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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1355772
審判番号 不服2018-13713  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-16 
確定日 2019-10-29 
事件の表示 特願2015-255467「発光素子及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月29日出願公開,特開2017-118080,請求項の数(25)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成27年12月26日の出願であって,その手続の経緯は次のとおりである。
平成29年12月18日 拒絶理由通知(同年同月26日発送)
平成30年 2月23日 手続補正・意見書提出
同年 3月30日 拒絶理由通知(同年4月3日発送)
同年 6月 4日 手続補正・意見書提出
同年 7月 9日 拒絶査定(同年同月17日送達)
同年10月16日 手続補正・審判請求

第2 原査定の拒絶の理由について
原査定の拒絶の理由は,本願に係る発明は,引用例1に記載された発明並びに引用例2及び引用例3に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
引用例1:特開2007-134415号公報
引用例2:特開2015-144245号公報
引用例3:特開2015-106642号公報

第3 平成30年10月16日にされた手続補正について
平成30年10月16日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)については,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
1 本件補正の内容
本件補正は,特許請求の範囲を補正するものであり,補正前後の特許請求の範囲は以下のものである。
〈補正前〉
「【請求項1】
第2導電型半導体層,活性層,第1導電型半導体層が積層されてなる半導体積層体と,
前記半導体積層体の第1導電型半導体層の上に設けられた第1電極部と,
前記第1電極部の上に設けられた酸化物膜と,
前記酸化物膜に接して設けられた反射膜と,
前記第1電極部と電気的に接続される第2電極部と,を備え,
前記反射膜は,銀を主成分とし,前記銀の結晶粒及び酸化物のナノ粒子を含み,
前記ナノ粒子は前記銀の結晶粒間に離散的に配置され,
前記第2電極部と前記反射膜とは電気的に接続されている発光素子。
【請求項2】
第2導電型半導体層,活性層,第1導電型半導体層が積層されてなる半導体積層体と,
前記半導体積層体の前記第2導電型半導体層の上に設けられた酸化物膜と,
前記酸化物膜に接して設けられた反射膜と,
前記半導体積層体の前記第2導電型半導体層と電気的に接続され,外部との接続に適した第2電極部と,を備え,
前記反射膜は,銀を主成分とし,前記銀の結晶粒及び酸化物のナノ粒子を含み,
前記ナノ粒子は前記銀の結晶粒間に離散的に配置され,
前記第2電極部と前記反射膜とは電気的に接続されている発光素子。
【請求項3】
前記酸化物膜は,酸化珪素,酸化アルミニウム,酸化ジルコニウム,酸化チタン,酸化亜鉛,酸化マグネシウム,酸化ガリウム,酸化タンタル,酸化ニオブ,酸化ビスマス,酸化イットリウム,酸化イリジウム,酸化インジウム,酸化スズ,酸化ニッケル,酸化ハフニウム,ITO,IZO,AZO,GZO,FTOの中から選択される少なくとも1つの物質である請求項1又は2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記ナノ粒子は,酸化珪素,酸化アルミニウム,酸化ジルコニウム,酸化チタン,酸化亜鉛,酸化マグネシウム,酸化ガリウム,酸化タンタル,酸化ニオブ,酸化ビスマス,酸化イットリウム,酸化イリジウム,酸化インジウム,酸化スズ,酸化ニッケル,酸化ハフニウム,ITO,IZO,AZO,GZO,FTOの中から選択される少なくとも1つの物質である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項5】
前記ナノ粒子は,前記反射膜中において,前記酸化物膜側に多く存在している請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項6】
前記反射膜中の前記ナノ粒子の含有量は,0.2wt%以上5wt%以下である請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項7】
前記ナノ粒子の平均粒径は,0.1nm以上100nm以下である請求項1乃至6のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項8】
前記酸化物は,透光性を有する請求項1乃至7のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項9】
第2導電型半導体層,活性層,第1導電型半導体層が積層されてなる半導体積層体と,
前記半導体積層体の第1導電型半導体層の上に設けられた第1電極部と,
前記第1電極部の上に設けられた窒化物膜と,
前記窒化物膜に接して設けられた反射膜と,
前記第1電極部と電気的に接続される第2電極部と,を備え,
前記反射膜は,銀を主成分とし,前記銀の結晶粒及び窒化物のナノ粒子を含み,
前記ナノ粒子は前記銀の結晶粒間に離散的に配置され,
前記第2電極部と前記反射膜とは電気的に接続されている発光素子。
【請求項10】
第2導電型半導体層,活性層,第1導電型半導体層が積層されてなる半導体積層体と, 前記半導体積層体の前記第2導電型半導体層の上に設けられた窒化物膜と,
前記窒化物膜に接して設けられた反射膜と,
前記半導体積層体の前記第2導電型半導体層と電気的に接続され,外部との接続に適した第2電極部と,を備え,
前記反射膜は,銀を主成分とし,前記銀の結晶粒及び窒化物のナノ粒子を含み,
前記ナノ粒子は前記銀の結晶粒間に離散的に配置され,
前記第2電極部と前記反射膜とは電気的に接続されている発光素子。
【請求項11】
前記窒化物膜は,窒化珪素,窒化アルミニウム,窒化ジルコニウム,窒化チタン,窒化亜鉛,窒化マグネシウム,窒化ガリウム,窒化タンタル,窒化ニオブ,窒化ビスマス,窒化イットリウム,窒化イリジウム,窒化インジウム,窒化スズ,窒化ニッケル,窒化ハフニウムの中から選択される少なくとも1つの物質である請求項9又は10に記載の発光素子。
【請求項12】
前記ナノ粒子は,窒化珪素,窒化アルミニウム,窒化ジルコニウム,窒化チタン,窒化亜鉛,窒化マグネシウム,窒化ガリウム,窒化タンタル,窒化ニオブ,窒化ビスマス,窒化イットリウム,窒化イリジウム,窒化インジウム,窒化スズ,窒化ニッケル,窒化ハフニウムの中から選択される少なくとも1つの物質である請求項9乃至11のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項13】
前記ナノ粒子は,前記反射膜中において,前記窒化物膜側に多く存在している請求項9乃至12のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項14】
前記反射膜中の前記ナノ粒子の含有量は,0.2wt%以上5wt%以下である請求項9乃至13のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項15】
前記ナノ粒子の平均粒径は,0.1nm以上100nm以下である請求項9乃至14のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項16】
前記ナノ粒子は,前記反射膜の銀の結晶粒界に存在している請求項1乃至15のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項17】
前記反射膜中の前記ナノ粒子の含有量は,1wt%以下である請求項1乃至16のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項18】
第2導電型半導体層,活性層,第1導電型半導体層が積層されてなる半導体積層体の前記第1導電型半導体層の上に設けられた第1電極部を形成する工程と,
前記第1電極部の上に酸化物膜を形成する工程と,
銀と酸化物の同時スパッタ若しくは同時蒸着により,前記ナノ粒子は前記銀の結晶粒間に離散的に配置され,前記酸化物膜に接する反射膜を形成する工程と,
前記第1電極部,及び,前記反射膜,を電気的に接続する第2電極部を形成する工程と,を含む発光素子の製造方法。
【請求項19】
第2導電型半導体層,活性層,第1導電型半導体層が積層されてなる半導体積層体の前記第2導電型半導体層の上に設けられた酸化物膜を形成する工程と,
銀と酸化物の同時スパッタ若しくは同時蒸着により,前記ナノ粒子は前記銀の結晶粒間に離散的に配置され,前記酸化物膜に接する反射膜を形成する工程と,
前記反射膜を電気的に接続する第2電極部を形成する工程と,を含む発光素子の製造方法。
【請求項20】
第2導電型半導体層,活性層,第1導電型半導体層が積層されてなる半導体積層体の前記第1導電型半導体層の上に設けられた第1電極部を形成する工程と,
前記第1電極部の上に酸化物膜を形成する工程と,
スパッタ若しくは蒸着により,前記酸化物膜の表面に酸化物のナノ粒子を離散的に付着させた後,該ナノ粒子を覆って銀を成膜することによって,前記酸化物膜に接する反射膜を形成する工程と,
前記第1電極部,及び,前記反射膜,を電気的に接続する第2電極部を形成する工程と,を含む発光素子の製造方法。
【請求項21】
第2導電型半導体層,活性層,第1導電型半導体層が積層されてなる半導体積層体の前記第2導電型半導体層の上に設けられた酸化物膜を形成する工程と,
スパッタ若しくは蒸着により,前記酸化物膜の表面に酸化物のナノ粒子を離散的に付着させた後,該ナノ粒子を覆って銀を成膜することによって,前記酸化物膜に接する反射膜を形成する工程と,
前記反射膜を電気的に接続する第2電極部を形成する工程と,を含む発光素子の製造方法。
【請求項22】
第2導電型半導体層,活性層,第1導電型半導体層が積層されてなる半導体積層体の前記第1導電型半導体層の上に設けられた第1電極部を形成する工程と,
前記第1電極部の上に窒化物膜を形成する工程と,
銀と窒化物の同時スパッタ若しくは同時蒸着により,前記ナノ粒子は前記銀の結晶粒間に離散的に配置され,前記窒化物膜に接する反射膜を形成する工程と,
前記第1電極部,及び,前記反射膜,を電気的に接続する第2電極部を形成する工程と,を含む発光素子の製造方法。
【請求項23】
第2導電型半導体層,活性層,第1導電型半導体層が積層されてなる半導体積層体の前記第2導電型半導体層の上に設けられた窒化物膜を形成する工程と,
銀と窒化物の同時スパッタ若しくは同時蒸着により,前記ナノ粒子は前記銀の結晶粒間に離散的に配置され,前記窒化物膜に接する反射膜を形成する工程と,
前記反射膜を電気的に接続する第2電極部を形成する工程と,を含む発光素子の製造方法。
【請求項24】
第2導電型半導体層,活性層,第1導電型半導体層が積層されてなる半導体積層体の前記第1導電型半導体層の上に設けられた第1電極部を形成する工程と,
前記第1電極部の上に窒化物膜を形成する工程と,
スパッタ若しくは蒸着により,前記窒化物膜の表面に窒化物のナノ粒子を離散的に付着させた後,該ナノ粒子を覆って銀を成膜することによって,前記窒化物膜に接する反射膜を形成する工程と,
前記第1電極部,及び,前記反射膜,を電気的に接続する第2電極部を形成する工程と,を含む発光素子の製造方法。
【請求項25】
第2導電型半導体層,活性層,第1導電型半導体層が積層されてなる半導体積層体の前記第2導電型半導体層の上に設けられた窒化物膜を形成する工程と,
スパッタ若しくは蒸着により,前記窒化物膜の表面に窒化物のナノ粒子を離散的に付着させた後,該ナノ粒子を覆って銀を成膜することによって,前記窒化物膜に接する反射膜を形成する工程と,
前記反射膜を電気的に接続する第2電極部を形成する工程と,を含む発光素子の製造方法。」

〈補正後〉
「【請求項1】
第2導電型半導体層,活性層,第1導電型半導体層が積層されてなる半導体積層体と,
前記半導体積層体の第1導電型半導体層の上に設けられた第1電極部と,
前記第1電極部の上にのみ設けられた酸化物膜と,
前記酸化物膜に接して設けられた反射膜と,
前記第1電極部と電気的に接続される第2電極部と,を備え,
前記反射膜は,銀を主成分とし,前記銀の結晶粒及び酸化物のナノ粒子を含み,
前記ナノ粒子は前記銀の結晶粒間に離散的に配置され,
前記第2電極部と前記反射膜とは電気的に接続されている発光素子。
【請求項2】
第2導電型半導体層,活性層,第1導電型半導体層が積層されてなる半導体積層体と,
前記半導体積層体の前記第2導電型半導体層の上にのみ設けられた酸化物膜と,
前記酸化物膜に接して設けられた反射膜と,
前記半導体積層体の前記第2導電型半導体層と電気的に接続され,外部との接続に適した第2電極部と,を備え,
前記反射膜は,銀を主成分とし,前記銀の結晶粒及び酸化物のナノ粒子を含み,
前記ナノ粒子は前記銀の結晶粒間に離散的に配置され,
前記第2電極部と前記反射膜とは電気的に接続されている発光素子。
【請求項3】
前記酸化物膜は,酸化珪素,酸化アルミニウム,酸化ジルコニウム,酸化チタン,酸化亜鉛,酸化マグネシウム,酸化ガリウム,酸化タンタル,酸化ニオブ,酸化ビスマス,酸化イットリウム,酸化イリジウム,酸化インジウム,酸化スズ,酸化ニッケル,酸化ハフニウム,ITO,IZO,AZO,GZO,FTOの中から選択される少なくとも1つの物質である請求項1又は2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記ナノ粒子は,酸化珪素,酸化アルミニウム,酸化ジルコニウム,酸化チタン,酸化亜鉛,酸化マグネシウム,酸化ガリウム,酸化タンタル,酸化ニオブ,酸化ビスマス,酸化イットリウム,酸化イリジウム,酸化インジウム,酸化スズ,酸化ニッケル,酸化ハフニウム,ITO,IZO,AZO,GZO,FTOの中から選択される少なくとも1つの物質である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項5】
前記ナノ粒子は,前記反射膜中において,前記酸化物膜側に多く存在している請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項6】
前記反射膜中の前記ナノ粒子の含有量は,0.2wt%以上5wt%以下である請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項7】
前記ナノ粒子の平均粒径は,0.1nm以上100nm以下である請求項1乃至6のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項8】
前記酸化物は,透光性を有する請求項1乃至7のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項9】
第2導電型半導体層,活性層,第1導電型半導体層が積層されてなる半導体積層体と,
前記半導体積層体の第1導電型半導体層の上に設けられた第1電極部と,
前記第1電極部の上にのみ設けられた窒化物膜と,
前記窒化物膜に接して設けられた反射膜と,
前記第1電極部と電気的に接続される第2電極部と,を備え,
前記反射膜は,銀を主成分とし,前記銀の結晶粒及び窒化物のナノ粒子を含み,
前記ナノ粒子は前記銀の結晶粒間に離散的に配置され,
前記第2電極部と前記反射膜とは電気的に接続されている発光素子。
【請求項10】
第2導電型半導体層,活性層,第1導電型半導体層が積層されてなる半導体積層体と,
前記半導体積層体の前記第2導電型半導体層の上にのみ設けられた窒化物膜と,
前記窒化物膜に接して設けられた反射膜と,
前記半導体積層体の前記第2導電型半導体層と電気的に接続され,外部との接続に適した第2電極部と,を備え,
前記反射膜は,銀を主成分とし,前記銀の結晶粒及び窒化物のナノ粒子を含み,
前記ナノ粒子は前記銀の結晶粒間に離散的に配置され,
前記第2電極部と前記反射膜とは電気的に接続されている発光素子。
【請求項11】
前記窒化物膜は,窒化珪素,窒化アルミニウム,窒化ジルコニウム,窒化チタン,窒化亜鉛,窒化マグネシウム,窒化ガリウム,窒化タンタル,窒化ニオブ,窒化ビスマス,窒化イットリウム,窒化イリジウム,窒化インジウム,窒化スズ,窒化ニッケル,窒化ハフニウムの中から選択される少なくとも1つの物質である請求項9又は10に記載の発光素子。
【請求項12】
前記ナノ粒子は,窒化珪素,窒化アルミニウム,窒化ジルコニウム,窒化チタン,窒化亜鉛,窒化マグネシウム,窒化ガリウム,窒化タンタル,窒化ニオブ,窒化ビスマス,窒化イットリウム,窒化イリジウム,窒化インジウム,窒化スズ,窒化ニッケル,窒化ハフニウムの中から選択される少なくとも1つの物質である請求項9乃至11のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項13】
前記ナノ粒子は,前記反射膜中において,前記窒化物膜側に多く存在している請求項9乃至12のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項14】
前記反射膜中の前記ナノ粒子の含有量は,0.2wt%以上5wt%以下である請求項9乃至13のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項15】
前記ナノ粒子の平均粒径は,0.1nm以上100nm以下である請求項9乃至14のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項16】
前記ナノ粒子は,前記反射膜の銀の結晶粒界に存在している請求項1乃至15のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項17】
前記反射膜中の前記ナノ粒子の含有量は,1wt%以下である請求項1乃至16のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項18】
第2導電型半導体層,活性層,第1導電型半導体層が積層されてなる半導体積層体の前記第1導電型半導体層の上に設けられた第1電極部を形成する工程と,
前記第1電極部の上にのみ酸化物膜を形成する工程と,
銀を主成分とし,前記銀の結晶粒及び酸化物のナノ粒子を含み,前記銀と前記酸化物の同時スパッタ若しくは同時蒸着により,前記ナノ粒子は前記銀の結晶粒間に離散的に配置され,前記酸化物膜に接する反射膜を形成する工程と,
前記第1電極部,及び,前記反射膜,を電気的に接続する第2電極部を形成する工程と,を含む発光素子の製造方法。
【請求項19】
第2導電型半導体層,活性層,第1導電型半導体層が積層されてなる半導体積層体の前記第2導電型半導体層の上にのみ設けられた酸化物膜を形成する工程と,
銀を主成分とし,前記銀の結晶粒及び酸化物のナノ粒子を含み,前記銀と前記酸化物の同時スパッタ若しくは同時蒸着により,前記ナノ粒子は前記銀の結晶粒間に離散的に配置され,前記酸化物膜に接する反射膜を形成する工程と,
前記反射膜を電気的に接続する第2電極部を形成する工程と,を含む発光素子の製造方法。
【請求項20】
第2導電型半導体層,活性層,第1導電型半導体層が積層されてなる半導体積層体の前記第1導電型半導体層の上に設けられた第1電極部を形成する工程と,
前記第1電極部の上にのみ酸化物膜を形成する工程と,
スパッタ若しくは蒸着により,前記酸化物膜の表面に酸化物のナノ粒子を離散的に付着させた後,該ナノ粒子を覆って銀を成膜することによって,前記酸化物膜に接する反射膜を形成する工程と,
前記第1電極部,及び,前記反射膜,を電気的に接続する第2電極部を形成する工程と,を含む発光素子の製造方法。
【請求項21】
第2導電型半導体層,活性層,第1導電型半導体層が積層されてなる半導体積層体の前記第2導電型半導体層の上にのみ設けられた酸化物膜を形成する工程と,
スパッタ若しくは蒸着により,前記酸化物膜の表面に酸化物のナノ粒子を離散的に付着させた後,該ナノ粒子を覆って銀を成膜することによって,前記酸化物膜に接する反射膜を形成する工程と,
前記反射膜を電気的に接続する第2電極部を形成する工程と,を含む発光素子の製造方法。
【請求項22】
第2導電型半導体層,活性層,第1導電型半導体層が積層されてなる半導体積層体の前記第1導電型半導体層の上に設けられた第1電極部を形成する工程と,
前記第1電極部の上にのみ窒化物膜を形成する工程と,
銀を主成分とし,前記銀の結晶粒及び窒化物のナノ粒子を含み,前記銀と前記窒化物の同時スパッタ若しくは同時蒸着により,前記ナノ粒子は前記銀の結晶粒間に離散的に配置され,前記窒化物膜に接する反射膜を形成する工程と,
前記第1電極部,及び,前記反射膜,を電気的に接続する第2電極部を形成する工程と,を含む発光素子の製造方法。
【請求項23】
第2導電型半導体層,活性層,第1導電型半導体層が積層されてなる半導体積層体の前記第2導電型半導体層の上にのみ設けられた窒化物膜を形成する工程と,
銀を主成分とし,前記銀の結晶粒及び窒化物のナノ粒子を含み,前記銀と前記窒化物の同時スパッタ若しくは同時蒸着により,前記ナノ粒子は前記銀の結晶粒間に離散的に配置され,前記窒化物膜に接する反射膜を形成する工程と,
前記反射膜を電気的に接続する第2電極部を形成する工程と,を含む発光素子の製造方法。
【請求項24】
第2導電型半導体層,活性層,第1導電型半導体層が積層されてなる半導体積層体の前記第1導電型半導体層の上に設けられた第1電極部を形成する工程と,
前記第1電極部の上にのみ窒化物膜を形成する工程と,
スパッタ若しくは蒸着により,前記窒化物膜の表面に窒化物のナノ粒子を離散的に付着させた後,該ナノ粒子を覆って銀を成膜することによって,前記窒化物膜に接する反射膜を形成する工程と,
前記第1電極部,及び,前記反射膜,を電気的に接続する第2電極部を形成する工程と,を含む発光素子の製造方法。
【請求項25】
第2導電型半導体層,活性層,第1導電型半導体層が積層されてなる半導体積層体の前記第2導電型半導体層の上にのみ設けられた窒化物膜を形成する工程と,
スパッタ若しくは蒸着により,前記窒化物膜の表面に窒化物のナノ粒子を離散的に付着させた後,該ナノ粒子を覆って銀を成膜することによって,前記窒化物膜に接する反射膜を形成する工程と,
前記反射膜を電気的に接続する第2電極部を形成する工程と,を含む発光素子の製造方法。」

2 補正事項の整理
請求項1についての補正事項は次のとおりである(下線は当審で付加。以下同様。)。
《補正事項》
補正前の請求項1の「前記第1電極部の上に設けられた酸化物膜と,」を補正後の請求項1の「前記第1電極部の上にのみ設けられた酸化物膜と,」と補正すること。

なお,独立形式で記載された,請求項1以外の各請求項(請求項2,9,10及び18?25)についての補正も,上記《補正事項》と同様に「のみ」を加入して,「前記第2導電型半導体層の上にのみ設けられた酸化物と,」,「前記第1電極部の上にのみ設けられた窒化物膜と,」,「前記第2導電型半導体層の上にのみ設けられた窒化物膜と,」,「前記第1電極部の上にのみ酸化物膜を形成する工程と,」,「前記第2導電型半導体層の上にのみ設けられた酸化物膜を形成する工程と,」,「前記第1電極部の上にのみ窒化物膜を形成する工程と,」または「前記第2導電型半導体層の上にのみ設けられた窒化物膜を形成する工程と,」とする補正事項を含むものである。

3 前記補正事項の新規事項の追加の有無についての検討
前記補正事項に係る,「前記第1電極部の上にのみ設けられた酸化物膜」は,本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の段落【0017】及び図1に記載されている。よって,前記補正事項は,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。
ここで,当初明細書等の段落【0017】には,
「第1電極部41上には,開口部を有する光反射構造体25が接して設けられている。光反射構造体25は,開口部が規則的に点在する,例えば格子状等に設けられる。電極40aの第2電極部42は,光反射構造体25上に接して設けられ,また光反射構造体25の開口部を通じて第1電極部41に接して設けられている。この光反射構造体25は,酸化物膜20を含む誘電体多層膜(DBR;Distributed Bragg Reflector),反射膜30,酸化物膜21がこの順に積層されてなる。誘電体多層膜の一例としては,酸化珪素の膜と酸化ニオブの膜の積層体が挙げられる。第2導電型半導体層15の上面領域の上にも,第1導電型と同様の開口部を有する光反射構造体25が接して設けられている。電極(第2導電型電極)40bは,光反射構造体25上に接して設けられ,また光反射構造体25の開口部を通じて第2導電型半導体層15の上面領域に接して設けられている。保護膜45は,半導体積層体10及び電極40a,40bの一部に接して設けられている。」
と記載されており,第2導電型半導体層15の上面領域の上にも,第1導電型と同様の開口部を有する光反射構造体25(の酸化物膜)が接して設けられていることが記載されてはいる。
しかしながら,第1電極部41上に接して設けられている光反射構造体25,及び,第2導電型半導体層15の上面に接して設けられている光反射構造体25の各々が,個々に光を反射し,また,前記各光反射構造体25において,個々に銀の結晶粒の成長が抑制され,平滑性が維持されるものであって,当該各作用効果は,前記各光反射構造体25のうちのいずれかがあれば奏されることは明らかである。そして,当初明細書等の全記載を見ても,第1電極部41上及び第2導電型半導体層の上の双方に光反射構造体25を設けることが,本願発明についての必須の構成であるとはいえない。
よって,前記段落【0017】の記載は,単に,第1電極部41上及び第2導電型半導体層の上の双方に酸化物膜を設けたものを説明するものであって,当初明細書等に記載された発明が,第1電極部41上のみに酸化膜を設けることを排除していることを表すものとはいえない。
また,独立形式で記載された,請求項1以外の各請求項(請求項2,9,10及び18?25)における前記各補正事項についても,同様の理由により,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。

4 独立特許要件について
下記第4に示すように,本件補正後の請求項1?25に係る発明は独立特許要件を満たすものである。

第4 本件発明について
1 本件発明
本件の請求項1?25に記載された発明は,前記第3 1に〈補正後〉として記載したとおりのものである。(以下においては,請求項1?25に係る発明を,それぞれ「本件発明1」?「本件発明25」という。)

2 検討
(1)刊行物に記載された発明
ア 引用例1:特開2007-134415号公報
(ア)原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2007-134415号公報(以下「引用例1」という。)には,図とともに,以下の記載がある。
a 「【0001】
本発明は,電極が対向して設けられている窒化物半導体発光素子及び窒化物半導体発光素子製造方法に関する。」

b 「【0012】
本発明は,上述した課題を解決するために創案されたものであり,電極が対向して設けられるとともに,チップ分離用やレーザーリフトオフ用の分離溝をエッチングにより形成する窒化物半導体発光素子であっても,発光領域に損傷が加わらず,劣化のない高輝度な窒化物半導体発光素子及び窒化物半導体発光素子製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために,請求項1記載の発明は,少なくともn側電極,n型窒化物半導体層,発光領域,p型窒化物半導体層,p側電極とを順に備えた窒化物半導体発光素子において,前記発光領域よりもn側電極側に段差を有し,前記p側電極から段差位置まで積層方向に沿って第1保護絶縁膜が形成されていることを特徴とする窒化物半導体発光素子である。」

c 「【0020】
以下,図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図1は本発明による第1の窒化物半導体発光素子の断面構造を示す。
【0021】
III-V族半導体としても知られる窒化物半導体は,周期表のIII族から選択されるAl,Ga及びIn等の元素と,V族の元素Nとを有する。窒化物半導体は,窒化ガリウム(GaN)等の2元混晶であってもよく,窒化ガリウムアルミニウム(AlGaN)または窒化アルミニウムインジウム(InGaN)等の3元混晶,及び窒化アルミニウムガリウムインジウム(AlGaInN)等の4元混晶であってもよい。これらの材料を基板上に付着させて,光電子デバイス用途の発光素子として使用可能な積層半導体構造を製造する。窒化物半導体は,緑-青-紫-紫外スペクトルの短波長の可視光の発光に必要な広いバンドギャップを有する。
【0022】
本実施例では,InGaNの3元混晶系を用いているが,上述したようにInGaNに限定されるものではない。発光領域としての活性層3を挟むようにしてn型窒化物半導体層2とp型窒化物半導体層4が形成されており,ダブルへテロ構造を有する。活性層3は,例えば,InGaN/GaNで構成された多重量子井戸構造を有するもので,井戸層としてInGaN,バリア層(障壁層)としてアンドープGaNを交互に積層しているが,バリア層は,0.5?2%のIn組成からなるInGaNを用いることもできる。ところで,発光領域として活性層3を設けるようにしているが,この活性層3を設けずに,n型窒化物半導体層2とp型窒化物半導体層4とを直接pn接合するようにしても良い。この場合,発光領域はpn接合界面部分となる。
【0023】
n型窒化物半導体層2は,例えば,n型不純物SiドープのGaNコンタクト層とこの上に積層されたn型不純物SiドープのInGaN/GaN超格子層とで構成される。この超格子層は,格子定数差の大きいInGaNとGaNの応力を緩和し,活性層のInGaNを成長させやすくするものである。一方,p型窒化物半導体層4は,例えば,p型不純物MgドープのGaNコンタクト層で構成される。n型窒化物半導体層2の下側にはn電極1が形成され,p型窒化物半導体層4の上にはp電極5が形成されている。n電極1は,TiとAlの積層体又はAl等で構成されており,n型窒化物半導体層2にオーミック接触している。p電極5はNiとAuの積層体等を用いることができるが,光の取出効率を考えた構造とする場合には,透明電極とすることが望ましく,例えばZnOを用いてオーミック接触させた電極とすることができる。
・・・(中略)・・・
【0025】
ところで,n型窒化物半導体層2には,p側から見て活性層3を越えた領域に段差Aが形成されている。この段差Aの部分まで,第1保護絶縁膜としての保護絶縁膜6によりn型窒化物半導体層2の一部,活性層3,p型窒化物半導体層4,p電極5の側面とp電極5の上側一部(コンタクトホールを除いた部分)にかけて覆われており,例えば,発光ダイオード素子の場合,保護絶縁膜6はチップの周縁部に環状に形成され,半導体レーザーの場合には,共振器構造を得るためにチップの両側面に形成される。保護絶縁膜6には,SiNやSOG(Spin On Glass)等が用いられる。
【0026】
このように,段差Aの位置から上側のチップ側面を保護絶縁膜6で覆う構造とすることで,素子毎に分離するための分離溝をエッチングで形成する場合や,LLOによって発生するN_(2)ガスを排気するための分離溝をエッチングで形成する場合に,n型窒化物半導体層2の一部,発光領域である活性層3,p型窒化物半導体層4は保護絶縁膜6により保護されるので,長時間エッチングガス(プラズマ)に曝されることがなく,素子の劣化を防止することができる。
【0027】
図1の構成による窒化物半導体発光素子の活性層3で発生した光は,n電極1の方向(図の下側方向)に取り出されるが,保護絶縁膜6の屈折率をn型窒化物半導体層2,活性層3,p型窒化物半導体層4のいずれの屈折率よりも小さくすることによって,素子内部から側面に向かって放射される光の一部が各半導体層と保護絶縁膜6との境界面で全反射するため,光の取出効率が向上する。上述したように,保護絶縁膜6をSiNやSOGとすると,GaNを含む各半導体層よりも保護絶縁膜6の屈折率が小さくなる。」

d 「【0028】
以下,図6?図12を用いて,本発明の窒化物半導体発光素子製造方法を説明する。・・・
・・・(中略)・・・
【0033】
次に,図7に示すように,ICPなどを用いてメサエッチングを行って第1分離溝を形成する。メサエッチングは活性層3を通過し,n型窒化物半導体層2中のn型GaNコンタクト層が露出するところまで行い,一旦エッチングを停止する。
【0034】
図8に示すように,P-CVDやスパッタリングで保護絶縁膜6をp電極5上面から第1分離溝の下端まですべて覆うように形成し,第1分離溝内を埋めつくさないように,隣接する素子間の隙間は十分に開けておく。保護絶縁膜6は,発光ダイオード素子の場合,チップの周縁部に環状に形成され,半導体レーザーの場合には,共振器構造を得るためにチップの両側面に形成される。そして,図9に示すように,SiO_(2)のような誘導体膜やレジストによるマスク14のパターニングをコンタクトホール形状に合わせて行い形成する。」

e 「【0047】
図5は,2重に保護絶縁膜を設けた場合で,さらに,光の取出効率を高めた構成を示す。図3と同様に,屈折率の異なる2重の保護絶縁膜が設けられているが,反射膜10が設けられており,側面の保護絶縁膜からの全反射だけでなく,この反射膜10により上方向に向かった光を反射させてn電極1の方向に取り出そうとするものである。この場合,p電極5は透明電極でなければならず,上述したGaドープZnO電極を用いる。
【0048】
p型窒化物半導体層にp型GaNコンタクト層を用いた場合,GaをドープしたZnOは,GaNと格子定数が近似しており,事後のアニ-ルをすることなく,p型GaNコンタクト層との間に良好なオーミック接触を形成する。また,反射膜10には,AlやAgなどの銀白色系の反射ミラーとして働く金属が用いられる。保護絶縁膜61としては,透明絶縁膜であるSiNやZrO_(2)が,保護絶縁膜92としては,透明絶縁膜であるアルミナ(Al_(2)O_(3))が用いられる。
【0049】
保護絶縁膜9に用いられるアルミナは,反射膜10と保護絶縁膜61との間の密着性を高めて反射膜10の剥離を防ぐ接着層として作用するとともに,屈折率がGaNを含む半導体層,保護絶縁膜61,保護絶縁膜92の順に小さくなっていくので,全反射による光の取出効率が高くなるという働きがある。形成方法は,保護絶縁膜61を形成した後,保護絶縁膜92(アルミナ)をスパッタにより積層し,エッチングによりコンタクトホール18A,18Bを開けた後,反射膜10を蒸着法で成膜する。
【0050】
反射膜10は,p電極5上に直接全面に積層されておらず,小さなコンタクトホール18A,18Bを介して反射膜10の一部がp電極5に直接接触するように形成され,その他の領域には保護絶縁膜61,92を間に挟んで反射膜10が形成されている。これは,p電極5と反射膜10とがほぼ全面で接するようにすると,p電極5と反射膜10との間で光の吸収が発生して反射率が低下するためである。AlやAgなどの銀白色系金属は,GaドープZnOとオーミック接触を形成し,これに起因して,反射膜10の反射率が阻害されるものと推定される。
【0051】
したがって,図5のように,コンタクトホール18A,18Bでのみ接触させるようにすれば,光の吸収はコンタクトホール18A,18Bのみでしか発生せず,高い反射率を維持することができる。また,前述したように,屈折率がGaNを含む半導体層,保護絶縁膜61,保護絶縁膜92の順に小さくなるので,全反射による光の取出効率の向上はあるものの,光の入射角が小さいもの,例えば,ほぼ直進に近いような光は全反射しないので,これらの光も反射膜10で反射させてn電極1側に取り出すようにしている。 なお,外側の保護絶縁膜92は,図4のようにn型窒化物半導体層2の下端まで形成するようにしても良い。」

f ここで,図5は以下のものである。

g 図5とともに,上記段落【0050】の記載を参照すると,「反射膜10」には,「p電極5に直接接触するように形成され」た部分と,「保護絶縁膜61,92を間に挟んで」反射膜として作用する部分からなること,及び「反射膜10」自体が電極としても作用することがわかる。

h 上記段落【0047】?【0051】の記載とともに図5を参照すると,保護絶縁膜61,保護絶縁膜92はp電極5の上にも形成されていることがわかる。

(イ)以上を総合すると,引用例1には,図5に示されたものに関して,次の発明が記載されているものと認められる(以下「引用発明」という。)。
「電極が対向して設けられている窒化物半導体発光素子であって,少なくともn側電極1,n型窒化物半導体層2,発光領域3,p型窒化物半導体層4,p側電極5とを順に備えた窒化物半導体発光素子において,
前記発光領域3よりもn側電極1側に段差Aを有し,前記p電極5上及び前記p側電極5から段差Aの位置まで積層方向に沿って,保護絶縁膜(保護絶縁膜61及び保護絶縁膜92)が形成されており,
さらに,反射膜10が設けられており,
反射膜10は,p電極5上に直接全面に積層されておらず,小さなコンタクトホール18A,18Bを介して反射膜10の一部がp電極5に直接接触するように形成された部分と,保護絶縁膜61,92を間に挟んで反射膜として作用する部分とからなり,電極としても作用し,
反射膜10には,AlやAgなどの銀白色系の反射ミラーとして働く金属が用いられ,保護絶縁膜61としては,透明絶縁膜であるSiNやZrO_(2)が,保護絶縁膜92としては,透明絶縁膜であるアルミナ(Al_(2)O_(3))が用いられ,
保護絶縁膜92に用いられるアルミナは,反射膜10と保護絶縁膜61との間の密着性を高めて反射膜10の剥離を防ぐ接着層として作用するとともに,屈折率がGaNを含む半導体層,保護絶縁膜61,保護絶縁膜92の順に小さくなっていくので,全反射による光の取出効率が高くなるという働きがあり,
屈折率がGaNを含む半導体層,保護絶縁膜61,保護絶縁膜92の順に小さくなるので,全反射による光の取出効率の向上はあるものの,光の入射角が小さいもの,例えば,ほぼ直進に近いような光は全反射しないので,これらの光も反射膜10で反射させてn電極1側に取り出すようにできるものであり,
段差Aの位置から上側のチップ側面を保護絶縁膜(保護絶縁膜61及び保護絶縁膜92)で覆う構造とすることで,素子毎に分離するための分離溝をエッチングで形成する場合や,LLOによって発生するN_(2)ガスを排気するための分離溝をエッチングで形成する場合に,n型窒化物半導体層2の一部,発光領域である活性層3,p型窒化物半導体層4は保護絶縁膜により保護されるので,長時間エッチングガス(プラズマ)に曝されることがなく,素子の劣化を防止することができるものである,
窒化物半導体発光素子,及びその製造方法。」

イ 引用例2:特開2015-144245号公報
(ア)原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2015-144245号公報(以下「引用例2」という。)には,図とともに,以下の記載がある。
a「【0001】
本発明は,半導体素子及びそれを備える半導体装置,並びに半導体素子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来,サファイアなど酸化物等の基板の裏面に銀などの金属からなる反射層が形成された半導体発光素子において,基板と反射層との密着性に関する検討がなされてきた(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
・・・(中略)・・・
【0004】
しかしながら,今尚,酸化物等の基板と金属膜との密着性においては改善の余地がある。
【0005】
そこで,本発明は,かかる事情に鑑みてなされたものであり,酸化物等の基板と金属膜との高い密着性が得られる半導体素子及び/若しくはそれを備える半導体装置,並びに/又は半導体素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために,本発明の半導体素子は,酸化物の基板と,前記基板の上面に設けられた半導体素子構造と,前記基板の下面に設けられた金属膜と,を備え,前記金属膜は,酸化物のナノ粒子を含むことを特徴とする。」

b「【0019】
<実施の形態1>
図1(a)は実施の形態1に係る半導体装置の概略上面図であり,図1(b)は図1(a)におけるA-A断面を示す概略断面図である。図2(a)は図1に示す半導体装置に実装された半導体素子の概略上面図であり,図2(b)は図2(a)におけるB-B断面を示す概略断面図(b)である。
【0020】
図1に示すように,実施の形態1に係る半導体装置200は,半導体素子100と,基体110と,を備えている。半導体素子100の下面側は,基体110に接合されている。
【0021】
より詳細には,半導体装置200は,表面実装型LEDである。半導体装置200は,LED素子である半導体素子100と,半導体素子100を収納する凹部が設けられた基体110と,凹部の内側において半導体素子100を覆うように設けられた封止部材130と,を備える。基体110は,正負一対のリード電極と,このリード電極を一体的に保持する樹脂の成形体と,を有するパッケージである。基体110の凹部の底面の一部は,リード電極の表面により構成されている。半導体素子100は,基体110の凹部の底面(より具体的には一方のリード電極)に接合部材120で接合され,リード電極にワイヤで接続されている。なお,封止部材130は,蛍光体や充填剤を含んでいてもよい。
【0022】
図2に示すように,実施の形態1に係る半導体素子100は,酸化物の基板10と,基板10の上面に設けられた半導体素子構造20と,基板10の下面に設けられた金属膜30と,を備える。そして,金属膜30は,酸化物のナノ粒子35を含む。
【0023】
このように,金属膜30中にナノ粒子35が存在することにより,金属膜30の基板10との密着性を高めることができ,信頼性の高い半導体素子が得られる。また,金属膜30は,酸化物膜(層)などを基板10と金属膜30の間に介在させるよりも,このような効果を安価に得られると共に,基板10と金属膜30の間の層構成を簡素にすることができる。したがって,介在させる膜による光損失を抑え,光取り出し効率に優れた発光素子や受光効率に優れた受光素子が得られる。さらに,放熱性に優れた半導体素子が得られる。
【0024】
また,金属膜30中にナノ粒子35が存在することにより,ピンニング効果を発現し,金属膜30の主成分となる金属(元素)の結晶粒31(以下,単に「結晶粒31」と略記する)の成長を抑制することができる。これにより,半導体装置のアッセンブリ工程の熱履歴による結晶粒31の成長が抑えられ,金属膜30の表面の平滑性を維持したり,金属膜30内の空隙(ボイド)の発生を抑えたり,することができる。したがって,金属膜30は,高い反射率や放熱性を維持しやすい。
【0025】
図3(a)は,基材と薄膜の接合について説明するための模式図である。また,図3(b)及び(c)は,実施の形態1に係る基板と金属膜の接合について説明するための模式図である。図3(a)に示すように,一般的に,基材上に薄膜を成膜した場合,その界面近傍に,化合物生成による反応領域や原子拡散による拡散領域が形成されることによって,基材と薄膜の密着性が高められる。例えば,酸化物の基材上に酸化しやすい金属の薄膜を成膜した場合には,その界面近傍に薄膜成分の金属の酸化物が生成された反応領域が形成されやすいため,密着性は得られやすい。一方,酸化物の基材上に酸化しにくい金属の薄膜を成膜した場合には,このような反応領域が形成されにくいため,密着性は得られにくかった。
【0026】
そこで,図3(b)に示すように,金属膜30に酸化物のナノ粒子35を含有させることを考える。これにより,基板10と金属膜30の界面近傍において,擬似的に上記反応領域を形成することができ,金属膜30の酸化物の基板10との密着性が高められると推測することができる。
【0027】
金属膜30の基板10との密着性を高める観点においては,ナノ粒子35は,少なくとも基板10と金属膜30の界面近傍に存在していることが好ましい。図3(b)に示すように,ナノ粒子35が金属膜30の全域に亘って分散されていれば,金属膜30の全域に亘って結晶成長を抑制しやすい。一方,図3(c)に示すように,ナノ粒子35が,金属膜30中において上方即ち基板10側に多く存在していれば,ナノ粒子35を効率良く利用して基板10と金属膜30の密着性を高めることができる。また特に,ナノ粒子35が金属膜30中において基板10と金属膜30の界面近傍に偏在又は局在していれば,基板10と金属膜30の密着性を高めながら,金属膜30の反射率の低下や電気抵抗の上昇を抑えることができる。
【0028】
図4(a)及び(b)は,実施の形態1に係る半導体素子及びその製造方法の一例を説明するための模式図である。図4(a)に示すように,実施の形態1に係る半導体素子100の製造方法の一例は,酸化物の基板10の上面に半導体素子構造を備える半導体素子の製造方法であって,基板10の下面に,金属と酸化物の同時スパッタ若しくは同時蒸着により,酸化物のナノ粒子35を含有する金属の膜を成膜する工程を含む。基板10の下面に金属の原料31aとナノ粒子の原料35aを同時に供給することで,金属膜30中の全域にナノ粒子35を分散させることができる。この場合,ナノ粒子35は,基板10の下面に付着した粒子のほか,金属の結晶粒31中,及び金属の結晶粒界に存在する粒子を含む。
【0029】
図4(b)に示すように,実施の形態1に係る半導体素子100の製造方法の別の一例は,酸化物の基板10の上面に半導体素子構造を備える半導体素子の製造方法であって,基板10の下面に,スパッタ若しくは蒸着により,酸化物のナノ粒子35を散り散りに付着させた後,そのナノ粒子35を覆って金属の膜を成膜する工程を含む。基板10の下面に,先にナノ粒子の原料35aを,後で金属の原料31aを,それぞれ別個に供給することで,金属膜30中のナノ粒子35を基板10の下面に散り散りに付着した粒子にすることができる。これは,上記のように金属膜30中のナノ粒子35が基板10との界面近傍に局在する形態の一例である。このとき,基板10の下面にナノ粒子35を散り散りに付着させるには,例えば10nm未満,好ましくは5nm未満の厚さに成膜することで,基板下面全域を覆う膜状(層状)ではなく,ナノ粒子35を散り散りに,すなわち複数の粒状に形成することができる。
【0030】
以下,金属膜30の好ましい形態について説明する。
【0031】
図2に示すように,ナノ粒子35は,金属膜30の結晶粒界に少なくとも存在していることが好ましい。ナノ粒子35が金属膜30の結晶粒界に存在することで,ピンニング効果により粒界移動を抑制しやすく,結晶粒31の成長を効果的に抑制することができる。また,銅など他の金属原子が金属膜30の結晶粒界を拡散することを抑制することができる。さらに,空気中の酸素が金属膜30中に浸入し結晶粒界を拡散するのを抑制することができる。したがって,金属膜30は,半導体装置のアッセンブリ工程や連続駆動を経ても,高い反射率を維持し且つ基板10からの剥離を抑制でき,信頼性に優れた光反射膜を得られる。また,金属膜30は,別途バリア層を形成するよりも,このような効果を安価に得られると共に,金属膜30の下の層構成を簡素にすることができる。
【0032】
ナノ粒子35は,酸化珪素,酸化アルミニウム,酸化ジルコニウム,酸化チタン,酸化亜鉛,酸化マグネシウム,酸化ガリウム,酸化タンタル,酸化ニオブ,酸化ビスマス,酸化イットリウム,酸化イリジウム,酸化インジウム,酸化スズ,酸化ニッケル,ITO,IZO,AZO,GZO,FTOの中から選択される少なくとも1つの物質であることが好ましい。酸化ハフニウムも好ましい。また,ナノ粒子35は,第4族元素,第10族元素,第12族元素,第13族元素,第14族元素の中から選択される少なくとも1つの元素の酸化物であることも好ましい。なかでも,酸化珪素,酸化アルミニウム,酸化ジルコニウム,酸化チタンは,入手しやすく,比較的安価である。
【0033】
金属膜30中のナノ粒子35の含有量は,基板10との密着性の観点からは,0wt%より大きければ良く,上限値は限定されず,例えば0.2wt%以上であり,0.5wt%以上であることが好ましく,1wt%以上であることがより好ましい。また,金属膜30中のナノ粒子35の含有量は,金属膜30の反射率(初期反射率)の観点からは,例えば5wt%以下であり,4wt%以下であることが好ましく,2.5wt%以下であることがより好ましい。
【0034】
ナノ粒子35の平均粒径は,特に限定されないが,0.1nm以上100nm以下であることが好ましく,更には0.1nm以上10nm未満であっても良い。このように,ナノ粒子35は,少量の添加で,多くの粒子を金属膜30に分散させることができ,結晶粒31の成長を抑制しやすい。なお,ナノ粒子35の平均粒径は,D50により定義することができる。また,ナノ粒子35の平均粒径は,レーザ回折・散乱法,画像解析法(走査型電子顕微鏡(SEM),透過型電子顕微鏡(TEM)),動的光散乱法,X線小角散乱法などにより測定することができ,なかでも画像解析法が好ましい。画像解析法は,例えばJIS Z 8827-1:2008に準ずる。
【0035】
ナノ粒子35の形状は,特に限定されないが,球状,不定形破砕状,針状,柱状,板状(鱗片状を含む),繊維状,又は樹枝状などが挙げられる。中でも,ナノ粒子35が球状であることにより,可視光と干渉するレベルの比較的大きいナノ粒子35中へ光が進入しても,全反射を抑制し速やかに光を取り出すことができ,反射率に優れる金属膜30を得やすい。
【0036】
基板10が透光性を有することで,金属膜30を光反射膜として機能させることができる。さらに,ナノ粒子35が透光性を有することが好ましい。熱履歴による金属膜の結晶成長の抑制手段として,ソリュートドラッグ効果を狙って異種金属を添加することも考えられるが,異種金属は光吸収性が比較的高く,半導体装置内の光散乱を考慮すれば無視できない光損失を生じる。しかしながら,ナノ粒子35が透光性を有するものであれば,そのような光損失を小さく抑えることができる。
【0037】
基板10が導電性を有することで,半導体素子100を上下電極(対向電極)構造とすることができ,また半導体素子構造20に面内均一に給電しやすく電力効率を高めやすい。さらに,ナノ粒子35が導電性を有するものであれば,金属膜30の電気抵抗の上昇を抑えることができる。
【0038】
金属膜30の形成方法は,特に限定されないが,スパッタ,蒸着などが挙げられる。金属膜30の厚さは,任意に選択できるが,例えば0.03μm以上5.0μm以下であり,0.05μm以上3.0μm以下であることが好ましく,0.1μm以上1.0μm以下であることがより好ましい。
【0039】
金属膜30の主成分となる金属(元素)は,特に限定されないが,上述のように,酸化物の基板10との密着性の得られにくさの観点から,酸化しにくい金属が好ましい。具体的には,銀,金,プラチナ,パラジウム,ロジウム,イリジウム,ルテニウム,オスミウム,銅,錫などが挙げられる。なかでも,銀,及び金は特に,酸化物の基板10との密着性が得られにくい。銀は,光反射性に優れ,なかでも可視波長域の反射率が金属中で最大であり,また熱伝導率,電気抵抗においても金属中最高の性能を有している。このため,金属膜30は,銀を主成分とする膜であることが好ましい。
【0040】
・・・(中略)・・・
【0042】
<実施の形態2>
実施の形態2に係る半導体素子及びその製造方法は,実施の形態1に係る半導体素子及びその製造方法における基板10及びナノ粒子35を窒化物に変えたものである。このような実施の形態2に係る半導体素子及びその製造方法もまた,実施の形態1と同様の作用,効果を奏することができる。
【0043】
実施の形態2におけるナノ粒子35は,窒化珪素,窒化アルミニウム,窒化ジルコニウム,窒化チタン,窒化亜鉛,窒化マグネシウム,窒化ガリウム,窒化タンタル,窒化ニオブ,窒化ビスマス,窒化イットリウム,窒化イリジウム,窒化インジウム,窒化スズ,窒化ニッケル,窒化ハフニウムの中から選択される少なくとも1つの物質であることが好ましい。また,ナノ粒子35は,第4族元素,第10族元素,第12族元素,第13族元素,第14族元素の中から選択される少なくとも1つの元素の窒化物であることも好ましい。」

(イ)以上から,引用例2には以下の技術事項が記載されているものと認められる。
「本発明の半導体素子は,酸化物の基板と,前記基板の上面に設けられた半導体素子構造と,前記基板の下面に設けられた金属膜と,を備え,前記金属膜は,酸化物のナノ粒子を含むこと,あるいは,窒化物の基板と,前記基板の上面に設けられた半導体素子構造と,前記基板の下面に設けられた金属膜と,を備え,前記金属膜は,窒化物のナノ粒子を含むことにより,金属膜の基板との密着性を高めることができ,信頼性の高い半導体素子が得られるとともに,半導体装置のアッセンブリ工程の熱履歴による結晶粒の成長が抑えられ,金属膜の表面の平滑性を維持したり,金属膜内の空隙(ボイド)の発生を抑えたりすることができ,金属膜は高い反射率や放熱性を維持しやすいものとなる。」

ウ 引用例3:特開2015-106642号公報
(ア)原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2015-106642号公報(以下「引用例3」という。)には,図とともに,以下の記載がある。
a「【0001】
本発明は,発光装置用反射膜,並びに,それを備えるリードフレーム,配線基板,ワイヤ,及び発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来,例えば特許文献1に記載されているように,発光ダイオード(LED)など,発光素子を光源とする発光装置には,表面にAgまたはAg合金めっきの反射膜を設けたリードフレームが利用されている。
【先行技術文献】
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,このような反射膜には,発光装置のアッセンブリ工程の熱履歴により,銀の結晶粒が成長し表面に凹凸化を生じて,反射率が低下する問題があった。
【0005】
なお,特許文献2には,Cu又はCuを含んだ合金により構成された本体上にAgめっき膜が設けられたリードフレームであり,Agめっき膜のAg結晶粒の結晶粒間にナノ粒子が配置されたものが記載されているが,このAgめっき膜は発光装置用反射膜として検討されたものではない。
【0006】
そこで,本発明は,かかる事情に鑑みてなされたものであり,熱履歴による表面の凹凸化が抑制された銀を主成分とする発光装置用反射膜,並びに/若しくは,その反射膜を備え光取り出し効率に優れたリードフレーム及び/又は配線基板及び/又はワイヤ及び/又は発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために,本発明の反射膜は,発光装置に用いられる反射膜であって,銀を主成分とし,透光性酸化物のナノ粒子を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば,反射膜中に存在するナノ粒子により,熱履歴による銀の結晶粒の成長を抑え,反射膜の表面の凹凸化を抑制することができる。」

b「【0011】
<実施の形態1>
図1(a)は実施の形態1に係る発光装置の概略上面図であり,図1(b)は図1(a)におけるA-A断面を示す概略断面図である。図1に示すように,実施の形態1に係る発光装置100は,発光素子10と,発光素子10の光を反射させる反射膜20と,を備えている。
【0012】
より詳細には,発光装置100は,表面実装型LEDである。発光装置100は,発光素子10と,発光素子10を収納する凹部が設けられたパッケージと,凹部の内側において発光素子10を覆うように設けられた封止部材と,を備える。パッケージは,正負一対のリード電極30と,このリード電極30を一体的に保持する樹脂の成形体と,を有する。パッケージの凹部の底面の一部は,リード電極30の表面により構成されている。発光素子10は,LED素子であり,パッケージの凹部の底面に接着剤で接着され,リード電極30にワイヤ50で接続されている。なお,封止部材は,蛍光体や充填剤を含んでいてもよい。
【0013】
反射膜20は,このような発光装置に用いられるものである。本実施の形態1では,反射膜20は,リード電極30の表面に設けられている。反射膜20は,銀を主成分とする。そして,反射膜20は,透光性酸化物のナノ粒子25を含んでいる。
【0014】
ナノ粒子25を構成する透光性酸化物は,酸化珪素,酸化アルミニウム,酸化ジルコニウム,酸化チタン,酸化亜鉛,酸化マグネシウム,酸化ガリウム,酸化タンタル,酸化ニオブ,酸化ビスマス,酸化イットリウム,酸化イリジウム,酸化インジウム,酸化スズ,ITO,IZO,AZO,GZO,FTOの中から選択される少なくとも1つの物質であることが好ましい。なかでも,酸化珪素,酸化アルミニウム,酸化ジルコニウム,酸化チタンは,入手しやすく,比較的安価である。また,導電性を有するものであれば,反射膜20の電気抵抗の上昇を抑えることができる。
【0015】
このように,反射膜20中にナノ粒子25が存在することにより,ピンニング効果を発現し,銀の結晶粒21の成長を抑制することができる。これにより,発光装置のアッセンブリ工程の熱履歴による反射膜20の表面の凹凸化が抑えられ,反射膜20の鏡面を維持し,拡散反射を低減することができる。したがって,反射膜20は,反射率の高い反射膜を得られ,それにより光取り出し効率に優れた発光装置を得ることができる。
【0016】
なお,熱履歴による銀反射膜の表面の凹凸化の抑制手段として,ソリュートドラッグ効果を狙って銀に異種金属を添加することも提案されているが,異種金属は光吸収性が比較的高く,発光装置内の光散乱を考慮すれば無視できない光損失を生じる。しかしながら,本実施の形態におけるナノ粒子25を構成する物質は,透光性に優れ,光損失を極めて小さく抑えることができる。
【0017】
以下,反射膜20の好ましい形態について説明する。
【0018】
図1に示すように,ナノ粒子25は,銀の結晶粒界に少なくとも存在していることが好ましい。ナノ粒子25が銀の結晶粒界に存在することで,ピンニング効果により粒界移動を抑制しやすく,銀の結晶粒21の成長を効果的に抑制することができる。また,反射膜20の下地に存在する銅などの金属原子が反射膜20の銀の結晶粒界を拡散することを抑制し,反射膜20の表面に着色した酸化被膜が形成されることを抑制できる。さらに,空気中の酸素が反射膜20中に浸入し銀の結晶粒界を拡散するのを抑制し,下地金属の酸化を防止でき,反射膜20と下地金属との密着性を長期に維持することができる。したがって,反射膜20は,発光装置のアッセンブリ工程や連続駆動を経ても,高い光取り出し効率を維持し且つ下地金属との層間剥離を抑制でき,信頼性に優れた反射膜を得られる。また,反射膜20は,下地金属との間に別途バリア層を形成するよりも,このような効果を安価に得られると共に,本反射膜の上下の層構成を簡素にすることができる。
【0019】
ナノ粒子25の平均粒径は,0.1nm以上100nm以下であることが好ましく,更には0.1nm以上10nm未満であっても良い。このようにナノ粒子25の粒径が小さければ,少量の添加で,多くのナノ粒子25を反射膜20中に分散でき,銀の結晶粒21の成長を抑制しやすい。
【0020】
反射膜20のナノ粒子25の含有量は,反射膜20の反射率(初期反射率)の観点からは5wt%以下であることが好ましく,一方,銀の結晶成長の抑制の観点からは0wt%より大きければ良いが,0.2wt%以上であることが好ましい。また,反射膜20のより好ましいナノ粒子25の含有量は,反射膜20の反射率(初期反射率)の観点からは1.5wt%以上,銀の結晶成長の抑制の観点からは4wt%以下である。
【0021】
ナノ粒子25の形状は,球状,不定形破砕状,針状,柱状,板状(鱗片状を含む),繊維状,又は樹枝状などが挙げられる。中でも,ナノ粒子25が球状であることにより,可視光と干渉するレベルの比較的大きいナノ粒子25中へ光が進入しても,全反射を抑制し速やかに光を取り出すことができ,反射率に優れる反射膜20を得やすい。
【0022】
ナノ粒子25には,セレン化合物,硫黄化合物のいずれか一方又は両方が付着していることが好ましい。セレン化合物,硫黄化合物は,銀との化学親和力が高く,ナノ粒子25と銀との密着力を高めることができる。また,電解銀めっき,無電解銀めっき等の湿式法により銀膜を形成する場合には,ナノ粒子25を反射膜20中へ取り込みやすくすることができる。
【0023】
・・・(中略)・・・
【0025】
<実施の形態2>
図3(a)は実施の形態2に係る発光装置の概略上面図であり,図3(b)は図3(a)におけるB-B断面を示す概略断面図である。図3に示すように,実施の形態2に係る発光装置200は,発光素子10と,発光素子10の光を反射させる反射膜20と,を備えている。
【0026】
より詳細には,発光装置200は,表面実装型LEDである。発光装置200は,発光素子10と,発光素子10が載置される配線基板40と,配線基板40上において発光素子10を覆うように設けられた封止部材と,を備える。配線基板40は,正負一対の配線と,この配線を保持する母体と,を有する。発光素子10は,LED素子であり,配線基板40の配線に導電性接着剤で接続されている。なお,封止部材は,蛍光体や充填剤を含んでいてもよい。
【0027】
反射膜20は,このような発光装置にも用いられるものである。本実施の形態2では,反射膜20は,配線基板40の配線の表面に設けられている。反射膜20は,銀を主成分とする。そして,反射膜2は,透光性酸化物のナノ粒子25を含んでいる。なお,反射膜20は,配線の表面に限らず,配線基板40の表面に設けられていればよく,電気的に機能しなくてもよい。
【0028】
このような発光装置200及び配線基板40の反射膜20においても,実施の形態1の発光装置100とリード電極30と同様に,上述のような効果を奏することができる。」

(イ)以上から,引用例3には以下の技術事項が記載されているものと認められる。
「発光装置に用いられる反射膜であって,銀を主成分とし,透光性酸化物のナノ粒子を含み,反射膜中に存在するナノ粒子により,熱履歴による銀の結晶粒の成長を抑え,反射膜の表面の凹凸化を抑制することができるものであり,反射膜は,リード電極,あるいは,配線基板の配線の表面に設けられる。」

(2)対比
前記引用発明と本件発明1とを対比する。
ア 引用発明は,「少なくともn側電極1,n型窒化物半導体層2,発光領域3,p型窒化物半導体層4,p側電極5とを順に備えた窒化物半導体発光素子」であるところ,当該「n型窒化物半導体層2,発光領域3,p型窒化物半導体層4,」「とを順に備えた」部分は,本件発明1の「第2導電型半導体層,活性層,第1導電型半導体層が積層されてなる半導体積層体」に相当する。

イ 引用発明は,「少なくともn側電極1,n型窒化物半導体層2,発光領域3,p型窒化物半導体層4,p側電極5とを順に備えた窒化物半導体発光素子」であるところ,当該「p側電極5」は,本件発明1の「前記半導体積層体の第1導電型半導体層の上に設けられた第1電極部」に相当する。

ウ 引用発明は「前記p電極5上及び前記p側電極5から段差Aの位置まで積層方向に沿って,保護絶縁膜(保護絶縁膜61及び保護絶縁膜92)が形成されて」いる構成を備えるところ,「保護絶縁膜92としては,透明絶縁膜であるアルミナ(Al_(2)O_(3))が用いられ」ているから,当該「保護絶縁膜92」は本件発明1の「酸化物膜」に相当し,引用発明の前記構成と,本件発明1の「前記第1電極部の上にのみ設けられた酸化物膜」とは,「前記第1電極部の上に設けられた酸化物膜」である点で一致する。

エ 引用発明の「反射膜10は,p電極5上に直接全面に積層されておらず,小さなコンタクトホール18A,18Bを介して反射膜10の一部がp電極5に直接接触するように形成された部分と,保護絶縁膜61,92を間に挟んで反射膜として作用する部分とからな」るところ,当該「p電極5上に直接全面に積層されておらず,」「保護絶縁膜61,92を間に挟んで反射膜として作用する部分」は,本件発明1の「前記酸化物膜に接して設けられた反射膜」に相当する。

オ 引用発明の「反射膜10は,p電極5上に直接全面に積層されておらず,小さなコンタクトホール18A,18Bを介して反射膜10の一部がp電極5に直接接触するように形成された部分と,保護絶縁膜61,92を間に挟んで反射膜として作用する部分とからな」るところ,当該「小さなコンタクトホール18A,18Bを介」する「反射膜10の一部」は,本件発明1の「第2電極部」に相当するとともに,当該「小さなコンタクトホール18A,18Bを介して反射膜10の一部がp電極5に直接接触するように形成された部分」は,本件発明1の「前記第1電極部と電気的に接続される第2電極部」に相当する。

カ 引用発明の「反射膜10には,AlやAgなどの銀白色系の反射ミラーとして働く金属が用いられ」ることと,本件発明1の「前記反射膜は,銀を主成分とし,前記銀の結晶粒及び酸化物のナノ粒子を含」むこととは,「前記反射膜は,銀を主成分とする」点で一致する。

キ 引用発明の「反射膜10は,」「小さなコンタクトホール18A,18Bを介して反射膜10の一部がp電極5に直接接触するように形成された部分と,保護絶縁膜61,92を間に挟んで反射膜として作用する部分とからなり,電極としても作用」する構成について,「反射膜10」は一体のものとして構成され,前記各「部分」は電気的に接続されていると言えるから,当該構成は,本件発明1の「前記第2電極部と前記反射膜とは電気的に接続されている」ことに相当する。

ク 引用発明の「窒化物半導体発光素子」は,本件発明1の「発光素子」に相当する。

ケ よって,引用発明と本件発明1とは,
「 第2導電型半導体層,活性層,第1導電型半導体層が積層されてなる半導体積層体と,
前記半導体積層体の第1導電型半導体層の上に設けられた第1電極部と,
前記第1電極部の上に設けられた酸化物膜と,
前記酸化物膜に接して設けられた反射膜と,
前記第1電極部と電気的に接続される第2電極部と,を備え,
前記反射膜は,銀を主成分とし,
前記第2電極部と前記反射膜とは電気的に接続されている発光素子。」
である点で一致する。

コ 一方,両者は以下の各点で相違する。
《相違点1》
本件発明1は,「前記第1電極部の上にのみ設けられた酸化物膜」との構成を備えるが,引用発明は「前記第1電極部の上に設けられた酸化物膜」は備えるものの,「酸化物膜」が「前記第1電極部の上にのみ設けられ」る点までは特定されていない点。

《相違点2》
本件発明1は,「前記反射膜は,銀を主成分とし,前記銀の結晶粒及び酸化物のナノ粒子を含み,前記ナノ粒子は前記銀の結晶粒間に離散的に配置され」るとの構成を備えるのに対して,引用発明は「前記反射膜は,銀を主成分と」するとの構成は備えるものの,「前記銀の結晶粒及び酸化物のナノ粒子を含み,前記ナノ粒子は前記銀の結晶粒間に離散的に配置され」る構成までは備えない点。

(3)判断
まず相違点1について検討する。
ア 《相違点1》について
(ア)引用発明においては,「反射膜10は,p電極5上に直接全面に積層されておらず,小さなコンタクトホール18A,18Bを介して反射膜10の一部がp電極5に直接接触するように形成された部分と,保護絶縁膜61,92を間に挟んで反射膜として作用する部分」を有し,「保護絶縁膜92に用いられるアルミナは,反射膜10と保護絶縁膜61との間の密着性を高めて反射膜10の剥離を防ぐ接着層として作用するとともに,屈折率がGaNを含む半導体層,保護絶縁膜61,保護絶縁膜92の順に小さくなっていくので,全反射による光の取出効率が高くなるという働きがあ」るものである。
(イ)ところで,引用発明は,「チップ分離用やレーザーリフトオフ用の分離溝をエッチングにより形成する窒化物半導体発光素子であっても,発光領域に損傷が加わらず,劣化のない高輝度な窒化物半導体発光素子及び窒化物半導体発光素子製造方法を提供することを目的としている」(引用例1の段落【0012】)ものであり,そのために,「発光領域3よりもn側電極1側に段差Aを有し,前記p電極5上及び前記p側電極5から段差Aの位置まで積層方向に沿って,保護絶縁膜(保護絶縁膜61及び保護絶縁膜92)が形成されており」,これにより,「段差Aの位置から上側のチップ側面を保護絶縁膜(保護絶縁膜61及び保護絶縁膜92)で覆う構造とすることで,素子毎に分離するための分離溝をエッチングで形成する場合や,LLOによって発生するN_(2)ガスを排気するための分離溝をエッチングで形成する場合に,n型窒化物半導体層2の一部,発光領域である活性層3,p型窒化物半導体層4は保護絶縁膜により保護されるので,長時間エッチングガス(プラズマ)に曝されることがなく,素子の劣化を防止することができるもの」とされている。
(ウ)それゆえ,保護絶縁膜(保護絶縁膜61及び保護絶縁膜92)は,反射膜10の密着性,及び光の取出効率の観点から,p電極5上に設けられているとともに,上記各分離溝をエッチングで形成する際の,n型窒化物半導体層2の一部,発光領域である活性層3及びp型窒化物半導体層4の保護のために,p側電極5から段差Aの位置まで積層方向に沿って設けられているものであるから,前記保護絶縁膜(保護絶縁膜61及び保護絶縁膜92)をp電極5上のみに設けて,p側電極5から段差Aの位置まで積層方向に沿った部分には設けないようにすると,前記引用発明に係る目的が達成されないことになるから,そのような構成を採ることには阻害要因があるといえる。
(エ)よって,前記(1)イ(イ)及び同ウ(イ)に摘示した,引用例2及び3に記載された技術事項を勘案しても,引用発明において相違点1に係る構成を備えることは,当業者が容易に想到することができないものである。

イ したがって,《相違点2》について検討するまでもなく,本件発明1は引用発明並びに引用例2及び引用例3に記載された技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)請求項1を引用する請求項3?8,16及び17に係る発明は,本件発明1に係る構成を全て含むものであるから,上記(3)アの検討と同様に,引用発明並びに引用例2及び引用例3に記載された技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)請求項2,9及び10,並びにこれらの請求項を引用する請求項3?8,及び11?17に係る発明は,第2導電型半導体層の上にのみ酸化物膜を設けるか,若しくは,第1電極部の上にのみ窒化物膜または酸化物膜を設ける構成を備えるから,上記(3)アの検討と同様に,引用発明並びに引用例2及び引用例3に記載された技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(6)請求項18?25に係る製造方法の発明は,第1電極部の上にのみ窒化物膜または酸化物膜を設けるか,若しくは,第2導電型半導体層の上にのみ酸化物膜または窒化物膜を設ける工程を備える。
一方,前記(1)ア(ア)d及び同e(段落【0049】)に摘記したとおり,引用例1に記載された製造方法においては,各保護絶縁膜の形成に際しては,p電極上面から第1分離溝の下端まですべて覆うようにP-CVDやスパッタリングで形成しており,前記(3)ア(イ)及び同(ウ)で説示した事項も考慮すると,当該各保護絶縁膜を形成する段階について,p電極上面にのみ各保護絶縁膜を設ける工程を含むものとする動機は見いだせない。
よって,請求項18?25に係る製造方法の発明は,引用発明(製造方法)並びに引用例2及び引用例3に記載された技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 まとめ
よって,本件発明1?25は,引用発明並びに引用例2及び引用例3に記載された技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第5 むすび
以上のとおりであるから,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-10-08 
出願番号 特願2015-255467(P2015-255467)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大和田 有軌  
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 野村 伸雄
近藤 幸浩
発明の名称 発光素子及びその製造方法  

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