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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01B
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01B
管理番号 1355611
審判番号 不服2018-16533  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-11 
確定日 2019-10-03 
事件の表示 特願2017- 45072「画像測定用プログラム、画像測定機、及び画像測定方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月15日出願公開、特開2017-106932〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この審判事件に関する出願(以下、「本件出願」という。)は、平成24年 9月 6日にされた特許出願(特願2012-196266)の一部を平成29年 3月 9日に新たな特許出願としたものである。
本件出願については、平成30年 4月10日に特許請求の範囲及び明細書についての補正がなされ、同月18日付けで特許法第50条の2の通知を伴う拒絶理由が通知され、同年 8月23日に意見書が提出されるとともに特許請求の範囲及び明細書についての補正がなされたが、この補正は同年 9月 3日付けの決定をもって却下され、同日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、査定の謄本が同月11日に送達された。
これに対し、平成30年12月11日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に特許請求の範囲及び明細書についての補正(以下、「本件補正」という。)がされた。
なお、本件出願の請求項の数は、本件補正前(すなわち、原査定時)は12であり、本件補正後は8である。


第2 本件補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1についての補正を含む。
本件補正前及び本件補正後の請求項1の記載は、以下のとおりである。なお、下線は補正箇所を示すために合議体が付したものである。

(1) 本件補正前
「【請求項1】
試料の画像が表示されているタッチパネルに対する第1の操作によって、前記タッチパネルに前記試料の拡大画像を表示するステップと、
前記拡大画像が表示されている前記タッチパネルに対する第2の操作によって、前記拡大画像に画像測定のための測定点を設定するステップと、
前記測定点を用いて前記画像測定を行うステップと、
をコンピュータに実行させる画像測定用プログラム。」

(2) 本件補正後
「【請求項1】
画像測定のための測定点が指定されていない状態において、試料の画像が表示されているタッチパネルの所定の箇所が押下されると前記試料の画像の前記押下された箇所を含む所定の領域を拡大した拡大画像を前記タッチパネルに表示するステップと、
前記画像測定のための測定点が指定されていない状態において、前記拡大画像が表示されている前記タッチパネルに対する所定の操作によって、前記拡大画像に画像測定のための測定点の指定を受け付けるステップと、
前記測定点を用いて前記画像測定を行うステップと、
をコンピュータに実行させる画像測定用プログラム。」

2 本件補正の適否
本件補正のうち、請求項1についての補正は、「試料の画像が表示されているタッチパネルに対する第1の操作によって、前記タッチパネルに前記試料の拡大画像を表示するステップ」及び「前記拡大画像が表示されている前記タッチパネルに対する第2の操作によって、前記拡大画像に画像測定のための測定点を設定するステップ」を、それぞれ「画像測定のための測定点が指定されていない状態において」行うと限定し、前者のステップにおける拡大画像の表示を「タッチパネルに対する第1の操作によって」行うとしていたところを、「タッチパネルの所定の箇所が押下されると前記試料の画像の前記押下された箇所を含む所定の領域を拡大」することによって行うと限定し、更に、後者のステップが、「第2の操作によって」「測定点を設定する」と表現されていたところを、「所定の操作によって」「測定点の指定を受け付ける」という実質的に同じ意味の表現に変更したものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、この補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下で検討する。

(1) 本件補正発明
本件補正発明は、上記1(2)に記載した請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(2) 引用文献に記載された発明等
ア 引用文献2
本件出願の出願前に公開された公開特許公報であって、原査定の拒絶の理由に引用された特開2010-50597号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は合議体が付したものである。

(ア) 段落0016から段落0018まで
「【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための最良の形態によるデジタルカメラについて説明する。
【0017】
図1は、本実施形態によるデジタルカメラの構成を示すブロック図である。
【0018】
本実施形態におけるデジタルカメラは、ズームレンズ11およびフォーカスレンズ12からなる光学レンズ系1、撮像素子2、A/D変換部3、CPU(中央演算処理部)4、画像処理部5、バッファメモリ6、液晶モニタ7ならびにI/F部(インターフェース部)8を備えて構成されている。A/D変換部3、CPU4、画像処理部5、バッファメモリ6、液晶モニタ7およびI/F部8は、それぞれバス9に接続されている。また、CPU4には、撮影する際に撮影者により押圧操作されるレリーズボタン(シャッターボタン)、光学ズーム機能を使用する際に操作されるズームボタン、および種々の操作に用いられる十字キーなどからなる操作部10が接続されている。」

(イ) 段落0032から段落0043まで
「【0032】
図4は、本実施形態のデジタルカメラによる撮影の際に、CPU4によって行われる撮影時処理の概略を示すフローチャートである。
【0033】
この撮影時処理では、まず、CPU4は、撮影者によってレリーズボタンが操作されて撮影が開始されたか否かを判別する(図4,S1参照)。撮影者によってレリーズボタンが操作されて撮影が開始されると、S1の判別は“YES”となり、CPU4は、次に、AF処理(オートフォーカス処理)を開始させる(S2)。AF処理では、CPU4は、位置検出部15によって検出される位置信号に基づいてフォーカスレンズ12の位置をステッピングモータ16で制御し、被写体21が撮像素子2の受光面2aに結像してピントが合うように、フォーカスレンズ12を光軸上で移動させる処理を行う。続いて、CPU4は、AF合焦になったか、すなわちS2のAF処理で被写体21にピントが合う位置にフォーカスレンズ12が移動したか否かを判別する(S3)。この判別が“NO”である場合、CPU4は、引き続き被写体21のピントが合うようにフォーカスレンズ12を移動させて、ピント合わせを行う。AF合焦になってS3の判別が“YES”になると、CPU4は、シャッターを開いて撮像素子2の受光面2aに被写体を投影させて、撮影処理を行う(S4)。
【0034】
次に、CPU4は、被写体21のサイズ(距離)の算出に必要な被写体21の半画角θおよび撮影距離f’の撮影情報を、予め用意されている前述したテーブルを参照して取得する(S5)。続いて、CPU4は、S5で取得した撮影情報がヘッダー部に格納された、被写体21の撮影画像データを含む画像ファイルを生成し、この画像ファイルを記録媒体17に記録する(S6)。S6の処理が終了すると、撮影時処理は終了する。
【0035】
図5は、液晶モニタ7に撮影画像を再生表示させてCPU4により行われる再生時処理の概略を示す図である。
【0036】
この再生時処理では、まず、CPU4は、液晶モニタ7において撮影画像の再生表示が開始されたか否かを判別する(図5,S11参照)。撮影画像の再生表示が開始されてS11の判別が“YES”になると、CPU4は、図4,S6の処理で記録媒体17に記録された撮影画像データおよび撮影情報を、記録媒体17から読み出す処理を行う(S12)。続いて、CPU4は、S12で読み出した撮影情報に含まれる被写体21の半画角θおよび撮影距離f’に基づいて、撮像素子2における撮影画像の単位記録画素当たりの被写体21のサイズを算出する(S13)。具体的には、(1)式で算出された被写体21のサイズL’を撮像素子2の記録画素数mで除することで、単位記録画素当たりの被写体21のサイズL’/mを算出する。また、電子ズームによって被写体21の撮影画像が拡大されている場合には、(1)式で算出した被写体21のサイズL’を撮像素子2の記録画素数mで除したものL’/mを、電子ズームにより拡大される被写体21の撮影画像の拡大倍率nでさらに除することで、単位記録画素当たりの被写体21のサイズL’/mnを算出する。
【0037】
次に、CPU4は、S13で算出した撮像素子2における撮影画像の単位記録画素当たりの被写体サイズL’/mまたはL’/mnを、液晶モニタ7における再生時の撮影画像の単位表示画素(1画素)当たりのサイズ(距離)に変換する処理を行う(S14)。具体的には、CPU4は、液晶モニタ7の表示画素サイズの撮像素子2の記録画素サイズに対する比Rに、S13で算出した撮影画像の単位記録画素当たりの被写体サイズL’/mまたはL’/mnを乗じて、液晶モニタ7における再生時の撮影画像の単位表示画素当たりのサイズRL’/mまたはRL’/mnを算出する。
【0038】
次に、CPU4は、十字キーに対する操作によって、液晶モニタ7に再生表示される撮影画像の任意の2点の位置が指定済みになっているか否かを判別する(S15)。このS15の判別処理は、“YES”になるまで繰り返し行われる。液晶モニタ7に再生表示される撮影画像の任意の2点の位置が指定されて、S15の判別が“YES”になると、CPU4は、S15で指定された2点間の撮影時の被写体21のサイズ(距離)を算出する(S16)。
【0039】
例えば、図6(a)に示すように、上述した人物21A,21B,21Cからなる被写体21の撮影された撮影画像が液晶モニタ7において再生表示されている場合に、中央部に表示される人物21Bの頭部,足部にそれぞれカーソルが合わされた状態で十字キーが操作されて、2点A,Bが指定されると、CPU4は、液晶モニタ7の表示面をxy平面としたときの2点A,Bの座標をそれぞれA(x1,y1),B(x2,y2)として、2点AB間のx方向の成分(x2-x1)およびy方向の成分(y2-y1)においてそれぞれ含まれる表示画素数P1,P2を算出する。そして、算出した各方向の表示画素数P1,P2に、S14で算出した単位表示画素当たりのサイズを乗じたものをそれぞれX,Yとして、指定された2点間のサイズ(距離)LABを、次の(2)式により算出する。
LAB =(X2+Y2)1/2 ・・・(2)
【0040】
表示画面の右下方には、上述したS14の処理で算出された単位表示画素当たりの被写体サイズに基づいて、1目盛りが20cmに設定されたスケール(目盛り)が表示されている。
【0041】
続いて、CPU4は、S16で算出した2点間の撮影時の被写体サイズ(距離)を、液晶モニタ7に距離表示する(S17)。例えば、上記の例の場合には、図6(a)に示すように、人物21Bの頭部および足部間にサイズ(距離)LABを表示する。S17の処理が終了すると、再生時処理は終了する。
【0042】
また、被写体21の指定された2点間のサイズLABの算出は、次のように、液晶モニタ7に表示される被写体21を拡大表示させてから行うこともできる。
【0043】
図6(b)は、図6(a)に点線枠7aで示す部分が2倍に拡大されて液晶モニタ7に表示された状態を示している。同図(b)に示すように、表示画面の右下方に表示されるスケール(目盛り)は、1目盛りが10cmになっている。このように人物21Bの被写体が2倍に拡大された状態で2点A,Bが指定された場合においても、図5,S16の処理と同様に、指定された2点間のサイズLABが上述した(2)式に基づいて算出され、S17の処理と同様にサイズLABが表示される。」

【図4】

【図5】

【図6】


(ウ) 段落0047から段落0048まで
「【0047】
また、本実施形態では、十字キーによって指定された被写体21Bの撮影画像の任意の2点A(x1,y1),B(x2,y2)間の表示画素数P1,P2に、撮像素子2の単位記録画素当たりの被写体サイズL’/mを基に表示サイズ算出手段によって算出される単位表示画素当たりの表示サイズRL’/mを乗じることで、十字キーによって指定された2点間のサイズLABが2点間サイズ算出手段によって算出される(図5,S16、図6(a)、(2)式参照)。算出された2点間のサイズLABは、表示手段によって液晶モニタ7に表示させられる(図5,S17参照)。このため、被写体21Bの任意の2点A,B間のサイズLABは、撮像素子2の単位記録画素当たりの被写体サイズL’/mを基に算出されるため、従来のスルー画像で指定された長さが測定される場合よりも正確に算出されるようになる。また、撮影画像の再生時に任意の2点A,Bを指定するため、測定する被写体の箇所および種類は従来のカメラのように限定されず、所望の被写体の所望の任意の2点間のサイズを測定することが可能である。
【0048】
また、本実施形態によるデジタルカメラでは、液晶モニタ7によって再生表示される被写体21Bの撮影画像を拡大する機能を有するので、単位表示画素当たりの表示サイズRL’/mが拡大表示の表示倍率に応じて小さくなる(図6(b)参照)。このため、この拡大機能により被写体21Bの撮影画像が拡大された状態では、撮影画像を拡大しない場合に比べて、十字キーにより任意の2点A,Bを細かく指定することができると共に、2点間サイズ算出手段により算出される表示サイズの精度を向上させることが可能になる。」

(エ) 段落0050
「【0050】
また、上記実施形態では、液晶モニタ7において再生表示される撮影画像の任意の2点の指定が、十字キーに対する操作によって行われる場合を説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、任意の2点の指定が、液晶モニタ7の表面に設けられたタッチパネルに対する操作入力によって行われる構成とすることも可能である。この構成によれば、被写体21の再生表示画像を見る者は、被写体21の撮影画像の所望の2点間を結ぶ曲線経路も指定でき、所望の2点間の直線距離だけでなく、2点間の曲線経路の距離をも測定することができる。よって、被写体21の撮影画像の2点間の種々の経路に沿う被写体サイズを容易に得ることが可能になる。」

上記(ア)ないし(エ)の記載によれば、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「光学レンズ系1、撮像素子2、CPU(中央演算処理部)4及び液晶モニタ7を備えるデジタルカメラにおいて、CPU4によって行われる処理であって、
撮影時処理及び再生時処理を含み、
撮影時処理は、
シャッターを開いて撮像素子2の受光面2aに被写体を投影させて、撮影処理を行うステップ(S4)と、
被写体21のサイズ(距離)の算出に必要な被写体21の半画角θおよび撮影距離f’の撮影情報を、予め用意されているテーブルを参照して取得するステップ(S5)と、
S5で取得した撮影情報がヘッダー部に格納された、被写体21の撮影画像データを含む画像ファイルを生成し、この画像ファイルを記録媒体17に記録するステップ(S6)と、
を含み、
再生時処理は、
S6の処理で記録媒体17に記録された撮影画像データおよび撮影情報を、記録媒体17から読み出す処理を行うステップ(S12)と、
S12で読み出した撮影情報に含まれる被写体21の半画角θおよび撮影距離f’に基づいて、撮像素子2における撮影画像の単位記録画素当たりの被写体21のサイズを算出するステップ(S13)と、
S13で算出した撮像素子2における撮影画像の単位記録画素当たりの被写体サイズL’/mまたはL’/mnを、液晶モニタ7における再生時の撮影画像の単位表示画素(1画素)当たりのサイズ(距離)に変換する処理を行うステップ(S14)と、
十字キーに対する操作によって、液晶モニタ7に再生表示される撮影画像の任意の2点の位置が指定済みになっているか否かを判別するステップ(S15)と、
S15の判別が“YES”になると、S15で指定された2点間の撮影時の被写体21のサイズ(距離)を算出するステップ(S16)と、
S16で算出した2点間の撮影時の被写体サイズ(距離)を、液晶モニタ7に距離表示するステップ(S17)と、
を含み、
被写体21の指定された2点間のサイズLABの算出は、液晶モニタ7に表示される被写体21を拡大表示させてから行うことができ、この拡大機能により被写体21Bの撮影画像が拡大された状態では、撮影画像を拡大しない場合に比べて、十字キーにより任意の2点A、Bを細かく指定することができると共に、2点間サイズ算出手段により算出される表示サイズの精度を向上させることが可能になり、
液晶モニタ7において再生表示される撮影画像の任意の2点の指定は、十字キーに対する操作によって行われるのに限られず、液晶モニタ7の表面に設けられたタッチパネルに対する操作入力によって行われる構成としてもよい、
処理。」

イ 引用文献6
本件出願の出願前に国際公開され、合議体が新たに引用する国際公開第2009/22671号(以下、「引用文献6」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は合議体が付したものである。

(ア) 段落0007から段落0015まで
「[0007] 接触型の入力装置に関する技術が、特許文献1に記載される。
[0008] 特許文献1:特開2006-5655号公報
発明の開示
[0009] しかしながら、特許文献1に記載された接触型の入力装置において、タッチパネルに自分の指を使って入力する場合、指がタッチパネルに接触する面積が大きくなる。隣り合うアイコンを識別して、目的のアイコンのみに指を接触させることが困難である。それゆえ、自分が選択したいアイコン付近の間違ったアイコンを選択してしまうことがあった。
[0010] 特に、フルブラウザ画面を、携帯電話などの携帯端末の小さい画面上で表示する際には、ブラウザの拡大、縮小などの表示を素早く行う必要がある。また、密集したアイコンに対する選択操作が必要とされる。このため、スタイラスペンが必須であった。
[0011] このスタイラスペンを使用した場合でも、誤ったアイコンが選択されることがあり、操作性はあまり良くなかった。
[0012] PDA(personal digital assistant)や携帯電話等の携帯端末の小さい画面では、パーソナルコンピュータと異なり、ブラウザの広い範囲を確認することが困難である。ブラウザの文字サイズを大きくして、文字を見易く設定した状態ではなおさらである。
[0013] このため、目的のアイコン等に、なかなか辿り着けないという問題があった。
[0014] また、ブラウザに表示される文字の大きさの変更などの煩雑な作業に対して、ユーザがスタイラスペンの操作に慣れる必要があった。
[0015] 本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、接触型の入力装置に対し、スタイラスペンを使用することなく、容易に表示画面の拡大を行うことができる接触型入力装置、接触型入力方法及びプログラムを提供することを目的とする。」

(イ) 段落0079から段落0088まで
「[0079] (2)タッチパネル入力装置を備える携帯電話の動作
次に、図12に示す携帯電話の動作を説明する。
[0080] 図12に示した携帯電話は、例えば、タッチパネルディスプレイ10A上にブラウザページを表示する。
[0081] タッチパネルディスプレイ10Aに表示される表示画面の具体例を図13に示す。
[0082] 図13は、あるWebサイトを閲覧するときに表示される画面を示す。
[0083] 図13を参照すると、タッチパネルディスプレイ10Aに、あるWebサイトのページ情報が表示される。このタッチパネルディスプレイ10Aは全てのコンテンツを表示するが、ブラウザ上に表示される文字が小さくなってしまい、文字の読み取りが困難である。
[0084] そこで、ユーザは、ユーザの指30を用いて、タッチパネルディスプレイ10Aに表示される画面において、詳細に表示したい箇所40を選択し、接触する。
[0085] ユーザによる接触操作により、タッチパネルディスプレイ10A上の、ユーザによって触られた箇所40の近傍が拡大表示される。
[0086] このときの表示画面の具体例が、図14に示される。
[0087] 図14に示す例において、タッチパネルディスプレイ10Aはユーザによって触られた箇所40の近傍の領域を画定する。この領域は、詳細ウィンドウ20として新たに生成された画面表示より、拡大して表示される。
[0088] これにより、ユーザは、図13において読み取ることができなかった小さい文字を、図14のように拡大表示することにより、読み取ることができる。」

【図13】

【図14】


上記(ア)及び(イ)の記載によれば、引用文献6には、以下の技術事項が記載されていると認められる。

「携帯電話などにおけるタッチパネル入力装置において、タッチパネルに自分の指を使って入力する場合、指がタッチパネルに接触する面積が大きくなり、自分が選択したいアイコン付近の間違ったアイコンを選択してしまうという問題点に対応するため、ユーザが、ユーザの指を用いて、タッチパネルディスプレイに表示される画面において、詳細に表示したい箇所を選択し、接触したときに、タッチパネルディスプレイ上の、ユーザによって触られた箇所の近傍を拡大表示するようにする。」

(3) 本件補正発明についての判断
ア 対比
本件補正発明と引用発明2とを対比すると、以下のとおりである。

(ア) 引用発明2における「CPU(中央演算処理部)4」が、本件補正発明における「コンピュータ」に相当する。
引用発明2の「撮影時処理及び再生時処理を含」む「処理」は、「CPU(中央演算処理部)4」によって行われるものであり、「プログラム」として規定されていることが明らかであるから、これは、本件補正発明の「画像測定用プログラム」に相当するといえる。

(イ) 引用発明2における「再生時処理」は、「S15の判別が“YES”になると、S15で指定された2点間の撮影時の被写体21のサイズ(距離)を算出するステップ(S16)」を含んでおり、このステップにおける「指定された2点間の撮影時の被写体21のサイズ(距離)」の「算出」が、本件補正発明における「画像測定」に相当し、また、「指定された2点」のそれぞれが、本件補正発明における「測定点」に相当する。
更に、引用発明2における「再生時処理」は、「十字キーに対する操作によって、液晶モニタ7に再生表示される撮影画像の任意の2点の位置が指定済みになっているか否かを判別するステップ(S15)」を含んでいるが、「任意の2点の位置」のうちの1点目の位置を指定する際には、位置が指定されていない状態であることが明らかであり、このような状態が、本件補正発明における「画像測定のための測定点が指定されていない状態」に相当する。

(ウ) 引用発明2における「液晶モニタ7に表示される被写体21」が、本件補正発明における「試料の画像」に相当する。

(エ) 引用発明2における「再生時処理」は、「十字キーに対する操作によって、液晶モニタ7に再生表示される撮影画像の任意の2点の位置が指定済みになっているか否かを判別するステップ(S15)」を含んでおり、また、「被写体21の指定された2点間のサイズLABの算出は、液晶モニタ7に表示される被写体21を拡大表示させてから行うことができ、この拡大機能により被写体21Bの撮影画像が拡大された状態では、撮影画像を拡大しない場合に比べて、十字キーにより任意の2点A、Bを細かく指定することができると共に、2点間サイズ算出手段により算出される表示サイズの精度を向上させることが可能にな」るとされ、更に、「液晶モニタ7において再生表示される撮影画像の任意の2点の指定は、十字キーに対する操作によって行われるのに限られず、液晶モニタ7の表面に設けられたタッチパネルに対する操作入力によって行われる構成としてもよい」とされている。すなわち、「被写体21の指定された2点間のサイズLABの算出は、液晶モニタ7に表示される被写体21を拡大表示させてから行う」ようにし、かつ、「液晶モニタ7において再生表示される撮影画像の任意の2点の指定」が「液晶モニタ7の表面に設けられたタッチパネルに対する操作入力によって行われる」ようにした場合の「S15」では、「液晶モニタ7に表示される被写体21を拡大表示」し、「タッチパネルに対する操作入力によって」、「液晶モニタ7に再生表示される撮影画像の任意の2点の位置が指定」されることになる。
上記(イ)及び(ウ)も踏まえると、このようにした場合の「S15」における、「任意の2点の位置」のうちの1点目の位置を指定する際に、「液晶モニタ7に表示される被写体21を拡大表示」するというステップと、本件補正発明における「画像測定のための測定点が指定されていない状態において、試料の画像が表示されているタッチパネルの所定の箇所が押下されると前記試料の画像の前記押下された箇所を含む所定の領域を拡大した拡大画像を前記タッチパネルに表示するステップ」とは、「画像測定のための測定点が指定されていない状態において、試料の画像の所定の領域を拡大した拡大画像を前記タッチパネルに表示するステップ」であるという点で共通する。

(オ) 上記(エ)で述べたように、引用発明2において、「被写体21の指定された2点間のサイズLABの算出は、液晶モニタ7に表示される被写体21を拡大表示させてから行う」ようにし、かつ、「液晶モニタ7において再生表示される撮影画像の任意の2点の指定」が「液晶モニタ7の表面に設けられたタッチパネルに対する操作入力によって行われる」ようにした場合の「S15」では、「液晶モニタ7に表示される被写体21を拡大表示」し、「タッチパネルに対する操作入力によって」、「液晶モニタ7に再生表示される撮影画像の任意の2点の位置が指定」されることになるところ、このような「タッチパネルに対する操作入力」及び「2点の位置」の「指定」が、本件補正発明における「前記タッチパネルに対する所定の操作」及び「画像測定のための測定点の指定」にそれぞれ相当する。
よって、上記(イ)及び(ウ)も踏まえると、このようにした場合の「S15」における、「任意の2点の位置」のうちの1点目の位置を指定する際に、「タッチパネルに対する操作入力によって」、「液晶モニタ7に再生表示される撮影画像の任意の2点の位置が指定」されるというステップは、本件補正発明における「前記画像測定のための測定点が指定されていない状態において、前記拡大画像が表示されている前記タッチパネルに対する所定の操作によって、前記拡大画像に画像測定のための測定点の指定を受け付けるステップ」に相当するといえる。

(カ) 引用発明2における「再生時処理」は、「S15の判別が“YES”になると、S15で指定された2点間の撮影時の被写体21のサイズ(距離)を算出するステップ(S16)」を含んでおり、このステップが、本件補正発明における「前記測定点を用いて前記画像測定を行うステップ」に相当する。

イ 一致点及び相違点
上記アの対比の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明とは、

「 画像測定のための測定点が指定されていない状態において、試料の画像の所定の領域を拡大した拡大画像を前記タッチパネルに表示するステップ
前記画像測定のための測定点が指定されていない状態において、前記拡大画像が表示されている前記タッチパネルに対する所定の操作によって、前記拡大画像に画像測定のための測定点の指定を受け付けるステップと、
前記測定点を用いて前記画像測定を行うステップと、
をコンピュータに実行させる画像測定用プログラム。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
「試料の画像の所定の領域を拡大した拡大画像」が、本件補正発明では、「試料の画像が表示されているタッチパネルの所定の箇所が押下されると前記試料の画像の前記押下された箇所を含む所定の領域を拡大した拡大画像」であるとされているのに対して、引用発明2では、そのように特定されていない点。

ウ 相違点についての判断
上記(2)のイで述べたように、引用文献6には、「携帯電話などにおけるタッチパネル入力装置において、タッチパネルに自分の指を使って入力する場合、指がタッチパネルに接触する面積が大きくなり、自分が選択したいアイコン付近の間違ったアイコンを選択してしまうという問題点に対応するため、ユーザが、ユーザの指を用いて、タッチパネルディスプレイに表示される画面において、詳細に表示したい箇所を選択し、接触したときに、タッチパネルディスプレイ上の、ユーザによって触られた箇所の近傍を拡大表示するようにする」という技術事項が記載されている。
そして、携帯電話に撮像機能が設けられることが広く一般に知られていることに鑑みれば、引用発明2と上記技術事項とは、撮像機能付き電子機器におけるタッチパネル入力装置という共通の技術分野に属するものといえ、また、引用発明2が「任意の2点A、Bを細かく指定すること」を必要とするものであることに鑑みれば、引用発明2と上記技術事項とは、タッチパネルに自分の指を使って入力する場合、指がタッチパネルに接触する面積が大きくなり、自分が指定したい点付近の間違った点を選択してしまうことを回避するという、共通の課題を有するものともいえる。
したがって、引用発明2において、「液晶モニタ7に表示される被写体21を拡大表示」する際に、共通の技術分野に属し、かつ共通の課題を有する引用文献6に記載された上記技術事項を採用し、「ユーザが、ユーザの指を用いて、タッチパネルディスプレイに表示される画面において、詳細に表示したい箇所を選択し、接触したときに、タッチパネルディスプレイ上の、ユーザによって触られた箇所の近傍を拡大表示するように」して、上記相違点に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことということができる。

エ 本件補正発明についての判断のむすび
以上のとおりであるから、本件補正発明は、引用発明2及び引用文献6に記載された技術事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正の却下の決定のむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。


第3 本件発明についての判断
1 本件発明
上記第2のとおり、本件補正は却下されたので、本件出願の請求項1ないし請求項12に係る発明は、本件出願の本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項12に記載された事項により特定されるとおりのものである。
特に、本件出願の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、上記第2の1(1)に記載したとおりのものである

2 原査定における拒絶理由の概要

理由1.この出願の請求項1ないし請求項4、請求項6、請求項7及び請求項10ないし請求項12に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた以下の引用出願1の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

理由2.この出願の請求項1ないし請求項5及び請求項7ないし請求項12に係る発明は、以下の引用文献2ないし引用文献5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用出願1.特願2012-100125号(特開2013-228267号)
引用文献2.特開2010-50597号公報
引用文献3.特開平9-237156号公報
引用文献4.特開2003-108562号公報
引用文献5.特開2004-177325号公報

3 引用文献に記載された発明等
(1) 引用文献2
本件出願の出願前に公開された公開特許公報である引用文献2に記載された発明(引用発明2)は、上記第2の2(2)のアに記載したとおりである。

(2) 引用文献3
本件出願の出願前に公開された公開特許公報である引用文献3には、以下の記載がある。なお、下線は合議体が付したものである。

(ア) 段落0002から段落0004まで
「【0002】
【従来の技術】指により座標入力が行われるタッチパネル画面において、指により座標入力が行われる場合、その指の大きさの分の誤差が生じる。そこで、指により座標入力が行われるタッチパネル画面において、グラフィック・ユーザ・インタフェース(GUI)装置としてボタンを作成するにあたって、前記誤差を考慮した、ある一定の大きさを持ったボタンを作成する方式が採用されている。このようなボタンの寸法配置の問題があるので、ある一定の大きさを持ったボタンが作成できないときは指で押すことができないので、別の操作によってボタンを選択する方式を採用している。
【0003】
【発明が解決しようとしている課題】しかしながら、上記のような方式では画面が複雑になり、ユーザにとっては操作しにくく、アプリケーションプログラム作成者にとってはプログラム作成作業が増えるという欠点がある。
【0004】本発明の目的は、ユーザにとっては操作を容易にし、アプリケーションプログラム作成者にとってプはログラム作成作業を簡略化せることができるグラフィック・ユーザ・インターフェース装置を提供することにある。」

(イ) 段落0018から段落0024まで
「【0018】図3において、キーボード104から起動コマンドを入力すると、図4に示される処理0が実行され、スタートボタン207が画面201の右下に表示され(ステップS401)、グラフィック・ユーザ・インタフェースの状態は図2(a)に示される初期状態の画面201になる(図3のS301)。画面201の左上には、指で入力することができない程度の大きさのアプリケーション206が表示されている。アプリケーション206は指の大きさ分の誤差を考慮していないボタンを持つ。
【0019】初期状態(図2(a))において、スタートボタン207が押されると、図5に示される処理1が実行される。すなわち、図5において、ステップSS501で、他のアプリケーションに対して座標入力イベントが送信されないようにポインタを占有する。次に、ステップS502で、スタートボタン207を消し、ステップS503で、ユーザに対して後述の矩形画面209の左上の座標の入力を促すために”左上入力”画面208を画面202の右下に表示し、グラフィック・ユーザ・インタフェースの状態は図2(b)に示される左上入力待ち状態の画面202になる(図3のS302)。
【0020】左上入力待ち状態(図2(b))において、画面202の領域内における任意の座標を指213bで入力することにより、図6に示す処理2が行われる。すなわち、図6において、ステップS601で、指213bで入力された座標を左上の座標として保存し、ステップS602で、”左上入力”画面208を消し、ステップS603で、ユーザに対して矩形画面209の右下の座標の入力を促すために”右下入力”画面210を表示し、グラフィック・ユーザ・インタフェースの状態は図2(c)に示される右下入力待ち状態の画面203になる(図3のS303)。
【0021】右下入力待ち状態(図2(c))において、画面203の領域内における任意の座標を指213cで入力することにより、図7に示す処理3が行われる。すなわち、図7において、ステップS701で、指213cで入力された座標を右下の座標として保存し、ステップS702で、ステップS601で保存された座標を左上の座標、ステップS701において保存された座標を右下の座標として矩形画面209を表示する。次に、ステップS703で、”右下入力”画面210を消し、ステップS704で、”倍率入力”画面211aを表示し、グラフィック・ユーザ・インタフェースの状態は図2(d)で示される倍率入力待ち状態の画面204になる(図3のS304)。
【0022】倍率入力待ち状態(図2(d))において、”倍率入力”画面211a上の”2”ボタン、211b”4”ボタン211c及び”8”ボタン211dのいずれかを押すことにより所定の倍率を入力することによって、図8に示す処理4が行われる。すなわち、図8において、ステップS801で、入力された倍率を保存し、ステップS802において”倍率入力”画面211aを消し、ステップS803で、ステップS601において保存された座標を左上とすると共に、ステップS701において保存された座標を右下とした矩形画面209で規定されたビットマップを画面から取り出す。ステップS804では、ステップS803において取り出されたビットマップをステップS801において保存された倍率で拡大する。次いで、ステップS805で、図2(e)の画面205に示すように、ステップS804において拡大されたビットマップに合わせてウィンドウ状の拡大画面212を作成し、その拡大画面212に拡大されたビットマップを張り付けて拡大画面212として表示し、グラフィック・ユーザ・インタフェースの状態は図2(e)に示された座標入力待ち状態の画面205になる(図3のS305)。
【0023】座標入力待ち状態(図2(e))において、拡大画面212の領域内における任意の座標を指213eで入力することにより、図9に示す処理5が行われる。すなわち、図9において、ステップS901で、指213eにより入力された座標の拡大画面212に対する位置を拡大画面212の左上の座標を基準として計算し、ステップS902で、ステップS901において計算した位置をステップS801において保存した倍率で割ることにより、拡大する前の矩形画面209における左上からの位置を計算し、ステップS903において、前記位置をステップS601において保存された座標に足すことにより、指213eで拡大画面212に対して入力された座標の元の矩形画面209に対する座標を求める。次に、ステップS904で、ステップS903で求められた座標上に存在するウィンドウの内、最も前面に出ているウィンドウを得、ステップS905で、ステップS904で得たウィンドウが拡大画面212でないか否かの判定を行い、もし、ステップS904で得られたウィンドウが拡大画面212であるならば、ステップS906に進み、拡大画面212の下にあるウィンドウの内、最も前面に出ているウィンドウを得、次いでステップS907に進む。ステップS905において、ステップS904で得られたウィンドウが拡大画面212でないならば、ステップS906をスキップしてステップS907に進む。
【0024】次に、ステップS907で、ステップS904若しくはステップS906において得られたウィンドウに対し、ポインティングイベントを送信し、擬似的にボタンが押された状態にする。次いで、ステップS908で、拡大画面212を消し、ステップS909で、ステップS501にいて占有されたポインタを解除し、終了する。」

【図2】

【図3】


上記(ア)及び(イ)の記載によれば、引用文献3には、以下の技術事項が記載されていると認められる。

「指により座標入力が行われるタッチパネル画面において、指により座標入力が行われる場合、その指の大きさの分の誤差が生じるという課題に対応するため、左上入力待ち状態において指で入力された座標を左上の座標として保存し、右下入力待ち状態において指で入力された座標を右下の座標として保存し、倍率入力待ち状態において入力された倍率を保存し、保存された各座標を左上及び右下とする矩形画面で規定されるビットマップを保存された倍率で拡大して拡大画面として表示して座標入力待ち状態とし、この状態において、拡大画面の領域内における任意の座標を指で入力するようにする。」

(3) 引用出願1
引用出願1は、本件出願の出願前に出願され、本件出願の出願後に出願公開された特許出願である。引用出願1に係る発明者は、本件出願に係る発明者と同一でなく、また、引用出願1の出願人は、本件出願の出願の時に、本件出願の出願人と同一でもない。
引用出願1の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面には、以下の記載がある。なお、下線は合議体が付したものである。

(ア) 段落0021から段落0034まで
「【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る表示装置、表示方法、及びプログラムの好適な実施形態を、図1?図10に基づいて詳述する。
【0022】
図1は表示装置の一実施形態を示すブロック図である。
【0023】
表示装置10は、制御部20と、撮影部30と、記憶部40と、入力部50と、表示部60と、距離測定部70とからなる。表示装置10は、例えば、スマートフォン等の携帯電話、タブレット、カメラ付き携帯端末、デジタルカメラ、距離測定器、等である。また、表示装置10により測定される対象とは、例えば、家具配置に使用する部屋の間取り、空間サイズや家具寸法、ガーデニング用の庭面積、物置寸法や肥料散布面積、駐車場やガレージの寸法や自動車サイズ、釣った魚のサイズ、等である。
【0024】
制御部20は、CPU、RAM、ROM等を備えたマイクロプロセッサ構成を有し、ROMに格納されている制御プログラムにより、表示装置10全体の制御(演算、検索、抽出等を含む)を行うと共に、後述する各種処理機能の実行制御を行う。撮影部30は、後述する被測定物OBを撮像するカメラを一つまたは複数備え、CCD、CMOSセンサ等多数の画素(ピクセル)の集合体から成る撮像素子を備えている。記憶部40は、撮影部30で撮影された画像データや制御部20で実行するために必要な各種情報データを記憶する。
【0025】
入力部50は、シャッターボタン、メインスイッチ、処理モード切換スイッチ等を備え、これらのスイッチやボタンを操作すると各種信号が制御部20に送信される。表示部60は、液晶パネルや有機ELパネル等のディスプレイであり、指やペンを接触させて各種の処理を行うUI(ユーザーインターフェース)型のタッチパネルでもあり、撮影部30で撮影された画像や各種操作を行う画面等を表示する。距離測定部70は、被測定物OBと表示装置10との距離を測定する装置、例えば方位センサ、角度センサ、赤外線やレーザー、ステレオ画像を解析して距離を求めるセンサ等の光波距離計等を備えている。
【0026】
更に、制御部20は、図1(b)に示される通り、画像処理部21と、選択補助部22と、確認部23と、デプス計算部24と、測定物判定部25と、距離計算部26と、を備えている。各機能については、後述する。
【0027】
図2は、本発明の表示装置10における表示部60の一表示例を示す模式図である。表示部60には、撮像された被測定物OBと、被測定物OBの境界線Sと、ユーザーが計測範囲として指定した境界線S上にある2つの指示点Aである第1指示点A1と第2指示点A2と、が表示されている。また、第1指示点A1と第2指示点A2を結ぶ計測線OL(矢印参照)と、表示部60の下方には計測線OLの計測結果である距離(図では20cm)と、が表示されている。実施形態では、指示点Aの表示マークを二重丸形状で示しているが、例えば、円や四角等の形状、(1)や(2)の英数字、色の相違、等、表示形式に限定されない。また、計測線OLの表示マークとして矢印で示しているが、指示点Aと同様、表示形式に限定されない。
【0028】
図3は、表示装置10の距離計測手順の一例を示すフローチャート図である。フローチャート図を説明し、各処理、判定等の詳細について図4から図8を用いて説明する。
【0029】
表示装置10の撮影部30を用いてユーザーは被測定物OBを撮影する。撮影された3次元の情報をもつデジタル撮像画像は、記憶部40に記憶され、画像処理部21で画像処理され表示部60に表示される。
【0030】
表示部60に表示された被測定物OBの画像を基に、ユーザーの希望する計測範囲の起点となる第1指示点A1を選択、決定するために、指又はペン等で表示部60上を押圧(または接触、タップ、等)する(ステップ1)。押圧した部分(後述の押圧点P)は、入力信号として画像処理部21で認識され、制御部20で座標データに変換される。次に、押圧点Pが被測定物OBを測定するために正しい位置か否かをそれぞれの座標を基づいて制御部20で判定する(ステップ2)。正しい位置とは、押圧点Pが被測定物OBの境界線S上にあることを指す。正しい位置にない場合(ステップ2がYES)は、選択補正処理を行う選択補助部22で選択補助処理を実行する(ステップ3)。押圧点Pと指示点Aとが一致している場合(ステップ2がNO)は、ステップ3をスキップする。
【0031】
ユーザーが、指示点Aを移動(微調整を含む)させる必要があるか否かを判定し(ステップ4)、必要がある場合(YES)は、確認部23で指示点Aの移動を容易にするための確認表示(拡大表示、等)、および微調整を実行する(ステップ5)。指示点Aの移動を必要としていない場合(ステップ4がNO)は、ステップ5をスキップする。次に、被測定物OBの測りたい位置を示す2つの点である第1指示点A1(測定開始点位置)と第2指示点A2(測定終点位置)を選択したか否かを判定する(ステップ6)。尚、指示点Aは2つのみであるとは限らない。両指示点A1、A2を選択した場合(ステップ6がYES)は、表示部60に計測範囲である計測線OLを表示する(ステップ7)。両指示点A1、A2を選択していない場合(ステップ6がNO)は、ステップ1に戻る。
【0032】
デジタル撮影による画像は、画素毎に輝度値と色度値等を取得している。輝度値等を利用してデプス計算部24で、デプス値を計算してデプスマップを作成する。デプスマップとは、距離画像、奥行き画像とも呼ばれ、各画素に対して表示装置10と被測定物OBまでの距離情報(奥行き情報)が対応づけられたデータである。このデプスマップに基づいて、被測定物OBまでの距離(Z方向)、被測定物OBの寸法(Z方向と直交するX方向またはY方向)、被測定物OBの境界線Sが計算できる。
【0033】
更に、計測範囲の具体的対象を決定する必要性や境界線Sの精度を上げる必要性があるか否かを判定するデプス補助処理判定する(ステップ8)。必要性があると判定した場合(ステップ8がYES)、まず、測定範囲が被測定物OB間を測っているのか、被測定物OBの寸法そのものなのかを、デプス値を基に測定物判定部25で演算して判定する(ステップ9)。次に、境界線Sの精度を向上するために境界線S近傍のデプス値をデプス計算部24で取得して平均(平滑)化しデプス補正を実行する(ステップ10)。一方、必要性がないと判定した場合(ステップ8がNO)は、ステップ9とステップ10を実行しない。
【0034】
そして、距離計算部26で被測定物OBの計測範囲の距離を演算し、結果を表示部60に表示する(ステップ11)。距離計算が終了したと判定した場合(ステップ12がYES)は、距離計測プログラムを終了し、距離計算が終了していないと判定した場合(ステップ12がNO)は、ステップ1に戻る(またはプログラムを終了させる)。なお、距離計算が終了していない、とはユーザーが被測定物OBの別の場所を計測したい場合やOBとは別の測定物を計測したい場合のことを示す。」

【図2】

【図3】


(イ) 段落0046から段落0048まで
「【0046】
次に、ステップ4?ステップ5(指示点確認処理)を具体的に示した模式図である図6について説明する。ユーザーが、第1指示点A1と第2指示点A2またはどちらかを一方を微調整や移動させたい場合の操作を示す。その際、予め指示点A1、A2を示す表示マーク(実施形態では円形状の表示)が表示されていても良く、新たな表示マークを表示しても良い。
【0047】
図6(a)は、第1指示点A1を中心とした部分拡大図が表示されていることを示している。拡大表示ボタンや指示点A近傍を押圧やタップ(又はダブルタップ)等、することにより、確認部23により拡大表示(等の別ウィンドウ)が表示される。図6(a)では、第1指示点A1を中心として元の背景と重なるようにその周辺部を拡大表示している。指示点Aを移動したい場合は、指示点Aを押したままドラッグすれば良い。図6(b)は、第1指示点A1から邪魔にならないよう、第1指示点A1から離れた位置において拡大表示している。図6(c)、(d)は、拡大表示の中心に指又はペンがくるように表示されている以外は図6(a)、(b)と同様である。
【0048】
図6(e)、(f)は、立体的拡大表示を示している。指示点Aは、被測定物OBの境界線S上にあるが、操作する指又はペンが境界線S上にあるか否かを確認する必要がある場合、被測定物OBを回転(図では水平方向に右回転する例)、または拡大表示させると位置を確認しやすい。回転と拡大表示はどちらか一方でも良いし両方を組み合わせてもよい。図6(e)は、本来計測対象としたい第1指示点A1と指またはペンの押圧点Pが一致していることを示し、図6(f)は、押圧点Pが本来計測対象としたい第1指示点A1から離れた奥の壁、もしくは第1指示点A1と奥の壁の間の点を指しているため、意図していない指示がされていることを示している。」

【図6】


上記(ア)及び(イ)の記載によれば、引用出願1の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「制御部20と、撮影部30と、記憶部40と、入力部50と、表示部60と、距離測定部70とからなる、例えば、スマートフォン等の携帯電話、タブレット、カメラ付き携帯端末、デジタルカメラ、距離測定器、等の表示装置10において、例えば、家具配置に使用する部屋の間取り、空間サイズや家具寸法、ガーデニング用の庭面積、物置寸法や肥料散布面積、駐車場やガレージの寸法や自動車サイズ、釣った魚のサイズ、等を測定するための処理を、CPUに実行させるための制御プログラムであって、
前記処理は、
表示部60に表示された被測定物OBの画像を基に、ユーザーの希望する計測範囲の起点となる第1指示点A1を選択、決定するために、指又はペン等で表示部60上を押圧(または接触、タップ、等)するステップ1と、
押圧点Pが被測定物OBを測定するために正しい位置にない場合に、選択補正処理を行う選択補助部22で選択補助処理を実行するステップ3と、
ユーザーが、指示点Aを移動(微調整を含む)させる必要があると判定した場合に、確認部23で指示点Aの移動を容易にするための確認表示(拡大表示、等)、および微調整を実行するステップ5と、
被測定物OBの測りたい位置を示す2つの点である第1指示点A1(測定開始点位置)と第2指示点A2(測定終点位置)を選択したか否かを判定するステップ6と、
両指示点A1、A2を選択した場合(ステップ6がYES)に、表示部60に計測範囲である計測線OLを表示するステップ7と、
距離計算部26で被測定物OBの計測範囲の距離を演算し、結果を表示部60に表示するステップ11と、
を含み、
ステップ5においては、ユーザーが、第1指示点A1と第2指示点A2またはどちらかを一方を微調整や移動させたい場合に、指示点A近傍を押圧やタップ(又はダブルタップ)等、することにより、指示点を中心として元の背景と重なるようにその周辺部の拡大表示(等の別ウィンドウ)が表示され、指示点Aを移動したい場合は、指示点Aを押したままドラッグすることができる、
制御プログラム。」

4 引用発明2に関する対比・判断
(1) 対比
本件発明と引用発明2とを対比すると、以下のとおりである。

(ア) 引用発明2における「CPU(中央演算処理部)4」が、本件発明における「コンピュータ」に相当する。
引用発明2の「撮影時処理及び再生時処理を含」む「処理」は、「CPU(中央演算処理部)4」によって行われるものであり、「プログラム」として規定されていることが明らかであるから、これは、本件発明の「画像測定用プログラム」に相当するといえる。

(イ) 引用発明2における「液晶モニタ7に表示される被写体21」が、本件発明における「試料の画像」に相当する。

(ウ) 引用発明2における「再生時処理」は、「十字キーに対する操作によって、液晶モニタ7に再生表示される撮影画像の任意の2点の位置が指定済みになっているか否かを判別するステップ(S15)」を含んでおり、また、「被写体21の指定された2点間のサイズLABの算出は、液晶モニタ7に表示される被写体21を拡大表示させてから行うことができ、この拡大機能により被写体21Bの撮影画像が拡大された状態では、撮影画像を拡大しない場合に比べて、十字キーにより任意の2点A、Bを細かく指定することができると共に、2点間サイズ算出手段により算出される表示サイズの精度を向上させることが可能にな」るとされ、更に、「液晶モニタ7において再生表示される撮影画像の任意の2点の指定は、十字キーに対する操作によって行われるのに限られず、液晶モニタ7の表面に設けられたタッチパネルに対する操作入力によって行われる構成としてもよい」とされている。すなわち、「被写体21の指定された2点間のサイズLABの算出は、液晶モニタ7に表示される被写体21を拡大表示させてから行う」ようにし、かつ、「液晶モニタ7において再生表示される撮影画像の任意の2点の指定」が「液晶モニタ7の表面に設けられたタッチパネルに対する操作入力によって行われる」ようにした場合の「S15」では、「液晶モニタ7に表示される被写体21を拡大表示」し、「タッチパネルに対する操作入力によって」、「液晶モニタ7に再生表示される撮影画像の任意の2点の位置が指定」されることになる。
このようにした場合の「S15」における、「液晶モニタ7に表示される被写体21を拡大表示」するというステップと、本件発明における「試料の画像が表示されているタッチパネルに対する第1の操作によって、前記タッチパネルに前記試料の拡大画像を表示するステップ」とは、「試料の画像が表示されているタッチパネルに前記試料の拡大画像を表示するステップ」であるという点で共通する。

(エ) 引用発明2における「再生時処理」は、「S15の判別が“YES”になると、S15で指定された2点間の撮影時の被写体21のサイズ(距離)を算出するステップ(S16)」を含んでおり、このステップにおける「指定された2点間の撮影時の被写体21のサイズ(距離)」の「算出」が、本件発明における「画像測定」に相当し、また、「指定された2点」のそれぞれが、本件発明における「測定点」に相当する。
そして、上記(ウ)で述べたように、引用発明2において、「被写体21の指定された2点間のサイズLABの算出は、液晶モニタ7に表示される被写体21を拡大表示させてから行う」ようにし、かつ、「液晶モニタ7において再生表示される撮影画像の任意の2点の指定」が「液晶モニタ7の表面に設けられたタッチパネルに対する操作入力によって行われる」ようにした場合の「S15」では、「液晶モニタ7に表示される被写体21を拡大表示」し、「タッチパネルに対する操作入力によって」、「液晶モニタ7に再生表示される撮影画像の任意の2点の位置が指定」されることになるところ、このようにした場合の、「タッチパネルに対する操作入力によって」、「液晶モニタ7に再生表示される撮影画像の任意の2点の位置が指定」されるというステップが、本件発明における「前記拡大画像が表示されている前記タッチパネルに対する第2の操作によって、前記拡大画像に画像測定のための測定点を設定するステップ」に相当するといえる。

(オ) 引用発明2における「再生時処理」は、「S15の判別が“YES”になると、S15で指定された2点間の撮影時の被写体21のサイズ(距離)を算出するステップ(S16)」を含んでおり、このステップが、本件発明における「前記測定点を用いて前記画像測定を行うステップ」に相当する。

(2) 一致点及び相違点
上記(1)の対比の結果をまとめると、本件発明と引用発明2とは、

「 試料の画像が表示されているタッチパネルに前記試料の拡大画像を表示するステップと、
前記拡大画像が表示されている前記タッチパネルに対する第2の操作によって、前記拡大画像に画像測定のための測定点を設定するステップと、
前記測定点を用いて前記画像測定を行うステップと、
をコンピュータに実行させる画像測定用プログラム。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
「拡大画像」の表示が、本件発明では、「タッチパネルに対する第1の操作によって」行われるのに対して、引用発明2では、そのように特定されていない点。

(3) 相違点についての判断
上記3(2)で述べたように、引用文献3には、「指により座標入力が行われるタッチパネル画面において、指により座標入力が行われる場合、その指の大きさの分の誤差が生じるという課題に対応するため、左上入力待ち状態において指で入力された座標を左上の座標として保存し、右下入力待ち状態において指で入力された座標を右下の座標として保存し、倍率入力待ち状態において入力された倍率を保存し、保存された各座標を左上及び右下とする矩形画面で規定されるビットマップを保存された倍率で拡大して拡大画面として表示して座標入力待ち状態とし、この状態において、拡大画面の領域内における任意の座標を指で入力するようにする」という技術事項が記載されている。
そして、引用発明2と上記技術事項とは、タッチパネル入力装置という共通の技術分野に属するものであり、また、引用発明2が「任意の2点A、Bを細かく指定すること」を必要とするものであることに鑑みれば、引用発明2と上記技術事項とは、タッチパネル画面において指により座標入力を行う場合に、その指の大きさの分の誤差が生じることを回避するという、共通の課題を有するものともいえる。
したがって、引用発明2において、「液晶モニタ7に表示される被写体21を拡大表示」する際に、共通の技術分野に属し、かつ共通の課題を有する引用文献3に記載された上記技術事項を採用し、「左上入力待ち状態において指で入力された座標を左上の座標として保存し、右下入力待ち状態において指で入力された座標を右下の座標として保存し、倍率入力待ち状態において入力された倍率を保存」するという、タッチパネルに対する操作を行うようにして、上記相違点に係る本件発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことということができる。

5 引用発明1に関する対比・判断
(1) 対比
本件発明と引用発明1とを対比すると、以下のとおりである。

(ア) 引用発明1における「CPU」が、本件発明における「コンピュータ」に相当し、引用発明1の「制御部20と、撮影部30と、記憶部40と、入力部50と、表示部60と、距離測定部70とからなる、例えば、スマートフォン等の携帯電話、タブレット、カメラ付き携帯端末、デジタルカメラ、距離測定器、等の表示装置10において、例えば、家具配置に使用する部屋の間取り、空間サイズや家具寸法、ガーデニング用の庭面積、物置寸法や肥料散布面積、駐車場やガレージの寸法や自動車サイズ、釣った魚のサイズ、等を測定するための処理を、CPUに実行させるための制御プログラム」が、本件発明の「画像測定用プログラム」に相当する。

(イ) 引用発明1における「表示部60に表示された被測定物OBの画像」が、本件発明における「試料の画像」に相当する。

(ウ) 引用発明1における、「ユーザーが、指示点Aを移動(微調整を含む)させる必要があると判定した場合に、確認部23で指示点Aの移動を容易にするための確認表示(拡大表示、等)、および微調整を実行するステップ5」において「ユーザーが、第1指示点A1と第2指示点A2またはどちらかを一方を微調整や移動させたい場合に、指示点A近傍を押圧やタップ(又はダブルタップ)等、する」という操作が、本件発明における「試料の画像が表示されているタッチパネルに対する第1の操作」に相当し、引用発明1における、この操作により「指示点を中心として元の背景と重なるようにその周辺部の拡大表示(等の別ウィンドウ)が表示され」るというステップが、本件発明における「試料の画像が表示されているタッチパネルに対する第1の操作によって、前記タッチパネルに前記試料の拡大画像を表示するステップ」に相当する。

(エ) 引用発明1における、「ユーザーが、指示点Aを移動(微調整を含む)させる必要があると判定した場合に、確認部23で指示点Aの移動を容易にするための確認表示(拡大表示、等)、および微調整を実行するステップ5」で行われる「指示点A」の「微調整」が、本件発明における「画像測定のための測定点」の「設定」に相当する。
また、引用発明1における、この「ステップ5」において、「指示点Aを移動したい場合は、指示点Aを押したままドラッグする」という操作が、本件発明における「前記拡大画像が表示されている前記タッチパネルに対する第2の操作」に相当し、引用発明1における、この操作により「指示点A」を「微調整」するというステップが、本件発明における「前記拡大画像が表示されている前記タッチパネルに対する第2の操作によって、前記拡大画像に画像測定のための測定点を設定するステップ」に相当する。

(オ) 引用発明1における、「両指示点A1、A2を選択した場合(ステップ6がYES)に、表示部60に計測範囲である計測線OLを表示するステップ7」と「距離計算部26で被測定物OBの計測範囲の距離を演算し、結果を表示部60に表示するステップ11」とを合わせたステップが、本件発明における「前記測定点を用いて前記画像測定を行うステップ」に相当する。

(2) 一致点及び相違点
上記(1)の対比の結果をまとめると、本件発明と引用発明1とは、

「 試料の画像が表示されているタッチパネルに対する第1の操作によって、前記タッチパネルに前記試料の拡大画像を表示するステップと、
前記拡大画像が表示されている前記タッチパネルに対する第2の操作によって、前記拡大画像に画像測定のための測定点を設定するステップと、
前記測定点を用いて前記画像測定を行うステップと、
をコンピュータに実行させる画像測定用プログラム。」

である点で一致し、両者の間に相違点はない。

6 むすび
本件発明は、上記4のとおり、また、原査定の理由2のとおり、引用文献2に記載された引用発明2及び引用文献3に記載された技術事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本件発明は、上記5のとおり、また、原査定の理由1のとおり、引用出願1の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された引用発明1と同一であり、かつ、本件出願に係る発明者が引用出願1に係る発明者と同一であるとも、また、本件出願の出願時に、その出願人が引用出願1の出願人と同一であるとも認められないから、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-08-01 
結審通知日 2019-08-06 
審決日 2019-08-19 
出願番号 特願2017-45072(P2017-45072)
審決分類 P 1 8・ 161- WZ (G01B)
P 1 8・ 575- WZ (G01B)
P 1 8・ 121- WZ (G01B)
P 1 8・ 572- WZ (G01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河内 悠  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 濱野 隆
櫻井 健太
発明の名称 画像測定用プログラム、画像測定機、及び画像測定方法  
代理人 井上 義雄  
代理人 特許業務法人井上国際特許商標事務所  
代理人 伊藤 隆治  
代理人 井上 淳子  
代理人 相原 健一  

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