• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  D03D
管理番号 1355980
異議申立番号 異議2019-700487  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-11-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-06-19 
確定日 2019-10-04 
異議申立件数
事件の表示 特許第6438692号発明「医療用布帛」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6438692号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6438692号の請求項1?10に係る特許についての出願は、平成26年7月2日に特許出願され、平成30年11月22日にその特許権の設定登録がされた(平成30年12月19日に特許掲載公報の発行)。
その後、令和1年6月19日に、請求項1?10に係る特許について、特許異議申立人特許業務法人虎ノ門知的財産事務所(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。

2.本件発明
特許第6438692号の請求項1?10の特許に係る発明(以下、「本件発明1?10」といい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
【請求項1】
単糸繊度0.5dtex以下、総繊度7?120dtexである極細繊維を経糸及び/又は緯糸に配し、厚みが10?90μmである織物において、該経糸及び/又は該緯糸のフィラメントが50?1000回/mで撚ってあり、該経糸断面の重なり係数である経糸重なり度(TT)と該緯糸断面の重なり係数である緯糸重なり度(WW)の両方が0.9以上であり、かつ、針刺し前後の透水率が300cc/cm^(2)/min以下であることを特徴とする医療用布帛。
【請求項2】
前記経糸の撚数Twと前記緯糸の撚数Tfが、Tw≧(Tf+200)の関係を満たす、請求項1に記載の医療用布帛。
【請求項3】
前記高密度織物断面の経糸及び/又は緯糸の垂直方向の径(Dv)と水平方向の径(Dh)の比が1.5<Dh/Dv<10である、請求項1又は2に記載の医療用布帛。
【請求項4】
前記経糸のカバーファクター(CFw)と前記緯糸のカバーファクター(CFf)の和(CFw+CFf)が1600?2400である、請求項1?3のいずれか1項に記載の医療用布帛。
【請求項5】
前記経糸の単糸繊度Dw(dtex)と緯糸の単糸繊度Df(dtex)の比が2≦Dw/Df≦20である、請求項1?4のいずれか1項に記載の医療用布帛。
【請求項6】
前記経糸及び緯糸の織縮み率が20%以下である、請求項1?5のいずれか1項に記載の医療用布帛。
【請求項7】
筒状のシームレス布帛の形態にある、請求項1?6のいずれか1項に記載の医療用布帛。
【請求項8】
請求項1?7のいずれか1項に記載の医療用布帛を含むステントグラフト。
【請求項9】
請求項8に記載のステントグラフトが挿入されたカテーテル。
【請求項10】
請求項8に記載のステントグラフトを構成要素として含むステントデリバリー装置。

3.申立理由の概要
申立人は、以下の理由により、本件発明1?10に係る特許を取り消すべきである旨を主張している。
《理由》
本件発明1?10は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明1?10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法113条第2号に該当し、取り消すべきである。


《引用例一覧》
甲1.国際公開第94/21848号
甲2.特開2003-183948号公報
甲3.国際公開第2013/137263号
ここで、甲1?3は、特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に添付された甲第1号証?甲第3号証である。

4.甲1?3の記載
甲1?3の各々に記載された事項を甲1記載事項?甲3記載事項という。
(1)甲1記載事項
ア.「(57)要約
構成糸条の40重量%以上が単繊維繊度1.1デニール以下の単繊維で占められ、かつ全繊度が120デニール以下の、 同一または異なった長繊維糸条がそれぞれ経糸および緯糸に配された高密度織物において、該織物を構成する経糸および緯糸のそれぞれの断面重なり係数W_(p)およびW_(f)が下記(a)および(b)を同時に満足することを特徴とする高密度織物。
(a)1.30≧W_(p)≧1.10
(b)1.20≧W_(f)≧0.85
前記本発明の高密度織物は、薄くて軽いにもかかわらず引裂強力が大きく、しかも防水性能に優れているので、スキー衣料やウィンドブレーカー、アウトドア衣料、コート、作業着、手術着などの衣料用途のみならず、シャワーカーテンやテーブルクロス、傘地等の用途にも広く使用することができる。」(公報2枚目)
イ.「技術分野
本発明は高密度織物に関する。 さらに詳しくは、本発明は薄くて軽く、高い引裂強度と良好な防水性能(耐水圧)を有する高密度織物に関する。」(1頁3?5行)
ウ.「背景技術
従来より、高密度織物は防水性が要求される一般被服材料やスポーツ衣服用途あるいは布団の側地などの衣料材料として広く使用されている。
特にスポーツ衣料用途においては、 アウトドアスポーツの普及に伴なって、その需要が年々増えつつあり、防水性向上に対する要求が高くなってきている。
このような要求に応えるため、構成糸条の単繊維繊度を小さくするか、あるいは織密度を高めることにより、織物の緻密性を上げる方法が種々提案されている。
・・・
つまり、従来、実用上問題のない引裂強力を保持しながら、高い耐水圧を有する高密度織物、言い換えれば高い引裂強力と耐水圧の両者を具備した高密度織物を得ることはできなかった。

発明の開示
本発明の目的は、上記の二律背反性を克服し、引裂強力が低下することなく且つ良好な防水性能が付与された高密度織物を提供することにある。」(1頁6行?2頁21行)
エ.「本発明の高密度織物を構成する経糸および緯糸は、いずれも構成糸条の40重量%以上、 好ましくは65重量%以上が単繊維繊度1.1デニール以下、好ましくは0.5デニール以下の単繊維で占められ且つ全繊度が120デニール以下、好ましくは100デニール以下の長繊維糸条であることを前提とする。一方、単繊維繊度の下限は0.02デニールであるのが好ましく、0.05デニールであるのがより好ましい。また、全繊度の下限は10デニールであるのが好ましく、20デニールであるのがより好ましい。
単繊維繊度が1.1デニール以下の繊維の構成比率が40重量%未満の場合や、全繊度が120デニールを越える場合には織物の緻密性が低下して耐水圧が低くなる上、風合が硬くなり、防水性が要求される衣料用途には適さない。
長繊維糸条の40重量%未満の部分を構成する他の繊維の単繊維繊度は1.1デニールを越え3デニール以下であるのが好ましく、1.1デニールを越え2デニール以下であるのがさらに好ましい。」(4頁9?23行)
オ.「また、本発明の高密度織物を構成する経糸および緯糸の断面重なり係数W_(p)およびW_(f)は、下記(a)および(b)を満足する必要がある。
(a)1.30≧W_(p)≧1.10、好ましくは1.30≧W_(p)≧1.15
(b)1.20≧W_(f)≧0.85、好ましくは1.20≧W_(f)≧0.90
ここで、断面重なり係数W_(p)およびW_(f)は次のように定義される。
W_(p)=W_(1f)/W_(0f)
W_(f)=W_(1p)/W_(0p)
また、上記式中のW_(0f)、W_(1f)、W_(0p)、およびW_(1p)は下記のごとく定義される。
W_(0f):織物の最小繰り返し単位中の任意の緯糸の、長さ方向の2分線上に沿つた織物断面における、該最小繰り返し単位の占める幅、例えば平織の場合は経糸2本、2/2綾織の場合は経糸4本、5枚朱子の場合は経糸5本が占める幅をいう。ただし、該幅は、異なる3ケの最小繰り返し単位における平均値とする。
W_(1f):上記W_(0f)の断面において、最小繰り返し単位に含まれる各経糸の占める幅の和をいう。ただし、該幅の和は異なる3ケの最小繰り返し単位における平均値とする。
W_(0p):織物の最小繰り返し単位中の任意の経糸の、長さ方向の2線上に沿った織物断面における、該最小繰り返し単位の占める幅、例えば平織の場合は経糸2本、2/2綾織の場合は経糸4本、5枚朱子の場合は経糸5本が占める幅をいう。ただし、該幅は、異なる3ケの最小繰り返し単位における平均値 とする。
W_(1p):上記W_(0p)の断面において、最小繰り返し単位に含まれる各緯糸の占める幅の和をいう。ただし、該幅の和は異なる3ケの最小繰り返し単位における平均値とする。」(5頁3行?6頁3行)
カ.「本発明の織物は、経方向と緯方向のカバ一ファクター(CF)の合計が1800?3500、好ましくは2000?3500の範囲を有している。
この際、使用するマルチフィラメントヤーンの撚数は300T/m以下であることが好ましく、さらに好ましいのは実質的に無撚状態のフラットヤーンである。」(9頁2?7行)
キ.「実施例1
経糸として撚数S300T/mの100デニール288フィラメントのポリエステルマルチフィラメントのフラットヤーン、緯糸として64デニール144フィラメントのポリエステルマルチフィラメントの無撚のフラットヤーンを用い、第3図に示す、プレスローラーの径が150mm、バックローラの径が160mmのウオータージェットルーム織機を使用し、経糸1本あたりの張力を0.5g/デニールとして平織物を製織した。
この際の経糸密度は144本/inch、緯糸密度は117本/inchに設定した。
得られた織物を常法に従って精練、プレセッ卜した後、液流染色機にて染色し乾燥した。
乾燥後、下記成分を含む浴中に浸漬し、ピックアップ量を60重量%に調整した後熱セットを行ない、160℃でカレンダー加工して仕上げた。
フッ素系の撥水剤(アサヒガ一ドLS317;旭ガラス(株)製)
5.0wt%
フッ素系の撥水剤(アサヒガ一ドLS380K;旭ガラス(株)製)
0.3wt%
イソプロピルアルコール
3.0wt%
得られた高密度織物のW_(p)およびW_(f)はそれぞれ1.14、0.91であった。得られた織物の引裂強力、耐水圧を表1に示す。」(12頁18行?13頁14行)
ク.「発明の効果
本発明の高密度織物は、薄くて軽いにもかかわらず引裂強力が大きく、しかも防水性能に優れているので、スキー衣料やウインドブレ一カー、アウトドア衣料、コート、作業着、手術着などの衣料用途のみならず、シャワーカーテンやテーブルクロス、傘地等の用途にも広く使用することが可能である。」 (18頁1?6行)

(2)甲2記載事項
ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】合成繊維で構成された高密度織物の製造方法およびその織物に関するものである。詳しくは織物用経糸サイジング、糊付け技術に関するものであり、更に詳しくは品質品位の優れた糊付糸を得るだけでなく、糊付糸の糊皮膜、抱合力も良好であり、尚且つ効率的で安定し、経済性に優れたサイジング、糊付けの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来からポリエステル、ナイロンマルチフィラメントなどの合成繊維を使った高密度織物が製造、商品化され広く消費者に利用されている。該高密度織物は優れた透湿性、耐水圧、引裂き強力を有し、尚且つソフトで柔軟な風合いを有しており、取り分けスポーツ衣料分野への用途展開はめざましいものである。高密度織物は比較的、単糸繊度の細いマルチフィラメントを使用し、且つカバーファクターと呼ばれる織物の経糸、緯糸の単位密度間のすきまの度合いを示す係数を2000から3000クラスの高密度に製織することによって得ることが出来る。しかしながら、優れた透湿性、耐水圧、引裂き強力を有した高密度織物を得ることは容易なことでなく、高密度織物の規格設計も含めて、甘撚撚糸、経糸糊付、整経、製織など各工程において高い技術力が要求される。例えば、規格設計においては経糸と緯糸のカバーファクターの比を5:5から6:4にする、経糸を無撚で製織する、緯糸の打ち込みを多くする、緯糸の繊度を経糸の繊度よりも太くする、製織においては経糸張力を上げて緯糸挿入する、閉口タイミングを早くする、織機レイアウトにおいて間丁を短くする、また織前を短くするなど多くのポイントを有する。
【0003】しかしながら、ポリエステル、ナイロンマルチフィラメントなどの合成繊維で構成された高密度織物の製造方法において、規格設計および製織に関する技術的な知見は多いが、経糸のサイジング、糊付けに関する知見は少なく、また特許開示例も無い。そして、規格設計および製織技術よりもサイジング、糊付けの良し悪しによって製織性が左右されることを発見した。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明者の課題は、合成繊維で構成された高密度織物の製造方法に関するものであり、詳しくは織物を構成する経糸サイジング、糊付け技術に関するものであり、品質品位の優れた糊付糸を得るだけでなく、糊付糸の糊皮膜、抱合力も良好であり、尚且つ効率的で安定し、経済性に優れたサイジング或いは糊付け、整経および製織が可能な製造方法を提供することにある。」
イ.「【0007】以下本発明について詳細に説明する。本発明の合成繊維で構成された高密度織物は経糸と緯糸のカバーファクターの総和が2000から3000であり、経糸および緯糸のトータル繊度が40デシテックスから170デシテックス且つ単糸繊度が1デシテックス以下であることが望ましい。カバーファクターとは単位密度間のすきまの程度を表す係数であり、カバーファクター値が高いと隙間が小さく、つまり緻密性が高いことを示す。優れた防水性を得るためには、耐水圧が800kPa、さらに好ましくは1000kPaが必要であり、これらを満足させるためにはカバーファクターが2000以上必要である。しかしながら、3000を越えると風合いが硬くなり好ましくない。またトータル繊度も緻密性を高めるためと風合いをソフトにするため比較的細いフィラメントが好ましく40デシテックス以上、170デシテックス以下が必要であり、さらに好ましくは50デシテックス以上、160デシテックス以下である。しかしながら、40デシテックス未満では織物の引裂き強力が弱いものとなり好ましくない。そして、単糸繊度についても緻密性を高めるために1デシテックス以下、更に好ましくは0.7デシテックス以下である。フィラメント数は特に言及されないが、少なくとも70本以上が好ましく、より好ましくは100以上である。なお、単糸繊度の細い合成繊維の製造方法に関しては単成分紡糸や複合紡糸のいずれを採用してもかなわないが、製造コストや環境問題から直接紡糸法が好ましく採用される。」
ウ.「【0008】本発明の高密度織物を構成する経糸は無撚若しくは撚係数が5000以下の甘撚を施していることが必要である。高密度織物は染色工場にて通常、カレンダー工程にて織物を押圧し、繊維を偏平化させることによって組織間の隙間を小さくする。従って、経糸の撚数が高くなると繊維の集束性が増し、カレンダー工程において繊維が偏平化しにくくなるため、撚数は低いことが好ましく、より好ましい範囲は無撚若しくは撚係数が3000以下である。説明するまでもないが、繊維をより偏平化させるべく緯糸の撚数も無撚、若しくは撚係数が5000以下の甘撚糸が好ましい。そして、甘撚を施す際にはアップツイスターに分類されるイタリア撚糸機、ラージアップツイスター、ダウンツイスターに分類されるリング撚糸機、合撚機、またはダブルツイスターなどの一般の撚糸機を使用して製織準備され、取り分け汎用性に優れ、取り扱いが簡単な合撚機や生産性に優れたダブルツイスターが好ましく利用される。なお、無撚で製織する際には合成繊維に混繊交絡を施すことが好ましく、混繊交絡度については20ケ/M以上、100ケ/M以下が好ましく、より好ましくは40ケ/M以上、80ケ/M以下であり、この範囲内においては撚糸、製織工程での工程通過性になんら問題は起きることは無い。しかし、100ケ/Mを越えると風合い硬化と好ましくないムラ外観をもたらし、好ましくない。混繊交絡手段についてはエアー交絡ノズルが好ましく、インターレーサーノズルやタスランノズルなどが好適である。」
エ.「【0019】
【実施例】(実施例1)ポリエチレンテレフタレートセミダルレジンを使用し、溶融紡糸によって得られた未延伸糸を延伸機で延伸し84デシテックス360フィラメント丸断面の延伸糸を得た。次いで、経糸用として該延伸糸に村田機械(株)製309型ダブルツイスターを用いてS撚り方向に撚数300T/Mで撚糸を行った。次いで、(株)ヤマダ製の一本糊付機YS-6型にて速度200M/分、乾燥温度70℃、糊液温度40℃、付着量を5.5重量%に設定し糊付けを行った。なお、糊剤は互応化学工業(株)製のアクリル酸エステル共重合体アンモニウム塩タイプのプラスサイズJ-60を用い、平滑剤、柔軟材、浸透剤として互応化学工業(株)製のサイテックスK-380(有効成分25%)、サイテックスT-190(同35%)、サイテックス24(同40%)を添加し、帯電防止剤として大日本インキ科学工業(株)製のAS-22(同35%)を用い、夫々2%、2%、0.2%、0.2%添加し、糊剤濃度は8%、糊剤粘度が2mPasであった。また、糊付糸の抱合力試験機による抱合力回数は193回であった。次いで得られた糊付糸を(有)スズキワーパー製NAS SUPER-130W型を用いて筬入巾130cm、経糸本数7412本で整経を行った。差し入れの後、津田駒工業(株)製ウオータジェットルームZW-150タイプにビームを仕掛けた後、緯糸として先程の84デシテックス360フィラメント丸断面の無撚の延伸糸を打ち込みヒラ組織にて製織した。製織性は非常に良好であり、毛羽発生による経糸切れは問題にならない程度であった。また整経工程においても静電気発生、糊落ちなど特に大きな問題は無かった。そして、得られた生機品質は高いものであり、生機密度は(148本/in,94本/in)であった。該生機を通常のリラックス精錬、染色、仕上げ工程に通し、染色加工布を得た。該染色加工布の耐水圧は12.0kPa、引裂き強力は経糸方向1850cN、緯糸方向1140cNであり、スポーツ用途に好適なポリエステルマルチフィラメント高密度織物であった。結果を表1に示す」

(3)甲3記載事項
ア.「技術分野
[0001] 本発明は、体内埋め込み型資材として好適な極細ポリエステル繊維に関する。また、本発明は、ロープロファイル(細径)型ステントグラフト用布帛として好適な筒状シームレス織物に関する。
背景技術
[0002] ポリエチレンテレフタレート(以下、PETとも略記する。)繊維は、ステントグラフト用布帛や人工血管等体内埋め込み型医療機器の構成材料として広く活用されている。・・・
[0003] しかしながら、現行のステントグラフトは小さく折り畳めず太いカテーテル径のものにしか挿入できないため、動脈の細い女性や日本人等のアジア人には適応できないケースが多い。このような背景から、ステントグラフトの細径化のニーズが高まっており、例えば胸部では最大内径50mmのステントグラフトを18フレンチ(内径6mm)以下のカテーテルに挿入できることが求められている。・・・従って、ステントグラフト用布帛の厚みを薄くするには、PET繊維の布帛の厚みを薄くすることが有効であり、そのためには布帛を構成するPET繊維の総繊度及び単糸繊度を細くすること、即ち極細化することが必要である。
・・・
[0006] 一方、以下の特許文献1?3には、直接溶融紡糸法によって得られる直紡型極細PET繊維が開示されている。・・・
また、血管の代替材料であるステントグラフトの場合、血液漏れがないことは必須性能であり、血液漏れのない布帛に仕立てるには、例えば、織加工の場合、織組織を高密度化する必要がある。しかしながら、特許文献1?3に記載された直紡型極細PET繊維は、シート状の織物の加工でさえ工程上で糸切れや毛羽が発生し、高密度化が難しく、特に、筒状のシームレス織物で高密度化を実現することは極めて困難であった。
以上の理由から、細径型ステントグラフト用の布帛の構成繊維として生物学的安全性に優れ、かつ細さと強度を兼備する極細ポリエステル繊維はこれまで得られていない。またステントグラフトの細径化ニーズを満足する薄さと強度を両立する布帛も得られていないのが実情である。
・・・」
イ.「発明が解決しようとする課題
[0008] 本発明が解決しようとする課題は、体内埋め込み型資材として必要な高い生物学的安全性と破裂強度を有する布帛を構成することができ、かつ、高い成形加工性を兼備する極細PET繊維を提供すること、また、高い生物学的安全性、厚みの薄さと十分な破裂強度を兼備する筒状シームレス織物を提供することである。」
ウ.「[0024] 本発明の極細ポリエステル繊維の総繊度は、ステントグラフト用布帛の薄膜化と破裂強度を両立するという観点から、7dtex以上120dtex以下である必要がある。総繊度とは、単糸フィラメント1本あたりの繊度と総フィラメント数の積である。尚、ここでステントグラフトが用いられる血管で最も太いのは、胸部大動脈であり通常内径40?50mm程度である。前述のとおり胸部大動脈では最大内径50mmのステントグラフトを18フレンチ(内径6mm)以下のカテーテルに挿入できることが求められているが、直径6mmの孔を通過することができる内径50mmの筒状の布帛の厚みは最大で90μmであることが本発明者らのこれまでの検討により明らかになっており、この厚みは筒状布帛の内径が変化しても大きく変わることはないので、本発明の極細ポリエステル繊維を特定するにおいては、布帛の厚み90μm以下を基準とする。
[0025] 極細ポリエステル繊維の総繊度が7dtex未満であると布帛の厚みは薄くなり、ステントグラフトの細径化ニーズに適うが、製織加工をはじめとする成形加工工程において毛羽や糸切れが多発する等工程通過性に劣り、布帛の破裂強度低下にもつながる。また、極細ポリエステル繊維の総繊度が120dtexを超えると例え単糸繊度が0.5dtex以下であっても布帛の厚みが90μmを超え、例えば、内径50mmの筒状の布帛とした時に直径6mmの孔(内径6mmのカテーテルを想定)を通過することができない。布帛の薄膜化と破裂強度を両立するという観点から、極細ポリエステル繊維の総繊度は、10dtex以上110dtex以下が好ましく、より好ましくは15dtex以上、100dtex以下である。」
エ.「[0026] 一方、本発明の極細ポリエステル繊維の単糸繊度は、ステントグラフト用布帛の極薄化の観点から、0.5dtex以下であることが必要である。ここで、単糸繊度とは単糸フィラメント1本あたりの繊度である。単糸繊度が0.5dtexを超えると例え総繊度が120dtex以下であっても布帛の厚みを90μm以下に薄膜化することは困難である。また、単糸繊度が0.5dtex以下になると血管内皮細胞との親和性が増すことで血管壁組織と布帛との一体化が進み、ステントグラフトの血管内での移動や脱落防止が期待できる。また、血管壁組織と布帛との一体化は、布帛の体液との直接接触を妨げるので、体内での加水分解抑制効果が期待でき、引いては体内での長期耐久性が期待できる。布帛の薄膜化と細胞親和性の観点から極細ポリエステル繊維の単糸繊度は好ましくは0.4dtex以下、より好ましくは0.3dtex以下である。単糸繊度の下限に特に限定はないが、織編加工等の後処理工程性と布帛の破裂強度発現の観点から0.01dtex以上が好ましく、より好ましくは0.03dtex以上である。」
オ.「[0032] 本発明の細くて強い極細ポリエステル繊維の特徴を活かせる用途の一つが、薄さと破裂強度との両立、並びに血液漏れ防止等が求められるステントグラフト用布帛である。ステントグラフト用布帛として十分な実用性能を満たす為には、総繊度が7dtex以上120dtex以下であって、単糸繊度が0.5dtex以下の極細ポリエステル繊維を20重量%以上含み、かつ、下記(a)?(d):
(a)筒状のシームレス織物の厚みが10μm以上90μm以下であり、
(b)筒状のシームレス織物の外径が6mm以上50mm以下であり、
(c)針刺し前後の透水率が300cc/cm^(2)/min以下であり、
(d)破裂強度が100N以上である、
を満足する筒状のシームレス織物であることが必要である。」
カ.「[0035] 本発明のシームレス織物の厚みは、細径化の観点から10μm以上90μm以下であり、好ましくは15μm以上80μm以下であり、より好ましくは20μm以上70μm以下である。ここで、織物の厚みは、筒状織物の周方向(径により任意)、長さ方向(10cm?30cm)の範囲内で任意に選択された10箇所の布帛の厚みを厚みゲージを用いて測定した値の平均値で定義される。布帛の厚みが90μmを超えると、例えば、内径50mmの筒状織物とした時に直径6mmの孔を通過することができない。他方、布帛の厚みが10μmよりも薄くなると十分な破裂強度を保持することができない。・・・
[0036] 厚みバラツキが-15%より大きいと、布帛の厚み平均値が90μm以下であっても直径6mmの孔を通過することができない場合がある。また、厚みバラツキが15%を超える部分は厚みが薄く、破裂強力や透水防止性能が損なわれる。厚みバラツキZはより好ましくは±12%以内、最も好ましくは±10%以内である。
本発明のシームレス織物の外径は、ステントグラフトが用いられる血管の内径に依存し、6mm以上50mm以下である。
本発明の筒状のシームレス織物は針刺し前後の透水率は300cc/cm^(2)/min以下である。布帛の透水率は血液漏れ防止の指標となり、透水率が300cc/cm^(2)/min以下であることで、布帛壁面からの血液漏れを抑えられる。一方、ステントグラフト用布帛は、金属製のステントと縫合糸で縫い合わせることで最終製品であるステントグラフトに仕上げるが、その際布帛に大きな針孔が開くと、そこから血液漏れが生じる。即ち、ステントグラフト用布帛の実用性能としては針を刺した後の透水率も300cc/cm^(2)/min以下であることが必要である。ここで、針刺し後の透水率は、テーパー形状の3/8ニードル針を用い、任意で1cm^(2)当り10回数針を通した後に測定される値である。本発明の筒状シームレス織物は、極細ポリエステル繊維が用いられているため、織組織において単糸フィラメントが扁平に押し広げられ経糸と緯糸交差点の隙間が埋まり、針刺し前の透水率が低く抑えられる。また、針刺し後の透水率に関して、透水率抑制の目的で単糸径が数十μm以上の通常太さのPET繊維を高密度に製織した布帛や強くカレンダープレスされた布帛は、布帛を構成する繊維が強く拘束されている(繊維単独の運動性が抑制されている)ので、繊維が針が通り抜ける際に移動した後に元の位置に戻りにくく、針刺し後に針孔が開いたままに残ってしまう。一方、本発明の筒状シームレス織物は、多くの極細フィラメントによって構成された極細ポリエステル繊維が用いられているので、針孔が残り難く、針刺し後の透水率を300cc/cm^(2)/min以下に抑制することができる。また、本発明の筒状シームレス織物を構成する極細ポリエステル繊維に前述のとおり特定のミクロクリンプ屈曲点を持たせることにより、通常であれば繊維の運動性を抑制するような織密度の布帛であっても経糸と緯糸の交絡点間に繊維の運動性に自由度が生まれ、針が通り抜ける際に繊維が押し広げられても、元の構造に戻りやすいので、針刺し後の透水率抑制効果は顕著となる。実用性能の観点から、本発明の筒状シームレス織物の針刺し前後の透水率は好ましくは250cc/cm^(2)/min以下、より好ましくは200cc/cm^(2)/minである。」
キ.「[0040] 本発明の好ましい態様としてのステントグラフトは、カテーテルに挿入されて血管内で移送される。本発明のステントグラフトは、布帛の厚みが90μm以下と薄くかつ柔軟性が高いので、細い径のカテーテルに挿入することができ、その結果血管内の移送が容易であり、血管壁を損傷するリスクが低減される。尚、カテーテルとしては、チューブタイプやバルーンタイプ等、従来技術のものが好適に使用される。また、本発明の細い径のカテーテルに挿入されたステントグラフトは、従来のデリバリーシステムを使用して血管内で移送、留置することができる。本発明の筒状シームレス織物をステントグラフト用布帛として用いた場合、ステントグラフトを細径化できるので、入院期間の短縮など患者の身体的・経済的負担を低減することができ、また、血管壁損傷等のリスクも低減することができる。更に動脈の細い女性やアジア人等、これまで経カテーテル的血管内治療適応から除外されていた症例に対しても適用範囲を広めることができる。」
ク.「[0051] また、本発明の筒状のシームレス織物の調製では、・・・
以上の方法で調製された筒状のシームレス織物は、縫合糸を用いてステントと組み合わせ、かつカテーテルに挿入しステントグラフトとして利用することができる。」
ケ.「産業上の利用可能性
[0075] 本発明の実質的にPET成分のみからなる極細ポリエステル繊維は、海島型極細繊維やポリマーブレンド型極細繊維のように海成分由来や溶剤由来の残存物に対する懸念がなく、かつステントグラフト用布帛や人工血管などの薄膜化ニーズや高い破裂強度要求に応えることができるのでステントグラフト用布帛や人工血管等の体内埋め込み型資材として好適に利用可能である。また本発明の筒状シームレス織物は、ステントグラフトを細径化できるので、入院期間の短縮など患者の身体的・経済的負担を低減することができ、また血管壁損傷等のリスクも低減することができる。更に動脈の細い女性やアジア人等、これまで経カテーテル的血管内治療適応から除外されていた症例に対しても適応範囲を広めることができる。」

5.判断
(1)本件発明1について
ア.甲1を主引用例とした場合
(ア)甲1発明
甲1記載事項(上記4.(1)ア.?ク.を参照)からみて、甲1には以下の甲1発明が記載されているといえる。
《甲1発明》
構成糸条の40重量%以上が単糸繊度が、0.02デニール?1.1デニールであり、かつ、全繊度が10デニール?120デニールである長繊維糸条を経糸及び緯糸に配した高密度織物において、使用するマルチフィラメントヤーンの撚数は300T/m以下であり、好ましくは実質的に無撚状態のフラットヤーンであって、
前記高密度織物を構成する経糸および緯糸のそれぞれの断面重なり係数W_(p)およびW_(f)が下記(a)および(b)を同時に満足し、スキー衣料やウィンドブレーカー、アウトドア衣料、コート、作業着、手術着などの衣料用途のみならず、シャワーカーテンやテーブルクロス、傘地等の用途にも広く使用することが可能である、高密度織物。
(a)1.30≧W_(p)≧1.10
(b)1.20≧W_(f)≧0.85
ここで、断面重なり係数W_(p)およびW_(f)は次のように定義される。
W_(p)=W_(1f)/W_(0f)
W_(f)=W_(1p)/W_(0p)
また、上記式中のW_(0f)、W_(1f)、W_(0p)、およびW_(1p)は下記のごとく定義される。
W_(0f):織物の最小繰り返し単位中の任意の緯糸の、長さ方向の2分線上に沿つた織物断面における、該最小繰り返し単位の占める幅、例えば平織の場合は経糸2本、2/2綾織の場合は経糸4本、5枚朱子の場合は経糸5本が占める幅をいう。ただし、該幅は、異なる3ケの最小繰り返し単位における平均値とする。
W_(1f):上記W_(0f)の断面において、最小繰り返し単位に含まれる各経糸の占める幅の和をいう。ただし、該幅の和は異なる3ケの最小繰り返し単位における平均値とする。
W_(0p):織物の最小繰り返し単位中の任意の経糸の、長さ方向の2線上に沿った織物断面における、該最小繰り返し単位の占める幅、例えば平織の場合は経糸2本、2/2綾織の場合は経糸4本、5枚朱子の場合は経糸5本が占める幅をいう。ただし、該幅は、異なる3ケの最小繰り返し単位における平均値 とする。
W_(1p):上記W_(0p)の断面において、最小繰り返し単位に含まれる各緯糸の占める幅の和をいう。ただし、該幅の和は異なる3ケの最小繰り返し単位における平均値とする。

(イ)甲1発明との対比、一致点、相違点
甲1発明の「長繊維糸条を経糸及び緯糸に配した高密度織物」は、本件発明1の「極細繊維を経糸及び/又は緯糸に配し」た「織物」に相当し、甲1発明の「スキー衣料やウィンドブレーカー、アウトドア衣料、コート、作業着、手術着などの衣料用途のみならず、シャワーカーテンやテーブルクロス、傘地等の用途にも広く使用することが可能である、高密度織物」と、本件発明1の「医療用布帛」とは、「布帛」という限りにおいて一致する。
ゆえに、本件発明1と甲1発明との一致点、相違点は以下のとおりである。
《一致点1》
極細繊維を経糸及び/又は緯糸に配した織物であって、経糸及び/又は該緯糸のフィラメントの撚りが所定値であり、経糸断面の重なり係数と該緯糸断面の重なり係数が所定値である、布帛。
《相違点1-1》
極細繊維(長繊維糸条)が、本件発明1では、「単糸繊度0.5dtex以下、総繊度7?120dtexである」のに対し、甲1発明では、「構成糸条の40重量%以上が単糸繊度が、0.02デニール?1.1デニールであり、かつ、全繊度が10デニール?120デニールである」点。
《相違点1-2》
経糸及び/又は該緯糸のフィラメントの撚りが、本件発明1では、「50?1000回/m」であるのに対し、甲1発明では、「300T/m以下であり、好ましくは実質的に無撚状態」である点。
《相違点1-3》
重なり係数が、本件発明1では、「経糸重なり度(TT)と該緯糸断面の重なり係数である緯糸重なり度(WW)の両方が0.9以上」であるのに対し、甲1発明では、「経糸および緯糸のそれぞれの断面重なり係数W_(p)およびW_(f)が下記(a)および(b)を同時に満足する。
(a)1.30≧W_(p)≧1.10
(b)1.20≧W_(f)≧0.85
ここで、断面重なり係数W_(p)およびW_(f)は次のように定義される。
W_(p)=W_(1f)/W_(0f)
W_(f)=W_(1p)/W_(0p)
また、上記式中のW_(0f)、W_(1f)、W_(0p)、およびW_(1p)は下記のごとく定義される。
W_(0f):織物の最小繰り返し単位中の任意の緯糸の、長さ方向の2分線上に沿つた織物断面における、該最小繰り返し単位の占める幅、例えば平織の場合は経糸2本、2/2綾織の場合は経糸4本、5枚朱子の場合は経糸5本が占める幅をいう。ただし、該幅は、異なる3ケの最小繰り返し単位における平均値とする。
W_(1f):上記W_(0f)の断面において、最小繰り返し単位に含まれる各経糸の占める幅の和をいう。ただし、該幅の和は異なる3ケの最小繰り返し単位における平均値とする。
W_(0p):織物の最小繰り返し単位中の任意の経糸の、長さ方向の2線上に沿った織物断面における、該最小繰り返し単位の占める幅、例えば平織の場合は経糸2本、2/2綾織の場合は経糸4本、5枚朱子の場合は経糸5本が占める幅をいう。ただし、該幅は、異なる3ケの最小繰り返し単位における平均値 とする。
W_(1p):上記W_(0p)の断面において、最小繰り返し単位に含まれる各緯糸の占める幅の和をいう。ただし、該幅の和は異なる3ケの最小繰り返し単位における平均値とする。」である点。
《相違点1-4》
布帛の用途、厚み、針刺し前後の透水率について、本件発明1は「医療用」であって、「厚みが10?90μm」であり、「針刺し前後の透水率が300cc/cm^(2)/min以下である」のに対し、甲1発明は「スキー衣料やウィンドブレーカー、アウトドア衣料、コート、作業着、手術着などの衣料用途のみならず、シャワーカーテンやテーブルクロス、傘地等の用途にも広く使用することが可能である」ものであって、厚み及び針刺し前後の透水率が特定されていない点。

(ウ)相違点の判断
a.相違点1-1について
1dtexは、1.111デニールであるから、甲1発明における「0.02デニール?1.1デニール」、「10デニール?120デニール」は、各々、「0.02dtex?1.22dtex」、「11.1dtexから133.3dtex」を意味しており、本件発明1の「単糸繊度0.5dtex以下、総繊度7?120dtexである」との数値範囲と部分的に重なっている。
しかしながら、甲1発明の長繊維糸条(極細繊維)の単糸繊度には、「構成糸条の40重量%以上」との要件が付されており、さらに、上記4.(1)エ.で摘記した「長繊維糸条の40重量%未満の部分を構成する他の繊維の単繊維繊度は1.1デニールを越え3デニール以下であるのが好ましく、1.1デニールを越え2デニール以下であるのがさらに好ましい。」との記載を踏まえると、甲1発明の長繊維糸条(極細繊維)は、1.1デニール(1.22dtex)を超える単糸繊度のフィラメントを含み得るものであって、これを0.5dtex以下に制限することには、その動機付けがなく、むしろ、阻害要因があるというべきである。
したがって、単糸繊度0.5dtex以下、総繊度7?120dtexであることが、甲2記載事項及び甲3記載事項であるか否かにかかわらず、甲1発明の長繊維糸条(極細繊維)を、単糸繊度0.5dtex以下、総繊度7?120dtexであるものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

そして、本件発明1は、上記相違点1-1に係る構成を発明特定事項としたことについて、本件特許明細書の段落【0023】に記載された「本実施形態の医療用布帛に使用する極細繊維の総繊度は、ステントグラフト用布帛の薄膜化と製織時に毛羽や糸切れの問題を発生させないために、7dtex以上120dtex以下であること必要がある。また、総繊度を120dtex以下にすることで、高密度の織物が製造することができる。」及び段落【0025】に記載された「一方、極細繊維の単糸繊度は、ステントグラフト用布帛の極薄化の観点から、0.5dtex以下であることが好ましい。ここで、単糸繊度とは単糸フィラメント1本あたりの繊度である。単糸繊度が0.5dtexを超えると、たとえ総繊度が120dtex以下であっても布帛の厚みを90μm以下に薄膜化することは困難である。」という技術的意味を有し、格別な作用効果を奏するものである。

b.相違点1-2について
撚りの単位である「回/m」と「T/m」は同義であるから、甲1発明における「300T/m以下であり、好ましくは実質的に無撚状態」は、本件発明1の「50?1000回/m」との数値範囲と部分的に重なっている。
しかしながら、「好ましくは実質的に無撚状態」である甲1発明における経糸及び緯糸のフィラメントの撚りについて、50回/m以上との下限値を設け、更に、300回/m以下との上限値を、1000回/mに引き上げることには、その動機付けがなく、むしろ、阻害要因があるというべきである。
したがって、経糸及び/又は該緯糸のフィラメントの撚りを、50?1000回/mとすることが、甲2記載事項及び甲3記載事項であるか否かにかかわらず、甲1発明の経糸及び緯糸のフィラメントの撚りを、50?1000回/mとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

そして、本件発明1は、上記相違点1-2に係る構成を発明特定事項としたことについて、本件特許明細書の段落【0026】に記載された「本実施形態の医療用布帛に使用する経糸及び/又は緯糸のフィラメントは製織前に50?1000回/mで撚っている必要があり、好ましくは50?750回/mであり、より好ましくは50?500回/mである。50回/m以上の撚数とすることで、平滑性を上げ、さらに引張りや曲げ等の応力が均一にフィラメントへかかるようになり、製織時の毛羽や糸切れの問題を減らし、工程安定性の向上に繋がる。1000回/m以下の撚数とすることで、織物上の経糸及び緯糸は扁平になりやすく、隣接する緯糸-緯糸間及び/又は経糸-経糸間の隙間が減り、透水率を低くすることができる。製織時は、経糸に糸同士の摩耗や金属との摩耗、引張や曲げ等の負荷が大きくかかるため、少なくとも経糸に撚糸を用いて、耐摩耗性、平滑性を向上させることが好ましい。さらに極細繊維は、単糸繊度が小さいため、製織時に毛羽や糸切れが起こりやすいので、撚糸をかけて工程安定性が向上させることが、より好ましい。」という技術的意味を有し、格別な作用効果を奏するものである。

c.相違点1-3について
本件発明1の重なり係数について、本件特許明細書の段落【0063】には「・・・例えば、経糸重なり度(TT)を測定する場合は、経糸断面を撮影する必要があり、緯糸の間を緯糸に沿って刃を入れる。その後、SEMにて一視野に4から6本程度のマルチフィラメントが見やすく収まる程度の倍率(倍率200倍)で断面写真を撮影した。
経糸重なり度(TT)、緯糸重なり度(WW)は、織物の経、緯方向の撮影した断面画像(図2)からX1、X2、Yの値を計測し、次式により算出した。
糸重なり度=(X1+X2)/Y
{式中、X1:任意の糸断面の幅、X2:X1に隣接する糸断面の幅、Y:X1とX2間の幅}。
経糸重なり度(TT)を測定する場合は、経糸断面画像から上記の計算式を用いて算出する。また、緯糸重なり度(WW)を測定する場合は、緯糸断面画像から上記の計算式を用いて算出する。」と説明されているところ、甲1発明における「経糸および緯糸のそれぞれの断面重なり係数W_(p)およびW_(f)」が、本件発明1の「経糸重なり度(TT)」及び「緯糸重なり度(WW)」と同義であると判断すべき証拠はない。
また、仮に、甲1発明における「経糸および緯糸のそれぞれの断面重なり係数W_(p)およびW_(f)」が、本件発明1の「経糸重なり度(TT)」及び「緯糸重なり度(WW)」と同義であるとしても、甲1発明における「(a)1.30≧W_(p)≧1.10」及び「(b)1.20≧W_(f)≧0.85」と、本件発明1の「緯糸重なり度(WW)の両方が0.9以上」とは、その数値範囲が部分的に重なっているだけであり、甲1発明における「W_(p)」及び「W_(f)」の双方の下限値について0.9以上とすることには、その動機付けがないというべきである。
したがって、経糸重なり度(TT)と該緯糸断面の重なり係数である緯糸重なり度(WW)の両方が0.9以上とすることが、甲2記載事項及び甲3記載事項であるか否かにかかわらず、甲1発明の重なり係数を「経糸重なり度(TT)と該緯糸断面の重なり係数である緯糸重なり度(WW)の両方が0.9以上」とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

そして、本件発明1は、上記相違点1-3に係る構成を発明特定事項としたことについて、本件特許明細書の段落【0030】に記載された「・・・透水率を低くするため、経糸重なり度(TT)、緯糸重なり度(WW)の両方が0.9以上であることがより好ましい。・・・」という技術的意味を有し、格別な作用効果を奏するものである。

d.相違点1-4について
本件発明1の「医療用布帛」は、本件特許明細書の段落【0001】?【0005】、【0018】等の記載からみて、ステントグラフトや人工血管等の体内埋め込み型資材として用いられるものであって、「厚みが10?90μmである」ことについては、本件特許明細書の段落【0023】に記載された「胸部大動脈では最大内径50mmのステントグラフトを18フレンチ(内径6mm)以下のカテーテルに挿入できることが求められているが、直径6mmの孔を通過することができる内径50mmの筒状の布帛の厚みは最大で90μmであることが本発明者らのこれまでの検討により明らかになっており、この厚みは筒状布帛の内径が変化しても大きく変わることはないので、本実施形態の極細繊維を特定するにおいては、布帛の厚み90μm以下を基準とする。」という技術的意味を有し、また、「針刺し前後の透水率」を発明特定事項としていることについては、本件特許明細書の段落【0037】に記載された「・・・布帛の透水率は血液漏れ防止の指標となり、透水率が300cc/cm^(2)/min以下であることで、布帛壁面からの血液漏れを抑えられる。一方、ステントグラフト用布帛は、金属製のステントと縫合糸で縫い合わせることで最終製品であるステントグラフトに仕上げるが、その際布帛に大きな針孔が開くと、そこから血液漏れが生じる。即ち、ステントグラフト用布帛の実用性能としては針を刺した後の透水率も300cc/cm^(2)/min以下であることが必要である。・・・」という技術的意味を有しており、格別な作用効果を奏するものである。
一方、甲1発明は、「手術着などの衣料用途」を含む用途に広く使用することが可能であるとされているものの、上記ステントグラフトや人工血管等の体内埋め込み型資材として用いるものと解すべき理由は、甲1には記載されていないし、これを示唆する記載もない。
さらに、甲1発明は、上記4.(1)ク.に摘記したように「薄くて軽いにもかかわらず引裂強力が大きく、しかも防水性能に優れている」ものであるとしても、その厚みを10?90μmという極薄いものとすべき理由や、その防水性能を「針刺し前後の透水率」で規定すべき理由は、甲1には記載されていないし、これを示唆する記載もない。
したがって、医療用の布帛であって、針刺し前後の透水率が300cc/cm^(2)/min以下であることが、甲2記載事項及び甲3記載事項であるか否かにかかわらず、甲1発明の用途を「医療用」とし、「厚みが10?90μmである」ものとし、「針刺し前後の透水率が300cc/cm^(2)/min以下である」とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

(エ)小括
本件発明1は、上記相違点1-1?1-4に係る事項を発明特定事項とすることにより、本件特許明細書の段落【0005】に記載された「高い織速度でも毛羽、糸切れがなく生産でき、低透水性で、厚みが薄い医療用布帛を提供する」という課題を解決し、上記(ウ)a.?d.で示した格別な作用効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲1記載事項?甲3記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ.甲2を主引用例とした場合
(ア)甲2発明
甲2記載事項(上記4.(2)ア.?エ.を参照)からみて、甲2には以下の甲2発明が記載されているといえる。
《甲2発明》
単糸繊度0.7dtex以下、トータル繊度40?170dtexである比較的細いフィラメントを経糸及び緯糸に配した高密度織物において、経糸及び緯糸は無撚若しくは撚係数が5000以下の甘撚を施している、スポーツ用途に好適な、高密度織物。

(イ)甲2発明との対比、一致点、相違点
甲2発明の「比較的細いフィラメントを経糸及び緯糸に配した高密度織物」は、本件発明1の「極細繊維を経糸及び/又は緯糸に配し」た「織物」に相当し、甲2発明の「スポーツ用途に好適な、高密度織物」と、本件発明1の「医療用布帛」とは、「布帛」という限りにおいて一致する。
ゆえに、本件発明1と甲2発明との一致点、相違点は以下のとおりである。
《一致点2》
極細繊維を経糸及び/又は緯糸に配した織物であって、経糸及び/又は該緯糸のフィラメントの撚りが所定値である、布帛。
《相違点2-1》
極細繊維(比較的細いフィラメント)が、本件発明1では、「単糸繊度0.5dtex以下、総繊度7?120dtexである」のに対し、甲2発明では、「単糸繊度0.7dtex以下、トータル繊度40?170dtexである」点。
《相違点2-2》
経糸及び/又は該緯糸のフィラメントの撚りが、本件発明1では、「50?1000回/m」であるのに対し、甲2発明では、「無撚若しくは撚係数が5000以下の甘撚を施している」点。
《相違点2-3》
重なり係数が、本件発明1では、「経糸重なり度(TT)と該緯糸断面の重なり係数である緯糸重なり度(WW)の両方が0.9以上」であるのに対し、甲2発明では、重なり係数の特定がない点。
《相違点2-4》
布帛の用途、厚み、針刺し前後の透水率について、本件発明1は「医療用」であって、「厚みが10?90μm」であり、「針刺し前後の透水率が300cc/cm^(2)/min以下である」のに対し、甲2発明は「スポーツ用途に好適な」ものであって、厚み及び針刺し前後の透水率が特定されていない点。

(ウ)相違点の判断
a.相違点2-1について
甲2発明の「単糸繊度0.7dtex以下、トータル繊度40?170dtexである」は、本件発明1の「単糸繊度0.5dtex以下、総繊度7?120dtexである」との数値範囲と部分的に重なっている。
しかしながら、甲2発明のトータル繊度(総繊度)について、上記4.(2)イ.で摘記した「またトータル繊度も緻密性を高めるためと風合いをソフトにするため比較的細いフィラメントが好ましく40デシテックス以上、170デシテックス以下が必要であり、さらに好ましくは50デシテックス以上、160デシテックス以下である。しかしながら、40デシテックス未満では織物の引裂き強力が弱いものとなり好ましくない。」との記載を踏まえると、甲2発明のトータル繊度(総繊度)の下限値を7dtexにすることには、その動機付けがなく、むしろ、阻害要因があるというべきである。
したがって、単糸繊度0.5dtex以下、総繊度7?120dtexであることが、甲1記載事項及び甲3記載事項であるか否かにかかわらず、甲2発明のトータル繊度(総繊度)の下限値を7dtexにすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

そして、本件発明1は、上記相違点2-1に係る構成を発明特定事項としたことについて、本件特許明細書の段落【0023】及び段落【0025】に記載された技術的意味を有し、格別な作用効果を奏するものである。

b.相違点2-2について
撚りの単位である「回/m」と「撚係数」は同義であるから、甲2発明における「無撚若しくは撚係数が5000以下の甘撚を施している」は、本件発明1の「50?1000回/m」との数値範囲と部分的に重なっている。
しかしながら、「無撚若しくは撚係数が5000以下の甘撚を施している」甲2発明における経糸及び緯糸のフィラメントの撚りについて、50回/m以上との下限値を設けることには、その動機付けがなく、むしろ、阻害要因があるというべきである。
したがって、経糸及び/又は該緯糸のフィラメントの撚りを、50?1000回/mとすることが、甲1記載事項及び甲3記載事項であるか否かにかかわらず、甲2発明の経糸及び緯糸のフィラメントの撚りを、50?1000回/mとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

そして、本件発明1は、上記相違点2-2に係る構成を発明特定事項としたことについて、本件特許明細書の段落【0026】に記載された技術的意味を有し、格別な作用効果を奏するものである。

c.相違点2-3について
甲2には、経糸重なり度や緯糸重なり度といった重なり係数に関する記載がなく、重なり係数について考慮することを示唆する記載もない。
したがって、経糸重なり度(TT)と該緯糸断面の重なり係数である緯糸重なり度(WW)の両方が0.9以上とすることが、甲1記載事項及び甲3記載事項であるか否かにかかわらず、甲2発明において、「経糸重なり度(TT)と該緯糸断面の重なり係数である緯糸重なり度(WW)の両方が0.9以上」とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

そして、本件発明1は、上記相違点2-3に係る構成を発明特定事項としたことについて、本件特許明細書の段落【0030】に記載された技術的意味を有し、格別な作用効果を奏するものである。

d.相違点2-4について
本件発明1の「医療用布帛」は、本件特許明細書の段落【0001】?【0005】、【0018】等の記載からみて、ステントグラフトや人工血管等の体内埋め込み型資材として用いられるものであって、「厚みが10?90μmである」ことについては、本件特許明細書の段落【0023】に記載された技術的意味を有し、また、「針刺し前後の透水率」を発明特定事項としていることについては、本件特許明細書の段落【0037】に記載された技術的意味を有しており、格別な作用効果を奏するものである。
一方、「スポーツ用途に好適な」ものである甲2発明を、上記ステントグラフトや人工血管等の体内埋め込み型資材として用いるものと解すべき理由は、甲2には記載されていないし、これを示唆する記載もない。
さらに、甲2発明において、その厚みを10?90μmという極薄いものとすべき理由や、その防水性能を「針刺し前後の透水率」で規定すべき理由は、甲2には記載されていないし、これを示唆する記載もない。
したがって、医療用の布帛であって、針刺し前後の透水率が300cc/cm^(2)/min以下であることが、甲1記載事項及び甲3記載事項であるか否かにかかわらず、甲2発明の用途を「医療用」とし、「厚みが10?90μmである」ものとし、「針刺し前後の透水率が300cc/cm^(2)/min以下である」とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

(エ)小括
本件発明1は、上記相違点2-1?2-4に係る事項を発明特定事項とすることにより、本件特許明細書の段落【0005】に記載された「高い織速度でも毛羽、糸切れがなく生産でき、低透水性で、厚みが薄い医療用布帛を提供する」という課題を解決し、上記(ウ)a.?d.で示した格別な作用効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、甲2発明及び甲1記載事項?甲3記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ.甲3を主引用例とした場合
(ア)甲3発明
甲3記載事項(上記4.(3)ア.?ケ.を参照)からみて、甲3には以下の甲3発明が記載されているといえる。
《甲3発明》
単糸繊度0.5dtex以下、総繊度7?120dtexである極細繊維を経糸及び/又は緯糸に配し、厚みが10?90μmである織物において、針刺し前後の透水率が300cc/cm^(2)/min以下である医療用布帛。

(イ)甲3発明との対比、一致点、相違点
甲3発明と本件発明1とを対比すると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
《一致点》
単糸繊度0.5dtex以下、総繊度7?120dtexである極細繊維を経糸及び/又は緯糸に配し、厚みが10?90μmである織物において、針刺し前後の透水率が300cc/cm^(2)/min以下である医療用布帛。
《相違点3-1》
経糸及び/又は該緯糸のフィラメントの撚りが、本件発明1では、「50?1000回/m」であるのに対し、甲3発明では、特定されていない点。
《相違点3-2》
重なり係数が、本件発明1では、「経糸重なり度(TT)と該緯糸断面の重なり係数である緯糸重なり度(WW)の両方が0.9以上」であるのに対し、甲3発明では、重なり係数の特定がない点。

(ウ)相違点の判断
a.相違点3-1について
甲3には、段落[0049]に「・・・本発明の極細ポリエステル繊維は、前述のとおり単糸間に嵩高性を付与し、単糸間空隙への細胞侵入を促すことが好ましく、その場合ウォータージェット又は仮撚加工処理が好ましい方法である。例えば、仮撚加工処理であれば、極細ポリエステル繊維に7個/cm以上のミクロクリンプ屈曲点を付与するためには、1mにつき2500回転以上、5000回転以下の撚りを掛けることが好ましく、2500回転未満では所定のミクロクリンプを付与できず、5000回転を超えると毛羽や糸切れが発生する。より好ましい仮撚処理条件は3000回転以上、4000回転以下である。」との仮撚処理については記載があるものの、経糸及び緯糸のフィラメントの撚りに関する記載がなく、当該撚りについて考慮することを示唆する記載もない。
したがって、経糸及び/又は該緯糸のフィラメントの撚りを、50?1000回/mとすることが、甲1記載事項及び甲2記載事項であるか否かにかかわらず、甲3発明の経糸及び緯糸のフィラメントの撚りを、50?1000回/mとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

そして、本件発明1は、上記相違点3-1に係る構成を発明特定事項としたことについて、本件特許明細書の段落【0026】に記載された技術的意味を有し、格別な作用効果を奏するものである。

b.相違点3-2について
甲3には、経糸重なり度や緯糸重なり度といった重なり係数に関する記載がなく、重なり係数について考慮することを示唆する記載もない。
したがって、経糸重なり度(TT)と該緯糸断面の重なり係数である緯糸重なり度(WW)の両方が0.9以上とすることが、甲1記載事項及び甲2記載事項であるか否かにかかわらず、甲3発明において、「経糸重なり度(TT)と該緯糸断面の重なり係数である緯糸重なり度(WW)の両方が0.9以上」とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

そして、本件発明1は、上記相違点3-2に係る構成を発明特定事項としたことについて、本件特許明細書の段落【0030】に記載された技術的意味を有し、格別な作用効果を奏するものである。

(エ)小括
本件発明1は、上記相違点3-1及び3-2に係る事項を発明特定事項とすることにより、本件特許明細書の段落【0005】に記載された「高い織速度でも毛羽、糸切れがなく生産でき、低透水性で、厚みが薄い医療用布帛を提供する」という課題を解決し、上記(ウ)a.及びb.で示した格別な作用効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、甲3発明及び甲1記載事項?甲3記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ.中括
以上のとおり、本件発明1は、甲1発明、甲2発明、甲3発明及び甲1記載事項?甲3記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本件発明2?10について
本件発明2?10は、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項として備えるものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、甲1発明、甲2発明、甲3発明及び甲1記載事項?甲3記載事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(3)大括
以上のとおり、請求項1?10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、同法第113条第2号の規定に該当することを理由に取り消されるべきものとすることはできない。

6.むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-09-26 
出願番号 特願2014-137143(P2014-137143)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (D03D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 春日 淳一  
特許庁審判長 井上 茂夫
特許庁審判官 高山 芳之
渡邊 豊英
登録日 2018-11-22 
登録番号 特許第6438692号(P6438692)
権利者 旭化成株式会社
発明の名称 医療用布帛  
代理人 石田 敬  
代理人 中村 和広  
代理人 齋藤 都子  
代理人 青木 篤  
代理人 古賀 哲次  
代理人 三間 俊介  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ