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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F24F
管理番号 1355908
審判番号 不服2018-15497  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-22 
確定日 2019-10-29 
事件の表示 特願2014-123938「空気調和機のルーバー」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月12日出願公開、特開2016- 3807、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年6月17日の出願であって、平成30年3月19日付けで拒絶理由が通知され、平成30年4月17日に意見書が提出されたが、平成30年9月26日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対して平成30年11月22日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
[理由]
本件出願の請求項1ないし7に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物1ないし3に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



<引用文献等一覧>
1.特開2013-194921号公報
2.特開2009-063274号公報
3.実願昭61-179245号(実開昭63-083529号)のマイクロフィルム

第3 本願発明
本願請求項1ないし4に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、平成30年11月22日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるところ、請求項1ないし4に記載された発明は以下のとおりのものである。

「【請求項1】
平面視ほぼ長方形で底部の周縁に壁を有する外部材と、
前記壁の内周面に嵌合する頂部を有し、外部材とで断熱空間を形成する内部材とを備え、
空気調和機における吹き出し口から吹き出される風の向きを規制するルーバーであって、
前記長方形の長辺に沿う方向をX方向、短辺に沿う方向をY方向、XY平面と交差する方向をZ方向とするとき、
前記内部材は、外部材との嵌合状態で、Y方向端部にて外側に張り出して前記壁の内周面に圧接するリブPと、前記Y方向端部付近にてZ方向に突き出して前記底部に圧接するリブQを有し、
前記外部材は、リブPが前記底部からZ方向に遠ざかることを阻む段差Tと、リブQが前記壁からY方向に遠ざかることを阻む段差Lを有する
ことを特徴とするルーバー。
【請求項2】
更に、前記内部材が、X方向端部付近にて前記底部に近づくZ方向に突き出すとともに前記壁の内周面に圧接するリブSを有する、請求項1に記載のルーバー。
【請求項3】
リブPが、前記Y方向端部にて前記頂部の厚さだけ前記底部側に降下した位置で外側に張り出しており、前記壁の内周面にリブPを受け入れる深溝が形成され、その深溝が段差Tとして機能する、請求項1又は2に記載のルーバー。
【請求項4】
前記外部材が、リブQの厚さだけY方向内側にシフトした位置にて前記底部より突き出すリブMを有し、リブMが段差Lとして機能する、請求項1?3のいずれかに記載のルーバー。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1には、「風向調整板」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。

(1)引用文献1の記載
1a)「【0006】
風向板は、近年、大型化する傾向にあり、室内側に位置する表面部材と、吹出し口側に位置する裏面部材を組み合わせる場合がある。表面部材と裏面部材の固定には、接着剤や超音波溶着などの方法が用いられるが、材料コストの増加、工数の増加、養生時間を要することよる加工時間の増加が問題となる。」

1b)「【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、容易かつ短時間で組立てることが可能な風向調整板、空気調和機及び風向調整板の製造方法を提供することを目的とする。」

1c)「【0021】
以下に、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
空気調和機の室内機1は、本体ケース2の内部に冷媒が通過する熱交換器3、送風機4、モーター(図示せず。)、ドレンパン(図示せず。)等が設けられる。本体ケース2は、室内機1の背面側に位置するベース5と、ベース5の前面に設けられる前面パネル6などからなる。
【0022】
前面パネル6には、図1に示すように、吸込み口7や吹出し口8が設けられる。吸込み口7から吸い込まれた空気は、送風機4によって熱交換器3に導かれる。そして、熱交換器3を通過して冷却又は加熱された空気が吹出し口8から室内へ送り出される。吹き出し口8の前方には、風向調整板10が設けられ、風向調整板10は、吹出し口8を開閉したり、風向を調整したりする。吹出し口8は、室内機1の幅方向(設置時の左右方向)に沿って長く形成され、風向調整板10も吹出し口8に合わせて幅方向に長い。
【0023】
風向調整板10は、図2に示すように、表面部材11と、裏面部材12と、表面部材11の吹出し口8側の面に設けられる支持部13などからなる。支持部13は、板状部材であって、風向調整板10の回転軸となる軸部14が設けられる。表面部材11、裏面部材12及び支持部13は、例えば合成樹脂製である。
【0024】
支持部13は、表面部材11と一体成形で形成されてもよいし、表面部材11とは別部品で形成して表面部材11に嵌め込まれてもよい。裏面部材12には、支持部13が貫通する開口部(図示せず。)が設けられる。このように、表面部材11に支持部13が設けられることによって、裏面部材12に支持部が設けられる場合に比べて、支持部13は、確実に風向調整板10を支持できる。また、支持部13が裏面部材12に設けられると、下方に位置する表面部材11が落下するおそれがあるが、本実施形態では、表面部材11が裏面部材12を支持していることから脱落の可能性がない。
【0025】
表面部材11は、室内側に位置する第1面材11aと、吹出し口8側に位置する第2面材11bとを有しており、第1面材11aと第2面材11bは、風向調整板10の前端部と後端部の両端部で接合している。第1面材11aと第2面材11bは、取り付けられたときに室内機1の幅方向に長い平板状の部材である。第1面材11aは、取り付けられたときの室内機1の幅方向に対して垂直方向に切断した断面が、円弧形状であって、室内側に膨らんでいる。第2面材11bには、裏面部材12が挿入される開口部11cが形成されている。
【0026】
表面部材11は、前端部側に第1溝15が形成され、後端部側に第2溝16が形成される。第1溝15と第2溝16は、第1面材11aと第2面材11bによって形成され、表面部材11の幅方向に延設されている。第1溝15と第2溝16は、断面がU字又はV字形状の凹溝であって、開口部分が風向調整板10の中間側を向いており、互いに対向している。
【0027】
第1溝15において、組立て時に裏面部材12の前端部12aを挿入できる深さは、裏面部材12の挿入方向の長さから表面部材11の開口部11cの長さを引いて得られる差よりも大きい。その結果、裏面部材12の前端部12aを第1溝15に挿入することによって、裏面部材12が表面部材11内部に納まり、裏面部材12を開口部11cから表面部材11の内部へ挿入できる。
【0028】
また、表面部材11の奥行き方向(幅方向に対して垂直方向)の中間部分には、リブ17が裏面部材12側に突出して設置される。リブ17は、平板状の部材であって、第1面材11aの吹出し口8側の面に立設して、複数個所で互いに平行に設置される。リブ17は、後述の裏面部材12のストッパ20に対応して設置される。ストッパ20がリブ17よりも幅広の場合、1個のストッパ20に対して、リブ17が2本設置されてもよい。」

1d)「【0029】
リブ17には、中間に第1凸部17aが形成される。第1凸部17aは、第2溝16側に突出しており、第2溝16側の面でストッパ20と接触する。
【0030】
また、第2凸部17bと第3凸部17cが、第1凸部17aに対して表面部材11の奥行き方向両端にそれぞれ形成される。第2凸部17bは、第1溝15側に位置し、第3凸部17cは、第2溝16側に位置する。第2凸部17bと第3凸部17cの高さは、第1凸部17aよりも高い。第2凸部17bと第3凸部17cは、裏面部材12と接触する。
【0031】
更に、第1凸部17aと第3凸部17cとの間には、収容溝17dが形成される。収容溝17dは、風向調整板10が組立てられた後、裏面部材12のストッパ20を収容する。これによって、裏面部材12の円弧形状が、表面部材11側が凸になるように保つことができ、第2凸部17bと第3凸部17cが、裏面部材12と接触するようになる。
【0032】
裏面部材12は、取り付けられたときに室内機1の幅方向に長い平板状の部材である。裏面部材12は、室内機1の幅方向に対して垂直方向に切断した断面が、円弧形状であって、室内側に膨らんでいる。
【0033】
裏面部材12は、前端部12aが表面部材11の第1溝15に挿入され、後端部12bが表面部材11の第2溝16に挿入される。
【0034】
後端部12bは、更に段差部21が形成され、段差部21は、第2溝16における第2面材11b側の端部16bと接触する。端部16bは、開口部11cの縁部分でもある。段差部21と端部16bが接触することによって、裏面部材12の第2溝16側への移動が妨げられる。
【0035】
裏面部材12の前端部12aは、第1溝15における第2面材11bの内面15aと接触する。また、裏面部材12の後端部12bは、第2溝16における第2面材11bの内面16aと接触する。さらに、裏面部材12は、中間部分において、第1面材11aのリブ17の第2凸部17b、第3凸部17cと接触する。裏面部材12は、円弧形状であって、合成樹脂製であることから、弾性力を有する。そして、裏面部材12は、第2凸部17bと第3凸部17cによって押し上げられており、裏面部材12は、曲率半径が大きくなるように変形している。これによって、裏面部材12は、弾性力によって、表面部材11の第1面材11a(第2凸部17b及び第3凸部17c)と、第1溝15及び第2溝16における第2面材11bに挟まれて固定される。
【0036】
裏面部材12の奥行き方向(幅方向に対して垂直方向)の中間部分には、ストッパ20が表面部材11の第1面材11a側に突出して設置される。ストッパ20は、裏面部材12の表面部材11側の面に、複数個所で設けられる。
【0037】
ストッパ20は、第4凸部20aと第5凸部20bが形成される。ストッパ20において、第4凸部20aと第5凸部20bは、裏面部材12の奥行き方向両端にそれぞれ形成される。第4凸部20aは、第1溝15側に突出しており、第1溝15側の面でリブ17と接触する。
【0038】
表面部材11の第1面材11aと裏面部材12の互いに対向する面において、リブ17に形成された第1凸部17aが裏面部材12側かつ第2溝16側に突出し、ストッパ20に形成された第4凸部20aが表面部材11側かつ第1溝15側に突出している。第1凸部17aと第4凸部20aが接触することによって、裏面部材12の第1溝15側への移動が妨げられる。
【0039】
裏面部材12を表面部材11の内部へ挿入するときは、第1溝15側への裏面部材12の移動が利用されるが、裏面部材12が表面部材11に対して固定されるときは、リブ17とストッパ20によって、第1溝15側への裏面部材12の移動が妨げられる。」

1e)
「図2



1f)図2から、表面部材11と裏面部材12との間には内部空間が形成されることが看取できる。

1g)図2及び上記1d)段落【0035】の記載によると、後端部12bが第2面材11bの内面に接触しているから、表面部材11の第2面材11bが、後端部12bが第1面材11aから垂直方向に遠ざかることを阻むことは明らかである。

1h)図2及び上記1c)段落【0028】の記載によると、裏面部材12には、その奥行き方向の中間部分において表面部材11側に突出して設置されるストッパ20が設けられることが看取できる。

1i)図2及び上記1d)段落【0029】の記載によると、リブ17は、その中間に第1凸部17aが形成され、第1凸部17aは第2溝16側に突出しており、第2溝16側の面でストッパ20の第4凸部20aと接触することにより、ストッパ20が第2面材11bから奥行き方向に遠ざかることを阻むことは明らかである。

(2)引用発明
上記(1)及び図面の記載からみて、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「幅方向に長く、第1面材11aの前端部及び後端部に第2面材11bを有する表面部材11と、
第2面材11bの第1溝15と第2溝16の端部16bに嵌合する部分を有し、表面部材11とで内部空間を形成する裏面部材12とを備え、
空気調和機の室内機1における吹出し口8から室内に送り出される風の風向を調整する風向調整板10であって、
裏面部材12は、表面部材11に嵌め込まれた状態で、後端部12bの段差部21において第2溝16側に向かい、第2面材11bの第2溝16の端部16bに接触する後端部12bと、
裏面部材12の奥行き方向の中間部分において表面部材11側に突出して設置されるストッパ20とを有し、
表面部材11は、後端部12bが第2面材11bの内面に接触することにより、後端部12bが第1面材11aから垂直方向に遠ざかることを阻む第2溝16と、表面部材11の奥行き方向の中間部分において裏面部材12側に突出して設置されるリブ17を有し、
リブ17は、その中間に第1凸部17aが形成されており、第1凸部17aは第2溝16側に突出しており、第2溝16側の面でストッパ20の第4凸部20aと接触することにより、ストッパ20が第2面材11bから奥行き方向に遠ざかることを阻むものである、風向調整板。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献2には、「空気調和機」に関して、図面とともに次の事項が記載されている

(1)引用文献2の記載
2a)「【請求項1】
送風ファンと、前記送風ファンによって生じる風を吹き出す吹出し口と、前記吹出し口に配置されて空気の上下方向の向きを変える上下風向変更羽根とを具備した空気調和機であって、前記上下風向変更羽根は、箱部と中空用蓋とを接着固定して中空部を有する箱状とし、少なくとも前記箱部又は前記中空用蓋のうちいずれかの周縁の内側に接着用の周縁リブを設置したことを特徴とする空気調和機。」

2b)「【0012】
図2において、空気調和機本体5の下部に吹出し口3を備え、その上側に送風ファン4と熱交換器6が取付けられている。そして、吹出し口3の前側に回転と移動が可能な上下風向変更羽根1を配設し、上下風向変更羽根1は同一材料の箱部1bと中空用蓋1aを接着して、偏平で僅かに反りを有する箱状に形成されている。
【0013】
次に、上下風向変更羽根1の接着固定部の構成について、図3?図5を用いて説明する。図に示すように、上下風向変更羽根1は、中空用蓋1aと箱部1bとから中空部2を設けるようにして構成されており、中空用蓋1aと箱部1bとは、上下風向変更羽根1の内部に形成された中空用蓋周縁リブ7と箱部周縁リブ8近傍とを接着剤9で接着固定されている。
【0014】
以上のように構成された空気調和機の動作、作用について説明する。空気調和機本体5の冷房運転時において、熱交換器6を通過し冷却された風が送風ファン4によって吹出し口3で風向きを上側にする運転モードにおいて、上下風向変更羽根1の外側と内側の温度差が生じるため、上下風向変更羽根1の外側に結露が発生しやすい状態となる。その際、上下風向変更羽根1の中空用蓋1aと箱部1bで構成された中空部2の断熱効果により冷房時の結露を防止することができる。
【0015】
上記構成により、上下風向変更羽根1の形成においては内部に接着剤が塗布されることにより外観面への接着剤9のはみ出しが防止できるため、運転中ユーザーから接着剤が見えてしまう心配がなく、外観のデザイン性向上が可能となる。また作業者による2部品の合わせ時に接着剤のはみ出し、ふき取りの工程が無いため、組立工数の低減を図れる。」

2c)「



2d)図5から、中空用蓋1aと箱部1bの周縁の内側近傍に中空用蓋周縁リブ7と箱部周縁リブ8が設けられることが看取できる。

(2)引用文献2に記載された技術
上記(2)及び図面の記載からみて、引用文献2には以下の技術(以下、「引例2技術」という。)が記載されている。

「空気調和機の上下風向変更羽根1が、中空部2を形成するように設けられた中空用蓋1aと箱部1bとからなるものであって、中空用蓋1aと箱部1bの周縁の内側近傍に接着用の中空用蓋周縁リブ7と箱部周縁リブ8を設置する技術。」

第5 原査定についての判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明における「幅方向に長く」は、本願発明1における「平面視ほぼ長方形で」に相当し、以下同様に、「第1面材11a」は「底部」に、「第2面材11b」は「壁」に、「表面部材11」は「外部材」に、「第2溝16の端部16b」は「内周面」に、「部分」は「頂部」に、「内部空間」は「断熱空間」に、「裏面部材12」は「内部材」に、「空気調和機の室内機1」は「空気調和機」に、「吹出し口8」は「吹き出し口」に、「室内に送り出される」は、「吹き出される」に、「風向を調整する」は「風の向きを規制する」に、「風向調整板10」は「ルーバー」に、「嵌め込まれた状態」は「嵌合状態」に、「後端部12bの段差部21」は「Y方向端部」に、「第2溝16側に向かい」は「外側に張り出して」に、「後端部12b」は「リブP」に、「垂直方向」は「Z方向」に、「第2溝16」は「段差T」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明における「第2面材11bの」、「第2溝16の端部16bに」、「接触する」ことは、上記第4 1.(1)1d)段落【0035】の記載及び1e)図2によれば、裏面部材12がリブ17の第2凸部17b及び第3凸部17cによって押し上げられて第2面材11bに挟まれて固定されるのであるから、本願発明1における「壁の内周面に」、「圧接」することに相当する。
なお、上記X方向、Y方向及びZ方向については、本願発明1において特定されたとおり、「長方形の長辺に沿う方向をX方向、短辺に沿う方向をY方向、XY平面と交差する方向をZ方向」とする。

そうすると、本願発明1と引用発明との一致点、相違点は次のとおりである。

[一致点]
「平面視ほぼ長方形で底部に壁を有する外部材と、
前記壁の内周面に嵌合する頂部を有し、外部材とで断熱空間を形成する内部材とを備え、
空気調和機における吹き出し口から吹き出される風の向きを規制するルーバーであって、
前記長方形の長辺に沿う方向をX方向、短辺に沿う方向をY方向、XY平面と交差する方向をZ方向とするとき、
前記内部材は、外部材との嵌合状態で、Y方向端部にて外側に張り出して前記壁の内周面に圧接するリブPを有し、
前記外部材は、リブPが前記底部からZ方向に遠ざかることを阻む段差Tを有する、ルーバー。」

[相違点1]
本願発明1においては、「外部材」が、「底部の周縁に壁を有する」のに対して、
引用発明においては、「表面部材11」が、「第1面材11aの前端部及び後端部に第2面材11bを有する」点。

[相違点2]
本願発明1においては、「前記内部材」は「前記Y方向端部付近にてZ方向に突き出して前記底部に圧接するリブQを有」するのに対して、
引用発明においては、「裏面部材12」は「裏面部材12の奥行き方向の中間部分において表面部材11側に突出して設置されるストッパ20」を有するものであって、「ストッパ20」が「裏面部材12の奥行き方向の中間部分において表面部材11側に突出して設置される」ものの、表面部材11に対して圧接するものではなく、裏面部材11の後端部12b付近に設置されるものでもない点。

[相違点3]
本願発明1においては、「前記外部材」は「リブQが前記壁からY方向に遠ざかることを阻む段差Lを有する」のに対して、
引用発明においては、「表面部材11」は「表面部材11の奥行き方向の中間部分において裏面部材12側に突出して設置されるリブ17を有し、リブ17は、その中間に第1凸部17aが形成されており、第1凸部17aは第2溝16側に突出しており、第2溝16側の面でストッパ20の第4凸部20aと接触することにより、ストッパ20が第2面材11bから奥行き方向に遠ざかることを阻むものであ」る点。

事案に鑑み、まず上記相違点2及び3について検討する。

[相違点2について]
上記引例2技術は、「空気調和機の上下風向変更羽根1が、中空部2を形成するように設けられた中空用蓋1aと箱部1bとからなるものであって、中空用蓋1aと箱部1bの周縁の内側近傍に接着用の中空用蓋周縁リブ7と箱部周縁リブ8を設置する技術」である。
しかし、引例2技術における「中空用蓋周縁リブ7」と「箱部周縁リブ8」は、「中空用蓋1a」と「箱部1b」とを接着するために設置されたものであり(上記第4 2.(1)2a)参照。)、「箱部1b」と「中空用蓋1a」に対して突き出して圧接したものかは不明である。
そうすると、接着剤や超音波溶着などを用いないで容易かつ短時間で組み立てることを目的とする(上記第4 1.(1)1a)及び1b)参照。)引用発明に、「箱部1b」と「中空用蓋1a」とを接着することを前提として「中空用蓋周縁リブ7」と「箱部周縁リブ8」とを設けた引例2技術を適用する動機付けはなく、仮に適用したとしても、引用発明における「ストッパ20」を表面部材11に対して突き出して圧接して本願発明1における「リブQ」とすることには至らないから、引用発明に引例2技術を適用して上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たとはいえない。

[相違点3について]
上記相違点3に係る本願発明1において、「リブQ」を特定することが前提である以上、上記[相違点2について]と同様の理由で、引用発明に引例2技術を適用して上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

したがって、本願発明1は、上記相違点1について検討するまでもなく引用発明及び引例2技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本願発明2ないし4について
本願の特許請求の範囲における請求項2ないし4は、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく直接又は間接的に引用して記載したものであるから、本願発明2ないし4は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。

したがって、本願発明2ないし4は、本願発明1と同様の理由で、引用発明及び引例2技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし4は、当業者が引用発明及び引例2技術に基いて容易に発明をすることができたものとすることはできない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-10-07 
出願番号 特願2014-123938(P2014-123938)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F24F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 安島 智也  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 松下 聡
槙原 進
発明の名称 空気調和機のルーバー  
代理人 矢野 正行  

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