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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 特174条1項  A23L
管理番号 1355933
異議申立番号 異議2018-700463  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-11-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-06-06 
確定日 2019-08-16 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6243864号発明「ノンアルコール飲料の後味の改善と飲みやすさの増強方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6243864号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕、〔6-10〕について訂正することを認める。 特許第6243864号の請求項6、7、9に係る特許を維持する。 特許第6243864号の請求項1-5、8、10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6243864号の請求項1?10に係る特許についての出願は、平成25年2月26日に出願された特願2013-36352号の一部を、平成27年2月18日に新たな特許出願としたものであり、平成29年11月17日にその特許権の設定登録がされ、平成29年12月6日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
平成30年 6月 6日 :特許異議申立人白井 雅恵(以下「申立人
」という。)による請求項1?10に係る
特許に対する特許異議の申立て
平成30年 8月23日付け:取消理由通知書
平成30年10月25日 :特許権者による意見書の提出
平成31年 2月 7日付け:取消理由通知書(決定の予告)
平成31年 4月12日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提

令和 元年 5月31日 :申立人による意見書の提出

2 訂正の適否
(1) 訂正の内容
平成31年4月12日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
カ 訂正事項6
訂正前の請求項6に、「水溶性食物繊維を含有するノンアルコール飲料の後味を改善するとともに飲みやすさを増強する方法であって、
前記ノンアルコール飲料は、レモンチューハイテイスト飲料であり、
前記ノンアルコール飲料は前記水溶性食物繊維を0.75?3.00w/v%含有し、
前記水溶性食物繊維の含有量に対してナトリウムの含有量の比率(前記ナトリウムの含有量/前記水溶性食物繊維の含有量)が、0.002?0.070となるように」とあるのを、
「難消化性デキストリンを含有するノンアルコール飲料の後味を改善するとともに飲みやすさを増強する方法であって、
前記ノンアルコール飲料は、チューハイ飲料の味わいを奏するように調製されたレモンチューハイテイスト飲料であり、
前記ノンアルコール飲料は前記難消化性デキストリンを0.75?3.00w/v%含有し、
前記難消化性デキストリンの含有量に対してナトリウムの含有量の比率(前記ナトリウムの含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)が、0.009?0.036となるように」と訂正する。
キ 訂正事項7
訂正前の請求項7に、「前記水溶性食物繊維の含有量は、1.00?2.00w/v%である」とあるのを、
「前記難消化性デキストリンの含有量は、1.00?2.00w/v%である」と訂正する。
ク 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
ケ 訂正事項9
訂正前の請求項9に 「請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載の」とあるのを、
「請求項6又は請求項7に記載の」と訂正する。
コ 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項10を削除する。
サ 訂正事項11
願書に添付した明細書の【発明の名称】に「ノンアルコール飲料および後味の改善と飲みやすさの増強方法」とあるのを、
「ノンアルコール飲料の後味の改善と飲みやすさの増強方法」と訂正する。
シ 訂正事項12
願書に添付した明細書の段落【0001】に、「本発明は、ノンアルコール飲料および後味の改善と飲みやすさの増強方法に係り、特に、水溶性食物繊維を含有するノンアルコール飲料および後味の改善と飲みやすさの増強方法に関する。」とあるのを、
「本発明は、ノンアルコール飲料の後味の改善と飲みやすさの増強方法に係り、特に、水溶性食物繊維を含有するノンアルコール飲料の後味の改善と飲みやすさの増強方法に関する。」と訂正する。
ス 訂正事項13
願書に添付した明細書の段落【0008】に、「本発明は、後味が改善されるとともに飲みやすさが増強されたノンアルコール飲料および後味の改善と飲みやすさの増強方法」とあるのを、
「本発明は、ノンアルコール飲料の後味の改善と飲みやすさの増強方法」と訂正する。
セ 訂正事項14
願書に添付した明細書の段落【0009】に、「前記課題は、以下の手段により解決することができる。
(1)水溶性食物繊維と、ナトリウムと、を含有し、前記水溶性食物繊維の含有量は、0.75?3.00w/v%であり、前記水溶性食物繊維の含有量に対する前記ナトリウムの含有量の比率(前記ナトリウムの含有量/前記水溶性食物繊維の含有量)は、0.002?0.070であり、前記ナトリウムは、クエン酸ナトリウム、又は、塩化ナトリウムに由来するものであって、レモンチューハイテイスト飲料であることを特徴とするノンアルコール飲料。
(2)前記水溶性食物繊維の含有量は、1.00?2.00w/v%であることを特徴とする前記(1)に記載のノンアルコール飲料。
(3)前記水溶性食物繊維の含有量に対する前記ナトリウムの含有量の比率(前記ナトリウムの含有量/前記水溶性食物繊維の含有量)は、0.008?0.050であることを特徴とする前記(1)または前記(2)に記載のノンアルコール飲料。
(4)前記ナトリウムは、クエン酸ナトリウム由来のものであることを特徴とする前記(1)乃至前記(3)のいずれか1つに記載のノンアルコール飲料。
(5)前記水溶性食物繊維は、難消化性デキストリンであることを特徴とする前記(1)乃至前記(4)のいずれか1つに記載のノンアルコール飲料。
(6)水溶性食物繊維を含有するノンアルコール飲料の後味を改善するとともに飲みやすさを増強する方法であって、前記ノンアルコール飲料は、レモンチューハイテイスト飲料であり、前記ノンアルコール飲料は前記水溶性食物繊維を0.75?3.00w/v%含有し、前記水溶性食物繊維の含有量に対してナトリウムの含有量の比率(前記ナトリウムの含有量/前記水溶性食物繊維の含有量)が、0.002?0.070となるように前記ナトリウムを前記ノンアルコール飲料に含有させ、前記ナトリウムは、クエン酸ナトリウム、又は、塩化ナトリウムに由来するものであることを特徴とする後味の改善と飲みやすさの増強方法。
(7)前記水溶性食物繊維の含有量は、1.00?2.00w/v%であることを特徴とする前記(6)に記載の後味の改善と飲みやすさの増強方法。
(8)前記水溶性食物繊維の含有量に対する前記ナトリウムの含有量の比率(前記ナトリウムの含有量/前記水溶性食物繊維の含有量)は、0.008?0.050であることを
特徴とする前記(6)または前記(7)に記載の後味の改善と飲みやすさの増強方法。
(9)前記ナトリウムは、クエン酸ナトリウム由来のものであることを特徴とする前記(6)乃至前記(8)のいずれか1つに記載の後味の改善と飲みやすさの増強方法。
(10)前記水溶性食物繊維は、難消化性デキストリンであることを特徴とする前記(6)乃至前記(9)のいずれか1つに記載の後味の改善と飲みやすさの増強方法。」とあるのを、
「前記課題は、以下の手段により解決することができる。
(1) (削除)
(2) (削除)
(3) (削除)
(4) (削除)
(5) (削除)
(6)難消化性デキストリンを含有するノンアルコール飲料の後味を改善するとともに飲みやすさを増強する方法であって、前記ノンアルコール飲料は、チューハイ飲料の味わいを奏するように調製されたレモンチューハイテイスト飲料であり、前記ノンアルコール飲料は前記難消化性デキストリンを0.75?3.00w/v%含有し、前記難消化性デキストリンの含有量に対してナトリウムの含有量の比率(前記ナトリウムの含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)が、0.009?0.036となるように前記ナトリウムを前記ノンアルコール飲料に含有させ、前記ナトリウムは、クエン酸ナトリウム、又は、塩化ナトリウムに由来するものであることを特徴とする後味の改善と飲みやすさの増強方法。
(7)前記難消化性デキストリンの含有量は、1.00?2.00w/v%であることを特徴とする前記(6)に記載の後味の改善と飲みやすさの増強方法。
(8) (削除)
(9) 前記ナトリウムは、クエン酸ナトリウム由来のものであることを特徴とする前記(6)又は前記(7)に記載の後味の改善と飲みやすさの増強方法。
(10) (削除) 」と訂正する。
ソ 訂正事項15
願書に添付した明細書の段落【0010】の「本発明に係るノンアルコール飲料は、飲料中に含まれる水溶性食物繊維に対して所定の比率でナトリウムを含有することにより、水溶性食物繊維の香味とナトリウムの香味との相乗効果で、後味を改善するとともに、飲みやすさを増強することができる。」を削除する。
(2) 訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1?5、8、10
訂正事項1?5、8、10は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1?5、8、10を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1?5、8、10が、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは、明らかである。
イ 訂正事項6
訂正事項6のうち、訂正前の請求項6に「水溶性食物繊維」とあったものを、「難消化性デキストリン」と限定すること、及び、「難消化性デキストリンの含有量に対してナトリウムの含有量の比率(前記ナトリウムの含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)が、0.009?0.036となるように」と、数値の範囲を狭くすることは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項6のうち、「レモンチューハイテイスト飲料」について、「チューハイ飲料の味わいを奏するように調製されたレモンチューハイテイスト飲料」とすることは、「レモンチューハイテイスト飲料」が「チューハイ飲料の味わいを奏するように調製された」ものであることを明瞭にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、水溶性植物繊維として、難消化性デキストリンについては、本件特許明細書の段落【0021】に、「水溶性食物繊維としては、難消化性デキストリン、ポリデキストロース及びグアーガム分解物などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、水溶性食物繊維としては、前記したもの以外にも、例えば、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸、ラミナリン、フコイジン、カラギーナンなどを用いることができる。
その中でも、後記実施例に示されているように、難消化性デキストリンとポリデキストロースを好適に用いることができ、特に難消化性デキストリンを好適に用いることができる。商業上入手可能な難消化性デキストリンとしては、例えば、松谷化学工業株式会社製のファイバーソル、パインファイバー等があり、ポリデキストロースとしては、例えばダニスコジャパン株式会社製のライテス等がある。」と記載されている。
また、ナトリウムの含有量/難消化性デキストリンの含有量が、0.009、0.036であることについては、訂正前の本件特許明細書の段落【0059】の【表2】のNo.2-3の比率の欄に「0.009」が、No.2-6の比率の欄に「0.036」と記載されている。
さらに、「レモンチューハイテイスト飲料」が「チューハイ飲料の味わいを奏するように調製された」ものであることは、本件特許明細書の段落【0016】に、「『チューハイテイスト飲料』とは、チューハイ様(風)飲料とも称され、チューハイ飲料のような味わいを奏する、つまり、チューハイ飲料を飲用したような感覚を飲用者に与えるノンアルコール飲料である。詳細には、エタノール含有量を所定値未満に抑えつつ、後記する果汁、果汁フレーバー、甘味料、香料、酸味料等を添加することにより、チューハイ飲料の味わいを奏するように調製された飲料である。」と記載されている。
そうすると、訂正事項6は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 訂正事項7
訂正事項7は、訂正前の請求項7に、「水溶性食物繊維」とあったのを、「難消化性デキストリン」と限定するものあるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、上記イと同様に、訂正事項7は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 訂正事項9
訂正事項9は、訂正前の請求項9に、「請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載の」とあるのを、「請求項6又は請求項7に記載の」と訂正するものであり、請求項8を引用しないものとするとともに、訂正前の請求項8を削除する訂正事項8との整合を図るための訂正であり、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項9が、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは、明らかである。
オ 訂正事項11?15
訂正事項11?15は、上記訂正事項1?10に係る訂正に伴い、特許請求の範囲と本件特許明細書との整合性を図るための訂正であり、訂正事項11?15に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、上記ア?エで述べたことと同様に、訂正事項11?15は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
カ なお、訂正前の請求項1?5は、請求項2?5が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあり、訂正前の請求項6?10は、請求項7?10が、訂正の請求の対象である請求項6の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項[1?5]及び一群の請求項[6?10]について請求されている。
(3) 小括
上記のとおり、訂正事項1?5、7、8、10に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条4項、及び、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
訂正事項6、9に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条4項、及び、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
また、訂正事項11?15に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条4項、及び、同条第9項で準用する同法第126条第4項、第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、及び明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正後の請求項〔1?5〕、〔6?10〕について訂正することを認める。

3 本件発明
本件訂正による訂正後の請求項6、7、9に係る発明について、訂正特許請求の範囲には、以下のとおり記載されている。以下、訂正後の本件特許に係る発明を請求項の番号に従って「本件発明6」などといい、総称して「本件発明」という。

【請求項6】
難消化性デキストリンを含有するノンアルコール飲料の後味を改善するとともに飲みやすさを増強する方法であって、
前記ノンアルコール飲料は、チューハイ飲料の味わいを奏するように調製されたレモンチューハイテイスト飲料であり、
前記ノンアルコール飲料は前記難消化性デキストリンを0.75?3.00w/v%含有し、
前記難消化性デキストリンの含有量に対してナトリウムの含有量の比率(前記ナトリウムの含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)が、0.009?0.036となるように前記ナトリウムを前記ノンアルコール飲料に含有させ、
前記ナトリウムは、クエン酸ナトリウム、又は、塩化ナトリウムに由来するものであることを特徴とする後味の改善と飲みやすさの増強方法。
【請求項7】
前記難消化性デキストリンの含有量は、1.00?2.00w/v%であることを特徴とする請求項6に記載の後味の改善と飲みやすさの増強方法。
【請求項9】
前記ナトリウムは、クエン酸ナトリウム由来のものであることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の後味の改善と飲みやすさの増強方法。

4 取消理由通知に記載した取消理由について
(1) 取消理由の概要
当審が平成31年2月7日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
ア 本件発明は、「ノンアルコール飲料」が「レモンチューハイテイスト飲料」であるとするものであるが、「チューハイテイスト飲料」とは、どのようなものを具体的に特定しているのかが理解できないため、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである。
イ 本件発明の「レモンチューハイテイスト飲料」は、発明の詳細な説明に課題を解決できたものとして具体的に記載されていなく、また、本件発明が特定するナトリウムの含有量及び水溶性食物繊維の含有量の全ての範囲において、課題を解決できることも確認されていないので、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである。
ウ 本件発明の発明の詳細な説明の記載では、「レモンチューハイテイスト飲料」がどのようなものを特定しているのか明確でないので、本件発明に関してどのように実施するのか不明であり、当該所期の作用効果を奏する発明として実施することができる程度に発明の詳細な説明の記載が明確かつ十分にされているとはいえないから、本件特許の発明の詳細な説明の記載が不備のため、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである。
エ 本件特許の請求項1?10に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
オ 本件特許の請求項1?10に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1又は2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

引用文献1:特開2012-115246号公報(申立人提出の甲第4号証)
引用文献2:特開平10-191944号公報(同じく甲第5号証)
引用文献3:特願2015-30053号の平成29年7月26日付け手続補足書(同じく甲第3号証)
(2) 当審の判断
ア 理由ア(第36条第6項第2号)について
(ア) 本件訂正により、 本件発明の「レモンチューハイテイスト飲料」が「チューハイ飲料の味わいを奏するように調製された」ものであることが特定された。そして、「チューハイ飲料」は、酎ハイが、一般に「焼酎を炭酸水で割った飲み物。」(広辞苑第六版)と広く認識されているものであるから、「レモンチューハイテイスト飲料」は、レモンの味のする焼酎を炭酸水で割ったものの味わいを奏するにように調製されたものであると理解できる。
そして、「チューハイ飲料の味わいを奏するように調製」することについて、本件特許明細書には、「詳細には、エタノール含有量を所定値未満に抑えつつ、後記する果汁、果汁フレーバー、甘味料、香料、酸味料等を添加することにより、チューハイ飲料の味わいを奏するように調製された」(【0016】)と記載されていることも参酌すると、当業者であれば、本件発明の「チューハイ飲料の味わいを奏するように調製されたレモンチューハイテイスト飲料」を具体的に想定できると認められる。
申立人は、「単なるレモン風味の炭酸飲料が『レモンチューハイテイスト飲料』に該当するのかについて、その境界線が明確でなければ、・・・第三者に不測の不利益を及ぼすことになる。」(令和元年5月31日意見書2ページ「3-1」の項。当審注:「・・・」は記載の省略を意味する。)と主張しているが、「単なるレモン風味の炭酸飲料」は、「チューハイ飲料の味わいを奏するように調製された」ものではないから、本件発明の「レモンチューハイテイスト飲料」に該当しない。
(イ) したがって、本件発明に係る特許請求の範囲の記載は不明確であるとすることはできず、特許法第36条第6項第2号の要件を満たさないものではない。
イ 理由イ(第36条第6項第1号)について
(ア) 本件発明の課題・効果について、本件特許明細書には、以下の事項が記載されている。
「【0008】
そこで、本発明は、ノンアルコール飲料の後味の改善と飲みやすさの増強方法を提供することを課題とする。」(本件訂正後)
「【発明の効果】
【0010】
本発明に係る後味の改善と飲みやすさの増強方法は、飲料中に含まれる水溶性食物繊維に対して所定の比率でナトリウムを含有させることにより、水溶性食物繊維の香味とナトリウムの香味との相乗効果で、後味を改善するとともに、飲みやすさを増強することができる。」(本件訂正後)
そうすると、本件発明の課題は、「ノンアルコール飲料の後味の改善と飲みやすさの増強方法を提供すること」(以下「本件発明の課題」という。)であると認められる。
(イ) また、本件特許明細書には、後味の改善、飲みやすさの増強、ノンアルコール飲料について、以下の事項が記載されている。
「【0012】
以下、本発明に係るノンアルコール飲料およびその製造方法、ならびに後味の改善と飲みやすさの増強方法を実施するための形態(実施形態)について説明する。
なお、本願における『後味』とは、詳細には、飲料を飲んだ直後ではなく、飲んだ後に暫く舌の上に残る味覚を示すものであり、『飲みやすさ』とは、詳細には、飲料を飲んだときに味の引っかかりがない様を示すものである。」
「【0013】
[ノンアルコール飲料]
本実施形態に係るノンアルコール飲料とは、水溶性食物繊維と、ナトリウムとを含有する飲料である。
そして、ノンアルコール飲料とは、エタノール含有量が1.00体積%未満の飲料であり、炭酸飲料、果汁または野菜汁入り飲料、健康飲料といったものから、ビールテイスト飲料、チューハイテイスト飲料、カクテルテイスト飲料、梅酒テイスト飲料まで、様々な飲料が含まれる。」
(ウ) 一方、本件特許明細書には、実施例及びその評価について、以下の事項が記載されている。
「【0043】
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明に係るノンアルコール飲料およびその製造方法、ならびに後味の改善と飲みやすさの増強方法について説明する。
【0044】
[サンプル]
サンプルとして、難消化性デキストリン(松谷化学工業株式会社製:パインファイバー)、クエン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製:クエン酸三ナトリウム(結晶物))を所定量含有させたノンアルコール飲料(No.1-1?1-7、No.2-1?2-7、No.3-1?3-7)を製造した。
【0045】
また、サンプルとして、難消化性デキストリン(松谷化学工業株式会社製:パインファイバー)、塩化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製:塩化ナトリウム)を所定量含有させたノンアルコール飲料(No.4-1)を製造した。
【0046】
また、サンプルとして、ポリデキストロース(ダニスコジャパン株式会社製:ライテス)、クエン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製:クエン酸三ナトリウム(結晶物))を所定量含有させたノンアルコール飲料(No.5-1、5-2)を製造した。
【0047】
なお、各サンプルは、蒸留水を加えて総量が350mlとなるように調製し、所定のガス圧(20℃:0.18MPa)となるように炭酸ガスを内包させた。そして、各サンプルのエタノール含有量は、いずれも0.005体積%未満であった。」
「表1


「表2


「表3


「表4


そして、これらの評価について、以下のとおり記載されている。
「【0063】
表2に示すNo.2-2?2-7に係るサンプル、表3に示すNo.3-3?3-7に係るサンプル、表4に示すNo.4-1に係るサンプル、および、表5に示すNo.5-2に係るサンプルは、本発明の要件を満たしていたので、後味増強効果、飲みやすさ増強効果、のいずれもが合格との評価となった。また、これらのサンプルは、総合評価においても飲料として好適であるという評価となった。
ただし、これらのサンプルの中でも、No.2-3?2-6に係るサンプル、No.3-4?3-7に係るサンプル、No.4-1に係るサンプル、および、No.5-2に係るサンプルは、ナトリウムの比率が本発明の好ましい要件を満たしていたので、後味増強効果、飲みやすさ増強効果、のいずれもが特に効果があるとの評価となった。
さらに、その中でも、No.2-3?2-6に係るサンプル、No.3-4?3-6に係るサンプル、No.4-1に係るサンプル、および、No.5-2に係るサンプルは、水溶性食物繊維の含有量が本発明の好ましい要件を満たしていたので、総合評価においても飲料として優秀であるという評価となった。
なお、No.2-4に係るサンプルとNo.4-1に係るサンプルとは、同量の水溶性食物繊維と、同量のナトリウムを含有するにもかかわらず、No.2-4に係るサンプルの方が総合評価の点数が高かった。この結果より、塩化ナトリウム由来のナトリウムよりもクエン酸ナトリウム由来のナトリウムの方が、ノンアルコール飲料として好ましい香味を発揮させることがわかった。
また、No.2-4に係るサンプルとNo.5-2に係るサンプルとを比較すると、後味改善効果および総合評価においてNo.2-4に係るサンプルの方が良好な結果となったため、本発明は、水溶性食物繊維の中でも難消化性デキストリンを含有したノンアルコール飲料に対して特に効果があることがわかった。
【0064】
これに対し、No.1-1?1-7に係るサンプル、No.2-1に係るサンプル、および、No.3-2に係るサンプル、および、No.5-1に係るサンプルは、本発明の要件を満たしていなかったので、後味改善効果または飲みやすさ増強効果の少なくとも一方の効果が得られなかった。これは、No.1-1?1-7に係るサンプル、および、No.2-1に係るサンプル、および、No.5-1に係るサンプルがナトリウムを含まなかったためであり、No.3-2に係るサンプルのナトリウムの比率が本発明の規定する範囲外であったためである。
【0065】
以上説明したように、ノンアルコール飲料の水溶性食物繊維の含有量に対して、ナトリウムの含有量の比率が所定の数値範囲に該当するようにナトリウムを添加することにより、後味を改善できるとともに、飲みやすさについても増強でき、香味の優れた飲料を提供できることが確認された。」
(エ) 上記(ウ)の記載事項から、本件特許明細書には、種々のノンアルコール飲料のベースとなる、難消化性デキストリン、クエン酸ナトリウム(塩化ナトリウム)、蒸留水、炭酸ガスからなる飲料について、ノンアルコール飲料の難消化性デキストリンの含有量に対して、ナトリウムの含有量の比率が所定の数値範囲にあるものは、ナトリウムを添加することにより、後味が改善し、飲みやすさについても増強できることが確認されている。
このことから、難消化性デキストリンとナトリウムとが、所定の数値範囲で共存することで、本件発明の課題を解決できるものと理解でき、ベースとなる飲料に他の成分が追加されて味や香りに違いが生じたとしても、難消化性デキストリンとナトリウムの両者が所定の数値範囲で共存する限りにおいては、程度の違いがあるとしても、両者による後味の改善及び飲みやすさについての増強できる効果が奏し得ないというものでもない。
そうすると、本件発明の課題は、難消化性デキストリンとナトリウムとが、所定の数値範囲で共存する、本件発明の「チューハイ飲料の味わいを奏するように調製されたレモンチューハイテイスト飲料」においても解決し得るものと認められる。
(オ) また、本件発明において特定する、難消化性デキストリンの添加量、前記難消化性デキストリンの含有量に対してナトリウムの含有量の比率(前記ナトリウムの含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)の全ての範囲において、本件発明の課題を解決し得るかについては、以下のとおりである。
本件特許明細書の実施例において、No.2-3(難消化性デキストリン:1.50w/v%、比率0.009)、2-4(難消化性デキストリン:1.50w/v%、比率0.018)、2-5(難消化性デキストリン:1.50w/v%、比率0.027)、2-6(難消化性デキストリン:1.50w/v%、比率0.036)に係るサンプル、No.3-6(難消化性デキストリン:2.00w/v%、比率0.020)、3-7(難消化性デキストリン:3.00w/v%、比率0.013)に係るサンプル、No.4-1(難消化性デキストリン:1.50w/v%、比率0.018)に係るサンプルにおいて、後味の改善と、飲みやすさが増強できたことが確認されている(表2?4参照。)。
また、訂正後の本件発明の実施例でなくなったが、No.3-3(難消化性デキストリン:0.75w/v%、比率0.053)も、後味の改善と、飲みやすさが増強できたことが確認されている(表3参照。)。
そうすると、上記No.2-3、2-6より、難消化性デキストリンに対するナトリウムの比率が0.009?0.036の範囲であれば、後味の改善と、飲みやすさが増強するという効果が確認されている。
また、上記No.3-3、3-7より、難消化性デキストリンの添加量が0.75w/v%及び3.00w/v%の場合に、ナトリウムを含有させることにより、後味の改善と飲みやすさが増強するという効果が確認されている。
そうすると、本件発明は、その特定する数値範囲で、上記本件発明の課題を解決し得るものと認められる。
(カ) したがって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであるから、特許法第36条第6項第1号の要件を満さないものではない。
ウ 理由ウ(第36条第4項第1号)について
上記アに述べたとおり、本件訂正により、本件発明は、明確なものとなった。したがって、本件発明に関して、どのように実施すればよいかのかも明確となったので、本件発明を実施することができる程度に発明の詳細な説明の記載が明確かつ十分にされていないとはいえず、特許法第36条第4項第1号の要件を満たさないものではない。
エ 理由エ(第29条第1項第3号)及び理由オ(第29条第2項)について
(ア) 引用文献1を主引用例として
a 刊行物
引用文献1(特開2012-115246号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
馬鈴薯由来でDEが2以上5未満であるデキストリンを含有する、炭酸及び/又はアルコール含有飲料。
【請求項2】
飲料における上記デキストリン含量が0.2質量%未満である、請求項1に記載の炭酸及び/又はアルコール含有飲料。
【請求項3】
糖類含量が2.5w/v%以下である、請求項1又は2に記載の炭酸及び/又はアルコール含有飲料。
【請求項4】
更に、高甘味度甘味料を含有する、請求項1?3のいずれかに記載の炭酸及び/又はアルコール含有飲料。
【請求項5】
高甘味度甘味料がスクラロース及び/又はアセスルファムカリウムである、請求項4に記載の炭酸及び/又はアルコール含有飲料
【請求項6】
馬鈴薯由来でDEが2以上5未満であるデキストリンを添加することを特徴とする、炭酸及び/又はアルコール含有飲料のコク味増強方法。
【請求項7】
高甘味度甘味料を含有する炭酸及び/又はアルコール含有飲料に、馬鈴薯由来でDEが2以上5未満であるデキストリンを添加することを特徴とする、高甘味度甘味料が有する甘味の後引き改善方法。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、十分なコク味が付与された炭酸及び/又はアルコール含有飲料に関する。
具体的には、十分なコク味が付与され、かつ炭酸やアルコール特有の清涼感、キレ味やフレーバーリリースに優れた飲料に関する。
また、本発明は、糖類含量を2.5w/v%以下に低減した場合であっても、糖類含量が2.5w/v%よりも高い飲料と、遜色ない十分なコク味が付与された炭酸及び/又はアルコール含有飲料に関する。
更に本発明は、高甘味度甘味料を含有した炭酸及び/又はアルコール含有飲料において、高甘味度甘味料特有の甘味の後引きを改善する方法に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
炭酸やアルコールを含有した飲料は独自の清涼感、キレが特徴的な飲料である。しかし、飲料のコク味増強を目的として特許文献1?4に開示されている従来のデキストリンを添加した炭酸及び/又はアルコール含有飲料は、コク味の増強効果が不十分なばかりか、炭酸やアルコール特有の清涼感やキレが損なわれ、商品価値が低下するといった課題を抱えていた。
例えば、特許文献2に開示されたサイクロデキストリンは、環状構造中に物質を包接する機能を有するため、炭酸及び/又はアルコールを含有する飲料のフレーバーリリースが悪化するといった課題を抱えていた。実際、特許文献2においても、サイクロデキストリンの添加により、酸味、苦味や渋味のカドがとれ、のど越しがマイルドとなること、つまり炭酸特有の清涼感やキレが損なわれることが開示されている。
【0007】
本発明ではかかる課題に鑑み、十分なコク味が増強されつつも、炭酸やアルコール特有の清涼感、キレやフレーバーリリースが保持された炭酸及び/又はアルコール含有飲料を提供することを目的とする。
特に、近年人気を博している低カロリー飲料は、糖類含量を低減しているため、どうしても水っぽく薄い味となりやすい。しかし、糖類含量を低減することにより、炭酸及び/又はアルコール含有飲料のフレーバーリリースは良好となるが、従来のデキストリンを用いた場合、十分なコク味を付与するために必要な添加量を加えると、かえってフレーバーリリースが悪化するといった課題を抱えていた。
かかる課題に鑑み、本発明では、特に、糖類含量が2.5w/v%以下に低減された、炭酸及び/又はアルコール含有飲料であっても、特有の清涼感、キレやフレーバーリリースを損なうことなく、十分なコク味が付与された飲料を提供することを目的とする。」
「【0008】
本発明はまた、高甘味度甘味料の甘味の後引きをも改善した、炭酸及び/又はアルコール含有飲料を提供することを目的とする。飲料中に含まれる糖類の低減手法としては、単に、ショ糖、果糖ブドウ糖液糖などの糖類含量を低減させる方法や、糖類に代えて高甘味度甘味料(スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ステビア、ネオテーム等)を使用する方法が挙げられるが、高甘味度甘味料は特有の甘味の後引きを有するため、消費者に敬遠される場合もある。本発明では、糖類含量を低減させた場合のコク味増強効果に加え、高甘味度甘味料を用いた場合に生じる甘味の後引きをも改善した、炭酸及び/又はアルコール含有飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記のごとき課題を解決すべく鋭意研究した結果、馬鈴薯由来でDEが2以上5未満のデキストリンを添加することにより、炭酸やアルコール特有の清涼感、キレやフレーバーリリースに影響を与えることなく、十分なコク味が付与された、炭酸及び/又はアルコール飲料を提供できることを見出した。」
「【0013】
本発明で用いるデキストリンは馬鈴薯を由来原料とし、原料中に含有される澱粉を加水分解して得ることができる。現在市販されているデキストリンの原料は馬鈴薯、コーン、ワキシーコーン、小麦、米、もち米、タピオカ等が存在するが、馬鈴薯以外を由来澱粉とするデキストリンを用いた場合は、後述のように、十分なコク味を付与できなかったり、喉越しの悪化を招く等、十分なコク味と清涼感、キレやフレーバーリリースを兼ね備えた炭酸及び/又はアルコール含有飲料を提供することができない。」
「【0017】
炭酸及び/又はアルコール含有飲料に対する本発明のデキストリンの添加量は、例えば、0.001?5質量%、好ましくは0.005?5質量%、更に好ましくは0.01質量%以上0.2質量%未満である。添加量が5質量%を大きく上回るとコクが強調されすぎることで、清涼感を感じにくくなる場合があり、一方で添加量が0.001質量%と下回ると十分なコク味増強効果が得られない場合がある。
本発明の炭酸及び/又はアルコール含有飲料は、従来技術に比べて、好ましくは、特に低添加量のデキストリンを用いることを特徴とする。例えば、特許文献1の実施例1?2に開示されたシクロデキストリンの添加量は1%、特許文献2に係る発明のデキストリンの添加量は0.5?5質量%、特許文献3では0.5?1.5質量%、特許文献4では1%以上と、従来技術では0.5%以上のデキストリンを使用することが通常であった。
一方、本発明では、特許文献2の実施例1において、1%の添加量でも効果がないとされていたDEが2以上5未満のデキストリンであっても、馬鈴薯由来のデキストリンを用いることにより、0.2質量%未満と極めて低添加量にも関わらず、十分なコク味を炭酸及び/又はアルコール含有飲料に付与でき、更には清涼感、キレやフレーバーリリースも良好である、炭酸及び/又はアルコール含有飲料を提供できることを見出して至った発明である。」
「【0018】
本発明でいう炭酸及び/又はアルコール含有飲料とは、炭酸及び/又はアルコールを含有する飲料であり、例えば、JASで定められた炭酸飲料や、酒税法上の『酒』を指すアルコール飲料などが挙げられる。具体的には、コーラ、サイダー、ジンジャーエール、メロンソーダ、炭酸水、栄養ドリンクといった炭酸を含有する飲料や、ビール、発泡酒等の炭酸及びアルコールを含有する飲料、梅酒、その他の雑酒などの、アルコールを含有する飲料を挙げることができる。
特に、アルコールを含有する飲料では、好ましくは飲料中のアルコール含量が1度以上、好ましくは1?20度であることが望ましい。」
「【0025】
実験例1 炭酸飲料の調製(レモン味)
表1の処方に基づいて炭酸飲料(レモン味)を調製した。具体的には水に、各種デキストリンを溶解した後、甘味料、クエン酸、クエン酸三ナトリウム及び香料を添加し、イオン交換水にて20部まで加水し、濃縮シロップを調製した。調製した濃縮シロップに炭酸水80部を加え容器に充填後、殺菌して炭酸飲料を調製した。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】


「【0029】
得られた炭酸飲料について、パネラー3名で、(1)コク味増強効果、(2)清涼感、キレ、(3)フレーバーリリース、及び(4)甘味の後引き改善効果を評価した。結果を表3に示す。
(1)コク味増強効果:コク味増強効果が高いものを5、効果がないものを1として5段階で評価した。
(2)清涼感やキレが良好なものを5、清涼感がない、キレが悪いものを1として5段階で評価した。
(3)フレーバーリリースが良好なものを5、悪いものを1として5段階で評価した。
(4)甘味の後引き改善効果が高いものを5、高甘味度甘味料特有の甘味の後引きを感じるものを1として5段階で評価した。
【0030】
【表3】



上記記載事項を総合し、実験例1に着目して整理すると、引用文献1には、次の飲料についての方法の発明(以下「引1発明」という。)が記載されていると認められる。
「水に、馬鈴薯由来(DE3.5)のデキストリンを0.03?1.9部溶解した後、甘味料0.055部、クエン酸0.1部、クエン酸三ナトリウム0.02部及び香料0.1部を添加し、イオン交換水にて20部まで加水し、濃縮シロップを調製し、調製した濃縮シロップに炭酸水80部を加え容器に充填後、殺菌する、レモン味の炭酸飲料の調製方法。」
b 本件発明6について
(a) 対比
本件発明6と引1発明とを対比すると、引1発明の「馬鈴薯由来(DE3.5)のデキストリン」は、本件発明6の「難消化性デキストリン」と、「デキストリン」との限りで一致する。
引1発明の「飲料」は、その組成からみて、本件発明6の「ノンアルコール飲料」に相当する。
引1発明の「馬鈴薯由来(DE3.5)のデキストリンを0.03?1.9部溶解し」て用いることと、本件発明6の「前記難消化性デキストリンを0.75?3.00w/v%含有」することとは、「デキストリンを0.75?1.9w/v%含有」する限りで一致する。
さらに、引1発明が「クエン酸三ナトリウム0.02部」を含有することは、本件発明6の「ナトリウムを前記ノンアルコール飲料に含有させ」ることに相当する。そして、引1発明のクエン酸三ナトリウム0.02部をナトリウムに換算すると、0.02部×(23×3/258)=0.0053部となる。これを、引1発明の「馬鈴薯由来(DE3.5)のデキストリンを0.03?1.9部」との比として、「(前記ナトリウムの含有量/前記馬鈴薯由来(DE3.5)のデキストリンの含有量)」を計算すると、0.00278?0.176となる。そうすると、引1発明の、当該ナトリウムと馬鈴薯由来(DE3.5)のデキストリンとを含有させる態様は、本件発明6の「難消化性デキストリンの含有量に対してナトリウムの含有量の比率(前記ナトリウムの含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)が、0.009?0.036となるように前記ナトリウムを前記ノンアルコール飲料に含有させ」ることと、「デキストリンの含有量に対してナトリウムの含有量の比率(前記ナトリウムの含有量/前記デキストリンの含有量)が、特定の比率となるように前記ナトリウムを前記ノンアルコール飲料に含有させ」る限りで一致する。
引1発明の「レモン味の炭酸飲料」と、本件発明6の「チューハイ飲料の味わいを奏するように調製されたレモンチューハイテイスト飲料」とは、「レモン味の飲料」という点で共通する。
引1発明の「炭酸飲料の調製方法」と、本件発明6の「後味を改善するとともに飲みやすさを増強する方法」及び「後味の改善と飲みやすさの増強方法」とは、「飲料の調製方法」との点で共通する。
よって、本件発明6と引1発明との一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「デキストリンを含有するノンアルコール飲料の調製方法であって、
前記ノンアルコール飲料は、レモン味の飲料であり、
前記ノンアルコール飲料は前記デキストリンを0.75?1.9w/v%含有し、
前記デキストリンの含有量に対してナトリウムの含有量の比率(前記ナトリウムの含有量/前記デキストリンの含有量)が、特定の比率となるように前記ナトリウムを前記ノンアルコール飲料に含有させ、
前記ナトリウムは、クエン酸ナトリウム、又は、塩化ナトリウムに由来するものである、飲料の調製方法。」

[相違点1]
デキストリンについて、本件発明6は、「難消化性デキストリン」であるのに対して、引1発明は、「馬鈴薯由来(DE3.5)のデキストリン」である点。
[相違点2]
飲料について、本件発明6は、「チューハイ飲料の味わいを奏するように調製されたレモンチューハイテイスト飲料」と特定されているのに対し、引1発明は、「レモン味の炭酸飲料」である点。
[相違点3]
飲料の調製方法について、本件発明6は、「後味」を「改善」するとともに「飲みやすさ」を「増強」するものであるのに対して、引1発明は、そのような特定はなされていない点。
[相違点4]
デキストリンの含有量に対してナトリウムの含有量の比率(前記ナトリウムの含有量/前記デキストリンの含有量)が、本件発明6は、「0.009?0.036」であるのに対して、引1発明は、「0.00278?0.176」である点。
(b) 判断
上記のとおり、相違点1?4があるから、本件発明6は、引1発明であるとすることはできず、特許法第29条第1項第3号に該当しない。
次に、相違点1について検討する。
引用文献1には、「十分なコク味が増強されつつも、炭酸やアルコール特有の清涼感、キレやフレーバーリリースが保持された炭酸及び/又はアルコール含有飲料を提供する」(【0007】)ことを課題とし、当該課題を解決する手段として、「馬鈴薯由来でDEが2以上5未満のデキストリンを添加することにより、炭酸やアルコール特有の清涼感、キレやフレーバーリリースに影響を与えることなく、十分なコク味が付与された、炭酸及び/又はアルコール飲料を提供できる」(【0009】)と記載されている。
さらに、引用文献1には、デキストリンについて、「本発明で用いるデキストリンは馬鈴薯を由来原料とし、原料中に含有される澱粉を加水分解して得ることができる。現在市販されているデキストリンの原料は馬鈴薯、コーン、ワキシーコーン、小麦、米、もち米、タピオカ等が存在するが、馬鈴薯以外を由来澱粉とするデキストリンを用いた場合は、後述のように、十分なコク味を付与できなかったり、喉越しの悪化を招く等、十分なコク味と清涼感、キレやフレーバーリリースを兼ね備えた炭酸及び/又はアルコール含有飲料を提供することができない。」(【0013】)と記載されて、馬鈴薯以外を由来とするデキストリンを用いることについては、想定されていない。
さらに、引用文献1では、「馬鈴薯由来、DE3.5」を用いるものが実施例とされているのに対して、「難消化性デキストリン」を用いるものは、比較例3とされている。そして、当該比較例3の評価は「(1)コク味の増強効果」が2.7(実施例1?4のものは、3.7?4.7)、「(2)清涼感、キレ」が3.3(同じく、4.3?4.7)、「(3)フレーバ-リリース」が2.3(同じく3.7?5)、「(4)甘味の後引き改善」が1(同じく4?5)であり(表2参照)、馬鈴薯由来(DE3.5)のデキストリンを用いた実施例1?4と対比すると、いずれの評価項目も劣った結果となっている。
そうすると、引1発明について、「馬鈴薯由来(DE3.5)のデキストリン」に代えて、難消化性デキストリンを採用することの動機付けがあるとはいえず、むしろ難消化性デキストリンを用いることには阻害要因があるといえる。
よって、引1発明において、相違点1に係る本件発明6の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。
したがって、本件発明6は、他の相違点を検討するまでもなく、引1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
c 本件発明7、9について
本件発明7、9は、上記相違点1に係る本件発明6の特定事項を具備しており、本件発明7、9と引1発明とは、少なくとも、上記相違点1と同様の点で相違するところ、前記bで述べたのと同様の理由によって、本件発明7、9は、引1発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しないとともに、引1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
(イ) 引用文献2を主引用例として
a 刊行物
引用文献2(特開平10-191944号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】グルカゴン分泌亢進作用を有するアミノ酸類の少なくとも1種、キサンチン誘導体の少なくとも1種、チアミン化合物、難消化性デキストリン、糖アルコール及びステビオサイドを含有する低カロリー飲料。」
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はシェイプアップによる体脂肪減少に効果があり、ダイエット効果も奏する新規な飲料に関する。特に難消化性デキストリンを配合したことによる喉越しの違和感を糖アルコール及びステビオサイドの相乗効果により解消した口当たりのよい、コクのある低カロリー飲料に関する。」
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】この難消化性デキストリン、具体的には1.6?2.4キロカロリー/gの低カロリー・マルトデキストリンを清涼飲料水に配合すると上述のごとく優れたダイエット効果を奏するものの、飲料の風味が著しく損なわれる。すなわち飲んだとき口当たりが悪く、コクが失われる。そこで従来ダイエットに効果があるとして知られているグルカゴン分泌亢進作用を有するアミノ酸の少なくとも1種、キサンチン誘導体の少なくとも1種、チアミン化合物を含む飲料にさらに難消化性デキストリンを加え、しかも口当たりがよく、コクのある低カロリー飲料の出現が待たれていた。」
「【0007】本発明の飲料に用いられる難消化性デキストリンの具体例としては、澱粉を鉱酸、特に塩酸で処理し焙焼して得た焙焼デキストリンにα-アミラーゼを作用させ常法に従って濾過精製したものや、通常の焙焼デキストリンにα-アミラーゼを作用させ、次いでグルコアミラーゼを作用させた後、常法に従って濾過、精製し、更にたとえばイオン交換樹脂、クロマトグラフィーや有機溶媒法により高カロリー区分を分離することによって得られる低カロリー・マルトデキストリンで、そのカロリー値が1.6?2.4キロカロリー/gのものがあげられる。これらのマルトデキストリンの製法については特公平7-73481号公報に詳しく記載されている。本発明の飲料に用いられる糖アルコールとしては、例えばエリスリトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、イノシトール、アラビトール、還元水飴などがあげられるが、中でもマルチトールが味の改善によい結果を与える。ステビオサイドはステビアの葉に含まれる配糖体でカロリーは低く甘味は蔗糖の300倍ともいわれる。難消化性デキストリンの配合による飲料の風味低下の改善は糖アルコールのみまたはステビオサイドのみでは不充分で両者の併用により、ようやく本発明の口当たりがよく、コクのある低カロリー飲料が得られる。本発明の低カロリー飲料中の難消化性デキストリンの配合割合は通常0.1?20重量%、好ましくは0.5?10重量%である。また、難消化性デキストリンに対する糖アルコールおよびステビオサイドの使用割合は。難消化性デキストリン1重量部に対し糖アルコール0.05?40重量部、好ましくは0.1?20重量部、さらに好ましくは0.5?5.0重量部であり、ステビオサイドは通常0.0001?0.1重量部、好ましくは0.0005?0.05重量部、さらに好ましくは0.001?0.01重量部である。」
「【0008】本発明の低カロリー飲料には、更に所望に応じて飲食品として許容される各種の担体及び/又は添加剤を添加配合することができる。該担体は、脂肪代謝の増進とグルカゴン分泌亢進作用に悪影響を与えない限りいかなるものでもよい。このような担体の例としては、各種のキャリアー担体、イクステンダー剤、希釈剤、増量剤、分散剤、賦形剤、結合剤溶媒(例えば、水、エタノール、植物油など)、溶解補助剤、緩衝剤、溶解促進剤、ゲル化剤(例えば、ナトリウムCMC、HPMCなど)、懸濁化剤(例えば、ナトリウムCMC、ナトリウムアルギネートなど)などがあげられる。また該添加剤は脂肪代謝とグルカゴン分泌亢進作用に悪影響を与えない限りいかなるものでもよい。そのような例としてはビタミン類(ビタミンA、ビタミンB_(2)、ビタミンB_(6)、パントテン酸、ニコチン酸、ビタミンC、ビタミンEなど)、甘味料、有機酸(クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸など)、着色剤、香料(バニリン、リナロール、天然香料など)、湿化防止剤、ファイバー、電解質、ミネラル、栄養素、抗酸化剤、保存剤、芳香剤、湿潤剤、植物抽出物(例えば、茶抽出物、コーヒー抽出物、ココア抽出物など)、果汁(例えば、オレンジ、グレープ、アップル、ピーチ、パイナップル、ナシ、プラム、サクランボ、パパイヤ、トマト、メロン、イチゴ、ラズベリーなど)があげられる。」
「【0009】本発明の飲料は、例えばダイエット飲料、医薬品、カンヅメ飲料、ジュース、シロップなどを含めた飲料製造に通常用いられる方法で調合したり、製造したりすることができる。例えば、本発明の必須成分および所望に応じて上記の担体及び/又は添加剤の所定量を適当な希釈剤(通常は水)に溶解して調製される。飲料全量に対する必須成分添加剤の配合量は特に制限はないが、全量100g当たり必須成分の配合量は1?30g、好ましくは2?25g、最も好ましくは3?20gである。添加剤の配合量は0.1?10g、好ましくは0.2?5g、最も好ましくは0.3?3gである。また、本発明の飲料は、炭酸飲料の形態に調製してもよく、飲む直前にすぐに調製しうるに適した粉末形態のものであってもよい。」
「実施例1
〔スポーツドリンク〕
マルチトール 6.1 g
砂糖 11.5 g
難消化性デキストリン 2.0 g
カフェイン 0.015 g
アルギニン 0.35 g
果汁 3.5 g
クエン酸 0.543 g
ジベンゾイルチアミン 0.0004g
ビタミンC 0.0015g
塩化ナトリウム 0.07 g
リン酸二水素カリウム 0.20 g
乳酸カルシウム 0.05 g
クエン酸ナトリウム 0.26 g
塩化マグネシウム 0.09 g
ステビオサイド 0.018 g
香料 0.52 g
全量 350ml
上記の原料を常法に従って配合、調製し、100ml当たり18キロカロリーの口当たりのよいダイエット効果のあるスポーツドリンクを製造した。」
「【0012】実施例3
〔機能性飲料〕
マルチトール 5.3 g
ソルビトール 2.3 g
砂糖 5.5 g
難消化性デキストリン 6.0 g
カフェイン 0.015 g
アルギニン 0.35 g
果汁 3.5 g
クエン酸 0.28 g
ジベンゾイルチアミン 0.0015g
ステビオサイド 0.012 g
香料 0.49 g
全量 350ml
上記の原料を常法に従って配合、調製し、100ml当たり19キロカロリーの口当たりのよいダイエット効果のある機能性飲料を製造した。」
上記記載事項から、実施例1のスポーツドリンクの調製方法に着目すると、引用文献2には、次の発明(以下「引2発明」という。)が記載されている。
「マルチトール6.1g、砂糖11.5g、難消化性デキストリン2.0g、カフェイン0.015g、アルギニン0.35g、果汁3.5g、クエン酸0.543g、ジベンゾイルチアミン0.0004g、ビタミンC0.0015g、塩化ナトリウム0.07g、リン酸二水素カリウム0.20g、乳酸カルシウム0.05g、クエン酸ナトリウム0.26g、塩化マグネシウム0.09g、ステビオサイド0.018g、香料0.52gを配合した、全量350mlであるスポーツドリンクの調製方法。」
b 本件発明6について
(a) 対比
本件発明6と引2発明とを対比すると、引2発明の「スポーツドリンク」は、その処方からみて難消化性デキストリンを含み、アルコールを含まないから、本件発明6の「難消化性デキストリンを含有するノンアルコール飲料」に相当する。
引2発明のナトリウムの含有量について、「塩化ナトリウム0.07g」由来のナトリウムは、0.07×23/58.5=0.028g、「クエン酸ナトリウム0.26g」由来のナトリウムは、0.26×69/258=0.070gとなり、合計で0.098gとなる。その他にナトリウムを含み得るものは「果汁」及び「香料」であるが、オレンジ、グレープ、アップル等の生果、果汁に含まれるナトリウムは一般に極めて微量であることが技術常識であるから(必要であれば、香川 綾 監修『四訂 食品成分表 1994』、女子栄養大学出版部、平成6年4月の252ページ「オレンジ」の項、264ページ「ぶどう」の項、268ページ「りんご」の項参照。)、「果汁3.5g」由来のナトリウムを考慮する必要はない。さらに、「香料」として、引用文献2には、バニリン、リナロール等が例示されていて(上記記載事項)、これらはナトリウムを含んでいないので、「香料」由来のナトリウムも、考慮する必要はない。
そうすると、引2発明の難消化性デキストリンの含有量に対するナトリウムの含有量の比率(前記ナトリウムの含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)は、0.098/2.0=0.049となる。
よって、引2発明の難消化性デキストリンと、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムとを含有させる態様は、本件発明6の「前記難消化性デキストリンの含有量に対する前記ナトリウムの含有量の比率(前記ナトリウムの含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)が、0.009?0.036となるように前記ナトリウムを前記ノンアルコール飲料に含有させ」ることと、「難消化性デキストリンの含有量に対する前記ナトリウムの含有量の比率(前記ナトリウムの含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)が、特定の比率となるように前記ナトリウムを前記ノンアルコール飲料に含有させ」る限りで一致する。
また、引2発明の「ナトリウム」は、上述のとおり、本件発明6の「前記ナトリウムは、クエン酸ナトリウム、又は、塩化ナトリウムに由来するものであ」ることに相当する。
引2発明の「スポーツドリンクの調製方法」と、本件発明6の「後味を改善するとともに飲みやすさを増強する方法」及び「後味の改善と飲みやすさの増強方法」とは、「飲料の調製方法」という点で共通する。
したがって、本件発明6と引2発明との一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「難消化性デキストリンを含有するノンアルコール飲料の調製方法であって、
前記ノンアルコール飲料は前記難消化性デキストリンを含有し
前記難消化性デキストリンの含有量に対する前記ナトリウムの含有量の比率(前記ナトリウムの含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)が、特定の比率となるように前記ナトリウムを前記ノンアルコール飲料に含有させ、
前記ナトリウムは、クエン酸ナトリウム、又は、塩化ナトリウムに由来するものである、飲料の調製方法。」

[相違点5]
ノンアルコール飲料について、本件発明6は、「チューハイ飲料の味わいを奏するように調製されたレモンチューハイテイスト飲料」であるのに対して、引2発明は、「スポーツドリンク」である点。
[相違点6]
難消化性デキストリンの含有量について、本件発明6は、「0.75?3.00w/v%」と特定されているのに対して、引2発明は、「全量350ml」に「難消化性デキストリン2.0g」を配合したもの、すなわち0.57w/v%(=2.0g÷350ml×100)である点。
[相違点7]
ナトリウムをノンアルコール飲料に含有させることについて、本件発明6は、「前記難消化性デキストリンの含有量に対してナトリウムの含有量の比率(前記ナトリウムの含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)が、0.009?0.036となるように前記ナトリウムを前記ノンアルコール飲料に含有させ」ているのに対して、引2発明は、難消化性デキストリンの含有量に対するナトリウムの含有量の比率(前記ナトリウムの含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)を計算すると、0.098/2.0=0.049である点。
[相違点8]
飲料の調製方法について、本件発明6は、「後味」を「改善」するとともに「飲みやすさ」を「増強」するものであるのに対して、引2発明は、そのような特定はなされていない点。
(b) 判断
事案に鑑み、相違点6?8について、先ず、検討する。
相違点6?8について
引用文献2には、発明が解決しようとする課題について、「従来ダイエットに効果があるとして知られているグルカゴン分泌亢進作用を有するアミノ酸の少なくとも1種、キサンチン誘導体の少なくとも1種、チアミン化合物を含む飲料にさらに難消化性デキストリンを加え、しかも口当たりがよく、コクのある低カロリー飲料の出現が待たれていた。」(【0003】) と記載されている。
そして、当該課題を解決するための手段について、「本発明者らは、グルカゴン分泌亢進作用を有するアミノ酸、キサンチン誘導体およびチアミン化合物を含む飲料に、難消化性デキストリンを添加したことによる味の低下を改善するため多数の甘味料、呈味物質、嬌味剤の添加を試みたところ糖アルコールとステビオサイドの併用が実に効果的に難消化性デキストリンによる風味の低下を防止することを知見した。」(【0004】)と記載されている。
このように、引用文献2及び引2発明において、グルカゴン分泌亢進作用を有するアミノ酸、キサンチン誘導体およびチアミン化合物を含む飲料に、難消化性デキストリンを添加すること、及び糖アルコールとステビオサイドの併用に着目しているものの、ナトリウムと難消化性デキストリンの両者に着目することについての記載はなされていない。
上記相違点6のとおり、難消化性デキストリンの含有量について、本件発明6は、「0.75?3.00w/v%」であるのに対して、引2発明は、0.57w/v%と本件発明6より少ない量である。また、相違点7のとおり、「前記難消化性デキストリンの含有量に対してナトリウムの含有量の比率(前記ナトリウムの含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)」が、本件発明6は、「0.009?0.036」であるのに対して、引2発明は、「0.049」であり、引2発明は、本件発明6より、ナトリウムに対するデキストリンの相対含有量が少ないといえる。
そうすると、引2発明において、デキストリンを増やせば、相違点6、7に係る数値範囲となり得るといえる。しかしながら、引用文献2には、「この難消化性デキストリン、具体的には1.6?2.4キロカロリー/gの低カロリー・マルトデキストリンを清涼飲料水に配合すると上述のごとく優れたダイエット効果を奏するものの、飲料の風味が著しく損なわれる。すなわち飲んだとき口当たりが悪く、コクが失われる。」(【0003】)と記載されているから、引2発明において、難消化性デキストリンの量を増やすことは、飲料の風味が著しく損なわれる、すなわち飲んだとき口当たりが悪く、コクが失われるものとなる。
よって、難消化性デキストリンの含有量を相違点6、7に係る本件発明6の数値範囲となる程度にまで増やすことの動機付けがあるとはいえない。
仮に、糖アルコールとステビオサイドの併用する量を増やすことによりにより、「飲料の風味が著しく損なわれる、すなわち飲んだとき口当たりが悪く、コクが失われるものとなる」ことを回避し得たとしても、デキストリン含有量やナトリウム含有量を、相違点6、7に係る本件発明6の数値範囲とすることで、後味の改善や飲みやすさが増強されているとはいえないから、相違点8に係る本件発明6の構成は得られないことになる。
以上のことから、引2発明において、「後味を改善するとともに飲みやすさを増強する」ことを目的に、難消化性デキストリンの配合量を増やして、難消化性デキストリンの含有量を「0.75?3.00w/v%」、難消化性デキストリンに対するナトリウムの比率を「0.009?0.036」とすることを当業者が容易に想到し得たとすることはできない。
よって、引2発明において、相違点6?8に係る本件発明6の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。

したがって、本件発明6は、他の相違点を検討するまでもなく、引2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
c 本件発明7、9について
本件発明7、9は、上記相違点4、5に係る本件発明6の特定事項を具備しており、本件発明7、9と引2発明とは、少なくとも、上記相違点6?8と同様の点で相違するところ、前記bで述べたのと同様の理由によって、本件発明7、9は、引2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲に関し、請求項1?10について、平成29年7月26日に提出された手続補正書による補正によって、請求項1?10に係る「ノンアルコール飲料」が「レモンチューハイテイスト飲料」と補正されたが、当該補正事項は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲または図面のいずれにも記載されておらず、本件特許は、特許法第17条の2第3項に係る要件を満たしていない補正をした特許出願に対してなされたものであるから、特許法第113条第1号の規定に違反し、取り消されるべき旨を主張する。
しかしながら、願書に最初に添付した明細書の発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。
「[ノンアルコール飲料]
本実施形態に係るノンアルコール飲料とは、水溶性食物繊維と、ナトリウムとを含有する飲料である。
そして、ノンアルコール飲料とは、エタノール含有量が1.00体積%未満の飲料であり、炭酸飲料、果汁または野菜汁入り飲料、健康飲料といったものから、ビールテイスト飲料、チューハイテイスト飲料、カクテルテイスト飲料、梅酒テイスト飲料まで、様々な飲料が含まれる。」(【0013】)
「また、『チューハイテイスト飲料』とは、チューハイ様(風)飲料とも称され、チューハイ飲料のような味わいを奏する、つまり、チューハイ飲料を飲用したような感覚を飲用者に与えるノンアルコール飲料である。詳細には、エタノール含有量を所定値未満に抑えつつ、後記する果汁、果汁フレーバー、甘味料、香料、酸味料等を添加することにより、
チューハイ飲料の味わいを奏するように調製された飲料である。
なお、『チューハイ飲料』とは、一般的には、アルコール飲料(例えば、焼酎等)に、果汁、炭酸水等を混ぜ合わることにより作られる飲料である。」(【0016】)
「また、本実施形態に係るノンアルコール飲料においては、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で、レモンや梅といった各種果汁や各種果汁フレーバーを添加することもできる。なお、各種果汁は、例えば、ストレート果汁、濃縮果汁、濃縮還元果汁、果汁エキス等、といった従来公知の形態で添加すればよい。」(【0031】)
これらの記載を踏まえると、発明の詳細な説明において、ノンアルコール飲料としてチューハイテイスト飲料が想定されており、レモンや梅といった各種果汁や各種果汁フレーバーを飲料に添加されるものが想定されていること、及びチューハイ飲料として、レモンチューハイ飲料が広く知られていることからすると、当該補正が「当初明細書等に記載した事項」との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえず、当該補正は、新規事項を追加する補正でない。
したがって、申立人のかかる主張は、採用することができない。

6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項6、7、9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項6、7、9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項1?5、8、10に係る特許についての特許異議の申立ては、その対象となる請求項が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ノンアルコール飲料の後味の改善と飲みやすさの増強方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノンアルコール飲料の後味の改善と飲みやすさの増強方法に係り、特に、水溶性食物繊維を含有するノンアルコール飲料の後味の改善と飲みやすさの増強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食に対する消費者の健康志向の高まりに対応すべく、特定保健用食品をはじめとした、身体の生理学的機能等に良い影響を与える保健機能成分を含有する食品に関して、日々、研究がおこなわれている。
当然、飲料に関しても例外ではなく、様々な保健機能成分を含有する飲料について、研究開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、高甘味度甘味料と食物繊維とを含有する飲料が提案されている。詳細には、特許文献1に係る技術は、飲料のカロリーを低く抑える目的で、砂糖等の糖類の代わりに高甘味度甘味料を使用しており、当該高甘味度甘味料が引き起こすコク味の低下を防止するために、飲料に食物繊維を含有させている。
【0004】
また、特許文献2には、難消化性デキストリンとコラーゲンとを含有する飲料が提案されている。詳細には、特許文献2に係る技術は、飲料に美容への効果を付与する目的で、コラーゲンを含有させており、当該コラーゲンが引き起こす不快な臭い・味の発生を抑制するために、飲料に難消化性デキストリンを含有させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-41118号公報
【特許文献2】特開2012-19764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に係る技術は、高甘味度甘味料またはコラーゲンがもたらす飲料への悪影響に着目した技術であるため、水溶性食物繊維自体が飲料にもたらす香味上の好ましくない影響については、何ら検討されていない。特に、ノンアルコール飲料と水溶性食物繊維との組み合わせに基づく香味上の影響については、当然、検討されていない。
【0007】
本発明者らは、ノンアルコール飲料において水溶性食物繊維がもたらす香味上の影響を鋭意研究した結果、これまでに認知されていなかった課題を見出した。
詳細には、本発明者らは、水溶性食物繊維を含有するノンアルコール飲料は、水溶性食物繊維特有の香味が後味に残ることにより、後味が悪く、かつ、飲み難い飲料となってしまうという課題を見出した。
【0008】
そこで、本発明は、ノンアルコール飲料の後味の改善と飲みやすさの増強方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
(1)(削除)
(2)(削除)
(3)(削除)
(4)(削除)
(5)(削除)
(6)難消化性デキストリンを含有するノンアルコール飲料の後味を改善するとともに飲みやすさを増強する方法であって、前記ノンアルコール飲料は、チューハイ飲料の味わいを奏するように調製されたレモンチューハイテイスト飲料であり、前記ノンアルコール飲料は前記難消化性デキストリンを0.75?3.00w/v%含有し、前記難消化性デキストリンの含有量に対してナトリウムの含有量の比率(前記ナトリウムの含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)が、0.009?0.036となるように前記ナトリウムを前記ノンアルコール飲料に含有させ、前記ナトリウムは、クエン酸ナトリウム、又は、塩化ナトリウムに由来するものであることを特徴とする後味の改善と飲みやすさの増強方法。
(7)前記難消化性デキストリンの含有量は、1.00?2.00w/v%であることを特徴とする前記(6)に記載の後味の改善と飲みやすさの増強方法。
(8)(削除)
(9) 前記ナトリウムは、クエン酸ナトリウム由来のものであることを特徴とする前記(6)又は前記(7)に記載の後味の改善と飲みやすさの増強方法。
(10)(削除)
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る後味の改善と飲みやすさの増強方法は、飲料中に含まれる水溶性食物繊維に対して所定の比率でナトリウムを含有させることにより、水溶性食物繊維の香味とナトリウムの香味との相乗効果で、後味を改善するとともに、飲みやすさを増強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るノンアルコール飲料の製造方法の内容を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るノンアルコール飲料およびその製造方法、ならびに後味の改善と飲みやすさの増強方法を実施するための形態(実施形態)について説明する。
なお、本願における「後味」とは、詳細には、飲料を飲んだ直後ではなく、飲んだ後に暫く舌の上に残る味覚を示すものであり、「飲みやすさ」とは、詳細には、飲料を飲んだときに味の引っかかりがない様を示すものである。
【0013】
[ノンアルコール飲料]
本実施形態に係るノンアルコール飲料とは、水溶性食物繊維と、ナトリウムとを含有する飲料である。
そして、ノンアルコール飲料とは、エタノール含有量が1.00体積%未満の飲料であり、炭酸飲料、果汁または野菜汁入り飲料、健康飲料といったものから、ビールテイスト飲料、チューハイテイスト飲料、カクテルテイスト飲料、梅酒テイスト飲料まで、様々な飲料が含まれる。
【0014】
ただし、ノンアルコール飲料の中でも、後記するナトリウムの含有量の比率を考慮すると、本実施形態に係るノンアルコール飲料は、ビールテイスト飲料、チューハイテイスト飲料、カクテルテイスト飲料、または、梅酒テイスト飲料であるのが好ましい。
【0015】
ここで、「ビールテイスト飲料」とは、ビール様(風)飲料とも称され、ビール飲料のような味わいを奏する、つまり、ビール飲料を飲用したような感覚を飲用者に与えるノンアルコール飲料である。詳細には、エタノール含有量を所定値未満に抑えつつ、後記する麦汁、甘味料、香料、苦味料等を添加することにより、ビール飲料の味わいを奏するように調製された飲料である。
なお、「ビール飲料」とは、一般的には、麦芽、ホップおよび水を発酵させることにより作られる飲料である。
【0016】
また、「チューハイテイスト飲料」とは、チューハイ様(風)飲料とも称され、チューハイ飲料のような味わいを奏する、つまり、チューハイ飲料を飲用したような感覚を飲用者に与えるノンアルコール飲料である。詳細には、エタノール含有量を所定値未満に抑えつつ、後記する果汁、果汁フレーバー、甘味料、香料、酸味料等を添加することにより、チューハイ飲料の味わいを奏するように調製された飲料である。
なお、「チューハイ飲料」とは、一般的には、アルコール飲料(例えば、焼酎等)に、果汁、炭酸水等を混ぜ合わることにより作られる飲料である。
【0017】
また、「カクテルテイスト飲料」とは、カクテル様(風)飲料とも称され、カクテル飲料のような味わいを奏する、つまり、カクテル飲料を飲用したような感覚を飲用者に与えるノンアルコール飲料である。詳細には、エタノール含有量を所定値未満に抑えつつ、後記する果汁、果汁フレーバー、甘味料、香料、酸味料等を添加することにより、カクテル飲料の味わいを奏するように調製された飲料である。
なお、「カクテル飲料」とは、一般的には、アルコール飲料(例えば、各種蒸留酒やリキュール等)に、果汁、果実、香辛料、甘味料、炭酸水等を混ぜ合わせることにより作られる飲料である。
【0018】
また、「梅酒テイスト飲料」とは、梅酒様(風)飲料とも称され、梅酒飲料のような味わいを奏する、つまり、梅酒飲料を飲用したような感覚を飲用者に与えるノンアルコール飲料である。詳細には、エタノール含有量を所定値未満に抑えつつ、後記する果汁(梅果汁)、甘味料、香料、苦味料等を添加することにより、梅酒飲料の味わいを奏するように調製された飲料である。
なお、「梅酒飲料」とは、一般的には、アルコール飲料(例えば、各種蒸留酒等)に、梅と甘味料等とを一緒に漬け込むことにより作られる飲料である。
【0019】
なお、ノンアルコール飲料において、エタノール含有量が少なくなればなるほど、後味が悪く、飲み難いという課題が明確に現れることとなる。
よって、本実施形態に係るノンアルコール飲料は、エタノール含有量が0.100体積%未満のもの、特に、0.005体積%未満のものに適用するのが好ましく、顕著な効果(後味の改善と飲みやすさの増強)を発揮することとなる。
【0020】
(水溶性食物繊維)
水溶性食物繊維とは、人間の消化酵素では消化されない食品中の多糖類を主体とした高分子成分の総体のうち水溶性のものをいう(綾野、ジャパンフードサイエンス、12、27?37頁(1988))。
そして、水溶性食物繊維は、整腸作用や血糖値上昇抑制作用といった有用な作用が認められている。
【0021】
水溶性食物繊維としては、難消化性デキストリン、ポリデキストロース及びグアーガム分解物などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、水溶性食物繊維としては、前記したもの以外にも、例えば、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸、ラミナリン、フコイジン、カラギーナンなどを用いることができる。
その中でも、後記実施例に示されているように、難消化性デキストリンとポリデキストロースを好適に用いることができ、特に難消化性デキストリンを好適に用いることができる。商業上入手可能な難消化性デキストリンとしては、例えば、松谷化学工業株式会社製のファイバーソル、パインファイバー等があり、ポリデキストロースとしては、例えばダニスコジャパン株式会社製のライテス等がある。
【0022】
難消化性デキストリンは、澱粉の加水分解・熱分解により生成され、各種アミラーゼ、特にヒトの消化酵素によっても分解されない成分を有するものである。
ポリデキストロースは、トウモロコシから作られた水溶性食物繊維であり、ブドウ糖、ソルビトールを混ぜ合わせ、クエン酸を加えることにより生成することができる。
なお、グアーガム分解物は、グアー豆を酵素で分解することにより生成することができる。
【0023】
水溶性食物繊維の含有量が0.75w/v%未満では、前記した有用な作用を十分に発揮できないとともに、前記した改善効果・増強効果を十分に発揮できない。一方、水溶性食物繊維の含有量が3.00w/v%を超えると、前記した作用が飽和するとともに、摂取した人のおなかをゆるくさせてしまう可能性がある。
したがって、水溶性食物繊維の含有量は、0.75?3.00w/v%である。
【0024】
なお、前記した作用や改善効果・増強効果の発揮を確実なものとするためには、水溶性食物繊維の含有量は、1.00w/v%以上であることが好ましく、1.20w/v%以上であることが特に好ましく、飲料としてより好適なものとするためには、2.00w/v%以下であることが好ましい。
【0025】
(ナトリウム)
ナトリウムとは、アルカリ金属元素の1つであり、典型元素である。そして、ナトリウムは、水溶性食物繊維の香味との相乗効果により、水溶性食物繊維を含有するノンアルコール飲料の後味を改善するとともに飲みやすさを増強することができる。さらに、ナトリウムは、水溶性食物繊維を含有するノンアルコール飲料の評価(香味)を良好なものとすることができる。
なお、本実施形態に係るノンアルコール飲料のナトリウムとは、飲料に含まれる全てのナトリウムを示しており、例えば、飲料に各種塩類が含まれる場合、当該塩類由来のナトリウムも含むものである。
【0026】
ナトリウムの含有量の比率(ナトリウムの含有量(w/v%)/水溶性食物繊維の含有量(w/v%))が0.002未満では、後味の改善効果や飲みやすさ増強効果を得られない。一方、ナトリウムの含有量の比率が0.070を超えると、後味の改善効果が得られないとともに、飲みやすさの増強効果が得られず、逆に飲み難くなってしまう。
したがって、ナトリウムの含有量の比率は、0.002?0.070である。
【0027】
なお、水溶性食物繊維を含有するノンアルコール飲料の評価(香味)をかなり良好なものとするためには、0.008以上であることが好ましく、前記した後味の改善効果を確保しつつ、飲みやすさ増強効果を確実なものとするためには、0.050以下であることが好ましい。
【0028】
ナトリウムは、どのような由来のものであっても前記した効果を発揮することが可能であるが、特に、クエン酸ナトリウム由来のナトリウムを使用するのが好ましい。ナトリウムとしてクエン酸ナトリウム由来のものを使用すると、ノンアルコール飲料の評価(香味)が非常に良好なものとなるとともに、ナトリウムの添加に起因する缶の腐食の進行を抑制することができるからである。
【0029】
本実施形態において、水溶性食物繊維の含有量、および、ナトリウムの含有量の比率とは、ノンアルコール飲料の製造直後の値である。
なお、ノンアルコール飲料中の水溶性食物繊維、ナトリウムの含有量や比率については、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等の公知の分析装置により分析することで算出することができる。
【0030】
(その他)
また、本実施形態に係るノンアルコール飲料においては、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で飲料として通常配合される着色料、甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、苦味料、塩類など(以下、これらを単に添加剤ということがある。)を添加することもできる。着色料としては、例えば、カラメル色素、クチナシ色素、果汁色素、野菜色素、合成色素などを用いることができる。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲンやデンプンなどを用いることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、アセスルファムK、スクラロース、アスパルテームなどを用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどを用いることができる。また、苦味料としては、例えば、イソ-α酸、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップなどを用いることができ、塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどを用いることができる。
【0031】
また、本実施形態に係るノンアルコール飲料においては、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で、レモンや梅といった各種果汁や各種果汁フレーバーを添加することもできる。なお、各種果汁は、例えば、ストレート果汁、濃縮果汁、濃縮還元果汁、果汁エキス等、といった従来公知の形態で添加すればよい。
【0032】
また、本実施形態に係るノンアルコール飲料においては、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で、麦汁を添加することもできる。そして、麦汁は、各種麦芽または各種麦芽エキスを水と混合することにより調製すればよい。また、麦芽以外の原料として、大麦及び/又は小麦等(例えば、大麦、小麦、豆類、米類、いも類、とうもろこし及びその他の穀物からなる群より選択される1種以上)を使用することもできる。
【0033】
本実施形態に係るノンアルコール飲料は、非発泡性であってもよいし、発泡性であってもよい。ここで、本実施形態における非発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm^(2))未満であることをいい、発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm^(2))以上であることをいう。なお、発泡性とする場合、ガス圧の上限は0.235MPa(2.4kg/cm^(2))程度とするのが好ましい。これよりもガス圧が高くなると炭酸の刺激が強くなり過ぎてしまうので好ましくない。
【0034】
なお、前記した水溶性食物繊維、ナトリウム、添加剤等については、公知の製造方法により製造したものを用いてもよいし、一般に市販されているものを用いてもよい。
【0035】
以上説明したように、本実施形態に係るノンアルコール飲料は、飲料中に含まれる水溶性食物繊維に対して所定の比率でナトリウムを含有することにより、水溶性食物繊維の香味とナトリウムの香味との相乗効果で、後味を改善するとともに飲みやすさを増強することができる。
なお、本実施形態に係るノンアルコール飲料は、水溶性食物繊維を所定量含有することにより、食物繊維の摂取不足を補うことが可能な飲料として好適なものとなり、整腸作用や血糖値上昇抑制作用といった有用な作用を十分に発揮することができる。
つまり、本実施形態に係るノンアルコール飲料は、前記の有用な作用を十分に発揮しながら、後味を改善するとともに飲みやすさを増強することができる。
【0036】
[ノンアルコール飲料の製造方法]
次に、ノンアルコール飲料の製造方法の実施形態について説明する。
本実施形態に係るノンアルコール飲料の製造方法は、水溶性食物繊維と、ナトリウムと、を添加する添加工程を含むことを特徴とする製造方法である。そして、添加工程では、水溶性食物繊維の含有量が0.75?3.00w/v%(好ましくは1.00?2.00w/v%)となるように水溶性食物繊維を添加するとともに、ナトリウムの含有量の比率(ナトリウムの含有量/水溶性食物繊維の含有量)が0.002?0.070(好ましくは0.008?0.050)となるようにナトリウムを添加する。
【0037】
この添加工程は、ノンアルコール飲料の製造工程中のいずれかの段階で行えばよい。例えば、ノンアルコール飲料の原料を混合する混合タンクに添加することができる。当該混合タンクには、水溶性食物繊維・ナトリウムの添加前、添加と同時及び添加後のいずれかのタイミングで、所定量の水、果汁、着色料、酸味料、甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、苦味料、塩類などを添加することができる。これらの添加の有無及び添加量は、ニーズ等に合わせて任意に設定することができる。
【0038】
図1を参照して本実施形態に係るノンアルコール飲料の製造方法について説明する。
本製造方法は、水、果汁、着色料、酸味料、甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、苦味料、塩類などが投入された混合タンクに、水溶性食物繊維と、ナトリウムとを前記した含有量および比率となるように添加する添加工程S1と、添加工程S1において各成分が混合した混合液をろ過するろ過工程S2と、ろ過工程S2でろ過したろ過液を殺菌する殺菌工程S3と、殺菌工程S3で殺菌した殺菌済みのろ過液をビンや缶、ペットボトルなどの容器に充填する充填工程S4と、充填工程S4で容器に充填されたろ過液を容器ごと殺菌する殺菌工程S5と、を含む。
なお、添加工程S1は、各成分がよく混ざるよう、撹拌機などにより撹拌しながら混合するのが好ましい。また、ろ過工程S2は、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。殺菌工程S3は、処理速度等の観点から、プレート殺菌によって行うのが好ましいが、同様の処理を行うことができるのであればこれに限定されることなく適用可能である。充填工程S4は、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにて充填するのが好ましい。殺菌工程S5は、所定の温度および所定の時間でろ過液を容器ごと加熱することにより行うことができる。なお、殺菌工程S3および殺菌工程S5を行わない無殺菌充填を行うことも可能である。
また、発泡性のノンアルコール飲料とする場合は、例えば、殺菌工程S3と充填工程S4の間でカーボネーションを行うとよい。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係るノンアルコール飲料の製造方法は、水溶性食物繊維に対して所定の比率でナトリウムを添加する添加工程を含むことにより、水溶性食物繊維の香味とナトリウムの香味との相乗効果で、後味が改善されるとともに飲みやすさが増強されたノンアルコール飲料を製造することができる。
なお、本実施形態に係るノンアルコール飲料の製造方法は、水溶性食物繊維を所定量添加することにより、食物繊維の摂取不足を補うことが可能な飲料として好適であるとともに、整腸作用や血糖値上昇抑制作用といった有用な作用を十分に発揮することができるノンアルコール飲料を製造することができる。
つまり、本実施形態に係るノンアルコール飲料の製造方法は、前記の有用な作用を十分に発揮しながら、後味が改善されるとともに飲みやすさが増強されたノンアルコール飲料を製造することができる。
【0040】
[後味の改善と飲みやすさの増強方法]
次に、後味の改善と飲みやすさの増強方法の実施形態について説明する。
本実施形態に係る後味の改善と飲みやすさの増強方法は、水溶性食物繊維を0.75?3.00w/v%(好ましくは1.00?2.00w/v%)含有するノンアルコール飲料に、ナトリウムの含有量の比率(ナトリウムの含有量/水溶性食物繊維の含有量)が0.002?0.070(好ましくは0.008?0.050)となるようにナトリウムを含有させることを特徴とする方法である。
【0041】
以上説明したように、本実施形態に係る後味の改善と飲みやすさの増強方法は、水溶性食物繊維を含有することにより、整腸作用や血糖値上昇抑制作用といった有用な作用を発揮する飲料に、当該水溶性食物繊維に対して所定の比率でナトリウムを含有させることにより、水溶性食物繊維の香味とナトリウムの香味との相乗効果で、後味を改善するとともに飲みやすさを増強することができる。
【0042】
なお、本実施形態に係るノンアルコール飲料およびその製造方法、ならびに後味の改善と飲みやすさの増強方法において、明示していない特性や条件については、従来公知のものであればよく、前記特性や条件によって得られる効果を奏する限りにおいて、限定されないことは言うまでもない。
【実施例】
【0043】
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明に係るノンアルコール飲料およびその製造方法、ならびに後味の改善と飲みやすさの増強方法について説明する。
【0044】
[サンプル]
サンプルとして、難消化性デキストリン(松谷化学工業株式会社製:パインファイバー)、クエン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製:クエン酸三ナトリウム(結晶物))を所定量含有させたノンアルコール飲料(No.1-1?1-7、No.2-1?2-7、No.3-1?3-7)を製造した。
【0045】
また、サンプルとして、難消化性デキストリン(松谷化学工業株式会社製:パインファイバー)、塩化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製:塩化ナトリウム)を所定量含有させたノンアルコール飲料(No.4-1)を製造した。
【0046】
また、サンプルとして、ポリデキストロース(ダニスコジャパン株式会社製:ライテス)、クエン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製:クエン酸三ナトリウム(結晶物))を所定量含有させたノンアルコール飲料(No.5-1、5-2)を製造した。
【0047】
なお、各サンプルは、蒸留水を加えて総量が350mlとなるように調製し、所定のガス圧(20℃:0.18MPa)となるように炭酸ガスを内包させた。そして、各サンプルのエタノール含有量は、いずれも0.005体積%未満であった。
【0048】
[後味改善効果の評価]
製造したNo.1-1?1-7、No.2-1?2-7、No.3-1?3-7、No.4-1、No.5-1、5-2に係るサンプルの後味について、よく訓練された専門のパネル5名が下記評価基準に則って0?4点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。
【0049】
(後味)
4点:非常に好ましい後味である。
3点:かなり好ましい後味である。
2点:好ましい後味である。
1点:若干、後味が悪い。
0点:後味が悪い。
【0050】
そして、後味の改善効果は、同量の水溶性食物繊維を含有するサンプルであるとともに、ナトリウムを含有させていないサンプル(基準サンプル)の後味の点数(平均値)と比較して、どれだけ後味の点数(平均値)が高くなったかを、「評価対象となるサンプルの後味の点数(平均値)」-「基準サンプルの後味の点数(平均値)」により算出した。
後味の改善効果が0.1以上のものを効果がある(合格)と判断し、0.5以上のものを特に効果がある(合格)と判断した。
【0051】
[飲みやすさ増強効果の評価]
製造したNo.1-1?1-7、No.2-1?2-7、No.3-1?3-7、No.4-1、No.5-1、5-2に係るサンプルの飲みやすさについて、よく訓練された専門のパネル5名が下記評価基準に則って0?4点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。
【0052】
(飲みやすさ)
4点:非常に飲みやすい。
3点:かなり飲みやすい。
2点:飲みやすい。
1点:若干、飲み難い。
0点:飲み難い。
【0053】
そして、飲みやすさ増強効果は、同量の水溶性食物繊維を含有するサンプルであるとともに、ナトリウムを含有させていないサンプル(基準サンプル)の飲みやすさの点数(平均値)と比較して、どれだけ飲みやすさの点数(平均値)が高くなったかを、「評価対象となるサンプルの飲みやすさの点数(平均値)」-「基準サンプルの飲みやすさの点数(平均値)」により算出した。
飲みやすさ増強効果が0.1以上のものを効果がある(合格)と判断し、0.5以上のものを特に効果がある(合格)と判断した。
【0054】
[総合評価]
製造したNo.1-1?1-7、No.2-1?2-7、No.3-1?3-7、No.4-1、No.5-1、5-2に係るサンプルの総合評価(官能検査)を行った。官能検査項目としては、ノンアルコール飲料としての評価について、よく訓練された専門のパネル5名が下記評価基準に則って0?4点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。
【0055】
(官能検査)
4点:ノンアルコール飲料として非常に好ましい香味である。
3点:ノンアルコール飲料としてかなり好ましい香味である。
2点:ノンアルコール飲料として好ましい香味である。
1点:ノンアルコール飲料として許容できる香味である。
0点:ノンアルコール飲料として不適な香味である。
【0056】
総合評価が1.0以上のものを飲料として好適である(合格)と判断し、特に、2.0以上のものを飲料として優秀である(合格)と判断した。
【0057】
表1にNo.1-1?1-7に係るサンプル、表2にNo.2-1?2-7に係るサンプル、表3にNo.3-1?3-7に係るサンプル、表4にNo.4-1に係るサンプル、表5にNo.5-1、5-2に係るサンプルについて、水溶性食物繊維の含有量、クエン酸ナトリウム(または塩化ナトリウム)およびナトリウムの含有量、比率、後味、後味改善効果、飲みやすさ、飲みやすさ増強効果、総合評価を示す。
なお、表中の「比率」とは「ナトリウムの含有量(w/v%)/水溶性食物繊維の含有量(w/v%)」のことである。また、表中の「比率」は、小数点第4位を四捨五入している。そして、表中の評価項目の点数については、小数点第2位を四捨五入している。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
【表5】

【0063】
表2に示すNo.2-2?2-7に係るサンプル、表3に示すNo.3-3?3-7に係るサンプル、表4に示すNo.4-1に係るサンプル、および、表5に示すNo.5-2に係るサンプルは、本発明の要件を満たしていたので、後味増強効果、飲みやすさ増強効果、のいずれもが合格との評価となった。また、これらのサンプルは、総合評価においても飲料として好適であるという評価となった。
ただし、これらのサンプルの中でも、No.2-3?2-6に係るサンプル、No.3-4?3-7に係るサンプル、No.4-1に係るサンプル、および、No.5-2に係るサンプルは、ナトリウムの比率が本発明の好ましい要件を満たしていたので、後味増強効果、飲みやすさ増強効果、のいずれもが特に効果があるとの評価となった。
さらに、その中でも、No.2-3?2-6に係るサンプル、No.3-4?3-6に係るサンプル、No.4-1に係るサンプル、および、No.5-2に係るサンプルは、水溶性食物繊維の含有量が本発明の好ましい要件を満たしていたので、総合評価においても飲料として優秀であるという評価となった。
なお、No.2-4に係るサンプルとNo.4-1に係るサンプルとは、同量の水溶性食物繊維と、同量のナトリウムを含有するにもかかわらず、No.2-4に係るサンプルの方が総合評価の点数が高かった。この結果より、塩化ナトリウム由来のナトリウムよりもクエン酸ナトリウム由来のナトリウムの方が、ノンアルコール飲料として好ましい香味を発揮させることがわかった。
また、No.2-4に係るサンプルとNo.5-2に係るサンプルとを比較すると、後味改善効果および総合評価においてNo.2-4に係るサンプルの方が良好な結果となったため、本発明は、水溶性食物繊維の中でも難消化性デキストリンを含有したノンアルコール飲料に対して特に効果があることがわかった。
【0064】
これに対し、No.1-1?1-7に係るサンプル、No.2-1に係るサンプル、および、No.3-2に係るサンプル、および、No.5-1に係るサンプルは、本発明の要件を満たしていなかったので、後味改善効果または飲みやすさ増強効果の少なくとも一方の効果が得られなかった。これは、No.1-1?1-7に係るサンプル、および、No.2-1に係るサンプル、および、No.5-1に係るサンプルがナトリウムを含まなかったためであり、No.3-2に係るサンプルのナトリウムの比率が本発明の規定する範囲外であったためである。
【0065】
以上説明したように、ノンアルコール飲料の水溶性食物繊維の含有量に対して、ナトリウムの含有量の比率が所定の数値範囲に該当するようにナトリウムを添加することにより、後味を改善できるとともに、飲みやすさについても増強でき、香味の優れた飲料を提供できることが確認された。
【符号の説明】
【0066】
S1 添加工程
S2 ろ過工程
S3 殺菌工程
S4 充填工程
S5 殺菌工程
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(削除)
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】
難消化性デキストリンを含有するノンアルコール飲料の後味を改善するとともに飲みやすさを増強する方法であって、
前記ノンアルコール飲料は、チューハイ飲料の味わいを奏するように調製されたレモンチューハイテイスト飲料であり、
前記ノンアルコール飲料は前記難消化性デキストリンを0.75?3.00w/v%含有し、
前記難消化性デキストリンの含有量に対してナトリウムの含有量の比率(前記ナトリウムの含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)が、0.009?0.036となるように前記ナトリウムを前記ノンアルコール飲料に含有させ、
前記ナトリウムは、クエン酸ナトリウム、又は、塩化ナトリウムに由来するものであることを特徴とする後味の改善と飲みやすさの増強方法。
【請求項7】
前記難消化性デキストリンの含有量は、1.00?2.00w/v%であることを特徴とする請求項6に記載の後味の改善と飲みやすさの増強方法。
【請求項8】(削除)
【請求項9】
前記ナトリウムは、クエン酸ナトリウム由来のものであることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の後味の改善と飲みやすさの増強方法。
【請求項10】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-08-08 
出願番号 特願2015-30053(P2015-30053)
審決分類 P 1 651・ 55- YAA (A23L)
P 1 651・ 113- YAA (A23L)
P 1 651・ 536- YAA (A23L)
P 1 651・ 537- YAA (A23L)
P 1 651・ 121- YAA (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 名和 大輔松岡 徹  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 山崎 勝司
紀本 孝
登録日 2017-11-17 
登録番号 特許第6243864号(P6243864)
権利者 サッポロビール株式会社
発明の名称 ノンアルコール飲料の後味の改善と飲みやすさの増強方法  
代理人 特許業務法人磯野国際特許商標事務所  
代理人 特許業務法人磯野国際特許商標事務所  

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