーサー(13)を介して配置された構造を有する。透明導電性フィルム(11,12)は、基材フィルム(11a,12a)と透明導電層(11b,12b)とを積層したものである。」との記載があるから、本願発明の「透明導電層が積層された基材フィルム」は、発明の詳細な説明の記載によれば、タッチパネルを構成する部材である。

カ 本願発明の「前記偏光子保護フィルム及び前記基材フィルムは、いずれも3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであ」ることと、引用発明の「前記偏光子の表示面側に配置された前記保護膜は、λ/4位相差膜であ」ることを対比する。
引用発明の「偏光子の表示面側に配置された前記保護膜」は、本願発明の「偏光子保護フィルム」に相当する。そして、引用発明の「λ/4位相差膜」は、本願発明の「配向フィルム」に相当する。してみると、両者は、「偏光子保護フィルムは、配向フィルムであ」る点で一致する。

キ 本願発明の「前記偏光子保護フィルム及び前記基材フィルムのうち、少なくとも一方の配向フィルムの配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角度が45度±30度以下である」ことと、引用発明の「前記保護膜の光学軸と前記偏光子の吸収軸とのなす角度は45°に設定されて」いることを対比する。
(ア)偏光子が光の振動を通過させる透過軸と光の振動を遮断する吸収軸を有すること、そして、透過軸と吸収軸が直交することは、当業者の技術常識である。そうすると、引用発明の「前記保護膜の光学軸と前記偏光子の吸収軸とのなす角度は45°に設定されて」いることは、「前記保護膜の光学軸と前記偏光子の透過軸とのなす角度は45°に設定されて」いることでもある。
(イ)一般に、偏光子の偏光軸は、偏光子の透過軸を意味するから、両者は、「前記偏光子保護フィルム及び前記基材フィルムのうち、少なくとも一方の配向フィルムの配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角度が45度である」点で一致する。なお、偏光子の偏光軸が偏光子の吸収軸を意味したとしても、上記点で一致することに変わりはない。

ク 本願発明の「画像表示装置」と、引用発明の「タッチパネルと液晶表示装置を備えた電子機器」を対比すると、両者は相当関係にある。

ケ 以上によれば、本願発明と引用発明は、
「(1)光源、
(2)画像表示セル、
(3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、
(4)前記偏光子の視認側に積層される偏光子保護フィルム、及び
(5)前記偏光子保護フィルムより視認側に配置される、透明導電層が積層された基材フィルム
を有し、
前記偏光子保護フィルムは、配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルムの配向フィルムの配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角度が45度である、
画像表示装置。」
の点で一致し、以下の相違点で相違する。

相違点1:光源に関し、本願発明1は「連続的な発光スペクトルを有する白色光源」であるのに対し、引用発明はそのようなものなのか否か明らかでない点。
相違点2:配光フィルムである偏光子保護フィルムに関し、本願発明は、「3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであ」るのに対し、引用発明は、「λ/4位相差膜」である点。
相違点3:基材フィルムに関し、本願発明は、「3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであ」るのに対し、引用発明は、そのようなものなのか否か明らかでない点。
相違点4:偏光子保護フィルム及び前記基材フィルムに関し、本願発明は「互いに異なるリタデーションを有し、その差が1800nm以上であ」るのに対し、引用発明は、そのようなものなのか否か明らかでない点。

5 判断
以下、上記相違点について検討する。
(1)相違点1、2について
ア 引用例2の技術事項について
はじめに、偏光板と位相差板についての技術常識について検討する。偏光板が偏光子とそれを保護する2枚の保護層から構成されること、偏光子が一定方向の偏波面の光を通す機能を有することは、当業者の技術常識である。また、直線偏光の光は、その偏りの方向(偏向の方向)が位相差板の光軸に対し45度の角度で位相差板に入射すると、位相差板に入り込む深さに比例して偏光状態が変化し、例えば、位相差板がλ/4板であれば、入射した直線偏光の光が円偏光の光となって出ていくことは、技術常識である(必要ならば、富山小太郎訳 「ファインマン物理学II 光 熱 波動」岩波書店 1996年2月15日 p87-p90参照。以下「技術常識2」という。)。
引用例2の技術事項は直線偏光を解消する技術であるところ、位相差(4分の1波長)板あるいは3000?30000nmのリタデーションを有する高分子フィルムを配置する位置は、LCDの表面や偏光板の視認側であるばかりでなく、技術常識2を踏まえれば、直線偏光の光が入射する位置に配置すれば良いこと、すなわち、偏光子より視認側に配置すれば良いことは、当業者に明らかである(例えば、引用例1の請求項1、2には、偏光子の保護膜がλ/4位相差膜であることが開示されている。また、特開2009-122454号公報の【請求項1】には、直線偏光を円偏光に変換して出射する(波長の1/4のリタデーションを有する)光学素子(R)を偏光子の視認側に配置することが記載されており、【0079】には、偏光子保護フィルムが光学素子(R)の機能を兼ね備えることも記載されている。)

イ 引用発明は、偏光子の表示面側に配置された保護膜にλ/4位相差膜を用いるとともに、その光学軸と偏光子の吸収軸とのなす角度を45°に設定することで偏光サングラス対応を可能とする発明である。ここで、引用例2の技術事項と技術常識2によれば、引用発明のように、偏光子の表示面側に配置された前記保護膜をλ/4位相差膜にするとともに、前記保護膜の光学軸と前記偏光子の吸収軸とのなす角度を45°に設定する方法では、十分な視認性改善効果は得られないこと、そして、バックライト光源として連続的で幅広い発光スペクトルを有する白色発光ダイオードを用いるとともに、偏光板の視認側に、3000?30000nmのリタデーションを有する高分子フィルムを、前記偏光板の吸収軸と前記高分子フィルムの遅相軸とのなす角が凡そ45度となるように配して用いることで、良好な視認性を確保できることが理解できる。さらに、偏光子保護フィルムとして3000nm?3000nmのリタデーションを有する偏光子保護フィルムは、当審拒絶理由通知で引用され、本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2011/162198号(以下「引用例3」という。例えば、請求項1を参照。)に記載されるように周知である。そうすると、良好な視認性を確保することは表示装置における一般的な課題であるから、引用発明において、技術常識2を踏まえて引用例2の技術事項を採用すること、すなわち、光源として連続的で幅広い発光スペクトルを有する白色発光ダイオードを用いるとともに、偏光子の保護膜としてλ/4位相差膜に代えて3000?30000nmのリタデーションを有する高分子フィルムを、前記偏光板の吸収軸と前記高分子フィルムの遅相軸とのなす角が凡そ45度となるように配して用い、上記相違点1,2に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。

(2)相違点3、4について
ア はじめに、本願発明の発明特定事項である、「前記偏光子保護フィルム及び前記基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が1800nm以上であ」ることの技術的意味について検討する。
(ア)本願の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
a 「【0019】
上記のように2枚の高リタデーション配向フィルムは、互いの配向主軸が平行であることが好ましいが、2枚のフィルムのリタデーション差が大きいほど、上記角度の許容範囲は大きくなる。2枚のフィルムのリタデーション差が3500nm以上、好ましくは4000nm以上であれば、上記角度に関係なく虹斑を抑制できる。」

b 表1は以下のとおりである。


c 「【0107】
上記表1に示される通り、視認側偏光子保護フィルム及び基材フィルムとして3000nm以上のリタデーションを有する配向フィルムを用い、各配向フィルムのリタデーションが同一である場合、明確な虹斑が発生し、視認性が顕著に低下することが確認された。一方、2枚の配向フィルムのリタデーションの値に1800nm以上の差をつけることにより、虹斑の発生が抑制され、その効果はリタデーションの差をより高くすることにより顕著になることが確認された。また、2枚の配向フィルムのリタデーション差が約3500nm以上、特に4000nm以上であれば、2枚の配向フィルムの配向主軸が形成する角が45度であっても虹斑が目立たず、さらにフィルムの配向角を大きくしても虹斑が目立たないことが確認された。2枚の配向フィルムのリタデーション差が1700nm以下である場合は、両フィルムの配向主軸の角が20度以下で虹斑が目立たず、15度以下でより目立ち難いことが確認された。」

(イ)上記(ア)a【0019】の記載によれば、2枚の高リタデーション配向フィルムのリタデーション差が大きいほど、互いの配向主軸がなす角度の許容範囲が大きくなることが理解できる。そして、2枚のフィルムのリタデーション差が3500nm以上、好ましくは4000nm以上であれば、上記角度に関係なく虹斑を抑制できることが理解できる。
上記(ア)bの表1、cの記載によれば、
試験No.3では、リタデーション差が3600nmで全範囲で虹斑が目立たなかったことが、
試験No.5では、リタデーション差が1900nmで概ね30度以下で虹斑が目立たなかったことが、
試験No.8では、リタデーション差が1700nmで概ね20度以下で虹斑が目立たなかったことが、
試験No11では、リタデーション差が1900nmで概ね40度以下で虹斑が目立たなかったことが、
記載されている。
ところで、発明の詳細な説明の記載によれば、「前記偏光子保護フィルム及び前記基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が1800nm以上であ」ることの技術的意義は、偏光子保護フィルムと基材フィルムの配向主軸がなす角度が概ね20?30度以下である場合に虹斑が目立たないことにあるものと解される。
しかしながら、本願発明は、偏光子保護フィルムと基材フィルムの配向主軸がなす角度を特定しないから、「前記偏光子保護フィルム及び前記基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が1800nm以上であ」るとしても、前記角度が0度(平行)で虹斑が目立たない画像表示装置ばかりでなく、前記角度が90度(垂直)で虹斑が目立つ画像表示装置をも含んでいる。してみると、偏光子保護フィルムと基材フィルムの配向主軸がなす角度を特定しない本願発明において、「前記偏光子保護フィルム及び前記基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が1800nm以上であ」ることは、虹斑を低減して視認性を改善する点において格別の技術的意義を有するものではない。

イ 次に、位相差フィルムが2枚ある場合のリタデーションについて、技術常識を検討する。
「2枚の位相差フィルムの光軸方向を平行にして重ねた場合、全体のリタデーションは2枚の位相差フィルムのリタデーションの和(相加)となり、光軸方向を直交して2枚の位相差フィルムを重ねた場合、全体のリタデーションは2枚の位相差フィルムのリタデーションの差(相滅)となり、光軸方向が平行と直交の中間では、位相量の相加から相滅まで三角関数的に減少すること。」は、以下のとおり、当業者の技術常識(以下「技術常識3」という。)である。
例えば、特開2007-11280号公報には以下の記載がある。
a 【0107】
図14Aは第1,第2の2枚の位相差フィルム61,62の積層体でなる位相差板の製造方法を説明する図である。位相差フィルム61の面内の主屈折率をn1x,n1y、位相差フィルム62の面内の主屈折率をn2x,n2yで示している。n1xおよびn2xは各位相差フィルム61,62の遅相軸すなわち光学軸であり、n1yおよびn2yは各位相差フィルム61,62の進相軸を表している。

【0110】
図14Bに示したように、第1の位相差フィルム61に対する第2の位相差フィルム62の回転角度θ1が大きくなるにしたがって、フィルム全体の面内位相差量が三角関数的に減少することがわかる。ここで、θ1が0のとき、即ち第1,第2の位相差フィルム61,62の各々の遅相軸n1x,n2xがそれぞれ同一方向に配向されているときは、フィルム全体の位相差量は個々のフィルムがもつ位相差量の総和(7nm+7nm=14nm)となる。一方、θ1が90度のとき、即ち第1,第2の位相差フィルム61,62の各々の遅相軸n1x,n2xが互いに直交する場合は、個々のフィルムがもつ位相差量の差(7nm-7nm=0nm)となる。また、位相差量は積層する光学軸の角度を変えることにより任意に調整可能である。」

b 図14は、以下のとおりである。


ウ 上記ア、イを踏まえ、相違点3、4について検討する。
(ア)タッチパネルの基材フィルムが「3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであ」ることについて
タッチパネルを構成する基材フィルムは、一般にPETフィルムが使用され(例えば、引用例4の図5、103頁の「フィルム基板は上部の接触面によく使われる」の項を参照。)、PETフィルムがリタデーションを有するフィルムであることは周知である。ここで、引用例2の技術事項は、「リタデーション(Re)≧3000nm以上で干渉色の変動は著しく低下し、Re≧8000nm程度では干渉色はほぼ一定とな」るから、リタデーション(Re)は8000nm以上に大きい方が好ましいところ、技術常識2、3を踏まえ、引用発明のタッチパネルを構成する基材フィルムとして、例えば3000nm以上のリタデーションを有するPETフィルムを採用し、その配光主軸を偏光子の表示面側に配置された保護膜の配光主軸と平行に配置し、偏光子の保護膜とタッチパネルを構成する基材フィルムの全体のリタデーションを大きくすることは当業者が容易に想到し得ることである。

(イ)偏光子保護フィルム及び前記基材フィルムが互いに異なるリタデーションを有することについて
偏光子保護フィルムとタッチパネルの基材フィルムとでは、用途に応じてフィルムに必要とされる特性が異なるから、それらの膜厚やリタデーションは異なるのが自然である。例えば、引用例1に「【0036】…保護膜44の厚さは、例えば数十?80μmである。位相差膜(保護膜)46の厚さは、例えば30?60μmである。」と記載されるように、偏光子の保護膜の膜厚は、例えば30?60μm程度である。一方、タッチパネルを構成する基材フィルムの膜厚は、引用例4(例えば、図5参照)に記載されるよう、例えば、125μmや188μmである。ここで、リタデーションは、面内位相差と膜厚の積であるから、偏光子の表示面側に配置された保護膜とタッチパネルを構成する基材フィルムが、互いに異なるリタデーションを有することは自然なことである。

(ウ)偏光子保護フィルム及び前記基材フィルムのリタデーションの差が1800nm以上であることについて
上記アで検討したとおり、本願発明において、偏光子保護フィルムと前記基材フィルムの配光主軸がなす角を特定することなく、単に両者が異なるリタデーションを有し、その差が1800nm以上であるということは、虹斑を低減して視認性を改善する点において格別の技術的意義を有するものではない。
そして、PETフィルムとして、引用例2の表2には、
・厚み38μmでリタデーションが3724nmのPETフィルム-1、
・厚み200μmでリタデーションが21520nmのPETフィルム-2
等が記載され、引用例3の表1には、
・厚み50μmでリタデーションが5177nmの実施例1、
・厚み50μでリタデーションが3215nmの実施例4、
・厚み100μmでリタデーションが16500nmの実施例7
等が記載されている。これらのPETフィルムの厚みとリタデーション値に照らせば、厚みが30?60μm程度である偏光子の保護膜と、厚みが125μmや188μmであるタッチパネルの基材フィルムとで、リタデーションの差を1800nm以上とすることは、設計事項と認められる。

(エ)小括
してみると、引用発明において、色斑を低減し視認性を改善する目的で、タッチパネルを構成する基材フィルムのリタデーションとして3000nm以上のものを用い、偏光子の保護膜と基材フィルムのリタデーションの差を1800nm以上とし、上記相違点3、4に係る本願発明の発明特定事項となすことは、引用発明、引用例2の技術事項、技術常識2、3に基づいて当業者が容易に想到し得たことと認められる。

(4)本願発明の作用効果について
そして、本願発明が奏する作用効果は、引用発明、引用例2の技術事項、技術常識1-3に基づいて、当業者が容易に予測しうる程度のものである。

(5)小括
したがって、本願発明は、引用発明、引用例2の技術事項、技術常識1-3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)請求人の主張について
ア 請求人は、令和1年7月8日付け意見書において、
(ア)引用例2の3000nm?30000nmのリタデーションを有する高分子フィルムを引用発明の偏光子保護膜に採用することには阻害要因があり、また、採用する動機がないこと、
(イ)引用例1には、偏光体の全面に位相差膜を配置することで液晶表示装置の厚みが増すという問題がある旨記載されているから、タッチパネルを設けるにしてもリタデーションが低いフィルムを採用するはずであること、
(ウ)偏光子保護フィルムの屈折率異方性と、基材フィルムの屈折率異方性を同じに揃える必要はなく、リタデーションはフィルムの厚みだけで決まるものではないから、1800nm以上のリタデーション差を導き出すことはできないこと、
を主張するので、以下、検討する。

イ 上記ア(ア)について
上記(1)アで検討したとおり、3000?30000nmのリタデーションを有する高分子フィルムを配置する位置は、技術常識2を踏まえると、LCDの表面や偏光板の視認側であるばかりでなく、直線偏光の光が入射する位置、すなわち、偏光子より視認側に配置すれば良いことは、当業者に明らかである。よって、上記主張は採用できない。

ウ 上記ア(イ)について
引用例4によれば、タッチパネルの基材フィルムの厚みは、125μm、あるいは188μm程度である。ところで、引用例2の表1には、厚み38μmでリタデーション(Re)が3724nmのPETフィルムが記載され、引用例3の表1には、実施例1として、厚み50μmでリタデーション(Re)が5177nmであるPETフィルムが記載されている。
してみると、タッチパネルの基材フィルムに必要とされる膜厚(例えば、125nm、188nm)において、3000nm以上のリタデーションを有するフィルムを採用しても、それによりタッチパネルの厚みが増すものではない。よって、請求人の主張は採用できない。

エ 上記ア(ウ)について
本願発明の発明特定事項である「前記偏光子保護フィルム及び前記基材フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が1800nm以上であ」ることが格別の技術的意義を有しないことは、上記(2)アで検討したとおりである。そして、偏光子の保護膜とタッチパネルの基材フィルムとでは、必要とする特性が異なり、膜厚も異なるから、リタデーション(=面内位相差×膜厚)が異なることも自然なことであり、リタデーション差を1800nm以上とすることは、設計的事項に過ぎない。よって、請求人の主張は採用できない。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2の技術事項、技術常識1-3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-08-02 
結審通知日 2019-08-06 
審決日 2019-08-22 
出願番号 特願2013-28049(P2013-28049)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三笠 雄司右田 昌士  
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 星野 浩一
小松 徹三
発明の名称 画像表示装置  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  

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