• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1355799
審判番号 不服2018-717  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-18 
確定日 2019-10-09 
事件の表示 特願2015-202777「基板上に導体が配列された装置および導体を形成する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月28日出願公開、特開2016- 66800〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2008年(平成20年)7月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年(平成19年)7月20日(米国)、2008年(平成20年)7月17日(米国))を国際出願日とする特願2010-517187号の一部を平成27年10月14日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は次のとおりである。
平成27年11月12日 :手続補正書
平成28年10月17日 :手続補正書
平成28年10月28日付け:拒絶理由通知書
平成29年 4月 4日 :意見書・手続補正書
平成29年 9月13日付け:拒絶査定(同年9月19日送達)
平成30年 1月18日 :審判請求書
平成30年 2月28日 :手続補正書(方式)
平成30年 9月28日付け:拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由通知書」という。)
平成31年 4月 2日 :意見書・手続補正書

第2 本願発明の認定
本願の請求項1?9に係る発明は、平成31年4月2日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項6に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「シリコン基板上に導体を形成する方法であって、
ほぼ純粋な銀のみからなる導体をシリコン基板上に堆積させるステップと、
堆積された前記導体と前記シリコン基板との間に金属間化合物を形成するのに有効な焼結温度で前記堆積された導体を焼結して、堆積された前記導体と前記基板との間に冶金接合を生じさせるステップとを含み、前記金属間化合物は、堆積された前記導体の材料と前記シリコン基板の材料とで形成され、
前記焼結は、冶金接合によって接着テープ試験ASTM D3359-02に合格するのに有効な導体が生じるように、有効な時間行なわれる、方法。」

第3 当審拒絶理由通知書で通知した拒絶理由の概要
当該拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)は、次の理由を含むものである。

本願発明は、その最先の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1又は引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

[引用文献等一覧]
引用文献1:特開2005-135942号公報
引用文献2:特表2002-511190号公報

第4 当審の判断
1 引用文献の記載事項の認定
(1)引用文献1
ア 当審が当審拒絶理由で引用した、優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1(特開2005-135942号公報)には、次の記載がある(下線は、当審が付した。以下同じ。)。

(ア)「【特許請求の範囲】」、
「凹凸を有するシリコン基体上にシリコンと共融する電極材料を配置し、該基体をシリコンと前記電極材料との共融温度以上に加熱した後に冷却させることにより、前記電極材料が形成された直下の基体表面の凹凸を平滑化することを特徴とする電極配設方法。」(【請求項1】)、
「前記電極材料がCu、Ag、Al、Sn、Au、Inから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の電極配設方法。」(【請求項2】)、
「前記電極材料中にシリコンに対するドーパントを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の電極配設方法。」(【請求項3】)、
「前記電極材料が金属ペーストを印刷・乾燥あるいは焼成することにより配置されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電極配設方法。」(【請求項5】)、
「凹凸を有するシリコン基体上にシリコンと共融する電極材料を配置し、誘導加熱手段により前記電極材料および前記電極材料直下のシリコン部分をシリコンと前記電極材料との共融温度以上に選択的に加熱した後に冷却させることにより、前記電極材料が形成された直下の基体表面の凹凸を平滑化することを特徴とする電極配設方法。」(【請求項7】)、
「前記電極材料がCu、Ag、Al、Sn、Au、Inから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項7に記載の電極配設方法。」(【請求項8】)、
「前記電極材料中にシリコンに対するドーパントを含むことを特徴とする請求項7又は8に記載の電極配設方法。」(【請求項9】)、
「前記電極材料が金属ペーストを印刷・乾燥あるいは焼成することにより配置されることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか一項に記載の電極配設方法。」(【請求項11】)、

(イ)「【技術分野】」、
「本発明は凹凸面上の電極配設方法に関し、特に高効率で量産性のある太陽電池表面の電極配設方法に関する。」(【0001】)

(ウ)「【発明を実施するための最良の形態】」、
「本発明の電極配設方法の一例を図1に示す。表面の凹凸102の高さが1μm乃至100μm程度のシリコン基板101に対してスクリーン印刷あるいはグラビア印刷等により、表面凹凸102上にCu、Ag、Al、Sn、AuまたはIn等の金属を含むペースト103を塗布・乾燥する(図1(a),(b))。次にシリコン基板をファーネス炉あるいは急速加熱炉等に投入して前記金属とシリコンとの共晶を形成する温度(共融温度)以上に加熱して金属103’を溶融して金属103’下の凹凸シリコンをその中に一部溶かし込んで平坦化を行う(図1(c))。例えばAg(銀)の場合、共融温度は830℃なので830℃以上に設定してしばらくその温度を維持する。その後シリコン基板101を冷却して金属103’中に溶け込んでいる過剰なシリコンを金属103’下のウエハ上に再析出させる(図1(d))。」(【0014】)、


「このように凹凸のある表面に印刷で金属ペーストを用いて電極パターンを形成しておき共融温度以上に加熱して一定時間置くことで、電極部直下の凹凸部分の平坦化が促進され、かつ平坦化した後の電極位置合わせ等の手間も不要となる。」(【0015】)、
「また、本発明の他の電極配設方法の例として上述と同様にして表面凹凸102上にCu、Ag、Al、Sn、AuまたはIn等の金属を含むペースト103を塗布・乾燥した後、誘導加熱手段により金属(電極)部分および金属(電極)直下のシリコン部分を前記金属とシリコンとの共融温度以上に選択的に加熱した後に冷却させることでも上述と同様に金属(電極)直下の平坦化を行うことができる。この場合、誘導加熱という手法を用いることで金属(電極)部分及びその周辺のみ選択的に加熱できる(特開平9-92946号公報、特開2001-230426号公報等参照)ので上述の基板全体を加熱する場合に比べて平坦化処理を短時間で行えるというメリットがあり、より生産性を上げることができる。」(【0016】)、
「さらに、上述の本発明の電極配設面の平坦化を行うに際して、特表2002-511190号公報に開示されているようにシリコンと共融合金を形成する金属(電極)材料に予めシリコンに対するドーパントを含有させておくことで、電極直下の平坦化した部分(再成長シリコン層)の導電型を制御することができ、電極に対するオーミック接触を容易とすることも可能である。」(【0017】)、
「一方、半導体基体上に導電ペースト等で電極を形成しその後熱処理を行うことで集電電極を形成する方法が広く知られており、例えば特開平6-37340号公報、特開平3-46985号公報等に開示されている。しかしながらこれらの技術は単に受光面側に対する電極の形成方法について教えているのみで、本発明のような金属とシリコンとの共融温度以上に加熱処理して電極直下のシリコン表面の平坦化を行うというものではない。」(【0018】)、
「本発明に使用される電極材料としてはシリコンと共融するものであれば何でも良いが、平坦化や後で電極として使用する観点から加熱したときにシリコンを多く溶かし込みかつ体積抵抗率の低い電極材料が選ばれ、Cu、Ag、Al、Sn、AuまたはIn等が好適に用いられる。これらの電極材料は印刷に適用できるようにガラスフリットやビヒクル、有機溶剤等と混ぜ合わせて金属ペースト状にしておくことができる。」(【0019】)、
「また本発明において電極材料が形成される基体表面の凹凸の高さの程度としては配設される電極材料の種類や厚さ等に関係し、後述する印刷による電極材料の厚さおよびその電極材料中に溶かし込めるシリコンの量を勘案して概ね1μm?100μmの範囲が好適である。」(【0020】)、
「本発明で電極材料を配設する手段として金属ペーストを印刷・乾燥あるいは焼成する方法が最も簡便で量産的であり、印刷法としてはスクリーン印刷、グラビア印刷あるいはオフセット印刷等が好適に用いられる。印刷で塗布される金属ペースト厚としては印刷法や塗布する電極のパターンによるが、スクリーン印刷では数μm?20μm程度、グラビア印刷やオフセット印刷では数μm?200μm程度とすることができる。また金属ペースト中に予めシリコンに対するドーパントを含有させておくことで、電極直下の平坦化した部分(再成長シリコン層)の導電型を制御することができ、電極に対するオーミック接触を容易とすることができる。」(【0021】)、
「本発明において、電極材料および電極材料直下のシリコン部分をシリコンと電極材料との共融温度以上に選択的に加熱する誘導加熱手段としては、加熱コイルと高周波電源からなる装置が簡便で好適に使用される。加熱コイルは導体(主に銅)パイプでできた巻線であり、その中に金属あるいは低抵抗材料からなる被加熱物を設置して加熱コイルに高周波電流を流すことにより被加熱物内にうず電流が流れ、ジュール熱により温度が上昇する。これが誘導加熱の原理であり、急速加熱、局所加熱が可能でランニングコストが低い等の特徴を有する。また本発明で使用される高周波電源としては被加熱物である電極材料の種類や膜厚、また基板の処理枚数等により適宜決められるが、概ね周波数としては数kHz?1000kHz、出力としては数十W?10kWの範囲のものが用いられ、好適にはそれぞれ、10kHz?800kHz、100W?10kWとするのが良い。」(【0022】)

(エ)「(実施例3)」、
「本例では図2に示す構成の方法により凹凸表面の平坦化を行った。まず、シリコン単結晶基板(p型、面方位(100))201の表面を2%KOH水溶液で温度80?90℃で異方性エッチングを行い、1μm?10μm程度の凹凸を有するテクスチャ表面202を形成した(図2(a))。テクスチャ化した基板表面に対してP_(2)O_(5)を含む拡散剤を塗布して860℃の温度でPの熱拡散を行ってn^(+)層を形成した(図示せず)。拡散終了後、表面の拡散剤をエッチングで除去した後にテクスチャ表面に図2(b)に示すようにスクリーン印刷により銀ペーストを厚さ20μmで塗布・乾燥し、表面電極203のパターンを形成した。次に高周波誘導加熱コイル206内に基板を投入して高周波電源205でコイル206に350kHz1kWの高周波電流を流した。これにより銀電極部およびその周辺部分のみを選択的に約860℃で10分間加熱し、銀電極内に充分シリコンを融解させ、銀電極下の凹凸部の平坦化を行った(図2(c))。その後徐々に温度を下げ(降温速度:-2.5℃/分)銀電極中に溶けていたシリコンを平坦化した表面に析出させた(図2(d))。このとき再析出させたシリコン層204表面の凹凸は0.3μm?2μm程度に平坦化されていた。」(【0027】)


(オ)「(実施例4)」、
「本例では図2に示す構成の方法により凹凸表面の平坦化および再成長層のドーピングを行った。まず、シリコン単結晶基板(p型、面方位(100))201の表面を2%KOH水溶液で温度80?90℃で異方性エッチングを行い、1μm?10μm程度の凹凸を有するテクスチャ表面202を形成した(図2(a))。テクスチャ化した基板表面に対してP_(2)O_(5)を含む拡散剤を塗布して860℃の温度でPの熱拡散を行ってn^(+)層を形成した(図示せず)。拡散終了後、表面の拡散剤をエッチングで除去した後にテクスチャ表面に図2(b)に示すようにグラビア印刷によりドーパントとしてP原子を含む銀ペーストを厚さ40μmで塗布・乾燥し、赤外線(IR)加熱炉で700℃2分の条件で焼成を行い表面電極203のパターンを形成した。次に高周波誘導加熱コイル206内に基板を投入して高周波電源205でコイル206に350kHz1kWの高周波電流を流した。これにより銀電極部およびその周辺部分のみを選択的に約860℃で10分間加熱し、銀電極内に充分シリコンを融解させ、銀電極下の凹凸部の平坦化を行った(図2(c))。その後徐々に温度を下げ(降温速度:-2.5℃/分)銀電極中に溶けていたシリコンを平坦化した表面に析出させた(図2(d))。このとき再析出させたシリコン層204には銀電極中に含まれるP原子が入り込んでドーピングされ、適当な濃度のエミッタ層(n^(+))が銀電極直下に形成された。再析出層表面の凹凸は0.3μm?2μm程度に平坦化されていた。」(【0028】)

イ 上記アによれば、引用文献1には、次の2つの発明(以下「引用発明1-1」、「引用発明1-2」という。)が記載されていると認められる。なお、引用発明の認定に用いた段落番号等を参考までに括弧内で示してある(以下同じ。)。
[引用発明1-1]
「凹凸を有するシリコン基体上にシリコンと共融する電極材料を配置し、該基体をシリコンと前記電極材料との共融温度以上に加熱した後に冷却することにより、前記電極材料が形成された直下の基体表面の凹凸を平滑化する電極配設方法であって、(【請求項1】)
前記電極材料がAgであり、(【請求項2】)
前記電極材料が金属ペーストを印刷・乾燥あるいは焼成することにより配置されるものであり、(【請求項5】)
Agの場合、共融温度は830℃なので830℃以上に設定してしばらくその温度を維持する、(【0014】)
電極配設方法。」

[引用発明1-2]
「シリコン単結晶基板(p型、面方位(100))201の表面を2%KOH水溶液で温度80?90℃で異方性エッチングを行い、1μm?10μm程度の凹凸を有するテクスチャ表面202を形成し、(【0027】)
テクスチャ化した基板表面に対してP_(2)O_(5)を含む拡散剤を塗布して860℃の温度でPの熱拡散を行ってn^(+)層を形成し、(【0027】)
拡散終了後、表面の拡散剤をエッチングで除去した後にテクスチャ表面にスクリーン印刷により銀ペーストを厚さ20μmで塗布・乾燥し、表面電極203のパターンを形成し、(【0027】)
次に高周波誘導加熱コイル206内に基板を投入して高周波電源205でコイル206に350kHz1kWの高周波電流を流し、これにより銀電極部およびその周辺部分のみを選択的に約860℃で10分間加熱し、銀電極内に充分シリコンを融解させ、銀電極下の凹凸部の平坦化を行い、(【0027】)
その後徐々に温度を下げ(降温速度:-2.5℃/分)銀電極中に溶けていたシリコンを平坦化した表面に析出させ、このとき再析出させたシリコン層204表面の凹凸は0.3μm?2μm程度に平坦化されていた、(【0027】)
電極配設方法。」

(2)引用文献2
ア 当審が当審拒絶理由で引用した、優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2(特表2002-511190号公報)には次の記載がある。

「要約すると、n型シリコンに対する自己ドーピングのn^(+)接点を作り出すための、リンによる前述のプロセスは次の通りである。
1.n型シリコン基板の前面にリンのドーパントを塗り(スピンオンした(spun-on)液体ドーパントは上に記述されているが、スクリーン印刷可能なペーストなどの他の方法も、同じように有効に作用すると期待されるだろう)、そして乾燥させる。
2.シリコン基板の裏面の、n^(+)接点が望まれるそれらの領域に、銀を塗り(スパッタリングされた銀は上に記述されているが、スクリーン印刷可能な銀ペーストなどの他の方法も、同じように有効に作用すると期待されるだろう)、そしてその基板を加熱炉に入れる。重量で1.1%アンチモンと98.9%の銀の混合物が上記のプロセスで実際に適用されたが、リンがドーパントとして作用するここに記述されたプロセスに関しては、アンチモンの存在は不適切であったと予想される。
3.その加熱炉の周囲ガスによって囲まれているそのシリコン基板の温度を、銀がシリコンと混じって合金になり、リンのドーパントが蒸発する値まで上げる。前述の利用された周囲ガスは純粋なアルゴンである。しかし、他の不活性ガスも受け入れられると予想されるだろう。さらに、露出されたシリコン表面の酸化が望まれるかどうかによっては、周囲ガスの中へ酸素を混ぜられるかもしれない。上記の加熱温度は、900℃または950℃のいずれかであるが、850℃?1000℃の範囲の温度が受け入れられると予想される。蒸発したリン原子は、加熱炉の周囲ガスと混合し、その幾分かは溶融した銀に届き、銀に吸収される。
4.適当量のドーパント原子が銀によって吸収されるだけ充分に長く、しかしその銀に隣接しているシリコンの表面がドーパント原子をかなりの量吸収できるほど長くはなく、その温度を保つ。上記に記述したプロセスで、加熱時間は2分であった。
5.次いで、そのシリコン基板の温度を、銀-シリコンの共融温度より低くする。そして、シリコンが、液相エピタキシを通して再凝固する(resolidify)ので、ドーパントのリン原子が再形成された格子に組み込まれる。
この5段階のプロセスを、シリコンへの自己ドーピングのn^(+)接点を作り出すプロセスとして次の通り一般化できる。
1.シリコン基板の第1の側面上の、n^(+)接点が望まれるそれらの領域に、銀を塗って、その基板を加熱炉に入れる。
2.加熱炉の周囲ガスによって囲まれているシリコン基板の温度を、銀がシリコンとの溶融合金を生成するようにシリコン-銀の共融温度より上の値まで上げる。
3.リン蒸気の供給源を加熱炉の周囲ガスに導入する。
4.次いで、蒸発したリン原子は加熱炉の周囲ガスと混合される。その混合ガスの幾分かは溶融した銀に届き、そこで溶融した銀-シリコン混合物によって、固体シリコンの表面によって吸収されるよりより多く吸収される。
5.適当量のドーパント原子が銀によって吸収されるだけ充分に長く、しかしその銀に隣接しているシリコンの表面がドーパント原子をかなりの量吸収できるほど長くはなく、その温度を保つ。
6.次いで、そのシリコン基板の温度を、銀-シリコンの共融温度より低くする。そしてシリコンが、液相エピタキシを通して再凝縮して、ドーパントのリン原子がその再形成された格子の中に組み込まれる。」(30頁下から7行?32頁10行)

イ 上記アの記載によれば、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「n型シリコン基板の前面にリンのドーパントを塗り、そして乾燥させ、
シリコン基板の裏面の、n^(+)接点が望まれるそれらの領域に銀をスクリーン印刷可能な銀ペーストにして塗り、そしてその基板を加熱炉に入れ、
その加熱炉の周囲ガスによって囲まれているそのシリコン基板の温度を、銀がシリコンと混じって合金になり、リンのドーパントが蒸発する値まで上げ、上記の加熱温度は、900℃または950℃のいずれかであるが、850℃?1000℃の範囲の温度が受け入れられ、蒸発したリン原子は、加熱炉の周囲ガスと混合し、その幾分かは溶融した銀に届き、銀に吸収され、
適当量のドーパント原子が銀によって吸収されるだけ十分に長く、しかしその銀に隣接しているシリコンの表面がドーパント原子をかなりの量吸収できるほど長くはなく、その温度を保ち、加熱時間は2分であり、
次いで、そのシリコン基板の温度を、銀-シリコンの共融温度より低くし、そして、シリコンが、液相エピタキシを通して再凝固するので、ドーパントのリン原子が再形成された格子に組み込まれる、(30頁下から5行?31頁下から8行)
n型シリコンに対する自己ドーピングのn^(+)接点を作り出すための(30頁下から7行?下から6行)
方法。」

2 引用発明1-1に基づく新規性欠如について
(1)本願発明と引用発明1-1との対比
ア 本願発明の「シリコン基板上に導体を形成する方法であって、」との特定事項について
(ア)引用発明1-1の「凹凸を有するシリコン基体」は、本願発明の「シリコン基板」に相当する。

(イ)引用発明1-1は、「電極配設方法」に係るものであるから、上記(ア)にも照らせば、本願発明の「シリコン基板上に導体を形成する方法」であるといえる。

(ウ)よって、引用発明1-1は、本願発明の「シリコン基板上に導体を形成する方法であって、」との特定事項を備える。

イ 本願発明の「ほぼ純粋な銀のみからなる導体をシリコン基板上に堆積させるステップと、」との特定事項について
(ア)引用発明1-1の「電極材料」である「Ag」は、本願発明の「ほぼ純粋な銀のみからなる導体」に相当する。

(イ)引用発明1-1は、「前記電極材料が金属ペーストを印刷・乾燥あるいは焼成することにより配置されるものであ」るから、上記(ア)にも照らせば、本願発明でいう「ほぼ純粋な銀のみからなる導体をシリコン基板上に堆積させ」ていることになる。

(ウ)よって、引用発明1-1は、本願発明の「ほぼ純粋な銀のみからなる導体をシリコン基板上に堆積させるステップと、」との特定事項を備える。

ウ 本願発明の「堆積された前記導体と前記シリコン基板との間に金属間化合物を形成するのに有効な焼結温度で前記堆積された導体を焼結して、堆積された前記導体と前記基板との間に冶金接合を生じさせるステップとを含み、前記金属間化合物は、堆積された前記導体の材料と前記シリコン基板の材料とで形成され、
前記焼結は、冶金接合によって接着テープ試験ASTM D3359-02に合格するのに有効な導体が生じるように、有効な時間行なわれる、」との特定事項について

(ア)まず、本願発明の上記特定事項が、実質的に何を意味しているのかについて検討する。
a 本願明細書には次の記載がある。
(a)「特定の実施例において、当該方法は、焼結された導体をさらなる材料で電気めっきするステップをさらに含み得る。一部の実施例において、焼結温度は850℃を上回り得る。特定の実施形態において、導体は銀として構成され得、基板はシリコンとして構成され得る。特定の実施例において、当該方法は、導体を基板上に堆積させる前に基板上に金属を堆積させるステップと、堆積された金属を焼結して、堆積された金属および基板から形成される別の金属間化合物を生じさせるステップとをさらに含み得る。一部の実施例において、焼結は、冶金接合によって接着テープ試験ASTM D3359-02に合格するのに有効な導体が生じるように、有効な時間行なわれ得る。」(【0008】)

(b)「特定の実施例によれば、基板と、基板上に配列された導体とを含む装置が提供される。一部の実施例において、導体および基板は各々が、互いに溶解しない材料を含み得る。たとえば、図1に示す状態図を参照して、銀およびシリコンは互いに溶解しない材料である。特に、純銀は概してシリコンに溶解せず、約835℃未満の温度でシリコン基板に銀を接合することは困難となる。約835℃を上回る温度では、2つの材料は冶金接合を生じ得る。シリコン自体はほぼ不活性材料であり、約400℃未満の温度では金属と反応しない(または、ごく低速で反応する)。したがって、互いに溶解しない材料を合せて使用することにはいくつかの課題があるが、少なくともその一部は、本明細書に開示される技術の特定の実施形態を用いて克服される。」(【0015】)

(c)「図2Aを参照して、装置200は、導体220が上に配列された基板210を含む。基板210は、装置200の使用目的に応じて、さまざまな形態を取り、かつさまざまな材料を含み得る。一部の実施例では、基板210は、約12cm?約25cm幅×約12cm?約25cm長さ×約0.01cm?約0.025cm厚さであり得る。図2Bを参照し、第1の材料270および第2の材料280を含む導体が基板上に配列された基板260を含む装置250の側面図を示す。特定の実施例では、第1の材料270および第2の材料280は互いに溶解しない場合がある。基板260への全体的な接着力を向上させるために、材料270および280は材料同士および/または材料と基板との間に金属間化合物を形成するのに有効な焼結温度にて焼結され、たとえば、堆積された材料と基板との間に冶金接合を生じさせ得る。」(【0016】)

(d)「一部の実施例において、導体が基板上に配列され、次いで基板との間に冶金接合を生じさせるために有効な温度で加熱または焼結され得る。本明細書で用いられる「冶金接合」は、金属と、同じく金属であり得る別の材料との間の、クラック、空隙または不連続性が実質的に存在しない接合である。冶金接合は、ある材料が別の材料中に拡散すると形成され得る。いずれかの特定の化学理論に縛られることを望むものではないが、冶金接合の形成によって、互いに溶解しない材料同士の間、または材料の一方がほぼ不活性である材料同士の間に良好な接着力が生じる。一部の実施例において、冶金接合は、上昇させた温度にて材料を加熱または焼結させることによって生じ得る。この処理の概略図を図3A?図3Cに示す。基板300を図3Aに示す。まず導体310が基板300上に堆積され、装置320をもたらす(図3B)。装置320は焼結温度にて加熱され、導体310と基板300との間に冶金接合を生じさせ、装置330をもたらす(図3C)。冶金接合を生じさせるのに用いられる正確な温度は、導体および基板に存在する材料に少なくとも部分的に依存する。銀が導体として用いられ、シリコンが基板として用いられる実施例において、冶金接合を生じさせるには、焼結温度は約835℃以上である。ニッケルが導体として用いられ、シリコンが基板として用いられる実施例において、冶金接合を生じさせるには、焼結温度は約450℃以上である。さらなる好適な焼結温度は、本開示の恩恵があれば、特有の導体および基板についてこのような導体および基板の物理的特性を用いて、当業者によって容易に選択されるであろう。」(【0034】)

(e)「特定の実施例によれば、導体と基板との間に1つ以上の金属間化合物が生じるかまたは形成され得る。本明細書で使用される「金属間化合物」という用語は、少なくともそのうちの2つが金属またはメタロイドであって、新たな化合物または合金を生じさせる2つ以上の材料の接合または相互作用を指す。金属間化合物は、導体と基板との間の冶金接合を強化し得るか、または特定の実施例においては冶金接合を生じさせ得る。金属間化合物を生じさせるのに使用され得る例示的な金属は、限定はしないが、銀、金、銅、白金、パラジウム、ニッケル、アルミニウム、スズ、およびそれらの合金などの遷移金属を含む。金属間化合物を生じさせるのに使用され得る例示的なメタロイドは、限定はしないが、ボロン、シリコン、ゲルマニウム、ヒ素、テルル、ヒ素、アンチモンを含む。一部の実施例において、炭素の同素体(たとえば黒鉛)、リン(たとえば黒色リン)、スズ(たとえば白色スズ)、セレン(たとえば三方晶形)も、金属間化合物を生じさせるためのメタロイドとして使用され得る。一部の実施例において、金属間化合物は、導体の少なくとも1つの材料と、基板の少なくとも1つの材料とから形成され得る。たとえば、導体を基板上に堆積させた後、基板と導体との界面に金属間化合物が形成されることによって接合が強化されるように、アセンブリ全体を加熱し得る。このような金属間化合物の形成は、導体の材料が基板に対してほとんどまたは全く接着性を有していない場合、たとえば導体が接着テープ試験に不合格となる場合に特に望ましい。例示的な金属間化合物は、限定はしないが、銀とシリコンとの間に形成されたもの、パラジウムとシリコンとの間に形成されたもの、金とシリコンとの間に形成されたもの、銅とシリコンとの間に形成されたもの、白金とシリコンとの間に形成されたもの、ニッケルとシリコンとの間に形成されたもの、シリコンと、2つ以上の伝導性材料の混合物、たとえば銀、金、パラジウム、銅、白金、ニッケルなどのうち2つ以上の混合物との間に形成されたものを含む。」(【0036】)

(f)「特定の実施例によれば、導体を基板上に形成する方法が提供される。特定の実施例において、当該方法は、導体を基板上に堆積させるステップと、堆積された導体と基板との間に金属間化合物を生じさせるのに有効な焼結温度で印刷された導体を焼結するステップとを含む。一部の実施例において、焼結された導体は、たとえば電気めっきまたは他の材料堆積処理によって、1つ以上のさらなる材料を受入れ得る。特定の実施例において、焼結温度は、堆積された導体と基板とで形成される1つ以上の金属間化合物を生じさせるのに有効であり得る。他の実施例において、当該方法は、上記のように、焼結された導体を少なくとも1つのさらなる材料で電気めっきするステップをさらに含み得る。一部の実施例において、本明細書に開示される方法によって、他の方法では互いに溶解せず、互いに接着する傾向がないほぼ純粋な銀とシリコン基板とを使用することが可能となる。特定の実施例において、当該方法は、導体を基板上に堆積させる前に基板上に金属を堆積させるステップと、堆積された金属を焼結して別の金属間化合物を生じさせるステップとをさらに含み得る。このようなさらなる金属の堆積は、たとえば、導体および基板が、適切な冶金接合をもたらすことができる金属間化合物そのものを実質的に形成しない場合に有用であり得る。一部の実施例において、導体と基板との間、または導体と基板と介在する1つ以上の層もしくはコーティングとの間のいずれかに冶金接合が形成されることによって、接着テープ試験ASTM D3359-02に合格するのに有効な導体が得られる。」(【0046】)

(g)「特定の実施例によれば、導電体を形成する方法であって、銀ナノインクをシリコン基板上にインクジェット印刷するステップと、印刷された銀ナノインク導体が接着テープ試験ASTM D3359-02に合格するような有効な温度で、印刷された銀ナノインクとシリコン基板とを加熱するステップとを含む方法が提供される。インクジェット印刷は、たとえば本明細書のいずれかの箇所に記載されるように行われ得る。同様に、銀ナノインクは、上記のように、かつ引用によって本明細書に援用される共通の譲受人に譲渡された特許出願に記載されるように精製され得る。焼結温度は、選択される材料に少なくとも部分的に依存し、特定の実施例においては、焼結温度は、冶金接合および/または金属間化合物が生じるように十分高く、銀およびシリコンについてはたとえば約835℃以上である。一部の実施例において、当該方法は、印刷された銀ナノインクを、たとえば銅または他の好適な材料で電気めっきするステップをさらに含み得る。他の実施例において、当該方法は、シリコン基板上に導体を選択された線またはパターンで印刷するステップをさらに含み得る。」(【0047】)

(h)「【実施例1】」、
「銀線をシリコン基板上に堆積させ、300℃で焼結し、300℃の温度で焼結された銀線上に、200g/LのCuSO_(4)および50g/LのH_(2)SO_(4)を含む銅槽において銅を直接電気めっきした。電気めっき後、図4Aに示すように、印刷された/めっきされた構造がシリコン基板から剥離した。」(【0049】)、
「これに対し、同じ焼結された銀線を電気めっき前に30秒間850℃で熱処理すると、図4Bに示すように、電気めっきすることができ、電気めっき後に接着テープ試験(2002年8月10日付けASTM D3359-02)に容易に合格した。」(【0050】)

(g)図1として次の図。

b 上記aからすると、次の事実が認められる。
(a)銀とシリコンは、約835℃以上の温度(例えば、850℃)で、冶金接合を生じること(【0034】、【0047】、【0050】、図1)。
すなわち、【0034】には、「銀が導体として用いられ、シリコンが基板として用いられる実施例において、冶金接合を生じさせるには、焼結温度は約835℃以上である」と記載されており、【0047】にも、「焼結温度は、冶金接合および/または金属間化合物が生じるように十分高く、銀およびシリコンについてはたとえば約835℃以上である」と記載されている。そして、これらの記載事項は、図1が、銀とシリコンとが約835℃以上の温度になると液相を構成し始めるという意味で、「約835℃」という温度に臨界的意義があることを示していることからも、裏付けられる。さらに、【0050】には、本願発明の実施例として、銀線が「30秒間850℃で熱処理」される例が記載されている。

(b)銀とシリコンとの冶金接合が生じると、その接合部に、銀とシリコンとの金属間化合物が存在すること(【0034】、【0036】)。
すなわち、【0034】には、「『冶金接合』は、金属と、同じく金属であり得る別の材料との間の、クラック、空隙または不連続性が実質的に存在しない接合である。冶金接合は、ある材料が別の材料中に拡散すると形成され得る。」と記載されているから、銀とシリコンとの「冶金接合」がなされている部位には、シリコンが銀中に(ないし銀がシリコン中に)拡散されていると解される。そして、【0036】には、「『金属間化合物』という用語は、少なくともそのうちの2つが金属またはメタロイドであって、新たな化合物または合金を生じさせる2つ以上の材料の接合または相互作用を指す。金属間化合物は、導体と基板との間の冶金接合を強化し得るか、または特定の実施例においては冶金接合を生じさせ得る。」と記載されるとともに、「金属間化合物を生じさせるのに使用され得る例示的な金属は、・・・銀」であり、「金属間化合物を生じさせるのに使用され得る例示的なメタロイドは、・・・シリコン」であると記載されているから、シリコンが銀中に(ないし銀がシリコン中に)拡散されている構造が、本願発明では「金属間化合物」と称されていると解される。よって、銀とシリコンとの冶金接合が生じると、その接合部に、銀とシリコンとの金属間化合物が存在することになる。

(c)冶金接合によって接着テープ試験ASTM D3359-02に合格するのに有効な導体を得るためには、焼結時間を有効な時間(例えば、850℃で30秒間)とすればよいこと(【0008】、【0050】)。
すなわち、【0008】には、「焼結は、冶金接合によって接着テープ試験ASTM D3359-02に合格するのに有効な導体が生じるように、有効な時間行なわれ得る」と記載されている。そして、【0050】には、本願発明の実施例として、銀線が「30秒間850℃で熱処理」される例が記載されている。

c 上記bによれば、本願発明の上記特定事項は、ほぼ純粋な銀のみからなる導体と、その導体が堆積されたシリコン基板とを、約835℃以上の温度(例えば、850℃)、かつ、接着テープ試験ASTM D3359-02に合格する程度の時間(例えば、30秒間)で、加熱し焼結させることを意味するものと解される。

(イ)上記(ア)cの理解を前提に、引用発明1-1が、本願発明の上記特定事項を備えているかどうかについて検討する。
a まず、引用発明1-1は、「前記電極材料が金属ペーストを印刷・乾燥あるいは焼成することにより配置されるもの」であるから、上記ア及びイにも照らせば、「ほぼ純粋な銀のみからなる導体と、その導体が堆積されたシリコン基板と」が、「加熱」され「焼結」されているものと認められる。

b 次に、引用発明1-1は、「シリコン基体」と「Ag」とを「共融温度」である「830℃以上に設定してしばらくその温度を維持する」ものである。そして、「共融温度」とは、Agとシリコンとが共晶を形成する温度(引用文献1の【0014】)を意味するものであるから、「830℃以上」という温度は、Agとシリコンとが共晶を形成する温度以上の温度を意味していることになる。
他方で、本願発明(上記(ア)c)の「約835度」という温度は、本願の図1の状態図によれば、Agとシリコンとが共晶を形成する温度であると理解されるから、「約835度以上」という温度は、Agとシリコンとが共晶を形成する温度以上の温度を意味していることになる。
このように、本願発明(上記(ア)c)の「約835度以上」という温度と、引用発明1-1の「830℃以上」という温度とは、いずれも、Agとシリコンとが共晶を形成する温度以上の温度であるという意味で技術的に同じである。しかも、引用発明1-1における「830℃以上」という温度としては、例えば、「約860℃」(【0027】)が想定されているところ、この「約860℃」という温度は、まさに、本願発明(上記(ア)c)の「約835度以上」という温度を満たしている。
よって、引用発明1-1における「ほぼ純粋な銀のみからなる導体と、その導体が堆積されたシリコン基板と」の「加熱」及び「焼結」は、「約835℃以上の温度」においてなされているといえる。

c そして、引用発明1-1は、「共融温度」以上の温度が、「しばらく」維持されるものである。
ここで、「しばらく」の意味について検討すると、引用文献1の【0027】は、銀ペースト(これは、引用発明1-1と同様の材料である。)が用いられた場合に、「約860℃で10分間」加熱していることを記載しているのであるから、「しばらく」とは、短くとも分単位の時間を意味するものと解される。
よって、引用発明1-1における「ほぼ純粋な銀のみからなる導体と、その導体が堆積されたシリコン基板と」の「加熱」及び「焼結」の時間は、「接着テープ試験ASTM D3359-02に合格する程度の時間」であると認められる。

(ウ)上記(ア)及び(イ)によれば、引用発明1-1は、「堆積された前記導体と前記シリコン基板との間に金属間化合物を形成するのに有効な焼結温度で前記堆積された導体を焼結して、堆積された前記導体と前記基板との間に冶金接合を生じさせるステップとを含み、前記金属間化合物は、堆積された前記導体の材料と前記シリコン基板の材料とで形成され、
前記焼結は、冶金接合によって接着テープ試験ASTM D3359-02に合格するのに有効な導体が生じるように、有効な時間行なわれる、」との特定事項を備える。

(2)一致点及び相違点の認定
上記(1)によれば、本願発明と引用発明1-1とは、
「シリコン基板上に導体を形成する方法であって、
ほぼ純粋な銀のみからなる導体をシリコン基板上に堆積させるステップと、
堆積された前記導体と前記シリコン基板との間に金属間化合物を形成するのに有効な焼結温度で前記堆積された導体を焼結して、堆積された前記導体と前記基板との間に冶金接合を生じさせるステップとを含み、前記金属間化合物は、堆積された前記導体の材料と前記シリコン基板の材料とで形成され、
前記焼結は、冶金接合によって接着テープ試験ASTM D3359-02に合格するのに有効な導体が生じるように、有効な時間行なわれる、方法。」
で一致し、相違点は存在しない。

(3)判断
したがって、本願発明は、引用発明1-1である。

(4)請求人の主張について
請求人は、引用文献1に記載された発明が、銀ペースト層がドーパントとしてリン原子を含んでいる旨を主張し、その具体例として【0028】の記載を挙げる。
しかしながら、引用発明1-1は、銀ペーストがドーパントを含まない態様を念頭に認定されたものである。そして、引用文献1に記載された発明が、銀ペーストにドーパントを含まない態様を含むことは、次の事実、すなわち、引用文献1の特許請求の範囲において、請求項3(電極材料がドーパントを含むことが特定されている。)が請求項1の従属項として存在していること、【0017】において、金属材料にあらかじめシリコンに対するドーパントを含有させておく態様が、必須ではなく任意であると位置づけられていると解されること、さらに、【0027】記載の実施例3(【0028】記載の実施例4とは異なり、銀ペーストがドーパントとしてP原子を含むことを記載していない。)が存在していること、からみても、明らかである。
よって、請求人の主張は採用できない。

(5)引用発明1-1に基づく新規性欠如についての小括
このように、本願発明は、引用発明1-1であるから、特許法第29条第1項第3号に該当する。

3 引用発明1-2に基づく新規性欠如について
(1)本願発明と引用発明1-2との対比
ア 本願発明の「シリコン基板上に導体を形成する方法であって、」との特定事項について
(ア)引用発明1-2の「シリコン単結晶基板(p型、面方位(100))201の表面を2%KOH水溶液で温度80?90℃で異方性エッチングを行い、1μm?10μm程度の凹凸を有するテクスチャ表面202を形成し」た「シリコン単結晶基板201」は、本願発明の「シリコン基板」に相当する。

(イ)引用発明1-2は、「電極配設方法」に係るものであるから、上記(ア)にも照らせば、本願発明の「シリコン基板上に導体を形成する方法」であるといえる。

(ウ)よって、引用発明1-2は、本願発明の「シリコン基板上に導体を形成する方法であって、」との特定事項を備える。

イ 本願発明の「ほぼ純粋な銀のみからなる導体をシリコン基板上に堆積させるステップと、」との特定事項について
(ア)引用発明1-2の「銀ペースト」に含まれる導体は、「銀」のみであると解されるから、引用発明1-2の「銀ペースト」に含まれる「銀」は、本願発明の「ほぼ純粋な銀のみからなる導体」に相当する。

(イ)引用発明1-2は、「テクスチャ表面にスクリーン印刷により銀ペーストを厚さ20μmで塗布・乾燥し、表面電極203のパターンを形成」するものであるから、上記(ア)にも照らせば、本願発明でいう「ほぼ純粋な銀のみからなる導体をシリコン基板上に堆積させ」ていることになる。

(ウ)よって、引用発明1-2は、本願発明の「ほぼ純粋な銀のみからなる導体をシリコン基板上に堆積させるステップと、」との特定事項を備える。

ウ 本願発明の「堆積された前記導体と前記シリコン基板との間に金属間化合物を形成するのに有効な焼結温度で前記堆積された導体を焼結して、堆積された前記導体と前記基板との間に冶金接合を生じさせるステップとを含み、前記金属間化合物は、堆積された前記導体の材料と前記シリコン基板の材料とで形成され、
前記焼結は、冶金接合によって接着テープ試験ASTM D3359-02に合格するのに有効な導体が生じるように、有効な時間行なわれる、」との特定事項について
(ア)上記特定事項の意味は、上記2(1)ウ(ア)cのとおりであると解されるので、それを踏まえて検討する。
a 引用発明1-2は、「テクスチャ表面にスクリーン印刷により銀ペーストを厚さ20μmで塗布・乾燥し、表面電極203のパターンを形成し、」、「次に高周波誘導加熱コイル206内に基板を投入して高周波電源205でコイル206に350kHz1kWの高周波電流を流し、これにより銀電極部およびその周辺部分のみを選択的に約860℃で10分間加熱し」たものである。
よって、引用発明1-2は、上記ア及びイにも照らせば、「ほぼ純粋な銀のみからなる導体と、その導体が堆積されたシリコン基板と」が、「加熱」され「焼結」されているものと認められる。

b 次に、引用発明1-2は、「シリコン単結晶基板201」と「銀」とを「約860℃で10分間加熱」するものであるから、引用発明1-1における「ほぼ純粋な銀のみからなる導体と、その導体が堆積されたシリコン基板と」の「加熱」及び「焼結」は、「約835℃以上の温度」において、「接着テープ試験ASTM D3359-02に合格する程度の時間」なされていると認められる。

(イ)よって、引用発明1-2は、本願発明の「堆積された前記導体と前記シリコン基板との間に金属間化合物を形成するのに有効な焼結温度で前記堆積された導体を焼結して、堆積された前記導体と前記基板との間に冶金接合を生じさせるステップとを含み、前記金属間化合物は、堆積された前記導体の材料と前記シリコン基板の材料とで形成され、
前記焼結は、冶金接合によって接着テープ試験ASTM D3359-02に合格するのに有効な導体が生じるように、有効な時間行なわれる、」との特定事項を備える。

(2)一致点及び相違点の認定
上記(1)によれば、本願発明と引用発明1-2とは、
「シリコン基板上に導体を形成する方法であって、
ほぼ純粋な銀のみからなる導体をシリコン基板上に堆積させるステップと、
堆積された前記導体と前記シリコン基板との間に金属間化合物を形成するのに有効な焼結温度で前記堆積された導体を焼結して、堆積された前記導体と前記基板との間に冶金接合を生じさせるステップとを含み、前記金属間化合物は、堆積された前記導体の材料と前記シリコン基板の材料とで形成され、
前記焼結は、冶金接合によって接着テープ試験ASTM D3359-02に合格するのに有効な導体が生じるように、有効な時間行なわれる、方法。」
で一致し、相違点は存在しない。

(3)判断
したがって、本願発明は、引用発明1-2である。

(4)請求人の主張について
上記2(4)と同様であるところ、引用発明1-2も、銀ペーストがドーパントを含まない態様を念頭に認定されたものである。
また、引用発明1-2の「テクスチャ化した基板表面に対してP_(2)O_(5)を含む拡散剤を塗布して860℃の温度でPの熱拡散を行ってn^(+)層を形成」する点については、本願発明との相違点を構成するとは解されない。
よって、請求人の主張は採用できない。

(5)引用発明1-2に基づく新規性欠如についての小括
このように、本願発明は、引用発明1-2であるから、特許法第29条第1項第3号に該当する。

4 引用発明2に基づく新規性欠如について
(1)本願発明と引用発明2との対比
ア 本願発明の「シリコン基板上に導体を形成する方法であって、」との特定事項について
(ア)引用発明2の「n型シリコン基板」は、本願発明の「シリコン基板」に相当する。

(イ)引用発明2は、「n型シリコンに対する自己ドーピングのn^(+)接点を作り出すための方法」に係るものであるから、上記(ア)にも照らせば、本願発明の「シリコン基板上に導体を形成する方法」であるといえる。

(ウ)よって、引用発明2は、本願発明の「シリコン基板上に導体を形成する方法であって、」との特定事項を備える。

イ 本願発明の「ほぼ純粋な銀のみからなる導体をシリコン基板上に堆積させるステップと、」との特定事項について
(ア)引用発明2の「銀ペースト」に含まれる導体は、「銀」のみであると解されるから、引用発明2の「銀ペースト」に含まれる「銀」は、本願発明の「ほぼ純粋な銀のみからなる導体」に相当する。

(イ)引用発明2は、「シリコン基板の裏面の、n^(+)接点が望まれるそれらの領域に銀をスクリーン印刷可能な銀ペーストにして塗」るものであるから、上記(ア)にも照らせば、本願発明でいう「ほぼ純粋な銀のみからなる導体をシリコン基板上に堆積させ」ていることになる。

(ウ)よって、引用発明2は、本願発明の「ほぼ純粋な銀のみからなる導体をシリコン基板上に堆積させるステップと、」との特定事項を備える。

ウ 本願発明の「堆積された前記導体と前記シリコン基板との間に金属間化合物を形成するのに有効な焼結温度で前記堆積された導体を焼結して、堆積された前記導体と前記基板との間に冶金接合を生じさせるステップとを含み、前記金属間化合物は、堆積された前記導体の材料と前記シリコン基板の材料とで形成され、
前記焼結は、冶金接合によって接着テープ試験ASTM D3359-02に合格するのに有効な導体が生じるように、有効な時間行なわれる、」との特定事項について
(ア)上記特定事項の意味は、上記2(1)ウ(ア)cのとおりであると解されるので、それを踏まえて検討する。
a 引用発明2は、「シリコン基板の裏面の、n^(+)接点が望まれるそれらの領域に銀をスクリーン印刷可能な銀ペーストにして塗り、そしてその基板を加熱炉に入れ」、「上記の加熱温度は、900℃または950℃のいずれかであるが、850℃?1000℃の範囲の温度が受け入れられ」、「加熱時間は2分であ」る。
よって、引用発明2は、上記ア及びイにも照らせば、「ほぼ純粋な銀のみからなる導体と、その導体が堆積されたシリコン基板と」が、「加熱」され「焼結」されているものと認められる。

b 引用発明2は、「シリコン基板」と「銀」とを「900℃または950℃のいずれかであるが、850℃?1000℃の範囲の温度」で、「2分」加熱するものであるから、引用発明2における「ほぼ純粋な銀のみからなる導体と、その導体が堆積されたシリコン基板と」の「加熱」及び「焼結」は、「約835℃以上の温度」において、「接着テープ試験ASTM D3359-02に合格する程度の時間」なされていると認められる。

(イ)よって、引用発明2は、本願発明の「堆積された前記導体と前記シリコン基板との間に金属間化合物を形成するのに有効な焼結温度で前記堆積された導体を焼結して、堆積された前記導体と前記基板との間に冶金接合を生じさせるステップとを含み、前記金属間化合物は、堆積された前記導体の材料と前記シリコン基板の材料とで形成され、
前記焼結は、冶金接合によって接着テープ試験ASTM D3359-02に合格するのに有効な導体が生じるように、有効な時間行なわれる、」との特定事項を備える。

(2)一致点及び相違点の認定
上記(1)によれば、本願発明と引用発明2とは、
「シリコン基板上に導体を形成する方法であって、
ほぼ純粋な銀のみからなる導体をシリコン基板上に堆積させるステップと、
堆積された前記導体と前記シリコン基板との間に金属間化合物を形成するのに有効な焼結温度で前記堆積された導体を焼結して、堆積された前記導体と前記基板との間に冶金接合を生じさせるステップとを含み、前記金属間化合物は、堆積された前記導体の材料と前記シリコン基板の材料とで形成され、
前記焼結は、冶金接合によって接着テープ試験ASTM D3359-02に合格するのに有効な導体が生じるように、有効な時間行なわれる、方法。」
で一致し、相違点は存在しない。

(3)判断
したがって、本願発明は、引用発明2である。

(4)請求人の主張について
請求人は、引用文献2は、シリコン基板上に用いられる導体として、典型的には、アンチモンまたはチタンと銀との合金を用いることを記載している旨主張する。
しかしながら、引用発明2は、銀ペーストがドーパントを含まない態様を念頭に認定されたものである。そして、引用文献2に記載された発明が、銀ペーストにドーパントを含まない態様を含むことは、引用発明2と関連する引用文献2の記載が、「リンがドーパントとして作用するここに記述されたプロセス(当審注:リンが銀ペーストに含まれているわけではない。30頁下から5行の「・・・n型シリコン基板の前面にリンのドーパントを塗り、・・・」との記載を参照。)に関しては、アンチモンの存在は不適切であったと予想される。」(31頁4行?6行)となっていることからも、明らかである。
また、引用発明2の「n型シリコン基板の前面にリンのドーパントを塗」る点については、本願発明との相違点を構成するとは解されない。
よって、請求人の主張は採用できない。

(5)引用発明2に基づく新規性欠如についての小括
このように、本願発明は、引用発明2であるから、特許法第29条第1項第3号に該当する。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-05-08 
結審通知日 2019-05-14 
審決日 2019-05-27 
出願番号 特願2015-202777(P2015-202777)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 元彦  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 山村 浩
野村 伸雄
発明の名称 基板上に導体が配列された装置および導体を形成する方法  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ