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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  D01F
管理番号 1355999
異議申立番号 異議2018-701002  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-11-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-12-10 
確定日 2019-10-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第6360693号発明「耐光性に優れた溶融異方性芳香族ポリエステル繊維」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6360693号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6360693号の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成26年3月14日に出願され、平成30年6月29日にその特許権の設定登録がされ、同年7月18日に特許掲載公報が発行された。それに対して、平成30年12月10日に特許異議申立人 特許業務法人朝日奈特許事務所(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成31年3月19日付で当審が取消理由を通知し、令和元年5月17日に特許権者から意見書が提出されたものである。
その後、同年7月23日付で当審が取消理由(決定の予告)を通知し、同年9月19日に特許権者から意見書が提出されたものである。

第2 証拠など
1 申立人が提示した証拠
申立人が提示した証拠は以下のとおりである。(以下、甲第1号証を「甲1」などという。)
甲1:特開2007-297494号公報
甲2:特開2007-113163号公報
甲3:特開2005-179879号公報
甲4:特開2004-19021号公報
甲5:特開平3-2261号公報
甲6:特開2002-194071号公報
甲7:堀 正、「ベンゾトリアゾールの性状と用途および使用方法」(昭和44年9月15日)、防蝕技術、Vol.18、No.9、1?6頁
2 特許権者が提示した証拠
乙1:末永 純一、「成形・設計のための液晶ポリマー」(平成14年5月10日)、15頁
乙2:中川 潤洋、「高性能材料としての高分子液晶 繊維 溶融液晶紡糸繊維の特徴と用途」(平成6年10月)、高分子、Vol.43、No.10、726?727頁
乙3:特開平3-193912号公報
乙4:実験成績証明書、(令和元年9月12日)、特許権者従業員 池端 桂一作成

第3 取消理由(決定の予告)の概要
令和元年7月23日付取消理由(決定の予告)の概要は次のとおりである。本件発明1?5は、甲2から認定できる発明及び甲1、3、4、5から認定できる本願出願前周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である。したがって、本件発明1?5に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるである。

第4 刊行物の記載事項
1 甲1の記載事項
甲1には次の記載がある。
(1)「【請求項1】
反応性基を有する紫外線吸収剤と、該反応性基と反応する基を有する重合体とを反応させて得られた重合体結合紫外線吸収剤であって、
上記紫外線吸収剤が、カルボン酸アルキルエステル基、カルボン酸ハロゲナイド基、水酸基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種の基を有するベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系、安息香酸系、ケイヒ酸系およびサリチル酸系の紫外線吸収剤からなる群から選ばれた少なくとも1種であり、
上記重合体が、水酸基、アミノ基、カルボン酸アルキルエステル基およびカルボン酸ハロゲナイド基から選ばれる少なくとも1種の基を有する重合体であり、
かつ紫外線吸収剤残基の含有量が5?95質量%である重合体結合紫外線吸収剤を分散媒体に分散させてなることを特徴とする紫外線遮蔽性組成物。
【請求項2】
分散媒体が、樹脂、樹脂の溶液或いは水系分散媒体である請求項1に記載の紫外線遮蔽性組成物。
【請求項3】
樹脂が、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂である請求項2に記載の紫外線遮蔽性組成物。
・・・
【請求項6】
請求項2または3に記載の紫外線遮蔽性組成物を成形加工することを特徴とする紫外線遮蔽性樹脂加工物品の製造方法。
【請求項7】
加工物品が、容器、フィルム、シート、パイプ、ホース、チューブ、ビーズ、繊維、自動車部品、電気機器部品、文具、家具または日用品である請求項6に記載の紫外線遮蔽性樹脂加工物品の製造方法。
・・・」
(2)「【0027】
上記した分散媒体としての樹脂は、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系、ポリスチレン系樹脂、スチレン-アクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系共重合体、エチレン-ビニルアルコール系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、液晶ポリエステル樹脂(LCP)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂およびポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)からなる群より選ばれた樹脂または2種以上の樹脂のポリマーブレンド或いはポリマーアロイである。」
(3)「【0030】
本発明の紫外線遮蔽性組成物は、重合体結合紫外線吸収剤を上記の樹脂に対して任意の添加量で添加して得ることが可能であるが、紫外線吸収剤残基の含有量として上記樹脂100部に対して約0.05?20質量部、好ましくは約0.1?10質量部の割合で添加するのがよい。また、重合体結合紫外線吸収剤として紫外線吸収剤残基の有する機能と、使用する目的とに応じて、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やトリアジン系紫外線吸収剤のような同種機能剤の組み合わせ、或いは重合体結合紫外線吸収剤と重合体結合光安定剤或いは重合体結合酸化防止剤のような異種機能剤の組み合わせを含め2種以上併用し、相乗効果を得ることができる。
【0031】
本発明の紫外線遮蔽性組成物は、重合体結合紫外線吸収剤を、単独或いは上記の樹脂を加えてミキシングロール、バンバリーミキサー、ニーダー、ニーダールーダー、単軸押出機或いは多軸押出機などで混練され、シート状のマスターバッチに裁断されるか、ペレタイザーでマスターバッチのペレットとされ、上記の樹脂と共に常法に従いヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラーなどにて混合し、ミキシングロール、射出成形機、押出し成形機、ブロー成形機、インフレーション成形機、圧縮成形機、回転成形機、熱硬化性樹脂成形機などで成形される。」
2 甲2の記載事項
甲2には、次の記載がある。
(1)「【請求項1】
ポリエステル系長繊維からなる長繊維不織布であって、ポリエステル系長繊維を形成するポリエステルは、カルボジイミド化合物と紫外線吸収剤を含有していることを特徴とする耐候性長繊維不織布。
【請求項2】
紫外線吸収剤が、ベンゾトリアゾール系あるいはベンゾフェノン系の紫外線吸収剤であることを特徴とする耐候性長繊維不織布。
【請求項3】
ポリエステル系長繊維が、芯鞘型複合繊維であって、ポリエステルが芯部を形成し、ポリオレフィンが鞘部を形成することを特徴とする請求項1記載の耐候性長繊維不織布。」
(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外での使用や耐候性が要求される分野での使用、特に農業,園芸,土木,産業用等の資材として使用される耐候性長繊維不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルからなる不織布は、優れた機械的特性を有することから、農業、園芸、土木、産業用の資材として多く用いられている。また、これらの用途のなかでも、屋外に暴露して使用するものについては耐候性が求められるため、酸化防止剤、耐熱剤、紫外線安定剤あるいは紫外線吸収剤等が添加された不織布が用いられている。」
(3)「【0008】
本発明に用いるカルボジイミド化合物は、分子中に1個以上のカルボジイミド基を有するカルボジイミド化合物(ポリカルボジイミド化合物を含む)であって、一般的に知られた方法で合成されたものを使用することができる。また、本発明では、カルボジイミド化合物として、カルボジイミド化合物の合成時に酸化防止剤を添加することにより得られるカルボジイミド組成物(カルボジイミド化合物と酸化防止剤とからなる)も好ましく用いることができる。このようなカルボジイミド組成物としては、日清紡績社製の商品名「カルボジライト」が挙げられる。
【0009】
本発明に用いる紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系あるいはベンゾフェノン系の紫外線吸収剤を好ましく用いることができる。また、両者を併用してもよい。
【0010】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[3,5-ビス(2,2’-ジメチルプロピル)-2-ヒドロキシフェニル]ベンゾトリアゾール、2-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(ジヒドロベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’-(3’’,4’’,5’’,6’’-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル]ベンゾトリアゾールが挙げられる。これらの中では特に、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(ジヒドロベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]が、耐熱性に優れることから好ましい。」
(4)「【0019】
本発明における長繊維不織布は、ポリエステル系長繊維が堆積したものである。長繊維不織布の形態は、用途に応じて適宜選択すればよく特に限定されず、従来公知のものであればよい。例えば、熱により繊維の一部が溶融して繊維同士が接着一体化してなる不織布や、機械的な交絡手段により繊維同士が交絡することにより一体化してなる不織布等が挙げられる。
【0020】
長繊維を形成するポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等が挙げられる。またはこれらを主体とするポリエステルであって、他の成分を共重合した共重合ポリエステルであってもよい。」
(5)「【0021】
本発明におけるポリエステル系長繊維とは、単一のポリエステルからなる長繊維、融点等が異なる2種のポリエステルが混合もしくは複合した長繊維、ポリエステルとポリオレフィンやポリアミド等のポリエステル以外の重合体とが複合した長繊維等が挙げられ、長繊維不織布を用いる用途の要求性能に応じて、適宜選択すればよい。ポリエステルが芯部を形成し、ポリオレフィンが鞘部を形成する芯鞘型複合形態のポリエステル系長繊維とすると、ポリエステルが、鞘部に覆われた形にすることで表面に露出しないため耐候性が低下しにくく、繊維の骨格としての強度を維持し、また、鞘部のポリオレフィンにより熱接着性が良好で、フィルムや樹脂シート等の他の素材とも貼り合わせが良好となり、好ましい。ポリオレフィンの中でもポリエチレンは、ポリエステルとの融点差が大きく、熱接着性に優れるため好ましい。なかでもメタロセン系触媒を用いて重合されたポリエチレンを用いることが好ましい。
【0022】
また、ポリエステル系長繊維からなる長繊維不織布としては、前記ポリエステル系長繊維単独からなる長繊維不織布であってもよいが、本発明の目的を損なわない範囲で、他の繊維が混合(混繊)してなる長繊維不織布であってもよい。」
(6)「【発明の効果】
【0025】
本発明は、ポリエステル系長繊維からなる長繊維不織布であって、ポリエステル系長繊維を形成するポリエステルは、カルボジイミド化合物と紫外線吸収剤を含有しているため、より耐候性に優れた長繊維不織布を、紡糸性を損なうことなく得ることができる。
【0026】
本発明の耐候性長繊維不織布は、耐候性が要求される分野、特に農業、園芸、土木、建材用に代表される産業資材等に好適に用いられる。」
(7)「【0035】
実施例1
芯部には、融点260℃、固有粘度0.70のポリエチレンテレフタレートを、鞘部には、MI値15g/10分、融点103℃のメタロセン触媒により重合されたポリエチレンを用い、ポリエチレンテレフタレート中に、マスターバッチを用いて、紫外線吸収剤として、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(ジヒドロベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]を0.31質量%、メチレンビス(5,5’-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)を0.23質量%、カルボジイミド化合物(商品名 カルボジライトLA-1 日清紡績社製)を0.3質量%混合し、スパンボンド法により芯鞘型複合長繊維不織布を製造した。詳しくは、前記重合体チップをエクストルーダー型溶融押し出し機を用いて溶融し、これを芯鞘型複合紡糸口金を通して紡出した。紡出糸状を冷却した後、吸引装置により引き取り、開繊し、移動する捕集面上に捕集・堆積させて単糸繊度3.3デシテックスの芯鞘型複合長繊維からなる目付70g/m2の不織ウェブを得た。この不織ウェブをエンボスロールとフラットロールとからなる熱圧接装置に通し、ロール温度95℃、圧接面積率20%の条件下で熱圧接して長繊維不織布を得た。
【0036】
実施例2
実施例1において、ポリエチレンテレフタレート中のカルボジイミド化合物の混合量を0.5質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして長繊維不織布を得た。」
(8)「【0041】
得られた実施例1、2、比較例1?3の長繊維不織布の性能等を表1に示した。
【0042】

表1から明らかなように、本発明の紫外線吸収剤およびカルボジイミド化合物の両者を含む長繊維不織布は、比較例1(紫外線吸収剤のみ)、比較例2(カルボジイミド化合物のみ)、比較例3(紫外線吸収剤およびカルボジイミド化合物を含まない)の長繊維不織布と比較すると、耐候性が一層向上している。」
3 甲3の記載事項
甲3には、次の記載がある。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、高い耐加水分解性を有するポリエステル繊維、特に食品加工および/または食品貯蔵の用途に特に有用なモノフィラメントに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル繊維、特に工業用モノフィラメントは、ほとんどの場合、使用中に高い機械的および/または熱的ストレス要因に曝されることは知られている。さらに、多くの場合、前記材料が十分な耐性を示す必要がある化学的影響および他の環境的影響に因るストレス要因が存在する。これらのすべてのストレス要因に対する十分な耐性だけでなく、前記材料は、良好な寸法安定性と、非常に長い使用期間に亘って一定である応力歪み特性とを備えていなければならない。
高い機械的応力、高い熱応力および高い化学的応力の組み合わせを課す工業用途の一例として、フィルター、篩またはコンベヤーベルトにおけるモノフィラメントに使用が挙げられる。この使用には、優れた機械的性質、例えば高い初期弾性率、破壊強さ、結節強さおよび引掛け強さ、を備えたモノフィラメント材料が必要とされる。また、前記モノフィラメント材料は、その使用中に曝される高い応力に耐えられるようにするために、および、前記篩またはコンベヤーベルトが十分な耐用期間を有するようにするために、高い耐加水分解性と共に高い耐摩耗性を備える。
高い耐薬品性および耐物理性を備え、かつ、繊維の製造に用いられる成形材料が知られている。ポリエステルは、この目的のために広く利用されている材料である。また、ポリマーと他の材料とを組み合わせることによって、例えば、特定の度合いの耐加水分解性を実現することも知られている。
【0003】
食品製造業者または食品加工業者のごとき工業製造業者らは、高温および高温湿潤環境において行われる作業においてフィルターまたはコンベヤーベルトを活用する。ポリエステルをベースにして製造された繊維は、食品と接触する用途に適している。しかしながら、高温湿潤環境において用いられる場合、ポリエステルは加水分解劣化を起こす傾向がある。」
(2)「【0008】
好ましいのは、3meq/kg以下の遊離カルボキシル基含有量を有するポリエステル繊維であって、前記ポリエステル繊維はエポキシ組成物で安定化されており、前記エポキシ組成物は、
a)エポキシ化脂肪酸エステルと、
b)エポキシ化脂肪酸グリセリド、
を含んでなり、かつ、前記組成物に対して1.5重量%以上のエポキシ含有量を有する、ことを特徴とする前記ポリエステル繊維である。
【0009】
溶融状態で形成可能であり、かつ、任意のある所望の用途にとって望ましい特性を有する繊維を提供する任意の繊維形成性ポリエステルを用いることができる。
これらの熱可塑性ポリエステルおよび/または芳香族液晶ポリエステルは、それ自体が周知である。」
(3)「【0012】
好ましい熱可塑性ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロへキサンジメタノールテレフタレート、ポリカーボネート、およびポリブチレングリコール単位と、テレフタル酸単位と、ナフタレンジカルボン酸単位とを含んでなる共重縮合物からなる群から特に選択される。
さらに好ましい熱可塑性ポリエステルは、芳香族液晶ポリエステル、特にP-ヒドロキシベンゾエート単位を含んでなるポリエステルである。」
(4)「【0015】
本発明に従って用いられる加水分解制御剤は、有毒にならずに加水分解がしっかりと制御されているポリエステル繊維を提供する。
本発明に従って用いられる加水分解制御剤は、単に前記成分を混ぜ合わせることによって製造することができる。
本発明に従って用いられる加水分解制御剤として用いられるエポキシ化脂肪酸エステルは、任意の所望のアルコール、好ましくは脂肪族アルコール、でエステル化された任意の所望の脂肪酸から誘導される。」
(5)「【0019】
本発明に従って用いられる加水分解安定剤のエポキシ含有量は、同様に、広い制限範囲内で変動し得るが、エポキシ化成分の総重量に基づいて、酸素に関して1.5重量%以上であることが好ましい。前記エポキシ含有量は、1.5?15重量%の範囲内であることが好ましく、4?8重量%の範囲内であることが特に好ましい。
成分b)に対する成分a)の量比は、広い制限範囲内で変動し得る。一般に、成分a)の量は、成分a)と成分b)との総重量に基づいて、90?10重量%の範囲内であり、成分b)の量は、10?90重量%の範囲内である。
成分a)およびb)の種類および量は、液体の生成物が得られるように選択されることが好ましい。
本発明に従って用いられる加水分解制御剤は、成分c)として少なくとも1種のカルボジイミドをさらに含んでなることが好ましい。
【0020】
本実施態様において、加水分解制御剤は、(成分a)?c)の総重量に基づいて)90?10重量%の成分a)と、9.9?60重量%の成分b)と、0.1?30重量%の成分c)とを含んでなることが好ましい。
この場合のNCN含有量は、成分a)?c)の総重量に基づいて、2.0重量%以上である。
成分a)と成分b)とから成る加水分解制御剤を用いることが特に好ましい。」
(6)「【0021】
本発明のポリエステル繊維の製造の過程またはポリエステルの製造の過程において添加されるエポキシ組成物の量は、ポリエステルが0?3meq/kg、好ましくは2meq/kg以下という所望の遊離カルボキシル基含有量を有するように選択されるべきである。
エポキシド組成物の量は、所望の遊離カルボキシル基含有量が決まった後にほぼ全部のエポキシ基が消費されるように選択することができる。
しかしながら、貯蔵効果が達成されるためには、より多くの量を用いることが好ましい。
エポキシ組成物の量は、通常、ポリエステル繊維に対して、0.05?30重量%の範囲内である。0.1?10重量%が好ましい。」
4 甲4の記載事項
甲4には、次の記載がある。
(1)「【請求項1】下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成され、構造単位(I)が(I)、(II)および(III)の合計に対して55モル%以上80モル%以下であり、構造単位(II)が(II)および(III)の合計に対して50モル%より大きく90モル%以下であり、構造単位(IV)が(IV)および(V)の合計に対して0モル%より大きく30モル%未満であり、構造単位(II)および(III)の合計と(IV)および(V)の合計が実質的に等モルであり、数平均分子量が1,000以上であることを特徴とする繊維用液晶性ポリエステル。
【化1】


(2)「【0002】
【従来の技術】
近年、プラスチックの高性能化に対する要求がますます高まり、種々の新規性能を有するポリマーが数多く開発され市場に供されているが、中でも分子鎖の平行な配列を特徴とする光学異方性の液晶性ポリエステルなどの液晶性ポリマーが優れた成形性と機械的性質を有する点で注目され、電気・電子部品用途を中心とした射出成形品用途で需要が拡大している。また、一方で一部の液晶性ポリマーは高強度、低吸水寸法安定性などを生かした繊維として漁網などの水産資材用途を中心に展開が図られている。
【0003】
液晶性ポリマーとしてp-ヒドロキシ安息香酸と4,4’-ジヒドロキシビフェニルおよびテレフタル酸からなる液晶性ポリエステルが古くから知られている・・・」
(3)「【0013】
本発明の繊維用液晶性ポリエステルは構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)の組成比を厳密に規定することにより、特に(II)および(III)の組成比および(IV)および(V)の組成比を特定の範囲とし、それらを組み合わせることにより、成形加工温度を下げることができ、発生ガス、異物が少なく、繊維強度が高くなる。」
(4)「【0045】
さらに、本発明の繊維用液晶性ポリエステルまたは繊維用熱可塑性樹脂組成物には、酸化防止剤および熱安定剤(たとえばヒンダートフェノール系、アミン系、ホスファイト系、チオエステル系、ヒドロキノン系など)、耐光(候)剤、紫外線吸収剤(たとえばベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、シアノアクリレート系、レゾルシノール系、サリシレート系など)、赤外線吸収剤などの安定剤、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、滑剤およびいわゆる離型剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、染料および顔料(シアニン系、スチルベン系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリノン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、クノフタロン系などの有機顔料、無機顔料)を含む着色剤、蛍光増白剤、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ(ホワイトカーボン、シリカゾル、シリカゲルなど)、水酸化マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、酸化チタン、タルク、ゼオライト、カオリン、ベントナイト、架橋ポリスチレンなどの粒子、抗菌剤、消臭剤、微細孔形成剤、導電剤あるいは着色剤としてカーボンブラック、隠蔽剤、艶消し剤、結晶核剤、可塑剤、粘度安定剤、分散剤、難燃剤(臭素系難燃剤、燐系難燃剤、赤燐、シリコーン系難燃剤など)、難燃助剤、および帯電防止剤(制電剤)などの通常の添加剤、熱可塑性樹脂以外の重合体を配合して、所定の特性をさらに付与することができる。」
(5)「【0046】
これらの添加剤やその他の熱可塑性樹脂を配合する方法は、溶融混練によることが好ましく、溶融混練には公知の方法を用いることができる。たとえば、バンバリーミキサー、ゴムロール機、ニーダー、単軸もしくは二軸押出機などを用い、180?400℃の温度で溶融混練して組成物または繊維用熱可塑性樹脂組成物とすることができる。その際には、1)繊維用液晶性ポリエステル、その他の熱可塑性樹脂、充填材およびその他の添加剤との一括混練法、2)まずその他の熱可塑性樹脂に繊維用液晶性ポリエステルを高濃度に含む液晶性樹脂組成物(マスターペレット)を作成し、次いで規定の濃度になるようにその他の熱可塑性樹脂、充填材およびその他の添加剤を添加する方法(マスターペレット法)、3)繊維用液晶性ポリエステルとその他の熱可塑性樹脂を一度混練し、ついで充填材およびその他の添加剤を添加する分割添加法など、どの方法を用いてもかまわない。」
(6)「【0050】
紡糸された繊維は、そのままでも一般の熱可塑性有機繊維より強度が高く、かつ弾性率も高いが、これに熱処理を施すとその強度や弾性率を飛躍的に向上することができる。」
(7)「【0055】
本発明の繊維用液晶性ポリエステルおよび繊維用熱可塑性樹脂組成物から得られる繊維は、高強度、高弾性率であるばかりでなく、低吸水性、低誘電性であり、また、振動減衰性、寸法安定性、耐熱性、耐薬品性などに優れており、魚網、テグス、ロープ等の水産資材、テンションメンバー、光ファイバーコードやプリント基板の補強材、タイヤコードやコンベアーベルト、ホース等のゴム補強材のほか、プラスチックやコンクリートの補強剤、ケーブル、スピーカーコーン、スクリーン紗、封止剤補強、不織布、電池セパレーター、カンパス、基布としても有用である。また、安全着、防弾チョッキなど防護服や手袋、宇宙服、海底作業服等衣料資材としても用いることが出来る。」
5 甲5の記載事項
甲5には次の記載がある。
(1)「2.特許請求の範囲
(A)下記構造単位(I)?(III)からなり、構造単位〔(I)+(II)〕が全体の75?95モル%、構造単位(III)が全体の25?5モル%を占め、構造単位(I)/(II)のモル比が75/25?95/5の範囲にあって、かつ熱変形温度が150℃以上である異方性溶融相形成性液晶ポリエステル樹脂100重量部に対して、
(B)有機エポキシ化合物0.005?10重量部、
(C)カルボジイミド化合物0.005?10重量部および
(D)充填剤0?200重量部を含有せしめてなる液晶ポリエステル樹脂組成物。


から選ばれた1種以上の基を示し、R_(2)とR_(3)は同一であってもよい。また式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)
(2)2頁左上欄下2行?右上欄13行
「〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、上記液晶ポリエステル樹脂はガラス転移温度が低いため、水に対する安定性、すなわち、耐加水分解性あるいは耐熱性が必らずしも十分でないため、実用性に問題があった。
そこで、本発明は上述の問題点を解決し、耐加水分解性および耐熱性に優れた液晶ポリエステル樹脂組成物の取得を課題とするものである。
本発明者らは、上述の課題を達成すべく鋭意検討した結果、特定の構造単位からなる液晶ポリエステルに対し、有機エポキシ化合物およびカルボジイミド化合物の特定量を添加した組成物が、耐加水分解性が改良されるばかりか、さらには耐ヒートサイクル性も飛躍的に向上したものであることを見出し、本発明に到達した。」
(3)5頁右下欄下7行?6頁左上欄11行
「本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない程度の範囲で、酸化防止剤および熱安定剤(例えばヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(例えばレゾルシノール、サリシレート、ペンゾトリアゾールおよびベンゾフェノンなど)、滑剤および離型剤(モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリンアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、染料(例えばニトロシンなど)および顔料(例えば硫化カドミウム、フタロシアニンおよびカーボンブラックなど)を含む着色剤、難燃剤、可塑剤および帯電防止剤などの通常の添加剤や他の熱可塑性樹脂を添加して、所定の特性を付与することができる。」
(4)9頁左上欄5?10行
「〔発明の効果]
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は、耐加水分解性および耐ヒートサイクル性が極めて良好であり、とくに高温多湿下、あるいは高温、低温状態下にさらされる機械部品、自動車部品、封止材料等の用途に有用である。」
6 乙2の記載事項
乙2には、次の記載がある。
(1)727頁左欄
「4.繊維性能と用途
溶融液晶繊維であるベクトランの基本繊維性能をパラ系アラミド繊維(PPTA),ポリエステルタイヤコード繊維(PET)と比較して表1に示す.ベクトランは引っ張り特性以外に吸湿性,耐摩耗性,耐クリープ性,耐切創性,耐薬品性が特に優れており高強力ロープ・コード類,水産資材,光ファイバー・電線のテンションメンバー,ゴム資材,防護材などに使用されている.」
(2)表1
表1から、「繊維性能の比較」として、ベクトランの水分率が「0.05%」であるのに対して、PETの水分率が「0.34%」であることが読み取れる。

第5 取消理由(決定の予告)についての検討
1 引用発明について
(1)甲2の記載事項の認定
前記第4、2(1)、(3)、(7)の記載から次の発明(以下「引用発明」という。)が認定できる。
(2)引用発明1
「鞘部にはポリエチレンを用い、芯部にはポリエチレンテレフタレートを用い、ポリエチレンテレフタレート中に、マスターバッチを用いて、紫外線吸収剤として、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(ジヒドロベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]を0.31質量%、メチレンビス(5,5’-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)を0.23質量%、カルボジイミド化合物(商品名カルボジライトLA-1日清紡績社製)を0.3質量%混合し製造された芯鞘型複合長繊維不織布の、繊維の芯部。」
2 本件発明との対比
(1)対比
ア 本件発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。
イ 紫外線吸収剤
(ア)引用発明の「2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(ジヒドロベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]」及び「メチレンビス(5,5’-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)」は「紫外線吸収剤」として混合されているので、本件発明1の「紫外線吸収剤」に相当する。
(イ)また、その繊維中の含有量は、「2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(ジヒドロベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]」が0.31質量%、「メチレンビス(5,5’-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)」が0.23質量%であり、合計0.54質量%であるから、本件発明1の「0.5?10wt%」の範囲内である。
(ウ)そして、引用発明の「2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(ジヒドロベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]」は、「ベンゾトリアゾール系化合物」の一種である。
ウ 引用発明の「ポリエチレンテレフタレート」は、「芳香族ポリエステル」の一種であるから、本件発明1の「芳香族ポリエステル」に相当する。
エ 引用発明の「カルボジイミド化合物(商品名カルボジライトLA-1日清紡績社製)」は、ポリエステル樹脂の加水分解を抑制する物質として本願出願前に周知(例えば、特開2011-144210号公報の段落【0050】)であるから、本件発明1の「加水分解防止剤」に相当する。また、その繊維中の含有量は0.3質量%であるから、「0.1?5wt%」の範囲内である。
(2)一致点
よって、本件発明1と引用発明は、以下の構成において一致する。
「紫外線吸収剤が繊維中に0.5?10wt%含まれている芳香族ポリエステル繊維であって、加水分解防止剤が繊維中に0.1?5wt%含まれており、前記紫外線吸収剤の少なくとも一部がベンゾトリアゾール系化合物であることを特徴とする、芳香族ポリエステル繊維。」
(3)相違点
本件発明1と引用発明は、以下の点で相違する。
ア 相違点1
本件発明1は「溶融異方性芳香族ポリエステル」からなるのに対し、引用発明は「ポリエチレンテレフタレート」が「芳香族ポリエステル」ではあるが、「溶融異方性」を有するものではない点。
イ 相違点2
本件発明1は「前記紫外線吸収剤がベンゾトリアゾール系化合物である」のに対し、引用発明は「紫外線吸収剤」が「ベンゾトリアゾール系化合物」及びそれ以外の化合物を含むものである点。
3 相違点についての検討
事案に鑑み、相違点2、相違点1の順に検討する。
(1)相違点2について
ア 前記第4、2(3)に摘記したように、甲2の段落【0009】には、「本発明に用いる紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系あるいはベンゾフェノン系の紫外線吸収剤を好ましく用いることができる。また、両者を併用してもよい。」と記載されており、引用発明に用いる紫外線吸収剤として、ベンゾトリアゾール系及びベンゾフェノン系の紫外線吸収剤の両者を併用するだけでなく、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤だけを使用することが、示唆されているといえる。
イ したがって、相違点2は引用発明及び甲2の記載事項に基いて当業者が容易に想到し得る相違点である。
(2)相違点1について
ア 引用発明に接した当業者が、相違点1に係る本件発明1の構成を採用することに動機付けがあるかどうかを検討する。
イ 前記第4の4(7)に摘記したように甲4には、「繊維用液晶性ポリエステル・・・低吸水性」と記載され、同6(1)(2)に摘記したように、乙2には、「溶融液晶繊維は、・・・吸湿性が・・・特に優れており」とされ、具体的には、ポリエチレンテレフタレートに対し、水分率が1/7程度の低さであることが本願出願前から知られてたといえる。
ウ 液晶性ポリエステルも溶融液晶繊維も、「溶融異方性芳香族ポリエステル」のことである。そして、「溶融異方性芳香族ポリエステル」は、引用発明のようなポリエチレンテレフタレートと比べて水分が少ないことで、加水分解が生じにくいことが読み取れる。
エ そうすると、加水分解防止機能を有するカルボジイミド化合物と紫外線吸収剤とを含有することにより耐候性が優れていることを主眼とする引用発明に接した当業者が、ポリエチレンテレフタレートを、これよりも加水分解が生じにくい「溶融異方性芳香族ポリエステル」にあえて置き換えることには、阻害要因があるといえる。ポリエチレンテレフタレートよりも加水分解しにくい素材に変更することで、加水分解防止剤は不要もしくは減少可能と考えられるからである。
オ したがって、液晶性ポリエステル及びポリエチレンテレフタレートが共に周知の高分子材料であったとしても、引用発明におけるポリエチレンテレフタレートを液晶性ポリエステルに置換することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
カ なお、前記第4の5(1)に摘記したように、甲5には、溶融異方性芳香族ポリエステルに加水分解防止剤を添加することが記載されているが同5(4)において摘記したようにその用途は「高温多湿下、あるいは高温、低温状態下にさらされる機械部品、自動車部品、封止材料等の用途」というのであるから、引用発明とは大きく異なり、相違点1に係る本件発明1の構成を容易想到とする理由とはならない。
(3)小括
ア 以上から、相違点2は当業者が容易に想到し得るといえるが、相違点1は、当業者が容易に想到できるものではないから、本件発明1は、引用発明及び甲1、3?5に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができた発明ということはできない。
イ 本件発明2?5は、本件発明1をその一部に包含するものであるから、同様である。
ウ したがって、本件発明1?5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ということはできず、本件発明1?5に係る発明は特許法第113条第2号に該当せず、取り消すことはできない。

第6 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について
1 甲1に記載された発明を主引用例とする取消理由
申立人は、甲1発明として、「繊維等の加工物品に加工される紫外線遮へい性組成物において、分散媒体である樹脂100部に対して約0.05?20質量部添加されるベンドトリアゾール系紫外線吸収剤を液晶ポリエステル樹脂を含む分散媒体に分散した紫外線遮蔽性組成物が開示されている」と主張する。
2 検討
(1)前記第3、1(2)に摘記した各種の樹脂から、液晶ポリエステル樹脂(LCP)を選択し、また、前記3、1(3)に摘記したように、紫外線吸収剤残基の含有量として上記樹脂100部に対して約0.1?10質量部の割合で添加された発明は認定できる。
(2)しかしながら、甲1発明に基いて、まず、加水分解防止剤を併用し、かつ繊維中に0.1?5wt%という数値範囲を設定することは、下記(3)?(5)のように当業者が容易に想到し得るものということはできない。
(3)本件明細書には、次のように記載されている。
ア 段落【0024】
「本発明の溶融異方性芳香族ポリエステル繊維の耐光性を向上させる上で重要な点は、紫外線吸収剤の添加量である。耐光性向上のためには紫外線吸収剤の添加量はできるだけ多くしたいが、先にも述べたように、本発明で用いる紫外線吸収剤、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、ポリマーとの反応性が高いために添加量が多すぎると加水分解反応が起こり、強度低下に繋がる。ゆえに、紫外線吸収剤の添加量としては、耐光性と繊維強度物性をバランスさせる点で0.5?10wt%の範囲であることが必要である。好ましくは1?5wt%の範囲である。」
イ 段落【0025】
「また、前述した紫外線吸収剤による強度低下は、加水分解防止剤の添加によりある程度抑制することも可能である。加水分解防止剤の添加量としては、紫外線吸収剤の添加量にもよるが0.1?5wtの範囲が好ましい。加水分解防止剤としては、カルボジイミド系化合物等を好ましく用いることができる。」
(4)ここで、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が加水分解反応を起こすことが本願出願日前に知られていたことを示す証拠はないから、甲1発明に、例えば、甲2に記載の「カルボジイミド化合物加水分解防止剤」を付加する動機付けがあるとは認められない。
(5)そうすると、甲1の記載から、前記(1)のように引用発明を認定できたとしても、本件発明1?5は当業者が容易に発明できたものということができない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1?5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-10-16 
出願番号 特願2014-51785(P2014-51785)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (D01F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 清水 晋治  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 佐々木 正章
門前 浩一
登録日 2018-06-29 
登録番号 特許第6360693号(P6360693)
権利者 株式会社クラレ
発明の名称 耐光性に優れた溶融異方性芳香族ポリエステル繊維  
代理人 杉本 修司  
代理人 野田 雅士  
代理人 堤 健郎  
代理人 小林 由佳  
代理人 中田 健一  
代理人 中尾 真二  
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