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審決分類 審判 全部申し立て 産業上利用性  A61B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61B
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61B
管理番号 1355949
異議申立番号 異議2018-700832  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-11-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-10-11 
確定日 2019-08-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6310455号発明「ロボット遠隔運動中心のコントローラ定義」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6310455号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-15〕,〔16-20〕について訂正することを認める。 特許第6310455号の請求項4-6,10-12,17,19に係る特許を維持する。 特許第6310455号の請求項1-3,7-9,13-16,18,20に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6310455号(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、2013年8月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年8月2日、米国(US))を国際出願日とする出願であって、平成30年3月23日にその特許権の設定登録(特許掲載公報の発行日 平成30年4月11日)がなされたところ、平成30年10月11日に特許異議申立人佐古孝介(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされた。当審において、平成31年1月9日付けで取消理由を通知したところ、平成31年4月16日付けで特許権者より意見書と訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」といい、これに係る訂正を「本件訂正」という。)が提出され、平成31年4月24日付けで特許権者より訂正の請求があった旨の通知書を申立人に通知したが申立人からは何ら応答がなかった。

第2 訂正の適否についての判断
1.本件訂正の内容
本件訂正の内容は、以下のとおりである(なお、下線は訂正箇所である。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、
「前記遠隔運動中心の前記定義は、前記ロボットの前記座標系におけるポテンシオメータの較正された場所から、前記ロボットのエンドエフェクタへの並びに前記手術器具への前記ポテンシオメータの取付けによって構築される、前記ロボットの前記座標系における前記手術器具の仮想的な支点の物理的な場所までの距離の計算を含み、
前記解剖学的領域内への前記開口との前記手術器具の前記遠隔運動中心の前記整列は、前記ロボットの前記座標系における前記解剖学的領域内への前記開口の前記物理的な場所と少なくとも部分的に一致する、前記ロボットの前記座標系における前記手術器具の前記仮想的な支点の前記物理的な場所を含む、
請求項1に記載のロボット手術システム。」
とあるのを、
「手術器具と、
ロボットと、
ロボットコントローラとを含み、
前記ロボットは、前記ロボットの座標系において解剖学的領域に対して前記手術器具を操縦するように動作的に構成され、
前記ロボットコントローラは、前記ロボットの前記座標系における前記解剖学的領域内への開口の物理的な場所に基づき、前記ロボットの前記座標系における前記手術器具の回転運動についての遠隔運動中心を定義するように動作的に構成され、
前記ロボットコントローラは、前記手術器具を前記解剖学的領域内への前記開口を中心に回転させるために、前記ロボットに命令して、前記手術器具の前記遠隔運動中心を前記解剖学的領域内への前記開口と整列させるように更に動作的に構成される、
ロボット手術システムであって、
前記遠隔運動中心の前記定義は、前記ロボットの前記座標系におけるポテンシオメータの較正された場所から、前記ロボットのエンドエフェクタへの並びに前記手術器具への前記ポテンシオメータの取付けによって構築される、前記ロボットの前記座標系における前記手術器具の仮想的な支点の物理的な場所までの距離の計算を含み、
前記解剖学的領域内への前記開口との前記手術器具の前記遠隔運動中心の前記整列は、前記ロボットの前記座標系における前記解剖学的領域内への前記開口の前記物理的な場所と少なくとも部分的に一致する、前記ロボットの前記座標系における前記手術器具の前記仮想的な支点の前記物理的な場所を含む、
ロボット手術システム。」
に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5,6も同様に訂正する。)。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7を削除する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8を削除する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項9を削除する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項10に、
「前記遠隔運動中心の前記定義は、前記ロボットの前記座標系における光ファイバの較正された場所から、前記ロボットのエンドエフェクタへの並びに前記手術器具への前記光ファイバの取付けによって構築される、前記手術器具の仮想的な支点の物理的な場所までの距離の計算を含み、
前記解剖学的領域内への開口との前記手術器具の前記遠隔運動中心の前記整列は、前記ロボットの前記座標系における前記解剖学的領域内への前記開口の前記物理的な場所と少なくとも部分的に一致する、前記ロボットの前記座標系における前記手術器具の前記仮想的な支点の前記物理的な場所を含む、
請求項1に記載のロボット手術システム。」
とあるのを、
「手術器具と、
ロボットと、
ロボットコントローラとを含み、
前記ロボットは、前記ロボットの座標系において解剖学的領域に対して前記手術器具を操縦するように動作的に構成され、
前記ロボットコントローラは、前記ロボットの前記座標系における前記解剖学的領域内への開口の物理的な場所に基づき、前記ロボットの前記座標系における前記手術器具の回転運動についての遠隔運動中心を定義するように動作的に構成され、
前記ロボットコントローラは、前記手術器具を前記解剖学的領域内への前記開口を中心に回転させるために、前記ロボットに命令して、前記手術器具の前記遠隔運動中心を前記解剖学的領域内への前記開口と整列させるように更に動作的に構成される、
ロボット手術システムであって、
前記遠隔運動中心の前記定義は、前記ロボットの前記座標系における光ファイバの較正された場所から、前記ロボットのエンドエフェクタへの並びに前記手術器具への前記光ファイバの取付けによって構築される、前記手術器具の仮想的な支点の物理的な場所までの距離の計算を含み、
前記解剖学的領域内への開口との前記手術器具の前記遠隔運動中心の前記整列は、前記ロボットの前記座標系における前記解剖学的領域内への前記開口の前記物理的な場所と少なくとも部分的に一致する、前記ロボットの前記座標系における前記手術器具の前記仮想的な支点の前記物理的な場所を含む、
ロボット手術システム。」
に訂正する(請求項10の記載を引用する請求項11,12も同様に訂正する。)。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項13を削除する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項14を削除する。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項15を削除する。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項16を削除する。

(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項17に、
「前記遠隔運動中心を定義することは、前記ロボットの前記座標系におけるポテンシオメータの較正された場所から、前記ロボットのエンドエフェクタへの並びに前記器具への前記ポテンシオメータの取付けによって構築される、前記ロボットの前記座標系における前記器具の仮想的な支点の物理的な場所までの距離の計算を含み、
前記器具の前記遠隔運動中心を前記領域内への開口と整列させることは、前記ロボットの前記座標系における前記領域内への前記開口の前記物理的な場所と少なくとも部分的に一致する、前記ロボットの前記座標系における前記器具の前記仮想的な支点の前記物理的な場所を含む、
請求項16に記載のロボット方法。」
とあるのを、
「ロボットコントローラが、ロボットの座標系における物体の領域内への開口の物理的な場所に基づき、ロボットの座標系における器具の回転運動についての遠隔運動中心を定義すること、及び
前記ロボットコントローラが、前記領域内への前記開口を中心に前記器具を回転させるために、前記器具の前記遠隔運動中心を前記領域内への前記開口と整列させることを含む、
ロボット方法であって、
前記遠隔運動中心を定義することは、前記ロボットの前記座標系におけるポテンシオメータの較正された場所から、前記ロボットのエンドエフェクタへの並びに前記器具への前記ポテンシオメータの取付けによって構築される、前記ロボットの前記座標系における前記器具の仮想的な支点の物理的な場所までの距離の計算を含み、
前記器具の前記遠隔運動中心を前記領域内への開口と整列させることは、前記ロボットの前記座標系における前記領域内への前記開口の前記物理的な場所と少なくとも部分的に一致する、前記ロボットの前記座標系における前記器具の前記仮想的な支点の前記物理的な場所を含む、
ロボット方法。」
に訂正する。

(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項18を削除する。

(15)訂正事項15
特許請求の範囲の請求項19に、
「前記遠隔運動中心を定義することは、前記ロボットの前記座標系における光ファイバの較正された場所から、前記ロボットのエンドエフェクタへの並びに前記器具への前記光ファイバの取付けによって構築される、前記ロボットの前記座標系における前記器具の仮想的な支点の物理的な場所までの距離の計算を含み、
前記器具の前記遠隔運動中心を前記領域内への開口と整列させることは、前記ロボットの前記座標系における前記領域内への前記開口の前記場所と少なくとも部分的に一致する、前記ロボットの前記座標系における前記器具の前記仮想的な支点の前記物理的な場所を含む、
請求項16に記載のロボット方法。」
とあるのを、
「ロボットコントローラが、ロボットの座標系における物体の領域内への開口の物理的な場所に基づき、ロボットの座標系における器具の回転運動についての遠隔運動中心を定義すること、及び
前記ロボットコントローラが、前記領域内への前記開口を中心に前記器具を回転させるために、前記器具の前記遠隔運動中心を前記領域内への前記開口と整列させることを含む、
ロボット方法であって、
前記遠隔運動中心を定義することは、前記ロボットの前記座標系における光ファイバの較正された場所から、前記ロボットのエンドエフェクタへの並びに前記器具への前記光ファイバの取付けによって構築される、前記ロボットの前記座標系における前記器具の仮想的な支点の物理的な場所までの距離の計算を含み、
前記器具の前記遠隔運動中心を前記領域内への開口と整列させることは、前記ロボットの前記座標系における前記領域内への前記開口の前記場所と少なくとも部分的に一致する、前記ロボットの前記座標系における前記器具の前記仮想的な支点の前記物理的な場所を含む、
ロボット方法。」
に訂正する。

(16)訂正事項16
特許請求の範囲の請求項20を削除する。

2.本件訂正の適否
(1)訂正事項1?3について
訂正事項1?3は、請求項1?3を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
そして、訂正事項1?3は請求項を削除するものであるから、いわゆる新規事項を追加するものではなく、また特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項4について
訂正事項4は、請求項1を引用する訂正前の請求項4の請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項に改めるとともに、訂正前の請求項1の「手術器具の球状回転」及び「手術器具を前記解剖学的領域内への前記開口に対して球状に回転させる」の各記載を、それぞれ「手術器具の回転運動」及び「手術器具を前記解剖学的領域内への前記開口を中心に回転させる」と訂正することにより記載内容を明瞭化するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」及び同項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。
そして、本件特許明細書の段落【0016】の「・・・仮想的な支点21について内視鏡20を球状に回転させる・・・仮想的な支点21についての内視鏡20の球状回転は、開口12に対する内視鏡20の如何なる有意な揺れも伴わない、ロボット座標系42の固定的な場所における仮想的な支点21についての内視鏡20のあらゆる回転運動として広義に定められる。」の記載からすれば、手術器具は解剖学的領域内への開口を中心に並進運動を伴わずに回転しており、訂正事項4は当該記載に基づき請求項の記載を明瞭化したものといえるから、いわゆる新規事項を追加するものではなく、また特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項5?7について
訂正事項5?7は、請求項7?9を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
そして、訂正事項5?7は請求項を削除するものであるから、いわゆる新規事項を追加するものではなく、また特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(4)訂正事項8について
訂正事項8は、請求項1を引用する訂正前の請求項10の請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項に改めるとともに、訂正前の請求項1の「手術器具の球状回転」及び「手術器具を前記解剖学的領域内への前記開口に対して球状に回転させる」の各記載を、それぞれ「手術器具の回転運動」及び「手術器具を前記解剖学的領域内への前記開口を中心に回転させる」と訂正することにより記載内容を明瞭化するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」及び同項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。
そして、本件特許明細書の段落【0016】の「・・・仮想的な支点21について内視鏡20を球状に回転させる・・・仮想的な支点21についての内視鏡20の球状回転は、開口12に対する内視鏡20の如何なる有意な揺れも伴わない、ロボット座標系42の固定的な場所における仮想的な支点21についての内視鏡20のあらゆる回転運動として広義に定められる。」の記載からすれば、手術器具は解剖学的領域内への開口を中心に並進運動を伴わずに回転しており、訂正事項8は当該記載に基づき請求項の記載を明瞭化したものといえるから、いわゆる新規事項を追加するものではなく、また特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(5)訂正事項9?12について
訂正事項9?12は、請求項13?16を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
そして、訂正事項9?12は請求項を削除するものであるから、いわゆる新規事項を追加するものではなく、また特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(6)訂正事項13
訂正事項13は、請求項16を引用する訂正前の請求項17の請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項に改めるとともに、訂正前の請求項16の「器具の球状回転」及び「前記領域内への前記開口に対して前記器具を球状に回転させる」の各記載を、それぞれ「器具の回転運動」及び「前記領域内への前記開口を中心に前記器具を回転させる」と訂正することにより記載内容を明瞭化するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」及び同項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。
そして、本件特許明細書の段落【0016】の「・・・仮想的な支点21について内視鏡20を球状に回転させる・・・仮想的な支点21についての内視鏡20の球状回転は、開口12に対する内視鏡20の如何なる有意な揺れも伴わない、ロボット座標系42の固定的な場所における仮想的な支点21についての内視鏡20のあらゆる回転運動として広義に定められる。」の記載からすれば、器具は領域内への開口を中心に並進運動を伴わずに回転しており、訂正事項13は当該記載に基づき請求項の記載を明瞭化したものといえるから、いわゆる新規事項を追加するものではなく、また特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項13は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(7)訂正事項14について
訂正事項14は、請求項18を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
そして、訂正事項14は請求項を削除するものであるから、いわゆる新規事項を追加するものではなく、また特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(8)訂正事項15
訂正事項15は、請求項16を引用する訂正前の請求項19の請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項に改めるとともに、訂正前の請求項16の「器具の球状回転」及び「前記領域内への前記開口に対して前記器具を球状に回転させる」の各記載を、それぞれ「器具の回転運動」及び「前記領域内への前記開口を中心に前記器具を回転させる」と訂正することにより記載内容を明瞭化するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」及び同項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。
そして、本件特許明細書の段落【0016】の「・・・仮想的な支点21について内視鏡20を球状に回転させる・・・仮想的な支点21についての内視鏡20の球状回転は、開口12に対する内視鏡20の如何なる有意な揺れも伴わない、ロボット座標系42の固定的な場所における仮想的な支点21についての内視鏡20のあらゆる回転運動として広義に定められる。」の記載からすれば、器具は領域内への開口を中心に並進運動を伴わずに回転しており、訂正事項15は当該記載に基づき請求項の記載を明瞭化したものといえるから、いわゆる新規事項を追加するものではなく、また特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項15は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(9)訂正事項16について
訂正事項16は、請求項20を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
そして、訂正事項16は請求項を削除するものであるから、いわゆる新規事項を追加するものではなく、また特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(10)一群の請求項に係る訂正か否かについて
訂正事項1?11に係る訂正前の請求項1?15の訂正について、訂正前の請求項2?15は、それぞれ訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用しているから、訂正事項1によって訂正される請求項1と一群の請求項である。
また、訂正事項12?16に係る訂正前の請求項16?20の訂正について、訂正前の請求項17?20はそれぞれ訂正前の請求項16を直接的に引用しているから、訂正事項12によって訂正される請求項16と一群の請求項である。
したがって、本件訂正は特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求されたものである。

(11)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1,3,4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、訂正後の請求項〔1-15〕,〔16-20〕についての訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1.本件発明
上記のとおり本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1?20に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明20」といい、これらをまとめて「本件発明」ということもある。)は、次のとおりのものである。

【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
手術器具と、
ロボットと、
ロボットコントローラとを含み、
前記ロボットは、前記ロボットの座標系において解剖学的領域に対して前記手術器具を操縦するように動作的に構成され、
前記ロボットコントローラは、前記ロボットの前記座標系における前記解剖学的領域内への開口の物理的な場所に基づき、前記ロボットの前記座標系における前記手術器具の回転運動についての遠隔運動中心を定義するように動作的に構成され、
前記ロボットコントローラは、前記手術器具を前記解剖学的領域内への前記開口を中心に回転させるために、前記ロボットに命令して、前記手術器具の前記遠隔運動中心を前記解剖学的領域内への前記開口と整列させるように更に動作的に構成される、
ロボット手術システムであって、
前記遠隔運動中心の前記定義は、前記ロボットの前記座標系におけるポテンシオメータの較正された場所から、前記ロボットのエンドエフェクタへの並びに前記手術器具への前記ポテンシオメータの取付けによって構築される、前記ロボットの前記座標系における前記手術器具の仮想的な支点の物理的な場所までの距離の計算を含み、
前記解剖学的領域内への前記開口との前記手術器具の前記遠隔運動中心の前記整列は、前記ロボットの前記座標系における前記解剖学的領域内への前記開口の前記物理的な場所と少なくとも部分的に一致する、前記ロボットの前記座標系における前記手術器具の前記仮想的な支点の前記物理的な場所を含む、
ロボット手術システム。
【請求項5】
前記ポテンシオメータは、前記ロボットの前記座標系における前記手術器具の前記仮想的な支点の前記物理的な場所が、前記ロボットの前記座標系における前記解剖学的領域内への前記開口の前記物理的な場所と少なくとも部分的に一致するのに先立ち、前記仮想的な支点に隣接して前記手術器具に取り付けられる、弦を含む、請求項4に記載のロボット手術システム。
【請求項6】
前記ポテンシオメータは、前記ロボットの前記座標系における前記手術器具の前記仮想的な支点の前記物理的な場所が、前記ロボットの前記座標系における前記解剖学的領域内への前記開口の前記物理的な場所と少なくとも部分的に一致するのに続いて、前記仮想的な支点に隣接して前記手術器具に取り付けられる、弦を含む、請求項4に記載のロボット手術システム。
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
手術器具と、
ロボットと、
ロボットコントローラとを含み、
前記ロボットは、前記ロボットの座標系において解剖学的領域に対して前記手術器具を操縦するように動作的に構成され、
前記ロボットコントローラは、前記ロボットの前記座標系における前記解剖学的領域内への開口の物理的な場所に基づき、前記ロボットの前記座標系における前記手術器具の回転運動についての遠隔運動中心を定義するように動作的に構成され、
前記ロボットコントローラは、前記手術器具を前記解剖学的領域内への前記開口を中心に回転させるために、前記ロボットに命令して、前記手術器具の前記遠隔運動中心を前記解剖学的領域内への前記開口と整列させるように更に動作的に構成される、
ロボット手術システムであって、
前記遠隔運動中心の前記定義は、前記ロボットの前記座標系における光ファイバの較正された場所から、前記ロボットのエンドエフェクタへの並びに前記手術器具への前記光ファイバの取付けによって構築される、前記手術器具の仮想的な支点の物理的な場所までの距離の計算を含み、
前記解剖学的領域内への開口との前記手術器具の前記遠隔運動中心の前記整列は、前記ロボットの前記座標系における前記解剖学的領域内への前記開口の前記物理的な場所と少なくとも部分的に一致する、前記ロボットの前記座標系における前記手術器具の前記仮想的な支点の前記物理的な場所を含む、
ロボット手術システム。
【請求項11】
前記光ファイバは、前記ロボットの前記座標系における前記手術器具の前記仮想的な支点の前記物理的な場所が、前記ロボットの前記座標系における前記解剖学的領域内への前記開口の前記物理的な場所と少なくとも部分的に一致するのに先立ち、前記仮想的な支点に隣接して前記手術器具に取り付けられる、請求項10に記載のロボット手術システム。
【請求項12】
前記光ファイバは、前記ロボットの前記座標系における前記手術器具の前記仮想的な支点の前記物理的な場所が、前記ロボットの前記座標系における前記解剖学的領域内への前記開口への前記物理的な場所と少なくとも部分的に一致するのに続いて、前記仮想的な支点に隣接して前記手術器具に取り付けられる、請求項10に記載のロボット手術システム。
【請求項13】
(削除)
【請求項14】
(削除)
【請求項15】
(削除)
【請求項16】
(削除)
【請求項17】
ロボットコントローラが、ロボットの座標系における物体の領域内への開口の物理的な場所に基づき、ロボットの座標系における器具の回転運動についての遠隔運動中心を定義すること、及び
前記ロボットコントローラが、前記領域内への前記開口を中心に前記器具を回転させるために、前記器具の前記遠隔運動中心を前記領域内への前記開口と整列させることを含む、
ロボット方法であって、
前記遠隔運動中心を定義することは、前記ロボットの前記座標系におけるポテンシオメータの較正された場所から、前記ロボットのエンドエフェクタへの並びに前記器具への前記ポテンシオメータの取付けによって構築される、前記ロボットの前記座標系における前記器具の仮想的な支点の物理的な場所までの距離の計算を含み、
前記器具の前記遠隔運動中心を前記領域内への開口と整列させることは、前記ロボットの前記座標系における前記領域内への前記開口の前記物理的な場所と少なくとも部分的に一致する、前記ロボットの前記座標系における前記器具の前記仮想的な支点の前記物理的な場所を含む、
ロボット方法。
【請求項18】
(削除)
【請求項19】
ロボットコントローラが、ロボットの座標系における物体の領域内への開口の物理的な場所に基づき、ロボットの座標系における器具の回転運動についての遠隔運動中心を定義すること、及び
前記ロボットコントローラが、前記領域内への前記開口を中心に前記器具を回転させるために、前記器具の前記遠隔運動中心を前記領域内への前記開口と整列させることを含む、ロボット方法であって、
前記遠隔運動中心を定義することは、前記ロボットの前記座標系における光ファイバの較正された場所から、前記ロボットのエンドエフェクタへの並びに前記器具への前記光ファイバの取付けによって構築される、前記ロボットの前記座標系における前記器具の仮想的な支点の物理的な場所までの距離の計算を含み、
前記器具の前記遠隔運動中心を前記領域内への開口と整列させることは、前記ロボットの前記座標系における前記領域内への前記開口の前記場所と少なくとも部分的に一致する、前記ロボットの前記座標系における前記器具の前記仮想的な支点の前記物理的な場所を含む、
ロボット方法。
【請求項20】
(削除)

2.取消理由の概要
本件特許に対する平成31年1月9日付け取消理由通知(以下、「取消理由通知」という。)には、概ね次の取消理由が記載されている。

(1)取消理由1(明確性)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記ア.イ.の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、取り消すべきものである。

ア.請求項1?15について
請求項1の「手術器具の球状回転」、「手術器具を前記解剖学的領域内への前記開口に対して球状に回転させる」という記載は不明確であり、どのように手術器具を動作させるのか、特定することができない。
また、請求項2?15についても同様である。

イ.請求項16?20について
請求項16の「器具の球状回転」、「器具を球状に回転させる」という記載は、上記ア.で示したのと同じ理由で、不明確である。
請求項17?20についても同様である。

(2)取消理由2(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記ア.イ.の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、取り消すべきものである。

ア.請求項7?9,18について
請求項7の「前記遠隔運動中心の前記定義は、前記ロボットの前記座標系における前記手術器具の遠位先端の較正された場所から前記ロボットの前記座標系における前記手術器具の仮想的な支点の物理的な場所までの距離の計算を含み」という記載について、請求項7に係る発明の実施形態は、本件特許明細書の段落【0021】?【0022】及び図5に対応すると考えられるところ、これら明細書及び図面の記載を参酌しても、上記「距離の計算」のための具体的な方法を特定することができない。
請求項8、9についても同様である。
また、請求項18の「前記遠隔運動中心を定義することは、前記ロボットの前記座標系における前記器具の遠位先端の較正された場所から前記ロボットの前記座標系における前記器具の仮想的な支点の物理的な場所までの距離の計算を含み」という記載についても、同様である。

イ.請求項13?15,20について
請求項13の「前記遠隔運動中心の前記定義は、前記ロボットの前記座標系における前記手術器具の仮想的な支点の物理的な場所を決定する、前記ロボットの前記座標系における前記手術器具の遠位先端の複数の較正された位置までの前記手術器具の前記仮想的な支点の等距離の計算を含み」という記載について、請求項13に係る発明の実施形態は、本件特許明細書の段落【0026】?【0027】及び図7に対応すると考えられるところ、これら明細書及び図面の記載を参酌しても、上記距離を計算するための具体的な方法を特定することができない。
請求項14、15についても同様である。
また、請求項20の「前記遠隔運動中心を定義することは、前記ロボットの前記座標系における前記器具の仮想的な支点の物理的な場所を決定する、前記ロボットの前記座標系における前記器具の遠位先端の複数の較正された位置までの前記器具の仮想的な支点の等距離の計算を含み」という記載についても、同様である。

(3)取消理由3(実施可能要件)
本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、取り消すべきものである。
すなわち、上記理由(2)イ.のとおり、請求項13及び20に係る発明の「距離の計算」に関して、本件明細書の「内視鏡20の遠位先端22の較正された場所22a-22cが記憶させられ、それらの較正された位置が、全ての較正された地点22a-22cから等距離にある位置21を見出す誤差最小化問題を解決するために用いられる。」(段落【0027】)の記載だけでは、具体的にどのようにして計算するのか、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。

(4)取消理由4(新規性),(進歩性)
請求項1?3,16に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1?3,16に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
また、請求項1?3,16に係る発明は、本件特許の優先前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?3,16に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

刊行物一覧:
甲第1号証:特開2005-329476号公報
甲第2号証:特開平8-215205号公報
甲第3号証:特表2000-505328号公報

3.上記取消理由についての判断
(1)取消理由1(明確性)について
ア.本件訂正の訂正事項4及び8により、訂正前の請求項1における「手術器具の球状回転」及び「手術器具を前記解剖学的領域内への前記開口に対して球状に回転させる」の各記載は、それぞれ「手術器具の回転運動」及び「手術器具を前記解剖学的領域内への前記開口を中心に回転させる」と訂正され、手術器具は解剖学的領域内への開口を中心に並進運動を伴わずに回転することが明らかになったから、訂正前の請求項1に係る構成を包含する訂正後の請求項4?6,10?12において、どのように手術器具を動作させるのか特定できるものとなった。
イ.また、本件訂正の訂正事項13及び15により、訂正前の請求項16における「器具の球状回転」及び「前記領域内への前記開口に対して前記器具を球状に回転させる」の各記載は、それぞれ「器具の回転運動」及び「前記領域内への前記開口を中心に前記器具を回転させる」と訂正され、器具は解剖学的領域内への開口を中心に並進運動を伴わずに回転することが明らかになったから、訂正前の請求項16に係る構成を包含する訂正後の請求項17,19において、どのように器具を動作させるのか特定できるものとなった。
以上のとおり、本件訂正が認められることにより、訂正後の請求項4?6,10?12,17,19の記載には、取消理由1に係る不明確なところはない。

(2)取消理由2(サポート要件)について
本件訂正が認められることにより、訂正前の請求項7?9,13?15,18,20は削除されたので、取消理由2は対象となる請求項が存在せず、理由のないものとなった。

(3)取消理由3(実施可能要件)について
本件訂正が認められることにより、訂正前の請求項13及び20は削除されたので、取消理由3は対象となる請求項が存在せず、理由のないものとなった。

(4)取消理由4(新規性),(進歩性)
本件訂正が認められることにより、訂正前の請求項1?3,16は削除されたので、取消理由4は対象となる請求項が存在せず、理由のないものとなった。

4.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての判断
(1)明確性について
ア.申立人は、訂正前の請求項1の「動作的に構成される」の意味が明確でないと主張している(特許異議申立書43頁5?6行)。
しかし、当該記載は、ロボットコントローラが遠隔運動中心を定義する動作を行うように構成されていること、及び、遠隔運動中心を解剖学的領域内への開口と整列させる動作を行うように構成されていることを、「動作的に構成される」と表現していると読み取ることができるから、明確でないとはいえない。
よって、訂正前の請求項1に係る構成を包含する訂正後の請求項4?6,10?12に係る発明が不明確であるとはいえない。

イ.申立人は、訂正前の請求項3,4,7?10,14,17?19の「較正された場所」及び訂正前の請求項13,15,20の「較正された位置」が、どの場所及び位置を示すのかが明確でないと主張している(特許異議申立書43頁7?10行)。
しかし、一般に「較正」とは、「(calibration)測定器の狂い・精度を、基準量を用いて正すこと。」[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]を意味し、本件特許明細書の段落【0018】には、「図4を参照すると、フローチャート50の段階S51は、内視鏡40のエンドエフェクタ41に取り付けられる弦ポテンシオメータ(string potentiometer)の較正を包含する。・・・・内視鏡20がロボット座標系42内でロボット20を介して操縦されるときに、ロボット座標系42内に較正された場所を有する。」の記載が、また、段落【0023】には「図6を参照すると、フローチャート80の段階S81が、ロボット40のエンドエフェクタ41に取り付けられた形状感知光ファイバ90の較正を包含する。・・・・内視鏡20がロボット座標系42内でロボット40を介して操縦されるときに、ロボット座標系42内に較正された場所を有する。」の記載があることからすれば、「較正された場所」又は「較正された位置」とは、ロボット座標系内でロボットのエンドエフェクタに取り付けられたポテンシオメータ又は光ファイバの較正された(すなわち、狂い・精度を正された)場所又は位置と解されるから、「較正された場所」又は「較正された位置」がどの場所及び位置を示すのかが明確でないとはいえない。
よって、訂正前の請求項4,10,17,19に係る構成を包含する訂正後の請求項4?6,10?12,17,19に係る発明が不明確であるとはいえない。

(2)サポート要件について
ア.申立人は、請求項1および16には、「手術器具(器具)の遠隔運動中心を解剖学的領域内(領域内)への開口と整列させる」と規定されている。整列とは、一致させる以外にも所定の距離を隔てて並ぶ場合も含んでいる。しかし、手術器具(器具)の遠隔運動中心を解剖学的領域内(領域内)への開口と所定の距離を隔てて並んで整列した場合には、上記記載の課題は解決できないから、請求項1および16に記載された発明は、発明の詳細な説明の記載から当業者が発明の課題を解決できると認識できるものではない旨主張している(特許異議申立書41頁14行?42頁1行)。
しかし、本件特許明細書の段落【0003】及び【0005】の記載に照らして、あえて発明の課題を解決できない態様を含むと解釈することは妥当でなく、手術器具(器具)の遠隔運動中心を解剖学的領域内(領域内)への開口と整列させるとは、当該遠隔運動中心と解剖学的領域内(領域内)への開口を一致させることであるとするのが自然である。
よって、申立人の主張は採用できず、訂正前の請求項1及び16に係る構成を包含する訂正後の請求項4?6,10?12,17,19に係る発明が発明の詳細な説明に記載されたものではないとはいえない。

イ.申立人は、請求項1および16には、ポテンシオメータ又は光ファイバを用いる場合以外の構成も含んでいるから、請求項1および16は明細書の適切なサポートがない旨主張している(特許異議申立書42頁2?12行)。
しかし、本件訂正が認められることにより、訂正前の請求項1及び16は削除され、訂正前の請求項1及び16を包含する訂正後の請求項4?6,10?12,17,19に係る発明は、いずれもポテンシオメータ又は光ファイバを用いる構成となったので、上記主張は理由がないものとなった。

(3)産業上の利用可能性について
申立人は、請求項14は、手動回転という人間の動作を含むので産業上利用することができる発明ではない旨主張している(特許異議申立書34頁28行?35頁1行)。
しかし、本件訂正が認められることにより、請求項14は削除されたので、上記主張は対象となる請求項が存在せず理由がないものとなった。

(4)進歩性
ア.甲号証について
(ア)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証(段落【0008】?【0025】、図1、図2、図6、図7等参照)には、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「甲1発明」という。)。
「操作部材(1)と、
マニピュレータ(5)と、
制御装置とを含み、
前記マニピュレータ(5)は、基準座標系において操作対象物(2)の内部に対して前記操作部材(1)を操作するように構成され、
前記制御装置は、前記基準座標系における前記操作対象物(2)の開口部の表面位置に合わせて、前記基準座標系における前記操作部材(1)の制御支点(P)を生成するように構成され、
前記制御装置は、前記操作部材(1)を前記操作対象物(2)の内部に対して操作する際、前記操作部材(1)の前記制御支点(P)の位置が前記操作対象物(2)の前記開口部の表面位置と一致するように構成される、
装置。」

(イ)甲第2号証に記載された発明
甲第2号証(段落【0043】?【0055】、図11、図14等参照)には、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「甲2発明」という。)。
「先端部(128)と、
スレーブマニピュレータ(101)と、
制御装置(121)とを含み、
前記スレーブマニピュレータ(101)は、前記スレーブマニピュレータ(101)の前記先端部(128)の座標系において患者の体腔(c)内に対して前記先端部(128)を動作させるように構成され、
前記制御装置(121)は、前記先端部(128)の前記座標系における前記患者の体腔(c)内への挿入孔(b)を動作制限とするようポイントロック位置(134)を定めるよう構成され、
前記制御装置(121)は、前記先端部(128)を前記患者の体腔(c)内に対して動作させる際、前記先端部(128)のツール先端点(TCPs)を現在のTCPs(131)から次のTCPs(133)に移動させる場合には、前記先端部(128)の軸が前記ポイントロック位置(134)を通るよう、前記次のTCPs(133)と前記ポイントロック位置(134)を結ぶ線分(P軸)に基づいて前記先端部(128)の向きを変更するよう構成される、
医療用マニピュレータ。」

(ウ)甲第3号証に記載された発明
甲第3号証(第17ページ第3行?第27ページ下から第2行、図1?6等参照)には、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「甲3発明」という。)。
「外科用器具(22、24)と、
関節式アーム(16、18)と、
コントローラ(46)とを含み、
前記関節式アーム(16、18)は、前記関節式アーム(16、18)の座標系において患者の内部に対して前記外科用器具(22、24)を位置決めするよう構成され、
前記コントローラ(46)は、前記関節式アーム(16、18)の前記座標系における前記患者の内部への切開口に位置するピボット点(P)を前記関節式アーム(16、18)の位置センサから導くように構成され、
前記コントローラ(46)は、前記外科用器具(22、24)が新たな位置及び向きをとった場合に、前記ピボット点(P)を更新するよう構成される、
システム(10)。」

イ.請求項4?6,17についての対比・判断
上記甲1発明?甲3発明のいずれかと本件発明4?6,17を対比すると、少なくとも、本件発明4?6は、遠隔運動中心の定義にあたって、ロボットの座標系におけるポテンシオメータの較正された場所から、前記ロボットのエンドエフェクタへの並びに手術器具への前記ポテンシオメータの取付けによって構築される、前記ロボットの前記座標系における前記手術器具の仮想的な支点の物理的な場所までの距離の計算を含み、また、本件発明17は、遠隔運動中心の定義にあたって、ロボットの座標系におけるポテンシオメータの較正された場所から、前記ロボットのエンドエフェクタへの並びに器具への前記ポテンシオメータの取付けによって構築される、前記ロボットの前記座標系における前記器具の仮想的な支点の物理的な場所までの距離の計算を含むのに対し、甲1発明?甲3発明はいずれも、そのような構成を有しない点で相違する。
上記相違点について検討すると、遠隔運動中心の定義のための距離の計算にポテンシオメータを用いることについて、甲1?3には記載も示唆もなく、又周知技術であるともいえないから、上記相違点に係る請求項4?6,17に係る発明の構成を当業者が容易に発明できたとはいえない。
この点、申立人は、ポテンシオメータを取り付けて距離を計算することは周知技術であるから、当業者が容易に想到し得るものである旨主張している(特許異議申立書30頁10?26行及び37頁27行?38頁13行)。
しかし、距離の計算にポテンシオメータを用いることが周知技術であるという証拠は何ら提出されておらず、申立人の主張は採用できない。
また、仮に申立人が主張するとおり、距離を計算する手段としてポテンシオメータが周知技術であるとしても、当該ポテンシオメータを具体的にロボット手術システムやロボット方法に適用して、ロボットの座標系における手術器具や器具の仮想的な支点の物理的な場所までの距離の計算に利用して、ロボット手術システムの手術器具やロボット方法の器具の回転運動についての遠隔運動中心を定義するために用いることを、当業者が容易に想到できたとまではいえない。
よって、申立人の主張は採用できない。

ウ.請求項10?12,19についての対比・判断
上記甲1発明?甲3発明のいずれかと本件発明10?12,19を対比すると、少なくとも、本件発明10?12は、遠隔運動中心の定義にあたって、ロボットの座標系における光ファイバの較正された場所から、前記ロボットのエンドエフェクタへの並びに手術器具への前記光ファイバの取付けによって構築される、前記手術器具の仮想的な支点の物理的な場所までの距離の計算を含み、また、本件発明19は、遠隔運動中心の定義にあたって、ロボットの座標系における光ファイバの較正された場所から、前記ロボットのエンドエフェクタへの並びに器具への前記光ファイバの取付けによって構築される、前記ロボットの前記座標系における前記器具の仮想的な支点の物理的な場所までの距離の計算を含むのに対し、甲1発明?甲3発明はいずれも、そのような構成を有しない点で相違する。
上記相違点について検討すると、遠隔運動中心の定義のための距離の計算に光ファイバを用いることについて甲1?3には記載も示唆もなく、又周知技術であるともいえないから、上記相違点に係る請求項10?12,19に係る発明の構成を当業者が容易に発明できたとはいえない。
この点、申立人は、光ファイバを取り付けて距離を計算することは周知技術であるから、当業者が容易に想到し得るものである旨主張している(特許異議申立書30頁10?26行及び37頁27行?38頁13行)。
しかし、距離の計算に光ファイバを用いることが周知技術であるという証拠は何ら提出されておらず、申立人の主張は採用できない。
また、仮に申立人が主張するとおり、距離を計算する手段として光ファイバが周知技術であるとしても、当該光ファイバを具体的にロボット手術システムやロボット方法に適用して、ロボットの座標系における手術器具や器具の仮想的な支点の物理的な場所までの距離の計算に利用して、ロボット手術システムの手術器具やロボット方法の器具の回転運動についての遠隔運動中心を定義するために用いることを、当業者が容易に想到できたとまではいえない。
よって、申立人の主張は採用できない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本件請求項4?6,10?12,17,19に係る特許は、特許法第36条第6項第2号、同条第6項第1号、同条第4項第1項、同法第29条柱書き、同条第1項及び同条第2項の規定に違反してなされたものとは認められず、取消理由通知に記載した取消理由及び異議申立書に記載した理由によって、取り消すことはできない。
また、他に、本件請求項4?6,10?12,17,19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件訂正が認められることにより、請求項1?3,7?9,13?16,18,20は削除されたので、請求項1?3,7?9,13?16,18,20に係る特許についての特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなり不適法であり、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
手術器具と、
ロボットと、
ロボットコントローラとを含み、
前記ロボットは、前記ロボットの座標系において解剖学的領域に対して前記手術器具を操縦するように動作的に構成され、
前記ロボットコントローラは、前記ロボットの前記座標系における前記解剖学的領域内への開口の物理的な場所に基づき、前記ロボットの前記座標系における前記手術器具の回転運動についての遠隔運動中心を定義するように動作的に構成され、
前記ロボットコントローラは、前記手術器具を前記解剖学的領域内への前記開口を中心に回転させるために、前記ロボットに命令して、前記手術器具の前記遠隔運動中心を前記解剖学的領域内への前記開口と整列させるように更に動作的に構成される、
ロボット手術システムであって、
前記遠隔運動中心の前記定義は、前記ロボットの前記座標系におけるポテンシオメータの較正された場所から、前記ロボットのエンドエフェクタへの並びに前記手術器具への前記ポテンシオメータの取付けによって構築される、前記ロボットの前記座標系における前記手術器具の仮想的な支点の物理的な場所までの距離の計算を含み、
前記解剖学的領域内への前記開口との前記手術器具の前記遠隔運動中心の前記整列は、前記ロボットの前記座標系における前記解剖学的領域内への前記開口の前記物理的な場所と少なくとも部分的に一致する、前記ロボットの前記座標系における前記手術器具の前記仮想的な支点の前記物理的な場所を含む、
ロボット手術システム。
【請求項5】
前記ポテンシオメータは、前記ロボットの前記座標系における前記手術器具の前記仮想的な支点の前記物理的な場所が、前記ロボットの前記座標系における前記解剖学的領域内への前記開口の前記物理的な場所と少なくとも部分的に一致するのに先立ち、前記仮想的な支点に隣接して前記手術器具に取り付けられる、弦を含む、請求項4に記載のロボット手術システム。
【請求項6】
前記ポテンシオメータは、前記ロボットの前記座標系における前記手術器具の前記仮想的な支点の前記物理的な場所が、前記ロボットの前記座標系における前記解剖学的領域内への前記開口の前記物理的な場所と少なくとも部分的に一致するのに続いて、前記仮想的な支点に隣接して前記手術器具に取り付けられる、弦を含む、請求項4に記載のロボット手術システム。
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
手術器具と、
ロボットと、
ロボットコントローラとを含み、
前記ロボットは、前記ロボットの座標系において解剖学的領域に対して前記手術器具を操縦するように動作的に構成され、
前記ロボットコントローラは、前記ロボットの前記座標系における前記解剖学的領域内への開口の物理的な場所に基づき、前記ロボットの前記座標系における前記手術器具の回転運動についての遠隔運動中心を定義するように動作的に構成され、
前記ロボットコントローラは、前記手術器具を前記解剖学的領域内への前記開口を中心に回転させるために、前記ロボットに命令して、前記手術器具の前記遠隔運動中心を前記解剖学的領域内への前記開口と整列させるように更に動作的に構成される、
ロボット手術システムであって、
前記遠隔運動中心の前記定義は、前記ロボットの前記座標系における光ファイバの較正された場所から、前記ロボットのエンドエフェクタへの並びに前記手術器具への前記光ファイバの取付けによって構築される、前記手術器具の仮想的な支点の物理的な場所までの距離の計算を含み、
前記解剖学的領域内への開口との前記手術器具の前記遠隔運動中心の前記整列は、前記ロボットの前記座標系における前記解剖学的領域内への前記開口の前記物理的な場所と少なくとも部分的に一致する、前記ロボットの前記座標系における前記手術器具の前記仮想的な支点の前記物理的な場所を含む、
ロボット手術システム。
【請求項11】
前記光ファイバは、前記ロボットの前記座標系における前記手術器具の前記仮想的な支点の前記物理的な場所が、前記ロボットの前記座標系における前記解剖学的領域内への前記開口の前記物理的な場所と少なくとも部分的に一致するのに先立ち、前記仮想的な支点に隣接して前記手術器具に取り付けられる、請求項10に記載のロボット手術システム。
【請求項12】
前記光ファイバは、前記ロボットの前記座標系における前記手術器具の前記仮想的な支点の前記物理的な場所が、前記ロボットの前記座標系における前記解剖学的領域内への前記開口への前記物理的な場所と少なくとも部分的に一致するのに続いて、前記仮想的な支点に隣接して前記手術器具に取り付けられる、請求項10に記載のロボット手術システム。
【請求項13】
(削除)
【請求項14】
(削除)
【請求項15】
(削除)
【請求項16】
(削除)
【請求項17】
ロボットコントローラが、ロボットの座標系における物体の領域内への開口の物理的な場所に基づき、ロボットの座標系における器具の回転運動についての遠隔運動中心を定義すること、及び
前記ロボットコントローラが、前記領域内への前記開口を中心に前記器具を回転させるために、前記器具の前記遠隔運動中心を前記領域内への前記開口と整列させることを含む、
ロボット方法であって、
前記遠隔運動中心を定義することは、前記ロボットの前記座標系におけるポテンシオメータの較正された場所から、前記ロボットのエンドエフェクタへの並びに前記器具への前記ポテンシオメータの取付けによって構築される、前記ロボットの前記座標系における前記器具の仮想的な支点の物理的な場所までの距離の計算を含み、
前記器具の前記遠隔運動中心を前記領域内への開口と整列させることは、前記ロボットの前記座標系における前記領域内への前記開口の前記物理的な場所と少なくとも部分的に一致する、前記ロボットの前記座標系における前記器具の前記仮想的な支点の前記物理的な場所を含む、
ロボット方法。
【請求項18】
(削除)
【請求項19】
ロボットコントローラが、ロボットの座標系における物体の領域内への開口の物理的な場所に基づき、ロボットの座標系における器具の回転運動についての遠隔運動中心を定義すること、及び
前記ロボットコントローラが、前記領域内への前記開口を中心に前記器具を回転させるために、前記器具の前記遠隔運動中心を前記領域内への前記開口と整列させることを含む、
ロボット方法であって、
前記遠隔運動中心を定義することは、前記ロボットの前記座標系における光ファイバの較正された場所から、前記ロボットのエンドエフェクタへの並びに前記器具への前記光ファイバの取付けによって構築される、前記ロボットの前記座標系における前記器具の仮想的な支点の物理的な場所までの距離の計算を含み、
前記器具の前記遠隔運動中心を前記領域内への開口と整列させることは、前記ロボットの前記座標系における前記領域内への前記開口の前記場所と少なくとも部分的に一致する、前記ロボットの前記座標系における前記器具の前記仮想的な支点の前記物理的な場所を含む、
ロボット方法。
【請求項20】
(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-08-15 
出願番号 特願2015-524898(P2015-524898)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A61B)
P 1 651・ 536- YAA (A61B)
P 1 651・ 537- YAA (A61B)
P 1 651・ 113- YAA (A61B)
P 1 651・ 14- YAA (A61B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 槻木澤 昌司  
特許庁審判長 芦原 康裕
特許庁審判官 井上 哲男
高木 彰
登録日 2018-03-23 
登録番号 特許第6310455号(P6310455)
権利者 コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
発明の名称 ロボット遠隔運動中心のコントローラ定義  
代理人 五十嵐 貴裕  
代理人 五十嵐 貴裕  
代理人 笛田 秀仙  
代理人 笛田 秀仙  
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