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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B32B
審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
管理番号 1355995
異議申立番号 異議2019-700579  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-11-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-07-23 
確定日 2019-10-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第6458910号発明「離型フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6458910号の請求項1?8に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6458910号(以下「本件特許」という。)の請求項1?8に係る特許についての出願は、2018年5月18日(優先権主張 2017年8月30日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成31年1月11日にその特許権の設定登録(特許掲載公報発行日:平成31年1月30日)がされ、その後、令和1年7月23日に、その特許に対し、特許異議申立人岩崎勇(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

2.本件発明
本件特許の請求項1?8に係る発明(以下「本件発明1?8」という。)は、それぞれ、本件特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
基材フィルムの少なくとも一方の面に離型層を有する離型フィルムであって、ヘイズ値が1.5?8.0%であり、かつ前記離型層が炭素数8以上のアルキル基を有する化合物を含む活性エネルギー線硬化性組成物の硬化層であり、前記基材フィルムが3層積層構造である、離型フィルム。
【請求項2】
前記炭素数8以上のアルキル基を有する化合物が、分子中にエチレン性不飽和基と炭素数8以上のアルキル基とを含む化合物である、請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項3】
活性エネルギー線硬化性組成物が、分子中に2?10個のエチレン性不飽和基を有しかつ炭素数8以上のアルキル基を有しない化合物を含有する、請求項1または2に記載の離型フィルム。
【請求項4】
常態剥離力(A)が1.5N/50mm以下、加熱剥離力(B)が2.0N/50mm以下、かつ前記常態剥離力と前記加熱剥離力との差(B-A)が1.3N/50mm以下である、請求項1?3のいずれかに記載の離型フィルム。
【請求項5】
前記離型層の表面自由エネルギーが20?35mJ/m^(2)である、請求項1?4のいずれかに記載の離型フィルム。
【請求項6】
基材フィルムの厚みが50μm未満である、請求項1?5のいずれかに記載の離型フィルム。
【請求項7】
基材フィルムがA層/B層/A層またはA層/B層/C層の3層積層構造である、請求項1?6のいずれかに記載の離型フィルム。
【請求項8】
基材フィルムの少なくとも一方の面に離型層を有する離型フィルムを製造する方法であって、前記離型フィルムのヘイズ値が1.5?8.0%であり、かつ炭素数8以上のアルキル基を有する化合物を含む組成物に活性エネルギー線を照射して硬化層とすることにより前記離型層を形成する工程を有する、離型フィルムの製造方法。」

3.申立理由の概要
申立人は、主引用例として特開2003-300283号公報(以下「甲1」という。)を、副引用例として特開2015-199329号公報(以下「甲2」という。)、特開2011-230289号公報(以下「甲3」という。)、特開2014-173065号公報(以下「甲4」という。)、特開2001-240775号公報(以下「甲5」という。)及び国際公開第2016/098779号(以下「甲6」という。)を提出し、
本件発明1、2、7、8は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当する旨、
本件発明1、2、6?8は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反する旨、
本件発明1、8は、甲1に記載された発明及び甲2?4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反する旨、
本件発明3は、甲1に記載された発明及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反する旨、
本件発明2、3は、甲1に記載された発明及び甲2?5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反する旨、
本件発明4は、甲1に記載された発明及び甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反する旨、
本件発明5は、甲1に記載された発明及び甲2、甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反する旨、
本件発明4?7は、甲1に記載された発明及び甲2?6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反する旨、それぞれ主張する。

4.当審の判断
(1)甲1に記載された発明
甲1(特に、【請求項1】、段落【0009】、【0017】?【0021】、実施例3の記載)には、以下の「甲1発明」が記載されている。
「基材フィルムの片面に離型層を設けた離型フィルムであって、
基材フィルムは、ポリエチレンテレフタレートからなるポリエステルAとポリエステルAに平均粒径0.2μmの酸化アルミニウムを20000ppm添加したポリエステルDからなるP層(3μm)と、前記ポリエステルAからなるQ層(44μm)と、前記ポリエステルAとポリエステルAに平均粒径0.7μmの炭酸カルシウムを20000ppm添加したポリエステルBからなるR層(3μm)の3層からなり、
離型層は、塗布剤(アシオレジンRA-80(アシオ産業(株)製))をトルエンで希釈したものを、基材フィルムにウェット厚みが12μmとなるように塗布し、120℃2分間の熱処理して得たものであり、
離型フィルムの離型層の表面の中心面平均粗さSRa(A)が3nm、その反対側の面の中心面平均粗さSRa(B)が13nmであり、
離型フィルムの剥離力が98mN/cmである、離型フィルム。」

(2)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明を対比すると、本件発明1の「離型層が炭素数8以上のアルキル基を有する化合物を含む活性エネルギー線硬化性組成物の硬化層」であり、離型フィルムの「ヘイズ値が1.5?8.0%」であるのに対し、甲1発明は、離型層が塗布剤(アシオレジンRA-80(アシオ産業(株)製))をトルエンで希釈したものを基材フィルムに塗布し、120℃2分間の熱処理したものであり、ヘイズ値について特定されていない点で相違し、その余で一致する。
イ 上記相違点について検討する。
本件発明1の離型フィルムは、「被転写膜の欠点検査を適切に行うことができること、離型フィルムの識別性が良好であること」(本件特許明細書の段落【0009】)を目的として、ヘイズ値を「1.5?8.0%」に調整するものである。このヘイズ値の範囲に調整された具体的な実施例としては、例えば本件特許明細書の実施例4(段落【0117】?【0120】、【0132】、【0133】、【0144】?【0146】)の場合、基材フィルムはA層/B層/A層の3層構造のポリエステルフィルムで、A層原料を固有粘度が0.60のポリエチレンテレフタレート(PET)に重合時に、平均粒子径が1.1μmの凝集シリカを0.08質量%添加したもの、B層原料を固有粘度が0.58のポリエチレンテレフタレート(PET)に重合時に、平均粒子径が1.0μmの凝集シリカを0.02質量%添加したものとし、A層/B層/A層の厚みが1/18/1(μm)の総厚み20μmであり、この3層構造のポリエステルフィルムに、重合性長鎖アルキル化合物(α1)を25質量部、重合性化合物(β)としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ダイセルサイテック(株)の商品名「DPHA」)を75質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア184)を10質量部仕込み100℃に昇温してから1時間混合して得た活性エネルギー線硬化性組成物を塗布して、200nmの離型層を形成したものであり、得られた離型フィルムのヘイズ値は、2.5%である。
一方、甲1発明の離型フィルムは、ポリエチレンテレフタレートからなるポリエステルAとポリエステルAに平均粒径0.2μmの酸化アルミニウムを20000ppm添加したポリエステルDからなるP層(3μm)と、前記ポリエステルAからなるQ層(44μm)と、前記ポリエステルAとポリエステルAに平均粒径0.7μmの炭酸カルシウムを20000ppm添加したポリエステルBからなるR層(3μm)の3層からなる基材フィルムに、塗布剤(アシオレジンRA-80(アシオ産業(株)製))をトルエンで希釈したものを、基材フィルムにウェット厚みが12μmとなるように塗布し、120℃2分間の熱処理して、離型層を形成したものであるが、基材フィルムに粒子を含有するものであるからといって、甲1発明の基材フィルムに離型層を塗布して得た離型フィルムのヘイズ値が、本件発明1の「1.5?8.0%」の範囲内のものとなるとは、必ずしもいえるものではない。
この点について、申立人は、特許異議申立書(27頁10?15行目)において、甲1には、「本件特許請求項1の構成要件(B)の「ヘイズ値が1.5?8.0%であ」ることについて直接的には記載されていないが、本件特許明細書に開示される「ヘイズ値」を「1.5?8.0%」に調節するための手段を満足する実施例がズバリ記載されているから、前記実施例に記載される離型フィルムは、「ヘイズ値が1.5?8.0%」の範囲を満足する蓋然性がある。従って、同号証には本件特許請求項1の構成要件(B)が実質的に記載されている。」と主張している。しかし、本件発明1の例えば上記実施例4の離型フィルムと甲1発明の離型フィルムとでは、基材フィルムの厚み(上記実施例4が20μmであるのに対し甲1発明はP層からR層の合計が50μm)、離型層の材料(上記実施例4が活性エネルギー線硬化性組成物からなるものであるのに対し甲1発明は加熱により硬化する組成物によるもの)、離型層の厚さ(上記実施例4が200nmであるのに対し甲1発明は12μm)において相違しており、樹脂の材料と厚みで相違するフィルムのヘイズ値が同程度になる蓋然性が高いとはいえない。
よって、上記相違点は実質的なものであり、本件発明1は甲1発明ではない。
ウ そして、甲1の離型フィルムの基材フィルムに粒子を含有させるのは、「離型層を設置して巻き取る際にブロッキング発生や離型フィルムの搬送性悪化等の問題」(甲1の段落【0002】)が生じるためであり、甲1発明の離型フィルムにおいて、本件発明1のように、「被転写膜の欠点検査を適切に行うことができること、離型フィルムの識別性が良好であること」を目的して、ヘイズ値を「1.5?8.0%」に調整する動機付けは甲1にはない。
ここで、甲2(段落【0017】)には、積層フィルムに擦り傷抑制性や離型性を付与するためにヘイズ値を好ましくは5.0%以上、さらに好ましくは8.0%以上とすることが、甲3(段落【0044】)には、離型フィルムを成形部材に残存させる用途で、意匠が見やすくなる等のため、ヘイズの下限が低ければ良く、10%以下であることが好ましいとされることが、甲4(段落【0149】?【0152】)には、クリアハードコート層6/PET基材層7/ITO層8/粘着剤層9/ガラス10からなる試験片のヘイズ値について記載されているものの、いずれにも、被転写膜の欠点検査を適切に行うことができるようにし、離型フィルムの識別性を良好にするために、ヘイズ値を「1.5?8.0%」に調整することは記載されていないし、甲5及び甲6にも、このことは記載されていない。
そうすると、本件発明1の上記相違点に係る構成は、甲1発明に基いて、あるいは、甲1発明及び甲2?甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到することができたものではない。
エ よって、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲1発明及び甲2?6に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)本件発明2?8について
本件発明2?7は、本件発明1の発明特定事項を、直接又は間接的にすべて含むものであり、本件発明8は、実質的に本件発明1で特定された事項の全てを包含する、離型フィルムの製造方法に係る発明である。
そうすると、上記(2)で述べたように、本件発明1は、甲1発明ではなく、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲1発明及び甲2?6に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明1の発明特定事項をすべて含む本件発明2?8も同様に、
本件発明2、7、8は甲1発明ではなく、
本件発明2、6?8は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、
本件発明8は、甲1発明及び甲2?4に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、
本件発明3は、甲1発明及び甲4に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、
本件発明2、3は、甲1発明及び甲2?5に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、
本件発明4は、甲1発明及び甲6に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、
本件発明5は、甲1発明及び甲2、甲6に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、
本件発明4?7は、甲1発明及び甲2?6に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5.むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1?8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-10-08 
出願番号 特願2018-526818(P2018-526818)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (B32B)
P 1 651・ 121- Y (B32B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 増永 淳司  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 佐々木 正章
井上 茂夫
登録日 2019-01-11 
登録番号 特許第6458910号(P6458910)
権利者 東レフィルム加工株式会社
発明の名称 離型フィルム  
代理人 一條 力  
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