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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B60W
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 B60W
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60W
管理番号 1355653
審判番号 不服2018-9236  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-04 
確定日 2019-10-23 
事件の表示 特願2016-508581「車両操作装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年9月24日国際公開、WO2015/141308、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年2月4日(優先権主張平成26年3月18日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成29年12月25日付け(発送日:平成30年1月9日)で拒絶の理由が通知され、平成30年2月23日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成30年5月2日付け(発送日:平成30年5月15日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して平成30年7月4日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がされ、令和元年5月30日付け(発送日:令和元年6月4日)で、当審において拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、その指定期間内の令和元年7月29日に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

●理由1(新規性) 本願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

●理由2(進歩性) 本願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について

・請求項1、4ないし6、10ないし11及び13:引用文献等1

●理由2(進歩性)について

・請求項7及び8:引用文献等1ないし3
・請求項9:引用文献等1ないし4
・請求項12:引用文献等1及び5

引用文献等一覧
1.特開平8-305994号公報
2.特開2001-272240号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2010-198578号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2010-83314号公報(周知技術を示す文献)
5.再公表特許第2011/158347号(周知技術を示す文献)

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

●理由1(実施可能要件) 本願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

●理由2(サポート要件) 本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

●理由3(進歩性) 本願の請求項1ないし13に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する記載事項の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(実施可能要件)について
本願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1ないし13に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

●理由2(サポート要件)について
本願の請求項1ないし13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。

●理由3(進歩性)について
請求項1ないし13:引用文献等1ないし5

引用文献等一覧
1.特開平8-305994号公報(本審決における引用文献1)
2.特開平8-287395号公報(周知技術を示す文献;本審決における引用文献6)
3.特開2010-198578号公報(周知技術を示す文献;本審決における引用文献3)
4.特開2010-83314号公報(周知技術を示す文献;本審決における引用文献4)
5.再公表特許第2011/158347号(周知技術を示す文献;本審決における引用文献5)

第4 本願発明
本願の請求項1ないし13に係る発明(以下「本願発明1」ないし「本願発明13」という。)は、令和元年7月29日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定された、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
設定された走行経路に沿って走行するように車両の行動を自動的に制御する自動運転車両に用いられる車両操作装置において、
前記自動運転車両が前記設定された走行経路に沿って走行するための行動を制御する制御部と、
前記自動運転車両の前記制御部によって制御される現在の行動と、所定時間後に行う前記制御部によって制御される次の行動と、前記自動運転車両の乗員が選択可能な行動と、
を前記自動運転車両の乗員に対して同時に提示する提示部と、
前記提示部に提示された前記自動運転車両の行動に対して、前記乗員が意図する行動を操作により指定し、前記乗員による操作に応じた行動を前記自動運転車両に指示する指示部と
を備え、
前記提示部は、前記自動運転車両の前記制御部によって制御される現在の行動と、所定時間後に行う前記制御部によって制御される次の行動と、前記自動運転車両の乗員が選択可能な行動と、を互いに異なる表示形態により提示し、
前記提示部は、前記乗員によって選択された行動が開始されたとき、前記乗員によって選択された行動を前記現在の行動として提示する
ことを特徴とする車両操作装置。
【請求項2】
設定された走行経路に沿って走行するように車両の行動を自動的に制御する自動運転車両に用いられる車両操作装置において、
前記自動運転車両が前記設定された走行経路に沿って走行するための行動を制御する制御部と、
前記自動運転車両の前記制御部によって制御される現在の行動と、所定時間後に行う前記制御部によって制御される次の行動と、前記自動運転車両の乗員が選択可能な行動と、
を進行方向を示す矢印により前記自動運転車両の乗員に対して同時に提示する提示部と、
前記提示部に提示された前記自動運転車両の行動に対して、前記乗員が意図する行動を操作により指定し、前記乗員による操作に応じた行動を前記自動運転車両に指示する指示部と
を備え、
前記提示部は、前記乗員によって選択された行動が開始されたとき、前記乗員によって選択された行動を前記現在の行動として提示する
ことを特徴とする車両操作装置。
【請求項3】
設定された走行経路に沿って走行するように車両の行動を自動的に制御する自動運転車両に用いられる車両操作装置において、
前記自動運転車両が前記設定された走行経路に沿って走行するための行動を制御する制御部と、
前記自動運転車両の前記制御部によって制御される現在の行動と、所定時間後に行う前記制御部によって制御される次の行動と、前記自動運転車両の乗員が選択可能な行動と、
を進行方向を示す3つの矢印により前記自動運転車両の乗員に対して同時に提示する提示部と、
前記提示部に提示された前記自動運転車両の行動に対して、前記乗員が意図する行動を操作により指定し、前記乗員による操作に応じた行動を前記自動運転車両に指示する指示部と
を備え、
前記提示部は、前記乗員によって選択された行動が開始されたとき、前記乗員によって選択された行動を前記現在の行動として提示する
ことを特徴とする車両操作装置。
【請求項4】
前記提示部は、前記自動運転車両の前記制御部によって制御される現在の行動と、所定時間後に行う前記制御部によって制御される次の行動と、前記自動運転車両の乗員が選択可能な行動と、を並べて提示することを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載の車両操作装置。
【請求項5】
前記提示部は、前記自動運転車両の行動として、少なくとも前方、右方及び左方の3つの進行方向のうちから、それぞれ現在及び次の所定時間後の進行方向を提示することを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の車両操作装置。
【請求項6】
前記指示部は、前記自動運転車両の行動として、前記自動運転車両の進行方向に対応する矢印が前記乗員に操作されることにより、操作された前記矢印が意味する進行方向への移動を前記自動運転車両に指示することを特徴とする請求項1?5のいずれか1項に記載の車両操作装置。
【請求項7】
前記自動運転車両の周囲の情報を検出する検出部と、
前記検出部が検出する情報及び交通法規に基づいて、前記自動運転車両の行動毎に実行の可否を判断する行動判断部と
を更に備え、
前記提示部は、前記自動運転車両の行動を意味する記号を、前記行動判断部の判断に応じて表示方法を変更して表示することを特徴とする請求項1?6のいずれか1項に記載の車両操作装置。
【請求項8】
前記指示部は、前記行動判断部の判断に応じて、前記乗員による操作を無効化することを特徴とする請求項7に記載の車両操作装置。
【請求項9】
無線通信により前記走行経路における道路情報を外部から取得する情報取得部を更に備え、
前記行動判断部は、前記情報取得部が取得する道路情報、前記検出部が検出する情報及び交通法規に基づいて、前記自動運転車両の行動毎に実行の可否を判断することを特徴とする請求項7又は8に記載の車両操作装置。
【請求項10】
前記提示部は、前記制御部によって制御される現在の行動及び所定時間後に行う前記制御部によって制御される次の行動が互いに異なる場合、前記制御部によって制御される現在の行動及び所定時間後に行う前記制御部によって制御される次の行動を意味する記号を、互いに異なる表示方法で表示することにより乗員に提示することを特徴とする請求項1?9のいずれか1項に記載の車両操作装置。
【請求項11】
前記指示部は、前記自動運転車両が車線毎に区切られた道路を走行する場合において、
前記乗員による操作に応じて、隣接する車線への進路変更を前記自動運転車両に指示することを特徴とする請求項1?10のいずれか1項に記載の車両操作装置。
【請求項12】
前記指示部は、前記乗員による操作に応じて、一時停止を前記自動運転車両に指示することを特徴とする請求項1?11のいずれか1項に記載の車両操作装置。
【請求項13】
前記指示部及び前記提示部は、タッチパネルディスプレイにより構成され、前記自動運転車両の行動を意味する記号を表示し、前記記号を表示する領域を前記乗員により操作される領域とすることを特徴とする請求項1?12のいずれか1項に記載の車両操作装置。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-305994号公報(以下「引用文献1」という。)には、「自動誘導システム」に関し、図面(特に、図1及び3を参照。)とともに次の事項が記載されている。(下線は当審が付与した。以下同様。)

(1)「【0014】
【作用】本発明の車線受信装置を自動車に搭載し、車線通知装置を交差点へ進入する道路に設けて自動誘導システムを構成することにより、その自動車が車線通知装置のセンサ部で検出されると、検出したセンサによって定まる車線を示す信号が送られる。
【0015】車線受信装置では、その車線信号を受けると各信号に対応して定まる、車線の直進/左折/右折を示す図形を車内の表示画面に表示するので、その自動車の運転者は容易に、自身の位置する車線の当否を知ることができる。
【0016】更に第2の発明の場合には、この車線信号で示される現車線位置と、必要な場合に入力する移動先車線の指定に基づいて、自動車を所要の車線へ自動運転により移動することができる。」

(2)「【0034】識別部22は、車線コードに対応して、各種の交差点の道路の交差状態と、そこに設けられた車線に指定されている進行方向とを図示する図形情報を持ち、各車線コードで定まる図形を図形情報から検索して、表示装置23に出力することにより、表示装置23の表示画面に表示させる。
【0035】表示装置23は、例えば適当な大きさの液晶表示画面に表示を行い、且つ、例えば画面の下部に入力領域を設けて、その領域の表示に指を触れることにより入力ができるようにした、通常の表示/入力機能を持つ装置とする。
【0036】図3は車線コードに応じて表示される図形の例であって、図3(a)は3車線の左端車線に位置する場合、(b)は5方路のある交差点の例であって、上部画面は交差点の地図で、道路上の長楕円形の表示は自車の位置する車線を示す。
【0037】図3の各表示例の下部画面は入力領域であって、図で網かけをした三角形矢印で示す図形は、例えば点滅表示を行って、現車線から進入可能な方向を示すことを説明するものである。
【0038】ここで例えば図3(a)の場合に、下部画面の右折の矢印表示に指を触れることにより、右折車線へ移動する指示入力が行われる。移動指示入力は、表示装置23で読み取られて、識別部22で解釈されて、誘導部24へ伝えられる。
【0039】誘導部24は、現位置から指定の車線に移動する経路を決定する処理を行って、経路を制御部25に伝える。制御部25は、識別部22から刻々渡される、他車の最新の車線情報によって他車の位置及び速度を参照して、他車を避けながら自車が指定の経路を通るように、ハンドル制御、エンジン制御、及び必要な場合のブレーキ制御を行うことにより、自車を目的の車線へ自動誘導する。」

(3)上記(1)(特に、段落【0016】の「必要な場合に入力する移動先車線の指定に基づいて、自動車を所要の車線へ自動運転により移動することができる。」との記載を参照。)及び上記(2)(特に、段落【0039】の「他車の最新の車線情報によって他車の位置及び速度を参照して、他車を避けながら自車が指定の経路を通るように、ハンドル制御、エンジン制御、及び必要な場合のブレーキ制御を行うことにより、自車を目的の車線へ自動誘導する。」との記載を参照。)より、引用文献1に記載の自動車は「車両の行動を自動的に制御する自動車」といえる。

(4)上記(2)(特に、段落【0034】及び【0036】を参照。)及び図3(a)の図示内容からみて、車線に指定されている進行方向を図示する図形は矢印であることが分かる。

(5)上記(2)(特に、段落【0037】及び【0038】を参照。)から、運転者が意図する行動の指示入力を行い、運転者による移動指示入力に応じた行動を自動車に指示する入力領域があるといえる。

上記記載事項及び認定事項並びに図面の図示内容からみて、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

〔引用発明〕
「車両の行動を自動的に制御する自動車に用いられる表示装置23において、
制御部25と、
前記自動車の位置する車線を示す長楕円形の表示と、前記自動車の位置する車線に指定されている進行方向を図示する矢印と、前記自動車の位置する車線から進入可能な方向を示す三角形矢印と、を前記自動車の運転者に対して同時に表示する表示画面と、
前記表示画面に表示された前記自動車の位置する車線から進入可能な方向に対して、前記運転者が意図する行動の指示入力を行い、前記運転者による移動指示入力に応じた行動を前記自動車に指示する入力領域と
を備える表示装置23。」

2.引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-272240号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面(特に、図1ないし5及び12を参照。)とともに、次の事項が記載されている。

(1)「【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明を適用した一実施形態のナビゲーション装置について、図面を参照しながら説明する。
(1)ナビゲーション装置の全体構成
図1は、本発明を適用した一実施形態の車載用ナビゲーション装置の全体構成を示す図である。図1に示すナビゲーション装置は、全体を制御するナビゲーションコントローラ1と、地図表示や経路探索等に必要な各種の地図データを記録したDVD2と、このDVD2に記録された地図データを読み出すディスク読取装置3と、利用者が各種の指示を入力する操作部としてのリモートコントロール(リモコン)ユニット4と、自車位置と自車方位の検出を行うGPS受信機5および自律航法センサ6と、地図画像や誘導経路等を表示するディスプレイ装置7とを備えている。」

(2)「【0015】ディスプレイ装置7は、ナビゲーションコントローラ1から出力される描画データに基づいて、自車周辺の地図画像を車両位置マークや出発地マーク、目的地マーク等とともに表示したり、この地図上に誘導経路や交差点案内情報等を表示したりする。
【0016】(2)地図データの詳細内容
次に、DVD2に記録された地図データの詳細について説明する。DVD2に記録された地図データは、所定の経度および緯度で区切られた矩形形状の図葉を単位としており、各図葉の地図データは、図葉番号を指定することにより特定され、読み出すことが可能となる。各図葉毎の地図データには、地図表示に必要な各種のデータからなる「描画ユニット」と、マップマッチングや経路探索、経路誘導等の各種の処理に必要なデータからなる「道路ユニット」と、交差点等の詳細データからなる「交差点ユニット」が含まれている。
【0017】また、上述した道路ユニットにおいて、道路上の任意の2点間を結ぶ線をリンクといい、2本以上のリンクを結ぶ隣接点をノードという。また、道路ユニットには、道路ユニットであることを識別するための「ユニットヘッダ」と、全ノードの詳細データを納めた「接続ノードテーブル」と、接続ノードテーブルの格納位置を示す「ノードテーブル」と、隣接する2つのノードによって特定されるリンクの詳細データを納めた「リンクテーブル」とが含まれている。
【0018】図2は、道路ユニットに含まれる各種のテーブルの詳細な内容を示す図である。ノードテーブルは、図2(A)に示すように、着目している図葉に含まれる全ノードに対応したノードレコード#0、#1、…を格納している。各ノードレコードは、その並び順に#0から順にノード番号が与えられており、各ノードに対応する接続ノードテーブルの格納位置を示す。
【0019】また、接続ノードテーブルは、図2(B)に示すように、存在するノードのそれぞれ毎に、
a.正規化経度・緯度
b.このノードが交差点ノードであるか否かを示す交差点ノードフラグ、他の図葉との境界にあるノードであるか否かを示す隣接ノードフラグ、このノードにおいてリンクが分岐しているか否か、分岐しているとしたら分岐の形状がT字路あるいはY字路に該当するか否かを示す分岐路情報などからなる「ノードの属性フラグ」、
c.このノードをリンクの一方端とするリンクがある場合に各リンクの他方端を構成するノードの数を示す「接続しているノードの数」、
d.このノードに接続されているリンクに右折禁止やUターン禁止等の交通規制が存在する場合にはその「交通規制の数」、
e.このノードが一方端となっている各リンクのリンク番号を示すリンク本数分の接続ノードレコード、
f.上述した交通規制が存在する場合にはその数に対応した交通規制の具体的な内容を示す交通規制レコード、
g.このノードが他の図葉との境界にあるノードである場合には、隣接する図葉の対応するノードの接続ノードテーブルの位置を示す「隣接ノードレコード」、
h.このノードが交差点ノードである場合には、交差点ユニットにおける対応する交差点レコードの格納位置およびサイズ、等が含まれる。」

(3)「【0035】このようにして第2の交差点が特定されると、案内情報設定部20は、データバッファ10に格納された地図データ(主に交差点ユニット)を用いて、第1の交差点および第2の交差点のそれぞれにおいて、誘導経路に沿って自車が走行可能な車線を特定する(ステップ104)。」

(4)「【0050】また、上述した図9や図10においては、交差点案内情報として、各交差点における車線が全て表示され、さらに推奨走行車線のみを強調表示するようにしていたが、推奨走行車線のみを表示して他の車線については表示を行わないようにしてもよく、また、推奨走行車線と走行可能な車線とを表示し、走行不可能な車線を表示しないようにしてもよい。
【0051】図11は、推奨走行車線のみを表示する場合の交差点案内情報の表示例を示す図である。同図に示した交差点案内情報100aおよび110aのように、推奨走行車線のみを表示することにより、表示内容を簡素化することができる。なお、推奨走行車線のみを表示する場合には、図11に示した例のように、表示色等を工夫した強調表示を行うことなく、ただ単に推奨走行車線であることを示す矢印等の表示のみを行うようにしてもよい。
【0052】図12は、推奨走行車線と走行可能な車線とを表示し、走行不可能な車線を表示しない場合の交差点案内情報の表示例を示す図である。同図に示した交差点案内情報100bおよび110bのように、走行不可能な車線については表示を行わずに、推奨走行車線や走行可能な車線だけを表示することによっても表示内容を簡素化することができ、また、走行不可能な車線を視覚的に容易に把握することができるようになる。」

上記記載事項及び図面の図示内容からみて、引用文献2には次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。

「走行車線を表示する車載用ナビゲーション装置において、交通規制等の情報を取得し、走行可能な車線を特定し、走行不可能な車線は表示しないこと。」

3.引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された特開2010-198578号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面(特に、図1及び2を参照)とともに、次の事項が記載されている。

(1)「【0033】
周辺環境認識部21では、カメラ10からの撮像画像とレーダ11からの送受信情報に基づいて、自車両の周辺の物体を認識する。特に、周辺環境認識部21では、認識した物体の属性(車両、人(より詳細な属性として大人、子供、高齢者など)、犬、猫、自転車、オートバイ、工事関係の物体、路上の落下物、標識、路面標示、信号機など)を認識する。また、周辺環境認識部21では、認識した物体の状態(位置、停止中(特に、駐車中)、移動中(特に、走行中)、横断中、移動速度、移動方向、不明など)を認識する。さらに、周辺環境認識部21では、自車両の進行方向に存在する物体(障害物)については、道路幅方向の自車両の位置に対する物体の存在確率を算出する。図3には、道路幅方向の位置に対する障害物の存在確率を示す分布Dの一例を示している。また、周辺環境認識部21では、車両の移動を規定する条件(ルール、マナーなど)を認識する。ルールは、標識などで規定される一般的な交通ルールであり、例えば、標識や標示の場合にはその内容(進入禁止、右折禁止、左折禁止、制限速度、黄線のはみ出し禁止など)、信号機の場合には信号色や進行可能な方向がある。マナーは、一般的な交通マナーであり、例えば、歩行者の側方を通過するときの減速がある。なお、各認識方法や存在確率の算出方法は、従来の方法を適用する。
【0034】
さらに、周辺環境認識部21では、周辺物体の認識結果に基づいて走行シーン(状況)を判断する。特に、認識できた物体が自車両の進行に障害となる可能性のある物体の場合、周辺環境認識部21では、移動環境上におけるその物体と自車両との位置関係から走行シーンを判断する。走行シーンとしては、通常の走行状態、渋滞中、前方に低速車両、前方に横断歩道(横断者有り又は無し)、前方に赤信号、路上駐車車両、路上歩行者、路上自転車、路上落下物、路上工事中などがある。
【0035】
例えば、図2に示す例の場合、自車両の走行車線上の前方には車両V1が停止(駐車)しており、周辺環境認識部21では、車両V1を属性として「車両」と認識するとともに、状態として「駐車中」と認識している。さらに、その車両V1の側方に人P1が存在しているが、周辺環境認識部21では、人P1を物体としては認識できているが、属性や状態などを認識できず、「不明」としている。この場合、自車両の前方に駐車車両が存在することは認識しているので、周辺環境認識部21では、走行シーンとして前方に路上駐車車両と判断している。また、前方に横断歩道Cがあり、周辺環境認識部21では、横断歩道Cを属性として「横断歩道」と認識している。さらに、その横断歩道Cを横断しようとしている人P2が存在しており、周辺環境認識部21では、人P2を属性として「人」と認識するとともに、状態として「横断開始」と認識している。また、対向車線で横断歩道Cの手前で車両V2が停止しており、周辺環境認識部21では、車両V2を属性として「車両」と認識するとともに、状態として「停止中」と認識している。
【0036】
移動軌跡生成部22では、周辺環境認識部21での周辺環境の認識結果(特に、走行シーン)に応じて移動戦略を設定し、その移動戦略に基づいて移動軌跡を自動生成する。ここでは、周辺環境認識部21で判断した走行シーンが変わる毎に、その走行シーンに応じて予め設定されている標準の移動戦略が設定される。さらに、その移動戦略をベースとして車両が走行する際の単位時間毎あるいは単位距離毎の位置、移動方向、移動速度などが規定された移動軌跡が求められる。
【0037】
移動戦略は、移動軌跡の上位の概念であり、移動軌跡を生成するためのベース(基本方針)となる情報である。移動戦略としては、例えば、直進走行する移動戦略、右折する移動戦略、左折する移動戦略、赤信号や横断歩道などで停止する移動戦略、車線変更する移動戦略、駐車車両を追い越す移動戦略、歩行者や自転車を迂回する移動戦略がある。停止などの移動戦略は、車両の進行方向の位置取りに関する移動戦略である。車線変更、駐車車両追い越し、歩行者迂回などの移動戦略は、道路幅方向の位置取りに関する移動戦略である。したがって、道路領域内の位置取りは、車両進行方向の位置取り(直進や停止など)及び道路幅方向の位置取りを少なくとも含むものである。
【0038】
移動戦略設定部23では、周辺環境認識部21で走行シーンを判断する毎に、乗員が移動戦略を変更するための移動戦略の候補を設定する。例えば、図2に示す例の場合、駐車車両V1を迂回する移動戦略の候補、駐車車両V1の手前で停止する移動戦略の候補、直進して横断歩道Cの手前で停止する移動戦略の候補、横断歩道Cの先まで直進する移動戦略の候補などが設定される。さらに、駐車車両V1を迂回する移動戦略の場合、道路幅方向の迂回量をそれぞれ変えた複数の候補が設定されるようにしてもよい。」

上記記載事項及び図面の図示内容からみて、引用文献3には次の事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。

「車両の周囲の情報を検出する検出部を備え、前記検出部が検出する情報及び交通法規に基づいて、車両の移動戦略を設定すること。」

4.引用文献4
原査定の拒絶の理由に引用された特開2010-83314号公報(以下「引用文献4」という。)には、図面(特に、図1を参照)とともに、次の事項が記載されている。

(1)「【0012】
図1において、符号1は自動車等の車両(自車両)であり、この自車両1に、外部の走行環境を認識して障害物との衝突回避のための運転支援を行う運転支援装置2が搭載されている。本実施の形態においては、運転支援装置2は、ステレオカメラ3とステレオ画像認識装置4と走行環境情報取得装置5とによる外部環境の認識のための装置群と、各装置からの情報に基づいて運転支援のための各種処理を行うマイクロコンピュータ等からなる制御ユニット6を主要部として備えている。制御ユニット6には、警報装置を兼用するディスプレイ21、自動ブレーキ制御装置22、自動操舵制御装置23等の運転支援に係る各装置が接続されている。」

(2)「【0019】
走行環境情報取得装置5は、ステレオカメラ3の検出範囲よりも広範囲での物体の検出、道路形状や交差点の有無や位置・形状の情報、渋滞情報等の各種情報の取得を行うものである。具体的には、走行環境情報取得装置5は、道路付帯設備からの光や電波ビーコンを受信して交通渋滞情報、気象情報、特定区域の交通規制情報等の各種情報を取得する路車間通信装置、自車両周辺に存在する他の車両との通信(車車間通信)を行い、車両種別、車両位置、車速、加減速状態、ブレーキ作動状態、ウィンカ状態等の車両情報を相互に交換する車車間通信装置、GPS等の測位装置、ナビゲーション装置等からの各情報を収集して広範囲の走行環境情報を取得可能な装置として構成されている。」

上記記載事項及び図面の図示内容からみて、引用文献4には次の事項(以下「引用文献4記載事項」という。)が記載されている。

「車両に搭載される運転支援装置2は、走行環境情報取得装置5を備えており、該走行環境情報取得装置5は、交通規制等の情報を無線通信により外部から取得すること。」

5.引用文献5
原査定の拒絶の理由に引用された再公表特許第2011/158347号(以下「引用文献5」という。)には、図面(特に、図1及び2を参照)とともに、次の事項が記載されている。

(1)「【0026】
自動運転スイッチ2は、自車両の自動運転の作動状態(運転支援作動状態)を変更指示するためのものであり、ECU5と接続されている。この自動運転スイッチ2をオンにすると自動運転の開始信号がECU5に送信される。自動運転スイッチ2は、運転者が自動運転を開始させたい場合に操作するものであり普段から押す機会が多いと想定されるため、例えば、ステアリングの真中やシフトレバーの周辺など運転者が操作しやすい位置に設けられていることが好ましい。また、自動運転スイッチ2としては、入力画面が変化するタッチパネル式のスイッチなどを用いてもよいが、緊急時に運転者が混乱することを防ぐため、通常時と緊急時とで形態が変わることがない機械式のスイッチなどを用いた方がより好ましい。」

(2)「【0032】
自動運転モード切替え部51は、自動運転スイッチ2、目的地設定部3および走行意思検出部4と接続されている。この自動運転モード切替え部51は、自動運転スイッチ2が操作され、自動運転スイッチ2から自動運転の開始信号を受信すると、目的地設定部3から受信した目的地および走行意思検出部4から受信した検出結果に基づいて、これから開始する自動運転のモードを切替える。
【0033】
自動運転のモードは、目的地設定部3によって設定された目的地へと走行する自動運転(以下、目的地自動運転)、自車両の現在の走行路に沿って走行する自動運転(以下、道なり自動運転)および自動停車の三種類に切替え可能である。自動運転モード切替え部51は、目的地進路生成部52、道なり走行進路生成部53および停車進路生成部54と接続されており、自動運転のモードが目的地自動運転に切替えられた場合は目的地進路生成部52に目的地を出力し、自動運転のモードが道なり自動運転に切替えられた場合は道なり走行進路生成部53に進路生成指示を出力し、自動運転のモードが自動停車に切替えられた場合は停車進路生成部54に進路生成指示を出力する。」

(3)「【0036】
停車進路生成部54は、自動運転モード切替え部51から進路生成指示を受信すると、自動停車をするための進路を生成する。この停車進路生成部54は、車両走行制御部6と接続されており、生成した進路を車両走行制御部6に送信する。また、停車進路生成部54の処理として、走行中の道路の左側に寄せて停車させる進路を生成することができる。また、路外に他車両の通行の妨げとならない停車できる場所を探索して停車させる進路を生成することもできる。また、走行中の道路が駐停車禁止の場合、停車可能な他の道路へ進路変更して停車させてもよい。停車位置が他車両の走行を妨げる可能性がある場合には、ハザードランプを点滅させて注意を促すとよい。停車の際に急減速する恐れがあるときにはハザードランプを点滅させて後方の車両へ注意を促すとよい。また、その他に交通ルーツに従って安全に車両を停車させる進路生成方法であればよい。」

上記記載事項及び図面の図示内容からみて、引用文献5には次の事項(以下「引用文献5記載事項」という。)が記載されている。

「自動運転車両において、乗員の操作に応じて停止を自動運転車両に指示すること。」

6.引用文献6
当審拒絶理由において引用された特開平8-287395公報(以下「引用文献6」という。)には、図面(特に、図1を参照。)とともに、次の事項が記載されている。

(1)「【0002】
【従来の技術】従来、自車の進行方向の撮像画像から道路成分を抽出し、その抽出された道路成分にもとづいて2次平面上における道路のパターンを得て、その道路パターン上を適正速度で走行するように制御する自動走行装置に、道路地図上における自車の現在位置を求めながら、その道路地図上に設定されている目標経路にしたがって走行誘導を行わせるナビゲーション装置を組み込んで、ナビゲーション装置から与えられる右,左折などの走行誘導の指示にしたがって、撮像画像から得られる道路パターンのなかから自車の進むべき道路を認識して、その認識された道路上をならうように自車の走行の制御を行うようにした自動走行誘導装置が開発されている(特開平3-231311号公報参照)。」

(2)「【0007】
【実施例】本発明による自動走行誘導装置は、図1に示すように、ナビゲーション制御部Aと、自動走行制御部Bとからなっている。」

(3)「【0016】また、自動走行制御部Bは、基本的に、道路状況をセンシングするために車両の進行方向の領域を撮像できるように車体に取り付けられたビデオカメラ8と、その撮像された画像のなかから、連続した線分の抽出や道路両端の白線の抽出などの画像処理によって道路成分を抽出する画像処理部9と、車両の進行方向の領域を探索するように車体に取り付けられたレーダ部10と、そのレーダ部10によって検知された障害物の2次平面上における位置をわり出す障害物検知部11と、画像処理部9において抽出された遠近投影による道路成分を射影変換して実平面(2次平面)上における道路のパターンを得るとともに、障害物検知部11からの障害物の位置のデータを受けとって、障害物を回避しながら、射影変換によって得られた道路のパターンの曲率からわり出した適正速度をもって、その道路のパターン上をならい走行するように車両走行の制御を行うコンピュータシステムからなる走行制御用の信号処理部12と、その信号処理部12から出される各種制御信号に応じて、車両のアクセル141、ブレーキ142およびステアリング143からなるアクチュエータの駆動を適宜行うアクチュエータ駆動部13とによって構成されている。
【0017】また、信号処理部12は、例えば、現在位置が分岐路の手前にさしかかったときなどに、ナビゲーション制御部Aの信号処理部3から走行誘導の指示を受けとって、撮像画像から得られた道路パターンのなかから進むべき道路のパターンの認識を行い、その認識した道路のパターン上をならい走行するように車両走行の制御を行う。」

上記記載事項及び図面の図示内容からみて、引用文献6には、次の事項(以下「引用文献6記載事項」という。)が記載されている。

「設定された走行経路に沿って走行するように車両の行動を自動的に制御する自動運転車両。」

第6 対比・判断
1.本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における「自動車」は、その機能、構成及び技術的意義からみて本願発明1における「自動運転車両」に相当し、以下同様に、「表示装置23」は「車両操作装置」に、「制御部25」は「制御部」に、「自動車の位置する車線から進入可能な方向を示す三角形矢印」は「自動運転車両の乗員が選択可能な行動」に、「運転者」は「乗員」に、「表示する」は「提示する」に、「表示画面」は「提示部」に、「指示入力を行い」は「操作より指定し」に、「移動指示入力」は「操作」に、「入力領域」は「指示部」に、それぞれ相当する。
引用発明における「自動車の位置する車線」と、本願発明1の「自動運転車両の前記制御部によって制御される現在の行動」とは、「自動運転車両の現在の状態」という限りにおいて一致している。
引用発明における「自動車の位置する車線に指定されている進行方向」は、所定時間後に(交差点に差し掛かった時に)自動車が進行し得る方向を示すから、本願発明1における「所定時間後に行う前記制御部によって制御される次の行動」とは「所定時間後に行う次の行動」という限りにおいて一致している。
そして、引用発明における「前記自動車の位置する車線を示す長楕円形の表示」、「前記自動車の位置する車線に指定されている進行方向を図示する矢印」及び「前記自動車の位置する車線から進入可能な方向を示す三角形矢印」は、図3(a)の図示内容からみて「互いに異なる表示形態」であるといえる。
よって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
〔一致点〕
「車両の行動を自動的に制御する自動運転車両に用いられる車両操作装置において、
制御部と、
前記自動運転車両の現在の状態と、所定時間後に行う次の行動と、前記自動運転車両の乗員が選択可能な行動と、を前記自動運転車両の乗員に対して同時に提示する提示部と、
前記提示部に提示された前記自動運転車両の行動に対して、前記乗員が意図する行動を操作により指定し、前記乗員による操作に応じた行動を前記自動運転車両に指示する指示部と
を備え、
前記提示部は、前記自動運転車両の現在の状態と、所定時間後に行う次の行動と、前記自動運転車両の乗員が選択可能な行動と、を互いに異なる表示形態により提示する車両操作装置。」

〔相違点1〕
本願発明1においては「設定された走行経路に沿って走行するように」車両の行動を自動的に制御する自動運転車両に用いられる車両操作装置において、「前記自動運転車両が前記設定された走行経路に沿って走行するための」行動を制御する制御部を備えるのに対して、引用発明においては車両の行動を自動的に制御する自動車に用いられる表示装置23において、制御部を備えるものであるが、設定された走行経路に沿って走行するように車両の行動を自動的に制御するものではなく、設定された走行経路に沿って走行するための行動を制御する制御部を備えていない点。

〔相違点2〕
「自動運転車両の現在の状態」に関して、本願発明1においては「制御部によって制御される現在の行動」であるのに対して、引用発明においては「自動車の位置する車線」である点。

〔相違点3〕
「所定時間後に行う次の行動」に関して、本願発明1においては「所定時間後に行う前記制御部によって制御される次の行動」であるのに対して、引用発明においては、「自動車の位置する車線に指定されている進行方向」である点。

〔相違点4〕
本願発明1は「前記提示部は、前記乗員によって選択された行動が開始されたとき、前記乗員によって選択された行動を前記現在の行動として提示する」ものであるのに対して、引用発明はかかる事項を備えていない点。

事案に鑑み、上記相違点4について検討する。
上記「第4 2.ないし6.」で述べたとおり、引用文献2記載事項は「走行車線を表示する車載用ナビゲーション装置において、交通規制等の情報を取得し、走行可能な車線を特定し、走行不可能な車線は表示しないこと。」というものであり、引用文献3記載事項は「車両の周囲の情報を検出する検出部を備え、前記検出部が検出する情報及び交通法規に基づいて、車両の移動戦略を設定すること。」というものであり、引用文献4記載事項は「車両に搭載される運転支援装置2は、走行環境情報取得装置5を備えており、該走行環境情報取得装置5は、交通規制等の情報を無線通信により外部から取得すること。」というものであり、引用文献5記載事項は「自動運転車両において、乗員の操作に応じて停止を自動運転車両に指示すること。」というものであり、引用文献6記載事項は「設定された走行経路に沿って走行するように車両の行動を自動的に制御する自動運転車両。」というものであって、いずれも上記相違点4に係る本願発明1の発明特定事項を開示ないし示唆するものではない。
また、引用発明において、提示部は、乗員によって選択された行動が開始されたとき、前記乗員によって選択された行動を現在の行動として提示するように構成することは、本願の優先日前の周知技術であったとはいえず、設計的事項であるともいえない。
そうすると、引用発明において、引用文献2記載事項ないし引用文献6記載事項を参酌しても、上記相違点4に係る本願発明1の発明特定事項とすることはできない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2記載事項ないし引用文献6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2.本願発明2について
本願発明2と引用発明とを対比すると、引用発明における「自動車」は、その機能、構成及び技術的意義からみて本願発明2における「自動運転車両」に相当し、以下同様に、「表示装置23」は「車両操作装置」に、「制御部25」は「制御部」に、「自動車の位置する車線から進入可能な方向を示す三角形矢印」は「自動運転車両の乗員が選択可能な行動」に、「運転者」は「乗員」に、「表示する」は「提示する」に、「表示画面」は「提示部」に、「指示入力を行い」は「操作より指定し」に、「移動指示入力」は「操作」に、「入力領域」は「指示部」に、それぞれ相当する。
引用発明における「自動車の位置する車線」と、本願発明2の「自動運転車両の前記制御部によって制御される現在の行動」とは、「自動運転車両の現在の状態」という限りにおいて一致している。
引用発明における「自動車の位置する車線に指定されている進行方向」は、所定時間後に(交差点に差し掛かった時に)自動車が進行し得る方向を示すから、本願発明2における「所定時間後に行う前記制御部によって制御される次の行動」とは「所定時間後に行う次の行動」という限りにおいて一致している。
よって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
〔一致点〕
「車両の行動を自動的に制御する自動運転車両に用いられる車両操作装置において、
制御部と、
前記自動運転車両の現在の状態と、所定時間後に行う次の行動と、前記自動運転車両の乗員が選択可能な行動と、を前記自動運転車両の乗員に対して同時に提示する提示部と、
前記提示部に提示された前記自動運転車両の行動に対して、前記乗員が意図する行動を操作により指定し、前記乗員による操作に応じた行動を前記自動運転車両に指示する指示部と
を備える車両操作装置。」

〔相違点5〕
本願発明2においては「設定された走行経路に沿って走行するように」車両の行動を自動的に制御する自動運転車両に用いられる車両操作装置において、「前記自動運転車両が前記設定された走行経路に沿って走行するための」行動を制御する制御部を備えるのに対して、引用発明においては車両の行動を自動的に制御する自動車に用いられる表示装置23において、制御部を備えるものであるが、設定された走行経路に沿って走行するように車両の行動を自動的に制御するものではなく、設定された走行経路に沿って走行するための行動を制御する制御部を備えていない点。

〔相違点6〕
本願発明2においては「自動運転車両の前記制御部によって制御される現在の行動と、所定時間後に行う前記制御部によって制御される次の行動と、前記自動運転車両の乗員が選択可能な行動と、を進行方向を示す矢印により」前記自動運転車両の乗員に対して同時に提示するのに対して、引用発明においては「自動車の位置する車線を示す長楕円形の表示と、前記自動車の位置する車線に指定されている進行方向を図示する矢印と、前記自動車の位置する車線から進入可能な方向を示す三角形矢印と、を前記自動車の運転者に対して同時に表示する」点。

〔相違点7〕
本願発明2は「前記提示部は、前記乗員によって選択された行動が開始されたとき、前記乗員によって選択された行動を前記現在の行動として提示する」ものであるのに対して、引用発明はかかる事項を備えていない点。

事案に鑑み、上記相違点7について検討する。
上記相違点7は、本願発明1と引用発明との対比における相違点4と実質的に同じものである。
したがって、上記相違点4についての検討で述べたとおり、引用発明において、引用文献2記載事項ないし引用文献6記載事項を参酌しても、当業者が容易になし得たものではない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明2は、引用発明及び引用文献2記載事項ないし引用文献6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3.本願発明3について
本願発明3と引用発明とを対比すると、本願発明2と引用発明との対比における一致点と同様の一致点を有しているとともに、上記相違点5及び上記相違点7と同様の相違点を有している。
そして、上記相違点7は、本願発明1と引用発明との対比における上記相違点4と実質的に同じものである。
したがって、上記相違点4についての検討で述べたとおり、引用発明において、引用文献2記載事項ないし引用文献6記載事項を参酌しても、当業者が容易になし得たものではない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明3は、引用発明及び引用文献2記載事項ないし引用文献6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4.本願発明4ないし13について
本願の特許請求の範囲における請求項4ないし13は、請求項1ないし3の記載を他の記載に置き換えることなく直接的又は間接的に引用して記載されたものであるから、本願発明4ないし13は、本願発明1ないし3の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本願発明4ないし13は、本願発明1ないし3について述べたものと同様の理由により、引用発明及び引用文献2記載事項ないし引用文献6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5.小括
そうすると、本願発明1ないし13は、原査定で引用された引用文献1ないし5(本審決における引用文献1ないし5)及び当審拒絶理由で引用された引用文献1ないし5(本審決における引用文献1及び3ないし6)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第7 当審拒絶理由の理由1及び理由2について
令和元年7月29日の意見書の「2.3実施可能要件について」において、請求人は、「請求項1に係る発明は、第2、4、5動作例に対応する発明ではなく、第1、3動作例に対応する発明です。」、「請求項2に係る発明は、第2、4動作例に対応する発明ではなく、第1、3、5動作例に対応する発明です。」及び「請求項3に係る発明は、請求項2と同様に、第2、4動作例に対応する発明ではなく、第1、3、5動作例に対応する発明です。」と述べている。
これにより、当審拒絶理由の理由1及び理由2は解消した。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審が通知した拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-10-07 
出願番号 特願2016-508581(P2016-508581)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B60W)
P 1 8・ 537- WY (B60W)
P 1 8・ 536- WY (B60W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山本 賢明塩澤 正和神山 貴行川口 真一  
特許庁審判長 水野 治彦
特許庁審判官 鈴木 充
齊藤 公志郎
発明の名称 車両操作装置  
代理人 三好 秀和  

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