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審決分類 審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  H05B
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  H05B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H05B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H05B
審判 全部申し立て 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張  H05B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H05B
審判 全部申し立て 2項進歩性  H05B
審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:857  H05B
審判 全部申し立て 特許請求の範囲の実質的変更  H05B
管理番号 1355959
異議申立番号 異議2018-700255  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-11-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-03-27 
確定日 2019-09-03 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6203319号発明「光学装置」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第6203319号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-8〕,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19及び20について訂正することを認める。 特許第6203319号の請求項2,3及び5-20に係る特許を維持する。 特許第6203319号の請求項1及び4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続等の経緯
特願2006-544561号(以下「もとの特許出願」という。)は,2004年(平成16年)12月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2003年12月19日 英国)を国際出願日とする出願である。
特願2010-282042号(以下「第2出願」という。)は,もとの特許出願の一部を平成22年12月17日に新たな特許出願としたものである。また,特願2013-18851号(以下「第3出願」という。)は,第2出願の一部を平成25年2月1日に新たな特許出願としたものである。さらに,特願2014-138693号(以下「第4出願」という。)は,第3出願の一部を平成26年7月4日に新たな特許出願としたものである。
そして,特許第6203319号の請求項1?請求項8に係る特許(以下,それぞれ「本件特許1」?「本件特許8」といい,総称して「本件特許」という。)についての出願(特願2016-77082号)は,第4出願の一部を平成28年4月7日に新たな特許出願としたものであって,平成29年9月8日に特許権の設定の登録がされたものである。
本件特許について,平成29年9月27日に特許掲載公報が発行されたところ,発行の日から6月以内である平成30年3月27日に,特許異議申立人 山▲崎▼ 浩一郎(以下「特許異議申立人」という。)から,特許異議の申立てがされた(異議2018-700255号)。
その後の手続等の概要は,以下のとおりである。
平成30年 5月30日付け:取消理由通知書
平成30年 8月31日付け:訂正請求書
平成30年 8月31日付け:意見書(特許権者)
平成30年10月29日付け:意見書(特許異議申立人)
平成31年 1月17日付け:取消理由通知書(決定の予告)
平成31年 4月23日付け:訂正請求書
(この訂正請求書による訂正の請求を,以下「本件訂正請求」という。)
平成31年 4月23日付け:意見書(特許権者)
令和 元年 6月10日付け:意見書(特許異議申立人)
なお,本件訂正請求がされたことから,平成30年8月31日付け訂正請求書による訂正の請求は,取り下げられたものとみなす(特許法120条の5第7項)。

第2 本件訂正請求について
1 請求の趣旨
本件訂正請求の趣旨は,特許第6203319号の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1?20について訂正することを求める,というものである。

2 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は,以下のとおりである(訂正事項1?訂正事項7に関して付された下線は,当合議体が付したものであり,訂正箇所を示す。)。なお,本件訂正請求による訂正前の請求項1を,「訂正前請求項1」,訂正前請求項1に係る発明を「訂正前発明1」と省略していう場合がある。他の請求項及び訂正後についても同様である。また,請求項1,請求項2及び請求項4の記載を引用する請求項5のことを,「請求項1-2-4-5」と省略していう場合があり,他の引用関係の請求項についても,同様に「-」で引用関係を表現していう場合がある。

(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を,削除する。

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に,「前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために,導電性有機材料を含んだ電荷注入層が,前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されている,請求項1に記載の方法。」と記載されているのを,次のとおり訂正する(当合議体注:訂正後請求項2は,訂正前請求項1-2-4-5に対応する。)。
「 順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み,
第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している,有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み,
前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーであり,
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために,導電性有機材料を含んだ電荷注入層が,前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されている,
該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。」

なお,請求項3及び請求項8は,訂正後請求項2の記載を引用して記載されているから,この訂正により,請求項3及び請求項8についても訂正されたこととなる。

(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4を,削除する。

(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に,「前記ポリマーは選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含む,請求項4に記載の方法。」と記載されているのを,次のとおり訂正する(当合議体注:訂正後請求項5は,訂正前請求項1-4-5に対応する。)。
「 順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み,
第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している,有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み,
前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーである,該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。」

なお,請求項7及び請求項8は,訂正後請求項5の記載を引用して記載されているから,この訂正により,請求項7及び請求項8についても訂正されたこととなる。

(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に,「前記トリアリールアミン繰返し単位は一般式(I):
【化1】

[式中,各Ar^(1),Ar^(2)及びAr^(3)は同じか異なり,独立して選択的に置換されるアリールを表し,nは0又は1である]
の選択的に置換される繰返し単位を含む,請求項5に記載の方法。」と記載されているのを,次のとおり訂正する(当合議体注:訂正後請求項6は,訂正前請求項1-4-5-6に対応する。)。
「 順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み,
第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している,有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み,
前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーであり,
前記トリアリールアミン繰返し単位は一般式(I):
【化1】

[式中,各Ar^(1),Ar^(2)及びAr^(3)は同じか異なり,独立して選択的に置換されるアリールを表し,nは0又は1である]
の選択的に置換される繰返し単位を含む,該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。」

なお,請求項7及び請求項8は,訂正後請求項6の記載を引用して記載されているから,この訂正により,請求項7及び請求項8についても訂正されたこととなる。

(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に,「前記ポリマーは,選択的に置換されるフルオレン,インデノフルオレン,スピロフルオレン及びフェニレンから選択される繰返し単位を含む請求項4?6のいずれかに記載の方法。」と記載されているのを,「前記ポリマーは,選択的に置換されるフルオレン,インデノフルオレン,スピロフルオレン及びフェニレンから選択される繰返し単位を含む請求項5又は6に記載の方法。」に訂正する。

なお,請求項8は,訂正後請求項7の記載を引用して記載されているから,この訂正により,請求項8についても訂正されたこととなる。

(7) 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に,「前記燐光性材料は金属錯体である,請求項1?7のいずれかに記載の方法。」と記載されているのを,「前記燐光性材料は金属錯体である,請求項2,3,5,6及び7のいずれかに記載の方法。」に訂正する。

(8) 訂正事項8
特許請求の範囲に,次の新たな請求項を設けて,請求項9とする(当合議体注:訂正後請求項9は,訂正前請求項1-2-4-5-6に対応する。)。
「 順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み,
第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している,有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み,
前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーであり,
前記トリアリールアミン繰返し単位は一般式(I):
【化2】

[式中,各Ar^(1),Ar^(2)及びAr^(3)は同じか異なり,独立して選択的に置換されるアリールを表し,nは0又は1である]
の選択的に置換される繰返し単位を含み,
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために,導電性有機材料を含んだ電荷注入層が,前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されている,
該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。」

(9) 訂正事項9
特許請求の範囲に,次の新たな請求項を設けて,請求項10とする(当合議体注:訂正後請求項10は,訂正前請求項1-2-3-4-5-6に対応する。)。
「 順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み,
第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している,有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み,
前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーであり,
前記トリアリールアミン繰返し単位は一般式(I):
【化3】

[式中,各Ar^(1),Ar^(2)及びAr^(3)は同じか異なり,独立して選択的に置換されるアリールを表し,nは0又は1である]
の選択的に置換される繰返し単位を含み,
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために,導電性有機材料を含んだ電荷注入層が,前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されており,
前記導電性有機材料はポリ(エチレンジオキシチオフェン)を含む,
該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。」

(10) 訂正事項10
特許請求の範囲に,次の新たな請求項を設けて,請求項11とする(当合議体注:訂正後請求項11は,訂正前請求項1-2-4-5-6-7に対応する。)。
「 順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み,
第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している,有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み,
前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位,並びに,選択的に置換されるフルオレン,インデノフルオレン,スピロフルオレン及びフェニレンから選択される繰返し単位を含むポリマーであり,
前記トリアリールアミン繰返し単位は一般式(I):
【化4】

[式中,各Ar^(1),Ar^(2)及びAr^(3)は同じか異なり,独立して選択的に置換されるアリールを表し,nは0又は1である]
の選択的に置換される繰返し単位を含み,
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために,導電性有機材料を含んだ電荷注入層が,前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されている,
該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。」

(11) 訂正事項11
特許請求の範囲に,次の新たな請求項を設けて,請求項12とする(当合議体注:訂正後請求項12は,訂正前請求項1-2-3-4-5-6-7に対応する。)。
「 順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み,
第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している,有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み,
前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位,並びに,選択的に置換されるフルオレン,インデノフルオレン,スピロフルオレン及びフェニレンから選択される繰返し単位を含むポリマーであり,
前記トリアリールアミン繰返し単位は一般式(I):
【化5】

[式中,各Ar^(1),Ar^(2)及びAr^(3)は同じか異なり,独立して選択的に置換されるアリールを表し,nは0又は1である]
の選択的に置換される繰返し単位を含み,
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために,導電性有機材料を含んだ電荷注入層が,前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されており,前記導電性有機材料はポリ(エチレンジオキシチオフェン)を含む,
該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。」

(12) 訂正事項12
特許請求の範囲に,次の新たな請求項を設けて,請求項13とする(当合議体注:訂正後請求項13は,訂正前請求項1-2-4-5-6-8に対応する。)。
「 順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み,
第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している,有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み,
前記燐光性材料は金属錯体であり,
前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーであり,
前記トリアリールアミン繰返し単位は一般式(I):
【化6】

[式中,各Ar^(1),Ar^(2)及びAr^(3)は同じか異なり,独立して選択的に置換されるアリールを表し,nは0又は1である]
の選択的に置換される繰返し単位を含み,
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために,導電性有機材料を含んだ電荷注入層が,前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されている,
該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。」

(13) 訂正事項13
特許請求の範囲に,次の新たな請求項を設けて,請求項14とする(当合議体注:訂正後請求項14は,訂正前請求項1-2-3-4-5-6-8に対応する。)。
「 順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み,
第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している,有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み,
前記燐光性材料は金属錯体であり,
前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーであり,
前記トリアリールアミン繰返し単位は一般式(I):
【化7】

[式中,各Ar^(1),Ar^(2)及びAr^(3)は同じか異なり,独立して選択的に置換されるアリールを表し,nは0又は1である]
の選択的に置換される繰返し単位を含み,
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために,導電性有機材料を含んだ電荷注入層が,前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されており,
前記導電性有機材料はポリ(エチレンジオキシチオフェン)を含む,
該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。」

(14) 訂正事項14
特許請求の範囲に,次の新たな請求項を設けて,請求項15とする(当合議体注:訂正後請求項15は,訂正前請求項1-2-4-5-6-7-8に対応する。)。
「 順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み,
第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している,有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み,
前記燐光性材料は金属錯体であり,
前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位,並びに,選択的に置換されるフルオレン,インデノフルオレン,スピロフルオレン及びフェニレンから選択される繰返し単位を含むポリマーであり,
前記トリアリールアミン繰返し単位は一般式(I):
【化8】

[式中,各Ar^(1),Ar^(2)及びAr^(3)は同じか異なり,独立して選択的に置換されるアリールを表し,nは0又は1である]
の選択的に置換される繰返し単位を含み,
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために,導電性有機材料を含んだ電荷注入層が,前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されている,
該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。」

(15) 訂正事項15
特許請求の範囲に,次の新たな請求項を設けて,請求項16とする(当合議体注:訂正後請求項16は,訂正前請求項1-2-3-4-5-6-7-8に対応する。)。
「 順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み,
第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している,有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み,
前記燐光性材料は金属錯体であり,
前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位,並びに,選択的に置換されるフルオレン,インデノフルオレン,スピロフルオレン及びフェニレンから選択される繰返し単位を含むポリマーであり,
前記トリアリールアミン繰返し単位は一般式(I):
【化9】

[式中,各Ar^(1),Ar^(2)及びAr^(3)は同じか異なり,独立して選択的に置換されるアリールを表し,nは0又は1である]
の選択的に置換される繰返し単位を含み,
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために,導電性有機材料を含んだ電荷注入層が,前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されており,前記導電性有機材料はポリ(エチレンジオキシチオフェン)を含む,
該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。」

(16) 訂正事項16
特許請求の範囲に,次の新たな請求項を設けて,請求項17とする(当合議体注:訂正後請求項17は,訂正前請求項1-2-4-5-7に対応する。)。
「 順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み,
第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している,有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み,
前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位,並びに,選択的に置換されるフルオレン,インデノフルオレン,スピロフルオレン及びフェニレンから選択される繰返し単位を含むポリマーであり,
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために,導電性有機材料を含んだ電荷注入層が,前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されている,該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。」

(17) 訂正事項17
特許請求の範囲に,次の新たな請求項を設けて,請求項18とする(当合議体注:訂正後請求項18は,訂正前請求項1-2-3-4-5-7に対応する。)。
「 順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み,
第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している,有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み,
前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位,並びに,選択的に置換されるフルオレン,インデノフルオレン,スピロフルオレン及びフェニレンから選択される繰返し単位を含むポリマーであり,
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために,導電性有機材料を含んだ電荷注入層が,前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されており,
前記導電性有機材料はポリ(エチレンジオキシチオフェン)を含む,該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。」

(18) 訂正事項18
特許請求の範囲に,次の新たな請求項を設けて,請求項19とする(当合議体注:訂正後請求項19は,訂正前請求項1-2-4-5-7-8に対応する。)。
「 順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み,
第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している,有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み,
前記燐光性材料は金属錯体であり,
前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位,並びに,選択的に置換されるフルオレン,インデノフルオレン,スピロフルオレン及びフェニレンから選択される繰返し単位を含むポリマーであり,
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために,導電性有機材料を含んだ電荷注入層が,前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されている,
該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。」

(19) 訂正事項19
特許請求の範囲に,次の新たな請求項を設けて,請求項20とする(当合議体注:訂正後請求項20は,訂正前請求項1-2-3-4-5-7-8に対応する。)。
「 順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み,
第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している,有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み,
前記燐光性材料は金属錯体であり,
前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位,並びに,選択的に置換されるフルオレン,インデノフルオレン,スピロフルオレン及びフェニレンから選択される繰返し単位を含むポリマーであり,
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために,導電性有機材料を含んだ電荷注入層が,前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されており,
前記導電性有機材料はポリ(エチレンジオキシチオフェン)を含む,該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。」

(20) 訂正について
本件訂正請求は,一群の請求項である,請求項1?請求項8を対象として請求された。

3 訂正についての判断
(1) 訂正事項1について
訂正事項1による訂正は,請求項1を削除する訂正である。
そうしてみると,この訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とする訂正である。また,この訂正が,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内でしたものであること,及び実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当しないことは明らかである。

(2) 訂正事項2について
ア 訂正事項2は,以下の訂正事項に分けて考えることができる。
訂正事項2A:請求項1の記載を引用する請求項2の記載を,請求項1の記載を引用しないものとする。
訂正事項2B:請求項2が引用する請求項1に記載された,「第1の電荷輸送材料」を,「選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマー」に限定する。
訂正事項2C:請求項2が引用する請求項1に記載された,「(ただし,前記第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える前記工程は,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を成膜し,固体状態で反応させて不溶生成物を生成する工程を除く)」(この記載を,以下,かぎ括弧付きで「除くクレームの記載」という。)において,「前記第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える前記工程は,」という記載を,削除する。
訂正事項2D:「除くクレームの記載」において,「正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液」から形成されるものが,「第1の電荷輸送層」であると明示する。
訂正事項2E:「除くクレームの記載」において,「混合溶液を成膜し,固体状態で反応させて不溶生成物を生成する工程」を,「混合溶液を用いて…形成する工程」に上位概念化する。

イ 訂正の目的
(訂正事項2Aについて)
請求項2についてする訂正事項2Aによる訂正は,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること(以下「請求項間の引用関係の解消」という。)を目的とする訂正である。
したがって,この訂正は,特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる事項を目的とする訂正である。
請求項3及び請求項8についてみても,同じことがいえる。

(訂正事項2Bについて)
請求項2についてする訂正事項2Bによる訂正は,訂正前発明2の発明特定事項を限定する訂正である。
したがって,この訂正は,同項ただし書1号に掲げる事項を目的とする訂正である。
請求項3及び請求項8についてみても,同じことがいえる。

(訂正事項2Cについて)
訂正前発明2は,「正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を成膜し,固体状態で反応させて不溶生成物を生成する工程」を具備する。そして,この工程は,技術的にみて,(a)「第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程」と(b)「第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程」を併せた工程の具体例といえる。
ところが,「除くクレームの記載」においては,(b')「前記第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える前記工程は,」として,上記(a)及び(b)の工程が記載されていた。
以上のとおり,請求項2が引用する請求項1の記載は,対応が取れていなかったところ,請求項2についてする訂正事項2Cによる訂正は,これを解消する訂正である。
したがって,請求項2についてする訂正事項2Cによる訂正は,同項ただし書3号に掲げる事項を目的とする訂正である。
請求項3及び請求項8についてみても,同じことがいえる。

(訂正事項2Dについて)
「除くクレームの記載」においては,「正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液」から形成されるものが,「第1の電荷輸送層」であることが,明示されていなかった。
これに対して,請求項2についてする訂正事項2Dによる訂正は,形成されるものが「第1の電荷輸送層」であると,明示する訂正である。
したがって,この訂正も,同項ただし書3号に掲げる事項を目的とする訂正である。
請求項3及び請求項8についてみても,同じことがいえる。

(訂正事項2Eについて)
請求項2についてする訂正事項2Eによる訂正は,「除くクレームの記載」における,「混合溶液を成膜し」という発明特定事項を「混合溶液を用いて…形成する」に上位概念化し,さらに,「固体状態で反応させて不溶生成物を生成する工程」という発明特定事項を具備しないものとする訂正である。
そうしてみると,この訂正は,「ただし…を除く」という記載によって除かれる発明の範囲を拡げる訂正であるから,訂正前発明2との関係においては,発明の範囲を狭くする訂正といえる。
したがって,この訂正は,同項ただし書1号に掲げる事項を目的とする訂正である。
請求項3及び請求項8についてみても,同じことがいえる。

ウ 新規事項違反
(訂正事項2Aについて)
請求項2についてする訂正事項2Aによる訂正は,引用関係の解消を目的とする訂正である。
この訂正が,当初明細書等に記載した事項の範囲内でしたものであることは,明らかである。
請求項3及び請求項8についてみても,同じことがいえる。

(訂正事項2Bについて)
請求項2についてする訂正事項2Bによる訂正は,訂正前請求項4及び訂正前請求項5に記載された事項に基づくものである。
したがって,この訂正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内でしたものである。
請求項3及び請求項8についてみても,同じことがいえる。

(訂正事項2C?訂正事項2Eについて)
請求項2についてする訂正事項2C?訂正事項2Eによる訂正により,訂正前発明2から,「正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程」を具備する発明が,除かれることとなった。
そうしてみると,これら訂正は,訂正前発明2から,一部の態様の発明を除く訂正といえる。換言すると,これら訂正は,訂正前発明2をなす構成要件に対して,新たな構成要件を付加する訂正にも,既存の構成要件を削除する訂正にも該当しない(訂正前発明2をなす構成要件は,訂正の前と後で,何ら変更されていない。)。また,これら訂正によって,訂正前発明2のいずれかの構成要件の技術的意義が,実質的に変更されたということもない。
したがって,これら訂正は,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者によって,明細書,特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものではない。
以上のとおりであるから,これら訂正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内でしたものである。
請求項3及び請求項8についてみても,同じことがいえる。

エ 拡張又は変更
(訂正事項2Aについて)
請求項2についてする訂正事項2Aによる訂正は,引用関係の解消を目的とする訂正である。
そうしてみると,この訂正により,訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が,訂正後の特許請求の範囲に含まれることにはならない。
請求項3及び請求項8についてみても,同じことがいえる。

(訂正事項2Bについて)
請求項2についてする訂正事項2Bによる訂正は,訂正前発明2の発明特定事項を限定する訂正である。
そうしてみると,この訂正により,訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が,訂正後の特許請求の範囲に含まれることにはならない。
したがって,この訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当しない。
請求項3及び請求項8についてみても,同じことがいえる。

(訂正事項2C?訂正事項2Eについて)
請求項2についてする訂正事項2C及び訂正事項2Dによる訂正は,単に,明瞭でない記載を明確にする訂正にとどまるから,発明の範囲を変えるものではない。また,訂正事項2Eによる訂正は,訂正前発明1から除かれる発明の範囲を拡げる訂正である。
そうしてみると,これら訂正により,訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が,訂正後の特許請求の範囲に含まれることにはならない。
したがって,これら訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当しない。
請求項3及び請求項8についてみても,同じことがいえる。

(3) 訂正事項3について
訂正事項3による訂正は,請求項4を削除する訂正である。
そうしてみると,この訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とする訂正である。また,この訂正が,当初明細書等に記載した事項の範囲内でしたものであること,及び実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当しないことは明らかである。

(4) 訂正事項4について
ア 訂正事項4は,以下の訂正事項に分けて考えることができる。
訂正事項4A:請求項1及び請求項4の記載を引用する請求項5の記載を,請求項1及び請求項4の記載を引用しないものとする。
訂正事項4B:「除くクレームの記載」を,訂正事項2C?2Eと同じく訂正する。

イ 判断
訂正事項4Aに対する,訂正の目的,新規事項違反,拡張又は変更についての判断は,訂正事項2Aについての判断と同様である。
訂正事項4Bに対する,訂正の目的,新規事項違反,拡張又は変更についての判断は,訂正事項2C?訂正事項2Eについての判断と同様である。

(5) 訂正事項5について
ア 訂正事項5は,以下の訂正事項に分けて考えることができる。
訂正事項5A:請求項1,請求項4及び請求項5の記載を引用する請求項6の記載を,他の請求項の記載を引用しないものとする。
訂正事項5B:「除くクレームの記載」を,訂正事項2C?2Eと同じく訂正する。

イ 判断
訂正事項5Aに対する,訂正の目的,新規事項違反,拡張又は変更についての判断は,訂正事項2Aについての判断と同様である。
訂正事項5Bに対する,訂正の目的,新規事項違反,拡張又は変更についての判断は,訂正事項2C?訂正事項2Eについての判断と同様である。

(6) 訂正事項6について
訂正事項6による訂正は,請求項7が,訂正事項3により削除された請求項4を引用しているという不明瞭な状態を解消させる訂正である。
そうしてみると,この訂正は,特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる事項を目的とする訂正である。また,この訂正が,当初明細書等に記載した事項の範囲内でしたものであること,及び実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当しないことは明らかである。

(7) 訂正事項7について
訂正事項7による訂正は,請求項8が,訂正事項1により削除された請求項1,及び訂正事項3により削除された請求項4を引用しているという不明瞭な状態を解消させる訂正である。
そうしてみると,この訂正は,特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる事項を目的とする訂正である。また,この訂正が,当初明細書等に記載した事項の範囲内でしたものであること,及び実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当しないことは明らかである。

(8) 訂正事項8について
ア 訂正事項8は,以下の訂正事項に分けて考えることができる。
訂正事項8A:請求項1,請求項2,請求項4及び請求項5の記載を引用する請求項6の記載を,請求項1,請求項2,請求項4及び請求項5の記載を引用しないものとする。
訂正事項8B:請求項9を新たに設ける。
訂正事項8C:「除くクレームの記載」を,訂正事項2C?2Eと同じく訂正する。

イ 訂正事項8Aについて
訂正事項8Aに対する,訂正の目的,新規事項違反,拡張又は変更についての判断は,訂正事項2Aについての判断と同様である。

ウ 訂正事項8Bについて
(ア)訂正の目的
訂正事項5Aによる訂正及び訂正事項8Aによる訂正は,ともに,請求項6についての,請求項間の引用関係の解消を目的とする訂正である。そして,これら訂正の結果,記載すべき請求項の数が,既存の請求項の数(請求項6の1個)から2個に増えることとなった。また,特許権者は,訂正事項8Aによる訂正後の請求項を,訂正事項5Aによる訂正後の請求項とともに請求項6に記載するのではなく,新たな請求項に記載することとした(本件の場合,同じ請求項に記載することには無理があると認められる。)。
そうしてみると,訂正事項8Bによる訂正は,請求項間の引用関係の解消を目的とする訂正に伴って,記載すべき請求項の数が既存の請求項の数を超えたため,その超えた分の請求項を既存の請求項に記載せずに,新たな請求項に書き下したものと理解される。
したがって,訂正事項8Bによる訂正は,訂正事項8Aとともに,特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる事項を目的とする訂正である。

(イ)新規事項違反
訂正事項8Bによる訂正は,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しない新たな請求項とする訂正である。
この訂正が,当初明細書等に記載した事項の範囲内でしたものであることは,明らかである。

(ウ)拡張又は変更
訂正事項8Bによる訂正により,新たな請求項9が設けられた。
しかしながら,訂正前の特許請求の範囲の請求項の引用関係からみて,訂正前請求項6には,請求項1,請求項2,請求項4及び請求項5の記載を引用する請求項6に係る発明が含まれていた。そして,訂正事項8Bによる訂正は,これに対応する発明を,請求項6には記載せず,請求項9に記載するものである(請求項6から分離,独立させて請求項9に記載するものである。)。
そうしてみると,この訂正により,訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が,訂正後の特許請求の範囲に含まれることにはならない。
したがって,この訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものに該当しない。

エ 訂正事項8Cについて
訂正事項8Cに対する,訂正の目的,新規事項違反,拡張又は変更についての判断は,訂正事項2C?訂正事項2Eについての判断と同様である。

(9) 訂正事項9?訂正事項19について
ア 訂正事項9?訂正事項19は,以下の訂正事項に分けて考えることができる。
訂正事項A:以下の請求項の記載を,他の請求項の記載を引用しないものとする。
訂正事項 9:請求項1-2-3-4-5-6
訂正事項10:請求項1-2-4-5-6-7
訂正事項11:請求項1-2-3-4-5-6-7
訂正事項12:請求項1-2-4-5-6-8
訂正事項13:請求項1-2-3-4-5-6-8
訂正事項14:請求項1-2-4-5-6-7-8
訂正事項15:請求項1-2-3-4-5-6-7-8
訂正事項16:請求項1-2-4-5-7
訂正事項17:請求項1-2-3-4-5-7
訂正事項18:請求項1-2-4-5-7-8
訂正事項19:請求項1-2-3-4-5-7-8

訂正事項B:以下のとおり,新たな請求項を設ける。
訂正事項 9:請求項10を新たに設ける。
訂正事項10:請求項11を新たに設ける。
訂正事項11:請求項12を新たに設ける。
訂正事項12:請求項13を新たに設ける。
訂正事項13:請求項14を新たに設ける。
訂正事項14:請求項15を新たに設ける。
訂正事項15:請求項16を新たに設ける。
訂正事項16:請求項17を新たに設ける。
訂正事項17:請求項18を新たに設ける。
訂正事項18:請求項19を新たに設ける。
訂正事項19:請求項20を新たに設ける。

訂正事項C:「除くクレームの記載」を,訂正事項2C?2Eと同じく訂正する。

イ 訂正事項A?訂正事項Cについて
訂正事項Aに対する,訂正の目的,新規事項違反,拡張又は変更についての判断は,訂正事項2Aについての判断と同様である。
訂正事項Bに対する,訂正の目的,新規事項違反,拡張又は変更についての判断は,訂正事項8Aについての判断と同様である。
訂正事項Cに対する,訂正の目的,新規事項違反,拡張又は変更についての判断は,訂正事項2C?訂正事項2Eについての判断と同様である。

(10) 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は,請求項9?請求項20を新設する訂正(訂正事項8?訂正事項19)に対して,多数項引用形式で記載された一つの請求項を,「請求項間の引用関係の解消」(4号)を目的として,二つ以上の請求項に書き下したものとするときには当たらず,訂正要件に違反すると主張する。
しかしながら,前記(8)及び(9)で述べたとおり,訂正は,請求項間の引用関係の解消を目的とする訂正に伴って,記載すべき請求項の数が既存の請求項の数を超えたため,その超えた分の請求項を既存の請求項に記載せずに,新たな請求項に書き下したものである。
特許異議申立人の主張は採用できない。

(11) 別の訂正単位とする求め
特許権者から,別の訂正単位とする求めがされている。
訂正後の請求項の引用関係からみて,訂正後の一群の請求項は,1,〔2,3,5-8〕,4,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19及び20である。

4 訂正についてのまとめ
本件訂正請求による訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書1号,3号及び4号に掲げる事項を目的とするものである。また,訂正は,同条第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
よって,結論に記載のとおり,特許第6203319号の特許請求の範囲を,訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-8〕,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19及び20について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記「第2」で述べたとおり,本件訂正請求による訂正は認められることとなった。そうしてみると,本件特許の請求項2,請求項3及び請求項5?請求項20に係る発明(以下,「本件特許発明2」などといい,総称して「本件特許発明」という。)は,訂正後の特許請求の範囲の請求項2,請求項3及び請求項5?請求項20に記載された事項によって特定されるとおりの,以下のものである。なお,請求項1及び請求項4は削除された。
「【請求項2】
順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み,
第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している,有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み,
前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーであり,
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために,導電性有機材料を含んだ電荷注入層が,前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されている,
該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。

【請求項3】
前記導電性有機材料はポリ(エチレンジオキシチオフェン)を含む,請求項2に記載の方法。

【請求項5】
順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み,
第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している,有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み,
前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーである,該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。

【請求項6】
順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み,
第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している,有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み,
前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーであり,
前記トリアリールアミン繰返し単位は一般式(I):
【化1】

[式中,各Ar^(1),Ar^(2)及びAr^(3)は同じか異なり,独立して選択的に置換されるアリールを表し,nは0又は1である]
の選択的に置換される繰返し単位を含む,該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。

【請求項7】
前記ポリマーは,選択的に置換されるフルオレン,インデノフルオレン,スピロフルオレン及びフェニレンから選択される繰返し単位を含む請求項5又は6に記載の方法。

【請求項8】
前記燐光性材料は金属錯体である,請求項2,3,5,6及び7のいずれかに記載の方法。

【請求項9】
順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み,
第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している,有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み,
前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーであり,
前記トリアリールアミン繰返し単位は一般式(I):
【化2】

[式中,各Ar^(1),Ar^(2)及びAr^(3)は同じか異なり,独立して選択的に置換されるアリールを表し,nは0又は1である]
の選択的に置換される繰返し単位を含み,
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために,導電性有機材料を含んだ電荷注入層が,前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されている,
該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。

【請求項10】
順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み,
第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している,有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み,
前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーであり,
前記トリアリールアミン繰返し単位は一般式(I):
【化3】

[式中,各Ar^(1),Ar^(2)及びAr^(3)は同じか異なり,独立して選択的に置換されるアリールを表し,nは0又は1である]
の選択的に置換される繰返し単位を含み,
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために,導電性有機材料を含んだ電荷注入層が,前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されており,
前記導電性有機材料はポリ(エチレンジオキシチオフェン)を含む,
該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。

【請求項11】
順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み,
第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している,有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み,
前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位,並びに,選択的に置換されるフルオレン,インデノフルオレン,スピロフルオレン及びフェニレンから選択される繰返し単位を含むポリマーであり,
前記トリアリールアミン繰返し単位は一般式(I):
【化4】

[式中,各Ar^(1),Ar^(2)及びAr^(3)は同じか異なり,独立して選択的に置換されるアリールを表し,nは0又は1である]
の選択的に置換される繰返し単位を含み,
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために,導電性有機材料を含んだ電荷注入層が,前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されている,
該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。

【請求項12】
順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み,
第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している,有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み,
前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位,並びに,選択的に置換されるフルオレン,インデノフルオレン,スピロフルオレン及びフェニレンから選択される繰返し単位を含むポリマーであり,
前記トリアリールアミン繰返し単位は一般式(I):
【化5】

[式中,各Ar^(1),Ar^(2)及びAr^(3)は同じか異なり,独立して選択的に置換されるアリールを表し,nは0又は1である]
の選択的に置換される繰返し単位を含み,
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために,導電性有機材料を含んだ電荷注入層が,前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されており,前記導電性有機材料はポリ(エチレンジオキシチオフェン)を含む,
該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。

【請求項13】
順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み,
第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している,有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み,
前記燐光性材料は金属錯体であり,
前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーであり,
前記トリアリールアミン繰返し単位は一般式(I):
【化6】

[式中,各Ar^(1),Ar^(2)及びAr^(3)は同じか異なり,独立して選択的に置換されるアリールを表し,nは0又は1である]
の選択的に置換される繰返し単位を含み,
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために,導電性有機材料を含んだ電荷注入層が,前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されている,
該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。

【請求項14】
順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み,
第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している,有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み,
前記燐光性材料は金属錯体であり,
前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーであり,
前記トリアリールアミン繰返し単位は一般式(I):
【化7】

[式中,各Ar^(1),Ar^(2)及びAr^(3)は同じか異なり,独立して選択的に置換されるアリールを表し,nは0又は1である]
の選択的に置換される繰返し単位を含み,
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために,導電性有機材料を含んだ電荷注入層が,前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されており,
前記導電性有機材料はポリ(エチレンジオキシチオフェン)を含む,
該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。

【請求項15】
順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み,
第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している,有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み,
前記燐光性材料は金属錯体であり,
前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位,並びに,選択的に置換されるフルオレン,インデノフルオレン,スピロフルオレン及びフェニレンから選択される繰返し単位を含むポリマーであり,
前記トリアリールアミン繰返し単位は一般式(I):
【化8】

[式中,各Ar^(1),Ar^(2)及びAr^(3)は同じか異なり,独立して選択的に置換されるアリールを表し,nは0又は1である]
の選択的に置換される繰返し単位を含み,
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために,導電性有機材料を含んだ電荷注入層が,前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されている,
該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。

【請求項16】
順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み,
第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している,有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み,
前記燐光性材料は金属錯体であり,
前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位,並びに,選択的に置換されるフルオレン,インデノフルオレン,スピロフルオレン及びフェニレンから選択される繰返し単位を含むポリマーであり,
前記トリアリールアミン繰返し単位は一般式(I):
【化9】

[式中,各Ar^(1),Ar^(2)及びAr^(3)は同じか異なり,独立して選択的に置換されるアリールを表し,nは0又は1である]
の選択的に置換される繰返し単位を含み,
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために,導電性有機材料を含んだ電荷注入層が,前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されており,前記導電性有機材料はポリ(エチレンジオキシチオフェン)を含む,
該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。

【請求項17】
順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み,
第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している,有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み,
前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位,並びに,選択的に置換されるフルオレン,インデノフルオレン,スピロフルオレン及びフェニレンから選択される繰返し単位を含むポリマーであり,
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために,導電性有機材料を含んだ電荷注入層が,前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されている,該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。

【請求項18】
順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み,
第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している,有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み,
前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位,並びに,選択的に置換されるフルオレン,インデノフルオレン,スピロフルオレン及びフェニレンから選択される繰返し単位を含むポリマーであり,
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために,導電性有機材料を含んだ電荷注入層が,前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されており,
前記導電性有機材料はポリ(エチレンジオキシチオフェン)を含む,該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。

【請求項19】
順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み,
第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している,有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み,
前記燐光性材料は金属錯体であり,
前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位,並びに,選択的に置換されるフルオレン,インデノフルオレン,スピロフルオレン及びフェニレンから選択される繰返し単位を含むポリマーであり,
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために,導電性有機材料を含んだ電荷注入層が,前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されている,
該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。

【請求項20】
順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み,
第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している,有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み,
前記燐光性材料は金属錯体であり,
前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位,並びに,選択的に置換されるフルオレン,インデノフルオレン,スピロフルオレン及びフェニレンから選択される繰返し単位を含むポリマーであり,
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために,導電性有機材料を含んだ電荷注入層が,前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されており,
前記導電性有機材料はポリ(エチレンジオキシチオフェン)を含む,該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。」

第4 取消しの理由及び証拠
1 取消しの理由について
訂正前の請求項1?請求項8に係る特許に対して,当合議体が平成31年1月17日付け取消理由通知書(決定の予告)により特許権者に通知した取消しの理由は,概略,以下のとおりである。
理由1:本件特許発明は,発明の詳細な説明に記載したものであるということができないから,本件特許は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。また,本件特許の発明の詳細な説明の記載は,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということができないから,本件特許は,同条4項1号に規定する規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

理由2:(新規性,進歩性)本件特許発明1及び本件特許発明8は,その優先権主張の日(以下「本件優先日」という。)前に日本国内又は外国において頒布された刊行物(参考文献4)に記載された発明であるから,その特許は,特許法29条1項3号に該当する発明に対してされた(同法29条の規定に違反してされた)ものである。また,本件特許発明1?本件特許発明8は,本件優先日前に,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が,日本国内又は外国において頒布された刊行物(甲1?甲4又は参考文献4)に記載された発明に基づいて,容易に発明をすることができたものであるから,本件特許は,同法29条2項の規定に違反してされたものである。
甲1:特開2003-217863号公報
甲2:特開2003-221447号公報
甲3:特開2002-134277号公報
甲4:特開2002-208481号公報
甲5:特開2000-260560号公報
甲6:特開2001-323137号公報
乙1:Fang-Chung Chen 他6名,「Energy Transfer and Triplet Exciton Confinement in Polymeric Electrophosphorescent Devices」,Journal of Polymer Science: Part B: Polymer Physics,Wiley Periodicals, Inc. ,2003年10月1日,Vol.41,pp2681-2690
参考文献1:国際公開第03/100880号
参考文献2:特開2003-317946号公報
参考文献3:特開2003-229275号公報
参考文献4:特開2002-255934号公報
参考文献5:特開2002-241455号公報
(参考文献4は,新規性における引用文献である。甲1?甲4及び参考文献4は,いずれも,進歩性における主引用例である(甲2?甲4及び参考文献4は,周知技術を示す文献でもある。)。その他の文献は,周知技術等を示す文献である。)

2 証拠について
前記1に記載した証拠に加えて,特許権者及び特許異議申立人からは,以下の証拠が提出されている。
甲7:X.H.Yang 他4名,「Polymer electrophosphorescent devices utilizing a ladder-type poly(para-phenylene)host」,JOURNAL OF APPLIED PHYSICS,American Institute of Physics,2003年4月15日,VOLUME 93, NUMBER 8,pp4413-4419
甲8:M.A.Baldo 他1名,「Transient analysis of organic electrophorescence: I.Transient analysis of triplet energy transfer」,PHYSICAL REVIEW B,The American Physical Society,2000年10月15日,VOLUME 62, NUMBER 16,pp10958-10966
甲9:Fang-Chung Chen 他2名,「Triplet exciton confinement in phosphorescent polymer light-emitting diodes」,APPLYED PHYSICS LETTERS,American Institute of Physics,2003年2月17日,VOLUME 82, NUMBER 7,pp1006-1008
甲10:Tzung-Fang Guo 他4名,「Highly efficient electrophosphorescent polymer lignt-emitting devices」,ELSEVIER,Elsevier Science B.V.,2000年,Organic Electronics 1,pp15-20
甲11:米国特許出願公開第2011/0175066号明細書
甲12:乙1と同じ
乙2:特開2010-31246号公報
乙3:Madhusoodhanan Sudhakar 他3名,「Phosphorescence Quenching by Conjugated Polymers」,J. AM. CHEM. SOC.,American Chemical Society,2003年6月6日,125,pp7796-7797
乙4:城戸淳二編著,「有機EL照明」,日刊工業新聞社,2015年1月28日 初版発行,62?71頁
乙5:国際公開第2018/062278号
乙6:甲8と同じ
乙7:特開2003-7470号公報
乙8:特開2002-25780号公報
(当合議体注:乙2,乙4及び乙5は,本件優先日よりも後(出願日よりも後)に頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載された引用文献である。)

第5 取消しの理由1
1 サポート要件について
(1) 発明が解決しようとする課題
本件特許の発明の詳細な説明には,発明が解決しようとする課題について,明示的な記載がない。
ここで,本件特許の発明の詳細な説明には,以下の記載がある。
「溶液からの材料の堆積,例えば,スピンコート又はインクジェット印刷は,真空蒸着に比較してプロセスの簡素化のような利点を有する。しかしながら,多層の溶液堆積は,最初のキャスティング又は堆積層のその後に続く層のために使用される溶媒に溶解する傾向によって複雑化される。」(【0007】)
「この問題に対する1つの解決策は日本国特開2003-077673号公報に開示されており,…(省略)…この方法は,第1層に使用される材料は第2層に使用される溶媒に溶解しないものからのみ選ばれるという制限がある。」(【0008】)
「この問題の他の解決方法は,日本国特開2002-050482号公報に開示されており,…(省略)…この方法は,溶解性の前駆体を有する不溶性の化合物にのみ応用できる点で制限される。さらに,これら前駆体により要求される熱転換は,強制的な条件を必要とし,完成装置の特性を害する可能性がある腐食性の副生物を生成する。」(【0009】)
「したがって,使用される活性材料の性質によって拘束されない複数層の溶液堆積により燐光性OLEDを形成する方法を提供する。改良された装置特性を有する燐光性材料を提供することが本発明の他の目的である。」(【0010】)

上記の記載からすると,本件特許発明の,発明が解決しようとする課題は,「使用される活性材料の性質によって拘束されない複数層の溶液堆積により燐光性OLEDを形成する方法を提供する」ことにある。

(2) 発明の詳細な説明の記載
本件特許の発明の詳細な説明には,以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は,不溶性有機材料を含む有機光学装置及びその製造方法に関する。
…(省略)…
【0010】
したがって,使用される活性材料の性質によって拘束されない複数層の溶液堆積により燐光性OLEDを形成する方法を提供する。改良された装置特性を有する燐光性材料を提供することが本発明の他の目的である。
…(省略)…
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発明者は,複数の溶液処理層を含む燐光性OLEDが溶液処理層を不溶性にする処理により形成することができることを発見した。
…(省略)…
【0015】
1つの実施態様において,前記電荷輸送材料は架橋性材料を含み,前記処理は,前記電荷輸送材料を架橋するために電荷輸送層を加熱,電磁波照射,特にUV照射することを含む。
【0016】
本発明の発明者らは,驚くべきことに,架橋性基が存在しなくても電荷輸送層が溶媒中に不溶性に変えられることを発見した。したがって,他の実施態様において,電荷輸送層は架橋性基が実質的に皆無であり,処理は電荷輸送層を加熱することを含む。
【0017】
前記処理に続いて,強制条件により,特に,電荷輸送層が実質的に架橋性基を有しない場合に,電荷輸送層を溶解することが可能である(例えば,高温の溶媒にさらす及び/又は溶媒に長い期間浸漬する)。この場合,本発明の発明者らは,電荷輸送層の上部部分は溶媒に接触して溶解するかもしれないが,電界発光層に堆積に採用される通常の条件において電荷輸送層の少なくとも1部は無傷であることを発見した。不溶性という用語はこの意味で解釈されるべきである。
【0018】
電荷輸送層の部分的な溶解は,電荷輸送層と電界発光層の間に混合領域を形成するために望ましい。この部分的溶解の範囲は電荷輸送層の不溶化の条件を適当に選択することによって調整される。したがって,架橋性基の使用は,典型的には堆積される電荷輸送層の全体の不溶化をもたらす。あるいは,架橋性基を実質的に有しない電荷輸送層の熱処理の時間及び温度の選択は,堆積される電荷輸送層の不溶性の範囲を調整するために使用され得る。
【0019】
好ましくは,電荷輸送材料はポリマーである。
【0020】
好ましくは,前記ポリマーは選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含む。
…(省略)…
【0056】
図1を参照すると,本発明の方法により作成された有機発光ダイオードは基板1,インジウム錫酸化物のアノード2,有機正孔注入材料の層3,不溶性正孔輸送層4,電界発光層5及びカソード6を含む。
…(省略)…
【0062】
典型的な装置は,仕事関数4.8eVを有するアノードを含む。したがって,正孔輸送層4のための正孔輸送材料のHOMOレベルは好ましくは約4.8?5.5eVである。適切な正孔輸送材料は,低分子,ポリマー及び選択的に置換されるトリアリールアミン単位,特にトリフェニルアミン単位,及びカルバゾール単位を含む材料である。
…(省略)…
【実施例】
【0103】
一般的手順
本発明は,正孔輸送層として,下記に示され,国際公開99/54385号に開示される“F8-TFB”を使用して例示される。
【化16】

【0104】
一般的な手順は下記のステップに従う。
1)PEDT/PSS(Baytron P登録商標として,H C Starck of Leverkusen, Germanyより入手可)をガラス基板に支持されたインジウム錫酸化物(Applied Films, Colorado,USAより入手可)上にスピンコートにより堆積する
2)濃度2%w/vを有するキシレン溶液からF8-TFBをスピンコートすることにより,正孔輸送層を堆積する
3)正孔輸送層を不活性(窒素)雰囲気中で加熱する
4)残存する可溶性F8-TFBを除去するために基板をキシレン中で選択的にスピン洗浄する
5)キシレン溶液からスピンコートにより電界発光層を堆積する
6)国際公開00/48258号に開示されるように,電界発光層上にフッ化リチウムの第1層(4nm),第2層カルシウム(10nm)及びアルミニウムキャップ層(>200nM)を含むカソードを堆積する
7)Saes Getters SpAから入手可能な気密性金属封入物を使用して装置を封止する
…(省略)…
【0106】
実施例1
上記の一般的手順は,次のものを含む電界発光装置を使用して遂行される。
1)国際公開02/92723に開示される70%の9,9-ジオクチルフルオレン-2,7-ジイル,10%の9,9-ジフェニルフルオレン-2,7-ジイル,10%の“TFB”繰返し単位及び“PFB”繰返し単位(TFB及びPFB繰返し単位は下記に例示される)の組成を有するホストホリマー。ポリマーは,例えば,国際公開00/53656号に開示されるように,スズキ重合によって製造される
2)Nature (London), 1998, 395, 151に開示される赤色燐光性ドープ剤プラチナオクタエチルポルフィン(PtOEP)
ホスト材料:ドープ剤の比98.8:1.2
【0107】
正電荷輸送層は電界発光層の堆積の前に130℃で10分間熱処理された。
【化17】

【0108】
比較例1
比較の目的のため,正孔輸送層(すなわち,上記一般的方法の2-4の工程)が省略された点を除いて,実施例1にしたがって装置が作製された。
【0109】
実施例2
ホスト材料対ドープ剤が98.0:2.0である点を除いて実施例1にしたがって装置が作製された。
【0110】
比較例2
比較の目的のため,正孔輸送層(すなわち,上記一般的方法の2-4の工程)が省略された点を除いて,実施例2にしたがって装置が作製された。
…(省略)…
【0113】
下記の表1は,本発明の本発明と比較例の装置の量子効率と寿命を示す。これからわかるように,実施例1及び2の正孔輸送層の含有によって非常に顕著な効率の改善が見られる。
…(省略)…
【表1】

…(省略)…
【0115】
本発明は特定の例示的な実施例によって説明されたが,特許請求の範囲に規定される本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り。多くの改良,変形及びこれらの組み合わせ可能であることは当業者にとって自明である。」

(3) 判断
本件特許発明は,「第1の電荷輸送材料」に関して,少なくとも,「選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位」「を含むポリマー」であると特定されている(請求項6等においては,さらに特定されている。)。
上記の材料からみて,本件特許発明の「第1の電荷輸送材料」は,架橋性材料を含みUV照射により不溶性に変える工程を経た場合(【0015】)はもとより,架橋性基を有さず加熱により不溶性に変える工程を経た場合においても,「電荷輸送層の上部部分は溶媒に接触して溶解するかもしれないが,電界発光層に堆積に採用される通常の条件において電荷輸送層の少なくとも1部は無傷である」(【0017】)という程度には到ると認められる。そして,本件特許発明において,「不溶性という用語はこの意味で解釈されるべきである。」(【0017】)。
この点に関して,乙8の【0128】及び【0129】からは,本件特許発明の「選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位」「を含むポリマー」に該当するポリマー「CTP-1」が,120℃で1時間の加熱によって,溶媒(ジクロロメタン)に対して不溶化されたことが理解される。
(当合議体注:CTP-1は,次の構造で示される。)

加えて,電荷輸送層の少なくとも一部が無傷であれば,「正孔輸送層…が省略された」(【0108】及び【0110】)比較例との関係においては,量子効率や寿命の改善がみられると認められる。
したがって,本件特許発明は,発明の詳細な説明に記載したものである。

2 実施可能要件について
本件特許の発明の詳細な説明には,前記1(2)において挙げた記載があるから,本件特許発明を,発明の詳細な説明の記載から読み取ることができる。
そして,当業者ならば,発明の詳細な説明に記載された実施例(【0103】?【0107】)等に倣うことにより,本件特許発明の方法を使用することができる。なお,本件特許の発明の詳細な説明には,架橋性材料を含みUV照射により不溶性に変える工程を経る場合(【0015】)の,具体的な実施例は開示されていない。しかしながら,本件特許の出願時の技術常識を心得た当業者ならば,このような場合においても,本件特許発明の方法を使用することができることは明らかである。
したがって,本件特許の発明の詳細な説明の記載は,その発明の技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。

3 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は,特許権者が提出した乙4,乙7及び乙8の記載からは,本件特許発明のトリアリールアミン繰り返し単位を含むポリマーが加熱により不溶化することは理解できない,また,発明の詳細な説明に具体的に開示された不溶化工程は「加熱」のみである,と主張する(令和元年6月10日付け意見書の9?12頁)。
しかしながら,加熱により不溶性に変える工程を経た,トリアリールアミン繰り返し単位を含むポリマーは,溶媒に対し難溶性になっていると認められるから,「電荷輸送層の上部部分は溶媒に接触して溶解するかもしれないが,電界発光層に堆積に採用される通常の条件において電荷輸送層の少なくとも1部は無傷である」(【0017】)という程度には到るといえる。
また,本件特許発明の「第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程」に関して,本件特許の発明の詳細な説明には,架橋性基を有さず加熱により不溶性に変える工程のみならず,架橋性材料を含みUV照射により不溶性に変える工程も開示されている(【0015】)。したがって,本件特許発明の「第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程」を,「加熱」のみに限定解釈することはできない。

4 小括
本件特許発明は,発明の詳細な説明に記載したものである。また,本件特許の発明の詳細な説明の記載は,その発明の技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
したがって,本件特許は,特許法36条4項1号又は6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということができないから,これら理由によっては,本件特許を取り消すことはできない。

第6 取消しの理由2
1 甲1を主引用例とした場合
(1) 甲1の記載
甲1は,本件優先日よりも前に頒布された刊行物であるところ,そこには,以下の記載がある。なお,下線は当合議体が付したものであり,引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】陽極層及び陰極層の両電極層と該両電極層間に形成される発光層と正孔注入層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子を作成する方法において,前記正孔注入層を構成する正孔注入性物質として,正孔輸送性高分子と該正孔輸送性高分子に対して0.1?70重量%の電子受容性化合物との混合溶液を用い,該混合溶液を前記陽極層上に被覆した固体状態で反応させて不溶性反応生成物を生成し,該不溶性反応生成物により前記正孔注入層を形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の作成方法。
…(省略)…
【請求項8】前記正孔輸送性高分子がカルバゾリル基を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の作成方法。
【請求項9】前記カルバゾリル基を有する正孔輸送性高分子が,
【化4】

[化4]で表される重合体から成ることを特徴とする請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の作成方法。」

イ 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,高輝度での発光が可能な有機エレクトロルミネッセンス素子を作成する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】有機エレクトロルミネッセンス素子の駆動時の安定性を確保し,駆動寿命を向上させるため,陽極層と正孔輸送層または発光層との間に正孔注入層を設けるものが知られている。
…(省略)…
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで,上記従来例は,正孔注入層の形成に際して蒸着工程などのいわゆる乾式法を採用しているため,製造工程が複雑になり生産効率が悪い。
…(省略)…
【0009】本発明は,上記問題点に鑑み,正孔注入層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を,湿式法を用いて簡便に作成する方法を提供することを課題としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため,本発明は,陽極層及び陰極層の両電極層とこれらの両電極層間に形成される発光層と正孔注入層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子を作成する方法において,正孔注入層を構成する正孔注入性物質として,正孔輸送性高分子と,この正孔輸送性高分子に対して0.1?70重量%の電子受容性化合物との混合溶液を用い,この混合溶液を陽極層上に被覆した固体状態で反応させて不溶性反応生成物を生成し,この不溶性反応生成物により正孔注入層を形成するものとした。
…(省略)…
【0017】一方,正孔輸送性高分子として,カルバゾリル基やフルオレニル基を有する化合物を用いることも可能であり,カルバゾリル基を有する正孔輸送性高分子としては,[化4]で表されるポリ(N-ビニルカルバゾール)(以下PVKとも言う。)のような重合体を好適例とすることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】図1は,発光効率の向上を目的として多層に積層された素子構造を有する有機エレクトロルミネッセンス素子の基本構造を示す。有機エレクトロルミネッセンス素子の素子構造は,図外の基板上に形成された陽極層10に,正孔輸送層20,電子ブロック層30,発光層40,正孔ブロック層50及び電子輸送層60の各薄膜層が,陽極層10と陰極層70との両電極層間で順次積層されて成る多層積層構造であり,発光層40は,発光層ドープ剤41と発光層ホスト剤42とを有して構成されている。」
(当合議体注:図1は以下の図である。

)

ウ 「【0022】また,正孔輸送層20は,陽極層10から注入される正孔を輸送するための層であり,正孔輸送性有機物を含む有機層である。正孔輸送層性有機物の例として,[化4]に示すPVK,…(省略)…ポリフルオレン化合物,例えば,
【0023】
【化7】

【0024】[化7]で示されるジノルマルオクチルポリフルオレン
…(省略)…
【0026】…(省略)…などの高分子からなることが好ましい。
…(省略)…
【0041】また,発光層40はドープ剤41とホスト剤42とを有し,これらドープ剤41とホスト剤42とを均一に分散させるため,バインダとして高分子を添加することも可能である。ホスト剤42は,陽極層10及び陰極層70からそれぞれ注入された正孔と電子とが発光層40において再結合する際に賦活されて励起子として作用する物質であり,[化4]に示すPVK,…(省略)…[化7]で示されるジノルマルオクチルポリフルオレン,[化11]に示すCBP,
【0042】
【化15】

【0043】[化15]に示すポリ(2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシオキシ)-1,4-フェニレンビニレン)(以下MEH-PPVとも言う。)
…(省略)…
【0054】
【化21】

【0055】[化21]で示されるN-フェニルポリカルバゾール,
…(省略)…
【0059】…(省略)…などが挙げられる。
【0060】一方,発光層40のドープ剤41は,励起子たるホスト剤42の励起エネルギーにより蛍光や燐光を放射する物質であり,
【0061】
【化24】

【0062】[化24]に示すトリ(2フェニルピリジン)イリジウム錯体(以下Ir(ppy)_(3)とも言う。),
…(省略)…
【0083】…(省略)…などを挙げることができる。
…(省略)…
【0085】また,正孔ブロック層50は,陽極層10から発光層40へ注入された正孔がそのまま陰極層70へ通過してしまうことを防ぐため正孔をブロックするための層であり,正孔ブロック性物質で構成される。正孔ブロック性物質としては,例えば,
…(省略)…
【0095】
【化45】

【0096】[化45]に示すようなポリビニルオキサジアゾール系高分子化合物(以下PV-OXDとも言う。)などを挙げることができる。
…(省略)…
【0107】ところで,正孔輸送性物質に電子受容性化合物をドープしたものを正孔注入層の材料として用いると,正孔輸送性物質と電子受容性化合物との間の電子授受反応により,電荷移動が生じて正孔が生成し,正孔注入性層の電気伝導度が向上する。このことにより,陽極層と発光層との間の電気的接合をさらに向上させることができる。
【0108】このように正孔注入層に用いる正孔輸送性物質として,例えば,[化4]に示すPVK,[化7]に示すジノルマルオクチルポリフルオレン,[化15]に示すMEH-PPV,[化21]で示されるN-フェニルポリカルバゾール,
【0109】
【化48】

【0110】[化48]に示すTPDポリマー化合物(以下poly-TPDとも言う。)などの正孔輸送性高分子が挙げられる。
【0111】また,このように正孔注入層に用いる電子受容性化合物として,
…(省略)…
【0112】
【化49】

【0113】[化49]に示すトリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネート(以下TBPAHとも言う。),
…(省略)…
【0117】…(省略)…を挙げることができる。
【0118】図3で示される有機エレクトロルミネッセンス素子の素子構造は,図1で示す素子構造において,正孔輸送層20と電子ブロック層30と電子輸送層60とを省略し,図3において,陽極層10と発光層40との間に正孔注入層21を形成したものである。」
(当合議体注:図3は以下の図である。

)

エ 「【0154】[実施例35]ダウンフロー式のプラズマ処理装置にて,1.25KW,酸素流量150cc/min,処理時間1分の条件でO_(2)プラズマ処理を行ったITOガラス基板(市販ITO,旭硝子社製:20Ω/□,仕事関数5.9eV)上に,[化7]で示されるジノルマルオクチルポリフルオレン5mgと,[化49]で示されるTBPAHとして1.5mg(ジノルマルオクチルポリフルオレンに対して30Wt%)とを,テトラヒドロフラン1mlに溶解させて作成した溶液1を,1000rpmで1秒間スピンコートを行い,100℃で20時間加熱し上層積層溶媒に不溶化させ,55nmの膜厚の正孔注入層を形成した。
【0155】[化4]で示すPVKとして3mgと,ドープ剤たる[化24]に示すIr(ppy)_(3)として0.24mgとを,ジクロロエタン1mlに溶解させて溶液2を作成し,溶液2を用いて,正孔注入層上に1000rpmで1秒間スピンコートを行って,20nmの膜厚の発光層を形成した。
【0156】[化45]で示すPV-OXDとして5mgをシクロヘキサン1mlに溶解させて溶液3を作成し,溶液3を用いて,発光層上に1000rpmで1秒間スピンコートを行って,270nmの膜厚の正孔ブロック層を形成した。
【0157】正孔ブロック層上に,0.01nm/secの蒸着速度でフッ化リチウムを0.5nmの膜厚に蒸着し,さらにその上に,1nm/secの蒸着速度でアルミニウムを50nmの膜厚に蒸着して陰極を形成して,図3に示す素子を作成した。
【0158】このとき電流密度1mA/cm^(2),駆動電圧3.7Vで輝度370cd/m^(2)の発光を得た。
…(省略)…
【0168】[実施例43?67][化49]で示されるTBPAHの替りにドープ剤として,下記[表5]で示すものを用いた以外は[実施例35]と同様に図3に示す素子を作成したところ,下記[表5]に示す発光効率の発光が得られた。
【0169】
【表5】



(2) 乙1の記載
乙1は,本件優先日よりも前に頒布された刊行物であるところ,その2683頁の表1は,次のとおりである。



(参考訳:

)
(当合議体注:表1において,「PVK」は「ポリ(ビニルカルバゾール)」の略称,「PF」は「ポリ(9,9-ジオクチルフルオレン-2,7-ジイル)」の略称である。)

(3) 乙6の記載
乙6は,本件優先日よりも前に頒布された刊行物であるところ,その10962頁の表1は,次のとおりである。



(参考訳:

)

(4) 甲1に記載された発明
ア 甲1実施例35発明
甲1には,実施例35に対応する「有機エレクトロルミネッセンス素子を作成する方法」(【0001】)として,次の発明が記載されている(以下「甲1実施例35発明」という。)。
「 ジノルマルオクチルポリフルオレンと,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートを,テトラヒドロフランに溶解させて作成した溶液1を,ITOガラス基板上にスピンコートを行い,加熱し上層積層溶媒に不溶化させ,正孔注入層を形成する工程と,
ポリ(N-ビニルカルバゾール)と,ドープ剤たるIr(ppy)_(3)を,ジクロロエタンに溶解させて溶液2を作成し,溶液2を用いて,正孔注入層上にスピンコートを行って,発光層を形成する工程と,
ポリビニルオキサジアゾール系高分子化合物をシクロヘキサンに溶解させて溶液3を作成し,溶液3を用いて,発光層上にスピンコートを行って,正孔ブロック層を形成する工程と,
正孔ブロック層上にフッ化リチウムを蒸着し,さらにその上にアルミニウムを蒸着して陰極を形成する工程を具備する,
有機エレクトロルミネッセンス素子を作成する方法。」

イ 甲1発明
甲1の【0168】?【0169】には,甲1実施例35発明におけるトリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートの替わりのドープ剤として,【0169】の表5に列挙されるものを用いた実施例43?実施例67が記載されている。また,甲1の【請求項1】等の記載を考慮すると,これらドープ剤は,「電子受容性化合物」という概念にて理解可能なものである。
そうしてみると,甲1には,次の発明が記載されている(以下「甲1発明」という。)。
「 甲1実施例35発明におけるトリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートの替わりのドープ剤として,他の電子受容性化合物を用いた以外は甲1実施例35発明と同様の工程を具備する,
有機エレクトロルミネッセンス素子を作成する方法。」

(5) 対比
本件特許発明2と甲1発明を対比すると,以下のとおりとなる。
ア 有機発光ダイオードを形成する方法
甲1発明の「有機エレクトロルミネッセンス素子を作成する方法」は,「他の電子受容性化合物を用いた以外は甲1実施例35発明と同様の工程を具備する」。そして,甲1実施例35発明は,「溶液1を,ITOガラス基板上にスピンコートを行い,加熱し上層積層溶媒に不溶化させ,正孔注入層を形成する工程と」,「ポリ(N-ビニルカルバゾール)と,ドープ剤たるIr(ppy)_(3)を,ジクロロエタンに溶解させて溶液2を作成し,溶液2を用いて,正孔注入層上にスピンコートを行って,発光層を形成する工程と」,「溶液3を用いて,発光層上にスピンコートを行って,正孔ブロック層を形成する工程と」,「正孔ブロック層上にフッ化リチウムを蒸着し,さらにその上にアルミニウムを蒸着して陰極を形成する工程を具備する」。
上記の工程からみて,甲1発明の方法は,「ITOガラス基板」,「正孔注入層」,「発光層」,「正孔ブロック層」及び「陰極」が,この順に積層された素子を作成する方法である。また,甲1発明の「有機エレクトロルミネッセンス素子を作成する方法」は,技術的にみて,有機発光ダイオードを形成する方法である。
同様に,甲1発明の「ITOガラス基板」は,電荷輸送体として機能する「正孔」を注入するための電極ということができ,また,「正孔注入層」は「正孔」を輸送するための電荷輸送層ということができる(当合議体注:甲1発明の「正孔注入層」は,「ITOガラス基板」から「発光層」に正孔を輸送する,「正孔輸送層」としても機能している。)。さらに同様に,甲1発明の「発光層」は,「正孔注入層」に隣接する電界発光層ということができ,加えて,「陰極」は,「正孔」とは別の第2のタイプの電荷輸送体(電子)を注入するための,「ITOガラス基板」とは異なる第2の電極ということができる。そして,甲1発明の「発光層」は,その材料からみて「ポリ(N-ビニルカルバゾール)」及び「Ir(ppy)_(3)」を含むところ,両者は,それぞれ,ホスト材料及び燐光性材料ということができる。
以上勘案すると,甲1発明の「ITOガラス基板」,「正孔注入層」,「発光層」,「陰極」,「有機エレクトロルミネッセンス素子」及び「有機エレクトロルミネッセンス素子を作成する方法」は,それぞれ本件特許発明2の「第1の電極」,「第1の電荷輸送層」,「電界発光層」,「第2の電極」,「有機発光ダイオード」及び「有機発光ダイオードを形成する方法」に相当する。
また,甲1発明の「有機エレクトロルミネッセンス素子を作成する方法」は,本件特許発明2の「有機発光ダイオードを形成する方法」における,「順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み,」という要件を満たすといえる。

イ 第1の電荷輸送層を形成する工程及び不溶性に変える工程
甲1発明の「有機エレクトロルミネッセンス素子を作成する方法」は,「他の電子受容性化合物を用いた以外は甲1実施例35発明と同様の工程を具備する」。そして,甲1実施例35発明は,「溶液1を,ITOガラス基板上にスピンコートを行い,加熱し上層積層溶媒に不溶化させ,正孔注入層を形成する工程」を具備する。
上記の工程からみて,甲1発明の「正孔注入層」は,溶液処理と称しうる技術によって形成されたものといえる。また,甲1発明の「正孔注入層」の材料は,「溶液1」の時点では,溶媒に溶解性であったといえる。加えて,甲1発明の「加熱し上層積層溶媒に不溶化させ」る工程は,「正孔注入層」を溶媒中に不溶性に変える工程といえる。
したがって,甲1発明と本件特許発明2は,「第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり」という工程及び「第1の電荷輸送層を」「溶媒中に不溶性に変える工程」を具備する点で共通する。

ウ 電界発光層を形成する工程
甲1発明の「有機エレクトロルミネッセンス素子を作成する方法」は,「他の電子受容性化合物を用いた以外は甲1実施例35発明と同様の工程を具備する」。そして,甲1実施例35発明は,「ポリ(N-ビニルカルバゾール)と,ドープ剤たるIr(ppy)_(3)を,ジクロロエタンに溶解させて溶液2を作成し,溶液2を用いて,正孔注入層上にスピンコートを行って,発光層を形成する工程」を具備する。
上記の工程からみて,甲1発明の「有機エレクトロルミネッセンス素子を作成する方法」に含まれる「発光層を形成する工程」は,溶媒としての「ジクロロエタン」,燐光材料としての「Ir(ppy)_(3)」及びホスト材料としての「ポリ(N-ビニルカルバゾール)」を含む,組成物としての「溶液2」から「発光層」を形成する工程ということができる。
したがって,甲1発明の「発光層を形成する工程」は,本件特許発明2の「電界発光層を形成する工程」に相当するとともに,両者は,「溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程」の点で共通する。

エ 除く発明
甲1発明の「有機エレクトロルミネッセンス素子を作成する方法」は,「甲1実施例35発明におけるトリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートの替わりのドープ剤として,他の電子受容性化合物を用いた」ものである。
そうしてみると,甲1発明の「溶液1」には,「トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネート」が含まれない。
したがって,甲1発明は,本件特許発明2の「ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を除く」との要件を満たす。

(6) 一致点及び相違点
ア 一致点
本件特許発明2と甲1発明は,次の構成で一致する。
「 順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含む,
有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を溶媒中に不溶性に変える工程;及び
溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含む,
該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。」

イ 相違点
本件特許発明2と甲1発明は,以下の点で相違する。
(甲1相違点1)
「第1の電荷輸送材料」に関して,本件特許発明2は,「第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している」という要件,及び「前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーであり」という要件を満たすのに対して,甲1発明は,この構成を具備するとはいえない点。

(甲1相違点2)
「溶媒」に関して,本件特許発明2は「前記」溶媒(同じ溶媒)であるという構成を具備するのに対して,甲1発明は,この構成を具備するとはいえない点。

(甲1相違点3)
本件特許発明2は,「前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために,導電性有機材料を含んだ電荷注入層が,前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されている」のに対して,甲1発明は,この構成を具備するとはいえない点。

(7) 判断
事案に鑑みて,甲1相違点1について検討する。
甲1発明の「ジノルマルオクチルポリフルオレン」は,「正孔注入層に用いる正孔輸送性物質」(甲1の【0108】)と理解される。
ここで,甲1の【0108】には,「正孔注入層に用いる正孔輸送性物質」として,「[化4]に示すPVK」が例示されている。ここで,「[化4]に示すPVK」の三重項エネルギーは2.50eV(乙1の2683頁の表1)であり,甲1発明の「Ir(ppy)_(3)」の三重項エネルギーは2.41eV(同)である。
そうしてみると,甲1の【0108】に記載された「[化4]に示すPVK」は,甲1相違点1に係る本件特許発明2の「第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している」という要件を満たしている。
しかしながら,「[化4]に示すPVK」は,以下の構造式で表される。

したがって,甲1の【0108】に記載された「[化4]に示すPVK」は,甲1相違点1に係る本件特許発明2の「前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーであり」という要件を満たさない。

甲1の【0109】及び【0110】には,「正孔注入層に用いる正孔輸送性物質」として,「[化48]に示すTPDポリマー化合物」も例示されている。ここで,「[化48]に示すTPDポリマー化合物」は,以下の構造式で表される。

そうしてみると,甲1の【0109】及び【0110】に記載された,「正孔注入層に用いる正孔輸送性物質」は,甲1相違点1に係る本件特許発明2の「前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーであり」という要件を満たしている。
しかしながら,TPDの三重項エネルギーは,2.3eV(乙6の10962頁の表1)であるから,「[化48]に示すTPDポリマー化合物」の三重項エネルギーも,これ以下と認められる。
したがって,甲1の【0109】及び【0110】に記載された「[化48]に示すTPDポリマー化合物」は,甲1相違点1に係る本件特許発明2の「第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している」という要件を満たさない。

また,甲1の【0108】には,「[化21]で示されるN-フェニルポリカルバゾール」が開示されている。ここで,「[化21]で示されるN-フェニルポリカルバゾール」は,以下の構造式で表される。

そうしてみると,甲1の【0108】に記載された,「[化21]で示されるN-フェニルポリカルバゾール」は,甲1相違点1に係る本件特許発明2の「前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーであり」という要件を満たしている。
しかしながら,「[化21]で示されるN-フェニルポリカルバゾール」は,共役系の高分子であるから,当業者ならば,その三重項エネルギーは「[化4]に示すPVK」(2.5eV)よりは甲1発明の「ジノルマルオクチルポリフルオレン」の三重項エネルギー(2.15eV:乙1の2683頁の表1)に近いと理解する。
したがって,甲1の【0108】に記載された「[化21]で示されるN-フェニルポリカルバゾール」は,甲1相違点1に係る本件特許発明2の「第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している」という要件を満たさないか,少なくとも,甲1の【0108】の記載に接した当業者ならば,「[化21]で示されるN-フェニルポリカルバゾール」ではなく,「[化4]に示すPVK」を採用すると考えられる。
甲1に記載された他の正孔輸送性物質についてみても,同様である。

したがって,本件特許発明2は,甲1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(8) 本件特許発明3及び本件特許発明5?本件特許発明20について
「第1の電荷輸送材料」に関して,本件特許発明3及び本件特許発明5?本件特許発明20は,いずれも,前記相違点1に係る本件特許発明2の要件,すなわち「第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している」という要件,及び「前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位」「を含むポリマーであり」という要件を具備する。
そうしてみると,前記(7)で述べたのと同じ理由により,本件特許発明3及び本件特許発明5?本件特許発明20も,甲1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

2 甲2?甲4を主引用例とした場合
事案に鑑みて,甲4を主引用例とした場合から検討する。
(1) 甲4発明
甲4の【図2】,【請求項9】及び【請求項14】等の記載からみて,甲4には,次の発明が記載されている(以下「甲4発明」という。)。
「 陽極及び陰極からなる一対の電極と,該一対の電極間に挟持された複数の有機化合物からなる層を少なくとも有する有機発光素子の製造方法において,
陽極上に湿式塗布法により重合性の有機化合物からなる正孔輸送層を設け,該正孔輸送層を重合させる工程,
該正孔輸送層上に湿式塗布法により有機化合物からなる発光層を積層する工程を有し,
前記正孔輸送層を構成する重合性の有機化合物が,電子線または熱重合性化合物である,
有機発光素子の製造方法。」

(2) 一致点及び相違点
ア 一致点
本件特許発明2と甲4発明を対比すると,両者は,次の構成で一致する。
「 順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接する電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含む,
有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記電界発光層を形成する工程
を含む,
該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。」

イ 相違点
本件特許発明2と甲4発明は,以下の点で相違する。
(甲4相違点1)
「電界発光層」が,本件特許発明2は,「燐光性材料及びホスト材料を含む」ものであり,また,「第1の電荷輸送材料」に関して,本件特許発明2は,「第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している」という要件,及び「前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーであり」という要件を満たし,さらに,「溶媒」及び「前記電界発光層を形成する工程」が,本件特許発明2は,「前記」溶媒(同じ溶媒),及び「前記溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程」であるのに対して,甲4発明は,これら構成を具備するとはいえない点。

(甲4相違点2)
本件特許発明2は,「前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために,導電性有機材料を含んだ電荷注入層が,前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されている」のに対して,甲4発明は,この構成を具備するとはいえない点。

(3) 判断
事案に鑑みて,甲4相違点1について検討する。
甲4に具体的に記載された「電界発光層」の発光材料は,「Alq_(3)」,すなわち,蛍光発光材料である。また,甲4には,燐光発光材料に関する記載はない。甲4からは,甲4発明の蛍光発光材料を燐光発光材料に替えることについて,動機づけを見いだすことができない。
ただし,本件優先日前の当業者ならば,「有機発光素子」の「電界発光層」の発光材料として,燐光性材料を心得ているといえる。
しかしながら,甲4発明を出発点として,「第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している」という要件,及び「前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーであり」という要件を満たす,「第1の電荷輸送材料」の構成に到るとまではいえない。
すなわち,蛍光は一重項励起状態からの発光であり,また,蛍光発光材料の励起寿命は燐光発光材料の励起寿命よりも著しく短い。そうしてみると,甲4発明においては「第1の電荷輸送材料」を,「第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している」という要件を満たすものとすることについて,課題が存在しない。この課題は,当業者が甲4発明の「電界発光層」の発光材料として,燐光性材料を採用することを発明した後に初めて発生する課題である。したがって,当業者が,「前記第1の電荷輸送材料」として「前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している」材料を選択することは,いわゆる容易の容易と理解されるから,当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
さらにすすんで検討すると,甲4には,甲4発明の「正孔輸送層」の「有機化合物」として,「同一分子内に少なくとも3個以上の重合性二重結合を有するトリアリールアミン化合物」(【請求項13】)が記載されている。しかしながら,甲4には,「同一分子内に少なくとも3個以上の重合性二重結合を有するトリアリールアミン化合物」の3重項エネルギーレベルに関する記載がいっさい存在しない。また,甲4の【0035】及び【0036】には,「正孔輸送層の膜厚を調整するため」の「結着樹脂」の筆頭の候補として,3重項エネルギーレベルが高いことが当業者に周知である「ポリビニルカルバゾール樹脂」が挙げられている。そうしてみると,仮に,当業者が甲4発明の「電界発光層」の発光材料として,燐光性材料を採用することを発明し,その後,「第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している」という要件を満たすことを事後的な課題として,甲4発明の「正孔輸送材料」を替えるとしても,それは重合性基を具備する「ポリビニルカルバゾール樹脂」と考えるのが相当である。
以上のとおりであるから,当業者が,甲4発明を出発点として,甲4発明の「有機化合物」として,「第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している」という要件,及び「前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーであり」という要件を満たすものを採用するとまではいえない。
したがって,本件特許発明2は,甲4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
本件特許発明3及び本件特許発明5?本件特許発明20についても同様である。

(4) 甲2及び甲3について
甲2及び甲3についてみても,同様である。
すなわち,甲2及び甲3に具体的に記載された発光材料は,蛍光発光材料である。また,甲2及び甲3には,燐光発光材料に関する記載はない。そして,仮に,当業者が,甲2又は甲3に記載された発明における発光材料を,燐光性材料に替えることが容易に発明をすることができたものであったとしても,そこを出発点として,本件特許発明2の「第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している」という要件,及び「前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーであり」という要件を満たす,「第1の電荷輸送材料」の構成に到るとまではいえないことは,前記(3)で述べたとおりである。
したがって,本件特許発明2は,甲2又は甲3に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
本件特許発明3及び本件特許発明5?本件特許発明20についても同様である。

3 参考文献4を主引用例とした場合
(1) 参考文献4発明
参考文献4には,実施例4(【0078】)として,次の発光素子の製造方法が記載されている(以下「参考文献4発明」という。)。
「 ITO基板上に,1,6-ジ-(N-カルバゾリル)-2,4-ヘキサジインのクロロホルム溶液をスピンコートした後,真空乾燥し,ホール注入性有機導電性材料の不溶性膜を作成し,
この上に,ポリビニルカルバゾール,りん光発光性化合物としてIr(ppy)_(3),電子注入性化合物として2-(4-ビフェニルイル)-6-(4-t-ブチルフェニル)1,3,4-オキサジアゾールそれぞれを,クロロホルムに溶かし,その溶液をスピンコートし,
次いでこの有機薄膜上にマグネシウム:銀=10:1を共蒸着した後,銀を蒸着する,
発光素子の製造方法。」

(2) 一致点及び相違点
ア 一致点
本件特許発明2と参考文献4発明を対比すると,両者は,次の構成で一致する。
「 順に,第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含む,
有機発光ダイオードを形成する方法であって,
該方法が,
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程,ここで,第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒,前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含む,
該方法(ただし,正孔輸送性高分子と,トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。」

イ 相違点
本件特許発明2と参考文献4発明は,以下の点で相違する。
(参考文献4相違点1)
「第1の電荷輸送材料」に関して,本件特許発明2は,「第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している」という要件,及び「前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーであり」という要件を満たすのに対して,参考文献4発明は,この構成を具備するとはいえない点。

(参考文献4相違点2)
本件特許発明2は,「前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために,導電性有機材料を含んだ電荷注入層が,前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されている」のに対して,参考文献4発明は,この構成を具備するとはいえない点。

(3) 判断
29条1項3号について
本件特許発明2と参考文献4発明は,前記(2)イに記載した相違点で相違するから,同一ではない。
本件特許発明3及び本件特許発明5?本件特許発明20についても同様である。

29条2項について
事案に鑑みて,参考文献4相違点1について検討する。
参考文献4発明の「ホール注入性有機導電性材料」である「1,6-ジ-(N-カルバゾリル)-2,4-ヘキサジイン」は,その化学構造からみて,参考文献4でいう「トポケミカル重合性を有するモノマー」である。
(当合議体注:以下の構造である。)

また,参考文献4の【0007】には,「【課題を解決するための手段】高いキャリア移動度と高い最低励起三重項エネルギー準位を持ち,積層塗布が可能な材料を開発するため,本発明者は鋭意検討を重ねた結果,トポケミカル重合性を有するモノマーおよびトポケミカル重合法を利用して,機能性部位が配列した高分子材料を生成させる方法に着目するに至った。」というものである。
上記の参考文献4の記載,及び参考文献4発明の「ホール注入性有機導電性材料」の構成からみて,仮に,当業者が参考文献4発明の「ホール注入性有機導電性材料」を別の化合物に替えるとしても,それは,ポリマーではなくモノマーであり,また,本件優先日前の当業者において,高い最低励起三重項エネルギー準位が得られやすいことが周知であった,カルバゾール系の化合物であったと認められる。
そうしてみると,当業者が,参考文献4発明の「1,6-ジ-(N-カルバゾリル)-2,4-ヘキサジイン」に替えて,参考文献4相違点1に係る本件特許発明2の,「第1の電荷輸送材料は,前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している」という要件,及び「前記第1の電荷輸送材料は,選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーであり」という要件を満たす「ホール注入性有機導電性材料」を採用することには,阻害要因があるといえる。
したがって,本件特許発明2は,参考文献4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
本件特許発明3及び本件特許発明5?本件特許発明20についても同様である。

4 小括
本件特許発明3及び本件特許発明5?本件特許発明20は,本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物(参考文献4)に記載された発明であるとはいえないから,その特許は,特許法29条1項3号に該当する発明に対してされたものであるということはできない。また,本件特許発明3及び本件特許発明5?本件特許発明20は,本件優先日前に,周知技術を心得た当業者が,日本国内又は外国において頒布された刊行物(甲1?甲4又は参考文献4)に記載された発明に基づいて,容易に発明をすることができたものであるということもできない。
したがって,本件特許は,特許法29条の規定に違反してされたものであるということができないから,これら理由によっては,本件特許を取り消すことはできない。

第7 取消しの理由(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立の理由
取消しの理由(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立の理由(明確性要件違反)については,本件訂正請求による訂正により解消した。
したがって,特許異議申立人の主張は,採用することができない。

第8 むすび
以上のとおりであるから,取消理由通知書に記載した取消しの理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立の理由によっては,本件特許2,本件特許3及び本件特許5?本件特許20を取り消すことができない。
また,他にこれら特許を取り消すべき理由を発見しない。

本件訂正請求により,請求項1及び請求項4は削除されたため,本件特許1及び本件特許4に対する特許異議の申立ての対象は存在しないこととなった。

よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
順に、第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み、
第1の電荷輸送材料は、前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している、有機発光ダイオードを形成する方法であって、
該方法が、
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程、ここで、第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒、前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み、
前記第1の電荷輸送材料は、選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーであり、
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために、導電性有機材料を含んだ電荷注入層が、前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されている、
該方法(ただし、正孔輸送性高分子と、トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。
【請求項3】
前記導電性有機材料はポリ(エチレンジオキシチオフェン)を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
順に、第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み、
第1の電荷輸送材料は、前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している、有機発光ダイオードを形成する方法であって、
該方法が、
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程、ここで、第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒、前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み、
前記第1の電荷輸送材料は、選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーである、該方法(ただし、正孔輸送性高分子と、トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。
【請求項6】
順に、第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み、
第1の電荷輸送材料は、前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している、有機発光ダイオードを形成する方法であって、
該方法が、
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程、ここで、第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒、前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み、
前記第1の電荷輸送材料は、選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーであり、
前記トリアリールアミン繰返し単位は一般式(I):
【化1】

[式中、各Ar^(1)、Ar^(2)及びAr^(3)は同じか異なり、独立して選択的に置換されるアリールを表し、nは0又は1である]
の選択的に置換される繰返し単位を含む、該方法(ただし、正孔輸送性高分子と、トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。
【請求項7】
前記ポリマーは、選択的に置換されるフルオレン、インデノフルオレン、スピロフルオレン及びフェニレンから選択される繰返し単位を含む請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記燐光性材料は金属錯体である、請求項2、3、5、6及び7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
順に、第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み、
第1の電荷輸送材料は、前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している、有機発光ダイオードを形成する方法であって、
該方法が、
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程、ここで、第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒、前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み、
前記第1の電荷輸送材料は、選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーであり、
前記トリアリールアミン繰返し単位は一般式(I):
【化2】

[式中、各Ar^(1)、Ar^(2)及びAr^(3)は同じか異なり、独立して選択的に置換されるアリールを表し、nは0又は1である]
の選択的に置換される繰返し単位を含み、
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために、導電性有機材料を含んだ電荷注入層が、前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されている、
該方法(ただし、正孔輸送性高分子と、トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。
【請求項10】
順に、第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み、
第1の電荷輸送材料は、前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している、有機発光ダイオードを形成する方法であって、
該方法が、
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程、ここで、第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒、前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み、
前記第1の電荷輸送材料は、選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーであり、
前記トリアリールアミン繰返し単位は一般式(I):
【化3】

[式中、各Ar^(1)、Ar^(2)及びAr^(3)は同じか異なり、独立して選択的に置換されるアリールを表し、nは0又は1である]
の選択的に置換される繰返し単位を含み、
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために、導電性有機材料を含んだ電荷注入層が、前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されており、
前記導電性有機材料はポリ(エチレンジオキシチオフェン)を含む、
該方法(ただし、正孔輸送性高分子と、トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。
【請求項11】
順に、第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み、
第1の電荷輸送材料は、前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している、有機発光ダイオードを形成する方法であって、
該方法が、
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程、ここで、第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒、前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み、
前記第1の電荷輸送材料は、選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位、並びに、選択的に置換されるフルオレン、インデノフルオレン、スピロフルオレン及びフェニレンから選択される繰返し単位を含むポリマーであり、
前記トリアリールアミン繰返し単位は一般式(I):
【化4】

[式中、各Ar^(1)、Ar^(2)及びAr^(3)は同じか異なり、独立して選択的に置換されるアリールを表し、nは0又は1である]
の選択的に置換される繰返し単位を含み、
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために、導電性有機材料を含んだ電荷注入層が、前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されている、
該方法(ただし、正孔輸送性高分子と、トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。
【請求項12】
順に、第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み、
第1の電荷輸送材料は、前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している、有機発光ダイオードを形成する方法であって、
該方法が、
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程、ここで、第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒、前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み、
前記第1の電荷輸送材料は、選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位、並びに、選択的に置換されるフルオレン、インデノフルオレン、スピロフルオレン及びフェニレンから選択される繰返し単位を含むポリマーであり、
前記トリアリールアミン繰返し単位は一般式(I):
【化5】

[式中、各Ar^(1)、Ar^(2)及びAr^(3)は同じか異なり、独立して選択的に置換されるアリールを表し、nは0又は1である]
の選択的に置換される繰返し単位を含み、
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために、導電性有機材料を含んだ電荷注入層が、前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されており、前記導電性有機材料はポリ(エチレンジオキシチオフェン)を含む、
該方法(ただし、正孔輸送性高分子と、トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。
【請求項13】
順に、第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み、
第1の電荷輸送材料は、前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している、有機発光ダイオードを形成する方法であって、
該方法が、
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程、ここで、第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒、前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み、
前記燐光性材料は金属錯体であり、
前記第1の電荷輸送材料は、選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーであり、
前記トリアリールアミン繰返し単位は一般式(I):
【化6】

[式中、各Ar^(1)、Ar^(2)及びAr^(3)は同じか異なり、独立して選択的に置換されるアリールを表し、nは0又は1である]
の選択的に置換される繰返し単位を含み、
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために、導電性有機材料を含んだ電荷注入層が、前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されている、
該方法(ただし、正孔輸送性高分子と、トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。
【請求項14】
順に、第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み、
第1の電荷輸送材料は、前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している、有機発光ダイオードを形成する方法であって、
該方法が、
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程、ここで、第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒、前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み、
前記燐光性材料は金属錯体であり、
前記第1の電荷輸送材料は、選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位を含むポリマーであり、
前記トリアリールアミン繰返し単位は一般式(I):
【化7】

[式中、各Ar^(1)、Ar^(2)及びAr^(3)は同じか異なり、独立して選択的に置換されるアリールを表し、nは0又は1である]
の選択的に置換される繰返し単位を含み、
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために、導電性有機材料を含んだ電荷注入層が、前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されており、
前記導電性有機材料はポリ(エチレンジオキシチオフェン)を含む、
該方法(ただし、正孔輸送性高分子と、トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。
【請求項15】
順に、第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み、
第1の電荷輸送材料は、前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している、有機発光ダイオードを形成する方法であって、
該方法が、
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程、ここで、第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒、前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み、
前記燐光性材料は金属錯体であり、
前記第1の電荷輸送材料は、選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位、並びに、選択的に置換されるフルオレン、インデノフルオレン、スピロフルオレン及びフェニレンから選択される繰返し単位を含むポリマーであり、
前記トリアリールアミン繰返し単位は一般式(I):
【化8】

[式中、各Ar^(1)、Ar^(2)及びAr^(3)は同じか異なり、独立して選択的に置換されるアリールを表し、nは0又は1である]
の選択的に置換される繰返し単位を含み、
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために、導電性有機材料を含んだ電荷注入層が、前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されている、
該方法(ただし、正孔輸送性高分子と、トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。
【請求項16】
順に、第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み、
第1の電荷輸送材料は、前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している、有機発光ダイオードを形成する方法であって、
該方法が、
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程、ここで、第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒、前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み、
前記燐光性材料は金属錯体であり、
前記第1の電荷輸送材料は、選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位、並びに、選択的に置換されるフルオレン、インデノフルオレン、スピロフルオレン及びフェニレンから選択される繰返し単位を含むポリマーであり、
前記トリアリールアミン繰返し単位は一般式(I):
【化9】

[式中、各Ar^(1)、Ar^(2)及びAr^(3)は同じか異なり、独立して選択的に置換されるアリールを表し、nは0又は1である]
の選択的に置換される繰返し単位を含み、
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために、導電性有機材料を含んだ電荷注入層が、前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されており、前記導電性有機材料はポリ(エチレンジオキシチオフェン)を含む、
該方法(ただし、正孔輸送性高分子と、トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。
【請求項17】
順に、第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み、
第1の電荷輸送材料は、前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している、有機発光ダイオードを形成する方法であって、
該方法が、
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程、ここで、第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒、前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み、
前記第1の電荷輸送材料は、選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位、並びに、選択的に置換されるフルオレン、インデノフルオレン、スピロフルオレン及びフェニレンから選択される繰返し単位を含むポリマーであり、
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために、導電性有機材料を含んだ電荷注入層が、前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されている、
該方法(ただし、正孔輸送性高分子と、トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。
【請求項18】
順に、第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み、
第1の電荷輸送材料は、前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している、有機発光ダイオードを形成する方法であって、
該方法が、
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程、ここで、第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒、前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み、
前記第1の電荷輸送材料は、選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位、並びに、選択的に置換されるフルオレン、インデノフルオレン、スピロフルオレン及びフェニレンから選択される繰返し単位を含むポリマーであり、
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために、導電性有機材料を含んだ電荷注入層が、前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されており、前記導電性有機材料はポリ(エチレンジオキシチオフェン)を含む、該方法(ただし、正孔輸送性高分子と、トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。
【請求項19】
順に、第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み、
第1の電荷輸送材料は、前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している、有機発光ダイオードを形成する方法であって、
該方法が、
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程、ここで、第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒、前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み、
前記燐光性材料は金属錯体であり、
前記第1の電荷輸送材料は、選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位、並びに、選択的に置換されるフルオレン、インデノフルオレン、スピロフルオレン及びフェニレンから選択される繰返し単位を含むポリマーであり、
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために、導電性有機材料を含んだ電荷注入層が、前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されている、
該方法(ただし、正孔輸送性高分子と、トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。
【請求項20】
順に、第1のタイプの電荷輸送体の注入のための第1の電極;第1のタイプの電荷輸送体を輸送するための第1の電荷輸送材料を含む第1の電荷輸送層;電荷輸送層に隣接し燐光性材料及びホスト材料を含む電界発光層;及び第2のタイプの電荷輸送体を注入するための第2の電極を含み、
第1の電荷輸送材料は、前記燐光性材料より高い3重項エネルギーレベルを有している、有機発光ダイオードを形成する方法であって、
該方法が、
第1の電荷輸送層を溶液処理技術により形成する工程、ここで、第1の電荷輸送材料は溶媒に溶解性であり;
第1の電荷輸送層を前記溶媒中に不溶性に変える工程;及び
前記溶媒、前記燐光性材料及び前記ホスト材料を含む組成物から前記電界発光層を形成する工程
を含み、
前記燐光性材料は金属錯体であり、
前記第1の電荷輸送材料は、選択的に置換されるトリアリールアミン繰返し単位、並びに、選択的に置換されるフルオレン、インデノフルオレン、スピロフルオレン及びフェニレンから選択される繰返し単位を含むポリマーであり、
前記第1のタイプの電荷輸送体の注入のために、導電性有機材料を含んだ電荷注入層が、前記第1の電極と前記第1の電荷輸送層の間に供給されており、前記導電性有機材料はポリ(エチレンジオキシチオフェン)を含む、該方法(ただし、正孔輸送性高分子と、トリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートからなる電子受容性化合物とを含む混合溶液を用いて第1の電荷輸送層を形成する工程を含む方法を除く)。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-08-23 
出願番号 特願2016-77082(P2016-77082)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (H05B)
P 1 651・ 855- YAA (H05B)
P 1 651・ 113- YAA (H05B)
P 1 651・ 853- YAA (H05B)
P 1 651・ 851- YAA (H05B)
P 1 651・ 536- YAA (H05B)
P 1 651・ 854- YAA (H05B)
P 1 651・ 857- YAA (H05B)
P 1 651・ 537- YAA (H05B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大竹 秀紀  
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 樋口 信宏
宮澤 浩
登録日 2017-09-08 
登録番号 特許第6203319号(P6203319)
権利者 ケンブリッジ ディスプレイ テクノロジー リミテッド
発明の名称 光学装置  
代理人 小野 誠  
代理人 小野 誠  
代理人 金山 賢教  
代理人 安藤 健司  
代理人 岩瀬 吉和  
代理人 安藤 健司  
代理人 重森 一輝  
代理人 坪倉 道明  
代理人 青木 孝博  
代理人 市川 英彦  
代理人 坪倉 道明  
代理人 岩瀬 吉和  
代理人 青木 孝博  
代理人 城山 康文  
代理人 市川 英彦  
代理人 城山 康文  
代理人 重森 一輝  
代理人 金山 賢教  

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