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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H02M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02M
管理番号 1355617
審判番号 不服2018-2359  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-20 
確定日 2019-10-04 
事件の表示 特願2016-559498「共振整流装置、共振整流制御方法、装置、プログラム及び記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成28年5月26日国際公開、WO2016/078515、平成29年1月12日国内公表、特表2017-501675〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)11月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年11月21日、中華人民共和国(CN))を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年 1月 5日 :翻訳文、手続補正書の提出
平成29年 2月14日付け:拒絶理由通知書
同 年 5月15日 :意見書の提出
同 年10月17日付け:拒絶査定
平成30年 2月20日 :審判請求書、手続補正書の提出
同 年 6月 8日 :上申書の提出


第2 平成30年2月20日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年2月20日にされた手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正について
審判請求と同時にした平成30年2月20日の手続補正は、以下の内容である。
(補正の内容)
特許請求の範囲の請求項1に対して、補正前の「前記二次出力モジュールは、第三の電界効果トランジスタのソースが前記変圧器の二次コイルの一方端に接続され、第四の電界効果トランジスタのソースが前記変圧器の二次コイルの他方端に接続され、前記第三の電界効果トランジスタのドレインが前記第四の電界効果トランジスタのドレインに接続されていると共に、並列に接続されている第二の容量及び第一の抵抗を介して前記二次出力モジュールの出力端に接続されている」の記載を、「前記二次出力モジュールは、第三の電界効果トランジスタのソースが前記変圧器の二次コイルの一方端に接続され、第四の電界効果トランジスタのソースが前記変圧器の二次コイルの他方端に接続され、前記第三の電界効果トランジスタのドレインが前記第四の電界効果トランジスタのドレインに接続されていると共に、第二の容量の一端と第一の抵抗の一端と接続し、前記第二の容量の他端と前記第一の抵抗の他端は前記二次出力モジュールの出力端とする」に補正する。(下線は請求人が付与したもの。)

2.補正の適否
上記1.の補正は、補正前の「二次出力モジュール」における「第三の電界効果トランジスタのドレイン」と「第四の電界効果トランジスタのドレイン」との接続点が、「並列に接続されている第二の容量及び第一の抵抗」を「介して」「二次モジュールの出力端」に接続されている、としたものを、当該補正により、「二次出力モジュール」における「第三の電界効果トランジスタのドレイン」と「第四の電界効果トランジスタのドレイン」との接続点が、「第二の容量の一端」及び「第一の抵抗の一端」に接続された上で、「第二の容量の他端」と「第一の抵抗の他端」が各々「二次出力モジュールの出力端」となることへ変更することを内容とする。
ここで、本件の請求項1に係る発明は、「共振整流装置」の発明であり、その出力端は、端子間に直流電圧を発生する2つの出力端を有することが技術的に明白であることに照らせば、補正前の二次出力モジュールの1つの出力端は、「並列に接続されている第二の容量及び第一の抵抗」の接続端であり、「第三の電界効果トランジスタのドレイン」と「第四の電界効果トランジスタのドレイン」との接続点と接続されていない側を「出力端」と選んだことを示すことが明らかである。
ところが、補正後の内容が特定する「出力端」は、「第三の電界効果トランジスタのドレイン」と「第四の電界効果トランジスタのドレイン」との接続点が、「第二の容量の一端」及び「第一の抵抗の一端」に接続された上で、「第二の容量の他端」と「第一の抵抗の他端」が各々「二次出力モジュールの出力端」となるとしており、共振整流装置の出力端の選び方が変更されている。
また、補正前の請求項1に係る発明の記載は、上述のとおり出力端への接続についてなんら不明瞭な記載とは認められず、補正の前後で接続を変更することなく限定的減縮が図られたとする関係にならないことは明らかである。
そうすると、審判請求と同時にした当該補正は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものには該当せず、また、「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものにも該当しないといえ、さらに、「請求項の削除」、「誤記の訂正」を目的とするものに該当しないことも明らかであるから、特許法第17条の2第5項第1号ないし第4号に掲げる、いずれの事項を目的とするものではない。

3.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1.本願発明
平成30年2月20日にした手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし11に係る発明は、平成28年1月5日の手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
(本願発明)
「一次入力モジュールと、二次出力モジュールと、変圧器と、を備え、
前記一次入力モジュールは、エネルギーを前記変圧器を介して前記二次出力モジュールに伝達し、
前記一次入力モジュールは、電圧源とグランドの間に直列に接続されている第一の電界効果トランジスタ及び第二の電界効果トランジスタと、第一の電界効果トランジスタのソースとドレインの間に接続されている第一の接合容量と、第二の電界効果トランジスタのソースとドレインの間に接続されている第二の接合容量と、前記変圧器の一次コイルの両端に接続されている第一のインダクタと、を有し、前記第一のインダクタの一方端が第一の容量を介して前記第一の電界効果トランジスタと第二の電界効果トランジスタの間に接続され、前記第一のインダクタの他方端がグランド間に接続されており、
前記二次出力モジュールは、第三の電界効果トランジスタのソースが前記変圧器の二次コイルの一方端に接続され、第四の電界効果トランジスタのソースが前記変圧器の二次コイルの他方端に接続され、前記第三の電界効果トランジスタのドレインが前記第四の電界効果トランジスタのドレインに接続されていると共に、並列に接続されている第二の容量及び第一の抵抗を介して前記二次出力モジュールの出力端に接続されていることを特徴とする共振整流装置。」

2.原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、理由2は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1ないし引用文献3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:中国特許出願公開第102355147号明細書
引用文献2:国際公開第2012/153799号
引用文献3:特開2010-161917号公報

3.引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、中国特許出願公開第102355147号明細書(2012年2月15日出願公開)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は当審により付加した。)

(当審仮訳:
技術分野
[0001] 本発明は通信電源及びLED照明分野に属し,特にデジタル化LLC同期整流共振コンバータの制御装置及び方法に関する。
・・・(中略)・・・
[0004] 従来のLLC同期整流共振コンバータは、共振インダクタ、共振コンデンサ及びトランスによって共振させてソフトスイッチングを実現している。)

(当審仮訳:
発明の概要
[0010] 本発明の目的は、従来技術の欠点に対し,デジタル化LLC同期整流共振コンバータの制御装置及び方法を提供し,LLC同期整流共振コンバータの二次側同期整流器のオン時間を早め,それによって、二次側同期整流器がオンになる時に電流がゼロにならないことによって生じる損失を低減させることである。
スタート及び無負荷・軽負荷時では固定周波数制御を使用し,且つ過電流保護装置を設計することで,動作領域のジッタによる出力過電流を防止する。)

(当審仮訳:
図面の簡単な説明
[0034] 図1は本発明によるLLC同期整流共振コンバータの同期整流デジタル制御装置である。
[0035] 図2はLLC同期整流デジタル制御装置の一次側及び二次側の駆動及び共振電流・電圧の波形図である。
[0036] 図3は本発明によるLLC同期整流デジタル制御装置に用いられるDSPのオンチップリソース図である。
[0037] 図4は本発明によるLLC同期整流デジタル制御装置の一次側駆動回路図である。
[0038] 図5は本発明によるLLC同期整流デジタル制御装置の二次側駆動回路図である。
)

(当審仮訳:
[0044]
発明を実施するための形態
[0045] 本発明の好ましい実施例を図面と共に以下に詳述する:
実施例1:
図1は,本発明のデジタル化LLC同期整流共振コンバータの同期整流制御装置のブロック構成図であり,主回路(100)及び対応する制御装置を含む。
制御回路は、デジタルシグナルプロセッサDSP(101)、一次側高周波駆動回路(103)、電流サンプリング検出回路(105)、電圧サンプリング検出回路(102)、二次側高周波駆動回路(104)を含む。
[0046] 上記デジタルシグナルプロセッサ(101)は、電圧サンプリング検出回路(102)によってフィードバックされる出力電圧に基づいて回路の動作領域を判断し,3極点2零点の補償を経てから、それぞれ2つのオンチップ周期レジスタ値を変更して高周波駆動信号を生成し,且つデジタルシグナルプロセッサ(101)によって前記高周波駆動回路(103)と(104)に出力し,前記高周波駆動回路(103)、(104)はそれを隔離して電力増幅してから、一次側及び二次側MOSトランジスタを駆動する。
[0047] 上記電流サンプリング検出回路(105)は二次側の出力電流を検出し,且つデジタルシグナルプロセッサ(101)に出力し,デジタルシグナルプロセッサ(101)は、該電流の大きさに基づいて重負荷又は領域切替時の過電流であるか否かを判断し,一次側高周波駆動回路(103)と二次側高周波駆動回路(104)を速やかに切断する。)

(当審仮訳:
[0055] 回路が第一動作領域で動作する時,一次側スイッチトランジスタS_(1)はオンになり,入力電圧は一次側スイッチトランジスタS_(1)、共振インダクタL_(r)及び共振コンデンサC_(r)によって共振し,エネルギーは二次側スイッチトランジスタSR_(2)から負荷端に伝達される。
一次側スイッチトランジスタS_(1)がオフになると,寄生コンデンサC_(1)は入力電圧になるまで充電され,寄生コンデンサC_(2)はゼロ電圧になるまで放電され,この時、一次側スイッチトランジスタS_(2)は寄生ボディダイオードD_(4)でクランプされ,ゼロ電圧でオンにすることを保証し,該動作領域の回路の共振周波数は
1
f_(s1)=---------------------
2π√L_(r)C_(r)
である。
[0056] 図2(a)は第一動作領域の回路の動作波形図を示す。
ここで、S_(1)、S_(2)は一次側の駆動波形であり,SR_(1)、SR_(2)は二次側の駆動波形であり,U_(Cr)、I_(L)はそれぞれ共振コンデンサの電圧の波形と一次側の共振電流の波形である。
図2(a)から分かるように、回路が軽負荷領域で動作する場合,一次側の回路がオンになる時,二次側の電流I_(SR1)、I_(SR2)は既にゼロ地点を通過している。
従って、二次側の駆動信号を早めることで,損失を低減させる必要がある。
[0057] 回路が第二動作領域で動作する時,一次側スイッチトランジスタS_(1)はオンになり,入力電圧は一次側スイッチトランジスタS_(1)、共振インダクタL_(r)及び共振コンデンサC_(r)によって共振し,エネルギーは二次側スイッチトランジスタSR_(2)から負荷端に伝達される。
この時、回路のスイッチング周波数は共振周波数を下回り,励磁電流が共振電流と等しくなるまで回路が共振する時,二次側同期整流器をオフにして,電流が同期整流器に逆流することでシステムがダウンすることを防止する必要がある。
この時、励磁インダクタL_(m)は出力電圧でクランプされないため,共振インダクタ(L_(r))と共振コンデンサC_(r)及び励磁インダクタL_(m)の三者は共に共振し,回路の共振周波数は



1
f_(s2)=-----------------------------
2π√(L_(m)+L_(r))C_(r)
である。


(イ)上記記載及び図示から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a [0004]の記載事項及び図1に図示された主回路(100)の図示から、LLC同期整流共振コンバータの主回路(100)は、一次側に共振インダクタとしてL_(r)と、共振コンデンサとしてC_(x)と、トランスの一次巻線としてL_(m)とを有すること。
b [0046]の記載事項及び図1の主回路(100)の図示から、図1の左側が一次側、右側が二次側であり、図1左側で直列に接続されている2個のS_(1)及びS_(2)と、図1右側の2個のSR_(1)及びSR_(2)はその図示記号及び[0046]の記載から見て、各々電界効果MOSトランジスタであること。
c 前記bで示した図1左側の一次側の回路は、電圧源U_(in)の両端に直列に接続されている2個の電界効果MOSトランジスタS_(1)及びS_(2)と、前記2個の電界効果MOSトランジスタS_(1)及びS_(2)には各々、ソースとドレインの間にコンデンサC_(1)及びC_(2)が接続され、トランスの一次巻線の一端には共振インダクタL_(r)が接続されると共に、該共振インダクタL_(r)の他方端が共振コンデンサC_(x)を介して前記電界効果MOSトランジスタS_(1)とS_(2)との間に接続されていること。
d 前記bで示した図1右側の二次側の回路は、図1の図示から見て、電界効果MOSトランジスタSR_(1)のソースがトランスの二次巻線の一方端に接続され、電界効果MOSトランジスタSR_(2)のソースがトランスの二次巻線の他方端に接続され、前記電界効果MOSトランジスタSR_(1)のドレインが前記電界効果MOSトランジスタSR_(2)のドレインに接続されていると共に、並設に接続されているコンデンサC_(out)及び抵抗(添え字なし)の一端がトランスの二次巻線の中点に接続され、他端が二次側の接地に接続され、かつ、前記電界効果MOSトランジスタSR_(1)のドレインとSR_(2)のドレインとが互いに接続されている接続点が、電流検出用抵抗R(注:添え字があるが不鮮明であり読み取れず)を介して前記二次側の接地に接続されていること。
e 図1右側のコンデンサC_(out)の表記及び[0045]-[0046]の電圧サンプリング検出回路(102)に関する記載が出力電圧とされていることから見て、デジタル化LLC同期整流共振コンバータの主回路における出力端は、並設に接続されているコンデンサC_(out)及び抵抗(添え字なし)の両端であること。
f 図1中のMOSトランジスタS_(1)のソース-ドレイン間にダイオードD_(1)とコンデンサC_(1)とが接続され、MOSトランジスタS_(2)にも同様の接続が図示されていることと、[0055]ではこれらダイオードD_(1)、コンデンサC_(1)を寄生ボディダイオード、寄生コンデンサと記載していることと、電界効果トランジスタ内部には構造上、ソース-ドレイン間にpn接合によるダイオード及び容量が形成され、寄生ダイオード、pn接合容量などと呼称する技術常識とを併せ見ると、前記電界効果MOSトランジスタS_(1)及びS_(2)の各々のソース-ドレイン間に接続されたコンデンサC_(1)及びC_(4)は、いずれも接合容量といえること。
(ウ)上記(ア)、(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「一次側回路と、二次側回路と、トランスと、を備え、
前記一次側回路は、エネルギーを前記トランスを介して前記二次側回路に伝達し、
前記一次側回路は、電圧源U_(in)の両端に直列に接続されている2個の電界効果MOSトランジスタS_(1)及びS_(2)と、前記2個の電界効果MOSトランジスタS_(1)及びS_(2)のソースとドレインの間に各々接続された接合コンデンサC_(1)及びC_(2)と、トランスの一次巻線の一端には共振インダクタL_(r)が接続されると共に、該共振インダクタL_(r)の他方端が共振コンデンサC_(x)を介して前記電界効果MOSトランジスタS_(1)とS_(2)との間に接続され、
前記二次側回路は、電界効果MOSトランジスタSR_(1)のソースがトランスの二次巻線の一方端に接続され、電界効果MOSトランジスタSR_(2)のソースがトランスの二次巻線の他方端に接続され、前記電界効果MOSトランジスタSR_(1)のドレインが前記電界効果MOSトランジスタSR_(2)のドレインに接続されていると共に、並列に接続されているコンデンサC_(out)及び抵抗の一端がトランスの二次巻線の中点に接続され、他端が二次側の接地に接続され、かつ、前記電界効果MOSトランジスタSR_(1)のドレインとSR_(2)のドレインとが互いに接続されている接続点が、電流検出用抵抗Rを介して前記二次側の接地に接続され、
前記並設に接続されているコンデンサC_(out)及び抵抗の両端が出力端である
LLC同期整流共振コンバータの主回路(100)。」

イ 引用文献2
(ア)同じく原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2012/153799号には、次の記載がある。
「発明を実施するための形態
[0021]
本発明の実施形態に係るスイッチング電源について、図を参照して説明する。
<第1実施形態>
図3は第1の実施形態に係るスイッチング電源装置100の回路図である。
[0022] スイッチング電源装置100は、直流電源200が接続する一組の端子からなる電源入力端子を備える。高電位側が第1電源入力端子P_(i)(+)であり、グランド電位側が第2電源入力端子P_(i)(G)である。
[0023] スイッチング電源装置100は、負荷300が接続する一組の端子からなる出力端子を備える。高電位側が第1出力端子P_(o)(+)であり、グランド電位側が第2出力端子P_(o)(G)である。
[0024] 第1電源入力端子P_(i)(+)と第2電源入力端子P_(i)(G)との間には、入力電圧を平滑する入力コンデンサC_(i)が接続されている。
[0025] 第1電源入力端子P_(i)(+)と第2電源入力端子P_(i)(G)との間には、第1スイッチ素子Q_(1)と第2スイッチ素子Q_(2)との直列回路が接続されている。この際、第1スイッチ素子Q_(1)が第1電源入力端子側P_(i)(+)となり、第2スイッチ素子Q_(2)が第2電源入力端子側P_(i)(+)となるように、接続されている。
[0026] 第1スイッチ素子Q_(1)および第2スイッチ素子Q_(2)は、FETからなるスイッチ素子であり、寄生キャパシタおよびボディーダイオードを有する。
[0027] 第1スイッチ素子Q_(1)のドレインは、第1電源入力端子P_(i)(+)に接続され、第1スイッチ素子Q_(1)のソースは第2スイッチ素子Q_(2)のドレインに接続されている。第2スイッチ素子のソースQ_(2)は第2電源入力端子P_(i)(G)に接続されている。第1スイッチ素子Q_(1)および第2スイッチ素子Q_(2)のゲートは、ハイサイドドライバ(High Side Driver)12に接続されている。
[0028] 第2スイッチ素子Q_(2)には、共振用インダクタL_(r)、コンバータトランスT_(1)の一次巻線L_(1)、共振用コンデンサC_(r)の直列回路が並列接続されている。また、一次巻線L_(1)には励磁インダクタL_(m)が並列に接続されている。これら共振用インダクタL_(r)、励磁インダクタL_(m)、共振用コンデンサC_(r)によりLLC共振コンバータの共振回路が構成される。なお、共振用インダクタL_(r)および励磁インダクタL_(m)はコンバータトランスT_(1)の漏れインダクタおよび励磁インダクタにより構成してもよいし、別途インダクタを一次巻線L_(1)に直列および並列に接続して構成してもよい。
[0029] コンバータトランスT_(1)は、上述の一次巻線L_(1)とともに、当該一次巻線L_(1)に磁界結合する第1二次巻線L_(21)と第2二次巻線L_(22)を備える。第1二次巻線L_(21)と第2二次巻線L_(22)は、一次巻線L1に対する極性が同じになるように配設され、互いに接続されている。
[0030] 第1二次巻線L_(21)と第2二次巻線L_(22)の接続点は、第1出力端子P_(o)(+)に接続されている。
[0031] 第1二次巻線L_(21)の前記接続点と反対側の端部は、第3スイッチ素子Q_(3)を介して第2出力端子P_(o)(G)に接続されている。この際、第3スイッチ素子Q_(3)のドレインは、第1二次巻線L_(21)に接続され、ソースは第2出力端子P_(o)(G)に接続されている。第3スイッチ素子Q_(3)のゲートは、パルストランスフォーマ(Pulse Transformer)14に接続されている。このパルストランスフォーマ14が第2絶縁型信号伝達手段に相当する。
[0032] 第2二次巻線L_(22)の前記接続点と反対側の端部は、第4スイッチ素子Q_(4)を介して第2出力端子P_(o)(G)に接続されている。この際、第4スイッチ素子Q_(4)のドレインは、第2二次巻線L_(22)に接続され、ソースは第2出力端子P_(o)(G)に接続されている。第4スイッチ素子Q_(4)のゲートは、パルストランスフォーマ14に接続されている。
[0033] 第3スイッチ素子Q_(3)および第4スイッチ素子Q_(4)は、FETからなるスイッチ素子であり、寄生キャパシタおよびボディーダイオードを有する。
[0034] 第1出力端子P_(o)(+)と第2出力端子P_(o)(G)の間には、平滑用の出力コンデンサC_(o)が接続されている。」
また、上記記載の関連して次の図が図示されている。

(イ)上記記載及び図3の図示から、引用文献2には、次の技術が記載されていると認められる。
[1]「一次側のLLC共振回路は、第2スイッチ素子Q_(2)に、共振用インダクタL_(r)、コンバータトランスT_(1)の一次巻線L_(1)、共振用コンデンサC_(r)の直列回路が並列接続され、かつ、一次巻線L_(1)には励磁インダクタL_(m)が並列に接続されてLLC共振コンバータの共振回路が構成されること。共振用インダクタL_(r)および励磁インダクタL_(m)はインダクタを一次巻線L_(1)に直列および並列に接続して構成してもよいこと。」
[2]「コンバータトランスT_(1)の二次側に、ドレイン同士が接続された2個のFETからなる同期整流回路を備えたスイッチング電源装置100であって、前記2個のFETのソースは、各々前記コンバータトランスT_(1)の第1二次巻線L_(21)及び第2二次巻線L_(22)に接続され、前記2個のFETのドレイン同士を接続したラインを負の出力端とし、前記コンバータトランスT_(1)の前記第1二次巻線L_(21)と前記第2二次巻線L_(22)とが接続されたラインを正の出力端とし、前記正負の出力端の間には出力コンデンサC_(o)が接続され、前記同期整流回路をなしていること。」

4.対比・判断
ア 本願発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「電圧源U_(in)の両端に直列に接続されている2個の電界効果MOSトランジスタS_(1)及びS_(2)」、「前記2個の電界効果MOSトランジスタS_(1)及びS_(2)のソースとドレインの間に各々接続された接合コンデンサC_(1)及びC_(2)」は、各々、本願発明の「電圧源とグランドの間に直列に接続されている第一の電界効果トランジスタ及び第二の電界効果トランジスタ」、「第一の電界効果トランジスタのソースとドレインの間に接続されている第一の接合容量」及び「第二の電界効果トランジスタのソースとドレインの間に接続されている第二の接合容量」に相当する。
(イ)引用発明の「電界効果MOSトランジスタSR_(1)のソースがトランスの二次巻線の一方端に接続」されていること、「電界効果MOSトランジスタSR_(2)のソースがトランスの二次巻線の他方端に接続」されていること、「前記電界効果MOSトランジスタSR_(1)のドレインが前記電界効果MOSトランジスタSR_(2)のドレインに接続」されていること、「並列に接続されているコンデンサC_(out)及び抵抗」は、各々、本願発明の「第三の電界効果トランジスタのソースが前記変圧器の二次コイルの一方端に接続」されていること、「第四の電界効果トランジスタのソースが前記変圧器の二次コイルの他方端に接続」されていること、「前記第三の電界効果トランジスタのドレインが前記第四の電界効果トランジスタのドレインに接続」されていること、「並列に接続されている第二の容量及び第一の抵抗」に相当する。
(ウ)引用発明の「トランス」は、本願発明の「変圧器」に相当する。
(エ)上記(ア)?(ウ)より、本願発明の「一次入力モジュールと、二次出力モジュールと、変圧器と、を備え」た「共振整流装置」と、引用発明の「一次側回路と、二次側回路と、トランスと、を備え」た「LLC同期整流共振コンバータの主回路(100)」とは、「変圧器」ないし「トランス」を介して「エネルギー」を「一次」側から「二次」側に「伝達」する点で共通するといえる。

イ 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「一次入力回路と、二次出力回路と、変圧器と、を備え、
前記一次入力回路は、エネルギーを前記変圧器を介して前記二次出力に伝達し、
前記一次入力回路は、電圧源とグランドの間に直列に接続されている第一の電界効果トランジスタ及び第二の電界効果トランジスタと、第一の電界効果トランジスタのソースとドレインの間に接続されている第一の接合容量と、第二の電界効果トランジスタのソースとドレインの間に接続されている第二の接合容量とを有し、
前記二次出力回路は、第三の電界効果トランジスタのソースが前記変圧器の二次コイルの一方端に接続され、第四の電界効果トランジスタのソースが前記変圧器の二次コイルの他方端に接続され、前記第三の電界効果トランジスタのドレインが前記第四の電界効果トランジスタのドレインに接続され、並列に接続されている第二の容量及び第一の抵抗を備える
共振整流装置。」

【相違点1】
本願発明は、「一次入力」及び「二次出力」に対して、共に「モジュール」であると特定しているのに対し、引用発明の対応する「一次側回路」及び「二次側回路」は、モジュールであるとの特定がない点。
【相違点2】
「一次入力モジュール」に関し、本願発明は「前記変圧器の一次コイルの両端に接続されている第一のインダクタ」を有し、かつ、「前記第一のインダクタの一方端が第一の容量を介して前記第一の電界効果トランジスタと第二の電界効果トランジスタの間に接続され、前記第一のインダクタの他方端がグランド間に接続され」るとの発明特定事項を有するのに対して、引用発明の「一次側回路」は「トランスの一次巻線の一端には共振インダクタL_(r)が接続されると共に、該共振インダクタL_(r)の他方端が共振コンデンサC_(x)を介して前記電界効果MOSトランジスタS_(1)とS_(2)との間に接続され」としている点。
【相違点3】
「二次出力回路」の「出力端」への接続に関し、本願発明は、「前記第三の電界効果トランジスタのドレインが前記第四の電界効果トランジスタのドレインに接続されていると共に、並列に接続されている第二の容量及び第一の抵抗を介して前記二次出力モジュールの出力端に接続されている」としているのに対し、引用発明の「二次側回路」の「出力端」への接続は、「前記電界効果MOSトランジスタSR_(1)のドレインとSR_(2)のドレインとが互いに接続されている接続点が、電流検出用抵抗Rを介して前記二次側の接地に接続され、前記並設に接続されているコンデンサC_(out)及び抵抗の両端が出力端である」としている点。

以下、上記相違点1ないし3について検討する。
ア 相違点1について
上記相違点1に係るモジュールとした事項は、一般的には機能的にまとまった部分であることを意味する。
そして、引用発明の一次側回路も、二次側回路も、機能的にまとまった部分であることは疑う余地のないことであるから、引用文献1に接した当業者であれば、一次側回路及び二次側回路を、技術常識に鑑み各々モジュールと呼称することになんら困難性はない。
よって、上記相違点1は、当業者にとり容易想到である。
イ 相違点2について
上記相違点2に係る相違は、要するに一次側のLLC共振回路として、本願発明では、「第一の容量」(添付図面のC_(r))と、「第一のインダクタ」(同L_(m))と「変圧器の一次コイル」との並列接続体とが、直列接続されて共振回路を構成しているのに対して、引用発明のLLC共振回路は、「共振コンデンサC_(x)」と「共振インダクタL_(r)」と「トランスの一次巻線」との直列接続体で共振回路を構成している点で互いに相違することを内容とするものである。
ところが、本願発明で採用された共振回路の構成は、上記引用文献2に記載された[1]の共振用インダクタL_(r)を一次巻線L_(1)に並列に接続して構成したものと全く同じ構成であり、本件出願の優先日前に当業者に知られた公知のLLC共振回路の構成そのものであるため、当業者が引用発明のLLC共振回路部分に対して、当該引用文献2で公知の、コンデンサと、変圧器の一次コイルの両端に並列にインダクタを接続した並列接続体とを直列接続して構成した共振回路を採用する程度のことは、容易になし得たと認められる。
ウ 相違点3について
該相違点3に係る回路の接続は、要するに本願発明では図1の二次出力モジュール12に図示したとおりの接続であり、引用発明の回路接続は、同じく図1の右側に図示したとおりの接続であるから、該相違点3とした相違は、2個の電界効果トランジスタの各々のドレイン同士を接続した箇所を二次出力の接地側にしたものが引用発明であり、該ドレイン同士を接続した箇所を二次出力の正の出力端としたものが本願発明である点が実質的な相違となると認められる。
係る相違は、要するに変圧器の一次・二次の巻線の極性や、一次側の回路の組み方や、二次側の接地の取り方などにより、二次側の出力電圧の極性が決定されるとした、回路設計上の相違と認められる。
そして、現に上記「イ 引用文献2」の[2]に示したとおり、本願発明と同様の二次側回路接続で二次出力を設計したものが公知である以上、これら引用発明及び引用文献2に接した当業者であれば、引用発明の二次側回路を、引用文献2に記載の如き回路設計の仕様に変更する程度のことは、容易に想到し得たと認められる。
エ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

オ したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないものである。

カ なお、請求人が平成30年6月8日に提出した上申書の上申内容は、審判請求時にした手続補正の補正事項が、特許法第17条の2第3項の規定に違反するから却下すべきとした前置報告書に対して、本件の願書に添付した図面の回路図の符号の認定誤りである旨を主張し、図1及び2中に図示された下矢印の符号は、接地ではなく、出力端であるというものである。
しかしながら、かかる主張は図1及び2の各々右側に+及び-の記号を伴いつつvの記号が示されているところから見て、図1及び2の回路の出力端は、容量C_(o)及び抵抗R_(L)の両端の2箇所であることが明らかであることに照らせば、図中の▽3箇所は、3箇所が各々二次側のアースに接続されていることを示すと理解するのが当然である。また、一次側のアースと二次側のアースとが別個の物で絶縁関係にある場合、互いに違う記号を用いることは通常よく見受けられる技術常識であるので、これを“接地の意味ではなく”と主張するのは道理に反する。
加えて、審判請求と同時にした手続補正の内容は、第二の容量(C_(o))の他端と第一の抵抗(R_(L))の他端とを出力端とする、としたものであるから、一方が+の高電位で、他方が-のアース電位であることを意味することとなり、図1及び2の+及び-の図示事実に反することが明らかでもある。
よって、請求人の上申書による主張は、明らかに技術常識に反するものであって採用されるものではない。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-05-13 
結審通知日 2019-05-14 
審決日 2019-05-27 
出願番号 特願2016-559498(P2016-559498)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02M)
P 1 8・ 57- Z (H02M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 栗栖 正和  
特許庁審判長 井上 信一
特許庁審判官 須原 宏光
西村 泰英
発明の名称 共振整流装置、共振整流制御方法、装置、プログラム及び記録媒体  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  

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