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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1355596
審判番号 不服2018-10072  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-24 
確定日 2019-10-03 
事件の表示 特願2017-503688「基地局、プロセッサ、通信方法、ユーザ端末」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月 9日国際公開、WO2016/140271〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)3月2日(国内優先権主張 2015年3月3日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成29年9月1日 手続補正書の提出
平成29年11月28日付け 拒絶理由通知書
平成30年2月5日 意見書、手続補正書の提出
平成30年4月18日付け 拒絶査定
平成30年7月24日 拒絶査定不服審判の請求

第2 本願発明
本願の請求項1?5に係る発明は、平成30月2月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるところ、その請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。

「システムフレーム番号(SFN)が最大値に達した後に最初の値に戻った時に1をインクリメントする拡張システムフレーム番号を特定するための情報を含むシステム情報ブロック(SIB)をユーザ端末にブロードキャストする処理を実行する制御部を備え、
前記情報により特定される前記拡張システムフレーム番号は、前記システム情報ブロックを受信したユーザ端末が、アイドル状態において、拡張DRX(eDRX)によりページングを監視するタイミングを含むページングフレームを決定するために用いられ、
前記情報は、前記システム情報ブロックを受信した前記ユーザ端末において、前記システムフレーム番号が前記最大値に達した後に前記最初の値に戻った時に1増加することを特徴とする基地局。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、「1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」、「2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり、請求項1?5に対してInterDigital Communications,Supporting Extended DRX in RRC_IDLE mode,3GPP TSG-RAN WG2♯83 R2-132436,2013年 8月10日が引用されている。

第4 引用発明
原査定の拒絶理由に引用されたInterDigital Communications,Supporting Extended DRX in RRC_IDLE mode([当審仮訳]:RRC_IDLE状態における拡張DRXのサポート),3GPP TSG-RAN WG2♯83 R2-132436,2013年8月10日アップロード,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_83/Docs/R2-132436.zip>(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

(1)「In this document we will discuss how to support such extended DRX cycle for IDLE mode MTC devices . 」(1葉14行)

([当審仮訳]:
この文書では、アイドル状態のMTCデバイスに対して、このような拡張DRXサイクルをサポートする方法について説明する。)

(2)「Currently the maximum paging cycle, i.e. DRX cycle, is 2.56 seconds. The System Frame Number (SFN) right now is setting value cycle from 0?1023. One SFN cycle time would be 10.24 seconds. It is clearly that the maximum DRX cycle is less than the SFN cycle. It can guarantee the PF and PO calculatation results are exclusive in one DRX cycle and UE only wake up one time per DRX cycle for paging monitoring.
From the UE perspective, any given UE is only required to monitor one PO per paging cycle, and this PO is determined by the parameters specified above, provided to the UE via system information and/or dedicated signaling info.」(2葉4?10行)

([当審仮訳]:
現在、最大ページングサイクル、すなわちDRXサイクルは2.56秒である。現在のシステムフレーム番号(SFN)は、0?1023の値に設定されている。1SFNサイクルは10.24秒である。明らかに、最大DRXサイクルはSFNサイクルより短い。それは、PF及びPOの計算結果が1つのDRXサイクルにおいて排他的であることを保証することができ、UEはページング監視のためにDRXサイクルごとに1回だけウェイクアップする。
UEの観点からは、所与のUEはページングサイクル毎に1つのPOを監視することだけが必要とされ、このPOはシステム情報及び/又は専用シグナリング情報を介してUEに提供される上述のパラメータによって決定される。)

(3)「There are two proposed ways to implement extended DRX:
1. Option 1 Extend SFN cycle length by introducing extra SFN bits [7]:
2. Option 2 Introduce a SFN cycle index [5]:」(2葉30?32行)

([当審仮訳]:
拡張DRXを実装する方法は2つ提案されている。
1.オプション1 追加のSFNビットを導入してSFNサイクル長を延長する[7]。
2.オプション2 SFNサイクルインデックスを導入する[5]:)

(4)「In Option 2, each SFN cycle is still maintained at 1024 frames and a new SFN cycle index is introduced, such that a UE paging cycle can span multiple SFN cycles. The extended long DRX cycle length would be configured as a multiple of the SFN cycle length (i.e. 1, 2, 4, 8, 16, 32, 64 times of SFN cycle).
Figure 1 illustrates the concept of SFN cycle index.

Figure 1 SFN Cycle Index Illustration」(3葉1?5行)

([当審仮訳]:
オプション2では、各SFNサイクルを1024フレームに維持しつつ新たなSFNサイクルインデックスを導入し、その結果、UEページングサイクルは複数のSFNサイクルにまたがることができる。拡張された長いDRXサイクル長は、SFNサイクル長の倍数(すなわち、SFNサイクルの1、2、4、8、16、32、64倍)として構成される。
図1は、SFNサイクルインデックスの概念を示している。
(図省略)
図1:SFNサイクルインデックスの説明)

(5)「In this option, the existing formula can remain unaffected, and in order to support the determination of the exact PF/PO for paging monitoring, the UE needs to be provided with the SFN cycle index which indicates the current SFN cycle in one extended long DRX. The SFN cycle index can be broadcast, either in the MIB or SIB and the range of SFN cycle index can be network determined and configured.
For paging cycle calculations, the MTC UE first needs to calculate the Paging SFN cycle index, and use legacy calculation to obtain the Paging Frame and Paging Occasion within that SFN cycle. Thus, the introduction of SFN cycle index provides the most intuitive way to enable DRX cycle greater than 1024 frames, and can keep the existing paging formulae unmodified.」(3葉6?13行)

([当審仮訳]:
このオプションでは、既存の式は影響を受けずに残すことができる。そして、ページング監視のための正確なPF / POの決定をサポートするために、UEは、1つの長い拡張DRXにおける現在のSFNサイクルを示すSFNサイクルインデックスを提供される必要がある。SFNサイクルインデックスは、MIB又はSIBのいずれかでブロードキャストすることができ、SFNサイクルインデックスの範囲はネットワークで決定し構成することができる。
ページングサイクルの計算のために、MTC UEは、最初にページングSFNサイクルインデックスを計算し、従来の計算式を使用して、SFNサイクル内のページングフレーム及びページングオケージョンを取得する。したがって、SFNサイクルインデックスの導入は、1024フレームを超えるDRXサイクルを可能にするための最も直感的な方法を提供し、既存のページングの式を変更しないでおくことができる。)

上記(1)?(5)の記載及び図面並びに当業者の技術常識を考慮し、以下のことがいえる。

ア 上記(2)の記載及び図1の記載から、システムフレーム番号(SFN)の最大値は1023であり、最初の値は0であるといえる。そして、上記(4)及び図1の記載から、SFNサイクルインデックスは、システムフレーム番号(SFN)が1023に達した後に0に戻った時に1をインクリメントするものであることが見てとれる。したがって、SFNサイクルインデックスは、システムフレーム番号(SFN)が最大値に達した後に最初の値に戻った時に1をインクリメントするものであるといえる。
また、上記(3)、(5)の記載から、SFNサイクルインデックスは、拡張DRXにおけるSFNサイクルを示すものである。そして、上記(4)及び図1の記載から、SFNサイクルインデックスを用いて、拡張DRXにおける1023を超えるシステムフレーム番号を特定可能であることが見てとれる。
さらに、基地局がSIBをUEにブロードキャストすることは技術常識であることを考慮すると、上記(5)の記載から、基地局がSFNサイクルインデックスを含むSIBをUEにブロードキャストする処理を実行し、UEがSIBを受信することは明らかである。

イ 上記(1)、(2)、(5)及び図1の記載から、SFNサイクルインデックスにより特定される拡張DRXにおける1023を超えるシステムフレーム番号は、SIBを受信したUEが、アイドル状態において、拡張DRXによりページングを監視するページングオケージョンを含むページングフレームの決定を行うために用いられるものであるといえる。

してみれば、引用例には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「システムフレーム番号(SFN)が最大値に達した後に最初の値に戻った時に1をインクリメントする拡張DRXにおける1023を超えるシステムフレーム番号を特定するためのSFNサイクルインデックスを含むSIBをUEにブロードキャストする処理を実行し、
SFNサイクルインデックスにより特定される拡張DRXにおける1023を超えるシステムフレーム番号は、SIBを受信したUEが、アイドル状態において、拡張DRXによりページングを監視するページングオケージョンを含むページングフレームの決定を行うために用いられる、基地局。」

第5 対比・判断
本願発明と引用発明とを比較すると、
ア 引用発明の「拡張DRXにおける1023を超えるシステムフレーム番号」は、従来のシステムフレーム番号の最大値である1023を超える値であり、そのようなシステムフレーム番号を「拡張システムフレーム番号」と称することは任意である。
そして、「SFNサイクルインデックス」は、システムフレーム番号(SFN)が最大値に達した後に最初の値に戻った時に1をインクリメントするものであり、拡張DRXにおける1023を超えるシステムフレーム番号を特定するためのものであるから、本願発明の「システムフレーム番号(SFN)が最大値に達した後に最初の値に戻った時に1をインクリメントする拡張システムフレーム番号を特定するための情報」に相当する。

イ 引用発明の「SIB」、「UE」は、それぞれ本願発明の「システム情報ブロック(SIB)」、「ユーザ端末」に相当する。

ウ 引用発明は、UEがページングサイクル毎に1つのページングオケージョンを監視するものであるから、引用発明の「ページングを監視するページングオケージョン」と本願発明の「ページングを監視するタイミング」とでは、表現上の差異があるにすぎない。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致し、また、相違している。
(一致点)
「システムフレーム番号(SFN)が最大値に達した後に最初の値に戻った時に1をインクリメントする拡張システムフレーム番号を特定するための情報を含むシステム情報ブロック(SIB)をユーザ端末にブロードキャストする処理を実行し、
前記情報により特定される前記拡張システムフレーム番号は、前記システム情報ブロックを受信したユーザ端末が、アイドル状態において、拡張DRX(eDRX)によりページングを監視するタイミングを含むページングフレームを決定するために用いられる、基地局。」

(相違点1)
本願発明が「システム情報ブロック(SIB)をユーザ端末にブロードキャストする処理を実行する制御部」を有するのに対して、引用発明は「SIBをUEにブロードキャストする処理を実行」するものの、制御部を備えることは明らかにされていない点。

(相違点2)
本願発明は、「前記情報は、前記システム情報ブロックを受信した前記ユーザ端末において、前記システムフレーム番号が前記最大値に達した後に前記最初の値に戻った時に1増加する」との発明特定事項を含むのに対し、引用発明には当該発明特定事項を有しない点。

以下、各相違点について検討する。
(相違点1について)
基地局が通信制御を行う制御部を備えることは自明であるから、引用発明に記載された基地局が、SIBをUEにブロードキャストする処理を実行する制御部を備えることは明らかである。
したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。

(相違点2について)
本願発明は、「基地局」の発明であるところ、本願発明の「前記情報は、前記システム情報ブロックを受信した前記ユーザ端末において、前記システムフレーム番号が前記最大値に達した後に前記最初の値に戻った時に1増加する」との発明特定事項は、ユーザ端末における情報の状態を特定する一方で、基地局の動作を何ら特定していないから、上記発明特定事項は、基地局を特定するための意味を有しないものである。そうしてみると、相違点2は、基地局の発明である本願発明の構成に係る相違点とはいえないから、実質的な相違点ではない。
仮に、上記相違点2が本願発明の構成に係る相違点であると仮定しても、引用例の「For paging cycle calculations, the MTC UE first needs to calculate the Paging SFN cycle index, and use legacy calculation to obtain the Paging Frame and Paging Occasion within that SFN cycle.」(3葉10?11行)([当審仮訳]:ページングサイクルの計算のために、MTC UEは、最初にページングSFNサイクルインデックスを計算し、従来の計算式を使用して、SFNサイクル内のページングフレーム及びページングオケージョンを取得する。)(下線は当審で付した。)との記載、及び、本願の出願前に頒布された刊行物であるAlcatel-Lucent, Alcatel-Lucent Shanghai Bell , Text Proposal to TR25.927 on NodeB DTX([当審仮訳]:TR25.927のノードBのDTXについての提案), 3GPP TSG-RAN WG1 #60bis, R1-101847, 2010年4月7日アップロード, インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_60b/Docs/R1-101847.zip>の、「The UE DRX or NB DTX cycle can be extended beyond 4096 radio frames (maximum SFN length) by virtually extending the SFN. Here the UE and NB each keeps an internal counter which is incremented whenever the SFN is incremented and does not wraps around when SFN reset to 0. This would enable the NB and UE DRx/DTx cycle to be as long as desired (within practical constraints).」(第3葉14?17行)([当審仮訳]:SFNを仮想的に拡張することによって、UE DRX又はNB DTXサイクルを4096無線フレーム(最大SFN長)を超えて拡張することができる。ここで、UE及びNBは、SFNがインクリメントされるたびにインクリメントされ、SFNが0にリセットされたときにラップアラウンドしない内部カウンタをそれぞれ保持する。これにより、NB及びUEのDRx / DTxサイクルを(実用的制約内で)長くすることができる。)(下線は当審で付した。)との記載によれば、拡張DRXの技術分野において、基地局とユーザ端末の双方にシステムフレーム番号を算出するための構成を備え、ユーザ端末においてもシステムフレーム番号を算出することは周知技術である。そうしてみると、「拡張システムフレーム番号を特定するための情報が、ユーザ端末において、システムフレーム番号が前記最大値に達した後に前記最初の値に戻った時に1増加する」ことは、当業者が引用発明から容易になし得た事項にすぎない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は引用発明であり、また、本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号、同第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-07-18 
結審通知日 2019-07-23 
審決日 2019-08-19 
出願番号 特願2017-503688(P2017-503688)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石田 紀之  
特許庁審判長 岩間 直純
特許庁審判官 山本 章裕
原田 聖子
発明の名称 基地局、プロセッサ、通信方法、ユーザ端末  
代理人 キュリーズ特許業務法人  

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