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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08G
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08G
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08G
管理番号 1355967
異議申立番号 異議2017-701096  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-11-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-11-22 
確定日 2019-09-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6131638号発明「液晶ポリエステルおよびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6131638号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3、9〕及び〔4-8〕について、訂正することを認める。 特許第6131638号の請求項2ないし9に係る特許を維持する。 特許第6131638号の請求項1に係る特許に対する本件特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯・本件異議申立の趣旨

1.本件特許の設定登録までの経緯
本件特許第6131638号(以下、単に「本件特許」という。)に係る出願(特願2013-44943号、以下「本願」という。)は、平成25年3月7日に出願人東レ株式会社(以下「特許権者」ということがある。)によりされた特許出願であり、平成29年4月28日に特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、平成29年5月24日に特許掲載公報が発行されたものである。

2.本件異議申立の趣旨
本件特許につき平成29年11月22日付けで特許異議申立人赤松智信(以下「申立人」という。)により「特許第6131638号の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された発明についての特許は取り消されるべきものである。」という趣旨の本件異議申立がされた。

3.以降の手続の経緯
以降の手続の経緯は、以下のとおりである。

平成30年 3月 2日付け 取消理由通知
平成30年 4月25日 意見書・訂正請求書
平成30年 5月 9日付け 通知書(申立人あて)
平成30年 6月11日 意見書(申立人)
平成30年 7月 9日付け 取消理由通知(決定の予告)
平成30年 9月 5日 意見書・訂正請求書
平成30年10月19日付け 通知書(申立人あて)
平成31年 1月25日付け 訂正拒絶理由通知
平成31年 2月20日 意見書・手続補正書(訂正請求書)
平成31年 3月11日付け 取消理由通知(決定の予告)
令和 元年 5月 8日 意見書
令和 元年 6月 4日付け 審尋
令和 元年 7月 3日 回答書
(上記のとおり、平成30年9月5日付けで訂正請求がされたから、平成30年4月25日付けの訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。)

なお、平成30年9月5日付けで訂正請求がされたことに基づき、申立人に対して意見書を提出することを求める平成30年10月19日付け通知書を送付したが、申立人からの意見書の提出はなかったから、以降、申立人に意見を聴くまでもない「特別の事情」があるものとして、申立人に意見書の提出機会を与えなかった。

第2 申立人が主張する取消理由
申立人は、本件特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、下記甲第1号証を提示し、取消理由として、概略、以下の取消理由1及び2が存するとしている。

取消理由1:本件発明1ないし3及び8は、いずれも、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するか、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものであって、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
取消理由2:本件発明1は、その所期の効果を奏さない実施態様を含むものであり、(本件特許に係る明細書の)発明の詳細な説明に記載したものとはいえないから、本件特許に係る請求項1及び同項を引用する請求項2ないし8の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていないものであって、本件特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願にされたものであるから、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。

・申立人提示の甲号証
甲第1号証:特開平10-95839号公報
(以下、「甲1」と略していう。)

第3 当審が通知した取消理由(決定の予告)の概要

1.平成30年7月9日付け取消理由(決定の予告)の概要
当審が上記平成30年7月9日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。

「当審は、依然として、
申立人が主張する下記(再掲)取消理由1及び2並びに当審が通知した下記取消理由aにより、本件発明1ないし3及び9についての特許はいずれも取り消すべきもの、
と判断する。・・(中略)・・

取消理由1:本件発明1ないし3及び9は、いずれも、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができないものであって、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
取消理由2:本件発明1は、その所期の効果を奏さない実施態様を含むものであり、(本件特許に係る明細書の)発明の詳細な説明に記載したものとはいえないから、本件特許に係る請求項1及び同項を引用する請求項2ないし9の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていないものであって、本件特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願にされたものであるから、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
取消理由a:本件特許に係る請求項1の記載では、同項に記載された事項で特定される発明が明確であるとはいえないから、本件特許に係る請求項1及び同項を引用する請求項2、3及び9の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていないものであって、本件特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願にされたものであるから、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
(なお、上記訂正により、請求項番号の項ずれが起きており、旧請求項8は新請求項9になっているので、項番の点を訂正している。)

I.取消理由2について
・・(中略)・・
してみると、本件発明1並びにそれを直接引用する本件発明3及び9が、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものということはできない。

II.取消理由aについて
・・(中略)・・
してみると、本件特許の請求項1及び同項を引用する請求項2、3及び9の記載では、各項に記載された事項で特定される特許を受けようとする発明が明確でない。

III.取消理由1について
・・(中略)・・
(5)取消理由1に係る検討のまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1ないし3及び9は、いずれも甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、いずれも特許を受けることができるものではない。

3.当審の判断のまとめ
以上のとおり、本件発明1ないし3及び9は、いずれも特許法第29条第1項第3号に該当し、いずれも特許を受けることができるものではないから、本件の請求項1ないし3及び9に係る発明についての特許は、特許法第29条に違反してされたものであって、いずれも同法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。
また、本件の請求項1ないし3及び9に係る記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に適合するものではないから、同法同条同項(柱書)の規定を満たしておらず、本件の請求項1ないし3及び9に係る発明についての特許は、いずれも特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消すべきものである。」

2.平成31年3月11日付け取消理由(決定の予告)の概要
当審が上記平成31年3月11日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。

「当審は、
新たに発見した下記取消理由bにより、本件発明2、3及び9についての特許はいずれも取り消すべきもの、
訂正後の請求項1に係る特許に対する本件特許異議の申立ては、訂正によりその技術事項が全て削除され、申立ての対象を欠くものであり、不適法となったものであって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである、
と判断する。以下、詳述する。

取消理由b:本件特許に係る請求項2、3及び9の記載では、同各項に記載された事項で特定される発明が明確であるとはいえないから、本件特許に係る請求項2、3及び9の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていないものであって、本件特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願にされたものであるから、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。

1.取消理由bについて
・・(中略)・・
2.当審の判断のまとめ
以上のとおり、本件の請求項2、3及び9に係る記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、同法同条同項(柱書)の規定を満たしておらず、本件の請求項2、3及び9に係る発明についての特許は、いずれも特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消すべきものである。
・・(中略)・・
<当審の付記>
・・(中略)・・
2.上記取消理由bのとおり、本件請求項2、3又は9の記載では、同各項に係る発明が明確でないことにより、請求項2の「液晶ポリエステル」に係る発明並びに請求項2を引用して記載された請求項3の「液晶ポリエステル組成物」に係る発明及び請求項9の「成形品」に係る発明は、上記第3に示した取消理由2に係る甲1に記載された発明と精緻に対比・検討の上、物の発明としての異同につき判断することができないから、取消理由2に係る特許性(新規性)の判断につき、この取消理由通知においては、留保する。」

第4 平成30年9月5日付けの訂正請求について

I.訂正請求に係る手続補正の適否
上記平成30年9月5日付けの訂正請求書については、上記平成31年2月20日付けの手続補正書で補正されているから、当該手続補正の適否につきまず検討する。

1.平成31年1月25日付けで通知した訂正拒絶理由の概要
上記平成30年9月5日付けの訂正請求書では、訂正事項2、訂正事項12及び添付された訂正特許請求の範囲の【請求項2】において、「試験片」の「水蒸気透過度」の上限値につき訂正されているところ、訂正前の「0.05g/m^(2)・24hr・atm以下」につき、訂正事項2では「0.0411g/m^(2)・24hr・atm以下」と訂正されたのに対して、訂正事項12及び添付された訂正特許請求の範囲の【請求項2】では「0.0441g/m^(2)・24hr・atm以下」と訂正され、不一致となったことを指摘するとともに、「0.0441g/m^(2)・24hr・atm以下」と訂正した点が、本件特許明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でしたものではないとして、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしておらず、不適法である旨を上記訂正拒絶理由として通知した。

2.特許権者の応答に係る検討
上記訂正拒絶理由通知に対して、特許権者は、平成31年2月20日付け意見書において、上記「0.0441g/m^(2)・24hr・atm以下」は、「0.0411g/m^(2)・24hr・atm以下」とすべきところをタイプミスにより誤った単なる誤記である旨主張するとともに、上記手続補正書により、上記「0.0441g/m^(2)・24hr・atm以下」なる事項を、いずれも「0.0411g/m^(2)・24hr・atm以下」に補正した。
そこで、上記補正につき検討すると、特許権者の上記意見書における主張については首肯し得るものであり、上記補正は、明らかな誤記を単に正したものと認められるから、上記訂正請求書の要旨を変更するものとは認められない。

3.小括
したがって、上記補正は、特許法第17条の5第1項の規定に基づいてされたものであって、同法第120条の5第9項で準用する同法第131条の2第1項の規定に適合するものであるから、上記手続補正書による訂正請求書及びそれに添付された訂正明細書及び特許請求の範囲に係る補正は、適法なものである。

II.上記訂正請求の適否について
上記I.で説示したとおり、平成31年2月20日付けの手続補正書による補正は適法であるから、補正された平成30年9月5日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の適否につき以下検討する。

1.訂正内容
本件訂正は、本件特許に係る明細書及び特許請求の範囲を、上記訂正請求書に係る手続補正書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし9について訂正するものであって、具体的な訂正事項は以下のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成され、構造単位(I)が構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して65?80モル%であり、構造単位(II)が構造単位(II)および(III)の合計に対して55?85モル%であり、構造単位(IV)が構造単位(IV)および(V)の合計に対して50?90モル%であり、構造単位(II)および(III)の合計と(IV)および(V)の合計が実質的に等モルである請求項1に記載の液晶ポリエステル。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「樹脂温度を液晶ポリエステルの融点+20℃、金型温度を130℃に設定し、充填下限圧+1MPaの圧力で射出成形した70mm長×70mm幅×1mm厚の試験片を用いて、JISK7129(付属書C,2008年)に準拠して測定された、温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度が0.0411g/m^(2)・24hr・atm以下である液晶ポリエステルであり、
少なくとも2種のジオールに由来する構造単位を有し、ジオールに由来する全構造単位の合計100モル%中、下記構造単位(II)を55?85モル%含み、
下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成され、構造単位(I)が構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して65?80モル%であり、構造単位(II)が構造単位(II)および(III)の合計に対して55?85モル%であり、構造単位(IV)が構造単位(IV)および(V)の合計に対して50?90モル%であり、構造単位(II)および(III)の合計と(IV)および(V)の合計が実質的に等モルである液晶ポリエステルであって、下記(A)または(B)の製造方法によって得られる液晶ポリエステル。
(A)脱酢酸重縮合工程における温度200から270℃までの間の昇温時間を81分間以上88分間以下とする方法
(B)窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンであって、その共役酸の水溶液中における酸解離定数(pKa)が7.5以上10.5以下である芳香族または脂肪族アミンを、少なくとも脱酢酸重縮合反応開始までに、原料モノマーであるヒドロキシカルボン酸、ジオールおよびジカルボン酸の合計仕込み量100重量部に対して、0.01重量部以上1重量部以下の添加量で添加する方法」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3および9も同様に訂正する)。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、「請求項1または2に記載の」とあるうち、請求項1の削除にともない、「請求項2に記載の」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項9も同様に訂正する)。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「ヒドロキシカルボン酸および/またはジオールにアシル化剤を反応させ、水酸基の少なくとも一部をアシル化した後、ジカルボン酸と脱酢酸重縮合反応させる液晶ポリエステルの製造方法であって、窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンを少なくとも脱酢酸重縮合反応開始までに添加する、請求項1または2に記載の液晶ポリエステルの製造方法。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「ヒドロキシカルボン酸および/またはジオールにアシル化剤を反応させ、水酸基の少なくとも一部をアシル化した後、ジカルボン酸と脱酢酸重縮合反応させる液晶ポリエステルの製造方法であって、窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンを少なくとも脱酢酸重縮合反応開始までに添加する、
70mm長×70mm幅×1mm厚の試験片を用いて、JISK7129(付属書C,2008年)に準拠して測定された、温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度が0.05g/m^(2)・24hr・atm以下であり、少なくとも2種のジオールに由来する構造単位を有し、ジオールに由来する全構造単位の合計100モル%中、下記構造単位(II)を55?85モル%含む液晶ポリエステルの製造方法。
【化3】


」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項6?8も同様に訂正する)。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4に「ヒドロキシカルボン酸および/またはジオールにアシル化剤を反応させ、水酸基の少なくとも一部をアシル化した後、ジカルボン酸と脱酢酸重縮合反応させる液晶ポリエステルの製造方法であって、窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンを少なくとも脱酢酸重縮合反応開始までに添加する、請求項1または2に記載の液晶ポリエステルの製造方法。」とあるうち、請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、「ヒドロキシカルボン酸および/またはジオールにアシル化剤を反応させ、水酸基の少なくとも一部をアシル化した後、ジカルボン酸と脱酢酸重縮合反応させる液晶ポリエステルの製造方法であって、窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンを少なくとも脱酢酸重縮合反応開始までに添加する、
70mm長×70mm幅×1mm厚の試験片を用いて、JISK7129(付属書C,2008年)に準拠して測定された、温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度が0.05g/m^(2)・24hr・atm以下であり、下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成され、構造単位(I)が構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して65?80モル%であり、構造単位(II)が構造単位(II)および(III)の合計に対して55?85モル%であり、構造単位(IV)が構造単位(IV)および(V)の合計に対して50?90モル%であり、構造単位(II)および(III)の合計と(IV)および(V)の合計が実質的に等モルである液晶ポリエステルの製造方法。
【化4】


」と記載し、新たに請求項5とする。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項5の「請求項4に記載の液晶ポリエステルの製造方法。」を「請求項4または5に記載の液晶ポリエステルの製造方法。」とし、新たに請求項6とする。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項6の「請求項4または5に記載の液晶ポリエステルの製造方法。」を「請求項4?6のいずれかに記載の液晶ポリエステルの製造方法。」とし、新たに請求項7とする。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項7の「請求項4?6のいずれかに記載の液晶ポリエステルの製造方法。」を「請求項4?7のいずれかに記載の液晶ポリエステルの製造方法。」とし、新たに請求項8とする。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の「請求項8」を、「請求項9」とし、「請求項1または2に記載の」とあるうち、請求項1の削除にともない、「請求項2に記載の」に訂正する。

(10)訂正事項10
明細書の段落【0008】における
「(1)70mm長×70mm幅×1mm厚の試験片を用いて、JISK7129(付属書C,2008年)に準拠して測定された、温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度が0.05g/m^(2)・24hr・atm以下であり、少なくとも2種のジオールに由来する構造単位を有し、ジオールに由来する全構造単位の合計100モル%中、下記構造単位(II)を55?85モル%含む液晶ポリエステル、」を、削除する。

(11)訂正事項11
明細書の段落【0009】における
「【化1】


」を、削除する。

(12)訂正事項12
明細書の段落【0010】における
「(2)樹脂温度を液晶ポリエステルの融点+20℃、金型温度を130℃に設定し、充填下限圧+1MPaの圧力で射出成形した70mm長×70mm幅×1mm厚の試験片を用いて、JISK7129(付属書C,2008年)に準拠して測定された、温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度が0.0411g/m^(2)・24hr・atm以下である液晶ポリエステルであり、
少なくとも2種のジオールに由来する構造単位を有し、ジオールに由来する全構造単位の合計100モル%中、下記構造単位(II)を55?85モル%含み、
下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成され、構造単位(I)が構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して65?80モル%であり、構造単位(II)が構造単位(II)および(III)の合計に対して55?85モル%であり、構造単位(IV)が構造単位(IV)および(V)の合計に対して50?90モル%であり、構造単位(II)および(III)の合計と(IV)および(V)の合計が実質的に等モルである上記(1)に記載の液晶ポリエステル、」を、
「(2)樹脂温度を液晶ポリエステルの融点+20℃、金型温度を130℃に設定し、充填下限圧+1MPaの圧力で射出成形した70mm長×70mm幅×1mm厚の試験片を用いて、JISK7129(付属書C,2008年)に準拠して測定された、温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度が0.05g/m^(2)・24hr・atm以下である液晶ポリエステルであって、少なくとも2種のジオールに由来する構造単位を有し、ジオールに由来する全構造単位の合計100モル%中、下記構造単位(II)を55?85モル%含み、
下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成され、構造単位(I)が構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して65?80モル%であり、構造単位(II)が構造単位(II)および(III)の合計に対して55?85モル%であり、構造単位(IV)が構造単位(IV)および(V)の合計に対して50?90モル%であり、構造単位(II)および(III)の合計と(IV)および(V)の合計が実質的に等モルである液晶ポリエステルであって、下記(A)または(B)の製造方法によって得られる液晶ポリエステル。
(A)脱酢酸重縮合工程における温度200から270℃までの間の昇温時間を81分間以上88分間以下とする方法
(B)窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンであって、その共役酸の水溶液中における酸解離定数(pKa)が7.5以上10.5以下である芳香族または脂肪族アミンを、少なくとも脱酢酸重縮合反応開始までに、原料モノマーであるヒドロキシカルボン酸、ジオールおよびジカルボン酸の合計仕込み量100重量部に対して、0.01重量部以上1重量部以下の添加量で添加する方法、」に訂正する。

(13)訂正事項13
明細書の段落【0012】における
「(3)上記(1)または(2)に記載の液晶ポリエステル100重量部に対して、充填材10? 200重量部を含有する液晶ポリエステル組成物、
(4)ヒドロキシカルボン酸および/またはジオールにアシル化剤を反応させ、水酸基の少なくとも一部をアシル化した後、ジカルボン酸と脱酢酸重縮合反応させる液晶ポリエステルの製造方法であって、窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンを少なくとも脱酢酸重縮合反応開始までに添加する、上記(1)または(2)に記載の液晶ポリエステルの製造方法、
(5)窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンの添加量が、ヒドロキシカルボン酸、ジオールおよびジカルボン酸の合計100重量部に対して、0.01重量部以上1重量部以下である上記(4)に記載の液晶ポリエステルの製造方法、
(6)窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンが、脂肪族アミンである上記(4)または(5)に記載の液晶ポリエステルの製造方法、
(7)窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンの共役酸の水溶液中における酸解離定数(pKa)が10.5以下である上記(4)?(6)のいずれか記載の液晶ポリエステルの製造方法、
(8)上記(1)または(2)に記載の液晶ポリエステルまたは上記(3)に記載の液晶ポリエステル組成物からなる成形品、
である。」を、
「(3)上記(2)に記載の液晶ポリエステル100重量部に対して、充填材10? 200重量部を含有する液晶ポリエステル組成物、
(4)ヒドロキシカルボン酸および/またはジオールにアシル化剤を反応させ、水酸基の少なくとも一部をアシル化した後、ジカルボン酸と脱酢酸重縮合反応させる液晶ポリエステルの製造方法であって、窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンを少なくとも脱酢酸重縮合反応開始までに添加する、70mm長×70mm幅×1mm厚の試験片を用いて、JISK7129(付属書C,2008年)に準拠して測定された、温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度が0.05g/m^(2)・24hr・atm以下であり、少なくとも2種のジオールに由来する構造単位を有し、ジオールに由来する全構造単位の合計100モル%中、下記構造単位(II)を55?85モル%含む液晶ポリエステルの製造方法、
【化3】


(5)ヒドロキシカルボン酸および/またはジオールにアシル化剤を反応させ、水酸基の少なくとも一部をアシル化した後、ジカルボン酸と脱酢酸重縮合反応させる液晶ポリエステルの製造方法であって、窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンを少なくとも脱酢酸重縮合反応開始までに添加する、
70mm長×70mm幅×1mm厚の試験片を用いて、JISK7129(付属書C,2008年)に準拠して測定された、温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度が0.05g/m^(2)・24hr・atm以下であり、下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成され、構造単位(I)が構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して65?80モル%であり、構造単位(II)が構造単位(II)および(III)の合計に対して55?85モル%であり、構造単位(IV)が構造単位(IV)および(V)の合計に対して50?90モル%であり、構造単位(II)および(III)の合計と(IV)および(V)の合計が実質的に等モルである液晶ポリエステルの製造方法、
【化4】


(6)窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンの添加量が、ヒドロキシカルボン酸、ジオールおよびジカルボン酸の合計100重量部に対して、0.01重量部以上1重量部以下である上記(4)または(5)に記載の液晶ポリエステルの製造方法、
(7)窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンが、脂肪族アミンである上記(4)?(6)のいずれかに記載の液晶ポリエステルの製造方法、
(8)窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンの共役酸の水溶液中における酸解離定数(pKa)が10.5以下である上記(4)?(7)のいずれか記載の液晶ポリエステルの製造方法、
(9)上記(1)または(2)に記載の液晶ポリエステルまたは上記(3)に記載の液晶ポリエステル組成物からなる成形品、
である。」に訂正する。

(14)訂正事項14
明細書の段落【0078】における
「[実施例4]」を、
「[比較例13]」に訂正する。

(15)訂正事項15
明細書の段落【0082】における
「[実施例5]」を、
「[比較例14]」に訂正する。

(16)訂正事項16
明細書の段落【0086】における
「[実施例6]」を、
「[比較例15]」に訂正する。

(17)訂正事項17
明細書の段落【0090】における
「[実施例7]」を、
「[比較例16]」に訂正する。

(18)訂正事項18
明細書の段落【0094】における
「[実施例8]」を、
「[比較例17]」に訂正する。

(19)訂正事項19
明細書の段落【0102】における
「[実施例10]」を、
「[比較例18]」に訂正する。

(20)訂正事項20
明細書の段落【0126】における
「[実施例16]」を、
「[比較例19]」に訂正する。

(21)訂正事項21
明細書の段落【0146】における
「実施例1?16および比較例1?4の評価結果」を、
「実施例1?3、9、11?15および比較例1?4、13?19の評価結果」に訂正する。

(22)訂正事項22
明細書の段落【0147】における



」を、



」に訂正する。

(23)訂正事項23
明細書の段落【0148】における



」を、



」に訂正する。

(24)訂正事項24
明細書の段落【0149】における
「実施例1?16および比較例1?4で得られた」を、
「実施例1?3、9、11?15および比較例1?4、13?19で得られた」に訂正する。

(25)訂正事項25
明細書の段落【0150】における
「[実施例17?36および比較例5?12]」を、
「[実施例17?19、25、27?31、33?36、比較例5?12、20?26]」に訂正する。

(26)訂正事項26
明細書の段落【0151】における
「実施例17?36、比較例5?12の評価結果」を、
「実施例17?19、25、27?31、33?36、比較例5?12、20?26の評価結果」に訂正する。

(27)訂正事項27
明細書の段落【0152】における



」を、



」に訂正する。

2.検討
なお、以下の検討において、この訂正請求による訂正を「本件訂正」といい、本件訂正前の特許請求の範囲における請求項1ないし8を「旧請求項1」ないし「旧請求項8」、本件訂正後の特許請求の範囲における請求項1ないし9を「新請求項1」ないし「新請求項9」という。

(1)訂正の目的要件について
上記の各訂正事項による訂正の目的につき検討する。

ア.訂正事項1について
上記訂正事項1に係る訂正は、旧請求項1に記載された事項を全て削除しているものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
してみると、上記訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定の目的要件に適合するものである。

イ.訂正事項2について
上記訂正事項2に係る訂正は、旧請求項1を引用する旧請求項2につき、旧請求項1に係る事項を書き下し、新請求項2の独立項形式に改めた上で、液晶ポリエステルの製造方法に係る事項を明細書の発明の詳細な説明の記載に基づき付加したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に規定の目的要件に適合するものである。

ウ.訂正事項3について
上記訂正事項3に係る訂正は、上記訂正事項1に係る訂正により、旧請求項1が削除されたことに伴い、旧請求項3における旧請求項1を引用する部分を削除し、引用関係を単に正したものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。
してみると、上記訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定の目的要件に適合するものである。

エ.訂正事項4及び5について
上記訂正事項4に係る訂正は、旧請求項4のうち、旧請求項1を引用する部分につき、旧請求項1に係る事項を単に書き下して新請求項4の独立項形式に改めたものであり、上記訂正事項5に係る訂正は、旧請求項4のうち、旧請求項2を引用する部分につき、旧請求項2に係る事項及び旧請求項2で引用する旧請求項1に係る事項を併せて単に書き下して新請求項5の独立項形式に改めたものであるから、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定の目的要件に適合するものである。

オ.訂正事項6ないし9について
上記訂正事項6ないし9に係る各訂正は、いずれも、上記訂正事項4及び5に係る訂正により請求項の数が1増加したことに伴い、旧請求項5ないし8につき項番を1繰り下げると共に、引用関係につき単に整理して、新請求項6ないし9としたものであるから、いずれも明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。
したがって、訂正事項6ないし9に係る各訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定の目的要件に適合するものである。

カ.訂正事項10ないし13について
上記訂正事項10ないし13に係る各訂正は、いずれも、上記訂正事項1ないし9に係る訂正による特許請求の範囲の記載との間で不整合となった明細書の発明の詳細な説明の記載を単に正したものであるから、いずれも明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。
したがって、訂正事項10ないし13に係る各訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定の目的要件に適合するものである。

キ.訂正事項14ないし27について
上記訂正事項14ないし27に係る各訂正は、いずれも、上記訂正事項1による旧請求項1の削除及び訂正事項2による特許請求の範囲の減縮に伴い、新請求項2の技術的範囲外のものとなった明細書の発明の詳細な説明に記載された「実施例」につきいずれも「比較例」とするべく整理したものであるから、いずれも明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。
したがって、上記訂正事項14ないし27による訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定の目的要件に適合するものである。

ク.小括
以上のとおり、上記訂正事項1ないし27に係る各訂正は、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に規定のいずれかの目的要件に適合するものである。

(2)新規事項の追加及び特許請求の範囲の実質的拡張・変更について
上記(1)に示したとおり、訂正事項2に係る訂正により、新請求項2及び同項を引用する新請求項3及び9の特許請求の範囲が旧請求項2、3及び8に記載された事項に対して減縮されていることが明らかであり、他の訂正事項に係る訂正は、請求項間の引用関係を単に正したものであるか、請求項の記載を単に独立項形式に改めたものか、訂正事項1ないし9に係る請求項に係る訂正により対応関係が不明瞭となった明細書の記載につき単に正したものであるから、上記訂正事項1ないし27による訂正は、いずれも新たな技術的事項を導入しないものであり、また、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものではないことが明らかである。
してみると、上記訂正事項1ないし27による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定を満たすものである。

(3)独立特許要件について
なお、本件の特許異議の申立ては、旧請求項1ないし8に係る全ての発明についての特許につき、申立てがされているから、訂正の適否の検討において独立特許要件につき検討すべき請求項が存するものではない。

3.訂正に係る検討のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項並びに第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-3、9〕及び〔4-8〕について訂正を認める。

第5 訂正後の本件特許に係る請求項に記載された事項
訂正後の本件特許に係る請求項1ないし9には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】(削除)
【請求項2】
樹脂温度を液晶ポリエステルの融点+20℃、金型温度を130℃に設定し、充填下限圧+1MPaの圧力で射出成形した70mm長×70mm幅×1mm厚の試験片を用いて、JISK7129(付属書C,2008年)に準拠して測定された、温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度が0.0411g/m^(2)・24hr・atm以下である液晶ポリエステルであり、
少なくとも2種のジオールに由来する構造単位を有し、ジオールに由来する全構造単位の合計100モル%中、下記構造単位(II)を55?85モル%含み、
下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成され、構造単位(I)が構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して65?80モル%であり、構造単位(II)が構造単位(II)および(III)の合計に対して55?85モル%であり、構造単位(IV)が構造単位(IV)および(V)の合計に対して50?90モル%であり、構造単位(II)および(III)の合計と(IV)および(V)の合計が実質的に等モルである液晶ポリエステルであって、下記(A)または(B)の製造方法によって得られる液晶ポリエステル。
(A)脱酢酸重縮合工程における温度200から270℃までの間の昇温時間を81分間以上88分間以下とする方法
(B)窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンであって、その共役酸の水溶液中における酸解離定数(pKa)が7.5以上10.5以下である芳香族または脂肪族アミンを、少なくとも脱酢酸重縮合反応開始までに、原料モノマーであるヒドロキシカルボン酸、ジオールおよびジカルボン酸の合計仕込み量100重量部に対して、0.01重量部以上1重量部以下の添加量で添加する方法
【化2】


【請求項3】
請求項2に記載の液晶ポリエステル100重量部に対して、充填材10?200重量部を含有する液晶ポリエステル組成物。
【請求項4】
ヒドロキシカルボン酸および/またはジオールにアシル化剤を反応させ、水酸基の少なくとも一部をアシル化した後、ジカルボン酸と脱酢酸重縮合反応させる液晶ポリエステルの製造方法であって、窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンを少なくとも脱酢酸重縮合反応開始までに添加する、
70mm長×70mm幅×1mm厚の試験片を用いて、JISK7129(付属書C,2008年)に準拠して測定された、温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度が0.05g/m^(2)・24hr・atm以下であり、少なくとも2種のジオールに由来する構造単位を有し、ジオールに由来する全構造単位の合計100モル%中、下記構造単位(II)を55?85モル%含む液晶ポリエステルの製造方法。
【化3】


【請求項5】
ヒドロキシカルボン酸および/またはジオールにアシル化剤を反応させ、水酸基の少なくとも一部をアシル化した後、ジカルボン酸と脱酢酸重縮合反応させる液晶ポリエステルの製造方法であって、窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンを少なくとも脱酢酸重縮合反応開始までに添加する、
70mm長×70mm幅×1mm厚の試験片を用いて、JISK7129(付属書C,2008年)に準拠して測定された、温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度が0.05g/m^(2)・24hr・atm以下であり、下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成され、構造単位(I)が構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して65?80モル%であり、構造単位(II)が構造単位(II)および(III)の合計に対して55?85モル%であり、構造単位(IV)が構造単位(IV)および(V)の合計に対して50?90モル%であり、構造単位(II)および(III)の合計と(IV)および(V)の合計が実質的に等モルである液晶ポリエステルの製造方法。
【化4】


【請求項6】
窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンの添加量が、ヒドロキシカルボン酸、ジオールおよびジカルボン酸の合計100重量部に対して、0.01重量部以上1重量部以下である請求項4または5に記載の液晶ポリエステルの製造方法。
【請求項7】
窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンが、脂肪族アミンである請求項4?6のいずれか記載の液晶ポリエステルの製造方法。
【請求項8】
窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンの共役酸の水溶液中における酸解離定数(pKa)が10.5以下である請求項4?7のいずれか記載の液晶ポリエステルの製造方法。
【請求項9】
請求項2に記載の液晶ポリエステルまたは請求項3に記載の液晶ポリエステル組成物からなる成形品。」
(以下、上記請求項1ないし9に係る各発明につき、項番に従い「本件発明1」ないし「本件発明9」といい、併せて「本件発明」と総称することがある。)

第6 当審の判断
当審は、
申立人が主張する取消理由及び当審が通知した取消理由はいずれも理由がなく、訂正後の請求項2ないし9に係る発明についての特許はいずれも取り消すことはできないものであり、
訂正後の請求項1に係る特許に対する本件特許異議の申立ては、訂正によりその技術事項が全て削除され、申立ての対象を欠くものであり、不適法となったものであって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである、
と判断する。
以下、事案に鑑み、当審が通知した取消理由b及び取消理由aにつき検討し、申立人が主張する取消理由2及び1につき、順次詳述する。

1.取消理由bについて

(1)取消理由bの概要
取消理由bの概要は、
『本件特許に係る請求項2には、同項記載の「液晶ポリエステル」なる物の発明につき、
「下記(A)または(B)の製造方法によって得られる液晶ポリエステル。
(A)脱酢酸重縮合工程における温度200から270℃までの間の昇温時間を81分間以上88分間以下とする方法
(B)窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンであって、その共役酸の水溶液中における酸解離定数(pKa)が7.5以上10.5以下である芳香族または脂肪族アミンを、少なくとも脱酢酸重縮合反応開始までに、原料モノマーであるヒドロキシカルボン酸、ジオールおよびジカルボン酸の合計仕込み量100重量部に対して、0.01重量部以上1重量部以下の添加量で添加する方法」
という、その物の製造方法が記載されているものと認められる。
ここで、物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合において、当該請求項の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(「不可能・非実際的事情」)が存在するときに限られると解するのが相当である(最二小判平成27年6月5日 平成24年(受)1204号、同2658号)。
しかしながら、不可能・非実際的事情が存在することについて、明細書等に記載がなく、また、出願人(決定注:「特許権者」の誤記である。)から主張・立証がされていないため、その存在を認める理由は見いだせない。
したがって、請求項2に係る発明並びに請求項2を引用して記載された請求項3の「液晶ポリエステル組成物」に係る発明及び請求項9の「成形品」に係る発明は、いずれも明確でな』く、「本件の請求項2、3及び9に係る記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、同法同条同項(柱書)の規定を満たしておらず、本件の請求項2、3及び9に係る発明についての特許は、いずれも特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消すべきものである。」
というものである。

(2)検討
それに対して、特許権者は、令和元年5月8日付け意見書において、「不可能・非実際的事情」につき説明するとともに、当該「事情」につき当審が確認のため発した審尋書に対して、令和元年7月3日付け回答書において、当該「事情」につき更に技術的説明を行っている。
当該各書における技術的説明では、要約すると、本件発明2の液晶ポリエステルの脱酢酸縮合による製造方法では、水酸基含有モノマー単位(式(I)、式(II)及び式(III)の3種)の合計量に対する4-ヒドロキシ安息香酸単位(式(I)の構成単位、以下「HBA」という。)の占める割合が65?80モル%と比較的高くなるようなモノマー仕込み状態で、請求項2に記載された(A)又は(B)の制御された反応条件により縮合を行うことによって、液晶ポリエステル分子中のシークエンスを制御し、ポリエステル分子中にHBAの連鎖が形成され、複数の液晶ポリエステル分子間の当該HBA連鎖部分間のπスタッキングにより、複数のポリエステル分子間の間隔が狭まり、もって、液晶ポリエステル成形体の水蒸気透過度の低下が生起しているのであろうことを説明している。
そして、上記訂正された本件特許明細書の実施例及び比較例に係る記載を検討すると、請求項2に記載された反応条件以外の事項を具備し、更に(A)又は(B)の反応条件により縮合を行った実施例1ないし3、実施例9及び実施例15の場合のみ、「温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度が0.0411g/m^(2)・24hr・atm以下」が達成されているのに対して、請求項2に記載された水蒸気透過度及び(A)又は(B)の反応条件以外の事項を具備する実施例11ないし14(請求項4に記載された事項を具備する実施例であるものと認められる。)並びに請求項2に記載された反応条件以外の事項あるいは(A)又は(B)の反応条件の事項のいずれかを具備しない他の比較例の場合には、「温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度が0.0411g/m^(2)・24hr・atm以下」が達成されていないことが看取できる。
さらに、技術的常識からみて、HBA連鎖のポリエステル分子中における含有量の定量は、2連鎖については容易に定量できる(本件特許明細書【0058】)が、3連鎖以上のHBA連鎖を定量することは、実質的に不可能であるものと認められる。
してみると、特許権者が説明・主張する上記HBA連鎖の生成による作用機序につき、技術的常識に照らしても否定することはできず、本件特許明細書における実施例及び比較例の結果の対比からみて、請求項2に記載された(A)又は(B)の制御された反応条件により縮合を行うことにより、水蒸気透過度の低減効果が達成されているものと認められるとともに、液晶ポリエステル分子中におけるHBA連鎖の含有量につき、直接的に定量することは実質的に不可能であるから、請求項2に記載された「液晶ポリエステル」に係る発明において、ポリエステルの化学構造に係るHBA連鎖の含有量なる事項を請求項に直接的に記載・表現するにあたっての不可能・非実際的事情が存するものと認められる。
したがって、本件の請求項2の記載では、同項記載の「液晶ポリエステル」なる物の発明につき、その物の製造方法が記載されているからといって、発明が明確でないとすることはできない。

(3)小括
よって、本件の請求項2及び同項を引用する請求項3及び9の記載は、同各項の記載により、発明が明確でないとすることはできないから、上記取消理由bは理由がない。

2.取消理由aについて

(1)取消理由aの概要
取消理由aの概要は、上記訂正により請求項1の記載が削除されたことを踏まえて整理すると、
『本件特許に係る請求項2には、同項記載の発明の「液晶ポリエステル」につき、「樹脂温度を液晶ポリエステルの融点+20℃、金型温度を130℃に設定し、充填下限圧+1MPaの圧力で射出成形した70mm長×70mm幅×1mm厚の試験片を用いて、JISK7129(付属書C,2008年)に準拠して測定された、温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度が0.05g/m^(2)・24hr・atm以下であ」ることが記載されていたところ、当該水蒸気透過度に係る事項が、「液晶ポリエステル」なる化学物質に係る本件発明2につき、少なくともその化学構造を決定できる技術事項ではなく、いかなる技術事項を規定しようとするものであるのか不明である。
(なお、単一の液晶ポリエステルであっても、成形体の製造方法などによって、結晶構造などが変化することにより、水蒸気透過度が有意に変化する可能性さえ存するものと認められ、「水蒸気透過度」は、「液晶ポリエステル」なる化学物質に固有の物性値であるものとはいえない。)
してみると、本件特許の請求項2及び同項を引用する請求項3及び9の記載では、各項に記載された事項で特定される特許を受けようとする発明が明確でない。』
というものである。

(2)検討
それに対して、特許権者は、上記本件訂正において、(旧)請求項2につき、測定成形体試料の作成条件に係る事項を明細書の記載に基づき付加し、
「樹脂温度を液晶ポリエステルの融点+20℃、金型温度を130℃に設定し、充填下限圧+1MPaの圧力で射出成形した70mm長×70mm幅×1mm厚の試験片を用いて、JISK7129(付属書C,2008年)に準拠して測定された、温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度が0.0411g/m^(2)・24hr・atm以下である」
としたから、単一の「液晶ポリエステル」であれば、複数の測定であっても同一の水蒸気透過率に係る測定値が得られる蓋然性が高いものと認められる。
してみると、上記測定方法による水蒸気透過度に係る測定値は、液晶ポリエステルの化学構造の異同はともかく、物性として「液晶ポリエステル」なる化学物質に固有値であることを規定しているものと認められるから、本件の請求項2の記載では、同項記載の「液晶ポリエステル」なる物の発明につき、発明が明確でないとすることはできない。

(3)小括
したがって、本件特許の請求項2及び同項を引用する請求項3及び9の記載では、同各項の記載により、発明が明確でないとすることはできないから、上記取消理由aについても理由がない。

3.取消理由2について

(1)取消理由2の概要
取消理由2の概要は、当初、
「本件発明1は、その所期の効果を奏さない実施態様を含むものであり、(本件特許に係る明細書の)発明の詳細な説明に記載したものとはいえないから、本件特許に係る請求項1及び同項を引用する請求項2ないし9の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていないものであって、本件特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願にされたものであるから、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。」
というものであったところ、上記訂正により(旧)請求項1はその内容を全て削除されるとともに、請求項4ないし8は、請求項2又は同項を引用する請求項3をいずれも引用しないものとなったから、それらを踏まえて再度整理すると、
「本件発明2は、その所期の効果を奏さない実施態様を含むものであり、(本件特許に係る明細書の)発明の詳細な説明に記載したものとはいえないから、本件特許に係る請求項2及び同項を引用する請求項3及び9の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていないものであって、本件の請求項2、3及び9に係る発明についての特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願にされたものであるから、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。」
というものであるといえる。

(2)検討
本件特許に係る明細書(以下「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明の記載(特に【0006】)からみて、本件発明の解決しようとする課題は、「電気・電子部品や機械部品に要求される、高温高湿環境下における曲げ強度と耐トラッキング破壊性能に優れる成形品を得ることのできる液晶ポリエステルとその製造方法」の提供にあるものと認められる。
そこで、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を更に検討すると、「高温高湿下において特定の水蒸気透過度をを示す液晶ポリエステルにより、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能に極めて優れる成形品を得ることができること」(【0007】)及び「温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度」「が0.05g/m^(2)・24hr・atmより大きい場合、液晶ポリエステルが高温高湿環境下に晒されると、多量の吸湿により密度が低下し、成形品の曲げ強度が大幅に低下」し、「多量の吸湿により高温高湿環境下における耐トラッキング破壊性能が大幅に低下する」こと(【0016】)が、上記課題を解決できることを当業者が認識することができるような作用機序として記載されている。
また、実施例及び比較例に係る記載を検討すると、請求項2に記載された事項を全て具備する実施例1、2、3、9及び15のみが、他の実施例11ないし14及び比較例に比して低い「温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度が0.0411g/m^(2)・24hr・atm以下」を達成できることが看取できる。
してみると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者は、本件特許に係る請求項2に記載された事項で特定される発明、すなわち本件発明2が、上記事項を具備することによって、本件発明に係る上記課題を解決できるであろうと認識することができるものといえる。
したがって、本件発明2並びにそれを直接引用する本件発明3及び9が、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものということができる。

(3)小括
よって、本件の請求項2並びにそれを直接引用する請求項3及び9の各記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものであるから、上記取消理由2は理由がない。

4.取消理由1について

(1)取消理由1の概要
取消理由1の概要は、当初、
「本件発明1ないし3及び9は、いずれも、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するか、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものであって、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。」
というものであったところ、上記訂正により請求項1の記載事項が全て削除されたから、それを踏まえて整理すると、
「本件発明2、3及び9は、いずれも、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するか、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものであって、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。」
というものである。

(2)検討

ア.甲号証に記載された事項及び記載された発明
以下、上記取消理由1につき検討するにあたり、当該理由は特許法第29条に係るものであるから、上記甲1に記載された事項を確認・摘示するとともに、甲1に記載された発明の認定を行う。(なお、摘示における下線は、当審が付したものである。)

(ア)甲1に記載された事項
甲1には、以下の事項が記載されている。

(a-1)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 次の式〔a〕から〔e〕により表される繰返し構造単位からなり、
【化1】


かつ以下の条件(1)から(5)を満たすことを特徴とする全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステル、
(1)式〔a〕の構造単位の含有割合(mol%、以下「(a)」と略す、その他同様)が全体の55?67mol%、
(2)(b)+(c)および(d)+(e)がいずれも全体の16.5?22.5mol%、
(3)(b)/(c)のモル比が30/70?50/50、
(4)(d)/(e)のモル比が50/50?90/10、および
(5)ペンタフルオロフェノール中において60℃で測定した固有粘度が0.3?10dl/g。
・・(中略)・・
【請求項3】 請求項1または請求項2記載の全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルと、組成物全体に対して10?90重量%の無機充填材とを含む組成物。
【請求項4】 請求項1または請求項2記載の全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルと、材料全体に対して10?90重量%の無機充填材とを含む電気電子部品用封止材料。」

(a-2)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規なサーモトロピック液晶ポリエステルおよびそれを用いた電気電子部品用封止材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば、p-ヒドロキシ安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’-ジヒドロキシビフェニルおよびヒドロキノンから得られるサーモトロピック液晶ポリエステルは、溶融成形が可能であり、かつ流動性や耐熱性に優れているといわれている。このようなサーモトロピック液晶ポリエステルの特性を利用して、例えば特開昭60-40163号公報には、p-ヒドロキシ安息香酸を含むサーモトロピック液晶ポリエステルを用いた樹脂による電子部品の封止が示されている。しかしながら、上記の材料は必ずしも満足すべきものではない。例えば、サーモトロピック液晶ポリエステルは一般に高融点であり、そのため封止に際しては高温の溶融ポリエステルが被封止部品と接触する。その結果、被封止部品としての電気電子部品などの内部の半田接着部分が再溶融して回路が断線したり、あるいは部品内部に使用されている絶縁用被覆樹脂もまた再溶融して回路がショートを起こす等の問題が生じる。この対策として、単に樹脂自体の成形温度を低くするだけでは、耐熱性も同時に低下するため、一度樹脂封止した部品を回路基板等に半田付けする場合に、封止樹脂自体が変形や再溶融を起こすことがあり好ましくない。
【0003】一方、特に封止用材料を目的としたものではないが、p-ヒドロキシ安息香酸(HBA)、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(ビフェノール:BP)、ヒドロキノン(HQ)、テレフタル酸(TPA)、イソフタル酸(IPA)からなる5元系のサーモトロピック液晶ポリエステルが従来いくつか提案されている。例えば、特開昭63-39918号公報、特開昭63-57633号公報、特開平3-52921号公報、特開昭60-38425号公報、特公表03-501749号公報およびアメリカ特許第5066767号公報等である。ここで、特開昭63-39918号公報、特開昭63-57633号公報、特開平3-52921号公報、特公表03-501749号公報およびアメリカ特許第5066767号公報に記載されたサーモトロピック液晶ポリエステルを封止材料として用いた場合には、成形温度が高いため、前記のように断線やショートが起こるなどの問題が生じる。一方、特開昭60-38425号公報に記載されたサーモトロピック液晶ポリエステルを封止材料として用いた場合には、成形温度が十分に低いために断線やショートの問題が発生する可能性は少ないが、耐熱性が低くなるため、一旦封止した後に半田付け等の加工を行う際に、封止樹脂の再溶融や変形を起こす可能性がある。このように電気電子部品用の封止材料は、低い成形温度と高い耐熱性という一見相反する物性を充足する必要があり、この点において、上記従来の5元系のサーモトロピック液晶ポリエステルでは不十分であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、電気電子部品用の封止材料として使用するサーモトロピック液晶ポリエステルは、断線やショートを起こさないために十分に低い温度で成形することができ、かつ半田付け等の後加工に十分耐え得る耐熱性を保持していなければならない。すなわち、本発明は、上記5成分に代表される原料からなり、しかも成形温度が低く、耐熱性に優れたサーモトロピック液晶ポリエステルおよびそれからなる電気電子部品用封止材料を提供することを目的とする。」

(a-3)
「【0009】上記式〔a〕の構造単位の含有割合(a)は、全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステル全体の55?67mol%であることが必要である。55mol%未満では液晶ポリエステルの耐熱性が不十分となり、また67mol%より多いと成形温度が高くなるため好ましくない。上記式〔b〕および式〔c〕の構造単位について、(b)+(c)は全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステル全体の16.5?22.5mol%であり、また(b)/(c)のモル比は30/70?50/50の範囲であることが必要である。(b)+(c)の合計に対し(c)が70mol%より多いと耐熱性が不十分となり、50mol%未満では成形温度が高すぎて好ましくない。上記式〔d〕および式〔e〕の構造単位について、(d)+(e)は全体の16.5?22.5mol%であり、また(d)/(e)のモル比は50/50?90/10の範囲であることが必要である。(d)+(e)の合計に対し(d)が50mol%未満では成形温度が高すぎ、90mol%より多いと耐熱性が低すぎるので好ましくない。また、上記構成の全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルは、ペンタフルオロフェノール中において60℃で測定された固有粘度が0.3?10dl/gの範囲にあることが必要である。固有粘度が0.3dl/g未満では機械的強度が不足し、また10dl/gより大きいものは成形性が劣るのでいずれも好ましくない。」

(a-4)
「【0018】上記のようにして得られた本発明の全芳香族ポリエステルは、単独であるいは他の全芳香族ポリエステルと混合して使用することができる。また、本発明の全芳香族ポリエステルは、主として機械的強度の向上のために、繊維状、粉粒状、板状などの無機または有機充填材を配合することができる。繊維状の充填材としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、シリカアルミナ繊維、チタン酸カリウム繊維、炭素もしくは黒鉛繊維、さらにアルミニウム、チタン、銅などの金属の繊維状物などの無機繊維状物質が挙げられる。代表的なものはガラス繊維である。一方、粒状充填材としては、カーボンブラック、黒鉛、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ミルドガラスファイバー、ガラスバルーン、ガラス粉、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、タルク、クレー、ケイ藻土、ウォラストナイトのようなケイ酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、アルミナ、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、その他各種の金属粉末が挙げられる。また、板状充填材としては、マイカ、ガラスフレーク、各種の金属箔などが挙げられる。そのほか、有機充填材の例としては、芳香族ポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリイミドなどからなる耐熱性高強度の繊維などが挙げられる。これらの充填材は、必要に応じあらかじめ従来公知の集束剤または表面処理剤により処理することができる。
【0019】また、上記以外に従来公知の酸化防止剤、熱安定剤、増量剤、補強剤、顔料、難燃化剤等の種々の添加剤を適宜の量添加してもよい。これらの添加剤および充填材は1種または2種以上を併用することができる。
【0020】無機充填材を用いる場合に、その配合量は組成物全体に対して10重量%以上、90重量%以下、好ましくは80重量%以下である。90重量%より多い無機充填材を配合すると、機械的強度はむしろ低下するので好ましくない。
【0021】上記のようにして得られる本発明のサーモトロピック液晶ポリエステルは、優れた特性により、従来公知の成形法、例えば、押出成形、射出成形、圧縮成形、ブロー成形などの通常の溶融成形に供して、繊維、フィルム、三次元成形品、容器、ホースなどに加工し成形品を得ることができる。」

(a-5)
「【0027】
【発明の実施の態様】以下に実施例により本発明をさらに詳しく説明する。なお、以下の各実施例および比較例により得られた全芳香族ポリエステルは、常法により測定したところいずれも溶融時に光学的異方性を示した。
【実施例】
・・(中略)・・
【0028】<実施例1>錨型攪拌翼を有し、重合槽の槽壁と攪拌翼とのクリアランスの小さい重合槽に、p-ヒドロキシ安息香酸 1238.09g(8.96モル)、4,4’-ジヒドロキシビフェニル357.54g(1.92モル)、テレフタル酸292.39g(1.76モル)、イソフタル酸 292.39g(1.76モル)およびヒドロキノン176.16g(1.60モル)を入れ、無水酢酸1713.6gを加えて、150℃で3時間無水酢酸還流下でアセトキシ化反応を行った。その後、1℃/分の速度で昇温しながら酢酸を留去し、温度が280℃に達した後その温度で45分間保持した。次いで、300℃まで1℃/分の速度で昇温して30分間保持し、さらに330℃まで1℃/分で昇温後、10分間保持し、その後、得られた重合体を抜き出し口より取り出した。取り出した重合体を粉砕機により粉砕し、窒素雰囲気下で250℃まで120分で昇温し、250℃で固相重合を行った。キャピラリーレオメーターで測定した完全溶融温度における見かけ粘度が200poiseになった時点を固相重合の終点とした。得られた重合体の固有粘度を、ペンタフルオロフェノール中の0.1重量%溶液として60℃で測定したところ、1.2dl/gであった。さらに貯蔵弾性率の温度依存性を測定し、20%低下温度を求め、半田耐熱性およびコイル素子の変化量も測定した。原料成分の配合割合を表1に、また得られた重合体の固有粘度、完全溶融温度、20%低下温度、半田耐熱性、コイル素子の変化量および成形温度を表2に示す。
【0029】<実施例2>実施例1と同様の装置を用い、p-ヒドロキシ安息香酸1326.53g(9.60モル)、4,4’-ジヒドロキシビフェニル387.34g(2.08モル)、テレフタル酸265.81g(1.60モル)、イソフタル酸265.81g(1.60モル)、ヒドロキノン123.31g(1.12モル)を入れて、無水酢酸1713.6gを加え、実施例1と同様にして重合体を得た後、実施例1と同様の測定を行った。組成および測定結果を表1および表2に示す。
・・(中略)・・
【0038】<比較例6>
〔特開昭63-39918号公報記載の実施例1と同じモノマー組成の重合体〕本発明の実施例1と同様の装置を用い、p-ヒドロキシ安息香酸1326.53g(9.60モル)、4,4’-ジヒドロキシビフェニル405.48g(2.18モル)、テレフタル酸398.40g(2.40モル)、イソフタル酸132.80g(0.80モル)およびヒドロキノン112.20g(1.02モル)を入れて、無水酢酸1713.6gを加え、実施例1と同様にして重合体を得た後、実施例1と同様の測定を行った。組成および測定結果を表1および表2に示す。
・・(中略)・・
【0042】
【表1】


【0043】
【表2】


【0044】表1および表2において比較例1、2と実施例1?5を比較すると、テレフタル酸(TPA)/イソフタル酸(IPA)比、ビフェノール(BP)/ヒドロキノン(HQ)比が本発明の特許請求の範囲内にあっても、p-ヒドロキシ安息香酸(HBA)の含有割合が適正な範囲から外れる場合には、HBAが多すぎると(比較例1)、20%低下温度は260℃以上になり、半田耐熱性も十分であるが、完全溶融温度が高すぎて低温での成形が困難になり、結果として半田の再溶融が発生し、そのためコイルの変化量が非常に大きくなる。逆にHBAが少なすぎると(比較例2)、成形温度が低く、コイルの変化量も小さくなるが、20%低下温度が260℃よりも低くなり、結果として半田耐熱性が著しく低下する。比較例3?6と実施例を比べると、HBAの含有割合が適正な範囲内にあっても、BP/HQ比が低すぎたり(比較例3)TPA/IPA比が高すぎたり(比較例6)すると、比較例1の場合と同様に、20%低下温度および半田耐熱性は十分な性能を有するが、低温での成形が困難になり、コイルの変化量が非常に大きくなる。逆にBP/HQ比が高すぎたり(比較例4)、TPA/IPA比が低すぎたり(比較例5)すると、低温で成形が可能であり、コイルも余り変化しないが、耐熱性に劣る結果となり、いずれかの物性が要求を満たすことができない。比較例6?9は、それぞれ特開昭63-39918号、特開昭63-57633号、特開平3-52921号および特開昭60-38425号の各公報記載の実施例と同じモノマー組成で行った結果であるが、これらの実施例はすべて本発明の特許の請求範囲から逸脱しており、その結果いずれかの物性が要求を満たしていないことがわかる。
【0045】一方、実施例1?5の結果によれば、HBAの含有割合、TPA/IPA比およびBP/HQ比がすべて適正な範囲内にある場合、成形温度は310℃前後であり、十分に低温で成形が可能であり、コイル素子の変化量も非常に少ない。また、20%低下温度は260℃以上であり、半田耐熱性も、低温で成形することができた比較例に比べて著しく向上している。上記の結果から、本発明のサーモトロピック液晶ポリエステルは、成形温度が非常に低く、しかも耐熱性に優れているという相反する両特性を兼ね備えていることがわかる。
【0046】
【発明の効果】本発明のサーモトロピック液晶ポリエステルは、特定の組成および特定の物性を有していることにより、封止材料として用いた場合に低温による封止成形が可能であり、封止した電気電子部品の内部素子の損傷を少なくすることができ、しかも耐熱性の低下は少ないので、半田付け等の後加工時においても十分な耐熱性を有している。」

(イ)甲1に記載された発明
甲1には、上記(ア)の記載事項(特に上記【特許請求の範囲】の記載並びに【表1】の「実施例1」及び「実施例2」に係る記載)からみて、
「次の式〔a〕から〔e〕により表される繰返し構造単位からなり、
【化1】


かつ以下の条件(1)から(5)を満たすことを特徴とする全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステル、
(1)式〔a〕の構造単位の含有割合(mol%、以下「(a)」と略す、その他同様)が全体の55?67mol%、
(2)(b)+(c)および(d)+(e)がいずれも全体の16.5?22.5mol%、
(3)(b)/(c)のモル比が30/70?50/50、
(4)(d)/(e)のモル比が50/50?90/10、および
(5)ペンタフルオロフェノール中において60℃で測定した固有粘度が0.3?10dl/g。」
に係る発明(以下「甲1発明1」という。)及び
上記(1)の記載事項(特に上記【表1】の「比較例6」に係る記載)からみて、
「次の式〔a〕から〔e〕により表される繰返し構造単位からなり、
【化1】


かつ以下の条件(1)から(5)を満たすことを特徴とする全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステル、
(1)式〔a〕の構造単位の含有割合(mol%、以下「(a)」と略す、その他同様)が全体の60mol%、
(2)(b)+(c)および(d)+(e)がいずれも全体の20.0mol%、
(3)(b)/(c)のモル比が75/25、
(4)(d)/(e)のモル比が68/32、および
(5)ペンタフルオロフェノール中において60℃で測定した固有粘度が1.5dl/g。」
に係る発明(以下「甲1発明2」という。)がそれぞれ記載されているものといえる。

イ.検討

(ア)本件発明2について

(ア-1)対比
本件発明2と甲1発明1又は甲1発明2とをそれぞれ対比すると、本件発明2と甲1発明1とは、甲1発明1における「式〔a〕の構造単位の含有割合(mol%、以下「(a)」と略す、その他同様)が全体の55?67mol%」で「(d)+(e)が・・全体の16.5?22.5mol%」であり、(a)+(d)+(e)の合計量に対する(a)の割合を算出すると71.0?80.2mol%であるから、
「下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成され、構造単位(I)が構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して71?80モル%であり、構造単位(II)が構造単位(II)および(III)の合計に対して55?85モル%であり、構造単位(IV)が構造単位(IV)および(V)の合計に対して50モル%であり、構造単位(II)および(III)の合計と(IV)および(V)の合計が実質的に等モルである液晶ポリエステル。」
の点で一致し、本件発明2と甲1発明2とは、甲1発明2における「式〔a〕の構造単位の含有割合(mol%、以下「(a)」と略す、その他同様)が全体の60mol%」で「(d)+(e)が全体の20.0mol%」であり、(a)+(d)+(e)の合計量に対する(a)の割合を算出すると75mol%であるから、
「下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成され、構造単位(I)が構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して75モル%であり、構造単位(II)が構造単位(II)および(III)の合計に対して68モル%であり、構造単位(IV)が構造単位(IV)および(V)の合計に対して75モル%であり、構造単位(II)および(III)の合計と(IV)および(V)の合計が実質的に等モルである液晶ポリエステル。」
で一致し、いずれも下記の相違点1及び2でのみ相違するものと認められる。

相違点1:本件発明2では「樹脂温度を液晶ポリエステルの融点+20℃、金型温度を130℃に設定し、充填下限圧+1MPaの圧力で射出成形した70mm長×70mm幅×1mm厚の試験片を用いて、JISK7129(付属書C,2008年)に準拠して測定された、温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度が0.0411g/m^(2)・24hr・atm以下である」のに対して、甲1発明1及び甲1発明2では、それぞれ全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルの水蒸気透過度につき特定されていない点
相違点2:本件発明2では、「下記(A)または(B)の製造方法によって得られる液晶ポリエステル。
(A)脱酢酸重縮合工程における温度200から270℃までの間の昇温時間を81分間以上88分間以下とする方法
(B)窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンであって、その共役酸の水溶液中における酸解離定数(pKa)が7.5以上10.5以下である芳香族または脂肪族アミンを、少なくとも脱酢酸重縮合反応開始までに、原料モノマーであるヒドロキシカルボン酸、ジオールおよびジカルボン酸の合計仕込み量100重量部に対して、0.01重量部以上1重量部以下の添加量で添加する方法」であるのに対して、甲1発明1及び甲1発明2では、それぞれ全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルの製造方法につき特定されていない点

(ア-2)検討
・相違点2について
事案に鑑み、まず、相違点2につき検討すると、甲1には、甲1発明1又は甲1発明2に係る全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルの製造方法において、アミン化合物を使用せず、また、「150℃で3時間無水酢酸還流下でアセトキシ化反応を行った」「後、1℃/分の速度で昇温しながら酢酸を留去し、温度が280℃に達した後その温度で45分間保持し」、「次いで、300℃まで1℃/分の速度で昇温して30分間保持し、さらに330℃まで1℃/分で昇温後、10分間保持し、その後、得られた重合体を抜き出し口より取り出した」ことが記載されており(甲1【0028】)、本件発明2における上記「(A)または(B)の製造方法」によるものではないことが明らかであるから、上記相違点2は、実質的な相違点である。
また、甲1の記載を検討しても、上記縮重合の際に、昇温速度を特定の範囲に調節すべきこと(上記(A)の点)又はアミン化合物を使用すべきこと(上記(B)の点)を想起し得る事項も記載されておらず、甲1発明1又は甲1発明2のポリエステルの製造において、上記「(A)または(B)の製造方法」を適用する動機となる事項が存するものとも認められないから、上記相違点2に係る事項は、甲1発明1又は甲1発明2において、当業者が適宜なし得ることということはできない。

(ア-3)小括
したがって、本件発明2は、上記相違点1につき検討するまでもなく、甲1発明1又は甲1発明2、すなわち甲1に記載された発明であるということはできず、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものということもできない。

(イ)本件発明3及び9について
本件発明3又は本件発明9は、いずれも本件発明2を引用するものであるところ、上記(ア)で説示したとおりの理由により、本件発明2が、甲1発明1又は甲1発明2、すなわち甲1に記載された発明であるということはできず、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものということもできないのであるから、本件発明3又は9についても、甲1に記載された発明であるということはできず、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものということもできない。

ウ.取消理由1に係る検討のまとめ
以上のとおり、本件発明2、3及び9は、いずれも甲1に記載された発明であるということはできず、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものということもできないから、上記取消理由1は理由がない。

5.当審の判断のまとめ
以上のとおりであるから、本件の請求項2ないし9に係る発明についての特許につき、申立人が主張する取消理由及び当審が通知した取消理由はいずれも理由がなく、その他の取消理由を発見しないから、本件の請求項2ないし9に係る発明についての特許は取り消すことはできない。
また、訂正後の本件の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立ては、訂正によりその技術事項が全て削除され、申立ての対象を欠くものであり、不適法となったものであって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。

第7 むすび
以上のとおり、本件特許に係る特許権者の訂正請求による訂正は適法であるから、これを認容し、当該訂正後の本件の請求項2ないし9に係る発明についての特許は維持すべきものであり、訂正後の本件の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立ては、却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
液晶ポリエステルおよびその製造方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリエステルおよびその製造方法に関する。より詳しくは、高温高湿環境下で極めて優れた曲げ強度および耐トラッキング破壊性能を有する液晶ポリエステルとその製造方法、液晶ポリエステル組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックの高性能化に対する要求がますます高まり、種々の特性を有するポリマーが数多く開発され、市場に供されている。中でも、分子鎖の平行な配列を特徴とする光学異方性の液晶ポリエステルなどの液晶性樹脂が、優れた成形性と機械的性質、絶縁性を有する点で注目され、電気・電子部品や機械部品に用途が拡大されつつある。
【0003】
これまでに、湿気による機器の誤作動や材料の劣化を防ぐために、高湿環境下における水蒸気バリア性に優れた液晶ポリエステルの検討がなされている。水蒸気バリア性に優れた液晶ポリエステルとして、例えば、p-ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位と2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸に由来する繰り返し単位を含む芳香族液晶ポリエステルから溶融押出しされてなるフィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、2,6-ナフチレン基を含む繰返し単位の含有量が全繰返し単位の合計量に対して40モル%以上である液晶ポリエステルから構成される層を有する各種積層シートや基板、前記液晶ポリエステルを含む中空樹脂筐体用樹脂組成物等が提案されている(例えば、特許文献2?8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-342243号公報
【特許文献2】特開2012-089597号公報
【特許文献3】特開2012-158009号公報
【特許文献4】特開2012-167224号公報
【特許文献5】特開2012-169208号公報
【特許文献6】特開2012-169535号公報
【特許文献7】特開2012-186453号公報
【特許文献8】特開2012-186454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、電気・電子部品や機械部品には、高い曲げ強度や、優れた絶縁性を発揮するための耐トラッキング破壊性能が要求される。近年の機器の高性能化や高出力化、小型化や軽量化に伴い、機器内部がより高温となるため、かかる機器に用いられる部品には、高温高湿下に長時間さらされる環境においても、高い曲げ強度や耐トラッキング破壊性能を維持することが必要とされている。しかしながら、特許文献1?8記載の技術では、高温高湿下における曲げ強度や耐トラッキング破壊性能がなお不十分であった。
【0006】
本発明は、電気・電子部品や機械部品に要求される、高温高湿環境下における曲げ強度と耐トラッキング破壊性能に優れる成形品を得ることのできる液晶ポリエステルとその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、高温高湿環境下において特定の水蒸気透過度を示す液晶ポリエステルにより、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能に極めて優れる成形品を得ることができることを見出し、以下の結論に達した。
【0008】
すなわち本発明は、
【0009】
【0010】
(2)樹脂温度を液晶ポリエステルの融点+20℃、金型温度を130℃に設定し、充填下限圧+1MPaの圧力で射出成形した70mm長×70mm幅×1mm厚の試験片を用いて、JISK7129(付属書C,2008年)に準拠して測定された、温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度が0.0411g/m^(2)・24hr・atm以下である液晶ポリエステルであり、
少なくとも2種のジオールに由来する構造単位を有し、ジオールに由来する全構造単位の合計100モル%中、下記構造単位(II)を55?85モル%含み、
下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成され、構造単位(I)が構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して65?80モル%であり、構造単位(II)が構造単位(II)および(III)の合計に対して55?85モル%であり、構造単位(IV)が構造単位(IV)および(V)の合計に対して50?90モル%であり、構造単位(II)および(III)の合計と(IV)および(V)の合計が実質的に等モルである液晶ポリエステルであって、下記(A)または(B)の製造方法によって得られる液晶ポリエステル。
(A)脱酢酸重縮合工程における温度200℃から270℃までの間の昇温時間を81分間以上88分間以下とする方法
(B)窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンであって、その共役酸の水溶液中における酸解離定数(pKa)が7.5以上10.5以下である芳香族または脂肪族アミンを、少なくとも脱酢酸重縮合反応開始までに、原料モノマーであるヒドロキシカルボン酸、ジオールおよびジカルボン酸の合計仕込み量100重量部に対して、0.01重量部以上1重量部以下の添加量で添加する方法、
【0011】
【化2】

【0012】
(3)上記(2)に記載の液晶ポリエステル100重量部に対して、充填材10?200重量部を含有する液晶ポリエステル組成物、
(4)ヒドロキシカルボン酸および/またはジオールにアシル化剤を反応させ、水酸基の少なくとも一部をアシル化した後、ジカルボン酸と脱酢酸重縮合反応させる液晶ポリエステルの製造方法であって、窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンを少なくとも脱酢酸重縮合反応開始までに添加する、70mm長×70mm幅×1mm厚の試験片を用いて、JISK7129(付属書C,2008年)に準拠して測定された、温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度が0.05g/m^(2)・24hr・atm以下であり、少なくとも2種のジオールに由来する構造単位を有し、ジオールに由来する全構造単位の合計100モル%中、下記構造単位(II)を55?85モル%含む液晶ポリエステルの製造方法、
【化3】

(5)ヒドロキシカルボン酸および/またはジオールにアシル化剤を反応させ、水酸基の少なくとも一部をアシル化した後、ジカルボン酸と脱酢酸重縮合反応させる液晶ポリエステルの製造方法であって、窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンを少なくとも脱酢酸重縮合反応開始までに添加する、
70mm長×70mm幅×1mm厚の試験片を用いて、JISK7129(付属書C,2008年)に準拠して測定された、温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度が0.05g/m^(2)・24hr・atm以下であり、下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成され、構造単位(I)が構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して65?80モル%であり、構造単位(II)が構造単位(II)および(III)の合計に対して55?85モル%であり、構造単位(IV)が構造単位(IV)および(V)の合計に対して50?90モル%であり、構造単位(II)および(III)の合計と(IV)および(V)の合計が実質的に等モルである液晶ポリエステルの製造方法、
【化4】

(6)窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンの添加量が、ヒドロキシカルボン酸、ジオールおよびジカルボン酸の合計100重量部に対して、0.01重量部以上1重量部以下である上記(4)または(5)に記載の液晶ポリエステルの製造方法、
(7)窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンが、脂肪族アミンである上記(4)?(6)のいずれかに記載の液晶ポリエステルの製造方法、
(8)窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンの共役酸の水溶液中における酸解離定数(pKa)が10.5以下である上記(4)?(7)のいずれか記載の液晶ポリエステルの製造方法、
(9)上記(2)に記載の液晶ポリエステルまたは上記(3)に記載の液晶ポリエステル組成物からなる成形品、
である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の液晶ポリエステルにより、高温高湿環境下において優れた曲げ強度および耐トラッキング破壊性能を有する成形品を得ることができる。特に、高温高湿環境下においてこれらの特性を必要とする電気・電子部品や機械部品に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明でいう重量は質量を意味する。
【0015】
液晶ポリエステルとは、異方性溶融相を形成するポリエステルである。液晶ポリエステルとしては、例えば、後述するオキシカルボニル単位、ジオキシ単位、ジカルボニル単位などから異方性溶融相を形成するよう選ばれた構造単位から構成されるポリエステルなどが挙げられる。
【0016】
本発明の液晶ポリエステルは、温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度(以下、単に水蒸気透過度という場合がある)が0.05g/m^(2)・24hr・atm以下である。電気・電子部品や機械部品では使用条件により高温にさらされる可能性があることから、想定される高温環境下における代表的な特性として、温度80℃における水蒸気透過度に着目した。また、温度80℃において、水蒸気透過度の差異が明確に表される条件として、相対湿度40%における水蒸気透過度に着目した。水蒸気透過度が0.05g/m^(2)・24hr・atmより大きい場合、液晶ポリエステルが高温高湿環境下に晒されると、多量の吸湿により密度が低下し、成形品の曲げ強度が大幅に低下する。また、多量の吸湿により高温高湿環境下における耐トラッキング破壊性能が大幅に低下する。水蒸気透過度は、好ましくは0.04g/m^(2)・24hr・atm以下、より好ましくは0.03g/m^(2)・24hr・atm以下である。なお、水蒸気透過度の下限は0g/m^(2)・24hr・atmである。
【0017】
また、本発明の液晶ポリエステルの温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度と、温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度との差は、0.037g/m^(2)・24hr・atm以下が好ましい。より好ましくは0.027g/m^(2)・24hr・atm以下、さらに好ましくは0.022g/m^(2)・24hr・atm以下である。比較的低温である温度40℃の条件での水蒸気透過度が低い液晶ポリエステルであっても、温度80℃においては水蒸気透過度が高くなることがあるが、温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度と、温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度との差を上記の範囲とすることで、得られる液晶ポリエステルの曲げ強度および耐トラッキング破壊性能は、環境の変化による影響を受けにくくなる。
【0018】
液晶ポリエステルの水蒸気透過度を前述の範囲にする手段としては、例えば、液晶ポリエステルの構造を後述の好ましい態様とする方法、後述の好ましい製造方法により液晶ポリエステルを得る方法などが挙げられる。
【0019】
本発明における水蒸気透過度は、JIS K7129(付属書C,2008年)に準拠し、温度80℃および相対湿度40%、温度40℃および相対湿度90%の各条件で測定した値を指す。かかる水蒸気透過度は、例えば、GTR-30XATK(GTRテック)を用いて測定することができる。なお、測定試料には70mm長×70mm幅×1mm厚(フィンゲート)の射出成形角板を用いる。
【0020】
次に、液晶ポリエステルを構成する構造単位について説明する。
【0021】
オキシカルボニル単位の具体例としては、p-ヒドロキシ安息香酸、m-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸などから生成した構造単位が挙げられる。成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させる観点から、芳香族ヒドロキシカルボン酸から生成した構造単位が好ましく、中でもp-ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位が特に好ましい。
【0022】
ジオキシ単位の具体例としては、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシノール、t-ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、クロロハイドロキノン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノンなどの芳香族ジオールから生成した構造単位、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジオールから生成した構造単位、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオールから生成した構造単位などが挙げられる。成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させる観点から、エチレングリコールまたは芳香族ジオールから生成した構造単位が好ましく、中でも4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンから生成した構造単位が特に好ましい。
【0023】
ジカルボニル単位の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、3,3’-ジフェニルジカルボン酸、2,2’-ジフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-4,4’-ジカルボン酸、1,2-ビス(2-クロロフェノキシ)エタン-4,4’-ジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸から生成した構造単位などが挙げられる。成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させる観点から、芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位が好ましく、中でもテレフタル酸、イソフタル酸から生成した構造単位が特に好ましい。
【0024】
また、上記構造単位に加えて、p-アミノ安息香酸、p-アミノフェノールなどから生成した構造単位を、液晶性や特性を損なわない程度の範囲でさらに有することができる。
【0025】
液晶ポリエステルの具体例としては、p-ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、4,4’-ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、ハイドロキノンから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶ポリエステル、p-ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、4,4’-ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、ハイドロキノンから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶ポリエステル、p-ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、ハイドロキノンから生成した構造単位、4,4’-ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、2,6-ナフタレンジカルボン酸から生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位からなる液晶ポリエステル、p-ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、2,6-ジヒドロキシナフタレンから生成した構造単位、4,4’-ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶ポリエステルなどが挙げられる。
【0026】
本発明の液晶ポリエステルは、少なくとも2種のジオールに由来する構造単位を有し、その一方に4,4’-ジヒドロキシビフェニルに由来する下記構造単位(II)を有することが好ましい。このような構造を有することにより、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。この場合において、ジオールに由来する全構造単位の合計100モル%中、下記構造単位(II)を55?85モル%含むことが好ましい。構造単位(II)を55モル%以上含むことにより、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。57モル%以上がより好ましい。一方、構造単位(II)を85モル%以下含むことにより、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。75モル%以下がより好ましく、65モル%以下がさらに好ましい。
【0027】
【化3】

【0028】
本発明の液晶ポリエステルは、下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成されることが好ましい。このような構造を有することにより、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる
【0029】
【化4】

【0030】
上記構造単位(I)はp-ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位を、構造単位(II)は4,4’-ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位を、構造単位(III)はハイドロキノンから生成した構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル酸から生成した構造単位を、構造単位(V)はイソフタル酸から生成した構造単位を各々示す。
【0031】
上記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)の含有量は任意であるが、本発明の液晶ポリエステルの特性をより効果的に発揮させるためには次の含有量であることが好ましい。すなわち、構造単位(I)は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して65?80モル%であることが好ましく、より好ましくは68?75モル%である。また、構造単位(II)は構造単位(II)および(III)の合計に対して55?85モル%であることが好ましく、より好ましくは55?75モル%であり、さらに好ましくは57?65モル%である。また、構造単位(IV)は構造単位(IV)および(V)の合計に対して好ましくは50?90モル%であり、より好ましくは60?88モル%であり、さらに好ましくは70?85モル%である。このような組成を満たす液晶ポリエステルは、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度がより低減され、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。
【0032】
本発明において、構造単位(II)および(III)の合計と(IV)および(V)の合計は実質的に等モルであることが好ましい。ここでいう「実質的に等モル」とは、末端を除くポリマー主鎖を構成するユニットとしては等モルであるが、末端を構成するユニットとしては必ずしも等モルとは限らないことを意味する。
【0033】
本発明の液晶ポリエステルの組成は、液晶ポリエステルが可溶な溶媒(例えば、ペンタフルオロフェノール/重テトラクロロエタン混合溶媒)に溶解した溶液を用いて1H-核磁気共鳴スペクトル測定することにより求めることができる。
【0034】
本発明の液晶ポリエステルの融点(Tm)は、220?350℃が好ましい。融点が220℃以上であれば、耐熱性を向上させることができる。270℃以上がより好ましく、300℃以上がさらに好ましい。一方、融点が350℃以下であれば、成形時の成形安定性を向上させることができる。345℃以下がより好ましく、340℃以下がさらに好ましい。
【0035】
本発明の液晶ポリエステルの溶融粘度は、1?200Pa・sが好ましい。溶融粘度が1Pa・s以上であれば、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。10Pa・s以上がより好ましく、20Pa・s以上がさらに好ましい。一方、溶融粘度が200Pa・s以下であれば、流動性を向上させることができる。100Pa・s以下がより好ましく、50Pa・s以下がさらに好ましい。なお、本発明における液晶ポリエステルの溶融粘度は、液晶ポリエステルの融点+10℃の条件で、せん断速度1,000/sの条件下で高化式フローテスターによって測定した値である。
【0036】
本発明の液晶ポリエステルの製造方法は特に限定されないが、液晶ポリエステルを構成するモノマーを、液晶ポリエステルが溶融する温度で減圧下反応させ、重縮合反応を完了させる溶融重合法が好ましい。溶融重合法は均一な液晶ポリエステルを製造するために有利な方法であり、ガス発生量が少ない優れた液晶ポリエステルを得ることができる点で好ましい。ヒドロキシカルボン酸および/またはジオールにアシル化剤を反応させ、水酸基の少なくとも一部をアシル化した後、ジカルボン酸と脱酢酸重縮合反応させることが好ましく、例えば、所定量のp-ヒドロキシ安息香酸、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸、イソフタル酸、無水酢酸を、撹拌翼、留出管を備え、下部に吐出口を備えた反応容器中に仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら加熱して水酸基の少なくとも一部をアセチル化した後、液晶ポリエステルの溶融温度まで昇温し、減圧下において重縮合し、反応を完了させる方法が挙げられる。
【0037】
アセチル化反応温度は、通常130?300℃の範囲、好ましくは130?200℃、より好ましくは130?150℃の範囲である。アセチル化反応時間は、通常1?6時間、好ましくは1?3時間である。重縮合反応温度は、通常液晶ポリエステルの溶融温度、例えば、250?365℃の範囲であり、好ましくは液晶ポリエステルの融点+10℃以上の温度である。重縮合反応時間は、通常30分間?6時間、好ましくは30分間?3時間である。重縮合反応時の減圧度は、通常0.1mmHg(13.3Pa)?20mmHg(2660Pa)であり、好ましくは10mmHg(1330Pa)以下、より好ましくは5mmHg(665Pa)以下である。なお、アセチル化反応と重縮合反応は同一の反応容器で連続して行ってもよいし、異なる反応容器で行ってもよい。
【0038】
得られた液晶ポリエステルは、液晶ポリエステルが溶融する温度で、反応容器内を、例えば、およそ1.0kg/cm^(2)(0.1MPa)に加圧し、反応容器下部に設けられた吐出口よりストランド状に吐出することができる。
【0039】
本発明においては、脱酢酸重縮合におけるモノマーの反応性を制御することにより、反応初期に生成するオリゴマーのシークエンスを好適な範囲に制御することが好ましい。例えば、モノマーとしてp-ヒドロキシ安息香酸を用いる場合、270℃におけるオリゴマーの連鎖組成において、下記式(1)の値を25以上50以下とすることが好ましい。270℃におけるオリゴマーのシークエンスを制御することにより、得られる液晶ポリエステルのシークエンスをより容易に制御できる。これにより成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。下記式(1)の値は、270℃におけるオリゴマー単位量あたりの全ての2連鎖に対する構造単位(I)同士の2連鎖の割合を示している。270℃における下記式(1)の値を25以上とすることにより、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。30以上がより好ましく、35以上がさらに好ましい。一方、270℃における下記式(1)の値を50以下とすることにより、構造単位(I)の長連鎖に由来する不融異物生成を抑制することができ、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。47以下がより好ましく、45以下がさらに好ましい。このような範囲であると、脱酢酸重縮合反応初期に生成するオリゴマーのシークエンスを好適な範囲に制御することができる。オリゴマーのシークエンスを制御することにより、得られる液晶ポリエステルのシークエンスも制御可能となる。これにより成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。
([HBA-HBA]/[オリゴマー中の全ての2連鎖])×100 (1)
(式(1)中、[HBA-HBA]はオリゴマー単位量あたりの構造単位(I)同士の2連鎖の個数(モル)を示し、[オリゴマー中の全ての2連鎖]はオリゴマー単位量あたりの全ての2連鎖の個数(モル)を示す。)
【0040】
ここで、270℃におけるオリゴマーの連鎖組成は、核磁気共鳴(NMR)スペクトルによって測定できる。例えば、脱酢酸重縮合反応中、270℃において採取したオリゴマーをNMR試料管に50mg秤量し、ペンタフルオロフェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン混合溶媒(混合比率:50/50w/w%)800μLに溶解して、UNITY INOVA500型NMR装置(バリアン社製)を用いて、観測周波数125MHz、温度80℃の条件で13C-NMRを測定し、166?169ppm付近に観測される全2連鎖のピーク面積のうち、166.5?167.5ppm付近に観測される構造単位(I)同士の連鎖由来のピーク面積から、式(1)の値を算出できる。
【0041】
脱酢酸重縮合反応初期に生成するオリゴマーのシークエンスを好適な範囲に制御する方法として、例えば、脱酢酸重縮合工程における温度200℃から270℃までの間の昇温時間を75分間以上95分間以下とする方法、窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンを少なくとも脱酢酸重縮合反応開始までに添加する方法などが挙げられる。温度200℃から270℃までの間の昇温時間を短くすれば、反応性の高いp-ヒドロキシ安息香酸の反応速度を他のモノマーに比べ相対的に向上させることができる。温度200℃から270℃までの間の昇温時間を75分間以上とすることにより、p-ヒドロキシ安息香酸長連鎖に由来する不融異物の生成を抑制することができ、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。一方、温度200℃から270℃までの間の昇温時間を95分間以下にすることにより、p-ヒドロキシ安息香酸の連鎖を適度に生成させ、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。また、窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンを添加することによっても、p-ヒドロキシ安息香酸の連鎖長を制御することができ、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンを少なくとも脱酢酸重縮合反応開始までに添加する方法がより好ましい。
【0042】
本発明における芳香族アミンとは、芳香環の水素原子の少なくとも一部を窒素原子に置き換えた化合物、すなわち芳香環の外に窒素原子を含む化合物をいう。窒素原子を2つ以上含む芳香族アミンとしては、例えば、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-ジアミノベンゼン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノベンゼン、1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、4,5-ビス(ジメチルアミノ)フルオレンなどが挙げられる。また、窒素原子を2つ以上含む脂肪族ジアミンとしては、例えば、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,2-ジアミノエタン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,2-ジアミノプロパン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノブタン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-ジアミノブタン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,5-ジアミノペンタン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ジアミノヘキサンなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも脂肪族アミンが好ましく、脱酢酸重縮合反応初期に生成するオリゴマーのシークエンスをより容易に制御することができる。これにより、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。
【0043】
本発明において、窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンの窒素原子は、液晶ポリエステル主鎖との反応性の観点から、3級アミンであることが好ましい。
【0044】
また、窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンは、炭素原子数、窒素原子数および酸素原子数の和が20以下であり、下記式(2)の値が0.3以下であることがより好ましい。このような化合物を添加すると、脱酢酸重縮合反応初期におけるモノマーの反応性をより容易に制御でき、反応初期に生成するオリゴマーのシークエンスを好適な範囲に制御することができる。これにより、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。また、脱酢酸重縮合により得られる液晶ポリエステル中に残存する化合物を低減することができる。
(化合物1分子中の窒素原子の数)/(化合物1分子中の窒素原子、炭素原子および酸素原子の総数)(2)
【0045】
また、窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンは、その共役酸の水溶液中における酸解離定数(pKa)が10.5以下であることが好ましい。このような塩基性が比較的弱いアミンを用いることで、脱酢酸重縮合反応初期におけるモノマーの反応性をより容易に制御でき、反応初期に生成するオリゴマーのシークエンスを好適な範囲により容易に制御することができる。これにより、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。また、窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンの共役酸の水溶液中におけるpKaは7.5以上であることが好ましい。pKaが7.5以上であると、p-ヒドロキシ安息香酸の長連鎖に由来する不融異物の生成が抑制され、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。
【0046】
ここで、pKaの測定方法は、例えば、アミン化合物の水溶液を塩酸やヨウ素酸等の滴定液を用いて25℃で滴定し、あるいはアミン化合物の塩酸塩の水溶液を水酸化ナトリウム等の滴定液を用い25℃で滴定し、50%中和された時点におけるpH値から算出される。
【0047】
窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンの添加量は、原料モノマーであるヒドロキシカルボン酸、ジオールおよびジカルボン酸の合計仕込み量100重量部に対して、0.01重量部以上1重量部以下であることが好ましい。窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンの添加量が0.01重量部以上であれば、脱酢酸重縮合反応初期におけるモノマーの反応性をより効果的に制御し、液晶ポリエステルの初期シークエンスを好適な範囲に容易に制御することができる。これにより、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。0.05重量部以上がより好ましい。一方、窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンの添加量が1重量部以下であれば、脱酢酸重縮合反応初期におけるモノマーの反応性をより効果的に制御し、液晶ポリエステルの初期シークエンスを好適な範囲に容易に制御することができる。これにより、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。0.5重量部以下がより好ましい。
【0048】
本発明の液晶ポリエステルを製造する際に、固相重合法により重縮合反応を完了させることも可能である。例えば、液晶ポリエステルのポリマーまたはオリゴマーを粉砕機で粉砕し、窒素気流下または減圧下、液晶ポリエステルの液晶開始温度-10?-20℃(例えば、100?300℃)の範囲で1?50時間加熱し、所望の重合度まで重縮合し、反応を完了させる方法が挙げられる。固相重合法は高重合度のポリマーを製造するために有利な方法である。
【0049】
液晶ポリエステルの重縮合反応は、p-トルエンスルホン酸などのスルホン酸、塩化水素などのブレンステッド酸や、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどの金属化合物などの触媒存在下で実施してもよい。
【0050】
上記本発明の液晶ポリエステルは、他の成分と組み合わせて液晶ポリエステル組成物としてもよい。例えば、本発明の液晶ポリエステル組成物は、液晶ポリエステルの機械強度その他の特性を付与するために充填材を含有してもよい。充填材としては、特に限定されるものではないが、繊維状、板状、粉末状、粒状などの各種形状の充填材を挙げることができる。例えば、ガラス繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどの繊維状またはウィスカー状充填材、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイトなどの粉状、粒状あるいは板状の充填材などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。上記充填材中、ガラス繊維および導電性が必要な場合にはPAN系炭素繊維が好ましく使用される。ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものであれば特に限定はなく、例えば、長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどを挙げることができる。なお、充填材は、その表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤により処理されていてもよい。また、ガラス繊維は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。
【0051】
本発明の液晶ポリエステル組成物において、充填材の含有量は、液晶ポリエステル樹脂100重量部に対し、10?200重量部が好ましい。充填材含有量が10重量部以上であれば、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。20重量部以上がより好ましく、30重量部以上がさらに好ましい。一方、充填材含有量が200重量部以下であれば、成形性および流動性に優れた液晶ポリエステル組成物が得られる。150重量部以下がより好ましく、100重量部以下がさらに好ましい。
【0052】
本発明の液晶ポリエステル組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤および滑剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素およびポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p-オキシ安息香酸オクチル、N-ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどの非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル(PPO)、臭素化ポリカーボネート(PC)、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)を含有することができる。
【0053】
本発明の液晶ポリエステル組成物の製造方法としては、特に限定されるものではなく、液晶ポリエステルにこれら成分をドライブレンドする方法や溶液配合する方法、液晶ポリエステルの重合時にこれら成分を添加する方法、液晶ポリエステルとこれら成分を溶融混練する方法などを挙げることができ、なかでも溶融混練する方法が好ましい。溶融混練には、公知の方法を用いることができる。溶融混練装置としては、例えば、バンバリーミキサー、ゴムロール機、ニーダー、単軸もしくは二軸押出機などを挙げることができる。なかでも二軸押出機が好ましい。溶融混練温度は、液晶ポリエステルの融点以上融点+50℃以下が好ましい。
【0054】
混練方法としては、1)液晶ポリエステル、充填材やその他の添加剤を元込めフィーダーから一括で投入して混練する方法(一括混練法)、2)液晶ポリエステルとその他の添加剤を元込めフィーダーから投入して混練した後、充填材および必要であればその他の添加剤をサイドフィーダーから添加して混練する方法(サイドフィード法)、3)液晶ポリエステルとその他の添加剤を高濃度に含む液晶ポリエステル組成物(マスターペレット)を作製し、次いで規定の濃度になるようにマスターペレットを液晶ポリエステル、充填材と混練する方法(マスターペレット法)などが挙げられる。また、充填材およびその他の添加剤を添加する方法としては、一括混練法、逐次添加法、高濃度組成物(マスター)を添加する方法等が挙げられ、いずれの方法でもかまわない。
【0055】
本発明の液晶ポリエステルおよび液晶ポリエステル組成物は、通常の射出成形、押出成形、プレス成形などの成形方法によって、優れた表面外観(色調)および機械的性質、耐熱性、難燃性を有する成形品に加工することが可能である。ここでいう成形品としては、射出成形品、押出成形品、プレス成形品、シート、パイプ、フィルム、繊維などが挙げられる。特に、射出成形品において本発明の効果が顕著に得られるため好ましい。
【0056】
本発明の液晶ポリエステルまたは液晶ポリエステル組成物を成形して得られる成形品は、例えば、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、リレーベース、リレー用スプール、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶ディスプレー部品、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、HDD部品、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品;顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディマー用ポテンショメーターべース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、エアコン用モーターインシュレーター、パワーウインド等の車載用モーターインシュレーター、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプベゼル、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケースなどの自動車・車両関連部品;シャンプー、リンス、液体石鹸、洗剤等の各種薬剤用ボトル;薬液保存用タンク、ガス保存用タンク、冷却液タンク、オイル移液用タンク、消毒液用タンク、輸血ポンプ用タンク、燃料タンク、キャニスター、ウォッシャー液タンク、オイルリザーバータンクなどの薬液・ガス保存用タンク;医療器具用途部品;醤油、ソース、ケチャップ、マヨネーズ、ドレッシング等の調味料、味噌、食酢等の発酵食品、サラダ油等の油脂食品、清酒、ビール、みりん、ウィスキー、焼酎、ワイン等の酒類、炭酸飲料、ジュース、スポーツドリンク、牛乳、コーヒー飲料、ウーロン茶、紅茶、ミネラルウォーター等の清涼飲料水などの食品保存容器;および一般生活器具部品としてのタンク、ボトル状成形品やまたはそれらタンクなどの中空容器などに用いることができる。高温高湿環境下において優れた曲げ強度および耐トラッキング破壊性能を有することから、特に、リレーケース、プリント配線板などの電気・電子部品に有用である。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明が実施例により限定されるものではない。実施例中、270℃におけるオリゴマーの連鎖組成、液晶ポリエステルの融点、液晶ポリエステルの溶融粘度、液晶ポリエステルの組成、液晶ポリエステルおよび液晶ポリエステル組成物の水蒸気透過度、湿熱処理前後の曲げ強度、湿熱処理後の比較トラッキング指数(CTI)、芳香族または脂肪族アミンの共役酸の水溶液中におけるpKaは以下の方法により測定した。
【0058】
(1)270℃におけるオリゴマーの連鎖組成
脱酢酸重縮合反応中、270℃において採取したオリゴマーをNMR試料管に50mg秤量し、ペンタフルオロフェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン混合溶媒(混合比率:50/50w/w%)800μLに溶解して、UNITY INOVA500型NMR装置(バリアン社製)を用いて、観測周波数125MHz、温度80℃の条件で13C-NMR測定を実施した。166?169ppm付近に観測される全2連鎖のピーク面積のうち、166.5?167.5ppm付近に観測される構造単位(I)同士の連鎖由来のピーク面積から、下記式(1)の値を算出した。
([HBA-HBA]/[オリゴマー中の全ての2連鎖])×100 (1)
(式(1)中、[HBA-HBA]はオリゴマー単位量あたりの構造単位(I)同士の2連鎖の個数(モル)を示し、[オリゴマー中の全ての2連鎖]はオリゴマー単位量あたりの全ての2連鎖の個数(モル)を示す。)
【0059】
(2)液晶ポリエステルの融点(Tm)
示差走査熱量計DSC-7(パーキンエルマー製)により、液晶ポリエステルを室温から20℃/分の昇温条件で昇温度した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1+20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の高温条件で室温までいったん冷却し、再度20℃/分の昇温条件で昇温度した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2)を融点とした。以下の製造例においては、融点(Tm2)をTmと記載する。
【0060】
(3)液晶ポリエステルの溶融粘度
高化式フローテスターCFT-500D(オリフィス0.5φ×10mm)(島津製作所製)を用いて、Tm+10℃、せん断速度1000/sの条件で液晶ポリエステルの溶融粘度を測定した。
【0061】
(4)液晶ポリエステルの組成
液晶ポリエステルをNMR試料管に50mg秤量し、ペンタフルオロフェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン混合溶媒(混合比率:65/35w/w%)800μLに溶解して、UNITY INOVA500型NMR装置(バリアン社製)を用いて観測周波数500MHz、温度80℃の条件で1H-NMR測定を実施した。7?9.5ppm付近に観測される各構造単位由来のピーク面積比から、液晶ポリエステルの組成を分析した。
【0062】
(5)液晶ポリエステルおよび液晶ポリエステル組成物の水蒸気透過度
各実施例および比較例により得られたペレットを、熱風乾燥機を用いて150℃で3時間乾燥した後、ファナック製ファナックα30C射出成形機で射出成形し、70mm長×70mm幅×1mm厚(フィンゲート)の試験片を作製した。射出成形条件は、樹脂温度を融点+20℃、金型温度を130℃に設定し、充填下限圧+1MPaの圧力で行った。得られた試験片について、JISK7129(付属書C,2008年)に準拠し、GTR-30XATK(GTRテック)を用いて、(i)温度80℃および相対湿度40%、(ii)温度40℃および相対湿度90%の2条件で水蒸気透過度を測定した。
【0063】
(6)湿熱処理前後の曲げ強度
各実施例および比較例により得られたペレットを、熱風乾燥機を用いて150℃で3時間乾燥した後、ファナック製ファナックα30C射出成形機で射出成形し、7mm幅×127mm長×3.2mm厚の曲げ試験片を成形した。射出成形条件は、樹脂温度を液晶ポリエステルの融点+20℃、金型温度を130℃に設定し、充填下限圧+1MPaの圧力で行った。この試験片について、ASTMD790に準拠して曲げ強度を測定した。n数は6とし、各測定値から最大値および最小値を除いた4つの値の平均値を湿熱処理前の曲げ強度とした。また、この試験片を温度121℃、湿度100%、2atmの条件下(プレッシャークッカーテスト)で24時間静置して湿熱処理した後、ASTMD790に準拠して同様に曲げ強度を測定した。n数は6とし、各測定値から最大値および最小値を除いた4つの値の平均値を、湿熱処理後の曲げ強度とした。湿熱処理前後の曲げ強度測定値から、湿熱処理前の曲げ強度に対する湿熱処理後の曲げ強度の比を求めた。
【0064】
(7)湿熱処理後の比較トラッキング指数(CTI)
各実施例および比較例により得られたペレットを、熱風乾燥機を用いて150℃で3時間乾燥した後、ファナック製ファナックα30C射出成形機で射出成形し、80mm幅×80mm長×2mm厚の試験片を作製した。射出成形条件は上記(6)と同じとした。この試験片を温度121℃、湿度100%、2atmの条件下(プレッシャークッカーテスト)で24時間静置して湿熱処理した。湿熱処理後の試験片について、IEC60112に準拠して、0.1重量%塩化アンモニウム水溶液、白金電極を用い、試験片にトラッキングが生じる印加電圧(V:ボルト)を求めた。n数は6とし、各測定値から最大値および最小値を除いた4つの値の平均値を、この数値を比較トラッキング指数(V)とした。なお、比較トラッキング指数が高いほど、耐トラッキング破壊性能に優れることを示す。
【0065】
(8)芳香族または脂肪族アミンの共役酸の水溶液中におけるpKa
各実施例および比較例に用いた芳香族または脂肪族アミン化合物の水溶液を、塩酸を用いて25℃で滴定し、50%中和された時点におけるpH値からpKaを算出した。
【0066】
[実施例1]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸829重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル223重量部、ハイドロキノン88重量部、テレフタル酸266重量部、イソフタル酸66重量部および無水酢酸1072重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込んだ。同時に、p-ヒドロキシ安息香酸、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸およびイソフタル酸の合計100重量部に対して、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン0.1重量部を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が100分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、38であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に、反応容器内を1.0kg/cm^(2)(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a-1)のペレットを得た。
【0067】
この液晶ポリエステル(a-1)のTmは333℃、溶融粘度は28Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’-ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は60モル%であり、p-ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位(構造単位(I))と4,4’-ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))とハイドロキノン由来の構造単位(構造単位(III))の合計に対する構造単位(I)の割合は75モル%、構造単位(II)と構造単位(III)の合計に対する構造単位(II)の割合は60モル%、テレフタル酸由来の構造単位(構造単位(IV))およびイソフタル酸由来の構造単位(構造単位(V))の合計に対する構造単位(IV)の割合は80モル%であった。構造単位(II)および構造単位(III)の合計と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0068】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0221g/m^(2)・24hr・atm、0.0093g/m^(2)・24hr・atmであった。
【0069】
得られたペレットについて、前記(6)?(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0070】
[実施例2]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸829重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル223重量部、ハイドロキノン88重量部、テレフタル酸266重量部、イソフタル酸66重量部、および無水酢酸1072重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が85分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、36であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm^(2)(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a-2)のペレットを得た。
【0071】
この液晶ポリエステル(a-2)のTmは332℃、溶融粘度は27Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’-ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は60モル%であり、構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(III)の合計に対する構造単位(I)の割合は75モル%、構造単位(II)と構造単位(III)の合計に対する構造単位(II)の割合は60モル%、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計に対する構造単位(IV)の割合は80モル%であった。構造単位(II)および構造単位(III)の合計と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0072】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0262g/m^(2)・24hr・atm、0.0098g/m^(2)・24hr・atmであった。
【0073】
得られたペレットについて、前記(6)?(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0074】
[実施例3]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸763重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル309重量部、ハイドロキノン79重量部、テレフタル酸255重量部、イソフタル酸136重量部、および無水酢酸1159重量部(フェノール性水酸基合計の1.07当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、330℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が88分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、33であった。その後、重合温度を330℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm^(2)(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a-3)のペレットを得た。
【0075】
この液晶ポリエステル(a-3)のTmは312℃、溶融粘度は29Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’-ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は70モル%であり、構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(III)の合計に対する構造単位(I)の割合は70モル%、構造単位(II)と構造単位(III)の合計に対する構造単位(II)の割合は70モル%、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計に対する構造単位(IV)の割合は65モル%であった。構造単位(II)および構造単位(III)の合計と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0076】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0385g/m^(2)・24hr・atm、0.0118g/m^(2)・24hr・atmであった。
【0077】
得られたペレットについて、前記(6)?(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0078】
[比較例13]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸1271重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル214重量部、テレフタル酸191重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート221重量部および無水酢酸1280重量部(フェノール性水酸基合計の1.09当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、330℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が90分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、28であった。その後、重合温度を330℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm^(2)(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a-4)のペレットを得た。
【0079】
この液晶ポリエステル(a-4)のTmは326℃、溶融粘度は13Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、4,4’-ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))とエチレングリコール由来の構造単位の合計に対する構造単位(II)の割合は50%であり、構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(III)の合計に対する構造単位(I)の割合は89モル%、構造単位(II)と構造単位(III)の合計に対する構造単位(II)の割合は100モル%、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計に対する構造単位(IV)の割合は100モル%であった。構造単位(II)およびエチレングリコール由来の構造単位の合計と、テレフタル酸由来の構造単位(構造単位(IV))は実質的に等モルであった。
【0080】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0491g/m^(2)・24hr・atm、0.0143g/m^(2)・24hr・atmであった。
【0081】
得られたペレットについて、前記(6)?(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0082】
[比較例14]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸829重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル335重量部、ハイドロキノン22重量部、テレフタル酸266重量部、イソフタル酸66重量部、および無水酢酸1140重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が87分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、27であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm^(2)(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a-5)のペレットを得た。
【0083】
この液晶ポリエステル(a-5)のTmは335℃、溶融粘度は29Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’-ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は90モル%であり、構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(III)の合計に対する構造単位(I)の割合は75モル%、構造単位(II)と構造単位(III)の合計に対する構造単位(II)の割合は90モル%、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計に対する構造単位(IV)の割合は80モル%であった。構造単位(II)および構造単位(III)の合計と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0084】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0486g/m^(2)・24hr・atm、0.0140g/m^(2)・24hr・atmであった。
【0085】
得られたペレットについて、前記(6)?(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0086】
[比較例15]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸576重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル311重量部、ハイドロキノン122重量部、テレフタル酸439重量部、イソフタル酸23重量部、および無水酢酸1065重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が83分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、38であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm^(2)(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a-6)のペレットを得た。
【0087】
この液晶ポリエステル(a-6)のTmは330℃、溶融粘度は26Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’-ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は60モル%であり、構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(III)の合計に対する構造単位(I)の割合は60モル%、構造単位(II)と構造単位(III)の合計に対する構造単位(II)の割合は60モル%、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計に対する構造単位(IV)の割合は95モル%であった。構造単位(II)および構造単位(III)の合計と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0088】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0474g/m^(2)・24hr・atm、0.0138g/m^(2)・24hr・atmであった。
【0089】
得られたペレットについて、前記(6)?(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0090】
[比較例16]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸1037重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル148重量部、ハイドロキノン58重量部、テレフタル酸98重量部、イソフタル酸120重量部、および無水酢酸1072重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が90分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、38であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm^(2)(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a-7)のペレットを得た。
【0091】
この液晶ポリエステル(a-7)のTmは337℃、溶融粘度は30Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’-ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は60モル%であり、構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(III)の合計に対する構造単位(I)の割合は85モル%、構造単位(II)と構造単位(III)の合計に対する構造単位(II)の割合は60モル%、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計に対する構造単位(IV)の割合は45モル%であった。構造単位(II)および構造単位(III)の合計と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0092】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0453g/m^(2)・24hr・atm、0.0132g/m^(2)・24hr・atmであった。
【0093】
得られたペレットについて、前記(6)?(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0094】
[比較例17]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸829重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル186重量部、ハイドロキノン110重量部、テレフタル酸266重量部、イソフタル酸66重量部、および無水酢酸1072重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が77分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、26であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm^(2)(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a-8)のペレットを得た。
【0095】
この液晶ポリエステル(a-8)のTmは334℃、溶融粘度は28Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’-ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は50モル%であり、構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(III)の合計に対する構造単位(I)の割合は75モル%、構造単位(II)と構造単位(III)の合計に対する構造単位(II)の割合は50モル%、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計に対する構造単位(IV)の割合は80モル%であった。構造単位(II)および構造単位(III)の合計と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0096】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0495g/m^(2)・24hr・atm、0.0144g/m^(2)・24hr・atmであった。
【0097】
得られたペレットについて、前記(6)?(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0098】
[実施例9]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸829重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル223重量部、ハイドロキノン88重量部、テレフタル酸266重量部、イソフタル酸66重量部および無水酢酸1072重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込んだ。同時に、p-ヒドロキシ安息香酸、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸およびイソフタル酸の合計100重量部に対して、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノプロパン0.1重量部を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が100分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、37であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm^(2)(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a-9)のペレットを得た。
【0099】
この液晶ポリエステル(a-9)のTmは333℃、溶融粘度は27Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’-ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は60モル%であり、構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(III)の合計に対する構造単位(I)の割合は75モル%、構造単位(II)と構造単位(III)の合計に対する構造単位(II)の割合は60モル%、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計に対する構造単位(IV)の割合は80モル%であった。構造単位(II)および構造単位(III)の合計と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0100】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0244g/m^(2)・24hr・atm、0.0096g/m^(2)・24hr・atmであった。
【0101】
得られたペレットについて、前記(6)?(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0102】
[比較例18]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸829重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル223重量部、ハイドロキノン88重量部、テレフタル酸266重量部、イソフタル酸66重量部および無水酢酸1072重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込んだ。同時に、p-ヒドロキシ安息香酸、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸およびイソフタル酸の合計100重量部に対して、トリブチルアミン0.1重量部を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が92分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、26であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm^(2)(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a-10)のペレットを得た。
【0103】
この液晶ポリエステル(a-10)のTmは332℃、溶融粘度は27Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’-ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は60モル%であり、構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(III)の合計に対する構造単位(I)の割合は75モル%、構造単位(II)と構造単位(III)の合計に対する構造単位(II)の割合は60モル%、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計に対する構造単位(IV)の割合は80モル%であった。構造単位(II)および構造単位(III)の合計と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0104】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0440g/m^(2)・24hr・atm、0.0128g/m^(2)・24hr・atmであった。
【0105】
得られたペレットについて、前記(6)?(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0106】
[実施例11]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸829重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル223重量部、ハイドロキノン88重量部、テレフタル酸266重量部、イソフタル酸66重量部および無水酢酸1072重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込んだ。同時に、p-ヒドロキシ安息香酸、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸およびイソフタル酸の合計100重量部に対して、N,N,N’,N’-テトラメチルグアニジン0.1重量部を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が95分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、27であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm^(2)(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a-11)のペレットを得た。
【0107】
この液晶ポリエステル(a-11)のTmは333℃、溶融粘度は26Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’-ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は60モル%であり、構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(III)の合計に対する構造単位(I)の割合は75モル%、構造単位(II)と構造単位(III)の合計に対する構造単位(II)の割合は60モル%、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計に対する構造単位(IV)の割合は80モル%であった。構造単位(II)および構造単位(III)の合計と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0108】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0462g/m^(2)・24hr・atm、0.0134g/m^(2)・24hr・atmであった。
【0109】
得られたペレットについて、前記(6)?(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0110】
[実施例12]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸829重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル223重量部、ハイドロキノン88重量部、テレフタル酸266重量部、イソフタル酸66重量部および無水酢酸1072重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込んだ。同時に、p-ヒドロキシ安息香酸、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸およびイソフタル酸の合計100重量部に対して、N-メチルイミダゾール0.1重量部を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が77分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、48であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm^(2)(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a-12)のペレットを得た。
【0111】
この液晶ポリエステル(a-12)のTmは336℃、溶融粘度は29Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’-ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は60モル%であり、構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(III)の合計に対する構造単位(I)の割合は75モル%、構造単位(II)と構造単位(III)の合計に対する構造単位(II)の割合は60モル%、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計に対する構造単位(IV)の割合は80モル%であった。構造単位(II)および構造単位(III)の合計と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0112】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0477g/m^(2)・24hr・atm、0.0139g/m^(2)・24hr・atmであった。
【0113】
得られたペレットについて、前記(6)?(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0114】
[実施例13]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸829重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル223重量部、ハイドロキノン88重量部、テレフタル酸266重量部、イソフタル酸66重量部および無水酢酸1072重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込んだ。同時に、p-ヒドロキシ安息香酸、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸およびイソフタル酸の合計100重量部に対して、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン0.001重量部を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が100分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、28であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm^(2)(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a-13)のペレットを得た。
【0115】
この液晶ポリエステル(a-13)のTmは333℃、溶融粘度は28Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’-ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は60モル%であり、構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(III)の合計に対する構造単位(I)の割合は75モル%、構造単位(II)と構造単位(III)の合計に対する構造単位(II)の割合は60モル%、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計に対する構造単位(IV)の割合は80モル%であった。構造単位(II)および構造単位(III)の合計と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0116】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0468g/m^(2)・24hr・atm、0.0137g/m^(2)・24hr・atmであった。
【0117】
得られたペレットについて、前記(6)?(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0118】
[実施例14]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸829重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル223重量部、ハイドロキノン88重量部、テレフタル酸266重量部、イソフタル酸66重量部および無水酢酸1072重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込んだ。同時に、p-ヒドロキシ安息香酸、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸およびイソフタル酸の合計100重量部に対して、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン1.1重量部を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が78分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、49であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm^(2)(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a-14)のペレットを得た。
【0119】
この液晶ポリエステル(a-14)のTmは337℃、溶融粘度は30Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’-ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は60モル%であり、構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(III)の合計に対する構造単位(I)の割合は75モル%、構造単位(II)と構造単位(III)の合計に対する構造単位(II)の割合は60モル%、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計に対する構造単位(IV)の割合は80モル%であった。構造単位(II)および構造単位(III)の合計と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0120】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0465g/m^(2)・24hr・atm、0.0135g/m^(2)・24hr・atmであった。
【0121】
得られたペレットについて、前記(6)?(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0122】
[実施例15]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸829重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル223重量部、ハイドロキノン88重量部、テレフタル酸266重量部、イソフタル酸66重量部および無水酢酸1072重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込んだ。同時に、p-ヒドロキシ安息香酸、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸およびイソフタル酸の合計100重量部に対して、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-ジアミノベンゼン0.1重量部を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が81分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、47であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm^(2)(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a-15)のペレットを得た。
【0123】
この液晶ポリエステル(a-15)のTmは334℃、溶融粘度は29Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’-ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は60モル%であり、構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(III)の合計に対する構造単位(I)の割合は75モル%、構造単位(II)と構造単位(III)の合計に対する構造単位(II)の割合は60モル%、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計に対する構造単位(IV)の割合は80モル%であった。構造単位(II)および構造単位(III)の合計と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0124】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0411g/m^(2)・24hr・atm、0.0122g/m^(2)・24hr・atmであった。
【0125】
得られたペレットについて、前記(6)?(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0126】
[比較例19]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸912重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル410重量部、テレフタル酸274重量部、イソフタル酸91重量部および無水酢酸1235重量部(フェノール性水酸基合計の1.1当量)を仕込んだ。同時に、p-ヒドロキシ安息香酸、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、テレフタル酸およびイソフタル酸の合計100重量部に対して、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン0.1重量部を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が90分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、49であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm^(2)(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a-16)のペレットを得た。
【0127】
この液晶ポリエステル(a-16)のTmは327℃、溶融粘度は27Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’-ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は100モル%であり、p-ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位(構造単位(I))と、4,4’-ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の合計に対する構造単位(I)の割合は75モル%、テレフタル酸由来の構造単位(構造単位(IV))およびイソフタル酸由来の構造単位(構造単位(V))の合計に対する構造単位(IV)の割合は75モル%であった。構造単位(II)と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0128】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0483g/m^(2)・24hr・atm、0.0121/m^(2)・24hr・atmであった。
【0129】
得られたペレットについて、前記(6)?(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0130】
[比較例1]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器に6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸829重量部、ハイドロキノン273重量部、テレフタル酸83重量部、2,6-ナフタレンジカルボン酸378重量部、および無水酢酸1227重量部(フェノール性水酸基合計の1.15当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が93分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm^(2)(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a-17)のペレットを得た。
【0131】
この液晶ポリエステル(a-17)のTmは333℃、溶融粘度は28Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸由来の構造単位が55モル%、ハイドロキノン由来の構造単位が22.5モル%、テレフタル酸由来の構造単位が5モル%、および2,6-ナフタレンジカルボン酸由来の構造単位が17.5モル%であった。
【0132】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0597g/m^(2)・24hr・atm、0.0115g/m^(2)・24hr・atmであった。
【0133】
得られたペレットについて、前記(6)?(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0134】
[比較例2]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸912重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル410重量部、テレフタル酸274重量部、イソフタル酸91重量部、および無水酢酸1235重量部(フェノール性水酸基合計の1.1当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が90分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、53であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm^(2)(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a-18)のペレットを得た。
【0135】
この液晶ポリエステル(a-18)のTmは327℃で、溶融粘度は27Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’-ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は100モル%であり、p-ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位(構造単位(I))と、4,4’-ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の合計に対する構造単位(I)の割合は75モル%、テレフタル酸由来の構造単位(構造単位(IV))およびイソフタル酸由来の構造単位(構造単位(V))の合計に対して構造単位(IV)は75モル%であった。構造単位(II)と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0136】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0550g/m^(2)・24hr・atm、0.0126g/m^(2)・24hr・atmであった。
【0137】
得られたペレットについて、前記(6)?(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0138】
[比較例3]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸1132重量部、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸410重量部、および無水酢酸1169重量部(フェノール性水酸基合計の1.02当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、330℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が87分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、62であった。その後、重合温度を330℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm^(2)(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a-19)のペレットを得た。
【0139】
この液晶ポリエステル(a-19)のTmは320℃、溶融粘度は26Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、p-ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位(構造単位(I))が70モル%、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸由来の構造単位が30モル%であった。
【0140】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0619g/m^(2)・24hr・atm、0.0146g/m^(2)・24hr・atmであった。
【0141】
得られたペレットについて、前記(6)?(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0142】
[比較例4]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸829重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル223重量部、ハイドロキノン88重量部、テレフタル酸266重量部、イソフタル酸66重量部、および無水酢酸1072重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が100分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、23であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm^(2)(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a-20)のペレットを得た。
【0143】
この液晶ポリエステル(a-20)のTmは330℃、溶融粘度は28Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’-ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は60モル%であり、構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(III)の合計に対する構造単位(I)の割合は75モル%、構造単位(II)と構造単位(III)の合計に対する構造単位(II)の割合は60モル%、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計に対する構造単位(IV)の割合は80モル%であった。構造単位(II)および構造単位(III)の合計と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0144】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0538g/m^(2)・24hr・atm、0.0156g/m^(2)・24hr・atmであった。
【0145】
得られたペレットについて、前記(6)?(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0146】
実施例1?3、9、11?15および比較例1?4、13?19の評価結果を表1?2に示す。
【0147】
【表1】

【0148】
【表2】

【0149】
実施例1?3、9、11?15および比較例1?4、13?19で得られた液晶ポリエステルに対して、さらに充填材を加えて、液晶ポリエステル組成物を作製した。各実施例および比較例において用いた充填材を次に示す。
充填材(B)
(b-1) 日本電気硝子製 ミルドファイバー(40M-10A)
(b-2) 日本電気硝子製 ガラスチョップドストランド(ECS03T747H)
(b-3) 山口雲母工業製 マイカ(A-21)
(b-4) 富士タルク工業製 タルク(PKP-80)。
【0150】
[実施例17?19、25、27?31、33?36、比較例5?12、20?26]
東芝機械製TEM35B型2軸押出機(噛み合い型同方向)に、シリンダーC1(元込めフィーダー側ヒーター)?C6(ダイ側ヒーター)の、C3部にサイドフィーダーを設置し、C5部に真空ベントを設置した。ニーディングブロックをC2部、C4部に組み込んだスクリューアレンジを用い、液晶ポリエステル(a-1?a-20)を表3?4に示す配合量でホッパーから投入し、充填材(b-1?b-4)を液晶ポリエステル100重量部に対して表3?4に示す配合量でサイドフィーダーから投入し、シリンダー温度を液晶ポリエステルの融点+20℃に設定して溶融混練した。ダイからストランド状に吐出した液晶ポリエステル組成物を水冷バスにより冷却した後、ストランドカッターでペレタイズして液晶ポリエステル組成物のペレットを得た。得られたペレットについて、前記(5)?(7)に記載の方法で、液晶ポリエステル組成物の水蒸気透過度、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0151】
実施例17?19、25、27?31、33?36、比較例5?12、20?26の評価結果を表3?4に示す。
【0152】
【表3】

【0153】
【表4】

(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】削除
【請求項2】
樹脂温度を液晶ポリエステルの融点+20℃、金型温度を130℃に設定し、充填下限圧+1MPaの圧力で射出成形した70mm長×70mm幅×1mm厚の試験片を用いて、JISK7129(付属書C,2008年)に準拠して測定された、温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度が0.0411g/m^(2)・24hr・atm以下である液晶ポリエステルであり、
少なくとも2種のジオールに由来する構造単位を有し、ジオールに由来する全構造単位の合計100モル%中、下記構造単位(II)を55?85モル%含み、
下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成され、構造単位(I)が構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して65?80モル%であり、構造単位(II)が構造単位(II)および(III)の合計に対して55?85モル%であり、構造単位(IV)が構造単位(IV)および(V)の合計に対して50?90モル%であり、構造単位(II)および(III)の合計と(IV)および(V)の合計が実質的に等モルである液晶ポリエステルであって、下記(A)または(B)の製造方法によって得られる液晶ポリエステル。
(A)脱酢酸重縮合工程における温度200℃から270℃までの間の昇温時間を81分間以上88分間以下とする方法
(B)窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンであって、その共役酸の水溶液中における酸解離定数(pKa)が7.5以上10.5以下である芳香族または脂肪族アミンを、少なくとも脱酢酸重縮合反応開始までに、原料モノマーであるヒドロキシカルボン酸、ジオールおよびジカルボン酸の合計仕込み量100重量部に対して、0.01重量部以上1重量部以下の添加量で添加する方法
【化2】

【請求項3】
請求項2に記載の液晶ポリエステル100重量部に対して、充填材10?200重量部を含有する液晶ポリエステル組成物。
【請求項4】
ヒドロキシカルボン酸および/またはジオールにアシル化剤を反応させ、水酸基の少なくとも一部をアシル化した後、ジカルボン酸と脱酢酸重縮合反応させる液晶ポリエステルの製造方法であって、窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンを少なくとも脱酢酸重縮合反応開始までに添加する、
70mm長×70mm幅×1mm厚の試験片を用いて、JISK7129(付属書C,2008年)に準拠して測定された、温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度が0.05g/m^(2)・24hr・atm以下であり、少なくとも2種のジオールに由来する構造単位を有し、ジオールに由来する全構造単位の合計100モル%中、下記構造単位(II)を55?85モル%含む液晶ポリエステルの製造方法。
【化3】

【請求項5】
ヒドロキシカルボン酸および/またはジオールにアシル化剤を反応させ、水酸基の少なくとも一部をアシル化した後、ジカルボン酸と脱酢酸重縮合反応させる液晶ポリエステルの製造方法であって、窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンを少なくとも脱酢酸重縮合反応開始までに添加する、
70mm長×70mm幅×1mm厚の試験片を用いて、JISK7129(付属書C,2008年)に準拠して測定された、温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度が0.05g/m^(2)・24hr・atm以下であり、下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成され、構造単位(I)が構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して65?80モル%であり、構造単位(II)が構造単位(II)および(III)の合計に対して55?85モル%であり、構造単位(IV)が構造単位(IV)および(V)の合計に対して50?90モル%であり、構造単位(II)および(III)の合計と(IV)および(V)の合計が実質的に等モルである液晶ポリエステルの製造方法。
【化4】

【請求項6】
窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンの添加量が、ヒドロキシカルボン酸、ジオールおよびジカルボン酸の合計100重量部に対して、0.01重量部以上1重量部以下である請求項4または5に記載の液晶ポリエステルの製造方法。
【請求項7】
窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンが、脂肪族アミンである請求項4?6のいずれか記載の液晶ポリエステルの製造方法。
【請求項8】
窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンの共役酸の水溶液中における酸解離定数(pKa)が10.5以下である請求項4?7のいずれか記載の液晶ポリエステルの製造方法。
【請求項9】
請求項2に記載の液晶ポリエステルまたは請求項3に記載の液晶ポリエステル組成物からなる成形品。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-09-03 
出願番号 特願2013-44943(P2013-44943)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (C08G)
P 1 651・ 121- YAA (C08G)
P 1 651・ 537- YAA (C08G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大久保 智之  
特許庁審判長 岡崎 美穂
特許庁審判官 橋本 栄和
大熊 幸治
登録日 2017-04-28 
登録番号 特許第6131638号(P6131638)
権利者 東レ株式会社
発明の名称 液晶ポリエステルおよびその製造方法  
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