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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B |
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管理番号 | 1355912 |
審判番号 | 不服2019-906 |
総通号数 | 239 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-11-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-01-23 |
確定日 | 2019-11-05 |
事件の表示 | 特願2014-198384「末梢血管抵抗推定方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月 9日出願公開、特開2016- 67490、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年9月29日の出願であって、平成30年4月17日付けで拒絶理由が通知され、同年6月14日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年10月16日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)されたところ、平成31年1月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 本願請求項1?3に係る発明は、以下の引用文献1及び3に基づいて、また、本願請求項4及び5に係る発明は、以下の引用文献1?3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開平06-205747号公報 引用文献2:特開2007-222313号公報(周知技術を示す文献) 引用文献3:特開平10-76012号公報(周知技術を示す文献) 第3 本願発明 本願請求項1?5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明5」という。)は、平成30年6月14日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 大動脈圧と、橈骨動脈圧と、動脈系中枢部での血管抵抗と、動脈系末梢部での血管抵抗と、血管のコンプライアンスと、血液の慣性と、を電気回路モデルに当てはめることで末梢血管抵抗を推定する末梢血管抵抗推定方法であって、 時間をt、大動脈圧の立ち上がりからその圧力が最低血圧値になるまでの時間をt_(P1)、橈骨動脈の圧力すなわち橈骨動脈波をv_(p)、最低血圧値をE_(min)、橈骨動脈の圧力における振幅係数をB、橈骨動脈の圧力における時間係数をt_(b)、橈骨動脈の圧力における振動成分の第1の振幅係数をD_(1)、指数関数すなわちexpをe、減衰定数をα、角周波数をω、第1の位相をθ_(1)、1拍の時間をt_(p)、橈骨動脈の圧力における振動成分の第2の振幅係数をD_(2)、第2の位相をθ_(2)としたときに、これらの血管の要素を次の数式1のように電気回路モデルによって表し、 【数1】 前記数式1における減衰定数α、角周波数ω、振幅係数B、時間係数t_(b)の値を変化させて前記数式1を用いた計算により得た橈骨動脈圧v_(p)の値と、測定により得た橈骨動脈圧v_(p)の値と、を比較し、前記計算により得た橈骨動脈圧の値v_(p)と前記測定により得た橈骨動脈圧の値v_(p)との平均二乗誤差を最小化する減衰定数α、角周波数ω、振幅係数B、時間係数t_(b)の最適解を決定し、 前記最適解を用いて動脈系中枢部での血管抵抗R_(1)及び動脈系末梢部での血管抵抗R_(2)を求め、さらに、総末梢血管抵抗推定値TPRを、係数w_(1),w_(2)を用いて、次の数式2により求める、 【数2】 方法。 【請求項2】 前記係数w_(1),w_(2)を、前記(R_(1)+R_(2))の値の範囲に応じて変える、 請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記最適解を決定するにあたって、次の(i)、(ii)、(iii)の処理を含む、 (i)前記α、ω、B、t_(b)のそれぞれについて複数回の探索を行う、 (ii)各回の探索では、複数のサンプリング値を用いる、 (iii)次回の探索では前回の探索よりも探索範囲を狭める、 請求項1又は請求項2に記載の方法。 【請求項4】 さらに、次の(iv)、(v)の処理を含む、 (iv)前記複数のサンプリング値を、値が小さいものから大きいものへと少なくとも左域、中域、右域の3つの領域に領域分けし、 (v)ある回の探索において、前記α、ω、B、t_(b)の全ての解が中域に含まれる場合には、次回の探索をその中域を中心に狭めた探索範囲で行う一方、ある回の探索において、前記α、ω、B、t_(b)の解の1つ以上が中域に含まれない場合には、その解を中心とする領域に探索範囲を移動させて再度解の探索を行う、 請求項3に記載の方法。 【請求項5】 さらに、次の(vi)の処理を含む、 (vi)前回の探索よりも次回の探索のサンプリング間隔を小さくするものとし、前記次回の探索のサンプリング間隔が既定の最終値に到達し、かつ前記次回の探索で求めた解の組が前記前回の探索で求めた解の組と一致した場合に、その解を最適解として、探索を終了する、 請求項4に記載の方法。」 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1 (1)引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、当審において付与した。以下同様。) (引1a)「【0009】<本実施例において採用した電気的モデルについて> A.四要素集中定数モデル 本実施例では、動脈系の電気的モデルとして四要素集中定数モデルを採用する。この四要素集中定数モデルは、人体の循環系の挙動を決定する要因のうち、動脈系中枢部での血液による慣性、中枢部での血液粘性による血管抵抗(粘性抵抗)、中枢部での血管のコンプライアンス(粘弾性)及び末梢部での血管抵抗(粘性抵抗)の4つのパラメータに着目し、これらを電気回路としてモデリングしたものである。図4に四要素集中定数モデルの回路図を示す。以下、この四要素集中定数モデルを構成する各素子と上記各パラメータとの対応関係を示す。 インダクタンスL:動脈系中枢部での血液の慣性 〔dyn・s^(2)/cm^(5)〕 静電容量C:動脈系中枢部での血管のコンプライアンス(粘弾性)〔cm^(5)/dyn〕 なお、コンプライアンスとは血管の軟度を表わす量であり、粘弾性のことである。 電気抵抗R_(c):動脈系中枢部での血液粘性による血管抵抗〔dyn・s/cm^(5)〕 電気抵抗R_(p):動脈系末梢部での血液粘性による血管抵抗〔dyn・s/cm^(5)〕 また、この電気回路内の各部を流れる電流i,i_(P),i_(c)は、各々対応する各部を流れる血流〔cm^(3)/s〕に相当する。また、この電気回路に印加される入力電圧eは大動脈起始部の圧力〔dyn/cm^(2)〕に相当する。そして、静電容量Cの端子電圧v_(P )は、橈骨動脈部での圧力〔dyn/cm^(2)〕に相当するものである。」 (引1b)「【0011】・・・(略)・・・ ここで、 A_(1)=LC ....(12) A_(2)=(L+R_(C)R_(P)C)/R_(p) ....(13) A_(3)=(R_(C)+R_(P))/R_(p) ....(14) とおくと、上記式(10)および(11)は以下のように表すことができる。 α=A_(2)/2A_(1) ....(15) ω=√{(A_(3)/A_(1))-α^(2)} ・・・・(16) ・・・(略)・・・ 【0012】次に大動脈起始部の圧力波形のモデリングを行う。一般に大動脈起始部の圧力波形は図5のような波形である。そこで、この圧力波形を図6に示す三角波で近似することにする。図6において近似波形の振幅と時間をE_(o)、E_(m)、t_(P)、t_(P1)とすると、任意の時間tにおける大動脈圧eは次式で表わされる。E_(o)は最低血圧(拡張期血圧)、E_(o)+E_(m)は最高血圧(収縮期血圧)であり、t_(P)は1拍の時間、t_(P1)は大動脈圧の立ち上がりからその圧力が最低血圧値になるまでの時間である。 0≦t<t_(P1)の区間: e=E_(o)+E_(m)(1-(t/t_(P1))) ・・・・(17) t_(P1)≦t<t_(P)の区間: e=E_(o) ・・・・(18) そして、上記(17)式および(18)式によって表される電気信号eを図4の等価回路に入力した時の応答波形v_(p)(橈骨動脈波に対応)を本実施例においては以下のように近似する。 0≦t<t_(P1)の区間: v_(P)=E_(min)+B(1-t/t_(b)) +D_(m1)exp(-αt)sin(ωt+θ_(1)) ・・・・(19) t_(P1)≦t<t_(P)の区間: v_(P)=E_(min) +D_(m2)・exp{-α(t-t_(P1))}・sin{ω(t-t_(P1))+θ_(2)} ・・・・(20) 上記式(19)における右辺第3項および上記式(20)における右辺第2項が既に説明した減衰振動成分(上記式(5)に対応するもの)であり、これらの項におけるαおよびωは上記式(15)および(16)により与えられる。」 (引1b)「【0017】さて、式(16)の角周波数ωから逆算することにより中枢部での血管抵抗RCは、 R_(C)={L-2R_(P)√(LC(1-ω^(2)LC))}/CR_(r) ・・(39) となる。ここで、R_(C)が実数でかつ正となる条件は、 4R_(r)^(2)C/{l+(2ωR_(P)C)^(2)}≦L≦1/ω^(2)C ・・・・(40) である。一般にR_(P)のオーダは10^(3)(dyn・s/cm^(5))程度、Cは10^(-4)(cm^(5)/dyn)程度であり、また、ωは脈波に重畳している振動成分の角周波数であるから10(rad/s)以上であるとみてよい。このため、式(40)の下限はほぼ1/ω^(2)Cとみなせる。そこで、Lを簡略化のため近似的に、 L=1/(ω^(2)C) ・・・・(41) とおくと、R_(C)は、 R_(C)=L/(CR_(P)) ・・・・(42) となる。また、式(41)および(42)の関係より式(15)の減衰定数αは、 α=1/(CR_(P)) ・・・・(43) となる。(41)式?(43)式の関係を用いて、αとω及び四定数のいずれか1つ、例えば血液の慣性Lを用いて残りのパラメータを表わすと、 R_(C)=αL ....(44) R_(P)=ω^(2)L/α ....(45) C=1/(ω^(2)L) ・・・・(46) となる。上式(44)?(46)より、モデルのパラメータはα、ωおよびLが得られることにより確定することが明らかである。」 (引1c)「【0021】A.通常の測定処理 1○(当審注:左記は、1を丸で囲んだ文字を表す。以下同様。)脈波読取処理 循環動態パラメータの評価を行うに際し、診断者は図2に示すように圧力センサS1およびカフ帯S2を患者に装着し、測定指示をキーボード5から入力する。マイクロコンピュータ4はこのコマンドに応答し、まず、測定指示を脈波検出装置1へ送る。この結果、脈波検出装置1により橈骨動脈波が検出され、この橈骨動脈波を表す時系列デジタル信号がA/D変換器3から出力され、一定時間(約1分間)に亙ってマイクロコンピュータ4に取り込まれる。このようにしてマイクロコンピュータ4に複数拍分の橈骨動脈波形の時系列デジタル信号が取り込まれる。 【0022】2○平均化処理 次にマイクロコンピュータ4はこのようにして取り込んだ複数拍に対応した橈骨動脈波形を1拍毎ごとに重ね合わせて1分間での1拍当たりの平均波形を求め、この平均波形を橈骨動脈波形の代表波形として内蔵のメモリに格納する(以上、ステップS1)。図8にこのようにしてメモリに格納された橈骨動脈波形の代表波形W1を例示する。 【0023】3○1回拍出量データ取込処理 上記平均化処理が終了すると、マイクロコンピュータ4は1回拍出量測定器2へ測定指示を送る。この結果、1回拍出量測定器2により患者の1回拍出量が測定され、その結果を示す1回拍出量データがマイクロコンピュータ4に取り込まれる(ステップS2)。 【0024】パラメータ算出処理 次にマイクロコンピュータ4の処理はステップS3に進み、図7および図8にフローを示すパラメータ算出処理ルーチンが実行される。また、このルーチンの実行に伴い、図9にフローを示すα,ω算出ルーチンが実行され(ステップS109、S117)、このα,ω算出ルーチンの実行に伴い、図10にフローを示すω算出ルーチンが実行される(ステップS203)。以下、これらのルーチンの処理内容について説明する。 【0025】まず、マイクロコンピュータ4は、メモリに取り込んだ1拍分の橈骨動脈波形について、血圧が最大となる第1ポイントP1に対応した時間t_(1)および血圧値y_(1)と、第1ポイントの後、血圧が一旦落込む第2ポイントに対応した時間t_(2)および血圧値y_(2)と、2番目のピーク点である第3ポイントP3に対応した時間t_(3)および血圧値y_(3)を求める。また、メモリに取り込んだ橈骨動脈波形について1拍の時間t_(P)、最低血圧値E_(min)((3)式と(4)式の第1項目に相当)を求める(ステップS101)。以上の処理により、パラメータ演算処理に必要な各データとして以下例示するものが得られる。 第1ポイント:t_(1)=0.104(s)、y_(1)=123.4(mmHg) 第2ポイント:t_(2)=0.264(s)、y_(2)=93.8(mmHg) 第3ポイント:t_(3)=0.38.(s)、y_(3)=103.1(mmHg) 1拍の時間:t_(P)=0.784(s) 最低血圧:E_(min)=87.7(mmHg) 1回拍出量データ:SV=90(cc/beat) なお、第2ポイントP2と第3ポイントP3を区別することが困難ななだらかな脈波の場合には、第2と第3ポイントの時間をt_(2)=2t_(1)、t_(3)=3t_(1)としてその点の血圧値を決定する。 【0026】そして、計算の簡略化のため、図13に示すA点の血圧値y_(0)を用いてy_(1)?y_(3)の正規化処理を行い(ステップS102、S103)、Bの値を(y_(0)/2)-0.1に初期設定する(ステップS104)。 【0027】そして、次の手順でB、t_(b)、α、ωの最適値を求める。 a.まず、Bをy_(0)/2?y_(0)の範囲で変化させると同時にt_(b)をt_(p)/2?t_(p)の範囲で変化させ(+0.1間隔)、各Bおよびt_(b)についてv_(p)(t_(1))-y_(1),v_(p)(t_(2))-y_(2),v_(p)(t_(3))-y_(3)が最小となるα、ωを求める。 b.aにおいて求めたB、t_(b)、α、ωの中でv_(p)(t_(1))-y_(1),v_(p)(t_(2))-y_(2),v_(p)(t_(3))-y_(3)が最小となるB、t_(b)、α、ωを求める。 c.bにおいて求めたB、t_(b)を基準にして、B±0.05、t_(b)±0.05の範囲で上記a、bを再び実行する。 d.上記a?cの処理の際、αは3?10の範囲を0.1間隔で変化させ、各αについて最適なωを算出する。ωは、各αにおいて、dv_(p)(t_(2))/dt=0となる点を二分法を用いて求めた(図10参照)。なお、上記各処理においてv_(p)の値を演算するに際し式(33)の初期値v_(o1)は零とする。 このような処理により以下例示するように各データが決定される。 α=4.2(s^(-1)) 、ω=24.325(rad/s) B=27.2(mmHg)、t_(b)=0.602(s) 【0028】f.そして、t_(P1)、E_(m)、E_(o)を式(28)?(30)、(44)?(46)に基づいて算出する(ステップS123、S124)。この結果を以下例示するものが得られる。 t_(P1)=0.588(s) E_(m)=46.5(mmHg) E_(o)=90.3(mmHg) g.そして、式(50)を用い、1回拍出量からLの値を算出し(ステップS125)、残りのパラメータ値を式(44)?(46)により求める(ステップS126)。この結果、以下例示するパラメータが得られる。 L=7.021(dyn・s^(2)/cm^(5)) C=2.407×10^(-4)(cm^(5)/dyn) R_(C)=29.5(dyn・s/cm^(5)) R_(P)=958.2(dyn・s/cm^(5)) また、直流的な(平均的な)総末梢血管抵抗TPRを以下のようにして算出する。 TPR=R_(C)+R_(P)=1018.7(dyn・s/cm^(5)) となる。」 (2)引用文献1に記載された発明 上記(引1a)?(引1c)より、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「四要素集中定数モデルは、動脈系中枢部での血液による慣性、中枢部での血液粘性による血管抵抗(粘性抵抗)、中枢部での血管のコンプライアンス(粘弾性)及び末梢部での血管抵抗(粘性抵抗)の4つのパラメータに着目し、これらを電気回路としてモデリングしたものであって、 四要素集中定数モデルを構成する各素子と上記各パラメータとの対応関係は、 インダクタンスL:動脈系中枢部での血液の慣性 〔dyn・s^(2)/cm^(5)〕 静電容量C:動脈系中枢部での血管のコンプライアンス(粘弾性)〔cm^(5)/dyn〕 電気抵抗R_(c):動脈系中枢部での血液粘性による血管抵抗〔dyn・s/cm^(5)〕 電気抵抗R_(p):動脈系末梢部での血液粘性による血管抵抗〔dyn・s/cm^(5)〕 であり、 電気回路内の各部を流れる電流i,i_(P),i_(c)は、各々対応する各部を流れる血流〔cm^(3)/s〕に相当し、 電気回路に印加される入力電圧eは大動脈起始部の圧力〔dyn/cm^(2)〕に相当し、 静電容量Cの端子電圧v_(P )は、橈骨動脈部での圧力〔dyn/cm^(2)〕に相当するものであり、 近似波形の振幅と時間をE_(o)、E_(m)、t_(P)、t_(P1)とすると、任意の時間tにおける大動脈圧eは 0≦t<t_(P1)の区間: e=E_(o)+E_(m)(1-(t/t_(P1))) ・・・・(17) t_(P1)≦t<t_(P)の区間: e=E_(o) ・・・・(18) で表わされ、 ここで、E_(o)は最低血圧(拡張期血圧)、E_(o)+E_(m)は最高血圧(収縮期血圧)であり、t_(P)は1拍の時間、t_(P1)は大動脈圧の立ち上がりからその圧力が最低血圧値になるまでの時間であり、 上記(17)式および(18)式によって表される電気信号eを等価回路に入力した時の応答波形v_(p)(橈骨動脈波に対応)は、 0≦t<t_(P1)の区間: v_(P)=E_(min)+B(1-t/t_(b)) +D_(m1)exp(-αt)sin(ωt+θ_(1)) ・・・・(19) t_(P1)≦t<t_(P)の区間: v_(P)=E_(min) +D_(m2)・exp{-α(t-t_(P1))}・sin{ω(t-t_(P1))+θ_(2)} ・・・・(20) のように近似され、 これらの項における減衰定数αおよび角周波数ωは α=A_(2)/2A_(1) ....(15) ω=√{(A_(3)/A_(1))-α^(2)} ・・・・(16) により与えられ、 脈波検出装置1により橈骨動脈波が検出され、この橈骨動脈波を表す時系列デジタル信号がA/D変換器3から出力され、一定時間(約1分間)に亙ってマイクロコンピュータ4に取り込まれ、 マイクロコンピュータ4は、メモリに取り込んだ1拍分の橈骨動脈波形について、血圧が最大となる第1ポイントP1に対応した時間t_(1)および血圧値y_(1)と、第1ポイントの後、血圧が一旦落込む第2ポイントに対応した時間t_(2)および血圧値y_(2)と、2番目のピーク点である第3ポイントP3に対応した時間t_(3)および血圧値y_(3)を求め、 メモリに取り込んだ橈骨動脈波形について1拍の時間t_(P)、最低血圧値E_(min)を求め、 B、t_(b)、α、ωの最適値は、以下のa.?d.の手順で求め、 t_(P1)、E_(m)、E_(o)を算出し、 1回拍出量からLの値を算出し、 残りのパラメータ値を R_(C)=αL ....(44) R_(P)=ω^(2)L/α ....(45) C=1/(ω^(2)L) ・・・・(46) から求め、 直流的な(平均的な)総末梢血管抵抗TPRを TPR=R_(C)+R_(P) により算出する方法。 a.まず、Bをy_(0)/2?y_(0)の範囲で変化させると同時にt_(b)をt_(p)/2?t_(p)の範囲で変化させ(+0.1間隔)、各Bおよびt_(b)についてv_(p)(t_(1))-y_(1),v_(p)(t_(2))-y_(2),v_(p)(t_(3))-y_(3)が最小となるα、ωを求める。 b.aにおいて求めたB、t_(b)、α、ωの中でv_(p)(t_(1))-y_(1),v_(p)(t_(2))-y_(2),v_(p)(t_(3))-y_(3)が最小となるB、t_(b)、α、ωを求める。 c.bにおいて求めたB、t_(b)を基準にして、B±0.05、t_(b)±0.05の範囲で上記a、bを再び実行する。 d.上記a?cの処理の際、αは3?10の範囲を0.1間隔で変化させ、各αについて最適なωを算出する。ωは、各αにおいて、dv_(p)(t_(2))/dt=0となる点を二分法を用いて求めた。なお、上記各処理においてv_(p)の値を演算するに際し初期値v_(o1)は零とする。」 2 引用文献2 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 (引2a)「【0021】 また、本第七の発明の生体パラメータ決定装置は、第六の発明に対して、前記探索範囲決定手段は、前回の探索範囲を構成するn個のパラメータの値の範囲を2分割し、当該2分割したn個のパラメータの組み合わせの値の範囲を有する2^(n)個の探索範囲を取得し、当該2^(n)個の各探索範囲の代表的なパラメータセットのうちで、最も相違度の小さいパラメータセットを有する探索範囲を前回の探索範囲として、探索範囲を狭めてゆく生体パラメータ決定装置である。 【0022】 かかる構成により、高速に、精度高く生体パラメータセットを得ることができる。」 (引2b)「【0030】 図1は、本実施の形態における生体パラメータ決定装置のブロック図である。 【0031】 生体パラメータ決定装置は、生体パラメータセット格納部101、パラメータセット選択部102、シミュレーション実行部103、定常状態判断部104、活動電位情報取得部105、実験活動電位情報格納部106、前処理部107、相違度算出部108、許容パラメータセット決定部109、制御部110、許容パラメータセット出力部111を具備する。 【0032】 パラメータセット選択部102は、探索範囲決定手段1021、パラメータセット選択手段1022を具備する。 【0033】 前処理部107は、スケーリング手段1071、平滑化手段1072を具備する。 【0034】 相違度算出部108は、絶対値差情報取得手段1081、変化差情報取得手段1082、相違度算出手段1083を具備する。 【0035】 生体パラメータセット格納部101は、生体のパラメータである生体パラメータを1以上有する生体パラメータセットを2組以上格納している。生体パラメータには細胞の種々のチャネル(たとえば、Naチャネル、Caチャネル、K_(ATP)チャネル、Krチャネル、K1チャネル、Ksチャネルなど)を流れる電流や、各チャネルの開閉速度や、イオン親和性、細胞内外のイオン濃度など、数百にも及ぶパラメータがある。生体パラメータは、通常、生体パラメータを識別する生体パラメータ識別子とパラメータの値を有する。ただし、生体パラメータセット中で、生体パラメータの列挙の順序が決まっている場合、生体パラメータは値だけでも良い。生体パラメータセットは、予め格納されていても良いし、図示しない手段により、算出されても良い。各生体パラメータの採りえる値の範囲の情報を保持しており、図示しない手段が、各生体パラメータの採りえる値の範囲から、各生体パラメータの一の値を決定して、生体パラメータセットを構築しても良い。生体パラメータセット格納部101は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。 【0036】 パラメータセット選択部102は、2組以上の生体パラメータセットの中から一の生体パラメータセットを選択する。一の生体パラメータセットを選択するアルゴリズムは問わない。任意に一の生体パラメータセットを選択しても良いし、予め決められたアルゴリズムで、一の生体パラメータセットを選択しても良い。パラメータセット選択部102は、探索範囲決定手段1021とパラメータセット選択手段1022の処理により、一の生体パラメータセットを選択することは好適である。一の生体パラメータセットを選択するアルゴリズムの例は後述する。パラメータセット選択部102は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。パラメータセット選択部102の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。 【0037】 探索範囲決定手段1021は、2組以上の生体パラメータセットを構成する1以上の各パラメータの値の範囲を用いて、当該1以上の各パラメータの範囲を限定し、当該限定した範囲の情報を有する探索空間を決定する。なお、パラメータの値の範囲は、通常、予め決められており、その範囲の情報は、記録媒体に格納されている。また、探索範囲決定手段1021は、例えば、前回の探索範囲を構成するn個(nは1以上の整数)のパラメータの値の範囲を2分割し、当該2分割したn個のパラメータの組み合わせの値の範囲を有する2^(n)個の探索範囲を取得し、当該2^(n)個の各探索範囲の代表的なパラメータセットのうちで、最も相違度の小さいパラメータセットを有する探索範囲を前回の探索範囲として、探索範囲を狭めていっても良い。探索範囲決定手段1021は、例えば、前回の2以上のパラメータセットを構成する各パラメータの値の範囲の情報を保持しており、2以上のパラメータセットのうち、前回に最も相違度の小さいパラメータセットを中心に、各パラメータの値の範囲の半分の範囲を次回の探索範囲として、探索範囲を狭めていっても良い。探索範囲決定手段1021は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。探索範囲決定手段1021の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。」 3 引用文献3 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。 (引3a)「【0088】<3-2:循環動態パラメータ>上述したように、末梢部での血流量変化と脈波波形とは密接な関係を有するため、末梢部を含む循環系の状態が判れば、脈波波形の変化もある程度推定できる。ここで、循環系の状態を知るには、血管の粘性抵抗やコンプライアンスのような循環動態パラメータの測定が必要となって、大動脈起始部と切痕部における圧力波形や血流量を測定しなければならない。これには、大動脈にカテーテルを挿入して直接測定する方法をとるか、あるいは、超音波エコーなどで間接的に測定する方法をとるか、いずれかを採ることになるが、前者の方法では侵襲的となり、後者の方法では熟練が必要となり、さらに、両者とも装置が大がかりになる、といった問題があった。そこで、本発明者らは、動脈系の挙動をシミュレートした電気的モデルにより、循環動態パラメータを近似的に算出する方法を提案している(特開平6-205747号:発明の名称「脈波解析装置」や、PCT/JP96/03211:発明の名称「生体状態測定装置」)。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを比較する。 ア 引用発明の「大動脈圧e」及び「総末梢血管抵抗TPR」は、それぞれ、本願発明1の「大動脈圧」及び「末梢血管抵抗」に相当する。 また、引用発明の「静電容量Cの端子電圧v_(P)」_( )は、「橈骨動脈部での圧力〔dyn/cm^(2)〕に相当する」ものであり、「電気抵抗R_(c)」は、「動脈系中枢部での血液粘性による血管抵抗〔dyn・s/cm^(5)〕」であり、「電気抵抗R_(p)」は、「動脈系末梢部での血液粘性による血管抵抗〔dyn・s/cm^(5)〕」であり、「静電容量C」は、「動脈系中枢部での血管のコンプライアンス(粘弾性)〔cm^(5)/dyn〕」であり、「インダクタンスL」は、「動脈系中枢部での血液の慣性〔dyn・s^(2)/cm^(5)〕」であるから、引用発明の「静電容量Cの端子電圧v_(P)」、「電気抵抗R_(c)」、「電気抵抗R_(p)」、「静電容量C」及び「インダクタンスL」は、それぞれ、本願発明1の「橈骨動脈圧」、「動脈系中枢部での血管抵抗」、「動脈系末梢部での血管抵抗」、「血管のコンプライアンス」及び「血液の慣性」に相当する。 そして、引用発明は、「動脈系中枢部での血液による慣性、中枢部での血液粘性による血管抵抗(粘性抵抗)、中枢部での血管のコンプライアンス(粘弾性)及び末梢部での血管抵抗(粘性抵抗)の4つのパラメータに着目し、これらを電気回路としてモデリングした」「四要素集中定数モデル」から、「直流的な(平均的な)総末梢血管抵抗TPR」を「算出」する方法であって、「四要素集中定数モデル」は、「静電容量Cの端子電圧v_(P)」、「電気抵抗R_(c)」、「電気抵抗R_(p)」、「静電容量C」及び「インダクタンスL」から構成されるものであり、また、算出された「総末梢血管抵抗TPR」は、「四要素集中定数モデル」から算出されることから、推定値であることは明らかである。 すると、引用発明の「静電容量Cの端子電圧v_(P)」、「電気抵抗R_(c)」、「電気抵抗R_(p)」、「静電容量C」及び「インダクタンスL」から構成される電気回路としてモデリングした」「四要素集中定数モデル」から、「直流的な(平均的な)総末梢血管抵抗TPR」を「算出」する方法は、本願発明1の「大動脈圧と、橈骨動脈圧と、動脈系中枢部での血管抵抗と、動脈系末梢部での血管抵抗と、血管のコンプライアンスと、血液の慣性と、を電気回路モデルに当てはめることで末梢血管抵抗を推定する末梢血管抵抗推定方法」に相当する。 イ 引用発明の「任意の時間t」、「橈骨動脈波に対応」した「応答波形v_(p)」、「最低血圧値E_(min)」、「減衰定数α」及び「角周波数ω」は、本願発明1の時間「t」、「v_(p)」、「E_(min)」「α」及び「ω」に相当する。また、引用発明の「t_(P)は1拍の時間、t_(P1)は大動脈圧の立ち上がりからその圧力が最低血圧値になるまでの時間」であるから、引用発明の「t_(P)」及び「t_(P1)」は、本願発明1の「t_(p)」及び「t_(P1)」に相当する。 すると、引用発明の式(19)及び(20)は、本願発明1の【式1】に相当するものであって、引用発明の「B」、「D_(m1)」、「θ_(1)」、「D_(m2)」、及び「θ_(2)」は、それぞれ、本願発明1の「B」、「D_(1)」、「θ_(1)」、「D_(2)」及び「θ_(2)」に相当するといえる。 ウ 引用発明は、「以下のa.?d.の手順で」、「B、t_(b)、α、ωの最適値」を求めており、「a.?d.の手順」の中の「y_(1)」、「y_(2)」及び「y_(3)」は、「メモリに取り込んだ1拍分の橈骨動脈波形について」求められた、「血圧が最大となる第1ポイントP1に対応した時間t_(1)および血圧値y_(1)と、第1ポイントの後、血圧が一旦落込む第2ポイントに対応した時間t_(2)および血圧値y_(2)と、2番目のピーク点である第3ポイントP3に対応した時間t_(3)および血圧値y_(3)」であるから、本願発明1の「測定により得た橈骨動脈圧v_(p)の値」に相当する。また、「a.?d.の手順」の中の「v_(p)(t_(1))」、「v_(p)(t_(2))」及び「v_(p)(t_(3))」は、本願発明1の「数式1を用いた計算により得た橈骨動脈圧v_(p)の値」に相当する。そして、引用発明は、手順a.において「まず、Bをy_(0)/2?y_(0)の範囲で変化させると同時にt_(b)をt_(p)/2?t_(p)の範囲で変化させ(+0.1間隔)、各Bおよびt_(b)についてv_(p)(t_(1))-y_(1),v_(p)(t_(2))-y_(2),v_(p)(t_(3))-y_(3)が最小となるα、ωを求め」、手順b.において、「aにおいて求めたB、t_(b)、α、ωの中でv_(p)(t_(1))-y_(1),v_(p)(t_(2))-y_(2),v_(p)(t_(3))-y_(3)が最小となるB、t_(b)、α、ωを求め」ており、引用発明の「v_(p)(t_(1))-y_(1),v_(p)(t_(2))-y_(2),v_(p)(t_(3))-y_(3)が最小となる」「B、t_(b)、α、ωの最適値」と、本願発明1の「前記計算により得た橈骨動脈圧の値v_(p)と前記測定により得た橈骨動脈圧の値v_(p)との平均二乗誤差を最小化する減衰定数α、角周波数ω、振幅係数B、時間係数t_(b)の最適解」とは、「前記計算により得た橈骨動脈圧の値v_(p)と前記測定により得た橈骨動脈圧の値v_(p)との誤差を最小化する減衰定数α、角周波数ω、振幅係数B、時間係数t_(b)の最適解」である点で共通するから、引用発明の「以下のa.?d.の手順で」、「B、t_(b)、α、ωの最適値」を求めることと、本願発明の「前記数式1における減衰定数α、角周波数ω、振幅係数B、時間係数t_(b)の値を変化させて前記数式1を用いた計算により得た橈骨動脈圧v_(p)の値と、測定により得た橈骨動脈圧v_(p)の値と、を比較し、前記計算により得た橈骨動脈圧の値v_(p)と前記測定により得た橈骨動脈圧の値v_(p)との平均二乗誤差を最小化する減衰定数α、角周波数ω、振幅係数B、時間係数t_(b)の最適解を決定」することとは、「前記数式1における減衰定数α、角周波数ω、振幅係数B、時間係数t_(b)の値を変化させて前記数式1を用いた計算により得た橈骨動脈圧v_(p)の値と、測定により得た橈骨動脈圧v_(p)の値と、を比較し、前記計算により得た橈骨動脈圧の値v_(p)と前記測定により得た橈骨動脈圧の値v_(p)と誤差を最小化する減衰定数α、角周波数ω、振幅係数B、時間係数t_(b)の最適解を決定」することで共通する。 エ 引用発明の「電気抵抗R_(c)」及び「電気抵抗R_(p)」は、それぞれ、「動脈系中枢部での血液粘性による血管抵抗〔dyn・s/cm^(5)〕」及び「動脈系末梢部での血液粘性による血管抵抗〔dyn・s/cm^(5)〕」であるから、本願発明1の「動脈系中枢部での血管抵抗R_(1)」及び「動脈系末梢部での血管抵抗R_(2)」に相当する。そして、引用発明の「電気抵抗R_(c)」及び「電気抵抗R_(p)」は、「a.?d.の手順で求め」られた「B、t_(b)、α、ωの最適値」を使用して、式(44)及び(45)より求められたものであるから、引用発明の「a.?d.の手順で求め」られた「B、t_(b)、α、ωの最適値」を使用して「電気抵抗R_(c)」及び「電気抵抗R_(p)」を求めることは、本願発明1の「前記最適解を用いて動脈系中枢部での血管抵抗R_(1)及び動脈系末梢部での血管抵抗R_(2)を求め」ることに相当する。 オ 引用発明は、「直流的な(平均的な)総末梢血管抵抗TPRを、TPR=R_(C)+R_(P)により算出」しており、本願発明1は、「総末梢血管抵抗推定値TPRを、係数w_(1),w_(2)を用いて」、「数式2により求め」ているから、引用発明と本願発明1とは、「総末梢血管抵抗推定値TPRを、R_(1)及びR_(2)より求め」る点で共通する。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点)「 大動脈圧と、橈骨動脈圧と、動脈系中枢部での血管抵抗と、動脈系末梢部での血管抵抗と、血管のコンプライアンスと、血液の慣性と、を電気回路モデルに当てはめることで末梢血管抵抗を推定する末梢血管抵抗推定方法であって、 時間をt、大動脈圧の立ち上がりからその圧力が最低血圧値になるまでの時間をt_(P1)、橈骨動脈の圧力すなわち橈骨動脈波をv_(p)、最低血圧値をE_(min)、橈骨動脈の圧力における振幅係数をB、橈骨動脈の圧力における時間係数をt_(b)、橈骨動脈の圧力における振動成分の第1の振幅係数をD_(1)、指数関数すなわちexpをe、減衰定数をα、角周波数をω、第1の位相をθ_(1)、1拍の時間をt_(p)、橈骨動脈の圧力における振動成分の第2の振幅係数をD_(2)、第2の位相をθ_(2)としたときに、これらの血管の要素を次の数式1のように電気回路モデルによって表し、 【数1】 前記数式1における減衰定数α、角周波数ω、振幅係数B、時間係数t_(b)の値を変化させて前記数式1を用いた計算により得た橈骨動脈圧v_(p)の値と、測定により得た橈骨動脈圧v_(p)の値と、を比較し、前記計算により得た橈骨動脈圧の値v_(p)と前記測定により得た橈骨動脈圧の値v_(p)との誤差を最小化する減衰定数α、角周波数ω、振幅係数B、時間係数t_(b)の最適解を決定し、 前記最適解を用いて動脈系中枢部での血管抵抗R_(1)及び動脈系末梢部での血管抵抗R_(2)を求め、さらに、総末梢血管抵抗推定値TPRを、R_(1)及びR_(2)より求める方法。」 (相違点1)前記計算により得た橈骨動脈圧の値v_(p)と前記測定により得た橈骨動脈圧の値v_(p)との誤差を最小化する減衰定数α、角周波数ω、振幅係数B、時間係数t_(b)の最適解を決定する際の最小化として、本願発明1は、「平均二乗誤差」を用いているのに対し、引用発明は、「v_(p)(t_(1))-y_(1),v_(p)(t_(2))-y_(2),v_(p)(t_(3))-y_(3)」を用いている点。 (相違点2)末梢血管抵抗推定値TPRを、本願発明1は「係数w_(1),w_(2)を用いて」、 「【式2】 」 「により求め」ているのに対し、引用発明は、「TPR=R_(C)+R_(P)により算出」している点。 (2)判断 事案に鑑み、上記相違点2について検討する。 引用発明に記載された「TPR」の値は、上記(1)で検討したとおり推定値であることは明らかであり(この点、上記摘記(引3a)のも、引用発明を認定してた引用文献1が近似的な算出であることが記載されている。)、何らかの方法で補正することは、当業者が容易に想到できたことであるといえる。しかしながら、その補正方法として、係数w_(1),w_(2)を用いて、「TPR=w_(1)(R_(C)+R_(P))+w_(2)」と補正する方法は、引用文献1?3に記載も示唆もなく、血管抵抗を推定する技術において周知あるいは公知の方法であるともいえないから、推定値を補正する方法は種々存在する中で、係数w_(1),w_(2)を用いて、「TPR=w_(1)(R_(C)+R_(P))+w_(2)」と補正する方法を、引用発明に適用し上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。 したがって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明や引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 2 本願発明2?5について 本願発明2?5も、本願発明1の「末梢血管抵抗推定値TPRを、係数w_(1),w_(2)を用いて」、 「【式2】 」 「により求める」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明や引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明1?5は、当業者が引用発明や引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-10-21 |
出願番号 | 特願2014-198384(P2014-198384) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(A61B)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | ▲高▼原 悠佑 |
特許庁審判長 |
三崎 仁 |
特許庁審判官 |
東松 修太郎 福島 浩司 |
発明の名称 | 末梢血管抵抗推定方法 |
代理人 | 特許業務法人鷲田国際特許事務所 |
代理人 | 鷲田 公一 |