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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B23C
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B23C
管理番号 1355749
審判番号 不服2018-11670  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-30 
確定日 2019-11-05 
事件の表示 特願2013-91633「切れ刃位置の調整機構及び刃先交換式切削工具」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月17日出願公開、特開2014-213404、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年4月24日の出願であって、平成29年3月27日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年4月20日付けで手続補正がされ、平成29年9月28日付けで最後の拒絶理由通知がされ、平成29年12月4日付けで手続補正がされたが、当該手続補正は、平成30年5月25日付けの補正の却下の決定により却下され、同日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされた。これに対し、平成30年8月30日に拒絶査定不服審判の請求がされ、令和1年6月27日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、令和1年9月2日付けで手続補正がされたものである。


第2 平成30年5月25日付けの補正の却下の決定及び原査定の概要
1.平成30年5月25日付けの補正の却下の決定の概要は以下のとおりである。
平成29年12月4日付けの補正は、特許請求の範囲の限定的減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるが、当該補正後の本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献Aに記載された発明であるか、または引用文献Aに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであり、独立特許要件を満たさないから、平成29年12月4日付けの補正は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反し、同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

引用文献等一覧
A.特開2010-99795号公報

2.原査定の概要は次のとおりである。
(1)平成29年4月20日に提出された手続補正書により補正された請求項1ないし4に係る発明は明確ではないので、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(2)平成29年4月20日に提出された手続補正書により補正された請求項1ないし4に係る発明は、上記引用文献Aに基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第3 当審拒絶理由通知の概要
当審拒絶理由通知の概要は次のとおりである。
1.平成30年5月25日付け補正の却下の決定を取り消す。平成29年12月4日付け手続補正書の請求項1及び平成29年4月20日付け手続補正書の請求項2ないし4に基づいて審理を行う。

2.本願請求項1ないし4に係る発明は、以下の引用文献1及び2に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2008-188752号公報
2.特開2002-201918号公報


第4 本願発明
本願請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、令和1年9月2日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりである。

「【請求項1】
工具本体に装着された切れ刃部材を前記工具本体に対して移動させて、前記切れ刃部材の切れ刃の位置を調整する切れ刃位置の調整機構であって、
前記工具本体と前記切れ刃部材との間に延設され、該工具本体に螺合する軸部材と、
前記軸部材に螺合され、前記切れ刃部材に当接するナット部材と、を備え、
前記軸部材には、前記工具本体に螺合する第1ネジ部と、前記ナット部材に螺合する第2ネジ部とが、該軸部材の軸線方向に沿う互いに異なる位置に同軸に設けられており、
前記第1ネジ部のネジのピッチと、前記第2ネジ部のネジのピッチとが、互いに異なっており、
前記軸部材及び前記ナット部材の両方に、貫通孔、有底の止め穴、溝及び切り欠き面のいずれかである被係止部が形成され、
前記軸部材及び前記ナット部材が、それぞれ前記軸線回りに回転させられ、
前記ナット部材の螺合体先端側を向く端面は、前記切れ刃部材の壁面に当接する当接面とされていることを特徴とする切れ刃位置の調整機構。
【請求項2】
請求項1に記載の切れ刃位置の調整機構であって、
前記第1ネジ部のネジのピッチが、前記第2ネジ部のネジのピッチよりも大きくされたことを特徴とする切れ刃位置の調整機構。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の切れ刃位置の調整機構であって、
前記当接面は、前記切れ刃部材に向けて膨出する凸形状をなしていることを特徴とする切れ刃位置の調整機構。
【請求項4】
工具軸線回りに回転させられる工具本体と、該工具本体の先端外周部に着脱可能に装着され、工具先端側及び工具径方向外側の少なくともいずれかに向けて切れ刃を突出させる切れ刃部材と、を備える刃先交換式切削工具であって、
前記切れ刃部材を前記工具本体に対して移動させて、前記切れ刃の位置を調整する切れ刃位置の調整機構を備え、
前記切れ刃位置の調整機構として、請求項1?3のいずれか一項に記載の切れ刃位置の調整機構を用いたことを特徴とする刃先交換式切削工具。」


第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献について
(1)引用文献1
当審拒絶理由通知に引用された引用文献1には、図面とともに、以下の事項が記載されている。なお、下線は理解の便のため、当審で付与した。

「【0009】
しかしながら、このような従来の技術のミリングカッターは、クランプスクリュー310で切削バイト300を若干締め付けた後で調整スクリュー320を回転させると、第1のネジ部321及び第2のネジ部322が互いに逆方向のネジ山を有していることから、この第1の及び第2のネジ部321,322のネジピッチの和だけ切削バイト300が移動するので、切削バイト300の取り付け位置を大まかに調整することができるが、切削バイト300の取り付け位置を精密に調整することができないという不具合があった。
【0010】
また、従来の技術のミリングカッターは、調整スクリュー320の第1のネジ部及び第2のネジ部に互いに逆方向のネジ山を形成し、切削バイトの取り付け位置を調整するために、この切削バイトの外形を製作した後、この切削バイトの下面にネジ孔301を別途に形成する必要がある。
【0011】
さらにまた、従来の技術のミリングカッターは、カッター本体に切削バイトをクランプスクリューで適切な締め付け力で先に設置した後、切削バイトの取り付け位置を単にこの第1の及び第2のネジ部のネジピッチの和だけの移動量で調整するので、微細調整を迅速に行うことができないという不具合があった。
【0012】
上記の如き問題点を解消するために、本発明は、ミリング加工前に多数の切削バイトの取り付け位置を同一に調整する作業過程において、切削バイトを設ける前に大まかに切削バイトの取り付け位置を仮設定調整した上、切削バイトを仮設置した後仕上げ調整作業で切削バイトの取り付け位置を精密に調整することができ、且つ、仕上げ調整作業の際に切削バイトの取り付け位置を微調整することができるミリングカッターを提供する。」

「【0018】
本発明の請求項1によれば、切削バイトが設けられる取付溝の底面に簡単にネジ孔のみを穿孔して新規に提供される調整手段を設けることにより、ミリング加工前に多数の切削バイトの取り付け位置を同一に調整する作業過程において、切削バイトを設ける前に大まかに切削バイトの取り付け位置を仮設定調整した上、切削バイトを仮設置した後仕上げ調整作業で切削バイトの取り付け位置を精密に調整することができ、且つ、仕上げ調整作業の際に切削バイトの取り付け位置を微調整することができる。しかも、本発明は、切削バイトの取り付け位置を調整する時間を大幅に短縮させることができる利点もある。」

「【0024】
図4は、本発明に適用されるミリングカッターの分解斜視図であり、図5は、本発明によるミリングカッターの縦断面図であって、単一の切削バイトを設けるための構成を示す一部断面図であり、そして図6は、本発明による切削バイトがカッター本体に固定スクリューと副固定スクリューにより固定されている状態を示す部分断面図である。
【0025】
本発明は、切削バイト20がカッター本体10に形成されている取付溝11に挿設されて、前記切削バイト20に穿設されているボルト孔21を介して前記カッター本体10に螺合する固定スクリュー30により固定され、前記ボルト孔21は長孔状に穿設して前記取付溝11内で前記切削バイト20の取り付け位置を調整するミリングカッターにおいて、前記切削バイト20の取り付け位置、すなわち切刃位置を微細に調整すると共に、切削バイト20に別途の調整機能をするネジ孔を形成することなく、切削バイト20が設けられる取付溝11の底面11aに簡単にネジ孔12のみを穿孔して新規に提供される調整手段を設置すればよい。」

「【0027】
そして、前記切削バイト20は、被加工物を切削するインサートを一体的に具備可能であり、別途の高強度のインサート23を固着できることは言うまでもない。」

「【0032】
ここで、前記内部調整部材50が前記切削バイト20に回り止め可能に係合される好適な実施形態を述べると、前記調整ノブ42側の貫通孔42bを通って突出される前記内部調整部材50の端部に断面角形の回り止め係合部51を設け、前記切削バイト20の下面に凹設されている回り止め角形溝20aを設けて、前記回り止め係合部51が前記回り止め角形溝20aに嵌合している。」

「【0037】
ここで、本発明の好適な実施形態によれば、前記係合部41の外面のネジ山のピッチよりも前記係合部41の貫通孔41aの内面のネジ山のピッチを小さくして、前記外部調整部材40が1回転したときのネジ山のピッチ差分だけ前記切削バイト20を動かして取り付け位置を微調整することができる。」

「【0040】
すなわち、切削バイト20の取り付け位置を大まかに調整するためには、前記レンチなどの調整工具を挿入可能に内部調整部材50の先端面に調整工具挿入溝52を設ければよい。ここで、調整工具挿入溝52は、切削バイト20の大まかな位置を調整する機能の他に、レンチなどの調整工具を用いてネジ孔12に設けられる外部調整部材40内にカッター本体10の外部からネジ孔12を介して螺合する機能をも有する。」

「【0048】
先ず、カッター本体10に形成されている取付溝11のそれぞれの底面11aに穿孔されているネジ孔12に、本発明の調整手段を構成する外部調整部材40の係合部41を取付溝11を介して螺合する。
【0049】
その後、レンチを用いて、内部調整部材50の一方の側は、カッター本体10の外部(図1において、下方から上方へ)から、ネジ孔12に結合された外部調整部材40の係合部41に螺合させ、内部調整部材50の他方の側は、外部調整部材40の調整ノブ42側の貫通孔42bを通って突出させ、具体的には、前記内部調整部材50の他側端部に設けられた断面角形の回り止め係合部51を、調整ノブ42の外部に所定の長さ突出させる。」

「【0053】
次に、作業者は、切削バイトを設ける前に大まかに切削バイトの取り付け位置を仮設定調整する作業を行う。この作業は、レンチなどの調整工具を、カッター本体10のネジ孔12側における内部調整部材50に設けられている調整工具挿入溝52に嵌合して調整工具を回転させると、外部調整部材40は回転せず、内部調整部材50だけがネジ回転しながら進むようになる。
【0054】
このとき、内部調整部材50の前進移動量は、内部調整部材50の回転数によって変わり、作業者が必要とする移動量だけ回転させる。」

「【0056】
すなわち、切削バイト20を取付溝11に挿設するが、その下面に凹設されている回り止め角形溝20aに内部調整部材50の回り止め係合部51を嵌合する。
【0057】
その後、切削バイト20がカッター本体10に形成されている取付溝11に挿着された状態で、前記切削バイト20に穿設されている、一例として楕円形状の長孔のボルト孔21を介して固定スクリュー30を挿入して前記カッター本体10に形成されているネジ溝31に螺合する。
【0058】
ここで、前記固定スクリュー30の締め付け力は、最大にせず、一定の外力が加えられるときに切削バイト20が微細に移動可能なレベルにし、固定スクリュー30をカッター本体10に螺合させて切削バイト20を仮設置する。
【0059】
次に、切削バイトを仮設置した後、仕上げ調整作業として切削バイトの取り付け位置を精密に調整する作業を行う。
【0060】
この精密調整作業により、作業者がレンチなどの調整工具を用いて調整ノブ42を回転させると、係合部41が前記取付溝11の底面に穿孔されているネジ孔12内で回転するようになり、その結果、内部調整部材50が切削バイト20に回り止め可能に結合されていることから、係合部41の外面のネジ山のピッチと係合部41の貫通孔の内面のネジ山のピッチとの差分だけ、外部調整部材40と内部調整部材50及び切削バイト20が移動可能になる。
【0061】
ここで、係合部41の外面のネジ山のピッチと係合部41の貫通孔41aの内面のネジ山のピッチとの差分を小さくするほど、切削バイト20を一層微細に動かすことができる。一方、前記調整ノブ42には、その外周面に、レンチなどの調整工具(図示せず)が挿入される複数の工具挿入溝42aが設けられる。このため、作業者は、外部調整部材40の回転調整を一層容易に施すことができる。
【0062】
ここで、前記調整ノブ42に工具挿入溝42aを設ける代りに、調整ノブ42の外面を例えば6角面にして、スパナなどの工具で外部調整部材50を回転させることも可能である。」

引用文献1の段落【0024】、【0025】、第4図及び第5図の記載から見て、引用文献1には、以下の事項が記載されているといえる。
「カッター本体10の先端外周部に着脱可能に装着され、カッター先端側及びカッター径方向外側に向けてインサート23を突出させる切削バイト20を備える切削バイト交換式カッター本体10。」

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「カッター本体10に挿着された切削バイト20を前記カッター本体10に対して移動させて、前記切削バイト20のインサート23の位置を調整するインサート23の位置の調整部材であって、
前記カッター本体10と前記切削バイト20との間に延設され、該カッター本体に螺合する外部調整部材40と、
前記外部調整部材40に螺合され、前記切削バイト20に嵌合する内部調整部材50と、を備え、
前記外部調整部材40には、前記カッター本体10に螺合する係合部41の外面のネジと、前記内部調整部材に螺合する係合部41の内面のネジとが、該外部調整部材40の軸線方向に沿うように、径方向に互いに異なる位置に同軸に設けられており、
前記係合部41の外面のネジのピッチと、前記内部調整部材に螺合する係合部41の内面のネジのピッチとが、互いに異なっており、
前記外部調整部材40に工具挿入溝42a及び前記内部調整部材50に調整工具挿入溝52が形成され、
前記外部調整部材40及び前記内部調整部材50が、それぞれ前記軸線回りに回転させられ、内部調整部材50の端部は、断面角形の回り止め係合部51が設けられ、当該回り止め係合部51が前記切削バイト20の下面に凹設されている回り止め角形溝20aに嵌合している、インサート23の位置の調整部材。」


(2)引用文献2
引用文献2の段落【0026】、【0027】、【0031】、【0033】、【0034】、第1図、第3図、第6図等の記載から見て、当該引用文献2には、以下の技術的事項が記載されている。

「取付台25とロッカーアーム22との間に延設され、取付台25に螺合するアジャストボルト26と、前記アジャストボルト26に螺合され、前記ロッカーアーム22の球状凹部に係合する球状凸部28bを有するピボットナット28と、を備え、前記アジャストボルト26には、前記取付台25に螺合する雄ねじ26aと、前記ピボットナット28に螺合する雄ねじ26fとが、該アジャストボルト26の軸線方向に沿う互いに異なる位置に同軸に設けられており、前記雄ねじ26aのピッチが1.25mmと、前記雄ねじ26fのピッチが1.2mmと互いに異なっており、前記アジャストボルト26に六角係合孔26g及び前記ピボットナット28に六角係合孔28cが形成され、前記アジャストボルト26及び前記ピボットナット28が、それぞれ前記軸線回りに回転させられるという事項。」


第6.対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「カッター本体10」は、本願発明1の「工具本体」に相当する。以下同様に、「切削バイト20」は「切れ刃部材」に、「インサート23」は「切れ刃」に、「調整部材」は「調整機構」に、それぞれ相当する。
引用発明の「外部調整部材40」は、カッター本体に螺合するから、本願発明1の「軸部材」と対比すると、「工具本体に螺合する部材」という点で一致する。
引用発明の「内部調整部材50」は、切削バイト20に当接するから、本願発明1の「ナット部材」と対比すると、「切れ刃部材に当接する部材」という点で一致する。
また、引用発明の「前記カッター本体10に螺合する係合部41の外面のネジと、前記内部調整部材に螺合する係合部41の内面のネジとが、該外部調整部材40の軸線方向に沿うように、径方向に互いに異なる位置に同軸に設けられ」ることと、本願発明1の「前記工具本体に螺合する第1ネジ部と、前記ナット部材に螺合する第2ネジ部とが、該軸部材の軸線方向に沿う互いに異なる位置に同軸に設けられ」ることは、「前記工具本体に螺合する第1ネジ部と、前記切れ刃部材に当接する部材に螺合する第2ネジ部とが、該工具本体に螺合する部材の軸線方向に沿う位置に同軸に設けられ」ることという点で一致する。
また、引用発明の「外部調整部材40に工具挿入溝42a及び前記内部調整部材50に調整工具挿入溝52が形成され」ることと、本願発明1の「前記軸部材及び前記ナット部材の両方に、貫通孔、有底の止め穴、溝及び切り欠き面のいずれかである被係止部が形成され」ることは、「前記工具本体に螺合する部材及び前記切れ刃部材に当接する部材の両方に、貫通孔、有底の止め穴、溝及び切り欠き面のいずれかである被係止部が形成される」ことという点で一致する。
さらに、引用発明の「前記外部調整部材40及び前記内部調整部材50が、それぞれ前記軸線回りに回転させられる」ことと、本願発明1の「前記軸部材及び前記ナット部材が、それぞれ前記軸線回りに回転させられる」ことは、「前記工具本体に螺合する部材及び前記切れ刃部材に当接する部材が、それぞれ前記軸線回りに回転させられる」ことという点で一致する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「工具本体に装着された切れ刃部材を前記工具本体に対して移動させて、前記切れ刃部材の切れ刃の位置を調整する切れ刃位置の調整機構であって、
前記工具本体と前記切れ刃部材との間に延設され、該工具本体に螺合する部材と、
前記工具本体に螺合する部材に螺合され、前記切れ刃部材に当接する部材と、を備え、
前記工具本体に螺合する部材には、前記工具本体に螺合する第1ネジ部と、前記切れ刃部材に当接する部材に螺合する第2ネジ部とが、該工具本体に螺合する部材の軸線方向に沿う位置に同軸に設けられており、
前記第1ネジ部のネジのピッチと、前記第2ネジ部のネジのピッチとが、互いに異なっており、
前記工具本体に螺合する部材及び前記切れ刃部材に当接する部材の両方に、貫通孔、有底の止め穴、溝及び切り欠き面のいずれかである被係止部が形成され、
前記工具本体に螺合する部材及び前記切れ刃部材に当接する部材が、それぞれ前記軸線回りに回転させられる切れ刃位置の調整機構。」

(相違点)
(相違点1)工具本体に螺合する部材及び切れ刃部材に当接する部材が、本願発明1では、「軸部材」及び「ナット部材」であり、軸部材の第1ネジ部と第2ネジ部は、軸部材の軸線方向の「互いに異なる位置」に設けられているのに対して、引用発明では、「内部調整部材40」及び「外部調整部材50」であり、外部調整部材40の係合部41の外面のネジと係合部41の内面のネジは、外部調整部材40の径方向の互いに異なる位置に設けられている点。

(相違点2)本願発明1では、「前記ナット部材の螺合体先端側を向く端面は、前記切れ刃部材の壁面に当接する当接面とされている」のに対し、引用発明では、内部調整部材50の端部は、断面角形の回り止め係合部51が設けられ、当該回り止め係合部51が前記切削バイト20の下面に凹設されている回り止め角形溝20aに嵌合している点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討する。
上記第5の1.(2)に記載されているとおり、引用文献2には、「前記ロッカーアーム22の球状凹部に係合する球状凸部28bを有するピボットナット28」を備えるという技術的事項が記載されている。
しかしながら、引用文献1では、「仕上げ調整作業の際に切削バイトの取り付け位置を微調整することができるミリングカッターを提供する」(【0012】)ことが課題となっており、当該課題解決のために、内部調整部材50に設けられた断面角形の回り止め係合部51を回り止め角形溝20aに嵌合し、内部調整部材50を切削バイト20に回り止め可能に結合している。そして、「内部調整部材50が切削バイト20に回り止め可能に結合されていることから、係合部41の外面のネジ山のピッチと係合部41の貫通孔の内面のネジ山のピッチとの差分だけ、外部調整部材40と内部調整部材50及び切削バイト20が移動可能」(【0060】)とすることで上記の課題が解決されている。そうすると、引用発明における「内部調整部材50の端部は、断面角形の回り止め係合部51が設けられ、当該回り止め係合部51が前記切削バイト20の下面に凹設されている回り止め角形溝20aに嵌合している」という構成は上記の課題を解決するための必須の構成であり、当該回り止め係合部51をナット部材に変更すれば上記の課題が解決されないことから、そのように変更することには阻害要因があり、当業者であっても容易に想到し得たということはできない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2ないし4について
本願発明2ないし4も、相違点2に係る本願発明1の「前記ナット部材の螺合体先端側を向く端面は、前記切れ刃部材の壁面に当接する当接面とされている」という構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。


第7 原査定についての判断
1.特許法第36条第6項第2号について
令和1年9月2日付けの手続補正書により、本願発明1ないし4には、「前記軸部材及び前記ナット部材の両方に、貫通孔、有底の止め穴、溝及び切り欠き面のいずれかである被係止部が形成され」という構成を有するものとなり、「前記軸部材及び前記ナット部材の両方」がどのような被係止部を設けているのかが明確となった。

2.特許法第29条第2項について
引用文献Aに記載された押圧ナット6は、回転ホルダ3に対して軸線A方向に摺動はするが、軸線A回りに回動はしないので、引用文献Aに記載された発明に基づいて、本願発明1ないし4に想到することは当業者であっても容易ではない。

3.上記1.及び2.より、原査定を維持することはできない。


第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由通知の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-10-18 
出願番号 特願2013-91633(P2013-91633)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (B23C)
P 1 8・ 121- WY (B23C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 村上 哲  
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 小川 悟史
大山 健
発明の名称 切れ刃位置の調整機構及び刃先交換式切削工具  
代理人 寺本 光生  
代理人 松沼 泰史  
代理人 大浪 一徳  
代理人 細川 文広  
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