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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1355637
審判番号 不服2017-17750  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-30 
確定日 2019-10-01 
事件の表示 特願2016-528331「アップリンク制御情報の送信方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月29日国際公開、WO2015/010602、平成28年 9月23日国内公表、特表2016-529799〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2014年(平成26年)7月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2013年7月23日 (CN)中華人民共和国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年 1月20日 手続補正書の提出
平成29年 1月13日付け 拒絶理由通知書
平成29年 4月21日 意見書、手続補正書の提出
平成29年 7月24日付け 拒絶査定
平成29年11月30日 拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提 出
平成30年10月30日付け 拒絶理由通知書(当該通知書で通知した拒 絶理由を、以下「当審拒絶理由」という。 )
平成31年 3月 5日 意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明

本願の請求項に係る発明は、平成31年3月5日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものであると認める。

「アップリンク制御情報の送信方法であって、
端末が、第1キャリアにおいて、第1基地局によりスケジューリングされるデータを受信し、かつ、第2キャリアにおいて、第2基地局によりスケジューリングされるデータを受信するステップと、
前記端末が、前記第1キャリアのために第1アップリンク制御情報を生成し、前記端末が、前記第2キャリアのために第2アップリンク制御情報を生成するステップと、
前記端末が、予め設定されたタイミングアドバンス(Timing Advance、TA)値及び予めプロトコルにより定義された又は予め設定された当該端末のアップリンク送信時間を得るために用いられる参照キャリアに基づいて、1つのアップリンクキャリアにおいて前記端末が生成したアップリンク制御情報を送信するステップと、
を含み、
前記アップリンク制御情報は、前記第1アップリンク制御情報であるか、前記第2アップリンク制御情報であり、
前記端末が、前記TA値及び前記参照キャリアに基づいて、前記1つのアップリンクキャリアにおいて前記アップリンク制御情報を送信するステップは、
前記端末が、予め設定されたタイミングアドバンス(TA)値、及び、当該端末のアップリンク送信時間を得るために用いられる予めプロトコルにより定義された又は予め設定された参照キャリアに基づいて、アップリンク送信時間を確定するステップと、
前記端末が、前記1つのアップリンクキャリアにおいて、前記アップリンク送信時間に基づいて、前記アップリンク制御情報を送信するステップとを含み、
前記端末は以下の方法により前記TA値及び/又は前記参照キャリアを取得し、すなわち、
前記端末は前記第1基地局が送信した設定情報を受信し、前記TA値及び前記参照キャリアを取得し、又は、
前記端末は前記第2基地局が送信した設定情報を受信し、前記TA値及び前記参照キャリアを取得し、又は
前記端末は前記第1基地局及び前記第2基地局以外の1つの予めプロトコルにより定義された基地局が送信した設定情報を受信し、前記TA値及び前記参照キャリアを取得し、又は、
前記端末は前記端末のプライマリーキャリアをスケジューリングする基地局が送信した設定情報を受信し、前記TA値及び前記参照キャリアを取得し、又は、
前記端末は前記1つのアップリンクキャリアをスケジューリングする基地局が送信した設定情報を受信し、前記TA値及び前記参照キャリアを取得し、又は、
前記端末は前記1つのアップリンクキャリアにおける物理アップリンク共有チャネル(PUSCH)伝送及びサウンディング参照符号(SRS)伝送及びサウンディング参照符号(SRS)伝送をスケジューリングする基地局が送信した設定情報を受信し、前記TA値及び前記参照キャリアを取得し、又は、
前記端末は前記1つのアップリンクキャリアにおける現行アップリンクサブフレーム、又は、現行サブフレームの隣接の1つのアップリンクサブフレームにおける物理アップリンク共有チャネル(PUSCH)伝送及びサウンディング参照符号(SRS)伝送及び/又はサウンディング参照符号(SRS)伝送をスケジューリングする基地局が送信した設定情報を受信し、前記TA値及び前記参照キャリアを取得し、前記現行サブフレームは、アップリンク制御情報の送信に用いられる、
ことを特徴とするアップリンク制御情報の送信方法。」

第3 拒絶の理由

当審拒絶理由の概要は、
「1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
というものであり、平成31年3月5日にされた手続補正前の請求項2に係る発明(本願発明に対応)に対して、下記の5、6が引用されている。

5.Intel Corporation、Challenges in the uplink to support dual connectivity[online], 3GPP TSG RAN WG2 Meeting #82, 2013年5月11日アップロード, R2-131986 <URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_82/docs/>
6.特表2013-524598号公報

第4 引用例等に記載された事項及び引用発明等

1.引用発明
当審拒絶理由で引用されたIntel Corporation、Challenges in the uplink to support dual connectivity(当審仮訳:デュアルコネクティビティをサポートするためのアップリンクにおける課題)[online], 3GPP TSG RAN WG2 Meeting #82, 2013年5月11日アップロード, R2-131986 <URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_82/docs/> (以下、「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

(1)「1 Introduction
Dual connectivity is one of the potential solutions to address the challenges for small cell deployments. Uplink capability is one of the most important factors for dual connectivity supporting from UE's perspective. One straightforward option is that UE is always required to have a UL Carrier Aggregation (CA) capability for dual connectivity supporting. However UL CA generally incurs high-complexity UE implementation and hence no testing requirements are specified by RAN4 yet for UL CA supporting even in Rel-11. Two Tx RF chain dramatically increases UE complexity and cost as well. Moreover, Intermodulation (IM) may be generated whenever simultaneous multiple CCs transmission is present. De-rating the PA is therefore usually a preferable strategy (as opposed to increasing the power headroom) to enable UEs to meet the OOB emission requirements without a loss of efficiency, but at the expense of a loss in coverage due to the reduced transmission power in the wanted channel.

From above discussions, it is necessary to discuss how to support dual connectivity for single UL CC capable of UEs. There are mainly two options for dual-connectivity supporting with single UL CC capability:

- Option 1: UE transmits to macro and small cell in TDM fashion [1].

- Option 2: UE transmits to one cell only, which implies that UL feedback (e.g. HARQ-ACK/CSI, RLC status) needs to be forwarded from one cell to another.

In this contribution, we analyze the challenges of each option and compare the two options.」(1ページ)

(当審仮訳:
1 はじめに
デュアルコネクティビティは、スモールセル配置に対する課題に取り組むための潜在的な解決策の1つである。UEの観点から、アップリンクの能力は、デュアルコネクティビティをサポートするための最も重要な要素の1つである。1つの直接的な選択肢は、デュアルコネクティビティをサポートするために、UEが常にULキャリアアグリゲーション(CA)機能を有することを要求されることである。しかしながら、UL CAは、一般に複雑性の高いUE実装を招くので、Rel-11でさえも、UL CAのサポートについて、テスト要件がRAN4によって、未だ指定されていない。2つのTx RFチェーンは、UEの複雑さとコストを劇的に増加させる。さらに、同時に複数のCC送信が存在するときはいつでもインターモジュレーション(IM)が発生し得る。そのため、PAの定格を下げることは、効率を損なうことなくUEがOOBエミッション要件を満たすことができるようにするために、通常は(電力ヘッドルームを増やすのとは対照的に)望ましい戦略であるが、望ましいチャンネルにおいて、送信電力の低下によるカバレッジのロスを犠牲とする。

上記の検討から、シングルUL CC能力を有するUEのために、どのようにデュアルコネクティビティをサポートするかを議論する必要がある。シングルUL CC能力により、デュアルコネクティビティをサポートするために、主に2つのオプションがある。

- オプション1:UEはTDM方式でマクロおよびスモールセルに送信する[1]。

- オプション2:UEは1つのセルのみに送信し、これは、ULフィードバック(例えば、HARQ-ACK/CSI、RLCステータス)が1つのセルから別のセルに転送される必要があることを意味する。

本寄書では、各オプションの課題を分析し、2つのオプションを比較する。)

(2)「2.3 Option 2: UE transmits to one cell only
For one Component Carrier (CC) option, UE only transmits on one UL cell. One example is shown in Figure 3 below, where UE only transmits to macro cell. Macro cell handles UL control/data and forwards necessary PHY/MAC/RLC/PDCP information to pico cell. One issue with one Option 2 is to decide which cell is selected for the UL transmission. Two factors need to be taken into account for cell selection: UE's power consumption and latency performance. Small cell is an appropriate choice due to the reduced power, taking into account the imbalance between DL and UL; however, latency is also a key factor that is particularly important for control plane and delay sensitive services and therefore should be paid more attention for one Option 2. Hence macro cell might be the better choice to handle uplink from delay perspective.


In Option 2, both macro and small cell can transmit in any DL subframe, and UE operation in UL is similar to current CA operation. This is the most critical advantage of Option 2 compared with Option 1. However, there are some challenges of Option 2, which are discussed below.」(2-3ページ)

(当審仮訳:
2.3 オプション2:UEが1つのセルのみに送信する
1つのコンポーネントキャリア(CC)オプションの場合、UEは1つのULセル上でのみ送信する。一例が以下の図3に示されており、UEはマクロセルにのみ送信する。マクロセルはUL制御/データを取扱い、必要なPHY/MAC/RLC/PDCP情報をピコセルに転送する。1つのオプション2に関する1つの問題は、どのセルがUL送信のために選択されるかを決定することである。セルの選択のために、UEの消費電力と遅延性能という2つの要素を考慮する必要がある。DLとUL間の不均衡を考慮すると、スモールセルは電力低減のため、適切な選択である;しかしながら、遅延は、制御プレーンおよび遅延に敏感なサービスにとって、特に重要なキー要素でもあって、そのため、1つのオプション2にとって、より注意を払われるべきである。したがって、遅延の観点から、マクロセルがアップリンクを取扱うための適切な選択であろう。
(図3略)
図3:オプション2の例

オプション2では、マクロセルとスモールセルの両方が任意のDLサブフレームで送信することができ、ULにおけるUEの動作は現在のCAの動作と同様である。これは、オプション1と比較した場合のオプション2の最も重要な利点である。しかしながら、オプション2にはいくつかの課題があり、それらについて以下で説明する。)

(3)「2.3.1 DL bearer handling

Macro cell needs to forward uplink control information (HARQ-ACK and CSI) to small cell. For example, as shown in Figure 4 below, if PDSCH is scheduled from small cell, the UE transmits HARQ-ACK to macro cell on PUCCH. And then the macro cell may forward HARQ-ACK information to small cell.


」(3ページ)


(当審仮訳:
2.3.1 DLベアラの取扱い

マクロセルは、アップリンク制御情報(HARQ-ACKおよびCSI)をスモールセルに転送する必要がある。例えば、以下の図4に示されるように、PDSCHがスモールセルからスケジュールされる場合、UEはPUCCH上でマクロセルにHARQ-ACKを送信する。そして、マクロセルは、HARQ-ACK情報をスモールセルに転送することができる。
(図4略)
図4:オプション2におけるHARQ-ACK送信の例)

上記各記載及び当業者における技術常識からみて、以下のことがいえる。

ア 上記(3)の記載によれば、UEがマクロセルにHARQ-ACKを送信するといえる。したがって、引用例には、「HARQ-ACKの送信方法」が記載されているといえる。

イ 上記(2)の記載及び図3によれば、マクロセルとスモールセルの両方が任意のDLサブフレームでUEへ送信するから、UEが、マクロセルによりデータを受信し、かつ、スモールセルによりデータを受信するといえる。さらに、上記(1)の記載によれば、UEは、デュアルコネクティビティで動作しているといえ、デュアルコネクティビティでは、2つのeNBがそれぞれコンポーネントキャリアにおいて、データを送信することが技術常識であって、それらのコンポーネントキャリアを第1のコンポーネントキャリア、第2のコンポーネントキャリアと称することは、任意である。また、上記(3)の記載及び図4によれば、スモールセルについて、自身が送信するPDSCHをスケジュールするといえ、さらに、デュアルコネクティビティでは、各eNBが送信するデータについては、送信するeNB自身がスケジュールすることが技術常識である。したがって、引用例には、「UEが、第1コンポーネントキャリアにおいて、マクロセルによりスケジューリングされるデータを受信し、かつ、第2コンポーネントキャリアにおいて、スモールセルによりスケジューリングされるデータを受信するステップ」が記載されているといえる。

ウ 上記イのとおり、UEは、第1コンポーネントキャリアにおいて、マクロセルによりスケジューリングされるデータを受信し、かつ、第2コンポーネントキャリアにおいて、スモールセルによりスケジューリングされるデータを受信する。DLコンポーネントキャリア毎にHARQ-ACKが必要であることは、技術常識であって、2つのDLコンポーネントキャリアに対応するそれぞれのHARQ-ACKを、第1HARQ-ACK、第2ARQ-ACKと称することは任意である。したがって、引用例には、「UEが、第1コンポーネントキャリアのために第1HARQ-ACKを生成し、前記UEが、第2コンポーネントキャリアのために第2HARQ-ACKを生成するステップ」が記載されているといえる。

エ 上記(2)の記載及び図3によれば、UEは、マクロセルの1つのULコンポーネントキャリアでのみ送信するといえるから、UEが生成したHARQ-ACKは、当該マクロセルの1つのULコンポーネントキャリアにおいて送信されるといえる。また、上記(2)の記載によれば、ULにおけるUEの動作は現在のCAの動作と同様である。したがって、引用例には、「UEが、CAと同様の動作により、マクロセルの1つのULコンポーネントキャリアにおいて前記UEが生成したHARQ-ACKを送信するステップ」が記載されているといえる。

オ 上記ウのとおり、UEは、第1HARQ-ACK及び第2HARQ-ACKを生成する。ここで、上記(2)の記載によれば、マクロセルとスモールセルの両方が任意のDLサブフレームで送信することができることから、UEが、マクロセルの1つのULコンポーネントキャリアにおいて送信するHARQ-ACKは、マクロセルとスモールセルのDLサブフレームのタイミングに応じて、第1HARQ-ACKであるか第2HARQ-ACKであるか、その両方であることは、当業者にとって明らかである。したがって、引用例には、UEが、マクロセルの1つのULコンポーネントキャリアにおいて前記UEが生成した「HARQ-ACKは、第1HARQ-ACKであるか、第2HARQ-ACKであるか、第1HARQ-ACK及び第2HARQ-ACKである」ことが記載されているといえる。

以上を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 HARQ-ACKの送信方法であって、
UEが、第1コンポーネントキャリアにおいて、マクロセルによりスケジューリングされるデータを受信し、かつ、第2コンポーネントキャリアにおいて、スモールセルによりスケジューリングされるデータを受信するステップと、
前記UEが、前記第1コンポーネントキャリアのために第1HARQ-ACKを生成し、前記UEが、前記第2コンポーネントキャリアのために第2HARQ-ACKを生成するステップと、
前記UEが、CAと同様の動作により、マクロセルの1つのULコンポーネントキャリアにおいて前記UEが生成したHARQ-ACKを送信するステップと、
を含み、
前記HARQ-ACKは、前記第1HARQ-ACKであるか、前記第2HARQ-ACKであるか、前記第1HARQ-ACK及び前記第2HARQ-ACKである、
HARQ-ACKの送信方法。」

2.公知技術
当審拒絶理由で引用された特表2013-524598号公報(平成25年6月17日公表。以下、「公知例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

(1)「【0006】
現行のセルラシステム、例えばLTEは、複数のユーザに対するスペクトル周波数の連続割当てのみを利用しているが、それらは、これらの割当てが異なる帯域幅であってよいという点で柔軟性がある。これによって、無線周波数が効率的に用いられることが可能になり、スループット/サービス品質の必要条件が低いユーザには、必要性の高いユーザより狭いスペクトル帯域幅を割当てることができる。上記の連続スペクトルおよび離散スペクトルの結合をさらに支援するはずのこれらのタイプの現行のセルラシステムの正攻法の進化は、マルチキャリア運用を導入することである。この意味するところは、個々の割り当てられたスペクトルの「分量(チャンク)」が、3GPPリリース8標準規格に準拠するLTEシステムにおいて遭遇するはずの周波数の割当てに対応するであろうということである。その結果、「4G」移動端末は、異なるキャリア周波数で送信された(場合によっては異なる帯域幅の)複数のそのようなLTEキャリアを受信することができるであろう。図3は、そのような例示的なシステムを示す。サービングノード301が、サービングノードのセル305の中に位置するUE303にサービスを提供する。サービングノード301は、UE303によって用いられるスペクトルの1つの「チャンク」を割り当てる。第2のノード307が、UE303の位置するセル309にサービス提供し、UE303によって用いられるスペクトルのもう1つの「チャンク」を割り当てる。第3のノード311が、UE303の位置するセル313にサービス提供し、UE303によって用いられるスペクトルのさらに別のチャンクを割り当てる。これは、可能性のある多くの例示的実施形態の1つにすぎないことは重要である。例えば、サービングノードの1つ、いくつか、またはすべてが、同じ物理的位置に配置されてもよい。
【0007】
LTEシステムの能力を拡張するために提案されているものを含めて、シングルキャリアシステムを基にした多くのマルチキャリアシステムでは、マルチキャリア運用は、シングルキャリアモードにおけるキャリアのうちの1つだけによる通信を用いてセットアップされる。このキャリアは、しばしば、アンカーキャリアと呼ばれ、あるいは、プライマリコンポーネントキャリアとも呼ばれる。マルチキャリア運用で用いられるその他のキャリアは、副キャリアまたは副コンポーネントキャリアと呼ばれる。マルチキャリア運用が確立された後は、どのキャリアがプライマリコンポーネントキャリアの役割を果たすかという割当ては、変わりうる。
【0008】
セルラ通信の重要な側面の1つは、eNBとユーザ装置との間でアップリンクおよびダウンリンクの信号の同期を相互に維持することである。LTEシステムでは、信号変調は、Orthogonal Frequency Division Multiplexing(OFDM)を基にする。アップリンクにおけるユーザの信号間の直交性を維持するためには、いわゆるタイミングアドバンスコマンドがネットワークノードからユーザ装置に送信されることが必要である。個々のタイミングアドバンスコマンドは、それを受信するユーザ装置に、どの瞬間に信号をeNBに送信し始めるべきかを知らせる(例えば、これは、基準タイミングシステムからのタイミングオフセットとして表わされてもよい)。タイミングアドバンスコマンドの必要性は、多様なユーザ装置のeNBからの距離が、一般に、多様であるために生じる。eNBからユーザ装置までの距離に依存してeNBに対するユーザ装置の信号の伝搬遅延が生じるため、各ユーザ装置は一般に、自分が送信した信号がeNB受信機にそれらが到着した時点で相互に同期するようにするため、自分のデータをそれぞれ異なる時刻点で送信する必要がある。(これらの信号の同期は、eNBの受信機によるコヒーレントな高速フーリエ変換(FFT)処理を可能にするために、必要である。)
個々の端末についての適切なタイミングアドバンスは、eNBによって推定され、タイミングアドバンスコマンドがダウンリンクのシグナリングの中でユーザ装置へ通信され、次いで、ユーザ装置は、ユーザ装置のタイミングをタイミングアドバンスコマンドに従って適合させることができる。ユーザ装置とeNBとの間のアップリンクおよびダウンリンクのシングルキャリアだけをサポートする従来のタイミングアドバンス手順は、LTEシステムについての標準規格書のリリース8に明記されている。
【0009】
従来のシステム(例えば、上記のLTEリリース8)では、アップリンクのタイミングアドバンスは、単一の基準セルのタイミングに基づいて定義されており、ユーザ装置が接続されているダウンリンクのシングルキャリア上で送信される。しかし、マルチキャリアシステムにおけるユーザ装置の動作は、解決される必要のある新たな技術的課題となっている。
【0010】
ゆえに、マルチキャリアシステムにおけるタイミングアドバンス機能についての方法および装置の必要性がある。
(中略)
【0030】
第1の例示的な実施形態において、送信機と受信機とを有する通信装置を備えたユーザ装置が、少なくとも2つのダウンリンクキャリアと少なくとも1つのアップリンクキャリアとを介してユーザ装置と通信するマルチキャリアLTEシステムにおいて採用されている。この例示的な実施形態では、すべてのアップリンクキャリアに適用可能な単一のタイミングアドバンスコマンドだけをユーザ装置が受信すると仮定する。この例示的な実施形態を図4に示すが、これは、一面では、本発明に一致する実施形態に従って行われるステップ/プロセスのフロー図である。代わりに、図4は、これらの実施形態の態様を実現するための各種の例示的な手段を含むユーザ装置400のブロック図とも解釈できる。
【0031】
ユーザ装置400は、マルチコンポーネントキャリアシステムへのコネクション(接続)、例えばマルチキャリアLTEシステムへの接続(例えばeNBへの接続)またはデュアルセルHSPAシステムへの接続を確立する(ステップ401)。これは、ユーザ装置が、1つのプライマリコンポーネントダウンリンクキャリア上でサービングセルに接続され、少なくとも1つの副コンポーネントダウンリンクキャリア上で少なくとも1つのその他のセルに接続されることを意味する。
【0032】
ユーザ装置400は、リファレンス(基準)セルによって送信されたリファレンスダウンリンクキャリアのタイミングを判定する(ステップ403)。基準セルは、以下のうちのいずれであってもよいだろう。
【0033】
・プライマリダウンリンクキャリアまたはアンカーダウンリンクキャリアに関連付けられたセル
・セルのダウンリンク同期特性がどの程度信頼できるかに基づいた各リストを優先させる或るリストに基づいたプライマリキャリアまたはセカンダリキャリアに関連付けられたセル
・最初に検出されたダウンリンクパスを有するダウンリンクキャリアを送信しているセル
・アップリンクキャリアが1つしかない場合、その唯一のアップリンクキャリアに関連付けられたセルのダウンリンクキャリア
・タイミングアドバンスコマンドが受信されたダウンリンクキャリアに関連付けられたセル
・セルと、ユーザ装置(通信装置)が現在使用している接続のコネクションセットアップのために使用していた基準キャリア
ソフトハンドオーバをサポートする通信システム、例えば、Wideband Code Divisional Multiple Access(WCDMA)システムでは、基準セルは、リファレンスダウンリンクキャリア上で送信するいずれのセルであってもよく、例えば、
・特定の端末のためのサービングセルとして動作するセル
・端末のためのサービングセルとして最初に使用されたアクティブセットの中のセル
であってもよいだろう。
(「アクティブセット」とは、WCDMAシステムの説明において、ソフトハンドオーバの場合にUEがリッスン(受信)してそこからの情報を復号するようなセルのことであるということは、当分野では周知である。)
タイミングは、典型的には、基準セルからのリファレンスダウンリンクキャリア上での最初の信頼できる検出されたパスとして定義され、典型的には、受信信号を、同期信号もしくはパイロット信号(LTEシステムでは、プライマリ(主)同期信号もしくはセカンダリ(副)同期信号、または基準信号)のような既知の信号と相関させることによって判定される。)
次いで、ユーザ装置は、タイミングアドバンスコマンドをネットワークノード(例えばeNB)から受信する(ステップ405)。次いで、基準セルのリファレンスダウンリンクキャリアから確定されたダウンリンクタイミングに基づいて、かつ、タイミングアドバンスコマンドにも基づいて、送信タイミング(例えば、送信機の電力増幅器および/または、その他の無線チップにおける送信機関連部分の動作の開始/中止のタイミング)が調整され、送信されることになる情報が、タイミング判定に従って調整される(ステップ407)。
【0034】
図5は、図4に示すかまたは図4に描かれたものと同等の機能を実行するための回路部を備えた例示的なユーザ装置500のブロック図である。発明の実施形態による各種の態様を読者が理解しやすいようにするため、本発明に関連のある回路部だけを示す。当業者であれば、ユーザ装置に関連する他の周知の回路部も含まれることは、認識するであろう。
【0035】
無線周波数信号が、アンテナ501によって送受信される。この例示的な実施形態では、受信と送信との両方に共用される単一のアンテナを示している。代替実施形態では、複数のアンテナが送信および/または受信用に用いられてもよく、そして、受信機および送信機が、1つ以上のこれらのアンテナを共有してもよいし、しなくてもよい。
【0036】
データを送信するため、ユーザ装置500は、送信されることになる供給されたデジタルデータを変調する変調器503を含んでいる。変調されたデータは、デジタル-アナログ変換器(DAC)505によってアナログ形式に変換される。結果として生じるアナログ信号は、例えば電力増幅器(PA)509を含むフロントエンド送信機回路部(FE TX)507に供給される。
【0037】
変調器503およびフロントエンド送信機回路部507は、制御ユニット511によって制御される。制御ユニット511は、ユーザ装置500の各種の回路部に、図4に関して上記の記述したもののような機能を実行させる制御信号を生成する。制御ユニット511は、複数の異なる形態で実施されることができ、そのいずれも必須ではない。例えば、ハードワイヤーによる論理回路部が使用されうる。あるいは、プログラマブルプロセッサ513が、本明細書の中に記述された所望の機能を実行するための(例えば、メモリ515の中に記憶された)プログラム命令の適切なセットを使ってプログラムされてもよい。また、当業者であれば、制御ユニット511が、ハードワイヤーによる論理回路部と適切にプログラムされたプロセッサ513との混合物として実施されうることを認識するであろう。
【0038】
次に受信機側に目を向けると、アンテナ501によってピックアップされた無線周波数信号が、フロントエンド受信機(FERX)回路部517に供給される。所望の搬送波上の信号が、アナログベースバンド信号にダウンコンバートされ、次いで、アナログ・ツー・デジタルコンバータ(ADC)519によってデジタル形式にコンバート(変換)される。
【0039】
ユーザ装置400はマルチキャリアシステムの中で動作しているため、複数(1・・・N)のコンポーネントキャリアCC1・・CCNが、ADC519の出力時にデジタル形式で供給される。これらが、検出器521と同期回路部523とに提供される。
【0040】
同期回路部523は、個々のコンポーネントキャリアCC1・・CCNのタイミングを判定し、このタイミング情報を検出器521に供給し、検出器521は、それによって、各コンポーネントキャリア上で搬送されるデータを検出することが可能になる。検出は、複数の既知の方法のうちのいずれかの中で行われてもよく、従って、ここでより詳細に記述する必要はない。この検出されたデータは、検出器521の1つ以上の出力ポートで供給される。
【0041】
また、同期回路部523は、コンポーネントキャリアCC1・・CCNのどれがリファレンスダウンリンクキャリアであるのか知ることを可能にする、ダウンリンク基準キャリアについての情報を受信する。基準セル/キャリアの判定は、高位レイヤ復号ユニット(図示せず)によって行われ、高位レイヤ処理回路部へ転送された検出されたデータに基づいている。これによって、同期回路部523がリファレンスダウンリンクキャリアについてのタイミング525を制御ユニット511に供給することが可能になる。さらに、検出器521は、タイミングアドバンスコマンドをeNBダウンリンクシグナリングから抽出して、タイミングアドバンスコマンド527を制御ユニット511に供給する回路部を含んでいる。次いで制御ユニット511は、リファレンスダウンリンクキャリアについてのタイミングとタイミングアドバンスコマンドを用いて、いつデータ送信が行われるべきかを確定する。この確認に基づいて、制御ユニット511は、制御信号(例えば、変調器制御信号529と、制御されている回路部に供給される、(例えば、電力増幅器の電源をオンにしたりオフにしたりする)送信開始/中止制御信号531とを生成する。」

(2)「



(3)「【図5】



上記記載及び当業者における技術常識からみて、以下のことがいえる。

ア 上記(1)の段落【0030】の記載によれば、公知例には、「少なくとも2つのダウンリンクキャリアと少なくとも1つのアップリンクキャリアとを介してユーザ装置と通信するマルチキャリアLTEシステム」が記載されているといえる。

イ 上記(1)の段落【0033】の記載及び上記(2)の【図4】によれば、ユーザ装置は、ステップ405において、タイミングアドバンスコマンドをeNBから受信し、ステップ407において、タイミングアドバンスコマンド及びリファレンスダウンリンクキャリアに基づいて、送信タイミングを調整し、その送信タイミングに基づいて、情報を送信するといえる。
ここで、上記(1)の段落【0008】の記載によれば、タイミングアドバンスコマンドは、それを受信するユーザ装置に、どの瞬間に信号をeNBに送信し始めるべきかを知らせるものであって、タイミングオフセットを表すといえる。また、上記(1)の段落【0041】の記載及び上記(3)の【図5】によれば、ユーザ装置の制御ユニット511は、リファレンスダウンリンクキャリアとタイミングアドバンスコマンドを用いて、いつデータ送信が行われるべきかを確定することから、送信タイミングを調整することは、送信タイミングを確定することを含むといえる。してみると、ユーザ装置は、ステップ405において、タイミングオフセットを表すタイミングアドバンスコマンドをeNBから受信し、ステップ407において、タイミングオフセット及びリファレンスダウンリンクキャリアに基づいて、eNBへの送信タイミング、すなわちアップリンクの送信タイミングを確定して、そのアップリンクの送信タイミングに基づいて、アップリンクの情報を送信するといえる。
さらに、ステップ407より前のステップ405の時点でタイミングオフセットを受信していることから、ステップ407では、ユーザ装置に、タイミングオフセットが予め設定されているといえる。
また、上記(1)の段落【0032】の記載及び上記(2)の【図4】によれば、ユーザ装置は、ステップ403において、リファレンス(基準)セルによって送信されたリファレンスダウンリンクキャリアのタイミングを判定することから、ステップ403の時点で、ユーザ装置には、リファレンスダウンリンクキャリアがどのキャリアであるか設定されているといえる。そのため、ステップ403より後のステップ407の時点においては、ユーザ装置には、リファレンスダウンリンクキャリアが予め設定されているといえる。
したがって、公知例には、「ユーザ装置が、予め設定されたタイミングオフセット及び予め設定されたリファレンスダウンリンクキャリアに基づいて、アップリンクの送信タイミングを確定して、前記アップリンクの送信タイミングに基づいて、アップリンクの情報を送信する」ことが記載されているといえる。

ウ 上記イの検討によれば、ユーザ装置は、eNBからタイミングアドバンスコマンドを受信し、タイミングオフセットを取得するといえる。
また、上記(1)の段落【0041】の記載及び上記(3)の【図5】によれば、ユーザ装置の同期回路部523は、コンポーネントキャリアCC1・・CCNのどれがリファレンスダウンリンクキャリアであるのか知ることを可能にする、ダウンリンク基準キャリアについての情報を受信し、基準セル/キャリアの判定は、高位レイヤ復号ユニットによって行われ、高位レイヤ処理回路部へ転送された検出されたデータに基づいている。そのため、この検出されたデータには、リファレンスダウンリンクキャリアについての情報が含まれているといえる。ここで、上記(1)の段落【0040】の記載及び上記(3)の【図5】によれば、検出されたデータとは、ユーザ装置の検出器521が各コンポーネントキャリア上で搬送されるデータを検出したものであるから、高位レイヤ処理回路部へ転送された検出されたデータは、各コンポーネントキャリア上で搬送されるデータといえるから、eNBから受信するものといえる。してみると、ユーザ装置は、eNBからリファレンスダウンリンクキャリアについての情報を受信し、リファレンスダウンリンクキャリアを取得するといえる。
したがって、公知例には、「ユーザ装置はeNBからタイミングアドバンスコマンド及びリファレンスダウンリンクキャリアについての情報を受信し、タイミングオフセット及びリファレンスダウンリンクキャリアを取得する」ことが記載されている。

以上を総合すると、公知例には、次の技術(以下、「公知技術」という。)が記載されていると認められる。
「少なくとも2つのダウンリンクキャリアと少なくとも1つのアップリンクキャリアとを介してユーザ装置と通信するマルチキャリアLTEシステムにおいて、
ユーザ装置が、予め設定されたタイミングオフセット及び予め設定されたリファレンスダウンリンクキャリアに基づいて、アップリンクの送信タイミングを確定して、前記アップリンクの送信タイミングに基づいて、アップリンクの情報を送信すること、
前記ユーザ装置はeNBからタイミングアドバンスコマンド及びリファレンスダウンリンクキャリアについての情報を受信し、前記タイミングオフセット及び前記リファレンスダウンリンクキャリアを取得すること。」

第5 対比及び判断

本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。

1.本願の発明の詳細な説明の段落【0081】、【0082】によれば、本願発明の「アップリンク制御情報」は、「肯定応答(Acknowledgement,ACK)/否定応答(Negative Acknowledgament,NACK)フィードバック情報」を含むといえる。そして、引用発明の「HARQ-ACK」は、「肯定応答(Acknowledgement,ACK)/否定応答(Negative Acknowledgament,NACK)フィードバック情報」といえるから、本願発明の「アップリンク制御情報」に含まれる。したがって、引用発明の「HARQ-ACKの送信方法」は、「アップリンク制御情報の送信方法」という点で本願発明と一致する。

2.引用発明の「UE」、「第1コンポーネントキャリア」、「第2コンポーネントキャリア」は、それぞれ本願発明の「端末」、「第1キャリア」、「第2キャリア」に相当する。また、引用発明の「マクロセル」、「スモールセル」を、それぞれ「第1基地局」、「第2基地局」と称することは任意である。したがって、引用発明の「UEが、第1コンポーネントキャリアにおいて、マクロセルによりスケジューリングされるデータを受信し、かつ、第2コンポーネントキャリアにおいて、スモールセルによりスケジューリングされるデータを受信するステップ」は、「端末が、第1キャリアにおいて、第1基地局によりスケジューリングされるデータを受信し、かつ、第2キャリアにおいて、第2基地局によりスケジューリングされるデータを受信するステップ」という点で本願発明と一致する。

3.引用発明の「前記UEが、前記第1コンポーネントキャリアのために第1HARQ-ACKを生成し、前記UEが、前記第2コンポーネントキャリアのために第2HARQ-ACKを生成するステップ」は、「前記端末が、前記第1キャリアのために第1アップリンク制御情報を生成し、前記端末が、前記第2キャリアのために第2アップリンク制御情報を生成するステップ」という点で本願発明と一致する。

4.引用発明の「マクロセルの1つのULコンポーネントキャリア」は、本願発明の「1つのアップリンクキャリア」に含まれる。したがって、引用発明の「前記UEが、CAと同様の動作により、マクロセルの1つのULコンポーネントキャリアにおいて前記UEが生成したHARQ-ACKを送信するステップ」は、「前記端末が、1つのアップリンクキャリアにおいて前記端末が生成したアップリンク制御情報を送信するステップ」という点で本願発明と共通する。

5.引用発明の「前記HARQ-ACKは、前記第1HARQ-ACKであるか、前記第2HARQ-ACKであるか、前記第1HARQ-ACK及び前記第2HARQ-ACKである」ことは、「前記アップリンク制御情報は、前記第1アップリンク制御情報であるか、前記第2アップリンク制御情報であ」る点で本願発明と一致する。

以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「 アップリンク制御情報の送信方法であって、
端末が、第1キャリアにおいて、第1基地局によりスケジューリングされるデータを受信し、かつ、第2キャリアにおいて、第2基地局によりスケジューリングされるデータを受信するステップと、
前記端末が、前記第1キャリアのために第1アップリンク制御情報を生成し、前記端末が、前記第2キャリアのために第2アップリンク制御情報を生成するステップと、
前記端末が、1つのアップリンクキャリアにおいて前記端末が生成したアップリンク制御情報を送信するステップと、
を含み、
前記アップリンク制御情報は、前記第1アップリンク制御情報であるか、前記第2アップリンク制御情報である、
アップリンク制御情報の送信方法。」

(相違点1)
一致点である「前記端末が、1つのアップリンクキャリアにおいて前記端末が生成したアップリンク制御情報を送信するステップ」について、本願発明は、「予め設定されたタイミングアドバンス(Timing Advance、TA)値及び予めプロトコルにより定義された又は予め設定された当該端末のアップリンク送信時間を得るために用いられる参照キャリアに基づいて、」との発明特定事項を有し、当該ステップは、「前記端末が、予め設定されたタイミングアドバンス(TA)値、及び、当該端末のアップリンク送信時間を得るために用いられる予めプロトコルにより定義された又は予め設定された参照キャリアに基づいて、アップリンク送信時間を確定するステップと、
前記端末が、前記1つのアップリンクキャリアにおいて、前記アップリンク送信時間に基づいて、前記アップリンク制御情報を送信するステップとを含み、」との発明特定事項を有するのに対して、引用発明は、CAと同様の動作であることは特定されているものの、これらの発明特定事項を有することが明らかでない点。

(相違点2)
本願発明は、「前記端末は以下の方法により前記TA値及び/又は前記参照キャリアを取得し、すなわち、
前記端末は前記第1基地局が送信した設定情報を受信し、前記TA値及び前記参照キャリアを取得し、又は、
前記端末は前記第2基地局が送信した設定情報を受信し、前記TA値及び前記参照キャリアを取得し、又は
前記端末は前記第1基地局及び前記第2基地局以外の1つの予めプロトコルにより定義された基地局が送信した設定情報を受信し、前記TA値及び前記参照キャリアを取得し、又は、
前記端末は前記端末のプライマリーキャリアをスケジューリングする基地局が送信した設定情報を受信し、前記TA値及び前記参照キャリアを取得し、又は、
前記端末は前記1つのアップリンクキャリアをスケジューリングする基地局が送信した設定情報を受信し、前記TA値及び前記参照キャリアを取得し、又は、
前記端末は前記1つのアップリンクキャリアにおける物理アップリンク共有チャネル(PUSCH)伝送及びサウンディング参照符号(SRS)伝送及びサウンディング参照符号(SRS)伝送をスケジューリングする基地局が送信した設定情報を受信し、前記TA値及び前記参照キャリアを取得し、又は、
前記端末は前記1つのアップリンクキャリアにおける現行アップリンクサブフレーム、又は、現行サブフレームの隣接の1つのアップリンクサブフレームにおける物理アップリンク共有チャネル(PUSCH)伝送及びサウンディング参照符号(SRS)伝送及び/又はサウンディング参照符号(SRS)伝送をスケジューリングする基地局が送信した設定情報を受信し、前記TA値及び前記参照キャリアを取得し、前記現行サブフレームは、アップリンク制御情報の送信に用いられる」との発明特定事項を有するのに対して、引用発明は、当該発明特定事項を有しない点。

以下、相違点について検討する。

(相違点1及び2について)
本願発明は、相違点1に関して、「予め設定されたタイミングアドバンス(Timing Advance、TA)値及び予め設定された当該端末のアップリンク送信時間を得るために用いられる参照キャリア」との択一的な選択肢のうちの一部を有する発明を含み、相違点2に関して、「前記端末は以下の方法により前記TA値及び/又は前記参照キャリアを取得し、すなわち、
前記端末は前記第1基地局が送信した設定情報を受信し、前記TA値及び前記参照キャリアを取得し、又は、
前記端末は前記第2基地局が送信した設定情報を受信し、前記TA値及び前記参照キャリアを取得」するとの択一的な選択肢のうちの一部を有する発明を含むといえる。

また、上記「第4」の「2.公知技術」で認定したとおり「少なくとも2つのダウンリンクキャリアと少なくとも1つのアップリンクキャリアとを介してユーザ装置と通信するマルチキャリアLTEシステムにおいて、
ユーザ装置が、予め設定されたタイミングオフセット及び予め設定されたリファレンスダウンリンクキャリアに基づいて、アップリンクの送信タイミングを確定して、前記アップリンクの送信タイミングに基づいて、アップリンクの情報を送信すること、
前記ユーザ装置はeNBからタイミングアドバンスコマンド及びリファレンスダウンリンクキャリアについての情報を受信し、前記タイミングオフセット及び前記リファレンスダウンリンクキャリアを取得すること。」は、公知技術である。ここで、公知技術の「タイミングオフセット」は、「タイミングアドバンス(Timing Advance、TA)値」といえる。公知技術の「リファレンスダウンリンクキャリア」は、ユーザ装置、すなわち端末のアップリンクの送信タイミングを得るために用いられるといえるから、「端末のアップリンク送信時間を得るために用いられる参照キャリア」といえる。公知技術の「アップリンクの送信タイミング」は、「アップリンク送信時間」といえる。公知技術の「タイミングアドバンスコマンド及びリファレンスダウンリンクキャリアについての情報」は、ユーザ装置がタイミングオフセットとリファレンスダウンリンクキャリアを設定するための情報であるから、「設定情報」といえる。
そして、公知技術の「少なくとも2つのダウンリンクキャリアと少なくとも1つのアップリンクキャリアとを介してユーザ装置と通信するマルチキャリアLTEシステム」は、キャリアアグリゲーション、すなわちCAであることは、当業者にとって明らかであって、引用発明の「UE」は、CAと同様の動作でアップリンクの送信を行うものであるから、引用発明に、公知技術を採用することに格別の困難性はなく、阻害要因も見出せない。
したがって、引用発明に公知技術を採用し、UEが、予め設定されたタイミングオフセット及び予め設定されたリファレンスダウンリンクキャリアに基づいて、アップリンクの送信タイミングを確定して、マクロセルの1つのULコンポーネントキャリアにおいて、前記アップリンクの送信タイミングに基づいて、HARQ-ACKを送信するとともに、前記UEがeNB、すなわちマクロセル又はスモールセルからタイミングアドバンスコマンド及びリファレンスダウンリンクキャリアについての情報を受信し、前記タイミングオフセット及び前記リファレンスダウンリンクキャリアを取得することは、当業者が適宜なし得ることである。

よって、本願発明は、引用発明及び公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
そして、本願発明が奏する効果も、当業者が引用発明及び公知技術から容易に予想できる範囲内のものである。

第6 むすび

以上のとおり、本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-04-22 
結審通知日 2019-05-07 
審決日 2019-05-20 
出願番号 特願2016-528331(P2016-528331)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤江 大望廣川 浩  
特許庁審判長 中木 努
特許庁審判官 山本 章裕
長谷川 篤男
発明の名称 アップリンク制御情報の送信方法及び装置  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  
代理人 阿部 達彦  

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